※この作品はR-18です。

暇を持て余した男の話   作:カッコカリ

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まさか二段分割ではなく三段になるとは、このカッコカリの目をもってしても見抜けなんだ。


節穴と言ってはいけない(戒め)


そういえば、活動報告を見た方なら解るかと思いますが、主人公のイメージがもう作者の中でDiesiraeのラインハルト+その他諸々になっているのですが、何かしら流出みたいな必殺技でもあればいいんじゃないかという暴挙に出て調子に乗って詠唱を作ってしまいました(笑)

 これが本編に出るかどうかは作者にも分かりません。恐らく埃を被って作者も忘れると思います(爆)

以上、作者の愚痴でした。では、本編をどうぞ。


番外編 暇を持て余した男が昔話をするお話 中編 ◆マリカ・クリシュナ◆

「気絶したか」

 

「ぅ………ぁ………」

 

 半目を開けて白目をむいて痙攣するマリカを見下ろしながら男は一つ溜息を吐く。男の肉棒は未だ彼女のヴァギナに潜り込んでおり、吐きだした精液が隙間からゴプリと溢れ出していた。たった一回出してなお男の猛りは静まる兆しを見せず、それどころかより固く、熱を孕み始めている。

 

「はて、困った」

 

 男は女を抱くとき、己が手の中で身悶える姿を見て楽しむのが好きだ。しかし、気絶してしまってはその姿を愛でることが出来ない。ようやく気分が乗ってきたというのに、これで終わりとなってお預けを喰らってしまうのは少々頂けない。

 

 不意に、気を失って微かな息継ぎで上下する胸を見て、男は上を向いて尚自己主張するその巨乳を優しく手を伸ばす。

 

 肌の感触と熱を堪能するようなゆっくりとした動きで、包み込むように揉みしだく。

 

「む」

 

 男のペニスを包む膣が少しだが締まる動きを見せた。続けて乳輪を弄びながら乳房の根元に舌を這わせる。

 

「………っん」

 

 ぴくぴくとマリカの身体が震えた。片手は胸を、もう片方は太腿を優しく撫で、時に揉みし抱き、股座をマッサージするように指を沈み込ませていく。

 

 すると、再び膣が男の肉棒を締め付ける。

 

「ふむ、閃いたぞ」

 

 男はその性別を問わず魅了させる顔を愉悦の笑みで染め上げる。男はまるで探る様に腰をゆっくり動かし、亀頭で膣内の肉壁を丹念に押し付けていった。

 

「ぁ……ぁぁ……」

 

 マリカの吐息に快感の甘みが籠る。重点的に攻めていた乳輪を一旦止め、次に両手で少々力を込めて胸全体を揉みしだいていった。柔らかいパン生地のように指を沈み込ませ掬い上げるような指の動きでありながらも、一本一本それぞれが彼女の感じやすいツボを探っていく。

 

―――なるほどここか、ここが気持ちいいのだな?

 

 彼女の意思が介在しない身体は穢れを知らぬ子供のように正直な気持ちを男に教える。男が閃いたこと、それは、眠っているマリカを良いことに、彼女の性感帯を発見、更には開発までしようとしていた。

 

 仰向けになって眠っている彼女のへそを中心にして傷一つない腹部に舌を這わせる。

 

「ふ……ぁ……」

 

 くすぐったく身をよじる彼女の身体。固くしこり始めた乳首を親指と人差し指で挟み込み、クニクニと優しくマッサージをする。

 

「やはり、ここが気持ちいいようだな」

 

 きゅうきゅう、と彼女のヴァギナが締め付けを強くさせる。今度は擦る様に上下させる。断続的に締め付ける動きで、いやが応に彼女の性感帯は次々と発見、開発されていく。

 

 片手で両の乳首を同時に引っ張り上げると、更に締め付けが強くなった。膣内の動きが絶頂に近いことを教えてくれる。最後の一押しと男は空いた手で切なそうに勃起しているもう一つの肉豆を指の腹で摘み上げる。

 

「ぁっ………!」

 

 びく、びく!びびく!びくん!

