赤い宝石の首飾りをした科学者に追いかけられる夢です。なんか隣にでっかいトカゲが居ました。滅茶苦茶怖かったです。
途中から全身に刺青した逞しい男が参加したりとてんやわんやでした。アレは一体何だったのか、ネタまみれな自分でも皆目見当が付きません。教えてエロい人!
前回のあらすじ
☆誰でもわかる主人公の勢力講座☆
主人公「はい、本日の講義はここまで。何か質問はあるかね?」
まり「はい先生!お腹が空きました!」
主人公「食堂のシェンフーさんが今作ってるから待っていなさい」
「………」
結論からして対魔忍本部との連絡を行う目途はたつことができた。だが、男の表情は少々微妙である。というのも―――
「おいしいでふぅ~」
「そうですね先輩~」
―――その連絡の要たる篠原まりが食事をしているからである。ついでに桃子も一緒に………。いや、それは良いのだ。
しかし考えてみてほしい。篠原まりがいる場所はブラック率いる魔族と敵対しているとはいえ、曲がりなりにも魔族が拠点とする場所である。桃子は良いが、二人そろってだらしなく頬を緩めて食事をしている姿は、敵のど真ん中にいる対魔忍とは思えない。
「ある意味大物だな」
「マ、マイペースというか、図太い方ですね」
「うむ」
男とシェンフーは隣り合わせでソファに座りながら言う。
あの時篠原まりが食事を作ってほしいと言ってきたときは、一瞬頭が真っ白になった。男と同等の時を生きてきたシェンフーですら今でも顔を引き攣らせていた。そうそうあることではないだろう。
「………」
頬杖をついてシェンフーの作った食事を一心不乱に食べている彼女らの姿を見ながら、男は溶けるような小さな溜息を吐く。
「ご主人様。あまり溜息を吐きすぎると幸せが逃げてしまいます」
「この程度で逃げるような幸せならいらぬ」
「左様でございますか」
「………一つ問うがシェンフー」
「何でしょうか?」
「山本信繁はこの俺の話に乗ると思うか?」
「場合にもよりますが、今のままでは無理かと」
「ふむ、それで?」
「彼は中々に策士です。リアリストであり、ご主人様の渡す情報が真実と分かるまでは頷くことすらしないかと思われます」
「ほう、そうかそうか」
「どうなさるので?」
「いや、このままで善い」
男の口元にはいつもの不敵な笑み。彼はシェンフーの言葉に気に障った様子は無い。むしろその逆。彼女の迷いない言葉に、男はシェンフーにそこまで言わせる山本に対しての評価を上方へと修正した。
「ご主人様、あまりお戯れをなさるのもいかがなものかと具申します」
「何故だ?」
「既に情報を送るようティアに命令しなさっているのでしょう?」
「人聞きの悪いことを言うな。話を円滑に進めるための布石だ」
「あの魔女すら利用してですか?」
「クク、相変わらずアンネローゼが嫌いなのだな」
「ええ、嫌いですとも。あんなにご主人様に想われて、優しく抱かれるなど。魔女如きが生意気な」
「許せ。必要なことだった」
「ふ~ん。どうだか」
私、嫉妬してます。と頬を膨らませてソッポを向くシェンフー。その艶やかな唇も、今となっては拗ねた子供のように可愛らしく尖っている。そんな素直な意思表示に男は再び笑みを零した。
「愛いやつよ。少し近う寄れ」
「………」
その手には乗りません。と未だ顔をそらしてツーンと男に素気ない態度をとる彼女に、男はやれやれ、と小さく頭を振る。彼女と閨を共にしたのはつい最近だが、こうまで強欲なら額に接吻をするだけでは物足りないのも道理。
「シェンフー」
「………っ」
男は強者としての覇気を意図的に抑え、ただ一人の男として優しくシェンフーに語りかける。彼女の意に反して肩が僅かに揺れた。
「シェンフー」
もう一度男は彼女の名前を囁く、耳元で、恋人への愛を謡うソレのように。シェンフーの両手が何かを耐えるようにきゅぅ、と握られる。その頬は集まる血液によってピンクへと染まり、こぅん、と吐きだされる吐息には甘さをもたらす。
「なぁ………シェンフー」
三度、艶めかしく囁かれた声が、彼女の身体にゾゾゾと甘い痺れを駆け巡らせた。鼻腔を擽る男の雄は天華が嗅いだ時とは比べものにならない。
「………はぃ」
悠久とも呼べるほど長く齢を重ねて尚、男の全ては彼女を高ぶらせ滾らせるモノに満ち満ちていた。男は肩に手を置く。
「っ!」
「今宵は開けておけ。良いな?」
「――――――ぎょい」
「「ご馳走様でした!」」
