「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
オフィスルームの空気はここ3日くらいどんよりと重い。会話らしい会話もなく、たまに事務的なやり取りが発生するくらいだ。
「…………ねぇ、もっと楽しくいかなーい?」
その空気に耐えかね、かなたがそれを打開しようと努めて明るい口調で呼びかけた。自ら率先して問題解決に動く理想的な社長の姿だった。
しかし、社員三人の反応は鈍い。
「あー、確かにそうですよね…………うーん」
かなたと同じ考えを持ってはいるものの、どうしたらいいのかわからない建太。
「この空気じゃ無理っしょ……」
ボソリと愚痴を溢すクロヱ。
「そうだね…………」
視線をPC画面から外すことなく空返事をするAZKi。
「ていうか、ここ数日で何があったんだよ……絶対おかしいって……」
かなたは嘆く。
かなけん社内で唯一蚊帳の外にいる彼女は悩んでいる。自分の経営方針が悪いのか、はたまた社員へのセクハラ発言がよくなかったのか、それとも他に何か理由があるのか──その結論が出せずにいるが、現状ではその答えに辿り着くことはできないだろう。
そして渦中にいる建太はまた別の理由で頭を抱えていた。
無論、先日の性行為をAZKiに見られてしまったことである。
あの出来事をきっかけにAZKiはあからさまに建太とクロヱから距離を置いている。顔を見れば目を逸らし、今のようにデスクワーク中を除いて同じ空間にいることすら避けているのだ。
社内のオフィスルームはみるみる空気感が悪化し、会話も著しく減った。
──あの時、社内でヤりたいとか言わなければよかった。
自身の欲望がこの重苦しい空気を引き寄せてしまった、取り返しのつかないことをしてしまった、と建太は後悔していた。
◇
「んっ、じゅるっ、じゅるるっ…………なんか今日も、勃ちが悪いな〜」
男子トイレで下着姿になって建太の下半身にしがみつき、肉棒を吸うクロヱは不満気に言った。
建太が背負う後悔は性器にも現れてしまっている。いつもならば鋼鉄で作られているかの如き剛性を誇り、濃厚な精液を生産しては吐き出す自慢のペニスもここ三日ほどは元気がない。
「まだ気にしてんの? アレは別に建太が悪いわけじゃないのにさぁ」
「けど職場の雰囲気、かなり悪くなっちゃったじゃないですか……」
「アレは事故なんだからいいんだって、もう…………我慢汁も薄いしさぁ……」
硬度の足りない肉棒から口を離すと、クロヱは黒ショーツに浮かぶ縦筋を指先で往復させる。
「コッチも欲求不満なんですけど〜、んっ、勃たせてくれないと気持ちよくならないんですけど〜、あんっ」
目の前でオナニーを見せつけても建太の硬度は戻りきらない。やがてこれ以上は無意味だとクロヱは行為をやめた。
「……マジで戻らないね」
「すいません……」
申し訳なさから建太は頭を下げる。別にいいから、とクロヱはそれを諌める。脱いでいたワイシャツとスカートを着直し、普段の仕事スタイルに戻った。
「ん〜…………こうなったら『アレ』を使うしかないか……」
「『アレ』?」
建太は訊く。しかしクロヱははぐらかす。
「ケンタは知らなくていーよ、こっちの話だから。それより仕事戻ろ」
そう言うとクロヱはさっさと男子トイレを後にする。詳しく答える気はなさそうだった。
正体不明な『アレ』の正体が気になった建太だったが、それ以上深入りせずに大人しく仕事に戻ることにした。
◇
心のモヤモヤが晴れない。
この三日間、AZKiは複雑な感情を抱えながら仕事をこなしていた。仕事効率には目に見える影響はないものの、明らかに口数が減ったのは自分でも認識していた。
それだけ、あの光景が衝撃だったのだ。
火曜日。退勤後に駅の改札をくぐろうとした際、IC定期券を会社に忘れてきたことに気づいて来た道を引き返した。
そしてオフィスに戻った際に見てしまったのだ。
椅子の上で裸になって抱き合う建太とクロヱを。
