※この作品はR-18です。

暇を持て余した男の話   作:カッコカリ

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書いたら今朝SRとURが出た。無課金でも出る時は出るんだな、と思った朝


暇を持て余した男がカオス・アリーナに呼ばれるお話

 太陽が真上に差し掛かった頃、男は目を醒ました。アミダハラで青姦を行った後、アジトで気が付いたカーラと二戦目を開始。カーラとのナメクジのような交わりを行った後、そのまま泥のように眠りについた。

 

 情事によりこびりついた体液とツンと鼻につく特有の匂いに男はただ指を振るだけでそれらを消した。カーラはまだ眠っている。吸血鬼とはいえ、男との逢瀬は幸福のひと時だったが、それなりに疲れたのだろう。

 

 ベッドから降りて道士服を着こなすと、袖の中へと手を突っ込む。そこから出てきたのは無線機のインカム。それを身に着け、男は扉を潜った。

 

≪おはようございます。ご主人様。昨日はお楽しみでしたね≫

 

「おはよう。シェンフー。ああ、堪能させてもらった」

 

≪……………。≫

 

「そう拗ねるな」

 

≪拗ねてません≫

 

「………そうか。なら報告を聴こう」

 

≪御意。吸血女帝自体には動きはありません。ですが、多数の奴隷商人が彼女の支配する土地に集まっている模様≫

 

「数は?」

 

≪約500、賊に見せかけて奪いましょうか?≫

 

「奪うなら傭兵を介してだ。何組もの末端組織を介して雇え。商人も出来れば生け捕りにしろ。情報を知りたい」

 

≪その後は?≫

 

「喰え」

 

≪御意………あの、ご主人様≫

 

「うん?」

 

≪これが終わったら。次は………私を≫

 

「ああ。成果を期待する」

 

≪…………御意≫

 

息遣いから期待の籠められていることがわかった。それと同時に通信が切れ、インカムを仕舞うと男はアジトへと再び戻っていった。扉を開けると同時にカーラが待ち構えていた。

 

「こんなに綺麗な美女と寝てたのにもう他の女と楽しくお話?良い御身分じゃない」

 

「そんなに色気のあるものじゃない。そういえば、昨日はマリカはどうした?」

 

「見ればわかるでしょ?置いてきたわ」

 

マリカ・クリシュナ。純血種の吸血鬼で、白で統一された服にマントを羽織った褐色肌の美女。

 

吸血鬼の王であるカーラの腹心であり、代々王家に仕える家系の生まれだ。女王の護衛として常に行動をともにするため、本来ならばアジト内に居てもおかしくないのだが、カーラの言葉から分かる通り、男に会うためにマリカを撒いてきたのだ。

 

彼女はお目付役でもありかなり過保護な一面もある。実直な性格で、女王のためなら己の身すらなげうつ。王国直属の暗殺騎士団の団長であり、敵対する国の重鎮たちを一夜にして皆殺しにした実績を持ち、その実力の高さから死神の異名を持つようになるのだが、実直な性格ゆえか、それが玉に瑕となることもある。

 

男は彼女を向こう見ずの馬鹿と呼んでおり、それを裏付けるように彼女は一時期吸血女帝の下に一人で殴り込みを仕掛け、返り討ちにされた挙句、洗脳され彼女の尖兵に成り下がってしまった苦い経験を持つ。

 

「朝食はどうする?」

 

「要らないわ。マリカがそろそろ来るだろうし、今日はこれでお暇させてもらうわ」

 

 そういって男の両頬と首筋にキスマークを落とし、今日は楽しかったわ。じゃあね、と窓を開けて飛び出す。

 

「………窓は閉めてけ」

 

 その背中を少しだけ温かみのある視線で見送ったあと、男はアジトを後にするのだった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 東京キングダムの賑わう露店街。太陽が昇っている間は、闇の組織が横行する夜の時間とは打って変わって人目を避けるように表立った動きはない。目立った行為は逆に大きな組織に目を付けられることを彼らは知っているからだ。

