ミルドラースとの決戦に敗れたグランバニア王一行。

唯一意識のあった王子レックスは、家族と仲間を逃がす見返りとしてミルドラースの虜囚となることを了承する。
天空の装備はばらばらに封印され、王子の身体は少女のそれに変えられてしまう。
魔界にて、魔族の男を喜ばせるための教育を受けることになったレックスは、やがて淫らに美しく成長し、自らミルドラースの寵愛を望むようになり──遂には魔の花嫁へと変貌する。

※Skebにてリクエストいただいたものです

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第1話

 旅の果てに待っていたのは、決定的な敗北だった。

 

「……あ、ああっ」

 

 グランバニアの王子レックスは、地面に転がったままその惨状を見た。

 

 うつ伏せに倒れた父王と、半ばで折れた『ドラゴンの杖』。

 母王妃は仰向けのまま動かず、『グリンガムのムチ』はどこへ行ったかもわからない。

 キラーマシーン、ビッグアイ、はぐれメタル、スライムナイト、キラーパンサー──父と友誼を交わし共に戦ってくれた魔物たちも深手を負ってあちこちに転がっている。

 

 唯一、意識があるレックスも、地面に刺さった『天空の剣』に手を伸ばす体力さえない。

 

 『賢者の石』を持つ双子の妹は気絶したまま、敵であるミルドラースに掴み上げられていた。

 これではいつ、首をへし折られてもおかしくない。

 

「止め、ろぉ……!」

 

 必死に叫ぶも、止められない。

 魔法力を振り絞っても雷の呪文一発分にもならず。

 疲れきった彼には見ることと叫ぶことしかできない。

 

 醜悪な化け物となったミルドラース。

 その姿は『人と相容れないもの』の象徴であり、懇願が受け入れられるとは思えない。

 それでも、

 

「止めろ、止めてくれ。お願い、だからぁ……っ!」

 

 涙を浮かべながら再び叫ぶ。

 落ちた涙は地面で弾け、悔しさから両手が震える。

 

 ──そこで、レックスは気づいた。

 

 ミルドラースが動かない。

 彼は妹を持ち上げたまま、瞳をレックスに向けている。

 何故、と思った直後。

 

『人にものを頼むのであれば、頼み方があるのではないか? 天空の勇者よ』

 

 声が、届いた。

 ミルドラースは元人間であり、理性のない化け物ではない。会話を、交渉する余地はあったのだが。

 彼らなりの理由があったとはいえ、レックスたちは襲った側。

 問答無用で殺されても仕方なかっただろうに。

 

 ──ならば、これは最後のチャンス。

 

 このままでは全員殺される。

 父を、母を、妹を、友達同然の魔物たちを殺されるくらいなら。

 唇を噛み締め、ゆっくりと口を開いて。

 

「お願い、します」

 

 憎い敵である魔界の王へ、レックスは懇願した。

 

「僕の命はどうなってもいいです。だから、みんなの命は助けてください。お願い、します……ミルドラース、様」

 

 屈辱。

 石になった父母を見つけ出し、人間に戻して──天空の剣を手に勇者として戦う日々も確かに辛かった。

 けれど、それでも、こんな思いをするのは初めて。

 悔しさから涙がとめどなく溢れ、口からは嗚咽がこぼれる。

 心が折れるともう、立ち上がろうという意思さえ浮かばなくなくなって。

 

 泣きじゃくるレックスを見たミルドラースは、厳かに答えた。

 

『いいだろう』

 

 はっと見上げれば、家族と仲間の身体がひとりでに浮き上がって。

 

『お前と引き換えに他の者は助けよう。……レックスよ、これからは勇者ではなく、このミルドラースの所有物となるがいい』

 

 みんなが魔界を追放され、地上へ送り返される様を、レックスは一人残されたまま見届けた。

 

 

     ◇    ◇    ◇

 

 

 天空の装備は邪悪な鎖に戒められ、宝箱に封印され、別々の場所へ。

 

 服まで剥ぎ取られたレックスは幼い身体をすべて晒されて。

 老人の姿に戻ったミルドラースに顎をくいっと持ち上げられた。

 

「男にしておくのが勿体ない美貌よ。……母譲り、いや、マーサの面影もあるか」

「……な、なにを言ってるんだ」

 

 舐めるような視線に本能的な恐怖を感じる。

 老人が笑み、下腹部へと手を伸ばしてくるも……未だ抵抗する力は戻っておらず。

 ただ、敵の指に身を任せて、

 

「レックスよ、お前を女にしてやる。今度は女として男を喜ばせる術を身につけるがいい」

「っ、くっ……あっ、あああああっ!?」

 

 邪悪な力が指先を通じて流れてくる。

 下腹部から浸透した魔力はレックスの身体に変化を与えながら全身へ広がり──痺れるような違和感に自然と声が出た。

 

 筋肉を奪われた腕は一回り細く。

 身長も縮んで目線が今までより低くなった。

 日焼けも気にならない丈夫な肌は妹似の白く柔らかな質感に変化。

 皮被りの小さなペニスは見る間に縮小し、睾丸は身体の中へと吸い込まれていく。

 悲鳴は女の子のように高いものに変わって。

 平らだった胸はほんのりと膨らみ、トレードマークの癖っ毛はしなやかな直毛に。

 

 ぺたん、と。

 

 床へ女の子のように尻もちをつくと。

 レックスは無意識に全身を抱きしめ、違和感がなくなるまで身を震わせ続けた。

 

「……そん、な」

 

 魔力が全身へ行き渡る頃には、彼の身体は完全に女の子に。

 細くなった指では剣を握るどころか殴り合いもうまくできないかもしれない。

 

 そんなレックスにミルドラースは満足そうに笑い。

 彼が指示を出すと数名の女魔族が現れ、レックスを優しく立ち上がらせた。

 触れられた指の感触がくすぐったくて、思わず「んっ……」と声を漏れる。

 身体が、まるで別物のよう。

 

「これからこの者たちがお前の世話をする。しっかりと励むように。……なに、時間はたっぷりとある」

 

 こうして、天空の勇者は魔族の奴隷となり──魔界の宮殿で過ごすことになった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 少女となったレックスの首には邪悪な紋章付きの首輪が嵌められた。

 

 通された部屋はどこか女性的な雰囲気の広い一室。

 幼少期を過ごしたグランバニア城を思い出し、懐かしくなっていると。

 

「レックス様、今日から私たちがあなたを教育いたします」

 

 見目麗しい女魔族たち。

 種族の違いはあれど、恭しい態度にはどこか共通する作法が見える。

 一方で、胸や尻を強調した衣装は城の召使いとまるで違う。

 

「魔族の女は男に侍り、寵愛を得るもの。魔界では弱い者が強い者に付き従うのが当たり前です」

「僕は人間だし、女でもない。そんな教育なんて受けない」

「あら、そんなことを仰るのであればお仕置きが必要になりますよ?」

「望むところだ」

 

