次は何時投稿出来るんだろうか……。
それから、投稿場所間違えました(汗)R-18なだけにKENZENなところに投稿するのはマジで焦りました。
不愉快な思いをしてしまった読者の人が居たら、この場を借りてお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした。
翌日、男はカーラを自室へと呼び、マリカの洗脳が解けられたことを伝えた。この報を聞き、彼女は早速マリカの下へと急いだ。
「マリカ。調子はどう?大丈夫?」
カーラが部屋に入ってすぐに行ったことは何よりも本人の状態の確認であった。洗脳されていたとはいえ、自らに牙を剥いた女に躊躇いもなく近づき、その手を握る彼女の行動に、彼女の中に存在する器の大きさを見る者に教え、同時にその危うさを伝えた。
「積もる話もあろう、俺は外に出ているぞ」
「ええ、ありがとう」
そう言って男は部屋を後にする。部屋を出る直前にマリカへ期待の視線を向けながら。
「カーラ様、申し訳ありません。私は、貴方にとんでもないことを」
マリカの表情は疲弊に満ちていた。肉体的にではない。自らの主を裏切ってしまったことに対する精神的な摩耗。カーラから見れば、男が治療を終えた後でも殆ど眠れていなかったのだろう。いかにも憔悴しきった印象が見受けられた。
「良いのですマリカ。幸い被害は出ていませんでした。此度の件は不問にいたします。だから、貴方はいつも通りの貴方として私の傍に居てください」
「カーラ様………」
彼女の慈悲深い慈しみのある言葉にマリカは喜色を見せ始める。しかし、同時に一抹の不安がよぎった。被害者も目撃者も居ない。本当にそうだったのだろうか。自分達が秘密にしていれば何も問題は無い。それで自分の大罪がなかったことになってしまうのだろうか。
「………」
マリカの脳裏に男の目が脳裏を過っていった。彼女の視線と男の視線が交わった時、その瞳には“さぁ、言うのか?言わないのか?お前はどっちを選ぶ?”と、昨夜の出来事をカーラに話すことに、男は期待交じりの視線を向けていた。
「っ」
彼女は昨夜の情景を脳裏に思い浮かべる。男の腕の中でされるがままにされ、はしたなく快楽の頂に達しながらそれでもなお足りないと強請ろうとするはしたない自分の姿。
「………」
ズグン、と体のどこかが疼いた。が、脳裏からその光景を追い出す。
「何処か身体に違和感はある?」
「………いえ、特に何も。直ぐに復帰できる状態です」
そう言って起き上がろうとするマリカの肩に手を掛けてそのまま寝かせようとするカーラ。
「それはいけません。昨日今日の出来事です。今日一日は休んでいた方が良いでしょう」
「ですが、カーラ様」
一日休んでいる間に、隙を見てあの男が敬愛する主に何をするか分からない。カーラの騎士であるならば主の負担を増やす訳にはいかない。
「駄目よ。マリカ。今日は休みなさい。これは命令よ」
そんなマリカの言葉に被せるようにして、カーラが命令を下した。
「私のことなら大丈夫よ。一日くらい、なんたって貴女の主なんだから、ね?」
真剣な表情は一転して暖かな笑みに変わる。その言葉は主としてではなく、マリカを家族のように大切に思っているカーラ・クロムウェルとしての言葉だった。彼女の命令も、それはマリカを想っての言葉だった。
「ぅ………イエス、カーラ様」
そこまで言われてしまっては、従わない訳にはいかなかった。頷くマリカにカーラはうんうんと満足げに頷く。
「それでは、また後で伺います。くれぐれも安静にしててくださいね」
「ぁ、カーラ様、実は―――」
―――あの男について報告したいことがあります。
その言葉は紡ぎだせなかった。
「?………どうしたの?」
