※この作品はR-18です。

暇を持て余した男の話   作:カッコカリ

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前回のあらすじ

主人公「ももこぉぉぉぉぉぉ!お前が欲しい!ももこぉぉぉぉぉぉ!」



暇を持て余した男が治療するお話その2 ◆前園桃子◆

「こ、これは……いったい……!?」

 

前園桃子は戸惑っていた。部屋という閉鎖的な空間に居たはずなのに、今ではサンサンと照り付ける太陽のもと、ビーチで男と二人で佇んでいる。肌を撫でる潮風も、白い砂の粒を踏みしめる感触も、全てが本物と変わらない。遠目に見えるガラス張り清潔感ある施設はホテルだろうか。近くで親子連れで遊んでいるグループも見える。

 

部屋の中では裸の格好だったが、今では水色と白のストライプの標準的なビキニの水着を付けており、男も黒のパンツタイプの水着を履いていた。

 

「驚いたか?もちろん幻覚なんてチャチなもんじゃない。俺たちは今、本物のビーチに居る」

 

「これほど高度な転移術……一体どうやって」

 

常識では考えられない大技に桃子はただ愕然とするばかりだった。そんな彼女の前に立ち、男は言う。

 

「言っただろう?俺に不可能は無いとな。さて、泳ぐぞ」

 

「え、え?治療するのでは?」

 

「治療はするさ。だが、今は鋭気を養え、夜は頑張ってもらわんといかんからな」

 

肩越しにニヤリと笑う男の姿は、悔しいが様になっており、誰もこの男がエドウィンブラックに並ぶ魔族?とは思わないだろう。

 

「おっと、忘れていた。その前に飯だ。お前も気を張りすぎて腹が減るだろう?」

 

「………なぜ、こんなことを?」

 

「お前を手に入れるためだ」

 

特に躊躇うことなくそう返す男に、余計に桃子は分からなくなった。何故自分がこうまで必要とされるのだろうか、と。

 

お世辞にも自分の力は未熟の域を出ない。その才能だって、学園では平均、平凡、自分よりも才能のある人間はごまんといる。だのにこの男は、自分には才能があり、自分を欲しいと言った。力だけではない。身も心も全てが欲しいと。

 

“こ、これでは……まるでプロポーズみたいじゃないですか”

 

唇をキュッと結んで顔に血が集まるのを耐えながら次の質問を投げ打った。

 

「もう一つ聞いて良いですか?」

 

「構わんぞ?」

 

「貴方はエドウィンブラックとどういう関係が?」

 

「………」

 

一瞬だが、嫌そうな顔をして、ドキッとした桃子は一瞬身構えた。気分を害されて殺されると思ったからだ。

 

「そうだな………昔の馴染みだ。今じゃ敵対してる。あの時アリーナに居たのは、まぁ、招待されたからだ。今彼奴らと本格的にことを構える訳にはいかんからな。最低限の礼儀として招待されてやっただけだ。その時にお前を見付けた」

 

「それで、私を助けたんですか?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

それほどの男が、こんな一人間を手に入れるためにこれほどの施設を提供し懐柔、籠絡しようとしている。桃子には信じられなかった。不思議とそれを不気味とは思わなかった。

 

桃子は余計に困惑した。出会ったばかりの男がいきなり自分に才能があると言った。それは自分よりも自分を良く知ってると言ってるようなものだ。それに―――

 

「分かりました。ご一緒します」

 

「うむ!そうでなくてはな!」

 

自分を認めてくれた存在が魔族など……。

「何が食べたい?リクエストはあるか?」

 

「いえ、お任せします」

 

「そうか。分かった。少し待て」

 

嫌悪している反面、それを喜んでいる自分を、桃子は認めたくなかった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

時刻は正午に差し掛かりパラソルのついた席に桃子を座らせると、男は彼女の目の前に料理をおいた。

 

「さあ食え!」

 

「これは、カレー?」

 

男が出した料理は文字通り新鮮な野菜と肉を具にした一般的なカレーライス。意外と庶民的な料理だった。もっと金に物を言わせた豪勢なものとかを出して懐柔すると思っていた桃子だったが、そんなことは無かった。初めて会った時よりも警戒心は薄れてはいるが、それでも必要とあらば玉砕覚悟で倒そうと考えている辺り、対魔忍として訓練を受けたことが窺えた。