 幼いレックスだが戦いには慣れている。

 鞭で打たれようと拳で殴られようと耐えられると強気に答えるも──。

 従者が右手を持ち上げ、指を鳴らす。

 

「ぐっ、ああああああああっっ!?」

 

 直後、全身に走ったのは中から来る強烈な痛みだった。

 

「ふふっ、いいでしょう? その首輪の効果──躾のなかっていない雌犬を拘束するためのものなのです」

「傷一つ負わせず、恐怖だけを与える。大切な身体に傷はつけられませんもの」

「っ、こんなもの……っ!?」

 

 首輪を両手で掴むも、まるでびくともしない。

 筋力が低くなったのもあるが、魔法で硬くなっているからだ。

 これでは壊す前に腕がどうにかなってしまう。

 

 そして、こんなものをずっと浴びせられたらその前に──。

 

 ぱちん。

 再び指が鳴らされると一瞬にして痛みがなくなった。

 ほっ、と、心に安心が生まれて。

 レックスはこれが「教育」であることを肌で理解した。

 

 

 

 

 

 

「では、レックス様。お召し替えをいたしましょう」

「せっかく可愛らしい女の子になったのですから、裸のままではいけませんものね」

 

 強引に鏡の前まで引っ張って行かれ、今の自分を姿を見せられる。

 

「……これが、僕」

 

 女性化したレックスは双子の妹にそっくりだった。

 いや、むしろ、冒険で鍛えられていた妹よりも華奢に見える。

 髪も肩まであり──顔立ちはほとんど変わっていないのに女の子にしか見えない。

 

 股には慣れ親しんだ突起はなく、代わりにつるつるの割れ目。

 

「うふふ。とっても可愛らしい……ミルドラース様が気に入られるのもわかりますわ」

「そんなの、なにも嬉しくなんか……っ!」

 

 着せられたのは女の子用の可愛らしいドレスだった。

 

 シルク製のショーツの紐は二人がかりで丁寧に結ばれ、股間にぴったりフィットした生地が信じられないくらい気持ちいい。

 同じくすべすべの肌着を、ピンク色の乳首を守るように着せられて。

 フリル多めの黒いドレスが全身を飾る。

 

 髪を梳かれ、ブラックオニキスの髪飾りを施され。

 唇に薄くピンク色の紅をさされると、それはもう、

 

「いかがですか、お姫様?」

「……最悪だ」

 

 両親を探す旅に出てからは妹とサンチョの三人で、レックスたちも自分のことはできるだけ自分でやるのが当たり前だった。

 グランバニアで生活していた頃だってここまで甲斐甲斐しく世話された記憶はない。

 妹は別だったかもしれないけれど……その妹だって、旅の間はレックスと着替えを手伝いあったりしていたのに。

 

「僕を奴隷にしたいなら鎖にでも繋いでおけばいいだろう」

「うふふ。なにを仰るんですか、レックス様」

 

 甘い声。くすぐるような吐息と共に頬がゆっくりと撫でられて。

 

「あなたがなるのはただの奴隷ではありません。……ミルドラース様に奉仕し、その寵愛を賜る愛玩奴隷」

「お姫様のように丁寧に、娼婦のようにいやらしく、ペットのように従順に、あの方にお仕えできるように訓練して差し上げますわ」

 

 レックスは羞恥と屈辱と共に、言いようのないぞくぞくとした『何か』を胸に覚えた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 それからはプライドと、男としての自覚をすり減らされる日々だった。

 代わりに注ぎ込まれるのは従順さと、女としての自我。

 

 逃走の自由がない以外、生活は快適そのもの。

 ふかふかのベッド。着用しきれないほどの服。お腹いっぱいの食事。

 ただし、従者はすべて妖艶な女性で、着衣はドレス、食事は何回かに一回は必ずミルドラースの隣で摂らされた。

 

「ほう。見違えたではないか、レックス」

「……うるさい」

 

 初日。

 漆黒のドレスのままミルドラースの前に出されたレックスは気丈に敵を睨みつけた。

 直後、女魔族が指を鳴らす音と共に全身に痛み。

 

「レックス様、ご主人様には敬語をお使いくださいませ」

 

 くすくすくす、と、高い笑い声が重なって。

 撫でるような視線の中、ナイフとフォークを動かした。

 姿勢やテーブルマナーについても容赦なく指摘が飛び、無視すれば首輪の力で痛みを与えられる。

 次第にレックスは自衛のため、指摘に「はい」と答え、言われた内容を実行するよう努力するようになっていった。

 

 食事は小さく切って細かく口に運ぶように。

 グラスに付いた口紅は指で拭き取るように。

 椅子に座る時はスカートを撫でつけてから、足を揃えて座るように。

 背筋を伸ばし、歩幅は小さく、急に振り返ってスカートを翻さないように。

 

 無数の指摘に苛立ちと恐怖が湧き上がる。

 けれど、感情に任せて反抗すれば必ず苦痛を与えられる。

 時には「お仕置き」に食事抜きや鏡前での尻叩きが追加されることもあった。

 お姫様待遇に慣らされた身体は空腹に悲鳴を上げ、女の子姿で尻を張られる自分の姿は「元の自分の像」を急速にぼやけさせた。

 

 抗っても従っても思うツボと知ったレックスは、できるだけ心を殺すことにした。

 

 機械的に指示をこなし、仕草や言葉遣い、礼儀作法を習得していく。

 次第にお仕置きが減り、代わりに称賛の言葉が増えた。

 敵でも褒められると少し嬉しくなる。

 ……そんな自分が無性に許せなくなって、なんとか宮殿を抜け出そうとしたら、外に出た瞬間に魔物の群れに取り囲まれて。

 

「あら、レックス様? 外出にはまだ早いのではありませんか?」

 

 裸でお尻を叩かれ、鏡に映った幻を直視させられた。

 一人、また一人と殺されていく家族や仲間たちの姿。

 鮮血に染まった大切な人たちの身体を前に、レックスは首輪と鎖に繋がれたままミルドラースの元にいて。

 

「レックス様が身も心も捧げる代償が、ご家族の無事──まさか、お忘れになられたのですか?」

「帰還されるのでしたら構いませんが、その際は、大切な方々が全員亡骸になることを覚悟してくださいませ」

「あっ、あああ、あああああああぁぁぁぁっっっ!?」

 

 自分を繋ぎ止めようとする心にまた、深い亀裂が刻まれた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「魔界の理は弱肉強食」

「力さえあれば女でも戦士として、将として成り上がることができますが、ほとんどの女はその身体で男性に媚び、取り入って生きていきます」

「女性であるレックス様もまた、ミルドラース様の庇護下になければ生きていけない弱い存在なのですよ」

 

