※この作品はR-18です。

世界最強の魔女、無様敗北の末に敵国に捕まって魔女裁判で有罪になる。残りの人生は苗床として一生子宮を使われ続けるようです。   作:破戒僧

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どうも皆さま、初めまして。
他の作品でお会いしたことがある方はお久しぶりです。破戒僧と申します。

この度、思い付きのネタになりますが、また筆を取らせていただきました。
暇な時にでも、皆さんに読んでいただいて楽しんでいただければ幸いです。

……ただ、タイトルからもわかると思いますし、あらすじにも書いてありますが、女の子がひどい目に遭う系の内容になる見込みです。苦手な方は『戻る』を推奨します……。
たぶん、作者のとある別作品でやたらしつこかった某大監獄編みたいな感じになります。わからない人はすいません。

それでもいいという方、歓迎いたします。どうぞごゆるりとお楽しみください。


第1話 黒の女王

 

 

 ある世界のある大陸に、『帝国』と呼ばれる国家が存在した。

 国名は、ない。彼らはただ『帝国』とだけ名乗り、『帝国』とだけ呼ばれている。

 

 これは、『帝国こそが世界の覇者であり、世界の全ては帝国の元に統一されるべきである。世界が1つになるというのに国名など必要としないだろう』という、その国の国是が理由だった。

 

 なんとも傲慢極まりない物言いではあるが、実際その『帝国』の軍事力は比類ないものであり、ここ数十年の間に、力にものを言わせて周辺国を次々と併合していっていた。

 

 忠誠を誓う国は属国として生かし、しかし重い税と兵役を科して帝国への永遠の貢献を求めた。

 逆らう国は滅ぼして取り込んだ。王族やそれに連なる者達は根絶やしか、それに近いところまで粛清され、生き残った者も政略結婚で取り込まれるか、奴隷に落とされた。

 

 その帝国が、世界の覇権を握るために数多く行っている政策の1つで……最も力を入れている1つ。

 それが、『魔女狩り』である。

 

 文字通り『魔女』を狩ることを指して、魔女狩り。

 

 この世界には、『魔女』が存在する。

 普通の人間とは似て非なる存在。『エルフ』や『ドワーフ』のような『亜人』と同じ……種族としての『魔女』が。

 

 彼女達は、容姿こそ人間と全く変わらないが、人間よりもはるかに長い寿命を持ち、人間とは比べ物にならないレベルで魔法を巧みに使いこなす。

 さらに、その長い寿命ゆえに歴史も古く、その長い歴史の中で培われた、魔法に関係する知識や技術力は、他の追随を許さない。

 

 しかし彼女達は総じて人間に対して友好的であり、その力でもって、魔物や盗賊、災害や疫病に至るまで、様々な脅威からたびたび人々を守ってきた。

 ゆえに、彼女達を大切な隣人として受け入れている国や地域は数多い。

 

 しかし一方で、人間と変わらない容姿でありながら、時に災害すら退ける力を発揮する彼女達のことを、魔物などと同一視して危険視ないし敵視したり、嫌悪や差別の対象にする者達もまた、数多くいた。

 

 帝国は、『魔女狩り』を行っていることからもわかる通り、後者であるが……単に危険な存在として敵視している、というわけでもなかった。

 

 

 “『魔女』とは、資源である”

 

 

 百年以上前、帝国に仕えるとある研究者が提唱した言葉である。

 

『魔女』は、人間よりもはるかに寿命が長く、また人間よりも身体的に頑丈である。

 さらに、魔女は女性しか存在せず……また理由は不明だが、『エルフ』や『人魚』といった一部の亜人種族と同様に、見た目が整っていて美しい者が多い。

 

 つまり、性欲をはじめとしたさまざまな欲望のはけ口にするのに向いているわけだが……ここまでならば、多少頑丈な人間や、他の亜人にも言えることだ。

 