あの二人の姿は未だにAZKiの網膜に焼きついている。第三者の闖入によって行為を中断したが、その前はきっといろんなことをしていたに違いない。職場で互いに一糸纏わぬ姿となるなんて常識じゃありえない。きっとその前にはもっと凄いことをしていたに違いない。
その『凄いこと』を想像してAZKiの顔はみるみる赤く染まっていく。そして頭を左右にブンブン、と振る。
ふと時計を見ると午前十一時になろうとしているところだった。
そして同時に何か飲み物が欲しくなった。しかし傍にあるマグカップは空っぽだ。少し前まで入っていた紅茶の余熱で若干温かい。
「お茶淹れてきます」
AZKiはそう言うとマグカップを持って席を立つ。かなたは「はいよー」と返す。建太は無言。クロヱの声も聞こえない。
給湯室に入ると、
「お、AZKi先輩じゃないっすか〜」
そのクロヱが給湯器を使っていた。ちょうど湯気が立ち上り、お湯が沸いたことを知らせる、ピーッ、という電子音が鳴った。
「あ、沙花叉……」
気まずさから思わず目を背ける。しかしクロヱは構わずAZKiに歩み寄る。
「お茶でも飲むんスか? ちょうどお湯沸いたから沙花叉が作りますよ〜」
返事を待たずにクロヱはマグカップを掠めとり、紅茶を作り始める。
「あ、いいよ自分でやるから……」
「大丈夫っスよ〜、沙花叉が作ってあげますって」
クロヱはティーバッグの準備をする。コンビニやスーパーでよく売られている物だ。
マグカップはAZKiが使っているものの他にもう一つある。きっとクロヱのものだろう、と思った。
「…………ところで沙花叉ってさ」
AZKiは切りだす。そこから先の言葉を口にするのに彼女は勇気を使う。
「金屋くんと…………どういう関係なの?」
「え? まあ普通に先輩後輩だし…………」
するとクロヱはニヤリ、と白く尖った歯を見せて笑った。
「エッチなこととかする関係?」
ハッキリとそう言ってみせた。既にバレてるからもういいや、という開き直った感じだった。
「もうビックリですもん、まさかAZKi先輩が入ってくるなんて〜マジでビビった〜」
「もしかしてあれ以外にも会社内で…………エッチなこととか、してるの…………?」
してるっスね~、とクロヱは笑いながら言う。
「男子トイレあるじゃないですか、あそこでフェラしてあげたり〜……あ、でもあの時はケンタの態度が気に入らなかったから寸止めしまくってたっけw」
ケタケタ笑いながら赤裸々に暴露するクロヱにAZKiは絶句していた。話の内容の理解が追いつかず、ただ口をパクパクさせるだけである。
「ちなみに〜……ケンタ、超絶倫ですよ〜! 先週末なんかホテルでヤりまくってましたからw」
「も、もうわかった! わかったから……!!」
ようやく絞り出した大声でAZKiはクロヱの猥談を中断させる。はぁっ、はぁっ、と運動後のように息を乱し、そしてそれをどうにか整えようとする。
「なんかビックリしちゃった。まさか沙花叉と金屋くんがそういう関係だったなんて……」
「そりゃ〜、他人にベラベラ喋るようなことじゃないですからね。AZKi先輩の場合は見られちゃったからもういいか、ってことでこれだけバラしてるわけだし〜。……あ、紅茶できましたよ〜」
会話しながらいつの間にか湯を注ぎ、ティーバッグを入れて紅茶を作っていたクロヱ。
「はい、どーぞ」
「あ、ありがとう」
まだ平静ではいられないがクロヱからそれを受け取る。そしてAZKiは足早に給湯室を出て行った。
一方、給湯室内に残るクロヱはスカートのポケットから一本の小瓶を取り出し、それをステンレス製のシンクに置いた。
その中には薄緑色の液体が入っている。
「混ぜるのは上手く行った。あとはちゃんと効いてくれればいいけど……ま、大丈夫か。アイツが作ったヤツだし」
そう独りで言いながらクロヱは小瓶の蓋を開ける。そしてそれをもう一つのマグカップに投入する。底部に広がる液体はさらに色が薄まり、よく目を凝らさなければそもそも色がついていることすらわからない。
「ケンタにも飲ませてやらないとね〜」
液体の上に熱湯を注ぎ、ティーバッグを沈めて紅茶を作る。
中身が溶け出して完成したそれに、異物が混入していることなど第三者からは全くわからない。