 

 絶頂で腰を上下させて痙攣するマリカ。ぎゅうぅぅ、と締め付けてくる感触が、男の征服欲を満たした。だが、どうせならば。

 

「これならどうだ?」

 

 ズンッ!

 

「かふっぅ?ふ………きっ!!??」

 

 男の叩きつけるような律動は、彼女の子宮口近くの上部分を擦り上げた。此処が最も彼女の感じる部分であり、絶頂直後の余韻に浸ることも出来ず、更なる快楽責めに快感のボルテージは一気に押し上げられた。

 

 ぷしっ!ぷしっ!ぷしゃあぁぁぁ………!

 

 彼女のヴァギナから透明な液体が噴き出す。絶頂による潮吹きが、男の股間部を濡らした。

 

「ん……ん………ふ………ぁあ?」 

 

 心地のいい倦怠感に目を細く開いた。全身が熱に浮かされているかのようにフワフワとしててこのままだとまた眠ってしまいそうだった。

 

「ふむ、起きたか」

 

 声が聴こえる。“敵”の声だ。この世界を侵略せんと動いていた黄金の男。いつも余裕そうにほくそ笑んでいたいけ好かない顔が瞬時に浮かぶ。

 

 自分はさっきまで何をしていたのか、マリカは殆ど働いていない頭で記憶の引き出しを探る。最初に思い浮かんだのは、吸血女帝の獰猛な笑み。その手が自分の頭を掴んで。

 

「!」

 

 ハッ、と目が覚めた。

 

「んな………ぁ!?」

 

 そして自分の状況を確認し、あまりの衝撃的な光景に目を大きく見開いた。自分は裸、男も裸、そして、男のペニスが自分の膣に収まっている。べたつく身体と部屋を包む独特な男と女の匂い。まさしく情事の最中。

 

 見られている、処女を奪われた、どうしてこんなことに、吸血女帝はどうした、カーラ様はどうしているのか、いや、それよりもまずは

 

「殺す!!」

 

 爪を鋭くとがらせ、男の心臓を抉り出さんと構えようとして。

 

「ふん!」

 

 男の腰が前に突き出される。膣に収まっていた長大な肉棒がマリカの子宮をゴツッと突き上げた。

 

「ひぎぅぅう!?」

 

 ゾクゾクゾク、と背筋から湧き上がる感覚にマリカの息と身体が引き攣り、絶頂で体が硬直したことで彼女の爪は止まった。

 

「くく、可愛らしい声で鳴くじゃないか。まぁ、話を聞け」

 

「!?」

 

 この状態で話をするだと!?マリカは愕然とした。お互いに裸、更に断続的に来る快感の波で身体が可笑しくなりそうで、そんな無様な姿をこの男に見られることに羞恥と怒りがマリカの心に宿った。

 

「そう睨み付けてくれるな。折角汝が主君の暗殺を止めてやったのだ。礼くらいほしいものだな」

 

「れ、礼だと?ぅく……それで見返りがこれか………。ふぁ……ん」

 

 本当ならばさらに罵言雑言を吐くところだが、そんな暇は今の彼女にはなかった。今こうしている間も、マリカの中に収まっている男の肉棒が心臓の鼓動に合わせてビクビクと脈打っていた。男のソレはただでさえ太く、長い。彼女の膣内に隙間なく埋め尽くしているせいで、脈打つたびに彼女には“心地よい”快感の電流が流れていた。

 

 それだけではない。

 

「はっ………く………はぁ、はぁ、んぅ」

 

 身体が過剰なまでに反応を続けている。身体が男を受け入れていた。

 

「まったく、功を焦るにしては随分と巨大な魚を取り逃がしてしまったようだな」

 

「………んく、はぁ、はぁ、なにが……言いたい?」

 

「貴様ほどの戦士が言わずとも、わかっていよう」

 

「はぁぅぃっ!?」

 

 クンッと、亀頭で子宮口の上をぐりぐりと押し上げる、動くたびに気持ちの良い感覚がマリカの身体を走り回り、そのたびに彼女の口からはまるで独立した意思を持っているかのようにいつも威厳をもった声は、まるで少女のソレに代わっていた。

 

「主君をその手にかけようとしたことは事実だ。どんな気分だ?」

 

「この、卑怯者ふあっ!」

 

「答えよ」

 

 ズンッ!