 

「まぁ食ってみろ。話はそれからだ」

 

さぁさぁ、と促す男に、若干疑いの目を向けながらもカレーライスを一口。

 

「あ、美味しい」

 

「そうだろうそうだろう!よし、では俺も」

 

男もカレーを一口。

 

「うむ」

 

美味い、と満足げな表情で頷く男。こうしてみると印象もがらりと変わってしまう。自分を欲しいと言った時のあの時の強大な圧迫感と絶大なカリスマ性など今となっては微塵も感じられない。

 

「………」

 

どっちが男の本当の顔なのだろうか。

 

「どっちもだ」

 

「え!?」

 

「貴様アレだろ?今の俺を見てどっちが本当の俺なのか如何かなどと考えていたのだろう?」

 

「なぜそんなことが」

 

「顔に書いてある」

 

「むぅ………。私って、そんなに分かりやすい人間なのでしょうか?」

 

「俺から見れば、どんな人間も見てれば大抵のことは分かるがな」

 

「なんて身も蓋もない」

 

「ククク、確かにな。まぁ、そう落ち込むな。今は今を楽しむことだけを考えた方が良い。せっかくのリゾートだ。難しい話は無しで行こうじゃないか」

 

「………」

 

どこか納得がいかないと感じながらも料理を口にする桃子。それにしても、このカレーライスは美味しい。海の家のようなシンプルな味ではなく、素材それぞれの味が引き立っており、肉も柔らかく、おかわりがしたくなる。それでも、桃子の表情からは陰りが消えなかった。

 

“どうせだったら、先輩たちと行きたかったなぁ………”

 

今この場に居ない憧れの先輩を桃子は思い浮かべる。どこか間が抜けてポヤポヤとした雰囲気をしているが、その実力も能力も折り紙付きで、日本茶とお団子をこよなく愛し、何かと自分を気にかけてくれた憧れの先輩。今は何処で何をしているのだろうか。元気に任務をこなし、仲間も出来ているのだろうか。

 

「………むぅ」

 

桃子の何時までも浮かばれぬ表情に男が唸った。これでは何時まで経っても自分の物にはならないだろうということを男は良く知っている。対魔忍として生きて来た環境が恋しいのかもしれないと男は思った。

 

彼女を助けてからある程度彼女の素性は調べていた。高校生の時、魔族に家族を襲われ、その時に偶然能力が発現、それを機に対魔忍養成の五車学園に入学、研鑽を積んできたが、対魔忍としての実力は平平凡凡。友人関係は恵まれていたようだが、落ちこぼれでもなければ優秀でもない。特に特別と呼べるものは無く、裁縫が得意という人並みの趣味を持っている程度で、それ以外だったらごく普通の少女兼対魔忍としか呼べなかった。

 

「………」

 

だが、前述したとおり、この少女には類まれなる才能が秘められている。今の前園桃子は言うなれば幾つもの歯車が欠けた古いからくりだ。その歯車を一つずつ一つずつはめ込んでいけばこいつは一気に化ける。エドウィンブラックすら影響を及ぼす術師に。

 

「むぅ」

 

故に欲しいのだが、これでは何時まで経っても進展は難しいだろう。どうやって手に入れるべきか、男は色々と考えては見るものの、決定打に欠けるばかりだ。

 

いっそのこと本当に力でモノを言わせて服従させてしまおうか。

 

「それはそれで負けた気がするな………」

 

「え?」

 

「いや、こっちの話だ。………前園桃子、そんなに仲間に会いたいのか?」

 

「それは………そうですよ。だって、仲間なんですから」

 

「なるほどな。まぁ、二日耐えれば会えるんだ。少しの辛抱だ」

 

「………どうして、そんなことを?」

 

「ん?別に?ただ事実を言っているだけだ。お前は二日間の間、俺の物にならずに耐え抜けば、お前は元の身体を取り戻し、元の生活に戻れる。俺はお前が俺の物になると宣言すれば、元の身体を取り戻したお前をこっち側に引き込める。なにもおかしい所は無いだろう?」

