主人公に大きな業背負わせるの大好き侍。
ホルスの憤怒
「垓先輩!ほら!」
小鳥遊ホシノは指を刺す。目の前いっぱいに広がる青色の水槽が、ホシノの蒼色の瞳を深く染め上げる。
「鯨ですよ!早くこっちに来て一緒に見ましょうよ!」
呼ばれた垓は微笑むばかりで、動かない。
水槽の上から刺す光が、垓とホシノの間を隔てている。
「......先輩?」
ホシノは訝しみ、垓に近づく
_________________
『せ......ん.......ぱい』
小鳥遊ホシノだったものが手を伸ばす。真っ赤に染まったその体が『秤アルト』に向かって行く。だが、アルトはその体を思い切り蹴り飛ばした。
「ホシノ!!頼む元に戻ってくれ!『お願いだ』!!」
秤アルトは自身の天輪に向かって悲痛に叫び続ける。まるで、流れ星にお願い事をする子供のように。
ショットライザーの弾丸が小鳥遊ホシノ制圧の為放たれていく。
だが、ライダーシステムの拡張技能を使用していない時点で『恐怖』の力に通るわけもない。
だが、ライダーシステムによる弾丸強化。それは明確に小鳥遊ホシノの『死』を意味する。
_________________
そして、ホシノは垓の手を取る。
そのまま握った手を引き、水槽まで近づける。
「あれが鯨ですよ。とっても綺麗ですね......」
垓も蒼色の光に照らされ、大きな水槽を見上げる。確かに巨大な鯨が視界を奪い、その雄大な体をこれでもかとゆらめかせている。
「昔はもっとたくさん種類がいたそうですが、乱獲で数も種類も減っちゃったそうです」
確かにそうだ。鯨は昭和二十年代から四十年代ほどに乱獲され、今では絶滅危惧種のレッドリストに登録されている。
だが、なぜそれをホシノが知っている?
キヴォトスでは、乱獲など起こっていないのに。
___________________
小鳥遊ホシノだったものは秤アルトにショットガンの弾丸を放つ。
『は......あ......はは.......!』
まるでその行為を楽しむかのように、圧倒的なほどの破壊を振り撒いていく。
力を手にした子供が、どうなってしまうかは大人の予想通りだろう
「づっ......!?」
あまりの破壊力に秤アルトは吹き飛ぶ。
骨が露出するほどに肉が抉れ、少し砕けた骨の隙間から血液が流れ出す。
変身すれば、修復が始まると言うのに、それをしない。
少なからず秤アルトはそれを使う気はさらさらないようだ。
「ま、ってろ......!」
這ってでも、破壊を楽しんでいる小鳥遊ホシノを救おうと自らを奮起させる。
まるで、我が子の間違いを治そうとする親のように。
『......あ“.......ぅ“..............くじ.........ら............』
譫言のように何かを呟き続ける小鳥遊ホシノは、這っている男に対して銃を向けた。
だと言うのに秤アルトはそれを避けようともしない。
________________
「.........ホシノ」
「はい?」
水槽を見上げ、先ほどからずっと黙っていた垓がようやく口を開いた。
優しく、穏やかな口調。
その齢に見合わぬあまりある包容力だった。
「俺のことはどれだけ嫌ってもいいからさ」
________________
「ホシノ先輩!!」
「シロ、コ?」
砂地を重装備で駆けてくる自身の後輩。
秤アルトは驚き、小鳥遊ホシノはその声の方向に顔を向ける。
光を映さなくなったその瞳が、己が後輩に向けられた。
確定的な、殺意
「逃げろッシロコ!!」
一手遅れた。小鳥遊ホシノはショットガン片手に砂狼シロコに向かって走り出した。
常人ならば絶対に追いつけないその走力。
『Attache case opens to release the incredibly powerful shotgun.』
『バレット』
プログライズキーを起動させ、アタッシュケース型の銃に装填する。
『Progrise key confirmed. Ready to utilize.』
『ウェアウルフズアビリティ』
秤アルトは、撃った。
狙ったのは、胴体。確実に殺傷を与える致命の一撃
『シューティングカバンショット』
弾丸を受けた小鳥遊ホシノは横に思い切り吹っ飛んだ。
だが、想定していたほどのダメージは与えられなかった
「せん、ぱい?」
“アルト“は“ホシノ“の元に歩き出す。
ホシノは食らった弾丸に苦しむそぶりを見せず、砂狼シロコに向かってその銃口を向けた。
「それは、ダメだろ」
だが、その銃口を踵で砕き、その服を思い切り掴んでマウントを取る。
そして、アルトはフルフェイスのマスクを被った。
________________
垓はホシノを軽く抱きしめ、その桃色の頭髪を撫でる。
「『お願いだから』、自分の大切な物は、忘れないでほしい」
________________
マウントを取り、冷え切った瞳を落とし、その首に手をかける
ぐぐぐぐぐ
と、骨の軋む音が聞こえる。
『.........が...........っ.........』
苦しむような声が聞こえたが、意にも返さず首を締め続ける。
________________
「......はい」
ホシノはその抱擁を受け入れ、ホシノ自身も垓を抱きしめる。
_________________
『あ“.........う“.........ヒュ............せん............ぱい』
「五月蝿い」
冷たい声。その中には微かに嗚咽が混ざっていた。
ボロボロの仮面から、雫が滲み出す
「五月蝿い」
__________________
そして、ホシノの左胸に『グロック』が突き立てられる。
「......先輩」
____________________
「先輩“!!やめ________________
砂狼シロコはアルトを止めに入ろうとした。
ゴキ
だが、アルトは止める気などさらさら無かった。
容赦なくホシノの首の骨をへし折る。
抵抗を続けていた両腕は、だらんとだらしなく地に伏せられた
________________
「大好きです」
「......ああ」
垓は、容赦なく引き金を引いた。
飛び散った血飛沫は、水槽のガラス面にへばり付く
それと同時にホシノの全体重が預けられ、頭部に浮かんだ光輪が砕け散る
アルトはその頸から手を離し、仮面のままホシノを見下ろす。
垓は血塗れのホシノを抱える。
その憤怒を、受け止めながら彼は赤い瞳で答えた。
「俺もだよ」
その、悪意を
こっちのアルト君はどうしようもない時仮面を被ってその涙を隠します。
さすが仮面ライダー。みんなのヒーロ
誰かを助けるためには、誰かを殺さなきゃいけないのをよく知ってる。