都心のオフィス街の一角にあるオシャレな喫茶店。
森のように立ち並ぶ高層オフィスビルの中にポツンと佇む二階建ての店舗はほんの数年前に開業したばかりだ。休憩や商談、時にはサボり。このオフィス街の人々はそれぞれの方法でこの喫茶店を利用している。席ごとに仕切りが設置されているためプライバシーが守られやすく、注文もタッチパネルを採用しているため一々店員を呼ぶ必要がない。多種多様なビジネスマンやビジネスウーマンにとって都合がいいのだ。
そんな喫茶店の奥、最も目立たない一番隅のテーブル席を女性客がいた。
その正体はAZKiだ。まだ湯気の立つ紅茶を淹れたカップを傾け、いくらか喉を通す。
すると、その席に一人の女性が訪れた。どう見ても店員ではないのはその服装から分かる。
深く被ったハンチング帽、目元まで隠れるマスク、黒のサングラス。帽子の下から伸びるのは水色の艶やかなツインテール。
知らない者からしたら完全に不審者にしか見えない出で立ちの女性は無言でAZKiの向かいに座った。
そんな彼女を見てAZKiは思わず噴き出した。
「ぷっ……どう見ても不審者じゃん、その変装……却ってそっちの方が怪しく見えるって」
「だ、だってさ……こうでもしないと大変なんだよ、ファンに見つかりでもしたらもう身動き取れなくなっちゃうもん」
「今じゃすっかり大人気アーティストだもんね、人気者も大変だ」
軽口を叩き合い、そしてお互いにクスクス笑い合う。
そして女性はサングラスとマスクを外した。可愛らしくもあり、しかし芯の強さを思わせる顔を明かし、それをみたAZKiも柔らかな笑顔を見せる。
星街すいせい。
現在、最も勢いのある新進気鋭のアーティストだ。時にパワフル、時に繊細な歌声を使い分け、圧倒的なパフォーマンスで観客を引き込み、ライブを大いに盛り上げる。直近二、三年で一気にファンを増やし、今年は普段から目標として掲げていた武道館ライブも開催、大成功を収めた。そして次の目標はドームだと公言しており、そこに向かって日々研鑽と邁進を続けるストイックな歌姫だ。
そして、彼女はAZKiの友人でもある。
歌うことが好きな二人はすぐに意気投合し、何年もの間、共に歌唱力を高め合い続けた仲だ。立場が変わってもその友情は変わらず、今でも時折世間の目を盗んで会っているのだ。
「それで、今日は相談したいことがあるんだっけ?」
世間話もそこそこに、AZKiは今日の本題に話を切り出す。
「そうなの、AZKiちゃんにしか相談できないこと」
すいせいがそう言って話題を切り出そうとする。しかし、
「……あ、ちょっと待って」
それを一旦打ち切り、さりげなく壁の方向へと僅かに顔を傾ける。
彼女がそのような行動を取った理由をAZKiはすぐに察した。
コトン、とガラスのコップに入った水がテーブルに置かれる。
「ご注文が決まりましたらタッチパネルにてお願いします~、操作方法等分からないことがありましたらお気軽にお呼び出し下さい~」
間延びした声の店員は去っていく。姿が見えなくなったのを確認し、すいせいはホッ、と小さく息を吐く。
「あー……ホント大変だよ、ちょっと前に別の喫茶店で身バレしたことあったんだけど、その時はマジでヤバかったわ……」
「あ、それSNSで見た。写真とかたくさん上がってたね」
そうなのよ~、と身を乗り出すすいせい。
「みんなお構いなしに写真取るし、人が集まり過ぎて身動き取れないし、『すいちゃんがどこどこの喫茶店にいる!』って拡散されるし、握手求めてくるファンもいるし……あたし個人としては握手くらいなら別にいいんだけどね、あれだけたくさんいるとみんなが『私も! 私も!』ってなって収拾つかなくなっちゃうのがね……それにお店の迷惑にもなっちゃうし」
ホント楽じゃないよ、と零す。しかし、すぐにAZKiに笑顔を見せた。
「だから、AZKiちゃんみたいななんでも話せる相手がいるの、ホンット助かる! いつもありがと、AZKiちゃん!」
