またリアルが忙しくなります。次の話の投稿は恐らく来月中旬ごろだと思われます。
前回のあらすじ
闇「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄WRYYYYYYYY!」
見えない何か「突きの速さ比べか、面白いッッッ!!」
スネークレディ「まただよ(呆)」
「ぐはぁっ!?」
「恭介はどこだ!?何処に居る!?」
白衣を着た男の胸倉をつかみ上げ、壁に押し付けるアサギ。苦しみ、むせる研究員など構うことなく彼女は押し込む力を強めていく。
沢木恭介は実験フロアには居なかった。もはや嫌な予感は極限にまで高まっていた。
アサギの脳裏に黄金の男の後姿が過る。
轟音と共に断続的に揺れるノマド本部。それが戦闘の激しさを物語っており、それに恭介が巻き込まれる可能性が十分にある。
「ば、ばかな!何故対魔忍がここに!?」
「答えろ!答えなければ殺す!」
幸運にも、件のフロアを担当していた研究員を見つけることができ、恭介の居場所を問い詰めていた。
「し、知らない!」
忍者刀を一閃。研究員の太ももを浅く切り裂いた。
「ぎゃああああああっ!?」
悲鳴を上げる研究員。命に係わる傷ではないにせよ、自分が生殺与奪を握られているこの状況において、恐怖心を膨れ上がらせるには効果を発揮したらしい。
「しゅ、手術台の近くに、脱走した時を考えて埋め込んだ発信機のレーダーがある!そいつで場所が分かる!頼む、見逃してくれ!死にたくない!」
「さっさと失せるがいい!二度と私の前に現れるな!」
乱暴に投げ捨てられた研究員は情けない悲鳴を上げながらその場を後にする。
「さくら聞いたわね?もう一度フロアに戻るわ。そして、今度こそ恭介を見付けるわ」
「うん!」
◆◆◆
不味い状況になった。男は巨蛇を体に巻きつかせて妖艶に微笑むスネークレディ、カリヤを静かに見据える。カリヤはナーガ族と呼ばれる蛇に分類される魔族であり、三人いる族長たちの一人を務めている。ブラックの親友であり、同等の力を持った強力な魔族だ。ブラック以外の強力な魔族を挙げるとしたら、まず彼女が初めに名が上がることだろう。
「………フフ」
カリヤが妖艶な笑みを零して上から下へ、下から上へとカリヤが男の身体を舐めまわすように視線を這わせる。
「相変わらず美味しそうな身体してるわ」
「………」
殺伐とした空気を痛いほど感じさせる戦場の中で、そんなことを言ってのけるのは彼女くらいの者だろう。此処に何をしに来たのかはあえて聞くまい。自ら彼女がこの戦いに参加させろと言ったのだ。つまり敵だ。それに、ブラックがもう一人増えたともいえるこの状況において、男に一切の油断は無い。
「嗚呼ぁ、素敵だわぁ………すぐにでも押し倒してあげたいくらい。やっぱり貴方という存在はいつ見ても素敵だわ」
「………その男」
カリヤの傍らに立つ赤褐色の巨体をした異形。彼女はコレを“沢木恭介”と呼んだ。
「ふふ、急ごしらえだけど、私とブラックの合作よ」
「何時からこんなものを作り上げていた?」
「知り合いに未来予知が出来る魔術師が居るの。近いうちに最も関係の深い存在が殺しに来るなんて言うからいろいろ準備してきたんだけど、それが今日だとは思わなかったわ。おかげさまで新調したドレスもまだ届いてないのよ。ごめんなさいね」
そういって本当に申し訳なさそうに言うカリヤ。
「チッ。無様な………」
男は不機嫌そうに小さく吐き捨てる。未来予知できる魔術師の存在。男はそれを知らなかった。
己が敵に関する情報を把握しきれていなかったことに僅かな怒りを男は覚えていたこともあるが、ノイ・イーズレーンを通してブラックと裏でつながっている魔術師の特定が不十分だったことによる自らの不甲斐なさを呪った。
互いに意図せずして罠に突入し、未完成な仕掛けに引き入れてしまったらしい。
「でも、出迎えるために色々と用意したわ。この子はその一つ。楽しんでって頂戴」
そう言うと、見計らったかのように異形『サワキキョウスケ』が前に出る。背中に付いた触手の先には鋭利な刃物が付いており、掌は肥大化し、爪は熊手のように異常な発達を見せている。身体の節々にも鉤爪のようなものが生えており、非常に攻撃的な見た目をしている。獣のようにハァハァと荒々しい吐息を吐き、涎を垂れ流しており、その瞳には理性は無いが、ただ主の命令を待つ人形のような無機質さが窺えた。
これが元人間だったなど言われなければ誰も分からないだろう。頭頂部から生えた黒髪が人間味をわずかに残しているくらいだ。
「沢木恭介………か。井河アサギは間に合わなかったか」
―――ドンッ!!
