許可は得た。
であればまずはキスからするのが普通だろう。
今まで見てきたサヤの中で、一番赤面した顔に近付くが……。
「ちょ、待って!」
手を伸ばしたサヤに顔を押しのけられて止められた。
「おい」
「キ、キスってさ、目……閉じた方がいいの? 閉じるのが、一般常識なわけ?」
「知らねえよ。好きにしろ」
「え、あっ、ま……」
これはおそらく、何かしら理由を付けて先伸ばそうとしているのだろう。
夜斗はそう思ったので強引に顔を近付けキスをする。
固い唇に固まったサヤの身体。
目を大きく見開いたまま固まる姿は、興奮も安らぎも得られない、一種のホラーにも似た感じだ。
「……お前、やっぱ目を閉じろ」
「わ、わかった」
今度は目を閉じさせるが、強く目蓋を閉じ過ぎているのか、長いまつ毛が震えるのは可愛いとは言えない。
残念キス顔だなと。
そんなサヤを見て笑うと、彼女は自分が笑われていると自覚して頬を膨らませる。
「ちょっと、なんで笑ってんのさ」
「いいや、なんとなく面白くて」
「何が面白いのさ。こっちは真剣にやってんのに。あと、息継ぎできないから五秒以上は無理だから」
「息継ぎ?」
「そう、息継ぎ」
「口を開ければいいだろ」
「開けたら、よだれ垂れるじゃん。口のどっかから」
マジで無知なんだな。
夜斗はそう思ったが、口にしたら怒って、もしかしたら「もう止めた!」とか言われるかもしれないので言わないでおいた。
「こっち来い」
「え、あっ、ちょ……」
ソファーに座り、その上にサヤを座らせる。
背中を向けたまま抱きしめ、顔をこちらに向かせる。
「口、開けろ」
「やだ、よだれ出る」
「大丈夫だから」
「……わかった」
再び唇を重ねる。
「ん、ちゅ……焼肉、臭い」
そういうことはあえて気を使って言わないようにだな……。
というのは、夜斗とサヤの間には不要な気遣いかもしれない。
それに雰囲気なんて、最初から繕う必要はない。
「んー、臭い」
「うるせえ。舌、出せ」
「……マジ?」
「まじ。早く」
「うぅ」
恐る恐るといった感じに伸ばした舌を絡める。
唇と同じぐらい硬い舌だが、絡めれば多少は和らぐ。
「んっ、はあ……変な、感じ」
と、言うが止めたいとは言わない。
意外にもキスという行為は悪くないのか。
だが、
「息、できない!」
逃げられた。
はあ、はあ、はあ、と大きく深呼吸するサヤを見て、夜斗は大きくため息をつく。
「前にさ、お前にエセ不良だとか言われたけど……お前の方がエセだよな。エセギャル」
「別に自分からギャルだって名乗ったことないけど。それにギャルがみんなこういう経験あると思うな、こっちは高校一年生だぞ。ってか、お前って言うな」
「はいはい。で、キスの感想は?」
「うわ、なんか今の言い方すっごいキモい。『俺が教えたキスの感想言ってみろよ。ん? ん?』って」
「そんな言い方してねえだろ」
「まあ、キスってこんな感じなんだって感じ……口付けて、舌ちょろちょろされて、変な感じ。あと、にんにく臭い」
「止めるか?」
そう聞くが、サヤは考える間もなく首を左右に振る。
「別に嫌じゃないって言ってるでしょ。ただ、顔をこう……後ろに向けるのは首が痛いから」
と、夜斗に背中を向けて座っていたサヤは振り返り跨る。
ショートパンツのジーンズ生地が擦れ、サヤは恥ずかしそうに顔を赤くさせた。
「あー、うん。なんかこの体勢の方が恥ずかしいかも」
「お互いのあそこが当たるしな」
「うるさい、そういうの言わなくていいから……」
いつも澄ました感じのサヤが赤面して目を泳がすのは見ていて楽しかった。
そして向かい合って座るようになって、はっきりとサヤの大きな胸に視界が向いた。
「そういえば、触っていいんだったよな」
「……え、あっ……えっと」
「最初の約束だもんな。まさか、駄目とか言わないよな?」
笑いながら聞くと、サヤは何か言いたそうに唇を震わせたが諦めた。
体を仰け反らせて、大きな胸を強調する。
「ど、どうぞ!」
「なんかやけくそだな。もう少し可愛げとか雰囲気ってのを……」
「最初からないでしょ、あたしたちに。雰囲気を大事にしたいなら、こうなる前に歯磨きしておいで」
「まあ、そうだな。じゃあ」
「ん」
豊満な胸に両手を触れる。
下から揉み上げると、ブラジャーの硬さはあるものの重量感がはっきりと伝わる。
「ん……ふぅ、ぁ……」
口もとに手を当てたサヤが微かに声を漏らしながら、潤んだ瞳が夜斗を見つめる。
「やっぱ大きいな」
「言い方、きもい」
「胸を触って出た最初の感想なんて、誰だってこんなもんだろ」
触れるだけだった胸は、次第と激しく形を変えるぐらいに揉みしだかれた。
サヤは先程よりも大きく甘い声を漏らす。
痛い、だとか、強すぎ、だとか言われるかと思ったがサヤはされるがまま。
そして夜斗に跨った体が小刻みに前後に揺れる。
そうなると何処が刺激されるかなんて言わなくてもはっきりしている。
「……んっ!」
屹立したそれがサヤの敏感な部分を刺激する。
自然か、それとも意図的か。
サヤの体の揺れは激しく──お互いの敏感な部分を重点的に擦れ合わせようにしている気がした。
「あっ、んん……ま、待って、もう、触るのダメ、禁止!」
「あ? まだ少ししかしてないだろ。それとも、気持ち良くておかしくなりそうだから駄目なのか?」
「ん、はぁ……おかしくなるとか、じゃ……ないから……た、ただ、その」
どんなにツンツンしても、サヤが感じているのは見て明らかだった。
夜斗は弱々しく震える彼女を見て、笑みを浮かべながら唇を奪う。