「こちらこそだよ、すいちゃんとお話するのって楽しいからね」
お互いに顔を見合わせ、そしてクスクス笑い合う。
「それで、相談っていうのは?」
「うん、えっとね…………AZKiちゃん」
すいせいは少し躊躇して、しかしそれからAZKiの顔を真っ直ぐに見る。
「あたし、色気ってないのかな?」
「…………え?」
思ってもみなかった相談内容にAZKiは面食らう。一方、すいせいはふざけているようには到底見えず、真剣な顔を崩さない。
「この前SNSで『星街すいせいには色気が足りない』みたいなこと書かれてるの見てね。最初はアンチがテキトーなこと言ってるだけだと思ってたんだけど……けど、ちょっと納得しちゃったんだよね。あたし、激しいロックとか元気な感じの曲は多いけど、なんていうか大人な感じの曲って今まであんまり歌ってこなかったな、って」
すいせいの独白に対してAZKiは頷いたり、相槌を打ちながらしっかりと聞く。
「ステップアップするために新しい挑戦もしていかなきゃ、っていうのは前から思ってたの。だから『星街すいせいって大人な曲も歌えるんだ』って思ってもらえるようになりたい。それが今の私が取り組むべきテーマかな、って」
真っ直ぐな目で伝えるすいせい。それを真正面に受け止めるAZKi。
「AZKiちゃん、あたし……どうやったら大人に見える? どうすれば……大人になれる?」
すいせいは問う。
AZKiはおもむろに顔を上げ、すいせいを真っ直ぐに見据えて言った。
「すいちゃん……すいちゃんに足りないのは、きっと経験だよ」
「経験……」
そ、とAZKiは続ける。
「すいちゃんって今まで恋愛とか、そういうのには全く無縁だったんでしょ?」
「うっ……」
図星を突かれ、思わず声を詰まらせるすいせい。指摘の通りで、すいせいは今までに恋愛を始めとした色恋沙汰とは全く無縁の人生を送ってきた。我が強く、自らの意見を押し通す傾向が強いために恋愛事が向いていないことを自覚しており、一生結婚できないし、それでいいと思っている。
「け、けど……別に気になってる人とかいないし、いくら経験作りのためとはいえ興味のない相手と恋愛するとかないし……」
「まあ、そうだよね〜」
AZKiはそう言って、カップを再び傾ける。次にテーブルに置かれた時、その中身は空になっていた。
「けど大丈夫、AZKiに任せて。実はちょうどいい相手知ってるんだ」
「…………は?」
どういうことなのか、理解が追いつかないすいせいは間抜けな声を出し、目を丸くする。
それに対してAZKiは自信満々に頷いた。
「大丈夫。大丈夫だよ」
「…………えっと、何が?」
話が見えてこない状況にすいせいは戸惑うしかなかった。
◇
「もっとぉっ、もっとぉっ……!」
ラブホテルの一室で羽交い締めにされ、悩ましい声で要求する小柄で貧乳な全裸の女。
彼女を羽交い締めにする男はずっしりとした睾丸を揺らし、鋼の如き剛性を持った自慢のイチモツを濡れそぼった肉穴に突き立て、腰を打ちつけながら抜き差ししていた。
「あぁぁんっ、あぁんっ、ひぃぅんっ……! 今日もっ、今日も気持ちいぃのっ、建太のっ、チンポぉっ……!」
「かなたのマンコも、相変わらずの締まり具合だぞっ……! ザーメン大好きな欲しがり名器めっ」
「だってぇっ、建太のがすごいからぁっ、こんなチンポっ、嫌いな女なんていないってぇっ……!」
その肉棒を絶賛し、
「あぁっ、ダメぇっ、またきちゃうぅぅっ…………あぁぅんっ!!」
かなたはこの日、三回目の絶頂。抜けた瞬間にハメ潮を一気に噴き散らし、脳の隅々までオーガズムが染み渡る。
「もう三回目だぞ……かなたばっかりイってないで、そろそろ俺のもイかせてくれよ」
「あぁっ、ごめんっ、ごめんなさぃっ……今度はっ、今度こそイかせるからぁ……」
結合部周りや両脚を自らが漏らした液でびしょびしょに濡らしながら、かなたは濡れた目を向ける。それが建太の情欲を一層燃え上がらせた。