恭介が自然体から一気にトップスピードへと躍り出る。幽鬼を思わせる妖しい光を瞳に宿らせ、ただ敵をその視界に収める。
「ガァッ!!」
掌で押しつぶすような振り降ろしが男に襲い掛かる。大理石でできたアリーナの岩盤が砕け、土煙を巻き上げる。恭介の掌は確かな手ごたえを持って男を叩き潰した。
「………クス」
カリヤはただ笑みを零すだけだ。彼女が知っている男はこんなことで終わるわけがないことを十二分に知っているからだ。
「良い筋力だ。敏捷性も悪くない。『草』では四人ぐらいは必要か」
当然だ。この男はそういう男だからだ。これで終わるわけがないのだ。終わらせるわけがないのだ。ゆっくりと恭介の手が持ち上がる。
「オオオオオッ!!」
「吠えるな狂犬。耳障りだ」
負けじと押しつぶそうとする恭介に男は淡々と言う。指を振るい、恭介の身体に見えない何かが幾重にも絡み付く。だが―――
パンッ!
「む?」
見えない何かが恭介の身体から弾かれ、男の片眉が吊り上った。
「なるほどな。カリヤめ、やってくれる」
恭介の身体には、男の魔力に対抗する何かが存在している。それを裏付けるようにカリヤの不敵な笑みには深みが増している。掌の上で踊らされているような不快な感覚に男は少なからず怒りを覚えた。ドンッ!と鈍い音を立てて恭介の手が弾かれる。土煙を吹き飛ばし、一瞬で男の姿がナギナタを振りぬいた態勢になって恭介の後ろに立っていた。
「………」
一拍置いた後、恭介が地面に倒れ伏した。
「グガ……ゴッ………!」
気付けば恭介の身体の節々、正確には両手足の健にあたる部分を切り裂いていた。これで恭介の身動きは取れなくなった。
「あら、優しい。この子、あなたと何の関係もないんじゃない?」
「お前には関係のない話だ」
「残念ねぇ、でも、その子がこんな子供だましで止まると思っているの?」
「!」
背後からの気配に男が振り向く、そこにはまさに今横から殴りかかろうと大きく振りかぶっていた恭介の姿だった。
「………」
しかし、この時男、攻撃に対する何らかのアクションの一切が無かった。ただ、恭介を見つめているばかりだった。こうなった時の男の行動の理由は大きく分けて二つある。
一つ目、見えない何かで防げる場合。
そしてもう一つは―――
「遅いぞ」
ドゴッッッッ!!!!
「ギャアッ!?」
―――既に仲間が迎撃態勢に入っている場合である。
ボールのように何度も地面に叩きつけられながら壁にめり込み、土煙を舞い上がらせる恭介の身体。男の目の前にあるのは、巨大な半透明の人外の腕。それが姿を消すと同時に、男の横に降り立ったのは一人の人影。
鬼を思わせる頭部から生えた大きな一対の角と、それに寄り添うように生えた小さな一対の角。鉤爪を生やした二対のドラゴンの翼、固い外殻に包まれた尾。
木の葉のように恭介を吹き飛ばした張本人はティアであった。
「遅れてごめんなさい。雑魚が思った以上に多かったわ」
そういって見せつけるように掲げたその両手には、悪鬼を思わせる赤い鎧を身に纏った上級魔族。その中でも武闘派、戦闘狂として恐れられる速疾鬼という魔族が二体。しかし、その外殻はまるで力づくで引きはがされたように申し訳程度にしか身体に付いておらず、残っている外殻もボロボロにひび割れている。角は片方存在せず、首はぐんにゃりと変に捩じれている。
「派手にやっていたようだな」
男がティアの手に持った速疾鬼を観察しながら言う。
もはや原形すら留めていない。それなりに魔族についての知識を持った者でなければそれが速疾鬼だとは気付けないだろう。それくらいにまで凄惨な状態だった。
「途中からは文字通り千切っては投げだったわ」
それで・・・。と仰向けに倒れているブラックと、巨大な緑の蛇を傍らに置いたカリヤ、そして最後に先ほど吹き飛ばされた恭介を一瞥して―――
「どうやら間一髪だったようね」
「抜かせ。これから逆転するところだ………ティア」
「何かしら?」
速疾鬼を投げ捨て、男と背中合わせに立つティア。彼女の視線の先には、回復した沢木恭介の姿があった。
「あの沢木恭介≪フランケンシュタイン≫を抑えておけ」
「………分かったわ。でも、ブラックはどうするの?」
「案ずるな。俺に任せろ」
「ええ」
それがゴングへの合図。カリヤの蛇が二人同時に丸呑みにせんと襲い掛かる。ティアは恭介の下へ駆けだすが、男は動かない。蛇が男の身体に食らいつく直前、その牙を掴むことで止めた。
「ッ!」
「消えろ」
目障りだ。
「~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!!??」
蛇の身体に何かが流れ込む。それは体内で荒れ狂う小型の嵐のように暴れまわり、蛇の身体を風船のように膨張させ
「~~~ッッッッ!!!!????」
そして、弾けた!