 日々、囁かれる「女としての心得」。

 女になった身体は武器を取っての戦いには向いておらず、幼いレックスでは戦闘型ではない従者の女魔族たちでさえ負かすことができなかった。

 彼女らがレックスに剣を振ることを求めてくることもなく。

 

 己の弱さをこれでもかと認識させられたうえで。

 囚われてから約半年が経った頃──レックスはミルドラースに連れられて闘技場のような場所を訪れた。

 

 一人、円形の会場の中心へと立たされ、向かいから現れた一匹の魔物を視る。

 

「レックスよ、その者を葬ってみせよ」

 

 魔界の王を自称するミルドラースだが、すべての魔族や魔物が彼に付き従っているわけではない。

 中には己の力を頼りに下剋上を狙う者もいる。

 宛てがわれたのはそんな魔物の一匹であり、レックスのためにわざわざ生け捕りにしたものらしい。

 

「……勝てなければ、どうなるんですか?」

 

 尋ねると、客席で見守るミルドラースは低く笑って、

 

「決まっているであろう。この魔界において弱い者は死ぬ、それだけのこと」

 

 試合開始のゴングが鳴らされると同時に、レックスは笑った。

 相手が魔物なら遠慮する必要はない。

 ミルドラースの敵というのが気に食わないが、もともと魔物は全部──父の仲間となったものを除いて彼らの敵だ。

 弱い方が死ぬ、というのはわかりやすくていい。

 

「ライデイン」

 

 女になっても『勇者の呪文』は失われていない。

 小さく唱えると同時、空から黒い、魔界の稲妻が落ちて魔物を焼いた。

 黒焦げとなって倒れ伏すその姿にはなんの感情も湧いて来ず、

 

「……自業自得だよ」

 

 戻ると、ミルドラースは「よくやった」とレックスを褒めてくれた。

 頭を撫でられる感触にレックスは顔をしかめながら、小さく、ほんの小さく微笑んだ。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 力が落ちた分、魔法の才能は元の身体よりも上がっているらしい。

 闘技場でライデインを披露して以来、教育内容に魔法が追加された。

 

「スカラ。ピオリム。……バイキルト」

 

 自分には使えないと思っていた魔法が次々と自分のものになり、従者たちからも称賛を受けた。

 身体能力で劣る今のレックスでも強化魔法を併用すれば十分に魔物と渡り合える。

 

 あれ以来、ミルドラースは定期的に闘技場や牢屋、荒野にレックスを連れ出すようになり、自分で軽々殺せるはずの相手を殺すように命じて来た。

 

「……悪いけど、ストレス解消に付き合ってね?」

 

 敵の攻撃をかわし、素手でその腕をもぎ取る。

 奪った腕を大きく振りかぶって頭蓋に叩きつけ、黒い稲妻を叩き込み、黒焦げの亡骸に。

 強化された素早さは飛び散る鮮血の一滴も、身に纏う漆黒のドレスに付着させていない。

 

「良くやったな、レックスよ。それでいい。お前は私の寵姫となるが、いざという時には私を守る盾にもなるのだ」

「……はい、ミルドラース様」

 

 繰り返し刻み込まれた作法によって口調と声音は自然と女の子らしくなって。

 そのことに小さく胸が痛むも、その痛みにも、いつしか慣れてしまった。

 

 

 

 

 

「レックスよ。もうすぐお前がここに来て二年になるな」

 

 食事の際にほとんど注意されなくなってどれくらいになるだろうか。

 背筋を伸ばし、膝を揃えて座り、小さな口に合わせて食事を切り取っていたレックスは、手を止めカトラリーを置くと「はい」と主人を振り返った。

 

「ミルドラース様のお慈悲に深く感謝をしております」

 

 老人の顔に満足げな笑みが浮かぶ。

 彼が上機嫌なのは悪くない。機嫌を取っていられるうちは痛い思いをしなくて済む。

 

 ──この生活から抜け出す願望は、もうほとんど無くなっていた。

 

 男だった頃の自分がどんなふうに笑い、どんなふうに剣を振り、なにに心を動かされていたのかもううまく思い出せない。

 二年。

 十歳になった妹がどんなふうに成長したかは、鏡を見ればなんとなく想像できるけれど、今さら男に戻ったところで前のように振る舞える気はしない。

 

 もう、ここで生きていくしかない。

 

 だから、残る僅かなプライドに触れない範囲でミルドラースの命令に従おうと──。

 

「そろそろ、本格的な教育を始めるとしよう」

「本格的な教育、ですか?」

 

 ぞく、と、悪寒が走る。

 そんな彼女の警戒を知ってか知らずか、魔界の王は上機嫌に言葉を続けて、

 

「将来、私の閨で働くための技術。そして敏感な身体を作るための、女としての教育だ」

「………ぁ」

 

 絶大な恐怖がレックスを襲った。

 女の子として教育され、歩き方も言葉遣いももう女の子そのものになった。

 だからこそ、自分が「女の子」ではなく「女」あるいは「雌」の役割を期待されていることがはっきりとわかってしまった。

 

 嫌だ、と思っても、ミルドラースの告げた通り、レックスの身体は徐々に女として花開き始めていて、

 

 

 

 

 

「嫌っ!! 嫌よ、わたしはそんな教育受けないわ! ミルドラース様に処女を捧げるなんて絶対に嫌!」

 

 従者相手に訴えると、彼女らは楽しそうにくすくすと笑った。

 

「あらあら、レックス様ったら」

「女の役割はもう十分にわかっていらっしゃるくせに、そんな我が儘はいけませんわ」

「……それは」

 

 魔族の手が持ち上がるのを見て身体がびくっとする。

 けれど、起動したのは首輪ではなく鏡だった。

 

『あっ♡ はああっ♡ はぁん、おちんぽっ、気持ちいいですぅっ♡』

『もっと、もっとせーえき、膣内に出してぇっ♡』

 

 痴態と嬌声。

 ここではないどこかで、複数人の女たちが魔物に犯されている。

 生々しい肉棒、成熟した白い肌、飛び散る白濁液と、溢れる愛液。

 咄嗟に目を覆おうとするも、柔らかな手にそれを阻まれる。

 

「ほら、もっと良く見てくださいませ……♡ これが、私たちの、女の本質です……♡」

「っ」

 

 犯されているというのに、女たちはみな蕩けた表情で喜びの声を上げている。

 魔物の太い肉棒を秘所やアナル、時には口でも咥えこみ、甘い声を上げながら腰を振り、淫らな液体に自ら塗れていく。

 膣内射精された精液が二つの穴からどろりとこぼれ、鷲掴みにされた乳房がいやらしく歪む。

 

 十歳の少女──女としての経験はたった二年に過ぎないレックスには強烈過ぎる光景。

 しかし、だからこそ、

 

「いかがですか? レックス様の身体も、これからああやって成長していくのですよ♡」

「いいえ、あなたならばもっといやらしく、美しく、成長できるはずです……♡」

 

