私こと大倉七桜は見てしまった。
先輩をヒモ彼女から助けると言う大義名文のために先輩の後を尾行した私は、可愛い可愛い純彩先輩とその先輩より少し背が高く容姿の整った灰色の髪を持つ女性がラブホテルの自動ドアの奥に消えていくのを。
その事実に私は大いに驚いた。
それは純彩先輩が先日同様ラブホテルに入っていったからではなく、その時の日本人離れした顔を持った女性とはまた違う雰囲気を持った女の人とラブホテルに入っていったからだ。
(どしてどうして、なんで?....わからない...わからない)
私はすぐに近くの物陰に身を隠し、今見た光景のせいで真っ白になった頭の中に返答の帰ってこない問を何度も繰り返し問い続けた。
しばらく物陰で少し乱れた息を整え、少しばかし落ち着いたのを確認してからフラフラとした足取りで帰路に就いた。
(先輩はどうしてこの前とはまた別の人とホテルに?)
先輩と同居状態にある私の家に帰ってきた今でもその疑問はなくなるどころか増していった。
そんな中私は目の前にあったタブレットを手に取り「女性同士 ラブホ」というキーワードを検索にかけた。
すると端末には女子会やお泊り会などの私が想像していた内容より健全なものが載っていた。
それを見て私が見当違いなことを想像してしまっていたことに恥ずかしさがこみあげ赤らめた顔をクッションに埋め、足をバタつかせた。
(あ~~~~、私は純彩先輩でなんてことを~~~~~)
足を動かしていたからか恥ずかしさが引いてきた私は足を止め、クッションに埋めていた顔を横にした。
(...じゃあこの前の日本人離れした女の人も友人?なら先輩が金欠になったのは何んで?)
そんなことをふと思うと純彩先輩がなぜ金欠になっていたのが気になって仕方がなかった。
(純彩先輩にヒモ彼女はいない?ならお金がなんで無くなるの?...もしかして)
私は思い立ち近くに置いていたタブレットをすぐさま手に取り上体を起こすと、再度検索バーに色々な単語を投入し検索を開始した。
女性のイラストや大人のおもちゃなどが検索結果に出る中、私はついに私の求める答えが乗っているサイトを見つけた。
女性間風俗の予約サイトだ。
(あった、純彩先輩はおそらくレズ風俗に...)
そう頭の中で解答を出そうとしたとき、私の部屋の扉が開いた。
「入るよー、七桜ちゃーん」
私はその声に驚き端末を軽く投げてしまった、幸い端末は膝に落ちたため画面が割れることもなかった。
「わぁ...お、驚かせちゃったかな?ノックはしたんだけど反応なかったから...」
部屋に入ってきたのは純彩先輩だった。
「い、いえ、だ、大丈夫です、そ、その...しょ、小説を読んでいて気づきませんでした」
私は膝に落ちた端末をすぐさま手元に回収し、心配してくれた先輩にちぐはぐになりながら嘘をついた。
そんなことを露知らず、純彩先輩は家を出た時とは違う匂いを漂わせながら私が読んでいたと発言した小説についての詳細を聞いてきた。
小説の詳細を話している間私は何度も女性間風俗という単語を喉に詰まらせ吐き出せないままでいた。
(聞けない、レズ風俗に通ってるですか、なんて...)