疑問符を浮かべるる己が主の姿。その瞬間の合間に、数巡の思考がマリカの脳を埋めた。今呼び止めて男の正体を言えばいいのだろうか。しかし、言ったところでどうなるのだろうか。男の力はまるで底が見えなかった。そんな存在に敵対したとして……………。
「………いいえ、なんでもありません」
一体どうすれば良いのだ。全身に重たい何かが圧し掛かっているのを感じる。妙な胸騒ぎがする。自分がこれを言ってしまえば取り返しのつかないことになってしまうと勘が叫んでいる。
だから言えなかった。
「?………そう、じゃあ、またね」
ドアが閉められ、遂にカーラは部屋を退室してしまった。それから、数分が経ち、男が入室した。
「その様子では………言わなかったようだな。………言わないのか?」
男はマリカに問いを投げる。
「………言える訳がないだろう」
「………そうか」
男は無表情だった。落胆しているのか、それとも愉悦を感じているのか、それは分からなかった。
◆◆◆
その後、マリカの体力は回復し、あの夜起こったことがまるで嘘のように、いつもと変わらぬ日常が戻っている。最初の数日の夜は男がベッドに忍び寄ってくるのではないかと警戒した。が、あの日の夜、治療を施してからは何処か気分に問題があるかどうかを聞いてくるだけであった。
「………」
監視を続けても、試しに長時間近くに居たとしても、何かしらのアクションをしてくるわけでもない。まるで、自分に興味がないとでも言っているかのようだった。
「………ぬぅ」
あの夜、理性が飛んでいたとはいえ、自分を抱いてきた時のあの男の顔は、自分に触れてきた手は、情熱的で、恋人と交わっているかのような底知れぬ恍惚感があった。触れあった肌と熱は筆舌にし難い幸福感を与えた。肉体をめぐる男の血の一滴一滴が媚薬となって自分を盛り上げ、快感の頂を極めた瞬間の解放感は何度味わっても最高だった。
「馬鹿な」
ここまで思考を巡らせて自分の中に巣食うモヤモヤがどう言ったものだったのかを自覚し、マリカは愕然とした。これではまるで、あの夜の瞬間をまた欲しているようではないか。アレを男はあくまで治療だと言った。そう、治療なのだ。男が医者ならば自分は患者。医者にとって病状はアフターケアもいらない一日で終わる軽い病気。それが完治されればその関係はお終い。
「こんな馬鹿な話があってたまるものか」
その関係がすぐに終わってしまったことが心の中で惜しまれている自分が居たことを、この時マリカは初めて自覚した。
それに呼応するかのように、ズクンと身体のどこかが疼いた。
◆◆◆
それから更に数ヶ月が経った。男は特に変わった様子もなく、政務を手伝い、国王との会談を補助し、人類種が住まう国内で生きる穏健派魔族のための法が設立され、彼らの立ち位置を盤石なものへとしていっていた。
マリカは変わらず男の監視をしていた。この数か月間、男の様子に変化は無かった。一ヶ月に一度、シェンフーと名乗る男の忠実な部下が現れたが、それは吸血女帝に潜入し、定期的に情報を男に持って行っているからだ。
彼女の存在はマリカもカーラも知っている。吸血女帝には常に戦力的不利な状況が続いているが、今まで拮抗状態を作れたのは彼女がもたらす情報のお蔭だ。
政治、戦争、悔しいが、内外共にこの国に多大な貢献をしている大本はあの男のお蔭でもあった。
マリカの監視にも限界が出ていた。
敵対するつもりはないが、監視はしなければならない。男が何かしらの不穏な動きを見せた時に迅速な対処をするために。
「………」
マリカはカーラに男の正体を報告しようとはしなかった。今お互いに友好的な関係を築いている以上、それに亀裂を生じさせて態々敵対するようなことをする必要はない。その逆に、自分がそれを言ってカーラの信用を失う可能性もあった。
吸血女帝が虎視眈々とこちらを狙っている今、利用できるものは全て利用した方が良いとマリカは判断し、報告は後回しにした。
