※この作品はR-18です。

世界最強の魔女、無様敗北の末に敵国に捕まって魔女裁判で有罪になる。残りの人生は苗床として一生子宮を使われ続けるようです。   作:破戒僧

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第2話 スカイクラッド

 

 

 今から500年以上前。

 魔女マリーローズは、どこにでもいる……とまではいわないが、特段他と比べて抜きんでて優れているわけでもない、普通の『魔女』だった。

 

 魔女らしく、魔力量や魔法の技量という面においては、人間よりも優れてはいたが、それは、同じように『隠れ里』に暮らしていた他の魔女達にも言えたこと。

 

 彼女が他と違ったのは、その好奇心だった。

『今までそうだったから』『このやり方で上手くいっていたんだから』という理由で、古いやり方を変えようとしない『隠れ里』のやり方を、彼女は面白くなく思っていた。

 古い掟やしきたりに縛られ、自分の人生を生きたいように生きることができないことが窮屈で、苦痛で、我慢できなかった。

 

 彼女は周囲の反対を押し切って里を抜け、外の世界に飛び出した。

 

 そこで彼女は、里に閉じこもっていたら一生目にすることのなかったであろう、見たことも聞いたこともないものをいくつも、見て、聞いて、知った。

 

 確かに、魔法の実力という一点においては、彼女はそこらの人間よりも優れていた。

 しかし、人間達はそれを補うように、独自の技術を進歩させていた。先天的に魔力の扱いの巧みさで劣る人間が、強靭な肉体を持ち、強力な魔法を使う亜人や魔物に対抗するために、長い年月をかけて研究し、形にしてきた、いくつもの『技』や『知識』を目の当たりにした。

 

 里の中では知ることも、想像することもできなかったそれらに触れて……マリーは、魔女としてさらに成長していった。

 

 もちろん、全くの新天地。右も左もわからない土地。幾度も様々な苦労や危機に直面した。

 しかし、それらを退け、あるいは耐えて乗り越えて……彼女は、魔法使いとして大成していく。

 

『魔女』とは本来、古き時代から長い時を生きる者。それも、閉じたコミュニティの中で、外の世界とかかわりを持つことを好まず、己の世界だけで人生を完結させる者が多い種族だった。

 それ以外の生き方、考え方を知らなかったとも言える。

 

 時には外貨を得るために外の世界の者達と関わることもあったが、それも『最低限』にとどめておき、必要以上に他者と、他種族と関わろうとしない。それが『魔女』という種族だった。

 

 そんな魔女としての『当たり前の在り方』に風穴を開けたマリーは、おそらくは史上初めて、本当の意味で外の世界に出た存在だった。

 人間やその他の種族と『最低限』を超えて深く交流し、その技術や知識を取り込み、自らが知るそれと合わせることで進化させ……全く新しい時代の『在り方』を作り出すと同時に、他の魔女達と比べてなお、一線を画するほどの『大魔法使い』になっていった。

 誰よりも巧みに魔法を操り、誰よりも深い知識を有し……それに引っ張られるように、彼女自身の根本的な『資質』すら大きく成長させた。

 

 里を出て100年が過ぎた頃、魔女マリーローズは、魔女の世界にその名を知らぬものはいないほどの存在になっていた。

 

 古きあり方を捨てて新しい道を切り開いた『先駆者』として。

 数々の秘法を修め、あらゆる奇跡を起こす『大魔法使い』として。

 それまで世になかった様々な原理、新たな魔法を導き出して示して見せた『探究者』として。

 その力でもって己の『在り方』すら捻じ曲げ、老いも死もねじ伏せ拒絶した『超越者』として。

 

 大魔女マリーローズ・アン・モルガーナ・グランドヴァースの名は、こうして世界中に広まった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 今から300年以上前。

 いくつもの国で、魔女を『災いを呼ぶ存在』であるとして、探し出して人間の社会から排斥せんとする、いわゆる『魔女狩り』が盛んになり始めた。

 