 

 男は腰を引いて強く突き上げた。

 

「ひぐっぅ!?」

 

 こうやって話している間もゆったりとした動きで自身の身体は蹂躙されている。まるで拷問だ。性質が悪いのは、それを身体が半ば受け入れていることである。なにせ、ただ気持ちよく、幸福感を感じるだけなのであるから。

 

「ふはっ!くぅ!………生まれて以来の、は、恥だ。返り討ちにされた挙句、洗脳されて、カーラ様に反旗を翻してしまうなどぉ……!屈辱の極みだ」

 

 洗脳を施されたあいだも、マリカは確かな意識を持っていた。言うことの聞かない身体で味方に刃を振るう無力感に何度打ちのめされたことか。

 

「であろうな、忠義を全うできず、主に牙を剥く狗などただの狂犬だ。処分されても文句など言えまい」

 

「く、くぅ、くそぅ………!」

 

 男の淡々とした言葉にマリカは何も言い返せない。彼女自身同じ考えを持っていたからだ。これほどの失態、ただで許してもらえるはずがないのだ。

 

 トン、トン、とリズムのある優しい律動が彼女から迫力を奪い、甘い吐息と共に嬌声を上げさせる。敏感なこの身体が忌々しい。出来るとしたらこうやって悪態を吐くことくらいだ。

 

「この、この恥知らずめ!」

 

「くっはははは。良く言われる」

 

 ズジュッ!ズヂュ!ズジュッ!

 

「ひぁあ!この!はじひぃ!?ひらず、めぇ!?ああぅう!!だ、だめだ!そこはぁ!?ひっ!?ひっ!ひぃ!」

 

 快感の高波が徐々にマリカの脳天へと昇っていく。嫌というほど教え込まれた身体は、それが絶頂だということを知らせる。

 

「やめ、やめぇ!やめてぇ!ひぃっ!また、また凄いのがぁ!」

 

 ズン!ズグッ!ズツッ!………

 

「も、もう………!」

 

 もう少しで絶頂する、その直前で、男の腰の動きを止める。

 

「~~~~っ!……………ぇ」

 

 グッと目を閉じて絶頂に対して身構えていただけに、来る快楽の衝撃が来なかったことが、マリカに純粋な疑問を浮かべさせた。

 

「そう意地を張るでない。貴様は良く頑張っている。忠道を貫くとはいえ、貴様は気負いすぎだ。昼夜問わず騎士として肩肘を張るなぞ、息苦しくてかなわんだろう」

 

「はぁ、はぁ………ふっ………貴様には分からんだろうな」 

 

「はっ」

 

 マリカの侮蔑を含んだ言葉に、男は鼻を鳴らして応えた。

 

 ズンッ!

 

「ひぐぅ!?」

 

 ゆっくりとしかし、力強く、膣壁を掻き別けて勢いよく彼女の中を抉るように男は腰を動かす。

 

「当然だ。俺は“支配者”だ。支配者とはつまり“王”だ。忠義を尽くす臣下がどんな気持ちでいるかなど知らんし、知るのは俺の役目ではない。だが、従う人間が何故従うのかは知っている。例えば恩義に報いるなどどうだ?」

 

 ズンッ!!

 

「ひああああっ!?」

 

「カーラに命を救われ、恩義を感じ、報いようとする者が兵の中で何千人居ようか?家族の為なんてどうだ?金の為、復讐のため、生きるため、野心のため、ざっと並べるだけでもこれだけある。だが、どんな奴でも共通しているのは、時として目的を忘れて刹那の享楽を楽しもうとすることだ。忠義であれ何であれな」

 

 何でもない様に言葉を紡ぎながらも、男の腰はまるで機械のように的確な動きで彼女の性感帯にピンポイントで狙い撃っていた。しかし、マリカが絶頂寸前になると、男の腰はピタッと動きを止める。

 

「貴様とて感情を持った生き物だ。機械のようにただ忠道を貫く完璧超人ではあるまい。そも、貴様らは暗すぎる。もう少し我欲を曝け出せ」

 