『魔女』から生まれる子供は、仮にそれが同じ『魔女』でなくとも……人間や亜人が生まれてきたとしても、母親のもつ優秀な素質と膨大な魔力をある程度以上受け継いで誕生してきた。

 

 例えば、魔女の(はら)から人間の男児が生まれれば、十数年後には、魔法を使いこなす一流の兵士が出来上がった。

 付いた種が人ならざる者……魔物や亜人であってもそれは同じだった。帝国による人体実験の結果、魔法を使うゴブリンや、魔法に耐性を持つ軍用魔獣が生まれてきたと報告された。

 

 この結果を受けて帝国は、『魔女』という存在を、優秀な兵士や軍用魔獣を繁殖させるための『母体』として利用することを決めた。

 彼女達を人間として、人権を持つ者として認めず、『資源』として回収し管理・有効利用すべく、帝国国内はもちろん、他国まで赴いて狩り始めた。

 これが……『魔女狩り』である。

 

 これにより、多くの魔女が帝国にとらわれ、母体として散々に酷使され、多くの兵士や軍用魔獣を産まされた上、ボロボロになって死んでいった。

 

 ……しかし、彼女達もまた、狩られるばかりではなかった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 場所は、ある田舎の小さな村。

 常日頃であれば、猛獣や魔獣の被害もめったにない、のどかで平和な村が今……迫りくる戦火に焼き払われる瀬戸際まで追い詰められていた。

 

『辺境の田舎者どもに告げる! 我々は帝国軍の魔女狩り部隊である!』

 

 拡声の魔法で何十倍にも増幅された、軍の指揮官と思しき声が、村の隅々まで響き渡る。

 

『この村にいる魔女を1人残らず差し出せ! そして村人は全員、魔女を隠し立てしていた罪を償うために、帝国に忠誠を誓うのだ! そうすれば村人たちの命は助けてやろう……だが逆らえば、ただではすまさん! 村を焼き滅ぼして魔女は奪っていく! 無力に、無惨に殺されるか、奴隷にされて死ぬまで酷使されるか、いずれかの道が待っていると思え!』

 

 村はその周囲を、数百人からなる兵士達に完全に包囲されていた。

 村の人口は数十人しかいない。しかもその半数以上が戦えない女子供や年寄りであり、逃げられるとは思えなかった。

 

 村の重役たちが村長の家に急遽集まり、どうすべきかと額を突き合わせて話し合っている。

 

「本当に帝国軍の精鋭だった……とても戦える相手じゃない……!」

 

「村長。これはもう、連中の言う通りにするしか……」

 

「あの子を差し出すっていうのか!? 今までこの村が、どれだけ彼女に助けてもらってきたと……そんな恩知らずな真似をしろっていうのか!?」

 

「だが、このままでは……」

 

 意見がまとまらないまま、時間だけが過ぎていく中……1人の村人が、慌てた様子で村長の家に駆けこんできた。

 

「ど、どうした!? 帝国軍が動いたのか!?」

 

「い、いや、違うんだ村長! ロゼッタちゃんが……あの子が、自分から外に……」

 

「な……何だと!?」

 

 それを聞いて、顔を青くする村長達。

 ロゼッタ……村人の口から放たれたその名前は、この村にいて、昨日まで自分達と平和に暮らしていた……ほかならぬ『魔女』の名前だったからだ。

 

 

 

 同じ頃、村の外……帝国軍が布陣している場所の正面。

 そこに、ふわりと空を飛んで迫る、1人の少女がいた。

 

 少女……ロゼッタは、帝国軍に近づきすぎないように、刺激しないように……離れた位置でふわりと着地し、そこから歩いて帝国軍の陣地へ歩き出した。

 普通の部屋着のような軽装、足元はサンダル。山歩きもできないだろう、近所を散歩でもするかのような姿で、しかし堂々と歩いて帝国軍の方に向かっていく。

 