 自分達と同じ姿かたちをしていながら、全く違う強大な力を持った存在を認めることができないがゆえの、こじつけ以外の何でもない暴論を根拠として始まったものだったが、『理解できないもの』に対して、いつか自分達に牙をむくのでは、と恐れを抱く者はそれなりに多くいた。

 

 ゆえに、いくつかの国ではこのやり方、考え方は公然と支持され、国策として『魔女狩り』を行う国もいくつも出始めた。

 特に、土着の宗教・信仰を強く持つ国家ほどその傾向は強く、奇跡とはその地で信じられている神や精霊のものであるという考えを持つ彼らは、それらの教えに対して『都合が悪い』という面からも、魔女の排斥を推し進めていった。

 

 各地で、ただ平和に暮らしていただけの魔女があぶりだされ、責め立てられた。

 よくてその地を追い出された。悪ければ囚われ、いわれのない罪で処刑された。

 

 そんな時代に、当時すでに世界最高峰の魔女としてその名を知られていたマリーは、同胞達を守るために立ち上がった。

 一度は、自分が自分らしく生きるために、所属していたにもかかわらず捨てて抜け出た『魔女のコミュニティ』を、今度は自ら新設し……そこに、志を同じくする魔女達や、行くあてのない魔女達を受け入れて守り始めた。

 

 後に、世界最大の魔女のコミュニティとなる『スカイクラッド』の誕生である。

 

 迫害に怯え、居場所をなくし、逃げ隠れし続ける生活に疲れた魔女達を迎え入れ、どんどんその規模を拡大していくマリー達『スカイクラッド』は、気付けばその時代の大国すらも無視できないほどの強大な組織となっていた。

 

 いくつかの国が、『災いを引き起こす魔女が集まった邪悪な集団』として、これを討伐せんと軍を差し向けるも、マリーによって教え導かれた、新時代の魔女達の力の前には、人間の軍隊など、数を揃えても魔法の的でしかなかった。

 降り注ぐ爆炎、吹きすさぶ暴風、押し寄せる水流……自分達では到底力も理解も及ばない、災害を思わせるレベルの数々の奇跡の前に、彼らはなすすべなく破れた。

 

 その一方で、友好的であり続けようとする国々とは、これまで通り仲良く、そして誠実な付き合いを続けていた。

 人間も魔女も亜人も関係なく、助け合い、支え合い、激動の時代を共に生き抜いた。

 

 やがて、『彼女達は確かに強大な力を持っているが、敵対しなければ無害である』という認識が世界に広く根付いたことで、『魔女狩り』の悪習は終息していく。

 

 その時代を乗り切るために、魔女達が身を寄せ合い、互いを助け守るために、多くのコミュニティが結成されたが、それらの多くは『魔女狩り』終息後も解散されることはなく、多くの魔女達の拠り所として、その後も長くあり続けることとなる。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 今から100年以上前。

『帝国』による、それまでとは異なる意味での『魔女狩り』が始まった。

 

 国是として世界に覇を唱えるために、より多くの兵を、より大きな力を常に欲していた帝国が、研究の中で発見してしまった、『魔女』の持つ、母体としての有用性。

 それにより、帝国は魔女を『資源』として有用なものだと認識し、国力の強化のために、国境の内側・外側を問わず『狩り』によって回収し始める。

 

 人の世界もまた、300年前よりも技術・知識共に大きく進歩している。それはもちろん、魔女という存在への対処法も、また。

 かつてあった魔女狩りよりも、多くの魔女が犠牲になっていった。

 

 魔女達は、このままでは自分達も危ないと危機感を抱き、それぞれに動き出す。

 

 ある者は、帝国の魔の手から逃れるため、見つからないように隠れ住む道を選んだ。

 ある者は、帝国から守ってもらうために、己の力や知識と引き換えに大国の傘の下に入り、庇護を手にする道を選んだ。

 ある者は、同じ立場の魔女達と共に帝国に抗うため、『連盟』に身を寄せることを選んだ。

 