そのマグカップを大事に持ってクロヱは給湯室を出て行った。
◇
この日の仕事が全て終わった。
既に日は傾き、社長のかなたは帰路に着いている。
建太はというと、オフィスフロアにて下半身丸出し状態で立たされている。スラックスとボクサーパンツは床まで下ろされ、身体に対して垂直に伸びる剛直は銀髪の先輩社員にしゃぶりつかれていた。
「んじゅっ、んぷっ、んぐっんぐっ、ちゅぱっ……やっぱりケンタのチンポはこうじゃないとね〜、んちゅうぅぅっ……!」
午前中とは違い、最大まで勃起したペニス。先走りも止まることなく溢れ出しており、まるで別人のような性欲旺盛っぷりを見せていた。
「んっ、んふぅっ…………ねぇねぇ、どうですか〜? こういうコトを間近で見る感想は〜?」
クロヱは一旦口から離すと、指で作った輪っかで剛直を扱きながら、この部屋にいるもう一人の人物に問いかける。
「あっ、こんなのっ……なんとも、んんっ……なんともっ……」
床にへたり込んでいるその人物は頬を上気させ、悩ましそうに身体をくねらせている。その行為から目を離そうとしているが、本能が抗うのか何度も何度も視線を送ってしまっている。仕事中と同じくワイシャツにオフィススカートをしっかり着込んでいるが、時折胸部や恥部に手を伸ばそうとしてはハッとして引っ込めるのを繰り返している。
「またまた〜w、ホントは身体が疼いて仕方ないんですよね〜? じゃなきゃ何回もおっぱいやオマンコに手が伸びるわけないですもんね〜?」
直接的な単語を使われ、その人物の元々赤かった顔が一層赤くなる。頭を左右に振って否定するも、その所作は弱々しい。
「ホントは興味ありありなんですよね〜? だって好奇心すっごく強いじゃないですか〜、素直になっちゃいましょうよ。ね…………AZKi先輩?」
その人物の正体はかなけんで最も頭の回る才女で、最も常識的な社員であるAZKiだった。しかし今は建太も見たことのないレベルで発情しており、まるで別人のように思えてしまうほどだった。
そして発情しているのは建太も同じだった。ここ三日ほどロクに勃たなかったはずのペニスなのに、今はいつも通り──どころかそれ以上に勃起している。
何かがおかしい。
身体に起きているのは明らかな異常だ。建太が疑念を抱くくらいには不自然さを感じていた。それはAZKiの発情ぶりにも同じことが言える。なんの前触れもなく彼女がこうなるなどとは考えにくい。
「クロヱ、先輩っ……」
下を見ると、先端を舐め回しながら上目遣いでこちらを見つめてくるクロヱの顔があった。その艶かしさにますます肉棒は頑強になってしまった気がする。
「俺たちに、何かしましたか……?」
「何かって〜? ……例えばヘンなクスリを盛ったとか〜?」
クロヱが冗談めかして言った。
だが建太はその言葉で疑問が氷解する。
昼休みになる少し前、クロヱが持ってきたマグカップの紅茶。今にして思えばアレを飲んでからしばらくして今の異常が出てきたような気がする。そして建太だけではなく、AZKiも紅茶を飲んでいたはずだ。ということは──
「盛ったんですね……!」
疑念は確信に変わり、責めるように言う。クロヱは意に介さず、アハハハハ、と笑って見せた。
「そうだよ〜、知り合いに作ってもらったクスリを紅茶に混ぜて飲ませたんだ〜w」
クロヱはスカートのポケットから小瓶を取り出して見せる。中に入っているのは薄緑色の液体。抹茶のような自然由来の色ではなく、人工的でケミカルな色だった。
「沙花叉の知り合いに作ってもらったんだよね〜、エッチなことで頭がいっぱいになっちゃうクスリ。それに身体を発情させる成分も入ってるんだってさ」
だからこれほどまでに勃起が収まらなくなったのか、と建太は悟った。AZKiも媚薬によって身体の奥から強制的に湧き上がる性欲を受け止めきれずに苦しんでいるのだろう。
「ソイツ、化学とか数字に滅法強い研究者でさ〜、自分の助手達にもそういうクスリ盛ってハメまくってるんだよね〜。盛られた助手は「コヨチャンシュキッ、コヨチャンシュキッ」って譫言みたいに言いながら腰振ってて面白かったわ〜w」