 

 魔族、しかもエドウィン・ブラックが創設したノマド、その直属の傘下となる組織。その筆頭たる、元締めとも呼べる女がいる。

 

 その女の名は『朧』対魔忍としての名を馳せた時代があり、現在はブラック直属の部下。その実力は折り紙付き。迂闊な行動を取ることは許されていない。彼女に目を付けられたが最後、改造されて人ならざる存在になるか、殺されるかの二択しかないのだ。

 

 だが、それがこの地に住む弱者にとって仮初の安住とも呼べる時間だ。それがどれだけ不安定なものなのかも理解せず、だ。

 

 その中に、男が居た。立っているだけでも人目に付く男の存在感は、自然と周りに緊張感を走らせた。視線を合わせるだけで、活気づいた露店がシンと静まり、さながらモーセの如く、誰もが男に道を明け渡す。男が異界の支配者だというのはごく一部の人間にしか知られていない。

 

 ならば、なぜ血に飢えた殺人鬼ですら震えあがるほどの闇の住人達が素直に男に道を明け渡すのか。それは実に単純明快な答えだ。純粋に強く、手を出したくない程に不気味であり、何よりも一生命体として原始の記憶が死を連想させるほどに、男を刺激することはとにかく筆舌にし難いほどにマズイのだ。

 

 だから手は出せない。出したくない。

 

 露店から買った果物を齧りながら、男は一際大きくそびえ立つ東京キングダムのシンボルである高層ビルを見上げる。正確にはその頂上。そこから建物の下へ下へと視線を動かす。その視線の先にあるものは東京キングダムの地下深くに位置し、魔族たちが人目を憚ることなく歩き回れる土地がある。その名をヨミハラと言った。

 

「………」

 

 ヨミハラをアスファルト越しに見渡しながらどうするか思考を巡らせていた時、気配を感じた。

 

「?」

 

 見渡した男がある人影を見付けた。それは女性というには幼く、少女というには成熟している。歳は17ほどだろうか。特徴的なボディスーツと身体の局部に備えられたクナイと小太刀。対魔忍だった。堂々と商店街の屋根を跳び移っている姿が見受けられるが、それに気づいた人間は一人としていない。同時に、それが対魔忍の持つ忍法であることを理解した。

 

(なるほど、認識阻害、ひいては潜在的な意識に作用する忍法か)

 

 動きを見る限りその対魔忍は誰かを尾行している最中だった。その視線を辿ると、その先に居るのは、これまた特徴的な青い作業服に身を包んだ小太りの男、その男には彼も見覚えがあった。

 

 奴隷商人ゾクト、付近数ブロックに掛けて顧客を抱えているケチな商売人だ。娼婦としての選定、売春、奴隷としての調教に掛けて、それなりに名は知れている。こうして男に着いての情報を挙げてみたが、言ってしまえばどこにでもいるケチな商人で、小物だ。そんな男になぜ対魔忍が態々魑魅魍魎が住まう地で危険を冒してまで監視をするのかまでは分からなかった。

 

 と言っても、所詮は他人事だ。特に自分と関わるものではないと断じ、男の興味は元のヨミハラへと向けられた。ヨミハラは男の目的のためにも攻略せねばならない土地だ。その第一歩として情報のラインを繋げられるように動かなければならない。

 

 誰かを懐柔するとしても残念ながらそういったコネは存在しない。手段の一つとして魔術師連合の力を借りることが出来るが、借りを作るのには少々綱渡りな一面がある。死ぬ心配はないのだが、主に男の疲労の蓄積によって目的が遠のくのが痛い。

 

ではどうするか?そうして思考の行き着く先は、やはり

 

「傭兵を雇うしかないか」

 

 それも情報通であり、危機的状況にあった時、個人で打倒しうることが出来る都合の良い傭兵。当然、そんなものがPONと出るわけがない。そうそう、傭兵といえば、既に米連には二人ほど男と繋がりを持った人間がいるが、それは追々語るとしよう。