 

「いえ、そうではなくて、貴方は魔族ですよね?」

 

「そうだな。魔族だ」

 

「だったら、力ずくでやるとかそういうことは?」

 

「質問の多い女だ。必要とあらば本当に力ずくでやるぞ?お前程度、人格の改変だって他愛もないことだ」

 

「そんな程度の私をどうしてあなたは欲しがるんですか?」

 

「………何度も言うが、俺はお前の才能を買ってる。直接戦闘の方じゃない。その術の力だ。それを十全に扱えるようになれば、お前はあのアサギすら操られたことに気付かずに意識を誘導させることができる」

 

「ッ!?そ、そんなの出鱈目です!だって、だって私は、先生からも普通としか言われなくて」

 

「………」

 

どうして?

 

「この世界じゃ、弱い人は弱いままで……!それが当たり前のことで!だから、私、自分が出来ることをしっかりやろうと………思って……!」

 

「………」

 

どうして貴方はそんなにもまっすぐ私を褒めてくれるの?

 

「先輩たちに励まされながらようやく卒業試験まで行けて……!」

 

魔族の癖に……。私の家族を殺した奴らと同じなのに……

 

「それで!それで……!」

 

身勝手に私を助けて、身勝手に私を欲して―――

 

「単純な話だ。お前の才能を見抜けなかった五車学園の教師が悪い」

 

「っ!?」

 

「その結果、お前はワームに喰われ、そんな体になった」

 

「そんな………こと………………」

 

それ以上、桃子は否定の言葉を紡げなかった。紡ぎたかった。普通の対魔忍としてのカリキュラムを教わり、平均的な成績を残しているだけで、目立ったこともない。だから褒められたこともなかった。そして卒業試験の前日、桃子の担任を務めていた教師から言われた言葉が妙にはっきりと記憶に残っていた。

 

“君は普通だけど、普通には普通の対魔忍としての仕事はちゃんとあるから頑張ってきなさい”

 

―――先生、普通って何?普通は、頑張っても普通なの?

 

憧れの先輩が居た。高みを知った。そこにたどり着きたいという目標があった。だが、現実が非情にも桃子を突き落した。期待には応えたい。けど、どれだけ頑張っても普通でしかいられなかった自分は、これ以上何を頑張ればよかったのだろうか。それに答えてくれる教師は、ここにはいなかった。

 

「ふっ………ぐ……!うぅ……!」

 

悔しくて、その捌け口も分からず、激情の行き着いた先は、涙となって溢れだした。

 

「前園桃子?泣いているのか?」

 

「ぐすっ……うっ……ふ……!」

 

「………」

 

何度も目元を拭って涙を止めようとする様子に男は困ったと内心で呟く。前園桃子の中で様々なことが入り混じった結果なのだろうが、どうやら男が事実を言ったことが決定打だったらしい。さすがに男も予想外だった。

 

「すまん。言いすぎた」

 

「謝らないでください……!魔族の癖に……!」

 

「その、なんだ。そう気を落とすな。お前には力がある。これから俺が教えてやればお前は強くなる。俺が保証するから安心しろ」

 

「褒めるなぁ……うぅ」

 

「俺にどうしろってんだよ」

 

是非もなし。それから桃子が泣き止むまで、男は彼女を見守ることにするのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「う~~~~~………」

 

「なんだ?」

 

「う~~~~~~!」

 

「解せぬ」

 

「魔族の癖に魔族の癖に魔族の癖に魔族の癖に」

 

それから少しして、前園桃子は羞恥で顔を真っ赤にしながらブツブツと呟きながら男を睨み付けていた。男の存在感に気圧されることよりも羞恥や怒りとかその他諸々の感情がごちゃ混ぜになったことの方が先んじているため、そんなことを考えている余裕がなかった。

 

「………そう怒るな。月並だが、可愛い顔が台無しだぞ?」

 

「魔族の貴方に褒められたくありません!」

 

フシャー!と猫のように威嚇する桃子。

 