一切の慈悲もなく、純粋無垢な子供が蟻のことを考えず踏みつぶすように、何の感慨も湧かず、文字通り蛇を血の詰まった風船にし、割ったのだ。
全方位に散らばる鮮血を浴びながら男は特に気にすることなくカリヤの下へと歩を進める。
「カリヤ。一度しか言わん」
去 ね
「ッ………」
ギィィンッ!と音が出るほどに魔力が高まった男に呼応するように雨のように降り注ぐ鮮血の中から煌々と輝く黄金の瞳。それに射抜かれたカリヤの背中に冷たい物が走った。
「本当に、残念だわ。私はお邪魔だったみたいね。昔のように楽しく語り合えたらよかったんだけど」
「………」
カリヤの視線は男の瞳ではなく、その上に注がれている。透明でティアのようにはっきり見えるものではないが、男の背後には巨大な何かが顕現していた。実際に目を凝らさなければ見えないソレは普通では考えられない程の異常な存在感を放ち、それは男が放つそれよりも圧倒的な威圧感を形成させていた。
「………流石に“ソレ”を出されると困るわ………」
カリヤがここにきて初めて静かに動揺し、頬を引き攣らせた。カリヤの言う“ソレ”を知るのは、彼女とブラック、そしてここに居ないシェンフーだけが知っているものであり、“ソレ”が現れることの意味を知っているからだ。ほぼ透明になった状態であろうとも、薄らと見えているだけでその存在感は尋常ならざるもの。それがはっきりとした形となって出てきた時、果たしてどれほどの力が世界に放たれるのか。
それはカリヤですら知らない。
「困ってもらわなければこっちが困る。悪いがそろそろ時間だ。お前のお遊びに付き合う暇もないのでな」
「残念ね。私はもっとあなたと遊びたかったわ」
「………」
「ハイハイ分かったわ。そんなに怖く睨まないでよ。ごめんなさいね。直ぐに消えるわよ」
そういって素直に引き下がるカリヤ。その背中は心なしか落胆したように思えた。
「でも、私貴方の友達のつもりであると同時に、ブラックの親友でもあるのよ?せめて、置き土産くらいはさせてもらうわ」
―――パチンッ
指を鳴らすと、カリヤの影が広がった。ゴポリ、と影が盛り上がり、中から出てきたのは、夥しい数の魔族たち。各地区を治めるような名のある魔族ではないが、その数は10や20では留まらない。
「じゃあね。また今度会いましょう」
フェードアウトしていくカリヤ。それを皮切りに各々武器を手に取りだす魔族たちを見て、男は内心で舌を打つ。何が目的でここに来たのか、本当にただ一時の享楽の為にこの戦いに参加したのか、今それにかまけている暇はない。援軍を招き入れるのを許したのは、男にとっても手痛い失態だった。
援軍が来るということは、東京キングダム中に自分たちの奇襲の情報が知れ渡ったということ。それはつまり、外で戦闘を行っている『草』を排除する為に、高位の魔族が戦線に加わることを意味していた。
そも、その魔術師とやらが、男が襲撃に来ることを事前に知っていたのだ。ならば、予めブラックが戦闘に参加しろと命令していたことは十分にあり得る。
「『草』!」『主様!』
男が『草』を呼ぶのと、『草』が男を呼ぶのはほぼ同時。
『恐れながら、ご報告したいことが!』
「!申せ」
『草』の一人が男の傍らに現れ、跪く。鬼気迫ると言うべきか、焦燥に満ちた声色で『草』は続ける。
『近隣地区を治める高位魔族が戦線に加わった模様!』
「案ずるな。作戦変更だ。合流地点まで撤退。逃げに徹しろ」
『既に報告済みです!』
「良し」
手塩に掛けた優秀な部下だけで部隊を編成させたのは正解だった。男は次に未だ倒れているブラックを見やる。
「………」
ブラックの身体が煙に包まれおり、身体の治癒が始まっていた。再生が追いつかない程のダメージを与え続けたが、脳と心臓を同時に破壊しても、やはりブラックは死なない。カリヤからの邪魔が入らなければ塵ひとつ残らず破壊できたが、どうやら仕切り直しらしい。
前方には大勢の下級から上級の魔族。後方にはブラック。
男は一時ティアへと視線を動かす。恭介の無力化を命令されていた彼女は、彼の直上から巨大な掌を出現させ、全身を抑えつけられていた。