 

「『草』」

 

 男の掛け声と共に、黒い靄のようなものが複数男を取り囲んだ。靄が男の前で跪いた。

 

「ヨミハラで使えそうな魔族の情報を集めて来い。当分の資金を渡す。三日後にアジトに集合だ」

 

”御意”

 

 音もなく靄たちはその場を離れていく。朝はこれくらいにしておこう。果報は寝て待てとも言う。そうして男は一度アジトへと帰宅する。大体の目星はつけた。後は、どれくらいの魔族がこれに食いつくか、だ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 対魔忍たちにとっての敵、それは魔族であったり、政府に仇を為す犯罪者であったり、時代の闇に潜む存在を拘束、殺害することが彼らの仕事だ。忍という時代錯誤な名称でありながらも、その存在は裏の世界にとっては切っても切れぬモノであり、その知名度は魔族と同等に高い。そんな彼らが情報を集める際には、それを専門とした忍が請け負っている。戦国の時代からいの一番に敵の懐へもぐりこみ、敵の数、武器、将の情報を集める『斥候』そう呼ばれる忍たちが常に世界に目を光らせていた。

 

 対魔忍にとっても、政府にとっても東京キングダムという魑魅魍魎の世界は常に見張って居なければならない程に危険な土地だ。斥候が定期的に情報を集めに潜入するのもまた道理だった。定期的な情報収集によって得たものの中で、対魔忍たちが目を引いた情報がある。

 

「ねえねえ、むっちゃん」

 

「なんだ?」

 

「これって本当なのかな?」

 

「知らん。本人に訊けばいいだろう。どうでも良い話だ」

 

 オレンジの髪、流行りの服に身を包んだ少女。対魔忍たちの中でも最強と謳われた対魔忍井河アサギの妹、さくらと川のように流れる青髪と白衣に身を包んだ女性、八津紫、この二人の下に情報が行かないはずがなかった。

 

曰く、突然現れた何者かが一夜にしてアミダハラを支配した。

 

曰く、アミダハラの裏の支配者すら手が出せぬ孤高の存在が居る。

 

曰く、その男について訊いた瞬間、チンピラたちが怯えていた。

 

 敵の人数、その強さ、その勢力は未知数。新たな勢力の発生は対魔忍たちにとっても由々しき事態だ。その勢力はそれこそいきなり現れたのだ。今まで身を隠していたのか、それともただの勢いで暴れまわる馬鹿か。エドウィン・ブラックの部下たちも動かず静観しているのはそれほど重要視していないからか。動きは見られない。

 

 逆にそれが不気味であり、逆にそれが男の謎に包まれているベールを剥がすには情報が足りないことがもどかしかった。

 

 手に持った資料を読みながらさくらは溜息を吐く。

 

「こりゃもう私がババーンと忍び込んで情報集めるっきゃないかもね。えっと、写真写真はっと。あったあった。おぉ?意外にイケメン。この人魔族なのかなそれともただの人間?」

 

「さぁな。だが、斥候の存在に気付いて果てには口パクでお疲れなどというのだ。我々が嗅ぎまわっていたことなど既に分かっているのだろう。そもそも命令が来ていないのに独断で動こうとするな!そいつが誘い込もうとしているのかもしれないだろう!」

 

「あれ?もしかして心配してくれてる?ねぇねぇ心配してくれるの?たは~!とうとうむっちゃんにもデレ期が来たか!」

 

「殺す」

 

「うわぁ!タンマタンマ!冗談だって!」

 

「前々から貴様はいつもそうだ!アサギ様の妹としての自覚が足りんのだ!」

 

「ちょっとむっちゃん!斧は!斧はマズイって!」

 

「問答無用!」

 

「待ってむっちゃん!これだけは聞かせて!お願い!一生のお願い!」

 

「なんだ!?」

 

「もしかしてイラついてる?お姉ちゃんと恭にぃの仲が良すぎて入り込めないから嫉妬でイラつい―――」

 

ブチッ!