 知らなかった。

 一度知ってしまえばもう、知らなかった頃には戻れない。

 あまりにも鮮烈な大人の営み、快楽の交合に、胸が苦しいほど高鳴って。

 

「……これが、こんなことを、お父さんたちも?」

 

 混乱から抵抗の鈍った頭に「当然です♡」と声が染み込む。

 

「お父様のおちんぽを、お母様がおまんこで咥えて──あん、あん♡ と腰を振って射精させて、子宮でざーめん受け止めたからこそ、レックス様が生まれたのです♡」

「お母様は美しい方でしたね。石化していた分、身体は若々しいままで……それはもう、夜は夫婦で激しく交わっていたことでしょう♡」

 

 鏡の向こうの光景が、想像の中の両親の姿と混ざりあって、ありえたかもしれない二人の夜の姿を脳内に作り上げる。

 激しく腰を打ち付けて、いやらしく腰を振って、これではまるで──。

 

「獣と、変わらないじゃない」

「その通りです♡」

 

 指が頬を、首筋を撫でる。

 くすぐったいような感覚の奥に、知らない『熱』を感じたレックスは、ドレスの紐がするりと解かれていくのに反応できなかった。

 一人では脱げない仕様のドレスがあっさりと剥ぎ取られて。

 ただの鏡に戻った正面に、頬を恥じらいに染めた少女の姿が映る。

 

 上等なシルクの下着の中にある、未だ幼い割れ目──そこが太い雄の肉棒を咥え込むところを想像して。

 

「私たちが、たっぷり、教えて差し上げます」

「女の身体で気持ちよくなる方法も、雄の喜ばせ方も、すべて♡」

 

 期待、してしまった。

 早くなる鼓動に戸惑いながらも、レックスはこくん、と首を縦に動かして、

 

「……はい♡」

 

 その夜から、彼女の部屋では淫らなレッスンが毎日、繰り広げられるようになった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「レックス様のお身体はまだ子供ですから、焦る必要はございません♡」

「まずは性感を少しずつ開発しながら、知識を深めてまいりましょう♡」

 

 裸に、あるいは下着姿に剥かれてはベッドの上で複数人に抱きしめられる。

 甘い女の匂いに包まれるのを感じながら、肌を優しく撫でられる。

 どこかいやらしい手つき。

 

「さあ、鏡に視線を向けましょう……?♡」

 

 鏡に映し出されるのは、その時々によって異なる淫らな光景。

 必ずしも今、繰り広げられている行為ではなく、過去の出来事を再現したものもあるようで。

 

 ある時は、ベッドや床の上での自慰行為。

 ある時は、人間の男女による愛のあるセックス。

 ある時は、魔物に犯される人間の女性の姿。

 ある時は、魔族女性に犯される人間の男性。

 ある時は、魔族女性と魔物との激しい交わり。

 

 他人の行為を覗き見るという背徳感が興奮を呼び、鏡の中の女性に自分を重ね合わせることで幼い少女の性欲が強く呼び起こされていく。

 魔族たちの指が這えば這うほど、くすぐったいだけだった刺激に別の、どこかへ流されるような、落とされるような、浮かび上がっていくような『快感』が湧き上がって。

 毎日、欠かさず繰り返すうちに、レッスンの時間になるだけで身体がほんのりと熱を帯びるようになって。

 

「……わたしが、わたしじゃなくなっていくみたい♡」

 

 呼吸が乱れるのを感じながら呟けば、「それで良いのですよ♡」と囁かれる。

 

「女は、男に身を委ねるもの♡ そういうふうに身体ができているのです♡ おまんこの疼きに従っておちんぽを求めるのは、当たり前のこと♡」

「当たり、前」

「ええ♡ 女は、性の快楽によって誰もが生まれ変わるのです♡ あなたのお母様が、お父様の前では淫らな雌に変わるように♡」

 

 

 

 

 

 レッスンを受けるようになって一年間。

 レックスは性に慣れた女魔族たちによって強制的に、大人の快楽を教え込まれていった。

 

 じっくりと開発された身体は、まだ一人前として出来上がってもいないというのに愛撫によって発情するように。

 興奮に応じて割れ目からはとろり、と愛液が染み出すようになり、時には責めによって甘い喘ぎ声を漏らしてしまうように。

 

「あっ、んっ……♡」

「いいですよ、レックス様……♡ 声を出すとより気持ちよくなれます♡ 遠慮することはありません、感情を、どんどんを表に出していきましょう♡」

 

 発情すると乳首やクリトリスがぴんと勃起し、その状態で触れられると他よりも強い快感で全身を痺れる。

 肌も、胸も、秘所も。

 触れられれば触れられるほど敏感になって、次の時にはより快感を受け取れるようになった。

 鏡によって行為の知識、淫らな語彙が増えていくばかり。

 やがて、レックスの身体は魔族たちによって絶頂に導かれて。

 

「あっ、あああっ、ふあああああんっっ!!♡」

 

 とっくに女にされてしまったと思っていたのに、レックスはまだ自分が染まっていけることを教えられてしまった。

 一度、絶頂を覚えてしまうと二度目からは格段に楽に頂に到達できるようになり。

 今まで感じたことのない喜びに、なけなしのプライドが崩壊。

 

 イけばイクほど絶頂の奥にあるより深い絶頂も見えるようになって。

 

 安定して絶頂を迎えられるようになると、今度は手を導かれるようにして自慰を教え込まれた。

 自分の手で自分を絶頂に導く。

 恐怖からついつい止まりがちになる手を助けたのは鏡の中の映像だった。

 別の女の自慰行為を参考に夢中で指を動かすうち、レックスは自分一人でもいけるようになって。

 

 甘い喜びに浸りながら「良くできました♡」と髪や肌を撫でられると、これが正解なのだという実感で心が蕩けていった。

 

 そうして一年が経った頃、レックスの身体を異変が襲った。

 

「ああ、おめでとうございますレックス様♡」

「月のものが来られたのですね♡ これで、あなたの身体は大人になりました♡」

「大人、に?」

「男性の子種を孕めるようになったということです♡ 精液を注いでいただけば、ミルドラース様の子供を授かることができますよ♡」

「っ、もう、そんなことが?」

 

 身体は確かにだいぶ丸みを帯びてきた。

 胸にも小さいがはっきりとした膨らみがある。

 もう、男装したとしても彼女を男と間違える者はいないかもしれない。

 

 けれど、こんなに早く?