「分かった分かった。もう褒めたりせん。さて、今後の予定だがどうする?」

 

「遊びます。もうこの際遊びつくして後腐れが無いようにします」

 

「それが良いな」

 

「夜の相手だって入れること以外だったら何でもしてやります!ええしてやりますとも!」

 

「ん?今何でもするって言ったな?」

 

「ええ言いましたよ!?だから何ですか!?私は絶対!魔族なんかに負けませんから!」

 

そういってほとんど温くなったカレーライスを大急ぎで食べ終えた桃子は、さ、いきますよ!と男の手を引っ張っていく。何はともあれ、良い感じに吹っ切れたようで、ようやくゲームを再開できるので、結果オーライと男は考えることにする。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

海に入り特に目標もなく泳ぎ回った後、ホテルの地下にあるゲームセンターへ直行。全アーケードを制覇し、次に買い物をして服を買ってお洒落をしたり―――かかった費用は万にして二桁は下らない。それらを全て男が支払っている。―――と目星のあるものには全て行き、桃子は宣言通り、遊んで、遊んで、遊びつくした。青春時代を対魔忍としての修業に明け暮れた時代を取り戻すかのように……。そして夕方になる頃には、彼女の顔には笑顔が戻っており、ようやくと言った感じに自分のやったことを思い返したのか。

 

「申し訳ありませんでした」

 

ひと段落した開口一番は謝罪であった。

 

「相当ストレスを溜めてたようだな。見ていてこっちは面白かったから別にいいがな」

 

「うぅ」

 

「さて、楽しいお話もここまでだ。時間も押してる。早速部屋で相手を」

 

―――クイクイ

 

「………」

 

腰のあたりの服を引っ張られる感触と、前園桃子の下に向けられた視線から、面倒な、と男は内心で呟く。

 

―――クンックンッ

 

再び引っ張られる感触。男はゆっくりと振り返るとそこには

 

「………お母さん、何処?」

 

子供が居た。予想はしていたが女の子だ。清楚さを感じさせる白のワンピースに身を包み、薄紫色の特徴的な髪の毛をツインテールで軽く纏めており、顔立ちは良く整っている。そして、服を引っ張っていない方の手にはクマのぬいぐるみを抱えていた。更に先ほどの言葉から、どう見ても典型的な迷子にしか見えなかった。

 

目元には涙が浮かんでいて、今にも泣きだしそうだ。

 

「迷子になっちゃったの?」

 

「うん、お母さん、何処?」

 

「ごめんね。私は君のお母さんの場所分からないけど、一緒に探してあげるから!」

 

「ホント!?」

 

「うん!それに、このお兄さんと一緒にいたら絶対に会えるから!」

 

「おい」

 

ナチュラルに巻き込もうとする前園桃子に一言申したかったが、視線でこんないたいけな子供を置いて行くんですか?だとしたら最低な人ですね。と視線で訴えてくるので、これ以上は言わなかった。

 

というか、この短時間で恐ろしいほど強かになっていく彼女だが、以前の気弱な態度はどうしたのやら………。と半日にも満たない時間だというのにとても懐かしく思えてしまうのは、知らず知らず疲れているせいなのか………。

 

「私、前園桃子、桃子で良いわ。あなたは?」

 

「サヤ!私サヤっていうの!ありがとう!桃子お姉ちゃん!」

 

とんとん拍子で進んでいく話を傍聴しながら、さて、どうしたものかと男は思考を巡らせる。不意に手を引っ張られて、男は少女、サヤを見た。

 

「お兄ちゃん!ありがとう!よろしくお願いします!」

 

「はい!良くできました!」

 

「えへへ!」

 

「それじゃあ、よろしくお願いしますね?お・に・い・さ・ん?」

 

「お前後で覚えとけよ」

 

ニッコリと笑顔で言う逞しくなった桃子を僅かに睨みながら、とりあえずここに居ても仕方がないので、男はサヤと手を繋ぎながら母親の居る下へと歩くことにする。

 

「ねぇねぇお兄ちゃん!お兄ちゃんの髪って金髪?それって地毛?」

 

「そうだな」

 

「じゃあじゃあ、その眼も!?」

 