「そんな獣のようなことなど、くぅ、は、誰がするものか!」

 

 強情な奴め、と男は重苦しい溜息を吐く。

 

「まったく、これだから俺は貴様らが嫌いなのだ。潔癖すぎる。折り合いをつけろ言っているのが分からんのかこの大戯け。それが魔族としての力を弱めるというのに、このわからず屋が」

 

 男がその場には似つかわしくない魔力を発現させる。男の背後から漏れ出る威圧感が、何らかの質量が現れたことをマリカに感じ取らせた。

 

「っ!?」

 

 全身を見えない何かが巻き付き、身体が持ち上げられた。

 

「何の、真似だ?」

 

「なに―――」

 

 そう言って男は彼女の顎を持ち上げる。自分の鼻先に男の顔がある。全てを呑みこむような黄金の瞳が、淡い光を放ってマリカの蒼い瞳と交差する。

 

 普段から王の如き気質を持ち合わせていることは知っていたが、好色で獣のような男というのがマリカの当時の第一印象だった。

 

「この世界では遠慮する必要はないと判断してな。予定を変えることにした」

 

 しかし、今は違う。こうして目を合わせているだけで自分の身体がまるで泥に包まれたかのように身体が重く感じ、嫌な汗が頬を伝った。

 

 この男はなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 ナニに成った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――王だ。目の前の男が王に成った―――

 

 普段とは違う男の気配に、自然とマリカの身体は強張った。

 

「貴様は『刹那の享楽』の楽しみ方を知らんということが良く分かった。このまま放っておけば貴様らは揃いも揃って潰れるのは目に見えている。あまり強引なやり方は趣味ではないが、ただ黙って華を腐れさせるのは俺の望むことではない。故に、貴様には嫌でも知ってもらうぞ」

 

 そうだ。そもそも男は魔族としての欲を満たすためにマリカ・クリシュナを抱くのだ。その次いでとして快楽の楽しみ方を教えてため込んだものを吐きださせるつもりだったが、ちょっとやそっとでは崩れない頑固者だったことは、男にとっても少々予想の外に在った。ならば、趣向を変えるだけ。

 

「何を………ひああっ!?」

 

 突然彼女の巨乳が何かに包まれて乳首、乳輪、乳房全体が愛撫されるような動きになる。何かが自分に触れているというのに、それはただ透明になっているわけでもなく、暖かくも冷たくもなく、本当に実体の無い存在だった。それだけに、彼女の巨乳はひとりでに形を変えるような動きに見えてしまう。

 

 彼女の胸だけではない。

 

「くあああっ!くひぃぃ!あいぃぃ!?」

 

 マリカのアソコにも何かが吸い付いた。クリトリスだけではない。男が今埋めていた膣、更には尿道にさえ何かが触れている。尻タブも面白いほどに形を変え、細い触手のようなものがアナルへ苦も無く侵入を果たした。

 

 全身が愛撫されている。既に男に全身を性感帯を発見され、開発されたマリカ・クリシュナという雌の肉は本人の意思とは関係なく過剰な程に快感に反応を示す。

 

 痺れるような快楽の電流に彼女の表情がだらしなく崩れ始める。

 

「ふぃいい!?こんにゃ、こんにゃのぉぉ!?あぐぅあ!あっ!あっ!く、くしょぉ!ぜった、ぜったひに、ころひてやるぅぅぅぅ!?」

 

 焦点の合わない瞳がその顔を優しく両手で包むように持ち上げ、愉悦の笑みで見下ろす相も変わらず趣味の悪い男の顔を辛うじて捉えた。

 

「クックック………ああ、その時を楽しみにして居よう」

 

「んむぅぅ!?」

 

 男とマリカの唇が重なる。マリカの手が男の動きを制止させようと肩を掴む。何故手が拘束されていないのかは言うまでもない。男がその程度で止められるわけがないという絶対の自信があったからだ。

 

 それを裏付けるように、快楽で弛緩した身体の所為で、容易に男の侵入を許してしまう。逃げようとするマリカの舌がまるで男が獰猛な蛇のように動きを呼んで絡み取る。

 