 ロゼッタは帝国軍の陣地の手前で止まると、緊張しているのか、少し声を震わせながらも、

 

「私があの村に暮らしている魔女です。他にはいません、私一人です」

 

「そうか。こうして大人しく出てきたということは、抵抗せず投降する、ということか?」

 

「はい。ですが、条件があります。村の人達には手を出さないでください」

 

「それはお前と、村の奴ら次第だ。お前を取り返そうと、あるいは逃がそうとしてこちらに襲い掛かってくるようなことがなければ、命は助かるだろう。襲って来たり、逆らえば当然殺すが」

 

「っ……!」

 

 さらりと告げられた、村人達の命を何とも思っていないような物言いに、怒りと悔しさで下唇を噛んで震えるロゼッタ。

 しかし、異を唱えられる立場でも状況でもないことがわかり切っているために、何も言わず、『それで構いません』と頷いた。

 

 これで村は、一時的に帝国の支配下に入ってしまう。しかし、手荒なことをされなければ、命や暮らしが無事ならまだ望みはある。

 しばらくは苦しい時間を耐えることになってしまうかもしれないが、ここは辺境とはいえ、『王国』の領土だ。『帝国』と戦えるほどの力を持つ王国ならば、占領された土地の奪還、民の救出のために軍を派遣して、いつの日か取り返してくれるかもしれない。

 そうすれば、また元通り暮らせる日が……いつかきっと来る。

 

 それまでどうか耐えてほしい。ロゼッタは、今まで世話になった村の人達の今後の無事を祈りながら……彼ら、彼女らに、別れを告げた。

 その『いつか』の未来に、自分が同じように戻ってくることは……できないから。

 

 きっと、自分は……もう、戻ってこられない。

『魔女』が帝国に捕まるということが何を意味するのか……その末路は、あまりにも有名だ。

 

「では魔女よ、これからお前を連行する。着ているものを全て脱いで、裸になれ」

 

「っ……!?」

 

 当たり前のように告げられた言葉に、息をのむロゼッタ。

 思わず、驚きだけでなく嫌悪感や怒りの乗った視線が、帝国軍の指揮官に向いてしまうが、それも含めて指揮官は何ら気にした様子を見せなかった。そういう反応も予想済みだったのだろう。

 

「どうした? 早くしろ。抵抗しないのだろう?」

 

「今、ここで……ですか? 着替えなら、連行された後ででも……」

 

「だめだ。今言っただろう……これからお前を連行すると。その準備に必要なのだ」

 

 撤回される見込みがなさそうだと悟ったロゼッタは……躊躇を振り切って、服に手をかけた。

 何百という帝国兵に見られながら……1枚1枚、服を脱いでいく。

 

 後ろの方からは……自分がいなくなっていることに気づいたのだろう。村の者達が入り口付近に集まって、こちらの様子をうかがっている気配が感じ取れた。

 すなわち、彼らにもこの光景は見られているということだ。

 

 悔しさと恥ずかしさをこらえて……ロゼッタは最後の1枚まで、服を脱ぎ捨てた。

 一糸まとわぬ乙女の肌が、まだ明るい日の光の下にさらされる。

 

 帝国兵達の下卑た視線が突き刺さる中、せめて恥ずかしい所だけでもと、手や腕で胸や恥部を隠していたロゼッタだったが……

 

「隠すな、邪魔だ。手や腕は体側に」

 

「っ……は、はい……っ!」

 

 あえなくそれも禁止され……ロゼッタはそれに従った。

 隠す者がなくなり、豊かに膨らんだ胸のてっぺんの桜色と、股間に1本走るぴったりと閉じた割れ目があらわになった。

 

 恥ずかしさに顔を赤らめてうつむくロゼッタを、指揮官は『ふむ』と無感情に、上から下までじろじろと眺めると……頷いた。

 

「よし、身体検査を。脱いだ服も調べろ。問題なければ拘束して連行する」

 

 

 