「………」
心身のケアを終え、ある程度余裕が生まれてから、マリカの胸中にあったのは、何故男がその力で支配をしようとはしないのか、であった。
あれだけの強大な力。正直に言えば吸血女帝とカーラが手を組んでもとてもではないが勝てる相手ではない。あの男はそう言う“化け物”だ自分達とは文字通り次元が違う。
それ故に疑問が湧いた。
「彼奴は一体何なんだ?」
「知りたいのか?」
「ひああああっ!?」
突然、件の男からの声に、思わずマリカの身体が跳ね上がった。
「くっはっはっはっはっは!」
「き、きさ!……貴様!?」
悪戯が成功した子供のように男は腹を抱えて笑う。羞恥と怒りで顔を真っ赤にしてマリカは男を睨み付けるが、そんなもので男が悪びれることもなく、目の端に涙を溜めて笑い続けている。
「くっくっくっくっくっく!可愛い声で叫ぶではないかマリカ。普段とのギャップがあって実に善いぞ」
「う、五月蠅い!ぶった斬られたいか貴様!?」
「ハハハハ!そう怒るな怒るな。相も変わらず貴様らは無駄に肩肘が張りすぎる故、良い話を持ってきたのだ」
「は、話だと?」
いつでもエモノを抜けるように身構える。この男のことだ。性質の悪いナニカが出てきても何もおかしくはない。警戒する自分を見て再び男は笑みを零す。
「くっははは………。そう猫のように警戒してくれるな。別に取って喰いはせん」
性的には食ったがな。
―――ジャキンッ!
気づいたときにはマリカの爪は男の咽喉元に突きつけられていた。
「今度余計なことを言うとその口を縫い合わすぞ?」
まるですべての感情が抜け落ちたかのような平坦な声をするマリカに、流石の男も素直に頷く。
「フハハハハハ!この俺なりのジョークだ!笑って流せ!」
「さっさと話せ」
そう言って一歩離れると、男は袖口から三枚のチケットを取り出した。
「実はな、とあるレストランの予約チケットを手に入れた。貴様とカーラ、そして俺で食事でもどうかと思ってな」
「レストラン?予約だと?」
「うむ、明日の夜だが、予定は開いてるであろう?いや、開けておけ。言っておくが、既にカーラは承諾済みだ」
「カーラ様が?」
男の言葉に無言ながらもマリカは驚愕する。自らの仕事に忠実であり、休息とは無縁な人であり、政務で多忙を極めているあのカーラ・クロムウェルが承諾した。
「貴様!まさか何かカーラ様の弱みを握って無理やり!?」
「無礼者が………。そんな姑息な手を俺がするわけなかろう」
さすがの男もこれには静かな憤慨を見せる。対しマリカはフン、どうだか。と疑いの視線を辞めない。
「彼の言っていることは本当よ」
「―――っ………カーラ様」
そう言って男の後ろから出てきたのはカーラだった。カーラから見て、心なしか普段よりも顔色が良く見えた。
「大丈夫ですよ、マリカ。明日の夜はスケジュールを開けられるようになりましたので、貴方が心配をすることはありません。彼を信じ切れれない気持ちは分かりますが、今回は私に免じて信じてはくれませんか?」
「ぅ………カーラ様が、そういうなら」
そこまで真摯な言葉で言われてしまうと、マリカは男の提案を受け入れるしかなかった。
「じゃあ、決まりね。楽しみにしてるわ」
「は、はい」
そう言ってその場を後にするカーラの後姿はいつも見慣れている筈なのに、吸血女帝との戦争が始まってからは久しく見なかったような気がする。一考してその疑問はすぐに分かった。それもそうだった。長年続く戦争の中で、気が抜けたことなど一度とてなかった。
というのにだ。カーラの背から感じるのは安心と期待だ。久しぶりに楽しい食事会になりそうだから?いや、会食は国の重鎮たちとの交流で何度もやっている。ならば世間体を気にせず楽しめるからか?