シェンフーが頷くのと、桃子達が食事を終えるのはほぼ同時。彼女が仮面をかぶっていたことが幸いだった。もし素顔のままであったならば、そこには男を魅了させる淫魔でさえ息を呑むほどに淫靡な発情した顔が見られるかもしれなかったからだ。
「ぉ、お粗末様でした。直ぐに下げましょう」
そんなことなど露程も知らない二人を前にしている背徳感は、それがスパイスとなってシェンフーの心を淫らに満たしていくのだった。
◆◆◆
同時刻 東京 某所
「………」
とある役所。そこに彼、山本信繁はいた。髭を蓄えたその風貌と見た目の年齢からして、初老を迎えたばかりだと見受けられる。いつも凛々しくあるその顔は厳格な表情で固定されている。政治家として長年のキャリアを積み重ねてきた彼は、日ごろからこの国の行先を憂いでいた。
金と欲に目がくらんだ高官。魔族の存在に未だ半信半疑でいるものや、その力で己の地位を確かなものにしようとする小賢しい政治家。着々と魔族による侵略が水平面で行われている。それが今の日本政府だ。
ブラックの存在はもはや無視できないレベルまで達しておりながら、少ない予算、他国や民間からの信用が脳裏をちらつかせるせいでただでさえ重い腰は、まるで岩を抱かせられているかのように微動だにしない。
そんな彼らが動き出すのを、指をくわえて待っていられるほど山本は余裕のある人間ではない。既に我々は後手に回っている。一刻も早く対応しなければならない。
「………」
そのために彼は、独自の情報網で魔族と対抗しうる組織とのパイプを誰よりも早く構築させることから始めた。
歴史の闇に身を置き、対魔族の武器を研ぎ、日夜研鑽を積んできた対魔忍。ただの利害の一致であろうと何だろうと、彼らと確固たる協力関係を得られた事実は彼にとって幸いと呼べた。
だが、それに喜び、安心したわけではない。ひとまず対抗しうる戦力を持てただけだ。その戦力も無限ではなく、援助するためのスポンサーとバックアップできる大きな組織が必要となる。当然スポンサーとバックアップには日本政府が不可欠だ。
いずれは、日本政府に対魔忍の存在を認めさせ、それらの協力体制を自分が整える。それを行えるだけの準備にはまだ時間はかかるが、己の人生を賭けて行う覚悟は既にあった。
「………」
山本の視線は背後にあるデスク、その上にある二つの黒い箱へと向けられる。つい数日前の話だ。自分に向けられた二つの箱。片方には酒の入った一升瓶。薬物の検出は一切なく、無害そのもの。もう片方は何処にでもあるようなフラッシュメモリーと綺麗に折りたたまれた小さな紙。どれも、誰からのモノだったのか名義は不明だった。紙面には〝九十九”という謎の三文字しかなかった。
渡された酒には、警戒の為に一回も口を着けていない。だが、次に調べたフラッシュメモリーには驚かされることとなった。それは日本政府に所属する一部の議員たちが行った不正の数々が記されたデータだ。山本が読み進めていった資料の最後には、送り主が書いたであろうメッセージがあった。
“渡したデータはほんの一部だ。いずれ相見えよう”
「………」
アレがなんのために、誰が何を意図して送ったのかは分からない。だが確信はしていた。
我々の知らない誰かが、水面下で動いていることを。すぐに斥候を使い様々な裏組織の情報を収集させたが、思い当たる節は存在しなかった。
送られた酒は友好のあかしか、それとも何か隠れたメッセージなのか。ドツボに嵌る前に、山本はそこで思考を止める。
この混沌とした時代に、もし救いの神がいたとするのならば、このきっかけは戯れだったのか、それとも運命だったのか。普段なら決して思わないようなことだが、知らず知らず心労を溜め込んでいたのかもしれない。
「山本様、連絡が入っております」
「誰からだ?」
「行方不明になっていた篠原まりからです。大至急山本様と連絡を取りたいとのことです」
彼の者との出会いはある意味で幸運だったのだろう。
「………分かった」
山本はその大至急とやらを聞くために通信用のディスプレイを開くのだった。
◆◆◆
『私だ』
「お久しぶりです。司令」
『大至急とのことだが、最近まで行方不明だったことについては、何か申し開きはあるか?』
「申し訳ありません。敵に捕らわれ、連絡ができない状況が続いていました。敵はアミダハラの魔術師連合の敵対組織でした。特に我々と敵対するわけではなかった模様です。捕えられはしましたが、現地の住民に助けてもらい、こうして連絡ができる状態になった次第です」