 身体が大人になるよりも先に子宮が大人になってしまった事実、孕もうと思えばいつでも雄の子種を受け入れられる現実に、知らず開発されてきた子宮がきゅん♡ と疼いた。

 

 そこで初めて、レックスは自分が、あのミルドラースに抱かれる様を想像して。

 現実的な想像として『それ』を思い描けるようになっていることに、ある種の高揚と、同時に絶望を覚えた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「んっ、ああっ♡ そう、そうですレックス様……っ♡ ご奉仕は積極的に、それでいて恥じらいを忘れず、んっ♡」

「ちゅっ、んっ、ふっ♡ ふふっ、そうです、もっと舌を絡めていやらしいキスを……♡」

 

 レッスンは次第に本格的なものになっていった。

 装着者と感覚の繋がる特殊なペニバンを用いた手淫やフェラチオの練習。

 女同士でのレズキスに、性感と性欲を高めるためのレズプレイ。

 女同士の気安さも手伝って、自分から唇を寄せたり、相手の身体に触れることへ抵抗感がなくなっていく。

 興奮が秘所を濡らし、互いの身体を擦り付け合う淫らなプレイで数え切れないほど絶頂を迎えた。

 

「ねえ、さすがにお尻は怖いんだけど……」

「大丈夫。慣れればすぐ、これなしでは生きられなくなりますから……♡」

「んんっ、はっ、ああんっ♡」

 

 長い舌で尻穴を解され、唾液を注ぎ込まれて。

 媚薬ローションでくちゅくちゅ♡ とゆっくり内部を広げられて。

 指を出し入れされると、本来男が感じるはずのない──『挿れられる快感』を身体に覚え込まされていく。

 

「おまんこは、処女のままとっておかないとで──まずはこちらで、おちんぽ呑み込めるようになりましょうね?♡」

 

 指が二本、三本と増やされ、ある程度ほぐれてくると今度は道具を使っての開発。

 玉が連なるような形をした淫具に、滑らかに磨かれた棒状の淫具。根本からだんだんと細くなる形状で、簡単には抜けない仕組みを施された淫具。

 快楽を貪るための場所ではないはずなのに──鏡の中の女たちがそうだったように、責められるほどにぞくぞくっ♡ と快感が駆け抜けて。

 

 それからは日中もプラグを挿入したまま生活するように。

 

 尻穴が淫具を咥え込む感覚にショーツが濡れ、一日の間に下着を替える回数は増えるばかり。

 穴がプラグに慣れるほどにプラグ自体の太さも徐々に大きくされて。

 

「レックス様? 我慢できないのであれば、自慰──オナニーをなさってもいいのですよ?♡」

「そうしてどんどん淫らになって、ミルドラース様に相応しい女になりましょうね?♡」

 

 もちろん、最初は我慢しようとしたレックスだが──ひとたび衝動に負けて昼間のオナニーに興じてしまうと後はのめりこんでいくだけだった。

 

「ああっ……わたし、こんなにいやらしいこと……っ♡」

 

 礼儀作法や魔法など、教育の合間に、従者に断りを入れては秘部へと指を伸ばしてしまう。

 くちゅくちゅと割れ目やクリトリスをいじるのは本当に気持ち良くて、中毒になっているのを自覚しつつも止められない。

 感じれば感じるほどアナルの調教もスムーズになって、

 

「では♡ こちらのペニバンで、レックス様のお尻を犯させていただきます♡」

 

 とうとう、来る時が来てしまった。

 隠すべき部分の空いた淫らな下着を身に付けさせられたレックスは、ペニバンを装着した魔族の前でうつ伏せになり、尻を高く上げて、

 

「……お願い♡ わたしのお尻の穴に、おちんちんの味を、教えてっ♡」

 

 挿入された瞬間、レックスは「あああっ!!♡」と甲高い声で啼いた。

 隠す気さえないような淫らな雌の声に、ああ、ともう戻れないことをあらためて実感する。

 ぱんぱん、と尻を突かれるほどに子宮がきゅんきゅん♡ と連動して、ほんの一度の交わりの間に何度も何度も絶頂させられて。

 

 

 

 

 

「恨むなら、わたしとミルドラース様に楯突いた愚かな自分自身を恨みなさい♡」

 

 レックスはいつしか、ミルドラースから反乱分子掃討の大部分を任されるようになっていた。

 魔界の雷は地上のものに比べて気性が荒いが、それも手懐けられるようになって。

 ミルドラースの寵姫となって以降に覚えた強力な呪文の数々も駆使し、幾多の魔物、魔族を蹴散らしていった。

 

「ふふっ、ははっ♡ あははっ♡」

 

 敵に容赦するつもりなどない。

 唯一のストレス解消の場だった戦いはいつしか、戦いの愉悦を感じるための場になって。

 

「ミルドラース様。反乱分子を掃討してまいりました……♡」

「そうか。良くやったな、レックス。お前は本当にいい子が」

「っ♡」

 

 頭を撫でられると、敏感になった感覚がひとりでにきゅん♡ と子宮を反応させてしまう。

 何年も装着し続けている首輪は、今やミルドラースとレックスをつなぐ絆の形のようになっていて。

 

 

 

 

 

「さあ、レックス様? ご自分がどのような存在であるか表明しながらオナニーしてくださいませ♡」

「はいっ♡ わたしはっ、ミルドラース様の雌ですっ♡ 奴隷ですっ♡ 所有物ですっ♡」

「では、あなたはこれからどうなりたいですか?」

「雌として成熟した暁にはっ♡ ミルドラース様のおちんぽで処女を奪っていただきっ♡ 子種を子宮に注ぎ込んでいただきたいですっ♡」

 

 淫語を繰り返し口にさせられるうち、それは心に染み込んで、レックス自身の願望へと変わっていった。

 あんなに嫌いだったミルドラースが仕えるべき最愛の主へと変わり、彼の前で微笑を浮かべ寵愛を乞うのが自分の務めだと思えるようになった。

 

 ミルドラースに敗北したのが八歳の頃。

 

 物心つくまでの期間も含めれば、男だった時間は、すでに宮殿へ来てからの期間と変わらない程度になっていて。

 両親や妹との思い出も、遠い記憶の彼方に押し込められて。

 夜毎の調教のお陰でレックスの身体は普通よりも早いスピードで成熟し、女性的なボディラインを形成していった。

 

「そろそろ、コレを使っても良い頃合いですね♡」

「ねえ、これはなにかしら? とてもいやらしいものなのはわかるのだけれど……♡」

「はい♡ これは特別製の触手でございます♡」

「あっ、んんんっ♡」

 

 レックスの身体に纏わりついた触手は下着の代わりをするように胸や秘所、アナルに吸い付き、中へと入り込んで刺激を始めた。

 

「これによりレックス様の身体をさらに淫らに、二十四時間開発し続けます♡」

「んっ、はぁっ♡ これ、が、ずっと続くのっ?♡」

「はい♡ おまんこに関しても、処女のまま拡張して、ミルドラース様のおちんぽを呑み込めるようにしてくれれますよ♡」

 

 触手の調教は激しく、レックスは何度も、宮殿の廊下を歩いている最中や食事中、勉強中に声を上げて絶頂することになった。

 特にミルドラースと一緒の時は、

 