これといって理由はない。だが建太は今日、無性にかなたとセックスがしたくなった。彼女のことがふと愛おしくなり、離したくないと思った。
それはかなたも同じだった。何か特別な理由があったわけではないが、身体の奥から急に湧き上がってきた性欲を抑えることなどできなかった。
だから終業後にこうして彼女をホテルに連れ込み、お互い生まれたままの姿で燃え上がる情欲をぶつけ合い、いつも以上に激しく愛し合っているのだ。
絶頂したばかりの膣を容赦なく突き続ける。その収縮度合いはさっきよりも断然強い。三点俵締めの名器が肉槍の中身を搾り取ろうとしている。
「おっ、おぉ……かなたっ、そろそろ俺もイけそうだっ……!」
「いいよっ、
「かなたっ……!!」
建太はスパートをかけ、そして鈴口から濃密な精液が一気に解き放たれる。
「あぁんっ!! あぁっ、はあぁぁぁ……!!」
タンクの栓が一旦外れ、中身が漏出するとそれを抑え込むのは困難になる。それは精液も同じで、一度射精が始まったらそれを途中で止めることはできない。搾精力が特に高いかなたの
脈動と共に一回一回、塊のようにたっぷりと吐き出される精液でかなたの膣はあっという間にいっぱいになる。その精液を注ぎ込んだ肉棒を引き抜いた途端に、こぽっ、といわんばかりの勢いで精液が逆流した。
「えへへ……気持ちよかった?」
「当たり前だろ。かなたのマンコは名器なんだ、これでイけない男はいないよ」
かなたは満更でもなさそうに笑い、そしてそれが妖艶な笑みへと変わる。
「ねぇ、もっとっ、もっとセックスしよっ……ボクの身体、まだ熱くてぇ……もっといっぱいセックスしたぁい……あんっ」
建太はかなたをベッドに押し倒した。脚を開かせ、挿入し、覆い被さる。小柄なその身体から生える腕と脚が建太をがっしりとホールドし、これ以上ないくらい密着した。
「エッチっ、セックスっ、あぁんっ、建太とのセックスだいしゅきいぃぃぃ……!!」
かなたは乱れに乱れる。その淫乱度合いは以前よりも明らかに増していた。
かなたの乱れっぷり。
それはお互いに昂ぶり、求め合っているから、だけではない。
最大の理由は、建太の体質変化である。
以前、建太が博衣こよりから手渡された『
そして、それはこよりの言う通りになった。
服用を始めてから二十日後にこよりに呼び出された建太は精液の成分検査をされ、
性欲も精力も一層盛んになった身体を手に入れた建太。
検査後はすぐにこよりを犯してメス犬の如く喘がせた。媚薬化精液で発情させられた彼女は助手達の性器の平凡なサイズや精力を引き合いにだして建太の性豪ぶりを絶賛し、回数を数えられなくなるほど絶頂した。
その翌日には終業後のオフィスでかなた、AZKi、クロヱの三人を相手にし、動けなくなるほどのエクスタシーを繰り返し与えた。三人同時に相手をしても余るほどの精力を手に入れた身体と剛直に、彼女達はますます魅了されていった。
その数日後、今度はラミィとトレーニングという名の性交。職業柄、体力に強い自信を持つラミィであったが、そんな彼女でも今の建太が繰り出す性技と精力には敵わず、男を釘づけにする美巨乳を揉みしだかれ、肉棒を挟んで扱かされ、肉壺に精液を注がれ続けて悦ぶラブドールにされてしまった。
セックスアピールがより一層強化された身体は建太の心にも影響を及ぼす。男としての自信が一層ついたことで、新たな欲望が芽生え始めていた。
もっとヤりたい。女を抱きたい。新しい女が欲しい。
成熟した文明社会である現代で複数人の異性と性的関係を持つことは憚られる行為だ。
だが、人間も動物、もっと言えば生物の一種である。
性的に優れた個体が少しでも多くの異性と交尾し、子孫を残そうとするのはごく自然なことだ。
建太が抱く欲望は人としては間違っていても、生物としては間違っていないのである。
◇
「建太くん、明日って空いてる?」