 その『連盟』の中でも最大の規模を誇る『スカイクラッド』は、どこかの国に属することこそしなかったものの、以前から友好的な関係にあった『王国』と同盟を結び、有事の際に助け合う間柄となって、魔女を、同盟国の民達を、互いに協力して守り続け、帝国の脅威に抗い続けた。

 

 さすがの帝国も、王国と連邦、そして魔女の連盟を同時に相手取る形となっては、それまでのような破竹の勢いでそれらを蹴散らす……などということはできなかった。

 

 しかし、かといってそれらに敗れることもなかった。それほどまでに、『魔女の苗床』を含む様々な方策で強化された帝国の国力・軍事力は強大だった。

 

 決定的な形での決着がつかないまま、実に100年以上もの時が流れていた。

 それはつまり……新たな『魔女狩り』の時代もまた、100年以上の長きにわたって続き、魔女達を脅かし続けていることを意味する。

 

 王国も、連邦も、魔女達も……皆、疲れていた。

 勢力として疲弊しているという意味ではないが、終わりの見えない戦争に嫌気がさしていた。

 

 未だに元気で戦い続けているのは、帝国だけ。

 それも、そもそも国民への教育が洗脳教育に近いものであり、『何も考えずに祖国に尽くす』ことだけを考える国民だけを量産しているから、という理由で。

 

 国民達は、それ以外の生き方を知らない。外の世界を知らない。自由の意味を知らない。

 帝国にとって必要なことだけを教えられ、それ以外を教えられず、大人になる。

 そして、帝国の中枢にいる者達の望み通り、帝国に尽くして死んでいくのだ。

 

 

 そして、時代は流れ……現在(いま)に至る。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 人里から遠く離れた……世界のどこか、としか言えない場所。

 どの国にも属せず、どの国のどんな地域からも遠い、誰にもその存在を知られていない場所。

 

 そこに、世界最大の魔女の連盟『スカイクラッド』の本拠地は存在した。

 

 その、一番奥の区画にある、とある一室にて。

 

「……ま……!……リー、ま……マリー様!」

 

「……ん……っ?」

 

 その部屋の主……スカイクラッドの盟主・マリーローズが、うたた寝から目を覚ました。

 

 目を開けてみれば、そこは自分の机だった。

 座り心地のいい椅子に深く腰掛けて、背もたれに背中を預けて……

 

「マリー様ってば! 起きてください!」

 

 そして目の前には、呆れたような表情になっている、自らの補佐官の姿。

 

「あら、ごめんねイザベラ……私、寝ちゃってた?」

 

「ええ、それはもう気持ちよさそうに。全く……だから申し上げたじゃありませんか。遅くなるから一泊して今日帰って来ようって。それを強行軍で飛び続けるから……」

 

 目の前にいる、ゆるふわな金髪が特徴的な、小柄な少女……イザベラのお小言を聞いて、マリーは自分がうたた寝してしまっていた理由(多分)を思い出した。

 

 昨日までマリーは、遠征に出ていた。迫りくる帝国軍の魔の手から、同胞である『魔女』を救出するために、数名の部下と共に、はるか遠い場所まで出向いていたのだ。

 

 そこで帝国軍を壊滅させ、その若き魔女・ロゼッタを助け、新たなメンバーとして組織(スカイクラッド)に迎え入れたまではよかったが……問題はその後。

 

 その足でこの『本拠地』に帰ろうとしたマリー達だったが、何ぶん距離が距離。

 今から飛んで帰っては、どれだけ急いでも到着は夜中になってしまう。なので、ある程度飛んだところで適当に宿を取り、一泊してまた朝になってから向かうべきだと、目の前にいるこの少女、イザベラにはその時進言されていた。

 