「ああそうだ」

 

「すご~い!サヤ金色の人見るの初めて!」

 

「“金色の人”?」

 

「うん!金色の人!お兄ちゃんのこと!」

 

「あ~………そうか」

 

「ねぇねぇ金色のお兄ちゃん!お兄ちゃんて何歳?」

 

「12だ」

 

「え゛!?」

 

「すごーい!サヤより一つ年上なのにこんなに大きいんだ!」

 

「嘘だ」

 

「え?嘘なの?じゃあ何歳?」

 

「何歳に見える?」

 

「ん~とね、ん~とね、ハタチ?」

 

「残念、その数千倍だ」

 

「は!?」

 

「すご~いおじいちゃんだ!金色おじいちゃんだ!」

 

「前園桃子、サヤが純真すぎて反応に困るんだがどうすれば良い?」

 

「なんのためらいもなく嘘を言うあなたもあなたですよ。おじいちゃん」

 

 どうリアクションを取れと?先ほどの泣きそうだった顔と打って変わって、とにかく楽しそうにサヤは男に質問をしていく。そして、サヤの質問攻めは、サービスカウンターにたどり着くまで続くのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

≪サヤちゃんのお母様、お父様、サヤちゃんがお待ちしておりますので、一階のサービスカウンターまでお越しください。繰り返します。≫

 

「もう大丈夫よ。サヤちゃん。お母さんもお父さんもすぐに来るからね」

 

「うん!」

 

 こういう時、サービスカウンターとは便利なものだ。館内放送で目的の人物を呼ぶことが出来るので、迷子でも安心だろう。予定が狂うのは日常茶飯事だが、時間が押しているというのになかなか来ないというのは何時まで経っても慣れる者ではない。一方で、サヤは飴を舐めながら今も桃子と楽しそうに話をしている。

 

 呑気なものだ。自分よりも他人という日本人特有の自己犠牲的な精神というものだろうか。そんな姿を横眼で見ながら件の両親を探してみると。

 

「む」

 

サヤに非常に似た容姿をした女性を連れた小太りの男が目に入った。

 

「あ!お母さん!」

 

親の存在に気付いたサヤが母親の下へ走り出すが、ふと立ち止まり、男に向き直ると

 

「金色おにいちゃん!桃子おねえちゃん!ありがとう!」

 

そういってお礼を言ってから再び母親の下へ駆けていく。母親の方はサヤと抱きしめあった後、お礼として頭を下げ、それを遠目で確認しながら、桃子は親子がその場を離れていくのを手を振りながら見送っていく。

 

だが、その表情は硬い。

 

「どうした?」

 

「あの男の人」

 

「男?あの小太りの奴か?」

 

「魔族との繋がりがあるとして対魔忍のブラックリストに載っていた人でした」

 

「………妙なことは考えるなよ。そんなことよりまず自分の心配をすることだ。これ以上遅れると改造されたまま自由の身になるぞ。なりたいなら別にかまわんが」

 

「………」

 

「ほら、いくぞ」

 

「………はい」

 

自分より他人を心配する博愛精神は大変結構だが、それで自分がどうしようもない状態になられると本末転倒だし、男にとってもそれは困るので、少々強引だが、足早とホテルへ赴くのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

時刻は、夜の八時。夕食を済ませた二人は、すぐに部屋に戻り、準備を始める。遂にその時が来たのだ。身体は洗った。変なにおいも付いてないし、姿見で見る限り変な所は無い。

 

「………」

 

これからあの男に抱かれる。いや、本番はしないが、それでも一夜を共にする。桃子は身体を元に戻し、対魔忍として続けるため、男は身体を元に戻し、己の物にするために。

 

似通っているようで最終的な目的は全く違う。ただ、利害が一致しているだけの関係。

 

「うぅ………まだドキドキしてる」

 

とはいえ、これからお互いの裸を見ることになる。羞恥心はそう簡単に取り除けるものではない。もっと厳格な人間として生まれたなら心を無にして何も感じないとかそういうことが出来るのだろうが、そんな器用なことは桃子に出来そうになかった。

 

「すぅーーー………はぁーーー………」

 