楽しそうに喋るクロヱ。建太はその内容が全く楽しいとは思えないが、現在進行形でフェラチオされたり手淫されることには悦びを覚えてしまっている。
「ま、沙花叉が貰ってきたクスリは効き目を弱めてあるし依存性もなくしてあるって言ってたから安心して使っていい、って本人言ってたし大丈夫っしょ」
だからぁ、とクロヱは建太の下半身から離れ、デスクに手をついた。スカートを緩めて床に落とし、尻たぶに食い込む黒のランジェリーをずらす。ヒクヒクしながら愛液を垂らす肉穴を突き出す。
「このままバックでハメよっ……AZKi先輩にもセックスしてるとこ、見てもらお……?」
これがいつもの建太ならばきっと躊躇い、場を有耶無耶にしていただろう。第三者に見られながら性行為なんてできるわけがない、と。
しかし媚薬を盛られた建太にはそれができなかった。頭ではわかっていても身体がクロヱの媚肉をほじくりたくて仕方がないのだ。
濡れそぼった肉の割れ目に赤黒く膨れた先端部をあてがうと以前の挿入時の記憶が甦ってくる。その時の快楽体験が媚薬の効果によって増幅され、それが腰を前に押し出させ、剛直をクロヱの
「あぁっ……ケンタのチンポっ、キてるっ……!! 久々のっ、チンポォっ……!!」
前回の性交からまだ一週間も経っていない。なのに、今回の挿入はまるで一ヶ月以上ぶりのことであるかのように強烈な快感を覚えた。これもクロヱに盛られた媚薬の効果なのだろうが、しかし今の建太にはそんなことを思案する余裕などない。
気持ちいい。
性器と性器とで結合する快感が増幅され、脳髄が焼き切れそうなほどの快楽が神経を走り、思考を溶かしてしまう。AZKiが目の前でこの行為を見ていることすら意識の遥か彼方へと追いやられ、理性なきケダモノのように腰を振る。クロヱのワイシャツのボタンを外し、その下で揺れる豊かな実りを揉みしだいて悦に浸る。
「クロヱ先輩っ……クロヱ先輩のマンコ最高っ……!」
「もうっ、AZKi先輩に見られてるの、あんっ、忘れてるのかな〜?」
「ハァッ……ハァッ……マンコっ、熱くて……チンポに絡みつくっ……!」
「あぁっ……聞こえてないっぽいね〜、んふぅっ……そこっ、気持ちいいっ、あぅんっ、もっとっ、そこ突いてぇっ、おぉっ、おぅんっ……!」
性交による本能的な悦び。建太は夢中で腰を振り続ける。頑強な肉槍でクロヱをひたすら追い立てるその姿はまるで発情期に入ったケダモノだ。
クロヱはペニスによる猛攻に身を捩らせつつ、この行為の見せつけ先の相手も忘れない。
「どうですかAZKi先輩っ、ケンタすごいでしょ〜……んんっ、んふぅ〜〜っ……あれあれ〜? どうしちゃったんですかっ、あんっ……そんな顔してっ、そんなとこイジイジしちゃってぇ……?」
クロヱは意地の悪い笑顔を浮かべながらそれを指摘する。
AZKiはワイシャツの上から乳房の頂上をこねこねしていた。右手で包みながら親指と人差し指でそれを摘み、転がすように動かしている。手のひらもわきわき、と動かしており、揉んでいるのは明らかだ。
「んんっ……んあっ、見ないでっ、あんっ……」
胸だけではない。左手は下半身に伸びていき、スカートの上から性器があるであろう場所を押さえている。単純に押さえているわけではないことは指だけがやたらと動いていることからもよくわかる。
「いいんですよ〜、沙花叉たちのセックス見ながらオナニーしたって止めたりしないので〜……んふぅっ、あぁっ、ケンタの勃起チンポっ、好きぃ……もっとガツガツ突いてっ、AZKi先輩に見せつけちゃおうよぉっ……」
建太はすぐさまその言葉に反応。抽送を加速させ、力強い腰使いを披露する。さっきまでAZKiに行為を見られることに躊躇していたのが、今はすっかり種つけ上等のオスになっていた。
「それっ、イイッ……! そうっ、イかせてっ、そうやって沙花叉をハメ倒してっ、イかせてっ……!! あぁっ!!」
クロヱも昇り詰めようとしている。建太も遡ってくる精液の感触を感じ、息を荒くして責め立てる。
「イクっ……!!