「ああ……ろ、ロゼッタ……」

 

「俺達のために、あんな、っ……!」

 

「ちくしょう、帝国軍の奴ら……あんな子供にっ……!」

 

「おい、妙な気は起こすなよ! ここで俺達が何かしたら、ロゼッタの覚悟が水の泡だ……!」

 

 ある者は歯を食いしばって、ある者は涙を流しながら……その光景を見ていた。

 人を人とも思わない帝国軍の蛮行に怒りを覚えながらも……何の力もない自分達にできることはないとわかっていたから、ただただ耐えるしかできない。

 

 目の前で……身体検査と称して、目を覆いたくなるような目に合っている1人の少女。

 無遠慮に腕や足を、乳房を掴まれ、持ち上げたり引っ張ったりして調べられている。

 四つん這いにさせられ、尻の穴と膣の穴に何やら器具のようなものを突き入れられ、仲間で調べられている。

 口を開けられ、こちらも器具のようなものを入れられて、奥まで届いて気持ち悪さにえづくロゼッタを無視して、徹底的に『検査』されている。

 

 少し離れた場所では、数名の兵士が、ロゼッタが脱いだ衣服を、上着から下着に至るまで全て広げて、裏返して、こちらも徹底的に調べていた。

 

 本当の意味で性的な行為こそ起こっていないにしても、最早十分に『凌辱』と言っていい惨状を見せつけられながらも……村人達は耐えた。

 ロゼッタの気持ちを無駄にしてはいけないとわかっていたから、歯を食いしばって耐え抜いた。

 

「ふむ……問題はなさそうだな。では拘束具を着けろ。それと……この村の人口はどのくらいだった?」

 

「手に入った最新の記録では、およそ60名強となっております」

 

「よし、その程度なら十分護送可能だな。拘束・連行処理を行う班以外の兵達を村に入れろ。村人全員を拘束し、連行する」

 

(え……?)

 

 苦痛と屈辱の『身体検査』が終わり……涙と唾液を垂れ流してうずくまってえづいていたロゼッタは……指揮官の口から聞こえて来た言葉に、耳を疑った。

 

「村人全員、武装解除の上で拘束だ。各家の内部を調査し、持ち出せる金品は全て徴収、食料や家畜等も同様にしろ。全て回収完了した後で、火を放て。」

 

 さらに続けられる無慈悲な命令に、驚いて指揮官を見上げるロゼッタだが、構わず指揮官は副官に指示を出し続けた。

 

「ま……待って! 話が違います! 私が抵抗せず捕まれば、村の皆には手は出さないって……」

 

「何を言っている……ちゃんと私は言っただろう。『命は助ける』と。その上で、最初に言った通り……村の者達には『帝国に忠誠を誓って』もらわねばならん」

 

「それが何で村を……そんな、盗賊みたいに何もかも奪っていくことにつながるの!?」

 

「今回我々がこの村に来たのは、お前という魔女を回収するためだ。でなければわざわざこんな遠い田舎の土地に来るものか。こんな僻地の60人ばかりの小さな村を、帝国本国から管理し続けるのは非効率だろう? であれば、人をそっくり引き抜いて、帝国国内の適当な村に移住させた上で管理すればいい」

 

「……っ……!?」

 

「そして、故郷を捨てて帝国に忠誠を誓うことの証明として……帰る場所を残さないために、この村は焼き払っていく。財産や家畜は、もったいないから可能な範囲で回収するがな。きちんと『命だけは』助けてやるのだ……何も問題はあるまい?」

 

 さも当然のように言い放つ指揮官を、ロゼッタは理解できないものを見る目で見返していた。

 

 この男は、村人達が持つ家や村、この土地への愛着など考えていない。考える気はない。

 それこそ自分と同じように、帝国にとって都合のいい平民……ないしは奴隷程度に考えている。命は助けてやるのだから文句はないだろう、黙って帝国に都合のいいように動け、文句を言うな、全て受け入れろ……そんな考えしかない。