 

「あ」

 

「殺す!」

 

「いぃぃぃやああああああ!墓穴掘ったーーーー!」

 

「待てさくらーーーーーーーッ!!!!」

 

 逃げるさくらとそれを追いかける紫。対魔忍たちにとっていつものことなので特に気にはしない。それとは別に、既に件の男を偵察する対魔忍は割り当てられており、さくらがこれ見よがしにゲンナリとするのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 夜になった。弱者に分類された者たちはひっそりと住宅街へと逃げ込み、力ある者たちが部下を引き連れ、武器を携え、己の力をこれでもかとアピールする。そんな中で、男は見るからに丸腰だった。それでも襲われないのは、男もまた当然ながら、力のある者だった。武器すら必要とせず、ただそこに在るだけで男は十分だった。

 

 故に人目に付いたのだろう。故に力のある者たちを引き寄せたのだろう。

 

「こんばんは。今宵は良い夜ですわね」

 

 女が居た。温和な笑みというには獰猛すぎる。獲物を狙う蛇のような、そんな女だ。背後には緑の肌に大柄な体躯をした化け物、オークを何人も引き連れている。

 

「ノマドが俺に何の用だ?」

 

「そう警戒しないでくださいな。今宵は我が主が貴方とお話がしたいと申しております」

 

 女の名は朧。エドウィン・ブラック直属の部下であり、ノマドの幹部。夜な夜な悪趣味な祭りを開催し、魔族の欲望を満たすことを目的とした施設のオーナーも務めている。

 

「………」

 

 朧が差し出したものは招待状。手に取ると、そこには男の名と、そしてその従者の名が記されていた。

 

「カオス・アリーナか。予約は一年先まで一杯だと聞いていたが?」

 

「あのお方が招待するような方を邪魔できるような有象無象はおりませんわ。ブラック様が直々に貴方様専用の観客席の枠を設けております。今宵の10時より、魔族の祭典が開幕いたします。どうか遅れなきように」

 

 そういって踵を返す朧。その言葉の裏にはブラックに恥をかかせるなという脅迫も込められていた。

 

「面倒な」

 

 男が溜息を吐くと同時に、男は袖の中からインカムを取り出す。

 

「シェンフー、聞こえるか?」

 

≪なんでしょう?≫

 

「予定変更だ。すぐにこっちにこい」

 

≪ブラックになにか動きが?≫

 

「カオス・アリーナに招待された。お前の名前も書かれてる」

 

≪っ………どうやって≫

 

「そういう男だ。エドウィン・ブラックという男はな……。戻るのにどれくらいかかる?」

 

≪一時間ほど≫

 

「わかった。気を付けて帰ってこい」

 

≪御意≫

 

 インカムを仕舞い、一度男は帰路に着く。欠けはじめた月を見上げながら男はもう一度、面倒な、と呟くのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 夜の10時を回った。場所はノマドのいるところまで直通で行ける重鎮専用の豪華なエレベーター。招待状に同封されているカードキーを差し込むことで動くこれは、セキュリティも徹底されていると同時に、目的地まで降りる間、穏やかなクラシック音楽が流れていた。

 

 向かう先は常人にとって道徳もなにもない人外魔境の地獄だという事実が逆にアンバランスさを際立たせる。

 

 男の服装はいつもの道士服。従者として男の斜め後ろに立つシェンフーもまた同じように道士服だ。特に着飾る趣味は無いし、最低限の義理を果たしたら出ていくつもりでいた。少なくとも地下へと進んでいくたびに増していくこの生臭い匂いが余計に男を不快にさせていた。どれだけ清掃しようと、どれだけ換気しようとこびりついた匂いというのは取れないものだ。

 