「ふむぅ!?んん!?じゅ、ぱは、ふんむぅぅ!?」

 

 バシッ!バシッ!男を引き離そうと手が身体を叩くが、不意に彼女の抵抗が止まった。

 

 その舌が触れたのは唾液だけではない味わったことのある甘美な液体の味。それは男の血だ。理性を失った自分を狂わせた血が、再びマリカの体内を駆け巡った。

 

「んんんんんんんんんんんんんんんんんん!!」

 

 瞬く間にマリカの全身が絶頂に包まれた。自分の意識が塗りつぶされそうな強烈な快感。キモチイイという文字が大津波となって脳裏を荒れ狂った。

 

「んっ!………ふぁぷ、ひゃめふぇぅ、んちゅ、んむぅぅ!はっ……ん、ん゛!」

 

 ギチュリ、と彼女の爪が男の肩口の皮膚を突き破り、血が流れ始める。だが、男に動揺は見られない。痛み程度で男の蹂躙が止まることは無い。

 

「ん゛っ!んっ!ぷは!も、やめん゛ん!?あ゛!や、ん゛~~~~~~~~~~~~~~ッ!」

 

 キスだけで二度も絶頂を極めてしまったマリカ。頃合いを見て男の唇がマリカから離れると、それに合わせて見えない何かも彼女の身体を優しくベッドに降ろした。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 そこには女の子座りでとろん、と目を細めて表情を蕩けさせて完全に出来上がったマリカという名の女の姿しかなかった。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ」

 

 彼女の手には男の血がベットリと塗れていた。 

 

「はぁ………んちゅ………ちゅぱ………は……ぁむ……れる………ぇる……はむ……ちゅるぅ」

 

 夢見心地な目で付着した血を丁寧に舐めとっていく様は、まさしく、食べこぼしの無いように血を貪る吸血鬼そのもの。普段の彼女ならば絶対にやらぬ行動。長い間押し込めてきた血に対する飢えは、彼女の判断能力すら失わせる致命的な要因となってしまった。

 

 足りない。まだ足りない。理性を失っていた時と理性ある二人のマリカが完全に同調した瞬間でもあった。

 

「なぁ、マリカ、今お前は何をした?」

 

「ぁっ………………」

 

 耳元で囁く男の言葉は彼女の身体に重くのしかかり、瞬く間に彼女を現実へ引き戻した。

 

「そんなに血を大事そうに舐めるとは、まさしく吸血鬼だなぁ?」

 

「ち、ちが」

 

「どうだ?本能に身を任せた時の充実感は?滾るであろう?」

 

「ちが………ぅんだ」

 

「違わんさ。吸血鬼として生を受けたものしか得られぬ至福の時だ。生の実感を得られる貴重な機会だ。じっくり味わえ」

 

 男の言葉は槍となってマリカの心を穿ち、猛毒のように蝕んでいく。いやいや、と頭を抱えて頭を振るう姿は見るモノに痛ましさを伝えるだろう。

 

「これ、では。これでは奴らと変わらぬではないか………!」

 

 奴ら、それは吸血女帝に付き従い、ただ人間の命を喰らい続ける醜い吸血鬼ども。男の血とはいえ、それを啜る自分の姿は、傍から見れば奴らと変わらぬではないか。

 

 やがて、彼女の瞳から涙が溢れはじめた。彼女はこう思っていた。マリカ・クリシュナという騎士は、本能のままに動き命を吸い取るただの吸血鬼にまで落ちぶれてしまったのだと。在り方も、その誇りすらも完膚なきまでに穢されつくされた。

 

 情けなかった。ただただ情けなかった。

 

「何を言っている?それは断じて違うぞ?奴らは楽しむために血を啜るが、お前は生きるために血を吸う。人間が生きるために他種族の肉を喰らうように、お前も他種族の血を吸っただけだ。生命の宿命だ。何を忌避する?」

 

 

 

―――お前は何も悪くは無い

 

 

 

 消え入りそうなほどに小さな声だったが、マリカの耳にはまるで染み渡る様にはっきりと聞こえた。

 