 しかし、マリーはそれを却下。

 連盟の息がかかっている宿屋を使ったとしても、外泊は一定の危険があるし、何より時間がもったいないからと、強行軍でその日のうちに帰宅することを決定。飛行魔法でその日いっぱい飛び続けた。

 

 結果として、ギリギリ日付が変わる前に本拠地にたどり着くことができたものの、その後諸々の処理を済ませ、入浴もしてベッドに入ったのは、当然のように『翌日』午前になってから。

 そこからしばし眠り、しかしほんの数時間で起きて、こうして机仕事をしていたマリーは、気が付けば、座り心地のいい椅子でうつらうつらと……

 

 つまりは、単なる寝不足である。

 

「疲れが溜まっちゃってたか……やっぱり疲労回復の魔法薬(ポーション)を飲んでから寝るべきだったわね」

 

「そのポーションも全くの無害じゃないからって、乱用や常用を禁止したのはマリー様でしょう。しっかり働いたらしっかり休んで、体と心の健康を大事に……って、私達部下には言ってくださるくせに、どうしていつもご自身のことだけ適当なんですか」

 

「イザベラの言う通りですよマリー様。早く寝れば済む話なんですから」

 

 今度は横からそんな、少し呆れたような声が聞こえた。

 視線をそちらにやると、苦笑しながらマリーを見下ろしている、別な『魔女』の部下の姿が。

 すらりとした長身と金髪のポニーテール、そして、魔女というよりも騎士のような服装に、腰にさしているサーベルが特徴的だった。

 

「しょうがないじゃない、アリシア……最近特に『帝国』の連中があちこちに出没するから、書類仕事も現場仕事もどっちも忙しいんだもの。時間は有限なんだから、少しでも有効に使いたいし」

 

「時間は有限、ですか……不老不死であるマリー様が言うとなんか変な違和感がありますね」

 

「そう、それよ。私一応不老不死なんだから、多少の体への負担は無視できるでしょ? ならちょっとくらい……」

 

「ダメですってば。それで魔法薬(ポーション)を解禁しちゃったら、それこそマリー様の労働環境が今以上に悪化するの目に見えてますから!」

 

「ええ、しかも悪化させるのはマリー様ご自身という。魔法薬(それ)ありきで仕事のスケジュールを今以上に詰め込み出すのが目に見えるようですね」

 

「私、一応君達の上司よね……? すごいボロクソ言われてるんだけど……もうちょっと優しくしてくれてもいいのよ?」

 

「でしたらまずマリー様がご自身に優しくしてくださるようになったら考えます」

 

「ぐうの音も出ない……」

 

「我々にお説教されるのがご不満でしたら、クレア様かマリアンヌ様をお呼びしましょうか。どちらも事情を話せば喜んで来てくれると思いますが」

 

「それはやめて……その二人のお説教とかもっとめんどくさいじゃない。イザベラとアリシアのお説教のがまだマシだわ」

 

「まずお説教されるようなことをなさらないようにお願いします」

 

 もう言い返せない、とでもいうように、机に突っ伏すマリー。

 念のために言っておくが、彼女は『スカイクラッド』の盟主であり、この本拠地における最高権力者である。

 

 そんなマリーを見下ろしながら、ため息交じりにアリシアが言う。

 

「お疲れなのでしたら、ご自身で赴かずに我々実働部隊に仕事をお振りください。帝国軍への対処や、在野にいる同胞の保護でしたら、何もご自身が出向かれる必要はないのですから」

 

「アリシアの言う通りです。マリー様には、マリー様にしかできない仕事がいくつもあるのですから、遠慮なく部下をお使いください」

 

「そうかもしれないけど……私が直接行った方が早く終わるし……最近、帝国の連中があっちこっちに出没して忙しいでしょ? 私が動けば、その分あなた達にも少しでも楽させてあげられるじゃない」

 