 エレベーターが止まり、目的地へ到着したことを報せるベルと共に扉が開かれた。開かれた扉から滑り込むように入ってきたのは観客の歓声、黄色い悲鳴、怒号。それらがまるで波のようになって二人の鼓膜を痛いほど震わせた。

 

「ようこそ、カオス・アリーナへ。お待ちしておりましたわ」

 

 開かれた扉の先で待っていたのは朧だった。張り付いたような笑みで男を迎える姿は腹に何かを抱えているというのをありありと見せつけている。それを本人が自覚しているかどうかは知らないが。

 

「さあ、こちらへ、私が案内いたしますわ」

 

 シェンフーが仮面越しに眉を潜める気配を感じた。朧の持つ何かを感じ取ったのか、それともいきなり敵の幹部が出たことで警戒したか。いずれにせよ、ほとんど無意識の行動であった刀に手を掛けようとしたのを、男が目で制し、踵を返して案内を始める朧に、二人は着いていく。

 

 猛烈な熱気と匂いに僅かに顔を顰めながらアリーナで行われる惨状を観客の隙間から捉える。一人の筋肉質な女性の選手が一方的に細身の女性の選手を殴りつけ続けるワンサイドゲームだった。その光景も、流れる観客の陰に隠れていった。

 

 やがて、アリーナを見下ろせる位置にまで案内され、その先にあるVIP室と記されたところへ二人は足を踏み入れていく。中は意外にも質素だった。無機質な壁と床で、中央には二つの豪華な椅子と丸い小型のテーブルのみ。その片方に、男がよく知る後ろ姿があった。

 

「………。」

 

腰かけていた男が手だけで座れと指示し、男は言われるままに男、ブラックのとなりに座った。

 

「久しいな、友よ」

 

「………。」

 

「どうだ、コレは?お前はどう思う?」

 

「相も変わらず悪趣味だ」

 

「だろうな」

 

 クックックッと喉をならしてほくそ笑む。今だ一方的にやられている細身の選手。よく見ればつい最近見覚えのある人物だった。今朝奴隷商人を尾行していた対魔忍だった。大方目立ちすぎたために実力のある人間に捕まったのだろう。特に心を動かされるものではない。この世界では実にありふれたもので些末事なのだから。

 

 対魔忍だった人間は顔に複数の青アザを作り、怯えた表情で顔をかばい、抵抗らしい抵抗すらできずただただこの地獄が終わってほしいと懇願していた。口の動きから許して、ごめんなさい、助けてと何度も何度も無意味に繰り返しているのだろう。

 

「あの対魔忍。名前は?」

 

 男の問い掛けにシェンフーが答えた。

 

「確か【前園桃子】だったかと。対魔忍の研修生で試験の一環でゾクトの尾行を行っていたようですが、あのように」

 

「なるほどな」

 

 それ以降男は口を開かなかった。それなりに幸福な人生だったのだろう。ここでひっそり幕を閉じたとしてもこの場にいる人間は誰一人として悲しみはしない。中途半端に才能があったゆえにこのような結末になるとしたら、なんと残酷な世界だろうか。そうしてすべてに絶望して。楽しかった思い出が走馬灯のように脳裏をよぎると、途端に命がどうでもよくなり。抵抗を諦めるようになる。

 

「………。」

 

 男の額の皺が深みを増した。男の読み通り、対魔忍は抵抗をあきらめ、とうとうかばっていた手すら下ろしてしまった。

 

「フン」

 

 予想通りの結果だ。なんの面白味もない。反面ブラックはいつも通りの不敵な笑みを浮かべたまま対魔忍―――ではなく、男を見ていた。

 

「なんだ?」

 

「いや」

 

 そういって再びアリーナへ視線を向けるブラックの行動に疑問を覚えつつその顔に浮かび上がった険は取れないまま、事の成り行きを見守っていた。

 

≪さぁさぁみなさん前座はここまでにして、今宵のメインイベントといたしましょう!今日は魔界から特別ゲストをお呼び致しましたわ≫

 