「随分楽しそうではないか。どれ、私がもっと楽しませてやろう」

「ふあああっ!?♡ み、ミルドラース様、触手が、激しくぅっ♡」

「良いであろう? 関節的に我に嬲られる気分は?」

「はいっ、はいいっ♡ ミルドラース様の指で責められているみたいでっ、いくっ、いきますぅっっ♡♡」

 

 ミルドラースに魔力を送り込まれた触手に気絶するまで犯されたことも何度もあった。

 

 十五歳になる頃には、レックスの存在は魔界中に知られるようになって。

 宮殿に来た当初は「天空の勇者」「グランバニアの王子」として扱われていたのが、いつの間にか、

 

「ミルドラースの寵姫」

「黒雷の魔姫」

「殺戮の淫姫」

 

 もう、グランバニアの王子だった頃のことはほとんど思い出せなくなった。

 レックスは食事のたびにミルドラースへ祈りを捧げ、彼への感謝と愛を口にし、昼夜問わず彼に抱かれることを夢見て絶頂を繰り返した。

 

「レックスよ。お前の望みはなんだ?」

「はいっ♡ ミルドラース様のおちんぽで女にしていただき、ミルドラース様の子を孕み、育てることです♡」

 

 そうして、さらに数年の時が過ぎて──。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「おめでとうございます、レックス様♡ とうとうこの時がやってまいりましたね♡」

「ええ、ありがとう。あなたたちのお陰でわたしは、あの方に相応しい女になれたわ♡」

 

 十八歳となったレックスは完全に女として花開いていた。

 快活な少年だった面影はもはやほとんど残っていない。

 丁寧に整え続けた髪は腰までの長さとなり、胸はミルドラースの肉棒を象った張り型を奉仕して余りあるサイズに。

 白く滑らかな肌には艶が乗り、常時ゆるやかに発情する身体からは濃厚な雌のフェロモンが発散されている。

 

 弱肉強食の魔界の理に浸かった彼女の表情は淫蕩でありながらどこか怜悧。

 けれど、主を前にした時だけは甘く蕩けた顔を見せる。

 

 きゅっとくびれた腰に豊かな尻、肉感の強い太腿。

 この日、この時のために磨き抜いた身体は花の香りを纏っており、

 

「──ああ。まさかわたしが、ミルドラース様の花嫁になれるなんて♡」

 

 ミルドラースはある日、レックスを正式に妻として迎えると宣言した。

 今日これから行われるのは二人の結婚式。

 

「レックス様が努力なさった結果でございます♡」

「私たちもこの日をどれだけ待ちわびたことか♡」

 

 夢のような成り行きに胸がときめく。

 今日まで仕えてくれた、そしてこれからも支えてもらうことになる従者たちの手で、豪奢かつ露出度の高い最高級の、黒いウェディングドレスを纏い。

 爪には漆黒のマニキュア、黒のヒールを履き、鮮やかな色の口紅で飾る。

 装飾品にはすべて黒の宝石をあしらい、下着は主の興奮を誘うため乳首と秘所が露出するものを選んだ。

 

「ああ。女として、こんな幸せな日を迎えられるなんて♡」

 

 両親に感謝しなくては。

 

「あの日、ミルドラース様に敗れたことで、わたしはミルドラースの妻になることができたの♡」

 

 

 

 

 

 式には無数の魔族、魔物が詰めかけた。

 ホールには幹部クラスの者と新郎新婦の従者だけが入り、他の者たちは宮殿の外で待機。

 たとえ今日、宮殿を攻めて来る者がいたとしても──強大な手勢によって瞬く間に殲滅させられてしまうだろう。

 

 漆黒のヴェールを被ったレックスがバージンロードを歩くと、魔族と魔物から割れんばかりの拍手が送られる。

 魔界の王に人間が嫁ぐ──普通に考えれば反対されて当然だが、レックスの強さと美しさ、忠誠心がそうした声を黙らせた。

 

「……美しい。我が花嫁に相応しい。まさに魔界の花嫁よ」

「ありがとうございます、ミルドラース様♡ わたしのような者を妻に迎えてくださること、心より感謝いたします♡」

 

 彼の姿、声、におい。

 すべてが女としてのレックスを蕩けさせる。

 早く式を終えて処女を奪って欲しい──そんな衝動にかられながらも、女として最高の幸せに酔いしれる気持ちも同時にあって。

 

 レックスのヴェールを上げたミルドラースは、彼女の瞳を覗き込みながら告げた。

 

「その首輪はもはや必要あるまい」

 

 十年間、レックスの首を飾り付けた首輪が外れ──燃え尽きるようにして消滅する。

 代わりに差し出されたのは一つの指輪。

 夜よりも深い漆黒の宝石をはめ込まれたそれに、レックスの瞳は釘付けになる。

 

「其方にはこの『闇の指輪』と、新しい名前を贈ろう」

「名前、で、ございますか?♡」

「ああ。……リリス。これからはそう名乗るがよい。我が妻となったお前のための名だ」

「ああ。……ああ、リリス♡ それが、ミルドラース様のために生きるわたしの、新しい名前なのですね♡」

 

 魔族の神官がレックス──リリスに誓いの言葉を求める。

 

「新婦リリス。あなたは魔界の王ミルドラース様の妻となり、闇の祝福を受け、人間界を裏切り、生涯をかけて主に仕えることを誓いますか?」

「誓います♡」

「ミルドラース様に身も心も捧げ、魔族への進化に身を委ね、主の敵に情をかけないことを誓いますか?」

「誓います♡」

「ミルドラース様の子を孕み、育み、教育し、魔界の繁栄と栄光のために尽力することを誓いますか?」

「はい、誓います♡」

「──では、指輪の交換と誓いの口づけを」

 

 ミルドラースの指に闇の指輪を嵌めたリリスは、愛しい主に左手を差し出す。

 魔界の王はリリス用の闇の指輪を手にすると、小さく呟くように。

 

「これで、天空の勇者は我が花嫁に」

「……っ!?!?!?」

 

 刹那、リリス──否、レックスの脳裏に電撃が走った。

 

 

 

 

 

 思い出した。

 

 宮殿に捕らえられた頃──まだレックスが勇者であり、両親や妹への想いを忘れていなかった頃の意識が一気に蘇ってきた。

 十年間の記憶、嬲られ続けた日々に猛烈な嫌悪感を覚えながら、レックスは腕を引いた。

 そうして愛しい主──否、憎むべき敵を睨みつけて、

 

「僕は、お前の妻になんかならない! 残念だったな、ミルドラース!」

 

 奇跡だった。

 指輪を嵌められれば正式に儀式は完了し、レックスは完全に『魔界の花嫁リリス』となっていただろう。

 寸前、まさにギリギリで抗うことができたのは、奇跡と言うより他にない。

 