「いえ、逆ですマリー様。私達に楽させたいのであれば、むしろマリー様は出ないでください」

 

「え゛っ!?」

 

 そのアリシアの言葉に、がんっ、とショックを受けたような表情になるマリー。

 ひょっとして自分は役に立っていなかった? むしろ現場で邪魔だったのか? と、不安そうなその顔に、実にわかりやすく書いてあった。

 

 アリシアは、首を横に振り、

 

「確かにマリー様がお出になれば、トラブルなど一瞬で決着します。ですが……盟主であるマリー様が働きすぎると、我々の仕事がなくなります」

 

「? それは、いいことなんじゃないの?」

 

「業務量だけを見れば楽ではありますが、仕事と一緒に『経験』や『成長』の機会も持って行ってしまいます。我々実働部隊は特に、仕事なんてこなして覚えてなんぼなんですから……私達のことをお考えいただけるなら、将来を見据えて、今は我々に仕事をさせて、苦労させてください。その分、いつか自分達だけで『楽』をできるようになりますから」

 

「付け加えて言えば……マリー様があまりに『楽をする』ことを放棄して働きすぎると、『自分達も楽なんかしていられない』『もっと仕事を見つけて働かなければ!』って過度にプレッシャーを感じてしまう部下が続出します。部下達の精神的な余裕とか、休みを取りやすい、楽をしやすい職場のためにも、まずはマリー様に見本を見せていただかないといけません」

 

「あー……なるほど、そういうのもあるのね……。わかった、教えてくれてありがとう。これから気を付けるわ」

 

 考えが足りなかった部分を指摘され、ちょっとしゅんとなるマリー。

 それを見て2人は、『よし』とでも言いたげに、満足そうに黙ってうなずいていた。

 

(全くもう……外ではすごく凛々しくて頼もしい、一片の隙も無いようなお方なのに……)

 

(身内の前では色々と緩むというかダメというか、一蹴回ってかわいいというか……)

 

 声に出さずにそんなことを思う、イザベラとアリシアの2人。

 呆れはしつつも、マリーを心から信頼し、敬愛しているのもまた本心である2人は、こうして自分達にはあっさりと謝ったり、弱くてだらしない部分を見せてくれる盟主のため、自分達がやはりこれからもしっかりしなければ、と、ひそかに決意を新たにするのだった。

 

「ところでイザベラ。私のこと起こしに来てたってことは、何か用事があったんじゃないの?」

 

「あ、はい。特に急ぎではないのですが、今度ある『王国』との会談の件でご報告が」

 

 言いながら、書類を何枚か差し出してくるイザベラ。

 

「ああ、来週のアレか……それは『私にしかできない仕事』よね?」

 

「ええ。ですのできちんと、眠気が飛んだ後に見ていただきたかったんです。もう大丈夫そうですね?」

 

「あははは、おかげさまでね」

 

 ちくりと言われて苦笑しつつ、その書類を受け取って目を通し始めるマリー。

 その表情はすぐに、イザベラとアリシアのみならず、『スカイクラッド』に所属する多くの魔女が憧れてやまない、『黒の女王』の凛とした(仕事用の)顔つきになり……数十秒前まであったダメな雰囲気はきれいに消えて失せていた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ロゼッタのような『在野にいる魔女』の保護は、『スカイクラッド』の主要な活動の1つだ。

 

 帝国の軍事力は強大である。

 数多くの兵士に、優れた技術で作られた高品質な武装。豊富な魔道具や魔法武器。潤沢な物資。人間の兵士以上に脅威となる、調教された軍用の猛獣や魔獣の数々。

 そして何より、『魔女』の苗床を使って生み出される、超人的な力を持つ『調整魔法兵士』や、通常の個体よりもさらに強力な『軍用魔獣』の数々。

 

 いかに1人で百人力を持つ魔女と言えど、個人ないし少人数では、その力を惜しみなくつぎ込んで行われる『魔女狩り』に抗うことは難しい。

 