 ガコンと重厚な音とともにアリーナの床が左右に別れると、そこから檻がせり出した。

 

≪魔界生物のワームことミミちゃん!ピッチピッチの10歳!対魔忍のお姉ちゃんの痴態を見て興奮しちゃったワンパクな子!≫

 

 形容するならば巨大なミミズ。大の大人さえ丸呑みにするほどの巨大な生き物は口から粘液を滴らせながら今か今かと対魔忍にとびかかる準備を始めていた。

 

―――うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 

 次に巻き起こるであろう光景に期待の咆哮が上がる。いよいよもって命の危険に差し迫ったわけだが、対魔忍も流石に化け物の胃袋に収まるのは嫌らしい。

 

 顔をひきつらせ、怯えていた。散々体を痛めつけられ、思うように動かない体を必死に引きずりながら逃げようとする彼女を、ワームの口から現れた無数の触手が引き留めた。対魔忍が助けを求めるように伸ばされた手はVIP席、正確にはそこで高みの見物をしていた黄金の男へと向けられていた。

 

「………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

た

 

 

 

 

 

 

 

す

 

 

 

 

 

 

 

け

 

て

 

 

 

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で懇願する“前園桃子”の魂の叫び。生きたいという本能が彼女の持つ能力に大きな変化を与えた。

 

「――――――――――――――ッッッッ!!!!」

 

 悲鳴を上げる前園桃子の体がワームの触手が身体に巻き付いていく。少女という年齢にしては大きい分類に入る乳房が強調するようにとぐろを巻く。パニックになりながら何とか拘束から逃れようとするも、ほとんど全身を拘束された状態にある前園桃子に逃げるすべはなかった。繊毛のような触手が乳首を愛撫し、クリトリスを引っ張り、尿道を犯され、口には触手が突きこまれ悲鳴を上げることすらできない。

 

「~~~~~~~ッッッ!!??」

 

 男を受け入れる準備すら録に出来ていない彼女のヴァギナを遠慮なしに触手が侵入した。膣口から一筋の赤い滴が、処女の血であることを教えた。

 

 文字通り全身の穴という穴を犯され、ただ生殖器を突き入れる肉袋のような扱いになり、そのまま前園桃子はワームに飲み込まれていく。つま先から、ゆっくりゆっくりと。全てを失ったその濁った瞳には終ぞとしてなにも映すことは無く、カオス・アリーナは大盛況で幕を閉じた。

 

 ただ、一つ変化があったことは、男の口元にわずかに笑みがあったこと。それこそが前園桃子の命運を分けた。

 

「シェンフー、あの対魔忍……前園桃子とか言ったな」

 

「はい」

 

「今のを見たか?」

 

「はい」

 

「あの対魔忍、一瞬とはいえ、俺を魅了した」

 

「はい、あの才能をそのまま虫けらの養分にしてしまうのは損かと」

 

シェンフーの答えに男の唇の端が吊り上る。

 

「決まりだな。おい、ブラック」

 

「どうした?」

 

「少々癪だがお前の提案に乗ってやる。あの対魔忍、もらうぞ」

 

「ククク……好きにするがいい」

 

 所詮すべては些末事。すでに友はその場に居らず、そこには魔神と闇に紛れそれに付き従う騎士のみ。自身の友が目を付けた対魔忍。その時まではまさしく男の興味の対象から外れていた。

 

 しかし、極限まで追い詰められた生命体がいわゆる火事場の馬鹿力を発揮し、力の片鱗を見せる。

 

 ああ、だからこそなのだろう。その一瞬を見せることこそに人間の価値はきまる。そしてそれは時として、人間を超越し、魔神である己すら殺しうる存在として生まれ変わる。これだから面白いのだ。人間というのは。

 

「貴様もそうであろう?我が友よ」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「お前と一緒にするな」

 

「?ご主人様?」

 

「気にするな、人間大好き馬鹿が戯言を言っただけだ」

 

「???はぁ…。」

 

