冷たくて嫌な汗が背中を伝う。
かなたの口から飛び出した言葉に、建太は鋼鉄製のハンマーで側頭部を殴られたかのような衝撃を受けた。
今まで三人で──最初は建太とクロヱで、その後AZKiを含めた三人で隠し通してきたはずだ。
それが何故、バレた?
建太は思考を巡らせようとする。
しかし、それをかなたは許さない。
「ねえ、聞いてる? 金屋くん、ボクの質問に答えてよ。あずちゃんや沙花叉と社内セックスするの、楽しかったか、って聞いてるんだけど」
かなたが一歩近づく。暗い影を湛えた青い瞳が見つめてくる。それは底が見えない深い穴のようで、建太は思わず怯んでしまう。
「あ、え、そ、れは…………」
「どうなの? はいかいいえか、イエスかノーか、それからボクが納得できる返答をしてくれるまで帰さないよ?」
一歩、また一歩、かなたは踏み出してくる。建太は気圧され、かなたと同じ歩幅で後ずさっていく。
しかし、気づけば壁際にまで追い詰められてしまう。オフィスルームの隅からでは正面突破でもしなければ逃げられない。
そう考えていると、
ぐっ。
かなたに手を掴まれた。握手するように、手全体をしっかりと握られる。
建太の首筋に一層冷たいものが奔った。
一見すると小柄でか弱そうな印象を受けるかなた。実際には病弱というわけでもないものの免疫は人並みで、普段の体力なども至って平均的だという。
しかし、握力だけは違う。その数値は五十キロを超えており、成人男性の平均値をも上回っているのだ。酒が入っている時に測ってみたら五十五キロという数値も叩き出したことがある、と本人が語ったこともある。
そんな彼女に今この状況で手を握られるということ、即ちそれは真実を語らなければ手を握り潰すと脅されているのと同義なのである。そもそも今の段階で既に表情が歪む程度の痛みを感じている。
「痛だだだだっ…………!」
「痛いよねぇ? けどまだボク、三十パーセントの力しか出してないからね?」
ギギギギギッ。
痛みが増していく。少しずつ力を込められている。骨が軋み始める。フルパワーは今の約三倍。耐えられるわけがない。
どちらが先に音を上げるかは明白だった。
「わかったわかりましたっ! だからっ、手っ、離してっ……!」
降伏の意思を見せるとかなたは力を緩める。しかし手を離すことはしなかった。
「それじゃ、洗いざらい話してもらおうか。もしそれでも隠しごとするんなら………わかってるよね?」
「は、はい……」
もう逃げも誤魔化しも効かないことを思い知らされ、観念した建太はこれまでのことを全て白状した。
最初はクロヱがきっかけだったこと。
そこからずるずるとそういう関係が続いてしまっていったこと。
クロヱがドMだったこと。
建太しか使わない男子トイレをヤリ部屋代わりにしていたこと。
ふしだらな関係が後日AZKiにバレたこと。
同じ穴の狢にするため彼女も引きずり込んだこと。
性に目覚めたAZKiに屈服させられてしまったこと。
今では週に何度も何度もそういった行為を愉しむ関係になっていること。
それら全てを時間をかけてかなたに吐露する頃には、建太の顔は火を噴きそうなほどに熱くなっていた。第三者に淫らな関係に至るきっかけ、性行為の些細を伝えることは、それだけ羞恥に苛まれることなのだと身を持って知るのだった。
そして、それら全てを聞かされたかなたも顔を真っ赤にしていた。困惑し、戸惑い、口をあわあわさせている。
「そ、そんなことになってたの……? とんでもないふしだら関係になってんじゃん、三人でさぁ……」
「な、なんというか……こう、その場の流れに身を任せ続けてたら、そうなってしまったと言いますか……」
「いや普通にヤベェよ。とんでもないドスケベ関係になってんじゃん! めちゃくちゃだよマジで! しかもあずちゃん、そんなにエロい女だったの!? これが沙花叉だったらわかるけどさぁ!」
信じられない、と言わんばかりにかなたは額に手を当てている。
「いやマジかよぉぉぉ……! いつも露出高い服で谷間見せつけてる沙花叉ならともかく、あずちゃん……しかも責め手なのかよぉぉぉ…………全っ然、そう見えなかったぁぁ……」
「俺もそうだとは全く思ってなかったです……けど、めちゃくちゃ楽しそうに、その…………騎乗位で、責めてくるんで…………」