 突然の成り行きに騒然となる参列者たち。

 けれど、彼らの介入を阻むように漆黒の雷が床を打ち。

 

 ここでミルドラースを倒せばまだチャンスがある。

 約束通り両親が生きているのなら、彼らと共に再起を図り、残党を討ち滅ぼせばいい。

 女になろうが、身体が完全に調教されて尽くそうが、レックスは天空の勇者なのだから──。

 

 と、そこでようやくレックスは気付いた。

 

「……くく」

 

 ミルドラースが『嘲笑っている』。

 動揺するどころか実に楽しげに笑い声を響かせ、告げる。

 

「本当に、こんな奇跡があると思っているのか──リリス?」

 

 その言葉に強烈な悪寒を覚えながら、レックスは首を振って、

 

「なにを言う! わたしはミルドラース様の花嫁──違う! 僕は天空の──いいえ、わたしは黒雷のっ!?」

 

 蘇った『レックスの意思』が『十年分の忠誠と快楽』に屈服していく。

 一度は屈服させられた魂が、再び急速に塗り替えられて『本来あるべき姿』に戻っていく。

 唇を噛み、必死に理性を繋ぎ止めながらミルドラースを睨んで、

 

「保存されていたのだよ、お前の記憶が」

「っ!?」

「首輪に敢えて保存していたのだ。最後の瞬間、お前が悩み、苦しむ姿を見るために」

「なっ……!?」

 

 奇跡ではなかった。

 全ては仕組まれていたこと。

 思い出したとしても。思い直したとしても──刻み込まれた淫欲と忠誠に勝てはしないことを見越して。

 天空の勇者を完全に屈服させる、そのためだけに。

 

 反射的に身を離そうとするも、腕を掴まれて引き寄せられる。

 バイキルトを唱えている暇はない。

 肉感こそ強くなったものの、ミルドラースに抗うにはか弱すぎる身体は、むしろ愛する主人に触れられたことで過剰に反応。

 ぞくぞくとした快感に苛まれている間に指輪が近づいてくる。

 

「だめ、やめて。……やめてください、ミルドラース様♡」

 

 怖い。怖い嫌だやめろ僕を消さないでくれ。

 お願いしますミルドラース様、わたしを早くお嫁さんにしてください♡

 ちんぽ♡ ミルドラース様のおちんぽ♡ おちんぽ様はやくっ♡ 子宮にざーめん膣内射精してリリスを孕ませて♡

 

「あ……あはっ、あははっ♡」

 

 勇者の使命も家族への想いもすべて塗りつぶされていく。

 これが女なんだ。雌なんだ。

 ぜんぶ、愛する男性への想いには敵わない。

 そもそも、ミルドラースのために働いてきた自分に帰る場所なんてあるはずがなくて。

 

 指に『闇の指輪』がはめ込まれる。

 

 瞬間、男として生きていた時代のすべてがどうでもいいものに代わり、同時にミルドラースへの無限の愛が胸に溢れた。

 

「愛している、リリス。其方を永劫愛することを誓おう」

「ああっ、ミルドラース様♡ 勿体ないお言葉でございます♡ リリスは、あなた様のためならなんでもいたします♡ どうぞなんなりとお申し付けくださいませ♡」

 

 彼のために十年をかけた。

 レックスの──否、リリスの人生はもはやミルドラースのためのものと言って過言ではなく。

 割れんばかりの拍手の中、リリスは愛しい男にして唯一の主と誓いの口づけを交わし、正式に彼の花嫁となった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 ミルドラースに抱き上げられたリリスは、そのまま式場を後にして主の寝室へと運ばれた。

 

「あん……っ♡」

 

 望んでいたことではあるけれど、式が終わって早々、閨に運ばれるだなんて。

 人間の結婚式であればこうはいなかっただろう。

 魔界の合理性に胸をときめかせながら、磨き残しはないだろうかと心配を抱きながら、リリスは愛しい主を見上げた。

 

 ミルドラース様以上の男性などこの世に存在しない。

 

 レッスンの中で見た誰よりも逞しいおちんぽを持つミルドラース様。

 彼の寝床で幸福すぎるキスを交わし、一度目の絶頂を迎えて。

 

「くく。リリスよ、其方の魅力に私ももう我慢ならん」

 

 見せつけられた槍は、正確に象ったはずの張り型を上回っているようにも思えた。

 

「今夜は寝られると思うなよ」

「ああっ♡ はいっ♡ もちろんでございますっ♡ リリスを、あなたの妻をお好きなようにお使いくださいませっ♡ リリスを自由に抱き潰してくださいませっ♡」

 

 リリスは「自分以上にミルドラース様に相応しい女はいない♡」と自負しながら、彼のペニスにキスをした。

 処女ではあっても、その体は膣奥まですべて開発され尽くしている。

 歴戦の女魔族に教え込まれたフェラチオは瞬く間に主を射精に追い込み、リリスは初めて味わう濃厚な精液の味にうっとりした。

 

 強烈な雄臭を漂わせるミルドラース様のおちんぽ♡

 

 勢いに任せて汚してしまった口内を魔界の美酒で洗い流し、そのままキスされる。

 主のにおいにそれだけで絶頂が止まらなくなり、夢中で舌を動かして彼の責めに答える。

 露出した秘所はとうの昔にとろとろになっていて、ミルドラースの指が潜り込むとそれだけで失神レベルの快感が発生する。

 

「こんなに敏感では困るのではないか? なあ、リリス?」

「ふあっ、ああっ♡ 問題ございません……っ♡ わたしの、リリスの務めはミルドラース様のお相手ですのでっ♡」

「はははっ! そうか、ならばその天空の血、我に捧げるがいい」

「あああっ!♡ わたしは、自らの天空の血を、これほど誇らしく思ったことはございませんっ♡ こうしてミルドラース様にご寵愛いただき、妻となることができたのですからっ♡」

 

 魔に抗うべき天空の勇者はもはや完全に魔界の王に屈服していた。

 くぱ、と、自らの指で開かれた秘所──おまんこがミルドラースの極太ペニスを誘い、それを初めてでありながらしっかりと咥え込む。

 

「はああああんっっ!!♡♡ ミルドラース様っ♡ ミルドラース様ぁっ♡ 愛しておりますっ♡ どうかこのまま、リリスの身体をご利用くださいっ♡」

「言われずとも、今宵は其方を離すつもりはない。……気絶しても止めぬ故、そのつもりでいることだ」

 

 開始されたピストンは、今まで経験したどの責めよりも強烈で、幸せで、リリスは一突きごとに頭が真っ白になり、身体が快感でとろとろになるのを感じた。

 ミルドラースが一度射精する間に何度も何度も絶頂に達し、はしたない嬌声が寝室に大きく響き渡る。

 鏡に映された彼女の姿はどこまでもはしたなく、それでいて圧倒的に美しく見えた。

 