“なぁ、マリカ。……なぁマリカよ、そう嘆くな。その涙はお前の誇りある優しさだ”

 

「ぁ……………」

 

“ただ吸血するだけで自分の全てが穢れるなど、愚かにも程がある。生きているのだから、存在しているのだから、欠点の一つや二つ、あってもなんらおかしいことなどあるまい”

 

「………」

 

“そも、カーラ・クロムウェルがその程度でお前を見捨てると本当に思っているのか?否、断じて否だ。腹立たしいがあの女の女王として在ろうとする姿は本物だ。そんな奴が、お前を見捨てるなぞありえん”

 

「………」

 

“ありえんが、だが、もし世界がお前を否定するというのならば”

 

「その時は俺がお前の全てを受け入れよう」

 

「っ………」

 

「幸いここにはお前と俺の二人だけ。ならば今宵起きた出来事は、隠してしまえば良い?そうは思わんか?」

 

「ぅ……ぁ、隠………す?」

 

 悪魔の囁きか、それとも救いの手か、焦燥しきったマリカにとって、果たして男の言葉はどのように聞こえただろうか。

 

「これは俺とお前、二人だけの秘密としよう。幸い俺は死なぬ。渇いたならば俺の血を吸えば良い。それでお前の飢えは無くなる。誰にも迷惑は掛からぬであろう?」

 

「誰にも………」

 

「そうだ。 だ れ に も な 。」

 

 ああ、嗚呼、これは悪魔だ。堕落へと誘う悪魔のささやきだ。しかも堕ち切って尚、救いを与えるという最低最悪な魔性の囁きだ。

 

「口は堅いつもりだ。誰にも言わん。安心しろ。お前は安心して俺に任せればよいのだ」

 

「どうして、そこまで」

 

 裏があるに決まっている。こんな自分に都合の良すぎることなど、現実にあってたまるものか。きっとこの男のことだ。はぐらかすに決まっているそしたら私は―――

 

「お前が欲しいからだ」

 

 わ   た

 

 

し  

 

 

 

  は

 

「お前の全てが欲しいのだ。その魂を、その心を、その身体を、技術を、力を、生涯を、お前が寿命で死ぬまで俺は愛でていたいのだ」

 

 何故だ。何故そうまではっきりと言ってしまうのだ。

 

「お前だけではない、いずれカーラも手に入れる。アサギも、この世界も、なにせ“異界の支配者”だからな侵略もするし、覇道を為すことだってする。俺は欲が深い。この世の全てを手に入れなければ気が済まない性質なのだ」

 

「貪欲だ。お前は貪欲すぎる。何故お前はそれで破滅しないのだ?」

 

「俺だからだ」

 

「傲慢だな………なんて男だ」

 

「クックック、俺の本性は、お前にどう見える?」

 

「恐ろしく見える。まるで太陽すら呑みこみそうな巨大な蛇だ」

 

「くっはっはっはっは………」

 

“太陽など、この世に生を受けてすぐに丸呑みにしてやったわ”

 

「―――――――」

 

 冗談ではない。男は本気でやり遂げたのだ。ああ、なんて恐ろしいお人だ。初めて会ったときから警戒しなければならないと勘が叫んでいたのは、コレの所為だったのだ。

 

 しかし駄目だ。スケールが違いすぎる。次元が違う。ただ一吸血鬼がどうにかできる問題ではなかったのだ。

 

 歯向かおうなどと考えた私が馬鹿だった。マリカ・クリシュナは、いや、この世界、たかが星一つごときスケールで男を止めるなど不可能だったのだ。

 

「クク、ピロートークはここまでとするか。貴様も、ある程度はスッキリしたであろう」

 

「え?」

 

 そう言って男は立ち上がった。魔力を身体に纏い、瞬き一つせずに道士服を身に纏うと、男はマリカの方へ振り向く。

 

「俺はお前の全てが欲しい。力も技術も心も身体も全てだ。だが、分は弁えているつもりだ。今回はただの治療、貴様に掛けられた洗脳を解くことだけしかせぬ」

 

「は………ぁ」

 

 分を弁えただと?あれだけのことをしておいて良くもそこまで。

 

 そう言いたかったが口は言葉を紡がず、溜息だけだった。

 

「ま、待て」

 

「心配せずとも、この話は秘密だ。誰にも話したりはせぬ。もしカーラに報告したいならば止めはせぬ好きにすれば良い」

 

「な、なんだと?」

 

 こいつは何を言っている?自分が不利になるようなことを自ら薦めるなど、訳が分からない。理解できない。何故楽しそうに笑っている?これが男の言う真の魔族の姿だとでもいうのか?