「新たな性癖に目覚めちゃった、ってこと?」
「…………はい、そんな感じです」
AZKiに責められると悦んでしまうようになってしまった。建太にそういう性癖があった、というよりもそうなるように性癖を開拓されてしまった、と言うべきか。
「……ところでそれって、あずちゃんの方から積極的に来たってこと?」
「いや……あの時はクロヱ先輩が持ってきた媚薬を俺もAZKi先輩も飲まされて、最初はむしろこっちがペース握ってたんです。けど、途中で……騎乗位させてみたら攻守逆転されて、現在に至る、って感じです」
「なんで物持ってきてんだよアイツは……」
クロヱの行動に呆れるかなた。
「……で、騎乗位させてみたらあずちゃんがエロに目覚めてしまった、と」
「はい……」
はあぁぁぁ、とかなたは長い溜め息をついた。
「まあ、あずちゃんってちょっとSっ気あるからなぁ……アレか、男を支配して愉しむ女王様タイプ……なのかぁ」
言い聞かせるようにぶつぶつ呟くかなた。今まで彼女が抱いていたAZKi像とのギャップをどうにかして埋めようとしている。
「……あの、ところで社長」
「ん? 何?」
「社長って、その…………そういう知識もあるんですね」
「…………ハァ!?」
建太の言葉に、かなたは眉を吊り上げ、食ってかかるような表情で迫ってきた。
「あのねぇ、ボクにだってそのくらいの知識はあるんだよっ! エロいことにだって多少なりとも興味はあるに決まってんだろっ! 沙花叉のことなんか無駄にデカいおっぱい揉みしだきてぇ〜とか思いながら見てたりすんだよっ!」
まるで癇癪を起こしたかのように、かなたはマシンガントークを炸裂させ続ける。
「金屋くんだって高校生くらいの頃はどうせそういうことばっかり考えてたでしょ! 女子だって中高生くらいの時期にはエッチなことに興味くらい持つんだよ! 興味なさそうにしててもエロ本とかエロサイトとかこっそり覗いてたりするんだよっ! エロ知識がまるでない温室栽培の純粋無垢な女子とか幻想だから! ボクだってそうだったし!」
「あ、あの、社長……」
「それで陽キャの女子なんかは男と遊んでそういう経験積んでさ、そうじゃなくても普通はおっぱいも大きくなって身体もやらしく成長してくのに、ボクはぜんっぜんそういうのがない! 身長は伸びないしおっぱいも大きくならないし、だからそういう目では見られないし! あずちゃんは身長もあってスレンダーだし、沙花叉は身長はボクと変わらないけどおっぱいデカくて太ももはムチムチだし! どうせボクには女としての魅力なんかありませんよ~だっ!!」
「…………」
建太は閉口するしかなかった。かなたのマシンガントーク──もとい、不満の全方位撒き散らしは止まらない。
この後もひたすらぶち撒け続けるかなた。
それらも含めてここまでの内容もまとめて要約すると──
周りは成長するに連れて段々と女性らしい丸みを帯びた身体になっていく中、かなただけ一向に成長が見られないままここまで来てしまったこと。
そんな女性としての魅力に欠ける自身の外見に対してコンプレックスを抱いていること。
自身にない身体的な魅力を持つ女達に対して嫉妬めいた感情を秘めていること。
そして、それはAZKiやクロヱに対してもそういった感情を抱いてしまっていること。
それらを十分以上喚き散らした後、かなたはようやく落ち着きを取り戻していく──どころか、それらを通り越して悲しげな声になっていく。
「……最近、あずちゃんと沙花叉が隠しごとしてるように見えて、しかもその時にはいっつも金屋くんもいるんだもん。それで今日の朝……金屋くんが二人に連れて行かれた後、ボク、気になって三人を捜したんだよ。そしたら…………いつもは金屋くんしか使ってないはずの男子トイレから、沙花叉の声が聞こえてきて……」
かなたの言葉に建太は思わず生唾を飲んだ。
「それで入ってみたら……個室が一ヶ所閉め切られてて、その中から沙花叉の声がした。何かによがってる、ドエロい、獣みたいな喘ぎ声を何度も何度も上げてた」
「まさか……聞いてたんですか……!?」
驚愕する建太の問いかけにかなたは首肯する。
「沙花叉だけじゃないよ、金屋くんの声もしてた。沙花叉に『マゾメス』とか『ドМ』とか言ってたよね。それに、声は聞こえなかったけどあずちゃんもいたんでしょ。三人でどっか行ったのに一人だけいなくなるなんておかしいもんね」