 アリーナの真下。それは舞台装置が所狭しと置かれており、観客を盛り上げるためのモノがずらりと並んでいた。その中に、猛獣、いや、魔界生物が飼育されているエリアに、前園桃子を取り込んだワームが居る。すでに時間は深夜へと回っており、早々に仕事を終わらせたアリーナスタッフはすでに帰路についていた。

 

 そんな時間を歩く二人をとがめる人間はここにはいない。そもそもノマド創設者であるブラックから直々の許可が下りているのだ。誰一人として彼らを止められるものはいないだろう。

 

「あ゛……ぐぅっ………んお゛ぉ゛………あえ゛」

 

「これはひどいな。たかがワームに肉体の改造が出来るのは聞いたことが無いが」

 

「はい。私も初耳ではありますが、恐らく朧か、それを専門にした魔界医師の仕業でしょう」

 

 呻くような、首を絞められた鶏のような声のまま死ぬことも出来ずただ全身に襲い来るおぞましくも浅ましい感覚に身悶える前園桃子。

 

 様々な粘液に塗れたその肉体はいびつに変化していた。著しい変化が見受けられるのはその乳房。通常でも十分に巨乳に位置するサイズが更に大きく膨張し、その中に数本の触手が入り込んでいた。

 

「あ゛え゛………ん゛お゛……はぐ……う゛っ……う゛っ……あ゛……う゛」

 

「魔界生物とはいえ、呆れるほどの精力だな。プールでも作れそうだ」

 

「入るならばどうぞお一人で、私は入りません」

 

「俺のだったら?」

 

「……………」

 

「う゛、う゛、う゛、う゛、う゛、う゛、っあ゛!?」

 

 触手の律動が早まると桃子の最奥に自身の遺伝子を注ぎ込んでいくと、前園桃子の腹は妊娠したかのように膨らんでいった。受け入れきれなかった精液が膣の隙間からボドボドと落ちていく。

 

「クク、すまんすまん。そう拗ねるな」

 

「拗ねてません。そんな変態的行為にドン引きしただけです」

 

「雌の匂いが隠せていないぞ?興奮したのがまるわかりだ」

 

「ウゥゥゥゥゥゥ………」

 

「戯れが過ぎた。許せ」

 

 既に声すらあげられずぴくっぴくっと痙攣する前園桃子を観察しながら、ようやく情事がひとまず終わったことを教えた。

 

「さて、頃合いだ。おい、ワーム、その人間は俺が貰うことが決まった」

 

 白目をむいて痙攣する桃子を抱えたワームがこれは自分のモノだと威嚇するが、それはすぐに怯えへと変わる。

 

―――アレハナンダ

 

ワームにとって初めての【未知なる存在】との邂逅だった。

 

「さぁ、苦しんで死ぬかあっという間に死ぬか選ばせてやる」

 

それから間もなくして暗い施設の闇の中で怪物の悲鳴が上がるが、それに気づくものは誰一人としていなかった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 前園桃子を回収し、アジトに戻った二人は取り敢えず桃子の身体を洗浄することから始まった。正気を失い、なにも映さない濁った眼をしている。人としての意識は死んでいるが、心臓も動いているし医学的には生きている。ならば、この男にとっては十分だった。前園桃子を手に入れるという目的に支障は一切ない。

 

「ご主人様が洗浄なさるのですか?」

 

「そうだ。と言ってもお前もだ」

 

「いえ、それは構いませんが、少なくともイタイケな少女と一緒に合意もなく入るのは、いかがなものかと?」

 

「それで俺が止まったことがあるか?」

 

「いえ、愚問でした」

 

 シャワーのノズルを回し、粘液やらなにやらを洗い落としていく。男はタオルを腰に巻き、シェンフーもバスタオルを身体に巻いている。

 

「何故仮面を取らん」

 

「ご主人様にしか見せたくありません」

 

「ここには俺しかおらん。取れ」

 

「前園桃子が居ます」

 