 

「お前は、何がしたいんだ?」

 

 気づけばマリカは問いかけていた。訊かずにはいられなかった。だが、男の返答は魔族ゆえの獰猛な笑み。女を抱くときに見せていた全てを包むように優しげな表情など初めからなかったように、肉食獣のそれを思わせるモノへと変わっていた。

 

「さて、な」

 

「っ………くっ」

 

 お前には教えんよ。男の煙に巻くようなその返答は、言外にそういっているようにマリカは感じた。

 

「自分の不利にならない程度に脚色すればよい。寧ろやれ。どちらに転ぼうが俺にとってはどれも面白そうだからな」

 

 そう言って低く唸るような笑みを残し、男は部屋を後にした。

 

「………」

 

 どうする?男の言うように自分の不利にならない内容でカーラに報告するべきか。男はこの世界を支配しようとしている。つまりカーラ・クロムウェルの敵であることなど考えるまでもない。

 

 考えるまでもないのだ

 

 

 

◆◆◆

 

 

“クク、ピロートークはここまでとするか。貴様も、ある程度はスッキリしたであろう”

 

“俺はお前の全てが欲しい。力も技術も心も身体も全てだ。だが、分は弁えているつもりだ。今回はただの治療、貴様に掛けられた洗脳を解くことだけしかせぬ”

 

 

◆◆◆

 

 あの時、マリカの胸に去来したのは確かに安堵だった。そのため息も確かに、安堵によるものだった。

 

「………」

 

 ならば、何故だ。何故こうまで自分の心に空虚感が生まれてくる?あり得ない。こんなことは、決してあり得ない。あり得ないはずだ。

 

 マリカは気付かない。その安堵の中に潜む失意の感情に。情事というには殺伐すぎる故に行為の熱は冷めきってしまったものの、マリカの心には最後まで行為がなされてしまうことに対する期待があったのだ。ただの愛撫であれだけの快楽、それが最後まで行ってしまえばどうなるのだろう?どれほどの快楽が自分に襲い掛かるのだろう?

 

 それは男の真の危険性をカーラに報告させることを許さなかった。

 

 そう、既に男の毒牙にかかった時点で、もはや浸食は始まり、既に手遅れとなっていたのだ。

 

 嘗ての彼女ならば、カーラに害をなすならば、勝てずともその時点で殺そうとし、爪と牙、命すら容易く捨て去る覚悟で脅威の芽を摘み取る筈なのだ。こうして思案顔になってどうやってカーラに報告するべきかと迷っている時点で、彼女の気高き騎士としての魂に小さな歪が生まれていた。

 

 あとは毒のように広がるのを待つのみ。次に会った時、その気高い魂は、また別の形となって同等の、尊いものへと変化しているだろう。

 

 マリカにとっての不幸は、男に目を付けられてしまったこと。それに尽きる・・・。

 

「くそ………っ」

 

 マリカの毒づく声が部屋に響き渡り、虚空へと溶けていく。身の内にジクジクと溜まる切なさを必死に抑え込みながらマリカはシーツに包まる。

 

 

 

 

 

 これを機に、日を追うごとに、真綿で優しく、マリカの心は男に包まれていく。

 

 

 

 

 

 

 ゆっくり

 

 

 

 

 

 ゆっくり、と。




 はいはいまさかの中編ですよ。でも言い訳させてください。もっと可愛いマリカを書きたかったんや。そしてチョロインにしてマリカの評価は下げたくなかったんや。即堕ちニコマにはしたくなかったんや。

な?わかるだろ?(え

分かるだろ?(半ギレ)
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