そう聞かれたのは金曜日の午後一時過ぎ、それも休憩時間ではないタイミングだ。
「え? 明日……」
「明日の午後って空いてる?」
「午後……なら空いてますね」
いくら性豪になろうとも建太の仕事上での立場は変わらない。
今日は終業後に『Snow&Flower』で汗を流し、その後はラミィの自宅で個人レッスンの予定だ。土曜日の午後は現時点では予定はない。
「じゃあ、その時間は空けといてくれる?」
「いいですけど、なんでです?」
「ちょっとね。今は詳しく言えないんだけど……それと、後で場所送っとくね」
「場所?」
「うん、来てほしい所があるの。……他の誰にもバレないようにね」
最後は耳打ちし、かなたやクロヱにも聞こえないように言った。その二人からも不審そうな視線を向けられたが、それ以上追及されることはなかった。
夕方からはジムで一時間少々運動し、その後はラミィの自宅で夜更けまで『運動』し、翌朝に彼女が作る朝食を頂いてから帰宅。身なりを整えてから昼前に自宅を後にする。
目的地は昨夜のうちにAZKiから送られてきていた。一度も行ったことのない地域にあり、最寄り駅へ行くために三回も乗り換えが必要な場所だ。
その面倒な道のりを経て着いた先は東京二十三区の端、都県境に近い住宅街だった。幹線道路から横道に入った先にある、駅から少し離れたその地区には一軒家が立ち並び、集合住宅は見当たらない。駅の方角を見渡せばマンションが見えるくらいだ。
どう見ても余所者がくるような場所ではなく、建太もどこか居心地の悪さを感じているが、それを跳ね除けて歩みを進める。
すると、住宅街の一角にカフェを見つけた。どうやら一軒家を改装した店舗らしく、玄関前に『Cafe 井の中』という名前とメニューが手書きされた小さな看板が置かれている。建太がAZKiから送られた地図を確認すると、どうやらそこが目的地のようだ。
カフェに入る。元が一般住宅なだけあって席数は少ない。店内の客は二組。オーナーと思しき三十代くらいの男性がキッチンからこちらを見て「いらっしゃいませ〜」と声をかけてくる。
「あ、来た。こっちこっち〜」
建太に気づいたAZKiが手招きしてくる。
そのすぐ隣には帽子を深く被った人物が座っている。性別はよく分からない。
建太は二人と向き合うように席に着いた。帽子の人物は屋内にも関わらずサングラスをかけており、さらにマスクも着けているため表情が分からない。怪しさ満点だ。
「ごめんね、分かりにくかったでしょ?」
「ホントですよ。この辺りに来るのは初めてだし、しかも住宅街の中なんて……まあ、無事見つかってよかったですけど」
建太とAZKiは軽い会話を交わす。先程のオーナーが「こちらお冷です」とコップに入った水を持ってくる。
オーナーが去って行ってすぐ、帽子の人物が怪訝そうな声でAZKiに訊く。
「……ねぇ、あたしに会わせたかったのってこの人?」
声だけを聞いた感じ、女性のようだ。
「うん、そうだよ」
「誰なの? この人」
「AZKiが勤めてる会社の後輩くん」
「後輩? ……なんで?」
帽子の女性の声が低くなる。それはAZKiを問い詰めるように、そして建太を威嚇しているかのようにも取れた。
「まあまあ、大丈夫だって。悪い人じゃないし、むしろ優秀な後輩よ」
「そういうことじゃなくて……」
二人のやり取りを見せられ続ける建太は痺れを切らし、問うた。
「あの、AZKiさん。こちらの方は一体……?」
「うん、そうだね…………建太くん、大きな声を出さないって約束できる?」
唐突にそう訊かれた真意を建太は理解できなかった。
「どういうことです?」
「いいから、約束できる?」
「えっと、まあ……大声さえ出さなきゃいいんですよね? それなら、まあ……」
結局よく分からないまま同意させられる。
すると、帽子の女性はおもむろにそれを外す。涼やかな青い髪が店内の照明を反射して光った。