建太はそこでようやく理解する。
かなたは憶測やハッタリでもなければ鎌をかけたわけでもなく、建太達がそういう関係にあると確信していたのだと。
証拠は揃ってる、だから全部吐け。
そのために建太は呼び止められたのだ。かなけん内で最も新人で、最も立場が低く、最も従順な社員である建太が。
だったら握力任せではなく、最初から理路整然と追いつめてくれた方がまだよかったのだが。手の痛みはまだ少し残っている。
そう思ったものの口には出さなかった。
「全部、バレてたんですか……」
うん、とかなたは頷いた。
「隠しごとされてるみたいで、なんか嫌だったから……けど、それを探ろうとしてもっととんでもない事実に気づいちゃったわけだけどね……」
それから自嘲するように、あるいはいじけるかのように続ける。
「それに、これじゃボクなんかが混ぜてもらえなくて当然だよね。だって興奮しないでしょ? 色気なんか微塵もない、こんな未成熟な身体なんかじゃあさ、あずちゃんや沙花叉みたいなこと、できないもんね……」
「…………」
オフィスルームに暫くの間、沈黙が流れる。言いたいことを言いきったのか、かなたは以降一言も発さない。
一方、建太はかなたが言っていたことを頭の中で反芻する。非常に舌が回る彼女が吐いた長々とした言葉を少しずつ嚙み砕き、意味をしっかりと整理し、組み立てる。
そして、建太はかなたが言いたかったことを自分なりに理解する。
「つまり、かなた社長はエッチなことをしたくなるほど魅力的な女として見られたい、ってことですか?」
「…………ハァッ!?」
甲高い素っ頓狂な声が空気を震わせた。
「ちょ、なんで、なんでっ、そういうことになるのっ!?」
「だってそういうことじゃないんですか? 社長の言ってることってつまり、自分を女として見てほしい……ってことだとしか思えないんですが」
「ま、まあイイ女として見られたいのは事実だけど……けどエッチしたいとまでは言ってないんだけど!?」
「いや、あくまでエッチしたくなるくらい魅力的な女に見られたい、って意味なんですが」
「けど言い方ってもんがあるじゃん! エッチとかって直接言ってないじゃんボク! いきなりそんな直接的な単語使うなんて――――っ!?」
立て板に水、とばかりに捲し立てていたかなたが突如、絶句する。一体どうしたのか建太には最初分からなかった。しかし彼女の驚きに満ちた表情、その目が指し示す場所を追うとその理由が判明する。
そして同時に建太も、自分の身体に起きていた変化に驚く。
かなたが凝視していたその場所は、狭い空間で獰猛な淫獣が猛り狂ったことで大きく膨れ上がった、建太の股間だった。
「なっ、なっ、なっ……」
あわあわとしているかなた。どうやらその反応を見るに、知識はあっても見るのは初めてのようだ。わかりやすいくらい顔を真っ赤にしている。その一方で視線を外そうとはしない辺り、少なくとも興味を持っているのは間違いない。
建太もまさか自分がここまで勃起してしまっているとは思わなかった。そしてそれを認識したのと同時に、ビキビキ、とした痛みを感じる。
何故ここまで興奮しているのか建太は思考を巡らせる。昼間、AZKiから一回だけでお預けされていたせいでもあるのだろうが、それよりも大きな要因があるような気がしていた。
それを考え、そして一つの結論に達した。
建太は入社当初AZKiのことを『スレンダーで美人な先輩』、クロヱは『おっぱいがデカくて生意気な先輩』といった風に性格や身体的特徴──言い換えれば『魅力』と紐づけて認識していた。しかしかなたのことは『勤務先の社長』という肩書きでしか認識していなかった。つまり肩書き以外の『魅力』を全く感じていなかったのだ。
しかし今回のやり取りで『実は性的なことにも興味がある』ということがわかった。それが建太にとってかなたの新たな特徴──『魅力』となった。
建太の愚息はそこに反応してこうなってしまったのだ。
「なっ、なんでっ……そんな、大きくなって……」
「すいません、多分俺、今…………社長で、興奮してます」
「うぇっ!? え、嘘でしょ!? こ、こんな貧相な身体のボクに、こ、興奮……!?」