深呼吸をする。二度、三度し、桃子は覚悟を決めた。バスタオルを身体に巻いた状態で、桃子は男の下へと歩を進める。

 

「じゅ、じゅ準備ができました」

 

「ああ」

 

男は、窓から見える景色を鑑賞していた。その手には酒瓶と二つのコップ。男に握られている方には酒が並々と注がれている。月の光によって、ウィスキーのような琥珀色の液体が照らされる。

 

「飲むか?度数は低いものにしてる。治療を促す意味でも飲んでおいた方が良い」

 

「私、未成年なんですけど」

 

「飲まないなら飲まないで良い。その分治療の時間が長引くだけで明日使える時間も少なくなるだけだ」

 

さぁどうする?決めるのはお前だ。と言外に男は言った。何事も自己責任として押し付けられたコップには、男が飲んでいたものと同じ酒が少量入っていた。コップから伝わる冷たさが良く冷えているものだということが分かる。

 

「ええい、ままよ……!」

 

前園桃子は一気にそれを飲み干し、口内から咽喉へ、咽喉から食道へ、胃に到達する間、まるで時間の流れが遅くなったように桃子の脳内一杯に、芳醇な香りと甘みという情報がゆっくりと染み渡った。

 

砂糖で作ったジュースのようなしつこい味ではなく、フルーツジュースのようなあっさりとした味わいとアルコール独特の風味とそれに比例して確かに存在するフルーティな風味があり、それが桃子の体内を巡った。

 

「美味しい………」

 

「だろ?俺のいたところでは、成人になる前にこいつを飲ませることで酒の味を慣れさせる」

 

「………貴方のいたところって……どんなところなんですか?」

 

素朴な疑問だった。男は桃子のコップに少量の酒を注ぎ、口を開く。

 

「ちょっとした片田舎だ。名前なんてもう忘れた。なにせもう数千年前の話だ」

 

「そんなに生きてるんですね」

 

「まぁな」

 

「本当は嘘だったりしません?」

 

「さぁ、どうだろうな」

 

もはや慣れたものだ。桃子が男に質問をする中で自分に関係することだった場合、それが嘘か本当かはともかく、真偽を問うと、こうやって煙に巻く。

 

「話はここまでだ。お前もそろそろ気分が乗ってきただろう」

 

そういって男は有無を言わさず彼女を抱き上げ、ベッドへと連れていく。

 

「ひゃ!ま、待ってください!私普通に立てますから」

 

「聞く耳は持たん。ただでさえ時間が無いのだ。お前に拒否権などない」

 

ベッドに桃子を降ろし、その隣に、男は腰かけた。

 

「勝手に動くのは許すが暴れるなよ。お前だって無駄に時間をかけたくないだろうからな」

 

「ま、待ってください!やっぱり、私、まだ心の準備が」

 

「聞く耳は持たんと言ったはずだぞ?」

 

「ひぅっ!」

 

顎を持ち上げて男と桃子の視線が交わる。

 

「え、ちょっ、き、キスは、その、私、好きな人と」

 

「だから条件はよく考えて言えと言っただろうに。自分の迂闊さを呪え」

 

「ふむぅ!?」

 

唇が重ねられた。男の舌が口内を割って侵入し、桃子の舌へ絡みつく。

 

「んむ……ふ……ちゅ……ん……ぷぁ……ふぁむ」

 

殆ど流されるままに舌を差し出すと、男の舌もそれに応えるようにリードする。

 

「ちゅぷ……あふ、ん、んん……ちゅ、んむ、ふんぅ………」

 

意外にも男の愛撫は想像していたほどに苛烈ではなかった。こうしてお互い肌は密着しあっているが、それだけで安心を感じ、次第に絡み合うようなキスは貪欲に、そして甘美なものとなっていく。

 

「くちゅ……れぉ……はむぅ……んふぅ……ん……んぁ……ん……ちゅ」

 

甘美な刺激は脳髄をしびれさせ、じ~ん、と目元のあたりが熱を持ち始め、意図せずに男の肩を抱いていた。ぬろぉ、と唇が離れる頃には、いくつもの唾液の線が出来上がっていた。桃子の全身は力が抜け、瞳はトローンとしていた。