 今回、その存在を見つけ出されて、囚われる前に保護されたロゼッタは幸運だった。

 肌をさらされて痛めつけられ、いくらかの辱めを受けたものの、取り返しのつかないところまで至る前に、助かることができたのだから。

 

 しかし、世の中には当然……彼女のように助けられることができなかった者もまた、いる。

 

 隠れ潜んでいたところを探し出され、あぶりだされて捕らえられた者。

 住んでいた村の住人達に裏切られ、売られる形で帝国に捕らえられた者。

 単独で、あるいは仲間達と共に帝国に反抗し、しかし敗れて捕らえられた者。

 

 それぞれに、『幸運』とは言えない道筋をたどり……帝国に捕まってしまった魔女達。

 その末路について、知っている者は、外の世界に生きる魔女達の中には、いない。

 連れ去られた魔女達は、誰一人、帰ってこなかったから。

 

 救われることができなかった、不運な魔女達。その末路とは……

 

 

 

 場所は、『帝国』の中心部。

 皇帝が住まう、帝国最大の都市『帝都』。

 

 その中でも、高級貴族や軍の高官など、ごく一部の限られた者達のみが立ち入りを許されている区画があった。

 その区画には、より高品質な武具を作り出すための新技術の開発を行っていたり、様々な魔道具の研究・開発を行っていたり、攻め落とした国々から奪った技術の研究・検証を行っていたりと……様々な重要な研究を行う施設が立ち並んでいた。

 

 その中でも、特に重要な施設の1つとして位置づけられているのが……『牧場』だった。

 

 

 

「嫌だ、放して……放してよっ!」

 

 また1人……帝国軍の『魔女狩り遠征』で捕らえられた魔女が連れてこられた。彼女にとって、終の棲家となってしまうのであろう、この『牧場』に。

 

 明るい栗色の髪に、幼さの残るかわいらしい顔立ち。気の強そうな釣り目。

 彼女がもし、平和な世に生まれた単なる町娘であれば、さぞ評判がよかっただろう美少女だったが……今彼女は、狩られた『獲物』としてここにいる。ここに連れてこられてしまっている。

 

『身体検査』を受けた時に、服は全てはぎとられ、裸のままここまで護送されてきた。

 誰にどれだけ、何を言っても耳を貸されることはない。『黙って歩け』とばかりに、首輪につながる鎖を引っ張られ、奥へ奥へと連れていかれる。何の説明もないままに。

 

 そんな彼女姿を、『牧場』の職員達は、にやにやと笑って見送っていた。

 

「おお、新しい『苗床』の追加だな。随分元気がよさそうだ」

 

「素質も中々らしいぜ。事前に調べた結果はCランクだと」

 

「Cか……それなら行先は魔法兵士の繁殖場だろうな。最近、戦闘での消耗が激しくて、軍部から増産をせっつかれてるらしいからな」

 

 そんな陰口をたたかれているとも知らない『魔女』の少女は、施設の奥まで連れていかれて……その先にあった、せまくて薄暗い部屋に放り込まれた。

 拘束されて身動きもできないままなのに加えて、首輪と手錠のようなそれらの拘束具には、魔法の発動を妨害する効果がある。唯一にして最大の武器である魔法を封じられてしまい、最早彼女に抵抗の術は残されていなかった。

 

 押し込まれたそこは、2m四方ほどの大きさの部屋だった。

 飾り気もなければ生活感もなく、家具と呼べそうなものは、部屋の隅に設置されたトイレだけ。そこにも、仕切りのようなものはない。

 それ以外は、本当に何もない部屋だ。

 武骨で殺風景。鉄格子こそないが、どこか牢獄を思わせる。

 

 空調が管理されているのか、裸でも寒くもないし、暑くもない。

 

『C6475、聞こえるか』

 