 

 自分という魔女だけではない。村の者達もまた、人間として扱う気がない……いや、人間扱いという言葉そのものを知らないのかもしれないとすら思った。

 目の前のこの男が、暖かい愛情を向けてくれて、自分という魔女をも受け入れてくれていた村人達と同じ『人間』であるなどと……もう、思えなかった。

 

 そして、ロゼッタの胸に沸々と浮かび上がってきたのは……怒りだった。

 村人達のためを思えばと、どんな苦痛や屈辱の中でも抑え込んでいた、怒り。

 

「そんなこと……させない!」

 

 その瞬間、ロゼッタの体から魔力が吹き上がり……その手元で練り上げられ始める。

 

 攻撃魔法を使うための予備動作だというのは、誰の目にも明らかだった。

 彼女も『魔女』ゆえに、その規模や錬度は、人間の枠内で『一流』と言われる魔術師達が扱えるそれを容易く、大きくしのぐ。

 

(帝国が約束を守ってくれると、ううん、話が通じると思った私がバカだった! 私が守らなきゃ……村の皆を! たとえ、帝国軍(こいつら)と刺し違えてでも!)

 

 一発放てば、十数人を一度に、密集しているところに打ち込めば、数十人を一度に殺傷することすら可能であろう威力の魔法が、今まさに繰り出されようとしていた。

 

 ……もっとも……放つことができれば、だが。

 

 

 ―――ぷす……ん……

 

 

「……えっ!?」

 

 練り上げられていた魔法が、突如として掻き消えた。

 今の今まで手の中にあった魔法の力が、消えてなくなってしまった……その感触に、驚いてロゼッタは手元を見る、

 

 やはり、何も残っていない。練られていない、残骸や残りかすの魔力が力なく漂っているだけで……今自分が作り上げようとしていた、全てを焼き尽くす炎の魔法は、どこにもなかった。

 

 呆気にとられるロゼッタだったが、その体……無防備な裸体に、衝撃が叩き込まれた。

 頑丈な軍靴が、彼女のみぞおちに食い込む。

 

「あぐぅっ!?」

 

 苦悶の声と共に、仰向けに倒れるロゼッタ。

 上手く息ができずに苦しみながら……目の前の指揮官に蹴飛ばされたことを理解した。

 

「魔女は亜人と同じく、補助となる杖などの道具や、触媒として用いる魔法薬も使わずに、己の体1つで強力な魔法を行使できる。備えていないはずがないだろうが……既にこの一帯には、魔法の発動を阻害する妨害魔法を展開済みだ」

 

「妨、害……魔、ほ……!?」

 

「こんな田舎に引きこもって隠れていた貴様のような小娘では、知らんのも無理はないがな。無駄な抵抗などするから苦しむことになるのだ……おい、さっさと拘束しろ」

 

「はっ!」

 

 指揮官の命令に、兵士達が拘束具と思しき道具を手に近づいてきて、ロゼッタに装着させていく。

 手錠と足錠を両手足にかけ、さらにその首元には首輪を取り付けた。

 口にはギャグボール型の猿ぐつわを噛ませ、まともな声を出すことすら封じた。

 

「その拘束具も魔法発動を阻害する効果を持つ魔道具だ。無駄な抵抗など考えんことだな……仕置きの怪我が増えるだけだ。なるべく我々も、『資源』はいい状態で帝都に届けたい」

 

 言いながら、硬い軍靴の靴の裏を、ごりっ、とロゼッタの下腹部に押し付けて踏みつけるようにする指揮官。

 

「究極的にはここさえ使い物になればいいとはいえ、母体の状態が良ければ、それだけ優秀な兵士や軍用魔獣を産めるだろうからな……」

 