それからマスクを外し、そして最後にサングラスをゆっくりと外していく。整った、そして芯の強そうな顔が建太のことをジッと見つめる。
その顔を建太は知っていた。そして思わず、
「星街す────!!」
その名前が思わず半分ほど飛び出した時、
「んぐぅっ!?」
その女性──星街すいせいが身を乗り出し、その手で乱暴に口を塞いできた。
「デカい声出すなって言ってんでしょ……!」
すいせいは鬼のような形相で睨んでくる。それからなるべく目立たないように周囲に目配せした。もう一組の客が何があったとばかりにこちらを見ている。しかし程なくして興味を失ったのか視線を外し、食事と会話を改めて楽しみ始めた。
「……バレてない? バレて…………なさそう」
ホッとしたのか、すいせいの手がようやく離れる。酸素を求めて建太は喘ぐ。
「ケホッ、ケホッ……」
いきなり口を塞がれたことにも驚いたが、それ以上に何故自分は星街すいせいとこうして対面できているのだろう、と思った。何せ相手は今をときめくスターである。
それを感じ取ったのか、AZKiが口を開いた。
「実はね、AZKiとすいちゃんって結構前から歌を通じて友達になってるの。それこそ、すいちゃんがプロの歌手としてデビューするよりも前からね。一緒にユニット組んでたこともあったのよ」
「そ、そうなんですか……?」
うん、と頷くAZKi。
「今はすいちゃんはスターの階段を駆け上がって、AZKiはかなけんで会社勤めしてるけど……時々二人だけでカラオケ行ったりもしてるのよ。……といってもここ暫く行けてないけどもね」
「ソロライブだったり外部のフェスに出演したりで忙しかったからね~。……そういうのも落ち着いて今は久々にまとまった休みが取れてる、ってわけ」
すいせいはAZKiに対しては親しげに、建太に対してはぶっきらぼうに言った。まだ警戒心を解いていないのが空気感や目つきで分かる。
「そ、それで、AZKi先輩はなんでここに僕を呼んだんですか? それも、星街さんと一緒に……」
今日一番の疑問をぶつける。一般人でしかない建太をわざわざ有名人であるすいせいと引き合わせる理由がまるで分からない。それどころか、
「それよ。AZKiちゃん、あたしにもどういうことなのか説明して」
すいせいでさえ詳しいことは知らないようだ。
二人の視線がAZKiに注がれる。彼女はそれを浴びながら、コホン、と咳払いを一つしてからすいせいに顔を向ける。
「すいちゃん、この前言ってたよね。『あたし、色気ってないのかな』『どうすれば大人に見える? 大人になれる?』って」
すいせいは首肯で返す。
「その悩みを解決してくれるのが……彼だよ」
すいせいは首を傾げる。
「……どういうこと?」
「まあ、AZKiに任せて。それと……場所、変えよっか」
◇
「ね、ねぇ……」
困惑した声を出すすいせい。
「AZKiちゃん…………? 一体、何をしてるの…………?」
「ん? 見ての通りだよ、すいちゃん」
「見ての通りって……ウソでしょ、そんなの……」
信じられない、と言わんばかりに目を見開き、顔を青ざめさせるすいせい。
「AZKiちゃん……自分が何してるのか、分かってるの……?」
「勿論、分かってるよ。それに、これくらいのことは週に何度かヤってるし」
その返答にすいせいはいよいよ絶句した。何か言いたそうにしているが、その言葉が出てこないのだ。
よく見知った、一緒に歌っていた相手がこんなことをするなどとは微塵も思っていなかったのだ。
すいせいの網膜に映るAZKiの行動。
それは、職場の後輩の下半身を文字通り丸裸にした後、晒け出された男根に対して膝立ちになってキスを繰り返し、舌を隅々まで這わせる、という痴態だった。それだけでなく、AZKi自身も脱いで煽情的な黒のランジェリー姿になっている。