その後は純彩先輩と遊ぶ約束をして先輩が自室に帰るのを見送ってから床に就き悩んでいるうちに眠りについていた。
次の日私は頭を抱えた状態で朝を迎えた。
閉じようとする目をこじ開けながら洗面所に向かった。
「あ、七桜ちゃんおはよう」
「おはようございます、純彩先輩」
洗面所には掃除をしている純彩先輩がいた。
小動物のようにかわいい先輩がせっせと仕事をしている姿から目が離せない。
「どうしたの、七桜ちゃん」
そんな私に先輩は向き直り、高く優しい声で私の様子を確認した。
「な、何でもありません、起き抜けで少しボーとしてしまっただけで...」
「そうなんだ、朝ごはんもう出来てるから一緒に食べよ」
「あ、はい、顔を洗ったらすぐに」
「じゃあパン焼くね、マーガリンだけでいい?」
「はい、いつもと同じようにお願いします」
「じゃあ準備してくるね」
純彩先輩はそう言うと手早く作業を終わらせ、道具を片付けると洗面所から出て行ってしまった。
私はそれを目で追った後顔を洗い、食卓に向かった。
食卓に着くと台所の方から高く優しい声がした。
「もう少しで焼けるよ」
テーブルの方を見るとすでにコーンスープとサラダが置かれていた。
私はテレビから見て右側にある椅子に座りパンが焼けるのを待った。
するとすぐに焼けたパンを乗せた二つのお皿を持った、純彩先輩が台所から現れた。
「お待たせしましたー、はい七桜ちゃん」
「ありがとうございます、純彩先輩」
そう言葉を交わし、先輩はコーンスープとサラダの間に皿を置き、反対側の席に着いた。
先輩と私は手を合わせた後朝食に手を付け始めた。
しばらくたわいない話をしながら朝食を食べ続けた。
「今日は出かけるんだよね、七桜ちゃん」
私がパンとサラダを食べ終え、残ったコーンスープを飲んでいると先輩が今日のスケジュールを聞いてきた。
「はい、祖母の様子を見に施設へ」
「じゃあ布団を干したいから部屋の前に出しといてもらえる?」
「わかりました、出かける前に出しときますね」
そう言い終わると私はコーンスープを飲み干してカップを先輩に預け出かける準備をし、布団を部屋から出した。
「純彩先輩、私そろそろ行きますね」
「行ってらしゃい、家は私がピカピカにしとくね」
「お任せします、純彩先輩」
玄関でもう一度同じようなことを繰り返した後私はドアを開け外へ出た。
私は外に呼んでいたタクシーに乗り込んだ、施設までの道のりはそう遠くなく10分ほどで施設に着いた。
「大倉○○の孫です、面会に来ました」
受付にいた係員にそう声を掛け、施設の中へ入っていった。
係の人に案内してもらい祖母の部屋へと足を運んだ。
「おばあちゃん、来たよ」
「いらっしゃい、七桜ちゃん」
部屋の扉を開けるとベットの上で本を読んでいる祖母の姿があった。
言葉を交わした後、私はベットの近くにある椅子に腰かけた。
そして祖母の長い長ーい話が始まった、施設での生活の話から始まり、今読んでいる小説の話や好きな芸能人の話などを30分ほど続けた。
「七桜ちゃん最近学校の方はどうなんだい?」
「楽しいよ、友達もできたし、趣味の合う先輩もいるんだ」
話の途中でいきなり私生活のことを聞かれ、私は少し虚を付かれたがすぐさま笑顔を作りそう返した。
「...先輩ていうのはお手伝いさんとして来てくれた子のことだね」
「うん、そうだよ」
「...七桜ちゃん何かあったの?」
祖母の言葉に再度虚を突かれた私は体を後方に身じろいでしまった。
「やっぱり何かあったんだね」
「なんで...わかったの?」
「私はあなたのおばあちゃんなのよ、わかるにきまってるじゃない、それで何があったの?」
祖母は私に心配ないよと言わんばかりに優しい声で事情を聴いてきた。
「実は...私...先輩のことが...」
私の言葉はそこで止まってしまった。
「好きなのね、七桜ちゃん」
しかしそれに続く言葉を祖母はスラリと口にした。
私は驚きながらも顔を赤くし、祖母の言葉を頷くことで肯定した。
「大丈夫よ七桜ちゃん誰にも言わないから」
祖母はフフフと笑いながらも真剣な面持ちだった。
「それでその先輩はどんな子なのかしら?」
そう聞かれた私は恥ずかしがりながらも先輩の特徴を話した。
「純彩先輩は優しくて、私より一回り小さくて、可愛くて、一生懸命で、笑顔が天使のように可愛くて、いい匂いがして、頑張り屋さんで、とにかくすごくすごーくかわいい先輩なんです」
私のその言葉を聞き目を大きく見開いた後祖母は近くにあった鞄を手に取り、何かを探し始めた。
「おばあちゃん?」
なにかを探していた祖母の手が止まり鞄から手を出すと、その手には何かの鍵があった。
「七桜ちゃん、はいこれ」
「おばあちゃんこれは?」
「私の部屋にある地下の入り口の鍵よ」
「え、地下なんてあったの」
「ええ、ベットの下に入り口があるから来たるときが来たら入るといいわ」
私は祖母の言っている意味が分からず首を傾げた。
「来たるときって?」
「そうねー、今は開けちゃダメってこと」
私はその言葉に再度首を傾げた。
そんな私を見て祖母は口元を隠し、声を出して笑った。