 さらりとこれからロゼッタがどうなるかを明かす指揮官。

 未だにロゼッタの中には怒りの炎が燃え続けているものの、同時に告げられた自らの末路に、隠しきれない恐怖と絶望がその目に浮かんでしまう。

 上手く息ができない苦痛以外の理由で、ロゼッタの体はぷるぷると小刻みに震えていた。

 

 兵士達の何人かは、そんなロゼッタを見てニヤニヤと笑っていたが、相変わらず指揮官は無感情なままで、呆れたように周囲の兵達を見回し、

 

「何をしている、さっさと村を制圧しろ。小さな村とはいえ、根こそぎ調べて奪うのには時間もかかる……日が暮れてしまうぞ」

 

「はっ、申し訳ございません! 直ちに取り掛かります!」

 

 そう言って、伝令のためにその場を離れていく1人の兵士。

 少し遅れて、軍全体が村に向かって進み始めた。村の方からは、困惑と恐怖に振るえた声がいくつも聞こえ始めていた。

 

 そして同時に、ロゼッタは……全裸に拘束具を着けられたまま、華奢な体を抱え上げられるように連行されていく。

 

 悔しさ、悲しさ、怒り、恐怖……色々な感情がごちゃ混ぜになってまとまらない。ただ、どうしようもない現状と未来を嘆いて……涙が止まらない。

 もうダメだ、皆、全部奪われてしまうんだ……そんな風に全てを諦めてしまいそうになっていた…………その時だった。

 

 

 ―――ドッゴォォオオオォォン!!

 

 

 突然鳴り響いた爆発音。

 

 それは、ロゼッタのすぐ近くから聞こえてきて……あまりの爆音に、彼女の意識は強引に叩き起こされた。

 もっとも、『一体何!?』という別の困惑ですぐさま頭の中はいっぱいになってしまったが……同時にロゼッタは、自分の体が、誰かに抱え上げられていることに気づいた。

 

 帝国軍の兵士ではない。両脇から抑えるように抱えられているのではない。

 横抱きに……俗に言う『お姫様抱っこ』の形で、抱えられて……その上で、空高く舞い上がっていた。

 

 眼下には、動き出していた帝国軍が、燃え盛る火炎と濛々と上がる黒煙に追われるように逃げまどい、大混乱になっているのが見えて……その光景にから、ロゼッタは今の爆音が、爆発魔法によるものだと気づいた。

 

 あの規模の爆発は……到底人間に出せる威力ではない。

 人間の中にも一握りいる天才、あるいは『英雄』と言われるような者達であれば別かもしれないが……今回はそうではない。

 あれをやったのは、『魔女』だ。もちろん、ロゼッタ以外の。

 

 付け加えて言うならば、今こうしてロゼッタを抱え上げて……おそらくは、帝国軍から助け出してくれたのも、魔女だろう。飛行魔法で……自分をかっさらってくれた。

 さらに、この一瞬の間に……毛布のような布をかけて体を隠してくれてまでいた。

 

 今まで地上に……下の方に下ろしていた視線を上に向けると、それは見えた。

 

 全部で3人……ロゼッタを抱えている者を含めれば4人。

 いずれも女性。空を飛んでいる。

 

 そして……一目でわかった。自分よりも……はるかに強い。

 

 一体何が起こったのか。どうして自分は助けられたのか。彼女達は何者なのか。

 困惑して言葉も出てこない――出てきたとしてもギャグボールでしゃべれないのだが――ロゼッタに、それを教えてくれたのは……意外にも、帝国軍だった。

 眼下で逃げまどいながら……その中にいる誰かが、悲鳴同然に叫んでいた。

 

「ちくしょう、奴らだ……奴らが来た! 仲間の魔女を助けに来たんだ!」

 

 

 

「『スカイクラッド』の魔女が来やがった!」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 超大国の名に偽りなしと言わんばかりの強大な軍事力を有する『帝国』。

 周辺国を次々と併合しているかの国に対抗する勢力が、この世界にはまだ3つ、存在していた。

 