『なるほど、無事で何よりだ。報告ご苦労。それで、大至急の話とやらはなんだ?』
「そこからは俺が話そう。山本信繁」
「あっ!ちょ、ちょっと!」
割り込むようにして男が彼女の前に出る。
『!………貴様は………』
「初めましてと言うべきか、それとも久しぶりと言うべきか?俺の名はツクモと言う」
『ツクモ………………魔族が私に何の用だ?』
山本の視線が鋭く男を射抜く。
「ほう………良い目をしている」
視線の答えは愉悦。唇の端を吊り上げ、魔族のように邪悪な笑みを隠そうともしなかった。
『さっさと本題に入ってほしい。私も時間が押しているのでな』
強気な態度を保ちながらも、山本は男、ツクモの顔に見覚えがあった。自身が命令した斥候が集めた情報の中に、この男の存在が最も不可解だったから覚えていたのだ。
「逸るな逸るな。なに、貴様の思惑に一枚噛んでやろうと思ってな」
『数日前から私にチョッカイを掛けたのもそのためか?』
「ハハ!もう気付いたか。うむ、その通りだ。酒はどうだった?」
『名義不明のモノを呑むはずがなかろう』
「ハハ……それもそうだな」
「あ、ご主人様、地味にショック受けてる。そういえば送ったものって自信作でしたね」
シェンフーの声なんて聞こえない。
「ほんとだ。なんだか背中が煤けてます」
桃子、シャラップ。
『………続けてもらって良いかね?』
「うむ。確認だが、フラッシュメモリーの中身は見たか?」
『ああ。裏付けもした。どうやらすべて本物のようだな』
「それは重畳。ならば我々の情報網が広くかなり深いところまで根付いていることは分かっただろう?俺と協力関係を結べば、たちまち腐った議員共を丸裸にすることが出来る。貴様のやりたいことへの後押しにもなるだろう」
『君は………我々に何を求めるのかね?』
「ブラックの死だ」
『!』
単刀直入な男の言葉。山本の僅かな心の動きにも、目聡く男は察知する。彼は続けた。
「理由は単純明快。個人的な怨みがあるだけだ。奴が倒れてくれたらそれでいい。そのためだったら協力は惜しまん。人材の派遣、資金の調達、武器の製造方法の用意が此方にある。勿論、いたずらに貴様らを引っ掻き回すつもりはない。俺たちの存在はお前一人だけが知っていればそれで十分」
『………信用ならんな。それだけの準備をして、ブラックを殺すこと以外に何か別の目的がある様に思えるが』
「もっともな意見だ。否定はせん。だが、協力関係を正式に結んでいないのにそれを話すのは無理な話だ。変な警戒心を持たれたら困るからな」
『………』
会話が途切れた。男の表情は常に余裕に満ちていた。対し、山本の表情には僅かな陰りが出来ていた。こうまで都合の良い申し出、受けたい反面、あまりにもリスクが高すぎる。困る、と言ったが仮にそうなったとしてもそれらの対策を既に考えているに違いない。
『………』
送られた情報は全てが真実。だが、一組織を背負う立場の人間として、それだけを判断材料にするわけにはいかない。
『仮にここで私が申し出を断ったとしたらどうする?』
「次は米連だな」
『!』
「もしくは中華連邦もあり得る。受ける受けないの判断は貴様に委ねよう。なに、一日おいても構わん。ゆっくり考える時間くらいは与えよう」
『いや、その必要はない』
「ふむ?」
いま井河アサギとその妹さくらは敵に捕らわれた。だが、この状況は利用できる。男のどの組織でもよいと取れるその発言に、一つの光明を山本は得たのである。
『だが頼まれてもらいたいことがある』
「………」
男の無言の催促に山本は続ける。
『井河アサギを知っているな?』
「当然だ。その妹が、囚われた姉の為に動いていると聞いたが?」
やはり知っていたか。山本は頷きながら続ける。
『昨夜未明、通信が途切れた。貴様には彼女たちの救出をしてもらいたい。彼女たちの無事が確認されれば、その時協力関係を結ぼう』
「…………クッハッハッハッハ!それはいい。ただ誘いに乗るだけでなく、この俺を顎で使おうとするその気概、気に入ったぞ山本信繁。井河アサギと井河さくらの救出依頼、先行投資として受け負ってやろう」
『もう一つ、篠原まりだが、彼女を速やかな保護の為に引き渡しを頼みたい』
「勿論だ。丁重にそちらに引き渡そう。それからこれはちょっとしたお節介だが、前園桃子を知っているか?五車学園の生徒で、卒業試験で行方不明になった新米対魔忍だ」
『………その前園桃子も保護しているのかね?』