「何故カーラが乗ったか気になるか?」
自問自答を繰り返すマリカの心にスルリと男の言葉が入り込んだ。
「なに、そう難しいことではない。ただ単純にゲームをして俺が勝ち、食事に付き合う約束をさせただけだ」
「ゲームだと?」
「ポーカーとチェスだ。勝った奴が相手の“出来ること”に限り、言うことを聞かせることが出来るという奴だ」
「………」
「クハハハ、睨むな睨むな。相手の『出来ることに限り』と言った。無理強いなどせぬ」
食事に誘うことくらい、別に悪くはなかろう。と、尚も疑り深い視線を向けるマリカに男はいつもと変わらぬ尊大な言葉を放つ。
「どういう風の吹き回しだ?カーラ様を気遣うなど、貴様、何を考えている?」
「あの女は“我欲”を蔑ろにしすぎだ。口を開けば同胞のためだの同族の為だの、見るに堪えんのでな、少しは自分のためだけにハメを外す楽しみを教えてやろうと思ってな」
「……………お前がそんな殊勝なことを考えているとは思わなかったな」
「ほぉ、知らなかったのか?ならば今のうちに覚えておけ、俺は慈悲深い男だ」
「………ふん」
鼻を鳴らし、踵を返すマリカ。そんな彼女を男が呼び止めた。
「おい、貴様は今のカーラをどう思っている?女王としての在り方に、疑問を持ったことは無いのか?」
「愚問だな。カーラ様は同胞の繁栄の為に女王になられた。その崇高なる思想は今後、歪むことなどない。そして、あのお方の傍に立ち、支えるために我らが居る。当然ではないか。疑問に思ったことなどない」
「民草の繁栄を考え、施しを与える。それは別に良い。尊く、価値のあるモノだ。だれが見ても素晴らしいと答えよう。………ならば聞くが、カーラに与えられるものはなんだ?民を救ったことへの満足感か?笑顔か?それだけで魔族の魂は満たされん」
「あのお方は貴様とは違う。吸血鬼の女王であるカーラ様は、己を律することが出来るからこそあの力があるのだ」
黄金の男よりも長い期間傍に立っていた。家族のように自分を慕ってくれる彼女に応えたかったから常日頃の研鑽を止まなかった。それはカーラも同じだった。その結果が女王という地位を勝ち取った。
「愚か者が」
だのに、男が―――
「貴様らは………いや、貴様は本当に分かっていないのか?」
―――全て、攫っていき、気付けば彼女の隣には、私ではなく、男が居た。
男の言葉一つ一つが、マリカの胸にざわめきを起こす。
「な、なにがだ?」
「では聞くが、俺の血は美味かっただろう?」
「っ!?」
ひときわ大きく心がざわめいた。一瞬で、口の中一杯に男の血の味が想起された。
「ぁ………ぅ」
そして、抗う暇さえなく、否定する要素を思い浮かべる隙間すらなく、心の中で欲しいという言葉の大合唱で埋め尽くされた。
「クククク、なんだ。貴様、ただ目を逸らしていただけだったか、これは意外だな。カーラよりも貴様の方が余程物分かりが良いらしい」
ゾオオッ!