 1つは、『王国』。

 名君と言われる国王の元、鉄の結束をもって、帝国をはじめとする様々な外的脅威を退け続ける歴史ある大国。

 帝国と違い、きちんと名前はあるのだが、帝国に食い下がれるほどの国力を有することから、単に王国と言えばまずはこの国を指して言うため、略して称されることが多い。

 

 1つは、『連邦』。

 帝国に対抗するために複数の大国、準大国が合併してできた振興の大国であり、国の面積や人口などの面で言えば、王国、帝国をしのぐ規模である。

 

 そして、もう1つは……国ではなく、1つの組織。

 魔女の連盟……『スカイクラッド』。

 

 ある意味では『連邦』と同様に……しかしそれよりもはるか昔から存在した、敵対する者達から『魔女』を守るための互助組織、ないしは連合体。

 

 魔女には、昔からその存在そのものを敵視ないし危険視する者達が多くいた。今、帝国がやっているのとはまた違った意味で『魔女狩り』が行われていた時代もあった。

 

 そんな様々な脅威から、世界中の同胞達を守るべく発足した組織こそが、『スカイクラッド』。

 平和を愛し、人間とも亜人とも共存していくことを望む自分達を排斥しようと、あるいは利用しようと、不当な暴力を振りかざす全ての者達から同胞を守るために戦う者達。

 

 そこに名を連ねる戦士達が、今、全てを諦めかけていた1人の同胞を救い出すために舞い降りた。

 

 

 

「おい、魔法阻害の魔道具は!? この戦場で魔女は魔法を使えないんじゃないのかよ!?」

 

「すでに最大出力で稼働させてる……奴らの出力と技量が桁外れすぎて阻害できないんだ!」

 

「ふざけんな! 帝国が誇る世界一の技術だぞ!? それが通じないなんて……化け物が!」

 

「降りてこい! 降りて来て戦え、この卑怯も……ぎゃああああ!!」

 

 戦いは一方的だった。

 最早、戦いとすら言えない有様だった。

 

 はるか高い位置に滞空したまま、大威力の爆発魔法による『爆撃』を振らせて攻撃する3人の魔女。

 帝国の兵士が放つ弓矢やクロスボウ、巨大弓(バリスタ)は、届かない。射程距離もそうだが、彼女達が周囲に展開している暴風の障壁に阻まれてしまい、力なく墜落していく。

 

 その向こうから、平原を塗り潰すように爆発魔法を叩き込んでいく、スカイクラッドの魔女達。

 

 数百人いた兵士達は、瞬く間にその数を減らしていった。

 生き残っている兵士はもう、最初の3割も残ってはいないだろう。負傷していない、本当に『無事』な兵士ともなれば、もっと少なくなる。

 

 そんな阿鼻叫喚の帝国軍の中から……突然、まるで鳥か何かのように空を飛んで向かってくるものが1人だけいた。

 

「えっ!? あれは……」

 

 魔女の1人に抱きかかえられて飛んでいたロゼッタは、その何者かが……先ほどまで話していた指揮官であり、彼が飛行魔法を使って飛び上がっていることに気づけた。

 その指揮官は、腰に差していたサーベルを抜き、爆撃を行っている魔女の一人に斬りかかる。

 

 切りかかられた魔女は、魔法で不可視の障壁を展開してそれを受け止めるが……ガキン、と剣が止められたその瞬間、その刃から電撃が迸り、周囲一帯に炸裂した。

 

(あの武器……魔法武器(マジックウェポン)だったの!?)

