同級生とのお風呂。
しかも美少女二人に、場所はラブホのお風呂。
人生でこんな経験をした男子高校生はどれだけいるだろうか。
もし誰かに「どうだった?」と感想を聞かれれば、夜斗は考える間もなくすぐ答えるだろう。
──拷問だったと。
「ちょっとヨルっち、変なとこ触んないでよ?」
「夜斗くん、サヤちゃんはダメらしいけどわたしはいいからね。お触り♡」
「こらっ、雨奈! いかがわしい言い方しないの!」
夜斗の両隣を占拠するサヤと雨奈。
水着姿とはいえ、お湯の中だと着ているのか裸なのかはよくわからない。
そもそもジャグジーの泡でモザイクのようになっている。
むしろいかがわしい感じに見え、男としてはこっちの方がよっぽど不健全だ。
そんな不健全な混浴だというのに、何もしてはいけない、お預けというのは……天国よりも地獄、拷問と例える方が正しい。
「飲み物とか持ってくれば良かった」
顔の表面に浮き出た汗をタオルで拭うサヤ。
夜斗の腕をギュッと掴んだ彼女は長風呂する気なのだろうか。
「もう出るか?」
「んー、もうちょい。ヨルっちは限界?」
「いや、別に」
じゃあもう少しだけ。
サヤは夜斗の肩に頭を乗せ目を閉じる。
先程までの恥じらいが嘘のような密着度。
これなら少しぐらい、と夜斗が彼女の身体を触ろうとすると「こら!」と手をはたかれる。
駄目ならあんまり刺激しないでくれと、夜斗は思う。
「──ッ!?」
そんな時だった。
ふと、夜斗の太股に手が置かれた。
ただジャグジーの泡で手は見えない。
熱さと泡の勢いで脚の感覚も鈍って、どっちの手か判断できない。
そんな手は、ゆっくりと夜斗の下半身へと移動する。
「おい」
「ん、どしたのヨルっち?」
「どうかしたの、夜斗くん?」
二人ともが不思議そうに首を傾げる。
「いや、別に……」
太股を撫でていた手が、ゆっくりと移動して、水着の中へ潜り込む。
逆手で持たれた肉棒は既に半分ほど力が入っており、誰かわからない彼女の手で触られると完全な状態になる。
挑発しただけ、ここで終わり。
そんなことにはなるなと思っていると、謎の手は、逆手で握ったまま扱き始めた。
「ん……」
小さく声を漏らす。
「どったの、ヨルっち?」
肩に頭を乗せたサヤが不思議そうに見つめる。
「大丈夫? もしかして、熱くてのぼせたの?」
雨奈が優しく微笑んだまま首を傾げる。
どちらも怪しい素振りは見せない。
だが、夜斗を悦ばせる手は動きを続け、更に激しくする。
「そういえばさあ──」
ただ、触り方だけでどちらなのかは予想できた。
そんな彼女は気付かれているとも知らず、楽しそうに混浴風呂を楽しんでいた。
それから数十分。
「そろそろギブー。上がろっかな」
「そうだね。熱いのもあるけど、少し眠たくなっちゃった」
サヤが先に湯船から出て、雨奈も出ようとする。
「おい」
雨奈を呼び止めると、彼女は振り返り唇に人差し指を当てる。
「サヤちゃんには、内緒だよ……?」
「お前なあ……」
「ふふ、だって夜斗くん辛そうだったから。それにあのままだと寝れないでしょ?」
やっぱり犯人は雨奈だったか。
いや、あんなことをするのは雨奈しかいないが。
「でも、ジャグジー付きのお風呂で良かったね。お陰でサヤちゃんにバレなかった」
「そうだな」
「泡の中でわたしたちが何をしてたかも、泡の中で……夜斗くんが声を押し殺しながら果てちゃったことも」
くすくすと小悪魔のように笑みを浮かべる雨奈。
まるで夜斗のことを誘うような仕草に、やっぱり拷問だと、夜斗はため息をつく。
♦
──次の日の朝。
丸いベッドで横になり、美少女に挟まれ目を覚ます。
雨奈の優しさのお陰で昨夜は思った以上にぐっすり眠れた。
もし彼女の優しさを受けなかったら、おそらく寝るまで拷問が続いていたのだろう。
「寝相、悪すぎだろ……」
夜斗の腕にしがみついて寝ていたサヤだったが、夜斗が目を覚ますと頭と足の位置が真逆になっていた。
もしかしたら寝ている間に何度か顔を蹴られていたかもしれない。
「どうするか、二度寝するか」
目覚ましよりも二時間早く起きてしまった。
外はようやく太陽が昇り始めた頃といったところだが、厚いカーテンのお陰で部屋の中は薄暗い。
二度寝するにはいい時間だが、あまり眠気はない。
「……おはよ、夜斗くん」
どうするか考えていると、耳元で囁かれた。
「悪い、起こしたか」
「ううん、大丈夫。それより夜斗くんって早起きさんなんだね」
「いや、なんか目が覚めちまった感じだな」
寝返りをうち、雨奈の方を見る。
サヤもそうだが、雨奈は普段からあまり化粧をしないので、寝起きでもその可愛さは変わらない。
大きな目が夜斗をジッと見つめ、目が合うとにっこりと微笑む。
「なんかいいね、こういうの」
「こういうの?」
「一緒に目が覚めて、その日初めて見るのが夜斗くんの顔。なんかいい」
「なんだそれ」
「えへへ。それにいつもの夜斗くんとなんか少し違う感じがする。目が細い?」
「寝起きだからな」
サヤを起こさないようにお互い小声で会話をする。
こんな他愛もない会話からも、心の底から嬉しいという雨奈の気持ちが伝わってくる。
「そういえば夜斗くん、苦しくない?」
「何がだ?」
「エッチな気分なの我慢してない?」
「お前、俺が一日も我慢できない男だと思っていないか?」
「違うの?」
「はあ……。平気だ、別に」
そう答えると、雨奈は「ふぅん」と少し不満そうな声を漏らす。
「もしかして、わたしが寝てる間にサヤちゃんとしたの……?」
「なんでそうなるんだよ」
「サヤちゃんとしたから平気なのかなって」
「最初に寝たのがサヤで、あの寝相のサヤが夜中に起きると思うか?」
サヤは今も気持ちよさそうに寝息をたてている。
「じゃあ、なんで平気なの?」
「俺にだって自制心ぐらいある」
「そっか。でも今は……その自制心いらないんじゃないかな」
そう言った雨奈は夜斗の耳に唇を触れる。
「ねえねえ、お風呂場、行こっ……?」
「……」
「お願い。声、我慢するから。サヤちゃんと夜中に抜け出してないなら、できるよね?」
サヤは寝ている。
本来の目を覚ます時間まで余裕もある。
何より我慢しているのは確かだ。
この囁く誘惑に断る理由はなかった。
「我慢できないくせに何言ってんだよ」
「じゃあ、夜斗くんが手で口を抑えていいよ。あっ、でもそれだと余計に声が出ちゃうかも」
「変態だな」
「お揃いだね、えへへ。……行こっ、夜斗くん」
音を出さないように二人は風呂場へ向かう。