男の身体から、またアレが噴き出した。圧倒的な力の差を痛いほどわからせる、存在の源泉。
「や、やめ………」
やめろ!力強く発したはずの否定は尻すぼみになって塗りつぶされていく。威圧がまるで壁のように変質し、物理的な力となってマリカの身体を押す。
「満たされただろう?」
「やめろ」―――嗚呼、満たされた。
「また欲しくなっただろう?」
「やめてくれ」―――もっと欲しい
認めたくない。知りたくない。見たくない。
今まで知らなかった自分が次々と浮き彫りになっていく。男の言葉一つ一つにいちいち身体が反応して煩わしい、意思が肉体の動きに反映されない。自分を一つ一つ丁寧に塗りつぶされていく感覚が嫌悪感と吐き気を催す。
「!?」
音もなく男が自分の背後を取った。いつの間にか自分は壁際にまで追いやられていた。人の目など気にしていられないほどに、今のマリカにそんな余裕はなかった。
動機が激しく、五月蠅いほどに心臓の鼓動は高鳴っている。恐怖と麻痺した意識がない交ぜになっていて、息をしているのかもわからない。
「なぁ……マリカ」
「ひっ……」
優しい声色がまるで細い触手のように耳へ侵入していく。ゾクゾク、と甘い痺れが背筋を潜り抜ける。嫌悪感が少しだけ、薄れた。
「俺はお前が欲しい」
「ぁ………ぅぅ」
吐き気が消えた。男が囁いてくる。
「今まで辛かったであろう?長年我を抑え、苦しかったであろう?自殺に等しいことを続けて貴様はどうだった?魔族は欲あってこそだ。我を持たぬ者は力を得ることなぞ出来ぬ」
嗚呼、欲しい―――「はぁ、はぁ、お前と……一緒に……するな」―――だから吸血女帝は強かった
「貴様もカーラも背負い込みすぎなのだ。雁字搦めになって動けなくなっては愚の骨頂」
血が、欲しい―――「うるさい………だまってくれ……!」―――私はカーラ様にもっと頼られたかった
「怖がる必要はない。苦しみを共有しようというだけだ。血を啜り、休暇を得て、余裕が出た貴様はもうわかっているんだろう?」
我欲こそが魔族の力―――「………」
「我欲こそが魔族の力。別に没頭しなくても良い。いつも通り政務に勤しみ、いつも通りあ奴の騎士となり、いつも通り俺の監視をすればいい。ただ、休みの時はハメを外して魔族を楽しめ、それだけでも、肩の荷は幾分か降りよう………」
男の指が、ゆっくりとマリカの唇に刺し込まれ、口内へ侵入する。
「あぅ……ぁぁ」
彼女に抵抗の兆しは、まるでなかった。下に広がる指の味にある、仄かな血の味がマリカの身体を火照らせる。
「 さ ぁ 」
男の言葉は毒だ。男から発せられる恐怖は病だ。そして、男の存在はウィルスのように………。
「 む さ ぼ れ 」
一度侵入されたら、もう手遅れ。
「……ッ!」
プツッという糸が切れるような感触と共に広がる、甘美な味。
「んはぁあ……!あっ………は~………!」
高揚しきった官能が全身を包み、マリカを襲う。
「良い子だ」
「はぷ……ちゅっ……は………んは……ちゅぅぅぅぅうう」
「溜まり切った物を吐きだせ」
その姿は、まるで空腹の赤子のようだった。母親の母乳を求め、必死になって栄養を補給をせんとする。可哀想な赤子。
「空になっていた物を満たせ」
足りない。指だけでなんて到底足りない。男の胸倉を掴みあげ、マリカは強引に自室へと連れ込む。ことが起こったのが自室の近くだったのが幸いだった。男は別にかまわなかったが、少なくとも他人の目に触れる可能性は減った。
「はぁ!はぁ!はぁあああ!!」
ガブゥ!
嗚呼!これだ!この味だ!濃厚で!膨大な命が集約された新鮮な命の味!これがあればいい!これだけあればそれでいい!ずっと我慢していた!誰にも見られたくなかったから!でも、もうそんなことは関係ない!