建太は膨れ上がった獣欲を遠慮なくクロヱにブチ撒ける。濃い精液で
「たくさん
悦んでいるのはクロヱも同じだ。長い舌をだらしなく外に出しながら脚をガクガクと震えさせ、メスの悦びに打ち震えていた。
腰を浅く数回打ちつけ、尿道に残った分を可能な限り
まだ屹立し続けている肉棒は愛液と精液とで汚れ、てらてら、とした光沢をところどころで放っている。
ふと、建太はAZKiの方に目をやる。顔は紅潮し、のぼせたような表情を浮かべている。しかしその視線は間違いなく一つの物に結びついていた。
「はぁ…………はぁ…………」
それが何かを理解した建太のペニスがまた大きく脈打った。前後に大きく揺れ動く亀頭を、彼女の目は確実に追っていた。
「もしかして、舐めてみたいんじゃないですか〜?」
事後でまだ興奮が治まりきらないクロヱがそう焚きつけた。精液混じりの愛液が秘裂から床に垂れ落ち、あるいは太ももを伝って滑り落ちていく。
「そ、そんなこと……」
「今さら隠さなくてもいいじゃないですか~、興味津々なのバレバレっスよ~w」
言いながらクロヱは建太の肉棒を軽く扱いてくる。ついさっきクロヱに
「ほらぁ、先っぽをちょっと舐めるだけでいいんですよ~w、恥も捨てて我慢もせずに、舌を伸ばしてみて下さいw」
「ク、クロヱ先輩、さすがに無理強いは……」
「何言ってんの~、本当はAZKi先輩にもフェラしてほしいくせに~w」
それは事実だ。媚薬効果もあって今の性欲を発散するにはこれだけでは全然足りない。発情顔を目の前で見せられているせいで彼女ともヤりたい、という邪な欲望も大きくなっている。
けれどもまだ建太には理性が残っていた。無理矢理させる、という選択肢は取りたくないと強く思っている。
しかし、その決意はいとも容易く崩れ去る。
「はぁ…………あぁ…………」
AZKiが舌を伸ばし、顔を近づけてくる。熱い吐息が亀頭にかかり、微かな痺れのような感覚がペニス全体に走る。
「あ、AZKiせんぱ……うっ……!」
その舌先がついに赤黒い亀頭に触れ、思わず建太は呻き声を上げてしまう。
ぺたっ、ぺたっ、とおっかなびっくりな様子でAZKiは亀頭を少しずつ舐める。そのおぼつかなさがむしろ建太を滾らせていく。限界まで勃起しているのに、それを超えてさらに太く硬くなっていくような錯覚すら覚える。
「ホントに舐めてる~、てかAZKi先輩の顔エッロ……」
元々エロに抵抗がないクロヱにすらそう言わせるほど、AZKiの表情は艶っぽい。潤んだ目尻は垂れ、鼻息は荒くなり、舌はいつの間にか唾液に包まれている。濡れた唇も普段の清楚っぷりからはかけ離れた色気を漂わせている。
まるでつつくようだった舌はいつの間にか亀頭全体を舐め回すようになっていた。カリ首をなぞり、先走り汁を掬い取り、そして徐々に唇も触れるようになっていく。腰を少し引いてみるとそれを追いかけるように頭を前に出してくる。
もしかして、と今度は逆に腰を前に突き出した。ぬぷっ、と亀頭はAZKiの口腔に収まる。離れないどころかむしろ三分の一程度を咥え込み、しかも前後に小さく動き始める。
間違いなく、AZKiは建太にフェラチオをしている。
「おぉっ…………めっちゃくちゃ、気持ちいい…………AZKi先輩の口の中、あったかい…………!」
背中を仰け反らせ、建太はその快感を噛み締める。上手くはないがその初心さがかえって興奮する。
「AZKi先輩〜、キンタマも揉んであげたらもっと気持ちよくなってくれますよ〜?」
横からクロヱが手を伸ばし、AZKiの手を取って陰嚢まで誘導する。
「やさし〜く揉んであげてくださいね〜」