「いや、どちらかと言うと前園桃子はこちら側だ。だが、もう一度対魔忍として復帰したいと言っている」
『………中々に複雑な事情のようだな』
「なに、そこまで難しく考えなくともよい。事前に知っていれば、話も進みやすかろう故な。では、そろそろ切るぞ?貴様とて時間は有限。何時までも話す訳にもいくまい?」
『………魔族に心配される日が来ようとはな』
「抜かしおる」
『篠原まりとの合流地点は追って連絡しよう』
「うむ」
◆◆◆
「本当によろしかったのですか、ご主人様?」
少しだけ、不満気な表情で問いかけるシェンフー。
「何がだ?」
「井河アサギとその妹の救出は、本格的なブラックとの敵対になります。そうなれば、東京キングダムで出来る行動は限りなく限定されることに………」
「確かに、ヨミハラの人材探しは難しくなるが、ただ予定が早まっただけだ」
しばらく人材の勧誘は『草』に任せてしまうが、仕方がないことだ。
「……ご主人様………」
「?なんだ桃子?」
山本との通信中、ずっと静観していた桃子が男の下に歩み寄った。
「あの、今の通信は?」
「聞いた通りだ。お前は対魔忍に復帰したいと言ったであろう?」
「は、はい」
「その願いを叶えてやろう」
「ご、ご主人様………!」
感極まったように打ち震える桃子の額に指先を突きつけた。
「ただしだ。今のお前じゃすぐに殺されるのがオチだ。弱いのだからな」
「ぁぅ………そこまで、はっきり言わなくても」
「お前のためにもならん。事実だ。しっかり噛みしめておけ」
ズ~ンと打ちひしがれる桃子に男は僅かに笑みを零し、だが、と続ける。
「俺のモノになったのだ。中途半端な力のままでいるのはこの俺が許さん。相応しい力を身に着けてもらうぞ?」
「っ!はい!」
「………桃子ちゃん………」
そんな二人のやり取りをシェンフーの他に篠原まりジッと見つめていた。
(どうして………?)
小さな泉のように、コンコンと湧き出る水の如く出てくる疑問符。
(どうして桃子ちゃん。そんなに笑顔でいられるの?魔族なんだよ?敵なのにどうして?)
桃子の眼から操られた痕跡など一切なかった。男が山本に対して言ったように、本当に自分の後輩はこの男に対して忠誠、ひいては恋人同士のように付き添っている。言うなれば異色のカップルを見せられているような気分だ。
(桃子ちゃん、私知ってるよ?魔族に復讐するって練習して、勉強して、寝る間も惜しんで頑張って。ようやく卒業試験まで進むことが出来て、私、すっごく嬉しかったんだよ?)
だが、今の桃子はどうだ?
(笑ってる………そんなに嬉しいの?)
知らず知らずのうちに、じんわりと篠原まりの胸に痛みが巣食った。
「………」
(ここに居たくない)
裏切られたと思ったのか、それとも先輩である自分では気付けなかった何かに対し、不甲斐なさを感じているのか。不可解な居た堪れなさに、篠原まりはその場を後にする。
一瞬桃子の声が聴こえた気がしたが、誰かが引き留めてくれたのか定かではないが、今は有難かった。
「………」
勝手にその場を後にしたが、そこまでこの空間内では武器を持つこと以外の自由を認められている。自室に籠るもよし、監視付きだが外に出るもよし、衣食住の保障だってされている。
ちょっとしたホテルと考えれば良い。だから、自分に割り当てられた部屋は、ある意味で安らげる場所と呼べた。
「んっ!」
ボフンッと飛び込むようにベッドに寝転がり、それなりの大きさとなる枕を抱きしめる。心地よい柔らかさと清潔感漂う洗剤と僅かなシャンプーの香り。
「………桃子ちゃん………変わったんですねぇ」
全ては見ていない。でも、生き生きとしていた。
「………はぁ~」
深い溜息を零す。気落ちする感情を抑えつつゴロゴロとベッドの上で身じろぎする。
眠気は無い。ただいたずらに時間を過ごすのも少し自分らしくない。シェンフーと言う魔族に団子でも作ってもらおうか………。いや、流石にそれは失礼か。
「う~ん……どうしましょうぅ」
困った。完全に手詰まりだ。どうしようか、と悩んでいた時。扉は開かれた。
「あ、あれ?部屋間違えちゃった?」
「ほえ?」
声のする方に視線を向けると、そこには金色の髪と毛先が白く染まった耳と尻尾を持った妖狐の魔族、天華が気まずそうに立っているのだった。
今回は難産でした。山本信繁との会話で、どこまで落としどころにすればよいのかが分からず、かなり思案させられました。
※しばらくみこっちゃん日記はお休みです。
さて、沢木恭介の運命や以下に