「んく、んく、んく……ちゅるるるるぅぅぅぅぅう………んは」
ぬろぉぉ……
唾液とない交ぜになった血がマリカの口元に幾本もの鮮血のアーチを作り出した。
「はぁ~、はぁ~、はぁ~」
騎士の正装を何のためらいもなく彼女は破くと、男に馬乗りになりながら痴丘を股間に擦りつけ、自らの胸を乱暴に揉みし抱き始めた。
「はぁ、はぁ、んうはあああああ!」
高ぶり切った官能は瞬く間に彼女を絶頂へと導いた。乳首を捻るだけで、クリトリスが愛液を吸った服に触れるだけで、口内に残った血を味わうだけで、マリカ・クリシュナの身体は強力な媚薬を盛られた娼婦のように男の身体の上で、絶頂に悦び、踊り狂った。
傍から見ればまるで凌辱。マリカの吸血はか弱い少女を上から押さえつける強姦魔に思える。
「己の魔を否定するな、受け入れ、支配しろ」
だが、対して男の表情は怒りでも戸惑いでもなく、口元にはただただ笑みがあった。穏やかな笑み、さながら結婚式を祝福する神父。いや、男は今、吸血鬼マリカ・クリシュナを祝福していた。騎士として己を律しすぎた迷える魔族に光明を与え、まずは受け入れることが出来た彼女を、男は祝福していたのだ。
そして―――
「もう逃がさんぞ」
男の両手が彼女の身体を優しく抱きよせる。
「マリカ・クリシュナ」
「あはぁ………」
恍惚の表情でマリカが自らの意思で男と唇を重ねた瞬間、男の笑みはより一層深まった。
―――俺はお前を捕まえた―――
◆◆◆
夜の帳が堕ちた甘い満月の夜。
「あっ…あっ…あっ…」
夜闇の中で規則的な動きで揺れる大きな影。影が上下するたびに、淫靡な水音と嬌声が部屋に響き渡る。
―――ズジュッ!
「~~~~~~ッァ!!……ァ!」
月明かりが影を照らす。そこにはベッドを軋ませて交わる黄金の男とマリカ。男がひときわ深く腰を突き入れると、ビクッビクッと絶頂で身体を痙攣させ、荒い呼吸を繰り返すマリカの耳元に男が囁く。
「何処に出してほしい?外か?それとも中か?」
「ッ!」
男の言葉にこくこくと頷きながら腰に足を絡め、大きな胸を潰して彼女は男に抱きついた。
「ああ゛!イグ!イグゥウウウ!」
はひ、はひ、と息も絶え絶えになって子宮内を広げていく男の精液を感じながら、マリカは絶頂に絶頂を重ねていく。
「かっ――――――はっっ!?」
際限なく高まっていく性感、欲求、そして、口内を踊る極上の血への陶酔が騎士道と忠誠心で包み、固められた『自分』を一枚一枚丁寧に剥き取られてゆく。
「はぁ……はぁ……も、っとぉ、もっと、きてぇ」
それら全てが取り除かれた先にあったのは、欲望のままに性を貪る淫らな自分の姿。それを否応なしに自覚をさせられる。
「そう焦るな。時間ならばたっぷりとある。とことん付き合ってやる」
自制し、己を律する自分と。獣のように純正な魔族としての自分。今の自分は一体どちらの自分なのだろうか。
どっちでもない。そんなことは関係ない。そんな、小難しいことじゃない。
「んはぁあん!あっ、あぐぅ!くぁぁあ!すごぉぃ!すごいのぉおおお!」
ただ一人の女。騎士とか、魔族だとか、関係ない。今まで溜めに溜め、溜まりきっても、更に溜め、破裂しても自覚することさえできなかった愚かな女が、ようやく捌け口を見付けた。それを見出してくれた。
自ら腰を振って抉るように体重を乗せる。男のペニスがマリカの気持ちのいいところをマッサージし、今まで知らなかった快楽を教え込んでいく。
「あひっ!はひっ!また、イグゥゥゥ!イグゥ!イグゥゥゥゥウウウ!はっはっはっはああ!あっ……あはぁぁ!止まらないのぉぉ!」
身に着けていたものは汗を吸い、ドロドロのグチャグチャになって重くなっていた。肌に吸い付く感覚は不快に感じる暇もなく、二人は快楽を貪っていた。片や欲の満たし方を覚えたばかり、猿のようにそれを享受しようと必死になっていて、もう片方は100年を掛けて欲しいものを手に入れたことへの高揚感。萎えることなくマリカの子宮に精液を注いでいく。
射精後のインターバルすらない。男も射精しながら腰を振り続け、マリカの望むままに快楽を与えている。いや、教え込んでいる。満たされることの悦びを、これ以上ないほどに、男はマリカの肉体に、魂に教え込んでいた。
「んおぅ!おぐっ!あぁ!あっあっああ!んんあああああああ!?おぐに、きでるぅぅぅぅ!こんな、こんなのぉぉぉ!」
自分のモノにするのはその後で良い。
「イグゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウ!!!!」
ドッッッッッグ!!!!!!