 部屋の中に突如としてそんな声が響き渡り、ドキッとする少女。

 しかし、すぐに元の強気な表情に戻って、声が聞こえてきた天井の方をにらみながら言い返す。

 

「そんな番号で呼ばないで! 私の名前はライラよ! お母さんにもらった名前がちゃんと……」

 

『貴様は『C6475』だ。この施設で管理される以上、そのような個人名は不要である』

 

 一切聞き入れる様子もなく、そう切って捨てるように言う、何者かの……おそらくはこの施設の職員のそれであろう声。

 

 ライラと名乗った少女は、自分をまともに人間扱いするつもりがないのだと改めて理解し――ここに来るまでの護送の過程を思い返せば、今更と言えば今更ではあるが――悔しそうに奥歯をかみしめる。

 そんな様子もやはり気にすることもなく、その声の主は淡々と続ける。

 

『C6475。今日からはここが君の寝床だ。君にはここで、我ら帝国を支える戦力たる『調整魔法兵士』を産み増やすために、苗床として励んでもらう』

 

 そう言うと同時に、部屋の扉が開き……男が1人、入ってきた。兵士として、戦うものとしての理想形とでもいえるような、筋骨隆々の逞しい肉体を持つ男だ。

 その体を見せつけるように……男は、何も衣服を身に着けていなかった。全裸で、その少女……ライラが入れられている部屋に、無言で入ってきた。

 

 その股間は、天を衝かんばかりに勃起し硬くなっており……表面に生々しく血管が浮き出て、びくびくと震えていた。

 まるで、その出番を今か今かと待ちわびているかのように。

 

 突然のことに『ひっ!?』と驚き怯えるライラ。

 

 天井からの声は、無慈悲に『始めろ』とだけ告げた。

 

 命令を受けてその男は、やはり無言でライラに歩み寄り……その華奢な体に覆いかぶさり、手足を抑え込む。

 

 この姿勢。全裸の自分。同じく全裸で、股間をいきりたたせているこの男。

 そして、先ほど聞こえた『苗床』という言葉。

 この後自分が何をされるのか、彼女には否応なしにわかってしまう。

 

「い、嫌……やだっ! 触るな! 汚い手で……」

 

『抵抗するな、C6475』

 

 その『命令』がライラの耳に届いた途端に、装着されている首輪……隷属の術式が込められているマジックアイテムが作動し、彼女から抵抗の力を奪う。

 魔法を封じられている彼女の細腕だけの力では、その男に抵抗するのは元々難しかっただろうが、それすらできず、無抵抗で『受け入れる』しかなくなったライラは、恐怖と絶望に顔をゆがめ、目には涙を浮かべていた。

 

 そんな彼女のことを一切慮る様子も見せず、男は覆いかぶさり、その剛直を彼女の恥部、その入り口にあてがう。

 ぴったりと閉じた、しかし柔らかい入り口に、焼けるような熱くて硬い肉棒が触れる。

 

「お願い、や、やめて……!」

 

 ライラの必死の懇願にも……男からの返事は、ない。

 

 言葉一つないままに……無遠慮に、躊躇なく、突き刺した。

 まだ準備もできていなかった少女の膣内に、熱く硬い肉棒が一気に奥まで突き立てられる。

 

 

 ―――ずぶ……ずぶずぶぅ……ぶちぶちぶちぃっ!!

 

 

「あっ、が……い、や、あぁぁあ゛あ゛ああぁあっ!?」

 

 まだろくに濡れていないのもそうだが、サイズ的にも無理がある太さの肉棒が、無理やり膣肉を押し広げて入ってきていた。

 あまりのサイズ故にだろう、小柄なライラの下腹部には、深く深く突き刺さっているペニスの形がかなりくっきりと浮き出ていた。肉壁の伸縮を限界まで酷使し、その形を浮かび上がらせるほどに無茶な挿入である。

 