「射精すぞ、リリス!」

「はいっ♡ ミルドラース様のざーめん、リリスのおまんこにっ、はああっ、ふああああああぁぁんんっ!!♡♡」

 

 がくがくがくっ、と全身が震え、このまま死んでしまうのではないかと思えるような絶頂の中で、子宮に直接精液が叩きつけられる。

 子宮が震え、愛液が吹き出し、潮が止まらなくなる。

 それでもミルドラースは責めを止めなかった。

 リリスは頬を撫でられ、キスを与えられながらさらなるピストンを受け、意識のすべてをかき乱されながら絶頂を続けた。

 

 ベッドシーツに大きな恥ずかしい染みを作りながら、さらに何度も精液を注ぎ込まれて。

 はーっ♡ はーっ♡ と大きく息を吸い込みながら余韻を楽しんでいると、強引に四つん這いの体勢を取らされて。

 

「言ったであろう? 今宵は寝かさぬと」

「んああああっ!!♡ すごいっ♡ すごいですっ♡ ミルドラース様のおちんぽっ、何度射精してもぜんぜん……っ♡」

 

 人間の中にも夜通しセックス可能な者が僅かにいるらしいが──ミルドラースのそれはレベルが全く異なっていた。

 徹底した調教を受け、挿入されただけでおちんぽを締め付け射精させるように躾けられたリリスでさえ成すすべなく絶頂させられる激しさ。

 魔界一と言っていい大きさのペニスが容赦なくリリスを蹂躙し、絶頂している最中にさらに絶頂させられる。

 

 長い髪を振り乱し、言葉にならない声を絶えず発しながら本能のままに腰を振り、数え切れないくらいの射精を誘発して。

 

 顔も、髪も、背中も、胸も精液でどろどろになりながら、虚ろな目で窓の外を見やり──今が夜のどのあたりなのかもわからないまま、体位をあれこれと変えられて。

 騎乗位も、座位も、気分のままに命じられて。

 腰砕けになったところで立ちバックを命じられると、完全に雌と化した自身の姿を鏡で直視させられながら、抜かずの三発をさらに子宮へ注ぎ込まれた。

 

 どろどろになったおちんぽ様を口で清め、今度はアナルに挿入されて。

 お腹が破裂してしまうのではないかと思える量を注ぎ込まれて。

 

「好きっ♡ 好きですっ♡ 愛していますっ、ミルドラース様ぁ♡ どんなことでもリリスにお命じくださいっ♡ 必ず遂行いたしますっ♡」

「くくくっ。ならば、産みの両親を殺せと命じたらどうする?」

 

 リリスは、一瞬だけ間を置いてから答えた。

 

「ミルドラース様のご命令とあらば♡」

 

 それを聞いたミルドラースの責めはより一層激しくなり、リリスは幾度となく気絶させられ、その度に強烈な絶頂に呼び起こされた。

 人間の交わりの何夜、何十夜分もの絶頂と射精が一夜のうちに行われて。

 破瓜の血が精液と愛液で完全に薄められ、気にならないほど透明になってシーツを汚した。

 

 首に、頬に、乳房に、腹に。

 はっきりとしたキスマークが残され、リリスの全身は汚れていない場所がないほどにマーキングされた。

 初めて感じるミルドラース様の精臭が本能レベルでリリスの中に刻み込まれて。

 

 夜明けの後。

 息も絶え絶えに転がったリリスは、必死に呼吸を整えながら、夫にして主である男に言った。

 

「……わたし、まだ妊娠したくなくなってしまいました?♡」

「ほう、それは何故だ?」

「だって、妊娠したら、しばらく愛していただけなくなるでしょう?♡」

 

 自分の子供に嫉妬するような──男であれば絶対にしないような、蕩けきった雌の発想。

 低く笑ったミルドラースはリリスの頬を撫でると「案ずるな」と囁く。

 

「其方の肚はその程度で驚くほど柔ではあるまい。……それに、流れたらまた孕めば良い」

「あんっ♡ ……偉大なる魔界の王、ミルドラース様の御心のままに♡」

 

 淫らで退廃的なキスを主と交わすリリスの胎内では、早くも彼女と、ミルドラースとの──天空の血と魔族の血が早くも交わろうとしていた。

 そして──。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 十年後、廃墟と化したグランバニア城の玉座に、リリスはミルドラースを招き入れた。

 かろうじて残ったそこにミルドラースは鷹揚に腰掛けるとリリスにキスをする。

 うっとりとディープキスに応じたリリスは、たっぷりと数分をかけてから唇を離し、「いかがでしょうか?」と尋ねた。

 

「逆らう者は皆殺し。残存兵力は僅かで、それも配下によって直に殲滅されます。女は捕らえ、男は無抵抗でも皆殺しに。グランバニアはもはや地図上から消滅したと言って過言ではありません♡」

「くくくっ、そうか。……して、グランバニアの王族は?」

「前王と王妃は殺しました。女王は眼の前で王配を処分した後、念のため気絶させてありますが……お使いになられますか?♡」

「いや。既に出産も済ませていたのであろう? 好きに処分して構わぬ」

 

 リリスは、その答えに心底からの笑みを浮かべた。

 

「良かった♡ ……ミルドラース様にはあのような出来損ないの端女は必要ございません。むしろ、幼いグランバニア王女のほうがお役に立てるかと」

「はははっ! 実の妹に対してその態度、実に良いぞ、リリスよ」

 

 こうして、妹王女が夫との間に産んだ新たな王女は、ミルドラースの元で養育されることになった。

 幼少期から魔族として教育すれば、きっとリリス同様、ミルドラースの役に立つことだろう。

 

 至福の笑みを浮かべるリリス。

 

 大国ラインハットは最初に落とし、最も抵抗の激しかったグランバニアもここに陥落した。

 地上はミルドラースの手に落ち、闘争は彼女らの勝利に終わった。

 

「ああ、あの子にもご褒美をあげなければなりませんね♡」

 

 そこへ、ちょうど『彼』が現れた。

 リリスとミルドラースの間に生まれた第一子。天空の血を引く魔王子は、母譲りの美貌に冷たい笑みを浮かべて二人の前に立った。

 

「せっかくだ。崩壊したグランバニアの景色を一通り見て回るとしようか」

「はい、ミルドラース様♡」

「はい、父上、母上」

 

 そして──『魔王妃』リリスの名はその子供たちの功績と共に魔界の歴史に深く刻まれることになる。

 また、彼女自身もミルドラースの力によって魔族となり、長い時を生き。

 主の寵愛を受けながらもその力を存分に振るい、人間たちを恐怖に陥れたその活躍から、魔界の女たちの理想として深くことに。

 

 魔界の王、ミルドラースの傍に侍るリリスは常に、蕩けるような至福の笑みを浮かべていたという。


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