そもそも、ここは都県境を跨いだ先にある埼玉県内のとあるラブホの一室だ。先程までいたカフェからだと都心側よりも埼玉県側の方がアクセスしやすく、しかも前者の方は何かしらのスクープを狙う記者が張っていることもある。AZKiが埼玉側のラブホを選んだ最大の理由はすいせいに醜聞が立つ可能性を考えたからだ。
しかし、そのすいせいからすればただただ困惑するしかなかった。心を許した親友が一緒とはいえ、今日会ったばかりの男と同じラブホの一室にいて、さらにその男と親友の痴態まで見せつけられているのだから。
しかも、二人が行為を始めたのは廊下に出るドアの前。すいせいの逃げ道を塞ぐためとしか思えない場所だった。
「んんっ、ん〜っ、ぴちゃぴちゃっ、ちゅっ……今日もオス臭さをプンプンさせてるね……匂いだけで、発情してきちゃう……」
AZKiは慈しむように肉棒のカリ首を一周分、そしてキンタマがぶら下がる根元からカウパーで濡れる先端まで舐め尽くす。そうすると今度は大きく口を開け、立派に勃ち上がるそれをゆっくりと口に含んでいく。
「んっ、んふっ……んふぅぅ……くぽっ、くぽっ、じゅぽっ、じゅぼっ、じゅぼっ」
仁王立ちする建太から生えた屈強な肉棒を、目尻を垂らしながら心底美味しそうにしゃぶるAZKi。頭を前後に動かし、カリ首辺りから根元までのストロークを繰り返す。時折糸を引いて涎が滴り落ち、床のマットに染み込んでいく。
フェラチオに建太は悦ぶ一方、困惑してもいた。どうして星街すいせいにこの痴態を見られているのか、こうなった経緯がまるで分からない。ホテルに連れて来られ、下半身を脱がされ、星街すいせいの目の前でしゃぶりつかれる。その全ての流れが唐突で、AZKiからは何の説明もない。
「やめて……そんなAZKiちゃん見たくないっ」
親友が見せる淫らな姿にすいせいはショックを受けていた。両手で目を覆い、顔を背けている。
「大体、あたしにこんなの見せて何がしたいのっ。おかしいって、こんなの……!」
すいせいは叫んだ。
しかしそれは部屋の空気を虚しく振動させるだけだった。
肉棒が発するオスのフェロモンに当てられたか、あるいは濃厚なフェラチオを親友に見られて興奮しているのか、AZKiの秘裂からは淫蜜が溢れ、ショーツのクロッチ部はそれを限界まで吸って濡れていた。
しゃぶるだけでなく、ぶら下がる玉袋を下から支え、マッサージするように繰り返し握る。最適な力加減を会得しているAZKiのキンタマ揉みで建太の精液が上がっていく。
「んっ、じゅぶっ、じゅぼっじゅぼっじゅぼっ! ふぅっ、んんっ、じゅぽじゅぽじゅぽっ!」
「おぉ……ザーメン上がってくるっ……!」
今の状況に疑問を残しつつも湧き上がる欲望には抗えない。建太は満足気に呟き、それからAZKiの頭を撫でる。
「ザーメン、口の中に
根元から湧き上がってくるそれを我慢せず、建太は出来たての濃い精液をAZKiの口腔に吐き出していく。熱々のそれは一回あたりの吐き出す量も増え、口をある程度膨らませなければ受け止めるのは難しいが、AZKiは見事それを受け止めきった。口を離すときに多少溢してしまったものの、それは全体で見れば微々たる量だ。
「んっ……んべっ」
精液で満たされた口腔内を建太に見せつけるAZKi。底の見えない白濁の池の中でピンク色の舌が蠢いている。
口を閉じてもAZKiはすぐに精飲しようとはしなかった。たっぷりの精液を保持したまま、今度はすいせいの方を見た。信じられない、と言いたそうな青ざめた表情を浮かべるすいせい。
そんな彼女に対してAZKiは一気に距離を詰め──
「んぶぅっ!?」
いきなり、オス臭と精液臭のする唇ですいせいに襲いかかる。もがこうとする彼女の両腕をそれぞれ掴んで制圧し、強引に唇を奪い、舌でこじ開ける。
そして、そこに建太から
「んっ、んっ!? んん〜っ!!」
「んふっ、んはぁっ……ん〜っ、んっ! ぴちゃっ、ちゅぷっ、ぴちゃっぴちゃぴちゃっちゅぷぅっ……!」