彼女の手に包み込まれ、添えられたアドバイスの通りそっと握ってきた。
「うぉぉっ…………!! 手が、AZKi先輩の手が……俺のキンタマを揉んでっ…………!!」
それは想像を大きく上回る快感と背徳感をもたらした。綺麗な手にオスの下卑た欲望が詰まった袋を触らせ、揉ませている事実がたまらない。
すぐさま精液の増産が始まり、それが尿道を遡り始めている。亀頭を這い回る舌のざらざらした刺激も抗い難い快感となる。
それらの要素が絡み合えば我慢などというものは意味を為さなくなる。
「うっ、うぅああぁぁっ──────────!!」
一際大きな声で喘いでしまったのをきっかけに、その肉棒はAZKiの口内で暴発した。白い歯もピンク色の歯茎も綺麗な喉も、全てを白濁した精液で汚していった。
「んっ!? んふぅぅぅっ!?」
「はあぁぁっ、はあぁぁっ、
脈動に合わせて、びよんびよん、とバネのように動き、その度に吐精してしまう。
しかしAZKiはそれでも口を離そうとはしなかった。むしろ一層強く咥えており、それはまるで建太が
彼女がペニスを離したのは精液の吐出が収まった後。
受け止めた精液を口の中で転がし、喉を鳴らして呑み込んでみせる。開いた口の中で引いている糸は唾液なのか、はたまた精液なのか。
まだのぼせたような表情を浮かべるAZKiに対し、クロヱは感嘆していた。
「ヤバすぎっしょAZKi先輩〜、今までそういう経験ないだけで知識だけたくさんあるタイプじゃんこれ〜、しかも初めてにしてはエロすぎるしw」
クロヱの評に建太は完全同意だった。そのギャップがますます興奮を高めていき、収まりがつかない肉棒は次のステップへと進みたがっている。
AZKiの方も身体をもじもじさせており、それを求めているのだと建太は解釈した。
しかし、そんなムードに水を差してきた者がいる。
「けど一旦ここまで〜」
この場をセッティングした沙花叉クロヱ本人だ。
「せっかくだし続きは二人きりで楽しんでもらおうかな〜、邪魔者いない方が楽しめるっしょ? 場所もここじゃなくてホテルとかぁ……」
それかぁ、クロヱ悪い笑みを見せた。
「ケンタかAZKi先輩のおうちとかぁ〜?」
「は!?」
「え!?」
クロヱの無責任な提案にケンタとAZKiは同時に叫んでいた。しかしクロヱは意に介さない。
「別に強制はしないけど、そっちの方がより興奮できると思うなぁ〜? 想像するだけでもオカズ……じゃないわ、とにかく沙花叉からの提案、ちょっとは検討してくれると嬉しいな」
そう言い残すとクロヱは脱いだ服をさっさと着直し、「んじゃ、お先で〜す」と出ていってしまった。
残された二人はしばらく呆然としていた。それでも共に媚薬がまだ効いており、何もしなくとも性欲は湧き上がってきてしまう。建太の剛直はまるで衰えず、AZKiも身体の疼きは治まっていないだろう。
「どうします……? 俺は…………その、ホテル、でも…………」
遠回しに誘う建太。今の強制発情状態ではそのまま帰宅して一人で自家発電、では到底満足できるとは思えない。それに──最低な考え方だが、フェラチオされ、口内射精までしたのに、その続きがないなんて我慢できる気がしなかった。
「…………」
AZKiは消え入りそうな声で何かを伝えてくる。しかし建太にはそれが聞こえない。
「えっと、よく聞こえないんですが……」
「…………で」
やはりよく聞こえない。建太はAZKiの口のすぐそばにまで耳を近づける。そこまでして、ようやくその微かな声を鼓膜で受け止めることができた。
聞く者の心を落ち着かせるようなウィスパーボイスで、AZKiはこう言っていた。
「AZKiのおうちで…………続き、しよ…………?」