時間はたっぷりとあるのだから。
「~~~~~んぐ!!……あっ!!………ぐッッッあ!!」
「ククク、気持ちいいか?」
「ッ!ッッ!」
コクコクと頷くマリカの足はしっかりと男の腰をホールドし、離れない様にしがみ付いていた。どくり、どくり、と一際大きな吐精で、マリカの胎はまるで妊婦のように膨らんでいた。満たされる多幸感、今まで知らなかった悦び、それをほぼまる一日かけて教え込まれたマリカ。
満たされて尚、貪欲に男の雄を求める彼女の中の雌の存在に、自分がもう、戻れないところまで来ているのをマリカは自覚しながらも、それを喜んでしまい、再び強請る様に腰を振り始めるのだった。
◆◆◆
「んん~~!美味しいわ………!いつも城の給仕に作らせてたけど、たまにはいいわねぇ」
約束の日、カーラに取って本当の本当に久しぶりに羽を伸ばせる日が来た。仕事の全ては人間の家臣まで巻き込んで全て押し付け、自分は信頼できる仲間と食事する。言い方は悪いが、この瞬間だけなんのしがらみもなく今を楽しめることができる。
そんな機会が巡ってくるのはもっと先の未来のことだと考えていただけに、一足早くそれを楽しめることが出来たことによって、その喜びもひとしおだった。
「お喜び頂けたようでなによりです。カーラ様」
久しぶりに見た太陽のような笑顔を見れたマリカもまた、嬉しそうに微笑む。最初は男の出した提案に警戒したが、結果的にカーラのプラスに働いた。
「まったく、揃いも揃って貴様らは遊びを知らぬか。手間を掛けさせてくれる。これからは定期的に息抜きをすることだな」
「ええ、これで明日も頑張れそうだわ」
ありがとう。と言って微笑むカーラ。
「ふん、一応、礼だけは言っておいてやる」
まだお前を認めたわけではない、とソッポを向くマリカ。実に対照的な二人である。
「ほう?たかが吸血鬼が、大きく出たな」
「吸血鬼を舐めるなよ“異界の支配者”こんなもので私を飼い慣らせると思ったら大間違いだ」
「面白い、いずれそれすらも丸呑みにしてくれる」
「二人とも、喧嘩はやめて頂戴。いつアサギの軍団が襲ってくるのかも分からないのよ?私、仲間割れは嫌だわ」
「ええ、勿論分かっています。カーラ様」
「ふん、愚問だな。貴様らにはまだまだやってもらわねばならぬことがある。ここで状況に水を差すことなどしてたまるものかよ」
なんだかんだ言って、二人の会話はカーラに取っていつものことだった。そうして、カーラが間に入って止めに入ると、なんだかんだ言って二人はすぐに矛を収めてくれる。いつもの光景、いつもの展開。いつもの二人だった。
「そう言えばマリカ」
「はい、何でしょう?」
ただ―――
「最近、綺麗になったわね」
一つあえて言うならば―――
「そ、そうでしょうか?」
「ええ、それに、なんだかとっても顔色も良いわ。もしかして、何か良いことでもあった?」
「ええ、ちょっとしたものですが、『昨日は良いことがあったんです』」
マリカが少しだけ変わったことだろうか。勿論、良い方向に。それに、なんだか男との口喧嘩にも、少しだけ柔らかみがあるように思える。
「へぇ、それってどんなことかしら?」
「『………ふふ、それは、秘密です』」
「ええ~教えてくれたっていいじゃない」
「『それはまた今度教えてあげますよ」」
ええ、また今度に、ね?