少しだけ嬉しそうな表情を見せるが、すぐにかなたは頭を左右に振った。絶対に嘘だ、と言わんばかりに。
それを見た建太はかなたに一歩踏み込む。二人の物理的な距離が縮まる。
「ホントですよ、社長…………なんなら、触ってみますか……?」
「ひぇっ!? さ、触るっ、て……!? そ、それを!?」
流石に触ることには抵抗感を見せるかなた。表情も若干引いているように見える。しかし、そこから視線を外さないところを見るとやはり興味はあるようだ。
それに気づいた建太は一歩も引かず、頭一つ分高い視点からかなたを見下ろす。もっこりとした自身の股間も視界に入っている。
それからかなたは何度も迷い、手を伸ばそうとしては引っ込める、という躊躇うような仕草を繰り返す。まだ覆われているとはいえ実物を目の前にすると、知識だけあっても物怖じしてしまうようだ。
それが十回ほど続いただろうか。
そしてようやく、白くて綺麗なかなたの手のひらが勃起の丘に触れた。
点で触れ、面で触れ、やがて覆うように手が置かれる。弱くとも確かな圧力を建太は性器で感じ取った。
「す、すご…………脈打ってる…………それに、思ってた以上に、太いし、硬い…………」
まだ怖がっているような素振りはあるが、かなたは間違いなくそれに興味を持っている。ゆっくりとした動きでそれを撫で始める。
そのぎこちないアクションとリアクションが建太を一層興奮させ、肉棒のさらなる膨張を齎す。
「え……なんか、もっと大きくなってってない……?」
「それだけ興奮してる、ってことですよ。社長に対して……」
「ホ、ホントに……ホントにボクで、こ、興奮してる……」
かなたの手は撫でるのをやめない。建太の興奮度合いを確かめるかのように全体を撫で回していく。
「なんか動いてるっ……!」
いちいち見せる新鮮なリアクションが建太の欲望に刺さる。
触られる側の建太だが、内から沸々と湧き上がってくる。
目の前の身体を触りたい。
この純粋な身体を乱れ狂わせたい。
欲望が煮え滾り、抑えられなくなっていく。小柄で貧乳で肉の少ない、そんなかなたの身体だが、今の建太にはとてつもなく魅力的に映っていた。
「社長……今度は俺にも、社長のことを触らせて下さい」
「え……?」
かなたがきょとん、としている間に建太はその背中に回り込む。そして腕を伸ばしてワイシャツの上から彼女の両胸に手を置き、探るように人差し指を蠢かせる。
「えっ、ええっ!? か、金屋くん何してんのっ!?」
「俺も我慢できなくなってきたんですよ、社長にこんな大きくされちゃいましたから」
そう言って股間をかなたの尻に押し当てる。薄めだが柔らかさのある尻肉がスラックスで封じ込められた剛直を受け止める。
「ちょっ、当たってるっ、金屋くんのっ…………アレ、当たってるってっ……!」
「『アレ』ってなんですか? ちゃんと言ってくれなきゃわかんないですよ?」
「こんなやり取り、そういう漫画で見たことあるっ……!」
そんなツッコミを入れた直後、
「んひっ……!!」
かなたがいきなり裏返った声を上げる。
その理由はかなたの平べったい胸部、その左右に一本ずつ突き立てられた人差し指によるものだった。
「ダメっ……そこっ、あぅんっ! 触っちゃっ、ダメっ、やめ、てぇっ……!」
両の人差し指の先端は高速で往復運動をし、布越しに胸部の突起を転がす。それがだんだんと硬くなっていくのに気づかない建太ではない。
「社長も感じてるんですね、俺のアレと一緒で硬くなってきてますよ」
「捏ねないでぇっ……! こんなのっ、気持ちよくっ、なんっ、かっ、あぁんっ……!」
身体を狂おしく捩らせ、快感を逃がそうとしている。しかし、しっかりとホールドしているので脱出するのは不可能に近く、かなたは絶え間なく与えられる快感を受け入れるしかないのだ。
「ダメっ、こん、なっ、これっ、はぁっ……!」
「気持ちよさそうな声、いっぱい出てるじゃないですか……もっと聴かせて下さいよ、社長」
「やだっ、やだぁっ……んひっ、ふっ、んあぁっ……んあぁんっ、らめぇっ……!」
嫌がっているように見えて、声は明らかに悦びの響きを孕んでいる。建太に限らず、こういった反応を見せられれば手を止める男などいないだろう。責め手が女だったとしても同様かもしれない。
