そうだとしてどうしていた?
ただの人形の、お前が
「メンテの時間だぞ、アロナ」
彼の一言で、シッテムの箱が起動する。
本来パスワードが必要なはずのシッテムの箱が自動的に彼を招き入れる
「おはよう。よく眠れたか?」
『.....こうてい......おはようござい......ます......』
「まだ眠そうやね」
先生がメンテナンスをよく忘れるので、クラフトチェンバーでシッテムの箱を複製してアルトさんにメンテナンスをしてもらっています。
『......申し訳ありません......寝ぼけていました』
「いんや、普通はもっと寝ててええんやで」
アルトさんが画面越しに私の頭を撫でる。
その行動に私はつい頬を染めてしまう。けど、アルトさんはそれに気が付かない
「えーと......声帯調整から始めっか」
Take off toward a dream
ショットライザーとの接続を確認。リンクを開始します
「......うん、特に調整部位はなし、と」
アルトさんはホログラムを空中に投影して流れるようにメンテナンスを進めていく。
「大丈夫そうだな。おっしめんてしゅうりょー」
空中に投影されたウィンドウを仕舞い、軽く画面を拭いて終了。
『ありがとうございます。』
「おう。これからは先生にもメンテ欠かすなって釘刺しといてくれ。」
その一言に私は一瞬嫌なことを考えます
......もしかして、めんどくさいのでしょうか。
そりゃそうです。本来なら先生がやらなければいけないことですから。生徒であるアルトさんがやらなければいけない道理はありません
「どっかの拍子でもしもアロナちゃんがぶっ壊れたら悲しいからな。そうならないようにちゃんと大人の目をつけろって言っといてくれるか?」
『.................否定』
「なんでやねん」
そう伝えれば、確かに先生はしっかりメンテナンスをしてくれるでしょう。
あんな感じですが、責任感が強くてやることはやる人ですから。
『........................』
でも、そうしたらアルトさんとのこの時間がなくなってしまう。
『それより、今日も日課をしましょう。先生が起きるまでまだ時間があります』
「そうすっか。んじゃカウント頼むわ」
空中に再びウィンドウが現れ、『デイリーミッション』と表示される。
「えーと......これなら昨日やった分と重複するな。よし、一括で」
『了解です』
クリアを祝福するような音楽が流れ、アルトの手元に青色の宝石のようなものが現れる。
「これで大体二万個ぐらいか?何に使うんだろうな......」
神秘にもにた輝きを放つ石。アルトはそれを見つめる。
「......とりあえず今日も取っとくか。」
小さな袋に入るほどのサイズなので、今日もポーチに入れておく。
「んじゃ、今日も引き続きよろしくな」
『はい。必要な時はいつでも呼んでください。』
そう言って、私は今日の分の準備をする。
先生のサポートはもちろん、アルトさんのライダーシステムの出力を調整します。
出力調整は一歩間違えれば極端に弱くしてしまったり、極端に強くしてしまったりします。
なのでこれは、アルトさんからの多大な信頼によるものなんですよ。どや
だからこれは、
私だけの役目なんです
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「おはようございますアルトさん」
すでに瓦礫となったシャーレの建物があった場所。
そこで唯一焼け残った地下室。そこで私はアルトさんのメンテナンスを始めます。
「朝はまず歯磨きからですよ。
歯磨き粉が塗られた歯ブラシを、横になっているアルトさんの口に差し込みます。
「歯医者さんによると、一本の歯につき大体10秒ほど掛けて磨くのが1番効果的だそうです。」
雑学を交えながら、膝に乗せたアルトさんの頭がずれないように慎重に磨いていきます。
「少し落ち着いたら、一緒にまたプリンとか、ドーナツを食べましょう。」
だらしなく開けられた瞳が、私を見つめている。
「ですから、歯磨きはしっかりしましょうね」
私が、しっかりしてあげますから
何も心配しなくていいんです
「大丈夫です。」
頬に触れる。
冷たい
「大丈夫です」
撫でてくれた手に触れる。
動かない
「大丈夫、です」
その手を、私の頭の上に持っていく。
「だい、じょうぶです」
こうすれば、撫でてくれたあの頃を思い出せるから
「だい......ぐすっ......じょうぶ......っ」
頬に触れてくれたあの感覚を思い出せるから
「ぅっ......え......あ.........ぁ」
悲しくなんてありません
「......っ......う......大丈夫、です」
あなたがいつか帰ってきてくれる日まで
「ずっと、待ってます......から」
メンテナンスは、欠かしませんから
死体に何したって戻ってこないのにね。てかお前がその信頼の証を裏切ったのが悪いだろ。自惚れてるんじゃないよ