男の見えない何かを打ち消してしまう恭介に限り、拘束することは彼女の方が向いている。結果、一つの脅威は去った。だが、代わりに二つの脅威が着々と迫っている。このまま時間が過ぎてゆけば戦況はどんどん悪くなっていく。
シェンフーはまだ来ない。少数精鋭ゆえの手広い対応が出来ないデメリットがここに来て発生していた。
「………やむを得まい」
そういって男は、ナギナタを握りなおすのだった。
◆◆◆
「お姉ちゃん!こっち!」
実験フロアにあるレーダーは意外にも簡単に見つかった。恭介の居る場所を指し示している方向は、アサギが居る場所よりも上の階、ノマド本拠地の中央部。アサギが良く知るカオスアリーナの会場だった。
会場へと続く無機質な廊下を走り抜けながら感じられる魔族の気配が会場へ一点に集まってきている。その中でも、巨大な存在感を放つ魔の気配が一つ。更に大きな気配が二つ、そして、それらとは比べものにならない黄金の男らしき巨大な気配。いや、今大きな気配が一つ消えた。と思いきや、大小問わず魔族の気配が群れを成して急に出現した。
いったい何がどうなっているのか、第三者による仕業であることは原因の一つとして容易に想像がつくが、現場に行ってみないことには正確に状況を把握することは今のアサギには不可能だった。
そして、刻々と膨れ上がっていく焦燥の感情。その理由として、男が施したタイムリミットが差し迫って居ることだった。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「はぁ、はぁ、ぇ、ええ!大丈夫よ」
持って後10分。黄金の男が派手に暴れて目立っているお蔭で、アサギたちも他の魔族と交戦することなくアリーナに向かうことが出来ていた。
だが、楽観視できる状況ではない。残り時間は約10分。その時間内に恭介の救出と脱出を行わなければならない。あの男は自分を逃がすと言っていたが、それを盾に何をされるのか分かったものではない。
「………っ」
自分たちだけでここから逃げ出すのは不可能だということは火を見るよりも明らか。結局最後はあの男に運命を託さなければならないという結論に至ってしまう。
まるで男の掌の上で踊らされているような、そんな奇妙な感覚をアサギは覚える。
思考を巡らせているうちに、恭介の居るアリーナはもう目の前となっていた。ある意味、ここの魔族たちの目があの男に集中していたことは幸運と呼ぶべきだろう。
男の施しの効果が切れれば、自分の刃は著しく鈍くなる。その前に終わらせなければならない。そう思考を完結させ、忍者刀を握り直し、アリーナにその姿を晒す。真っ白で暑苦しい眩いばかりのスポットライトを浴びる。光に目を細めながら、開けた空間の中で何が起こっているのかを二人は出来るだけ把握しようとした。
―――斬ッッ!
アリーナの中央には男が居た。男の持っていたナギナタは眼前に居る赤褐色の異形を袈裟切りで斬り捨てていた。その異形が鮮血を噴きだしながら倒れ伏すのと、レーダーからの反応が消失するのは同時だった。
「―――――――――ぇ」
純白の白の床だったアリーナは、今となっては異形たちの血で赤く染まっている。そして、新たに死んだ異形の血によって、再びそれは塗り替えられた。
「なん―――――――――………で」
レーダーに反応は無い。
―――故障したに決まっている
あの男が斬り捨てた異形の生命が失われたと同時に、レーダーの反応が消失した。
「う………そ…だ」
―――あれが恭介な訳がない。
「なんで………なんでよりにもよって恭にぃが―――」
「ぁ………」
さくらの言葉で否でも理解させられた。分かりたくなくても分かってしまった。
「ぅ、嘘だ」
心の中で泣き叫ぶような懇願は、現実には届かない。
―――誰か………
「きょおおおおおおすけえええええええええええええええええっっっ!」
―――嘘だと言ってくれ
今回のみこっちゃん日記はお休み。
それにしてもイベントェ………。
このまま決戦アリーナがサービス終了とかになったら、少し考えづらいけどLiLithさんへの風評被害がやばそうな気がしてならない。
たぶん大丈夫だろうけど・・・。
大丈夫だよね?