乳首だけで既に百点満点の喘ぎとよがりを見せてくれるかなた。
となれば、もっと強い刺激を与えたらどうなるか──気になってしまうのは当然のことだ。
建太は右手でかなたのシャツのボタンを外していく。手で払って抵抗する素振りこそ見せるがそれも弱々しく、左手での乳首責めだけで十分封じられるレベルだった。
開かれたシャツの下からはかなたのブラが現れる。それは大手小売チェーンのプライベートブランドで展開されているもので、お世辞にもオシャレとはいえないデザインだった。胸部に全く自信がない彼女はきっと価格だけで選んだのだろう。
そんな色気ゼロの下着だが、しかし捲り上げると話がまるで変わってくる。
本来ならば隠されているはずの双丘が外気に晒され、そのすぐ上でブラがはだけている。丘の標高など関係なく、性的興奮を齎す絶景へと早変わりするのだ。
そして、触られたがっているかのように勃ち上がっている乳首をお望み通り直接弄り回してやる。
「あぁっ! やめっ、てぇっ……! あぁっ、こんなっ、あぁっ、ちょくせ、つぅっ、らめなのぉっ……!」
勿論、建太はやめない。言動とは正反対に、かなたの身体は明らかに悦んでいるからだ。くねくね、くねくね、と過剰なくらい身体を捩らせ、乳首はコリコリに勃起して平たい胸部を僅かに持ち上げている。これで悦んでいないのならば一体なんなのか。
さらに建太の手は下半身へと伸びる。
AZKiやクロヱとは違い、かなたはいつもズボンを履いて出勤している。
ウエストにフィットしているベルトを緩め、履いているズボンの留め具を外し、ファスナーを下ろしてやれば、ストン、とあっけなくそれは床に落ちた。
その下から現れたのは、これまた色気皆無なプライベートブランドのショーツ。柄もなく、ただ白い生地で縫製された大量生産品。
しかし、それを膝まで下ろしてやれば印象は全く違う。安物の下着でも半脱ぎにしてやれば相応のエロさを演出できるのだ。
露わになったショーツの内側には楕円形のシミができており、そこから上に向かって細く、そして粘ついた銀色の糸が伸びている。その上端には産毛のように微細な毛が茂る裂け目があり、じんわりと湿っていた。
かなたが乳首責めによって性的快感を覚えていた確固たる証拠であった。
「濡れてますね……乳首、やっぱり気持ちよかったんですね」
「ちがっ、そんなはずっ……!」
「じゃあなんで濡れてるんですか、ココ?」
左手で乳首を捏ねつつ右手の指先で陰裂をなぞる。ぬらぬら光る大陰唇を人差し指で往復する。
「あぁんっ……! あぁっ、んんうぅんっ……!」
かなたは甘い声を漏らす。新鮮な愛液がじんわりと滲み出す。
「社長のココ、いやらしい汁が出てきてますよ……? これで気持ちよくない、なんて嘘ですよね」
「そん、なぁっ……僕、そんなっ、やらしい、女じゃあぁっ……!」
否定し続けるかなた。それでも分泌される愛液は徐々に量を増している。
その上、自覚はなさそうだが脚がだんだんと開いている。恐らく本人は脚の位置を直しているつもりなのだろうが、肩幅以上の間隔を開けて触られやすくしてしまっており、建太の手淫も捗っていく。
「十分やらしいですよ、社長は。それに──」
建太は陰裂の端で指を止める。そこには蕾のように膨れた肉の突起があった。
「こっちも、勃ってますよ?」
その突起を右手の親指と中指で軽く摘む。
「くひぃぃぃっ!?」
再び裏返った声を吐いたかなた。肉芽を摘んだり捏ねたりを繰り返すと、へこっ、へこっ、と腰を悩ましく前後に振り続ける。自らの意思ではなく、快感によって反射的に動いてしまっているのだろう。
「ダメっ、ダメっ、ボクぅっ、おかしくなっちゃうぅっ……!」
そんな訴えを聞き入れる建太ではなかった。
乳首とクリトリスの二点責め。それを緩急をつけつつ間断なく続ける。綺麗なピンク色の乳輪の縁をなぞり、充血した肉芽を弾く。まるで触られたがっているかのように膨張する突起を、ボタンを押すように指の腹で弄る。
「あぁんっ! あぁっ、これ以上はっ、らめっ、もうムリぃっ……! もうっ、きちゃうぅぅっ……!!」
切羽詰まった嬌声と共に前後運動していたかなたの腰が、ぐぐぅーっ、と前へ前へと突き出され──
「イクぅぅぅぅぅっ!!」
かなたが絶頂と共に叫んだ、その瞬間。
プシャアアァァァッ!