 

 巻き込まれれば、大型の猛獣も消し炭になってしまうであろう威力の電撃だった。

 人間だろうと魔女だろうと、あんなものを受ければひとたまりもないと、見ていたロゼッタ自身の身にも震えが走った。

 

 もっとも、それも……当たれば、の話。

 

 稲光がおさまると……そこには、何事もなかったかのように、傷一つなく元のままで浮いている魔女の姿があった。

 

「その武器に、その飛行魔法……体内から感じる魔力の性質……帝国の『調整魔法兵士』ね。私達の同胞の胎(はら)を使って生み出された、戦うためのお人形……」

 

「……っ!?」

 

 聞こえて来たその言葉、それによって知らされた事実……それもまた、ロゼッタを驚愕させた。

 

 帝国が魔女を使って産ませているという『魔法兵士』。魔女を強姦してその力を受け継いだ子供を産ませ、生まれた時から洗脳教育を施して、帝国のためにその命を捧げさせる優秀な戦士を作り出している……という話は聞いていた。

 おぞましいことを考えるものだと思っていたが……その産物を、自分は既に目の当たりにしていたのだ。先ほどまで話していた、あの指揮官こそがそうだった。

 

 しかし、それをも超える驚愕が、その直後に襲ってくるということを……彼女はまだ知らない。

 

「やはり、私程度の力では通じぬか……まさかこんな辺境に、『黒の女王』が来るとは」

 

 それを聞いて、今度はさらなる驚きに声も出ないロゼッタ。

 絶句したまま……あらためて、眼前に浮いているその魔女を見る。

 

 腰のあたりまで伸びた、流れるような美しい黒髪。

 しみどころかくすみ一つもない、透き通るような色白の肌。

 細身ながらも女性らしい豊かさを持つ肢体を覆う、シンプルなつくりの漆黒のドレス。

 気の強さをうかがわせる、大きくも鋭さのある目の中に、金色に光る瞳。

 

 なるほど、言われてみれば……伝え聞く容姿と一致する。

 

 自他ともに認める『田舎者』と言ってすらいいほどに、世情に疎いロゼッタでも知っている……魔女であるならば知らない者はいない大魔法使い。

 

『黒の女王』マリーローズ・アン・モルガーナ・グランドヴァース。

 世界最大の魔女の連盟『スカイクラッド』の盟主にして、世界最強と言われる魔女。

 

 帝国の宿敵たる大魔女の首をここで取らんと、その細い首をめがけて剣を振り抜く指揮官。

 しかしまたしても、傷一つつけることすらできずに障壁で止められてしまう。しかも今度は、その止められた形のまま、剣が……いや、剣だけではない、その指揮官の体全体が、金縛りに遭ったかのように、全く動かなくなってしまっていた。

 

 表情筋や瞼すら固定されてしまったようで、ぴくりとも動かないその男に、黒の女王は憐れむような視線を向けて……ぽん、とその頭に優しく手を乗せる。

 

「まぎれもなく私達と同じ血を受け継いで生まれながら、愛を、心を、世界を知ることを許されず、己の意思を持つ道を失った、可哀そうなお人形……今、解放してあげましょう」

 

 その瞬間……その指揮官の全身から、音もなく炎が吹き上がり……まるでその体を包んで覆い隠すように燃え広がった。

 燃えていた時間は、ほんの数秒。あっというまに火は消えて……後には何も残っていなかった。

 

 服も、骨も、軍人としての装備も……非常に頑丈に作られているはずの、魔法の武具の数々も。

 

 ただ、炎が消えると同時に、いくらかの灰だけが崩れこぼれるように落ちていき……しかし、風に吹かれてどこかに飛んでいき、見えなくなった。

 

 

 

 この日、『黒の女王』とその側近たちの手により、1つの村と1人の魔女が、帝国軍の魔の手から救われた。

 

 魔女ロゼッタは、このままこの村に居続ければまた帝国軍を呼び込みかねないと判断し、村を出ることを決意。

 以降、『黒の女王』の誘いに乗り、『スカイクラッド』の拠点のいずれかに身を寄せ、同胞として共に生きていくことになった。

 

 

 

 




感想・評価などいただけると作者が狂喜乱舞します。
もしお気に召しましたら、一言だけでも残して言っていただけたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします。
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