精液を口移ししながらのレズキス。本当にそういう関係というわけではなく、あくまでプレイなのだろうが、美人同士で淫らに絡み合う様は見ている建太をも興奮させる。
そのキスは五分にも及んだ。AZKiがようやく唇を離した時、互いの口の周りは唾液やいろんな体液によってベタつくように汚れていた。
「ケホッ、ケホッ……なに、するの、AZKiちゃん……!?」
汚物を排除するように精液を吐き捨てるすいせい。しかし、口移しされた分のいくらかは彼女の胃の中に流し込まれている。
「これが、すいちゃんを大人にする方法だよ」
「何それ、意味分かんない……」
流石のすいせいも親友に対しての苛立ちを隠さない。
「ホントどういうつもりなの、ホテルに連れて来られたと思ったらいきなり目の前で変態みたいなことして。そもそも、なんでコイツを引き合わせたのかもまだ説明してもらってないよね。いい加減説明して」
すいせいが敵意剥き出しで建太を指差し、それからAZKiのこともキッ、と睨む。
「返答次第では今後、縁切らせてもらうから」
「まあまあ、落ち着いてよすいちゃん──」
刹那、AZKiの瞳がギラリと光った。
「──そろそろ効いてくる頃だから」
「は? 何言ってん──」
そこまで言葉を発したその時、
「んっ……!?」
すいせいは自身に何らかの異変が起きたことを感じ取った。額に汗が浮かび始め、それから身体が内側から熱くなる。足元がふらつき始め、両脚のつけ根部分──正確に言えば陰唇の奥がムズムズしだした。
「うふふ、顔真っ赤だよ?」
AZKiはすいせいの耳元で言い聞かせるように告げた。
「なに、これ……?」
熱さは全身に広がっていく。それに比例して身体の疼きは徐々に強まっていく。思わず本能に突き動かされてしまいそうになるのを持ち前の負けん気で抑え込む。もし仮に他人の目がなければ、彼女もすぐさま服を脱ぎ捨てて燃え上がるような性欲を鎮めようとしていただろう。
「すいちゃん、どうしたのかな〜?」
AZKiはからかうようにすいせいの顔を覗き込む。まるでイタズラっ子のような言い方だが、その声色は艶っぽい。
「なんだが、身体が熱そうだね〜……」
「やっ、触らないでっ……!」
親友を振り払おうとするすいせい。しかし、どんどん強まる身体の奥の熱に動きが鈍る。それをAZKiは見逃さない。
「すいちゃん、我慢はダメだよ?」
素早く背後に回り込み、すいせいの身体に腕を絡みつかせる。彼女が纏うアウターを器用に脱がせると、襟のレース生地が印象的な黒のノースリーブを露わになる。薄くて涼やかなその上から、AZKiの指先が敏感な場所に触れた。
「あぁんっ!!」
思わず声を上げてしまったすいせい。
まだ服の上から乳首を触られただけなのに、電流が走ったかのような衝撃だった。
「うふふ、やっぱりすいちゃんもエッチな気分になってるんだ」
AZKiの指がうねうねとうねり、目立たない突起を的確に探し当てて転がすように弄ぶ。
「やめっ、あっ、あぁっ! あず、き、ちゃんっ……やっ、あっ、はぁっ、んんっ!」
敏感になった乳首はつつかれ、弾かれる度に痺れるような感触に襲われる。喘ぎ声を我慢できず、身を捩らせずにはいられない。
「イイ声で鳴くね、すいちゃん。おっぱい触られるのがそんなに気持ちいいんだ」
「違っ……! おかしいっ、こんなのおかしいっ……!」
頭をブンブンっ、と左右に激しく振って否定する。しかし説得力がまるでないのは誰の目にも明らかだ。
「おっぱいでこれなら……こっちは、どうなのかなぁ?」
AZKiの片方の手が胸部から離れ、今度はすいせいの下半身へと向かう。スカートの中に潜り込んだそれはタイツに手をかけ、下へとずらしつつその中へと差し入れていく。
「やっ、やだっ……! んんっ!」
「あれれ〜? なんだかぬるぬるしてるぞ〜?」
わざとらしくそう言うと、AZKiはそのぬるぬるの発生源を指で直接、繰り返しなぞり始めた。指に纏わりつくぬるぬるは分かりやすくその量を増し、そこを保護していたショーツにも染み込んでいく。