透明な液体が陰裂から勢いよく噴き出した。
「あぁっ、あぁぁあんっ……!」
飛び散る女潮は、正方形を敷き詰めたオフィスルームの床マットに円状のシミを作り上げていく。さらにもう一回噴射し、シミをさらに大きく育てていく。
「おお……これが、潮噴き……!」
初めて生で見る女体の生理現象に建太は感動に近い感情すら覚える。
放潮が止まると、よろよろしながらこれ以上ないくらい真っ赤な顔を両手で覆うかなた。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ…………だから、ダメって、いったのにぃ……」
ガクつく内腿は濡れ、ヒクつく割れ目からは、ぽたり、ぽたり、と雫が落ちる。
「恥ずかしすぎる……」
恥じらうかなた。その姿を見て、建太の内側から一層黒い欲情が湧き上がってくる。
さっきは指でクリトリスを弄っただけ。これは性行為ではまだまだ序の口にすぎない。
もっと狂わせてやりたい。
建太は真新しい女潮で濡れる縦筋に中指の先端をあてがい、それを少しずつ肉の中へと呑み込ませていく。
「ちょっ、なに、してぇっ、ああっ……!」
ずぷぷぷっ、と
「ちょ、っと、苦しい……! 異物感がすごい……!」
「そのうち慣れますよ。それにしても、すごく絡みついてきますね、社長のマンコ……」
「やだぁ……抜いてぇっ……!」
その懇願は聞き流し、
「動かさ、ないでぇっ……!」
かなたが指を抜こうとしてくる。しかし快感から逃れようとするのに精一杯な今のかなたは自慢の握力も半減している。握られている手首は大して痛くもない。
「動かさないと気持ちよくできないですよ?」
「そんなの、いいからぁっ……! もう終わってぇっ……!」
「もうちょっとだけ我慢して下さい、さっきより気持ちよくしてあげますから……」
鉱脈を探すかの如く、膣という名の未開拓の洞穴を探索する建太。纏わりつく無垢なヒダヒダがそれを邪魔してくるが構わず調査を続行する。
そして、それは見つかった。ちょうど外の肉芽の裏側、他とは違う出っ張りのような感触があった。
「これだな……?」
それを軽く押してみた途端、建太の腕の中の女体が大きく跳ねた。
「ああぁぁっ!?」
明らかに違う反応を見せるかなた。背中は後ろに反り、きゅんっ、と膣が瞬間的に強く締まる。指先で擦ると繰り返し収縮が起こる。
建太は確信する。
この場所がかなたに限らず、多くの女体が備える性感帯――Gスポットだ。
「なに、これぇっ……!? こんなのっ、ムリっ、おかしくっ、なるぅっっ!」
「いいんですよ、おかしくなっても。このまま何も考えないでただ気持ちよくなってください。俺も、そんな社長の姿に興奮してるんですからっ……!」
肉棒がビキビキに張り詰めているのがわかる。
しつこくGスポットを責め立て、優しく貧乳を撫で回し、かなたのことを追い詰めていく。その脚は今にも崩れ落ちそうで、建太が抱きかかえているおかげで辛うじて立っている状態だ。
「ああぁぁっ、ああぁぁっ! これっ、もうムリっ! もうムリぃっ……! またっ、きちゃうっ、さっきのがっ……んんっ、んふぅぅっ……!」
かなたの体重が建太の腕に載る。さっきより重くなっていると感じるのは彼女の脚にも限界が近づいているからだろう。
「ふぅぅぁぁぁ……はぁぁ……ああぁぁぁ、ああぁぁぁ……!!」