 

「はぁ………」

 

トクンと波打つ心臓の鼓動にぶるりと身が震えた。寒さにではない。そんなことがある筈がないのに、まるで自分が愛されているかのような、そんな情熱的な愛撫の余韻によるものだった。

 

甘くとろけるような舌の動きにの中に、仄かに先ほど飲んだ酒の味と香りがした。

 

「優しいん……ですね」

 

「………」

 

男は口では答えず、再び唇が重ねられた。

 

「んん……ちゅ………はぁ………んむ……ん……ぇお……」

 

今度はお互いに絡み合うようなキス。乗り気でなかった桃子もいつの間にか自ら積極的になって居ることにボーっとした頭で驚いていた。

 

直接的な快楽ではなく、心の部分で、この男とのキスは満たされるという感覚があることが原因だった。

 

「くちゅ……はぁぷ……んん……ぁ……ふ……ふんん」

 

酒を飲んだことによる手助けもあるのだろう。だが、この感覚はとても心地よく。もっと、もっと、せがみたくなる優しい快感だ。ワームに蹂躙され暴力的な快楽に身をさらされていたことによるトラウマもそれを助長させていた。

 

「あ………」

 

下腹部に手が触れた。ぷちゅっ、という水音で自分の秘唇が濡れていることを感じ取った。

 

(私って……こんなにいやらしかったのかな)

 

キスを続けながらゆっくりとした動きで愛液でまぶした指で勃起したクリトリスが撫でつけられる。

 

「ふんぅ…!ちゅは……ふぅんん!ん……んん!」

 

男の温もりのある手が桃子の胸にも伸びた。掬い上げるように、生地を揉み込むように、指の腹が乳首を撫で、乳輪をなぞるような動きにも桃子の身体は過剰に反応し。

 

「ふぅ!?ん!ん!ん!んんん!?ふぁ!あ!あ!」

 

あっさりと快感の山は頂へと達してしまった。何回も腰を跳ね上げ、飛沫をまき散らす。

 

(自分でシたことあるけど、人にやってもらうのって、こんなに気持ち良かったんだ)

 

「ぁ………」

 

男の黄金の瞳が再び桃子と交わる。自然と彼女は目を閉じ唇を突きだす状態になり、男もその思いに応えるように桃子と唇を重ねていく。

 

男はそのまま桃子のアソコの愛撫を続行する。次は親指でクリトリスを弄びながら裏側を中指と人差し指で突き上げ、徐々に力を入れながらぐりぐりと挟み込むように愛撫していく。

 

「ふんむぅ!……んんぅ!ん!ん!」

 

(スゴ……ぉい……キスしながらされると、こんなに気持ちいいなんて。私、知らなかった。あ、あ、だめ、もうイっちゃ、イっちゃう。イク、イク、イク、イク、イクゥ!)

 

「ンンッ!」

 

(あっ!あっ!すごい、このまましてくれる!とまらない!もっと上にイクぅ!)

 

ぷしゅっ!ぱしゅっ!ぱちゅっ!ぷしゅぅっっ!

 

「ぁ……!ぁ……!っ……!っ……!……はぁぁ……」

 

この短い間に、何回言ったのかわからない。男の愛撫に一瞬で複数の絶頂が同時に来たような感覚だ。絶頂するたびに、心の中でぽっかりと穴が空いた部分を埋めてくれるような感覚が病みつきになりそうなほどに甘美なものとなって桃子の神経を駆け巡った。

 

「あ………?」

 

「そっちばかり楽しんでもらっては困るな。入れない代わりに口でしてくれ」

 

そうやって突き出されたのは桃子の痴態に興奮して血が集まった陰茎。

 

(貴方は……私で……興奮してくれたんですか?)