「すいちゃんのエッチなお汁が止まらないね」
唇がくっつきそうな至近距離から、すいせいの耳の穴に直接その言葉を送り込む。ふぅーっ、と息を吹きかけると、ビクっ、ビクンっ、とすいせいの身体が震えた。
「すいちゃんが乱れる姿、もっと見せて?」
AZKiはさらに踏み込んでいく。乳首を苛めていた手をノースリーブの袖口に差し込み、ブラの下に潜り込ませる。平野のように起伏のない乳房で勃起する乳首を今度は直接捉え、同じように捏ね回し、弄んでいく。
「あぁっ、ダメっ! 直接、なんてぇっ……!」
「これだけじゃないよ、下の方もいっぱい気持ちよくしてあげる」
割れ目をなぞるだけだった指が、ぬぷぷぷっ、と
「ひうっ! やめてっ、あぁっ、嫌っ!」
だが、ゆっくりと繰り返し抜き挿しされるうちに愛液の量はみるみる増えていき、嫌がる声は艶と熱を帯びていく。
「馴染んできたね、もう一本いけるかな?」
挿し込む指を二本に増やす。
「キツい……キツい、ってぇ……!」
「大丈夫、だんだん馴染んでいってるよ」
「無理っ、む、りぃっ……あん、あんっ、あぁん……!」
二箇所を同時に責められ、今まで感じたことのない感触に翻弄され続けるすいせい。自らを慰めることは時々あるが、ここまで感じたことはない。
「いやらしい音もしてるよ、すいちゃん……オマンコ、すっごく濡れてる……べろぉっ、べろぉっ……」
「ひゃんっ! ダメっ、ダメぇっ……!!」
耳を舐め回されて声が漏れる。
乳首を弄り回されて我慢ができない。
膣穴を抜き差しされ続けて愛液が止まらない。
すいせいの身体が受け止められる快楽の許容量を超え、どんどん昇り詰めていき――
「もうっ、ムリぃっ……んひぃっ、ああぁぁぁっ!!」
膝から崩れ落ちそうなほど腰をガクガクさせ、壊れそうなロボットのように身体をビクンビクン揺らし、切羽詰まった苦悶の表情ですいせいはイってしまった。全身を奔る快感が暫くの間消えず、背後からAZKiに抱きかかえられていなければ床に崩れ落ちてしまっていただろう。
そのAZKiにベッドに寝かせられ、ノースリーブもタイツも脱がされて下着姿にされる。自らのイメージカラーに合わせた蒼色のブラとショーツ。そのクロッチ部はAZKiのそれと同じく、限界まで愛液を吸って濃く変色していた。
「イっちゃったね、すいちゃん。けど、エッチな気分が収まらないでしょう? もっともっとシたくてたまらないよね?」
AZKiの言う通り、すいせいの身体はまるで満足していない。身体の奥から一層激しい熱が湧き上がってくる。
すいせいはその事実に困惑していた。身体の中で異変が起きている。すいせいにだって性欲は勿論あるが、ここまで強烈なものは今まで感じたことがなかった。
「どういうことなの、って顔しているね」
その戸惑いを見抜いたAZKiが再び耳元に口を添える。
「さっき口移しで飲ませた建太くんのザーメン……あれ、実は媚薬と同じ効果があるんだよ。だからすいちゃんの身体も建太くんの媚薬ザーメンで発情して、エッチなことを求めちゃうようになるの」
すいせいの身体を下着の上から撫でると、それだけで彼女は身悶える。
「んっ、あぁん…………どうして、こんなことを……あっ、ふぅぅんっ……!」
「さっきも言ったけど、これがすいちゃんを大人にする方法。こういう経験を積むのが一番手っ取り早いと思うんだ」
さてと、とAZKiは視線を動かす。その先にいるのは二人の痴態を目の前で見せられ、高射砲の如く勃ち上がった剛直から糸引く汁を垂れ流している絶倫な後輩だった。
「これといって詳しい説明とかしてないけど……なんでここに呼ばれたのか、この後は何をすればいいのか、もう分かってるよね?」
AZKiは妖しい微笑みを浮かべると、すいせいの脚を開いてみせる。しとどに濡れたショーツには縦筋がくっきりと浮かび上がっていた。
「建太くん、すいちゃんを大人にしてあげて?」