嬌声がだんだん甲高くなっていく。
「ああああぁぁぁぁぁぁっ…………あぁっっ!!!」
長い喘ぎの後に、短い高音の絶叫。同時にその身体が一気に重くなったのを感じた。建太は即座に膣から指を引き抜き、とうとう自立できなくなったかなたの腰を両腕で支える。
脚で踏ん張れず、ガニ股のようなポーズになってしまったかなたはイキ潮を盛大に噴き散らす。まるで放尿にも見えるそれは彼女が再び絶頂した証明に他ならなかった。
「あぁぁ…………ああぁぁ…………」
漏出が止まったかなたを建太は床に下ろす。床マットの上で仰向けになった彼女の胸部は酸素を求めて上下する。両脚はだらしなく投げ出され、潮と愛液で濡れた淫裂は丸見えだ。まるで獲物を誘い込む食虫植物のように濃密なメスの匂いを放っている。
「はぁっ……はぁっ……」
気づけば建太は傍に膝を突いていた。膝まで下がっていたショーツを取り上げ、くぱっ、くぱっ、と呼吸しているかのような陰唇に顔を近づけていた。
「やっ、そんなのっ、だめぇ……」
それに気づいたかなたが手で制止しようとするが、それより舌が到達する方が早かった。
「んっきゅぅぅぅっ!!」
小動物の鳴き声のような嬌声。
舐め回す度に纏わりつく粘着質な水音が立つ。
「舐められてるぅっ! ボクのぉ……あ、アソコが……! んふぅんっ! ああぁんっ!! やあぁんっ!! あうぅぅんっ!!」
クリ責めよりも、Gスポ責めよりもより切羽詰まった声で喘いでいる。経験のなさを考慮すると、性器を直接吸われるのも初めてに違いない。既に二回もイかせて敏感になっているとはいえ期待以上の狂いっぷりだ。
かなたのやらしい匂いで満たされる鼻腔。舐めても舐めても湧き出す愛液。匂いはだんだん強くなり、愛液もどんどん溢れてくる。腰は僅かに浮いており、三度目の絶頂が近いことを察する。
責めの手は緩めない。次はクンニでイかせる。
淫裂を満遍なく舐め回し、舌先で肉芽を転がし、外に出てきた小陰唇も味わう。その肉ビラはしょっぱく、糸を引くほど粘ついている。
唾液をたっぷり分泌し、口の中で溜め、わざと大きな水音を立てて煽り立てる。
「またっ、またぁっ……ボクぅ、またでちゃうぅぅ…………またぁ……きちゃ、きちゃ、うよおぉぉ……」
口から涎をこぼし、表情は蕩け、乳首も今は触られてないのに屹立していた。
「ああぁぁぁんっ!!」
一分くらいクンニし続けたところで、かなたは三回目の放潮。空中に大きな放物線を描いたそれは壁の近くまで届き、長い線状の新たなシミを床に浮かび上がらせた。
「あぁぁぁ……はぁぁぁぁ…………」
短時間に三回も絶頂させられ、かなたはぐったりしている。持久走を限界ギリギリの速さで駆け抜けた直後のように呼吸を乱しており、ほぼ全裸に姿に剥かれたことに対する羞恥心すら湧いてこないようだ。
一方、建太は別の理由で限界だった。
メスの匂いをたっぷり吸い、女体の感触を手で味わった。しかし下半身はまだ何も喰らっていない。
本能のままに暴れ狂うそれが、窮屈な空間から出せと吼えている。合成繊維すら突き破らんほどに滾っている。
建太はベルトを外し、その封印を解く。
衣類という名の理性的・社会的な枷から解放され、表面に血管が這い回る太く醜悪なケダモノが現れる。性欲という名の原始的・動物的な欲求を満たさんと涎を垂らしながら鎌首をもたげ、かなたのことを見下ろしていた。