「アルトさん、こんにちアロにゃです」
「......急にどうした」
久しぶりに義体でアロナが出てきたかと思ったら、なぜか猫耳と尻尾をつけて出てきた。
「今日は猫の日ですよ?二月二十二日。人が猫であることを肯定される日です。」
「一体何があったかは知らんがその認識は危ういぞ」
「そうですね。では撫でてください」
「何がどうなってそうなった」
「私は猫なので撫でられなきゃいけないんです......にゃん」
そう言ってアルトの膝に頭を乗せ、ごろんとまさに猫のように横になるアロナ。
そして膝の上でにゃーにゃーと猫の鳴き真似を始めた。
「おーおーコンニャロこの〜かわいこぶったってそうはいかんぞ」
そう言いつつすでにアロナの頭やらお腹を撫でるアルト。
撫でられているアロナも気持ちよさそうに目を細める。
「ん.........」
アルトの手を手繰り寄せ、自分の頬まで持っていく。
「随分甘えんぼな猫ちゃんやね」
「そうです。たくさん甘やかさないとグレちゃうのでもっと甘やかしてください。」
ベッドの上に足を伸ばして座ったアルトさんに、極力体重をかけないように注意して抱きつきます。
「その分、私もアルトさんのことを甘やかしますので」
痩せ細った、腕が私を撫でてくれる。
「.........優しい猫ちゃんだな。ありがと」
「......そうです。猫は飼い主によく似るので、優しくて背負い込むアルトさんに似ちゃったんです」
体には所々アザがあり、みているだけで痛々しい。
腕や足には包帯が巻かれており、服はいつものいろいろな学園の制服を混合させたような服ではなく、無地の病院服。
「ご飯もちゃんと食べてください。食べられないならあーんもしてあげますから」
「......食道焼けがひどくなっちゃってさ、吐血酷いから食えないんだよね」
座っているのも、病院のベッド。
でも、病院を管理する人もいなくなってしまったからただただ体を休めるだけの役割しか残らない雨ざらしの病室にアルトさんは一人ぼっちで佇んでいる。
「......アロナがさ、こうやって癒しに来てくれるだけで嬉しいよ。めっちゃ癒される」
空な笑顔を向けるアルトさん。
それでも、優しく私を撫でてくれる。本当に、どこまで優しいんですか
「......もう少し、このままでいい?」
「......もちろんです。お好きなだけどうぞ」
アルトはアロナを撫で続ける。雨の降りしきる音が、静かに鳴り響いていた。
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「じゃあ、先生の事よろしくな」
最後にアロナをもう一撫して、装備を整えたアルトは病院の周りを廻るようだ。
「......アルトさん」
「ん?」
腕には風紀委員会の腕章、肩からは防弾盾が下げられていて、常に戦闘体制を維持しているのか腰にはショットライザーがベルト状態で取り付けられている。
「アロにゃ成分を摂取したい時は、いつでもどうぞ」
「......ふはっ、おけ。ほんとありがと」
久しぶりに見せてくれた、屈託のない笑顔。
だが、その表情も一瞬にして冷えて、冷たいものに変わってしまった。
今日も、アルトさんはその鉛のような体を動かす。
だからこそ、彼女は願わずにはいられなかった。
「......アルトさんが、いつか、猫みたいに自由になれますように」
そんな、叶いっこないただの願望を。
殺して殺して殺し続けた先に、何もないのが修羅の道。
それを歩くことを強要したのは、いったい誰だろうか