 

ぽぅ、と胸のうちに湧き上がった感覚に戸惑っていると、気付いたときには、桃子は頷いていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「歯は立てるな。舌と唇で包むようにすることだ」

 

「ふむ……ちゅむ……ちゅるる……んむ……ふっ……ふっ」

 

「そうだ。上手いぞ」

 

シックスナインになって桃子は自ら男のソレに奉仕していく。唇で根元を吸い上げ、舌で亀頭を撫でまわす。すると、気持ちいいと答えてくれるかのように陰茎はピクッと口内で動く。それが少しだけ可愛くて、こうしたらどういう反応をするのだろう。と自ら積極的に陰茎を舐め挙げ、窄めていく。

 

「ん……ん……ふうんん……ん……ふむぅん」

 

男も男で桃子の秘唇を舐め挙げ、クリトリスに吸い付いたりと、既に発情しきったソレは、白みがかった粘液を洪水のように垂れ流していた。男を受け入れる準備を完全に終えていたそれには、残念ながら挿入することは条件によりできない。

 

指で割り開き、ゆっくりと舌を挿入していくと、暖かい肉の感触が舌先を締め付けた。

 

「んむぅん!……んん!ん……じゅるぅ……じゅぶ……ちゅる」

 

中で動かすだけでも達してしまう桃子を畳みかけるように男は一度舌を引き抜き、クリトリスを巻き込みながら秘唇を舐め挙げた。

 

「ん~~ッ!?」

 

全身を痙攣させ、桃子は一際大きなオーガズムを迎えた。余りの快感にプシッと股間からは潮を吹き、舐め続けていた男の顔へと飛沫がかかった。

 

「……桃子」

 

「じゅる……じゅぼ……ふぁい?」

 

「今日最後の仕上げだ。これから術を少しだけ解く。堪えろよ」

 

「へ?」

 

「―――――――」

 

ボソボソと何かを呟くと同時に、桃子の身体に蹂躙するような快楽が発現した。

 

「~~~~っ!?あ゛!?」

 

快楽が一瞬で頂へ上り詰め、一線を越える直前で快感の波が止まった。イきたくてもイけない快感に桃子は当惑する。

 

「奉仕を続けろ。一緒にイクことが出来たら。今日はこれで終いだ」

 

「あっ!あっ!はむん!ん!じゅぶ!じゅぶ!じゅぼ!じゅろろろろぉぉ!」

 

(いやぁ……!気持ちいいのが止まらないのに、辛いよぉ。はやくぅ……イッてぇぇ……!イキたいのぉ!)

 

ぐちゃぐちゃになった頭で男の言われるままに奉仕を続ける。鈴口を舌先で弄ったり、咽喉の裏で亀頭を擦ったりと色々試しているが、男が達する兆しはまだ来ない。

 

だんだん凝縮されていく快感がまるで時限爆弾のように桃子の中で渦巻いている。

 

イキたいイキたいイキたいイキたいイキたい。頭の中を津波のように浸食していく欲望に頭がおかしくなりそうになる。

 

(はやく……はやく……はやくぅ!)

 

「っ……イクぞ……飲み込め。それで終わりだ」

 

(あ!来た!飲むから!早く!開放して!)

 

ドプッ!どくっ!どくっ!どくっ!

 

「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!」

 

桃子の身体は一瞬にして弾けた。せき止められた快感がダムが決壊したかのように明らかな許容をオーバーした快感に桃子は朦朧とした意識の中、男の言われたことを守るために、精液を飲み込んでいく。

 

 

「うぅ……うううう………ごくっ……ぷは………はっ、はっ、はっ、んは……はうぅぅ………」

 

飲み込み切ったことを確信した桃子はそれ以上意識を保てなかった。薄れゆく意識の中、最後に感じたのは。塗りつぶされた快楽の中に確かに存在した物足りなさだった。




やはりエロゲー主人公に必要なのはマジ☆カルち○○だと思う。

っていうか、物語の都合上必要なことだから困る。



アリーナイベントやってくと少しずつだけどクソ仕様が分かってくる。こりゃ運営も失敗かねぇ。同じレベルで戦えるシステムは良いんだけど、それだったら音楽とSEを出せるようにしてほしい今日この頃。

前園桃子編が終わったら本格的に原作突入かねぇ。

それから、話の中でエロイ目にあうキャラクター、またはメインのキャラクターの名前をサブタイトルに載せました。
これで安心してエロシーンが見れるね(にっこり)
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