「………相変わらず妙なこだわりを持つ奴だ」

 

タオルを石鹸で泡立たせ身体に塗りたくっていくと時折桃子が身じろいだ。

 

「ふむ、前園桃子はここが感じるのか」

 

「随分無茶な改造が施されたようです。感度が何十倍にもなって居ます。胸を揉まれただけで既に五回ほど達しているようです」

 

 ぴくぴくと身体を震わし熱のこもった吐息で身体を仰け反らせる前園桃子にふむ、と男は独り言ちる

 

「相も変わらず魔族は意味不明な改造をやる。無駄にデカくしよってからに。男ならテクニックでイかせろ。根性なしめ」

 

 痛いほどに勃起した乳首優しく摘み上げるとそれだけで桃子は呻くことも出来ず絶頂した。

 

「貴方の場合存在自体が女をダメにするので論外でしょう」

 

「俺にとっては褒め言葉だ」

 

「理解不能です」

 

「ぁぅぅっ……!」

 

 一際勢いよく桃子の身体は弾けた。快感の波が頂からしばらく降りられない状態に陥っており、もはやシャワーを浴びる感触すら怒涛の快感となって押し寄せているのだ。

 

「む………潮を吹いた」

 

「母乳も出ていますね、妊娠したわけではないでしょうし、ワームの趣味だったのでしょうか?」

 

 桃子の身体が震えるたびにビュウゥッビュウゥッと吹き出す体液に構わず男は胸の愛撫を続行する。

 

「好都合だ。こんな不自由な身体、早々に治すのに限る。………やはり、無駄にデカい。洗うのに一苦労しそうだ」

 

「ご主人様、リンスとコンディショナーをください、女性にとって髪のケアは必須ですから」

 

「うむ」

 

「かひゅっ……はひゅっ……」

 

「…………息も絶え絶えになって居ますね。ご主人様、もしかして下の方も?」

 

「石鹸で洗ってはおらんぞ?病気になるかもしれんからな」

 

「下を弄っていることは否定しないんですね」

 

「俺のモノをどうしようが俺の勝手だろう?」

 

「それで骨抜きにした人間がどれだけいるのでしょうか。想像したくもありませんね」

 

「何を言う。お前がその筆頭ではないか」

 

「………」

 

「あはっ……はぅ………あうぅぅうんんん!」

 

 それ以降、二人の会話は無かったその間途切れることなく桃子の嬌声が風呂場の中で響き渡るのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 前園桃子の洗浄が終わったが、再び気を失った桃子をひとまずベッドに寝かせることにする。シェンフーは既にアジトを後にしており、ここにはいない。

 

「………」

 

 酒をラッパ飲みしながら、泥のように眠る桃子を見やる。ワームに犯される間際に見せた才能の片鱗、あの時確かに男は意識を誘導させられた。すぐに打ち消して術を解除したが、遠くから目を合わせるだけであそこまではっきりと意識に変化をもたらすとは思わなかった。

 

 一瞬だが男が抱いた桃子に抱いた感情、それは恋情。生涯の伴侶として守らなければならないという気持ちを想起させるものだった。

 

 故に男は魅了された。桃子が望んだ潜在意識は桃子を大事に大事に愛してくれる王子様のような人。そんな人間になれ、と。桃子は術を行使したのだ。

 

「一瞬とはいえ、この俺の不意を突いた」

 

 男が笑みを浮かべる。

 

「久しぶりだぞ、これほど手に入れることに高揚したのは……。」

 

 既に時刻は3時を回っている。あれこれするのは明日にしよう。明日の計画を練りながら、男は眠りにつくのであった。




前園桃子は初めてのエロシーンを回収したカードなだけに愛着があったカード。こうして小説に挙げることが出来てちょっと感動。

潜在誘導というスキル持ってるけど自分の存在を分からなくするってふと思ったけどそれって咲に出てく(血に塗れていて読めない)

追記:最後の部分を少し加筆。
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