 しかしそんな、人間なら壊れてしまってもおかしくない『無茶』であっても……彼女が素質ある『魔女』であるがゆえに耐えられる。耐えられてしまう。

 ……本人の心情云々は別にして、だが。

 

 単純に巨根を挿入された圧迫感と激痛に加え、こんな形で自分の処女を散らされてしまったことに対するショックは決して小さくはない。

 ぱくぱくと動く口から言葉は出ず、出てくるのは悲鳴のみ。

 

 しかし、当然ながらそんな彼女の心中など、膜を破った方が慮ってくれるはずもなかった。

 

「いぎぃっ、ひぃっ……やめ……動かないでぇ! 痛っ、かっ……お、なかっ……破れるぅっ!!」

 

 彼女のショックが薄れるのも、破瓜の痛みが和らぐのも待たず、筋骨隆々のレイプ魔は腰を動かし始め、まだ濡れすら不十分なライラの膣内を、ゴツンゴツンと肉棒で突き回し始めた。

 快楽すらまだ混じっていない、純粋な苦痛から漏れる彼女の声も、まるで耳に届いていない。

 

 これも不自然と言えば不自然。レイプ魔は、苦しむ彼女を見て悦に浸るでもなく、また股間から伝わってくる快感に酔いしれるでもなく……ただ機械的に、『命令通り』に腰を振り、彼女を犯しているように見えた。

 仕事として彼女をレイプ、ないし『種付け』しているのだとしても、あまりにも感情らしい感情が見受けられず、まるで人形のように無機質。反応らしい反応が何もない。せいぜい、多少息が荒くなる程度。

 

 まるでこの男の方も、薬かあるいは魔法か……何かの手段によって、個人の意思を殺されているかのようだった。

 

 もっとも、ライラの側にはそれをいちいち気づいて気にする余裕はない。少しずつ潤滑剤となる愛液が出て来て、苦痛がやっと軽減されてきたか、という程度のところである。

 

 まだまだ『余裕』と呼べるほどのものはとてもないし、性交の快感も感じようもない、哀しみと苦しみだけで頭の中はぐちゃぐちゃなままだ。

 自分の秘所から乱暴に出入りする、愛液と破瓜の血にまみれてテカテカと嫌な光沢を放つ肉棒を見て、悔しさに歯を食いしばり、苦悶の声をどうにかこらえて嚙み殺す。

 

 数分前まで男を知らなかった初物の膣。ぴったりと閉じて1本筋を作っていた自分の女性器。

 そこを、この悪夢のようなレイプが終わった後、果たして元に戻るのか心配になるほど……それどころか、このまま壊されてしまうんじゃないかと思うほどに大きな肉棒が、我が物顔で押し広げて突き回している。

 変わらず襲ってくる恥辱と苦痛を、ライラはただただ耐える。耐え続ける。

 

 ただ、耐える。それしかなかったはずの彼女の頭の中に……それとは違うものが混ざり始めたのは、

 そして、くぐもった苦悶の声の中に、何やら艶を帯びたものが混じり始めたのは……それからさらに数分後のことだった。

 

「っ、ぐ……ひ、っ、んっ……んぅうっ……はぁあぁ、ん、っ……!?」

 

 自分の口から漏れ出て聞こえる、聞いたことのない声。

 下腹部からびりびりと電気のように走り始める、甘い痺れ。

 それまでの、混じりけのない『苦痛』とは明らかに違う何か。

 本能的に、気づけたとしても気づきたくないと、頭が、理性が否定したくなる1つの事実。

 

「う、そっ……私っ……!? 嘘よぉ、こんな、犯されて、気持ちよく、なんてっ……!」

 

 肉棒が肉ひだに引っかかってかき回される感覚がなくなるほどに愛液が分泌され始め、広げられた肉壺は圧痛から解放されつつあった。

 

 代わりに彼女を襲ってきていたのは……苦痛とは真逆のもの。

 彼女の意思はどうあれ、『本来の使い方』をされている肉壺が、肉棒を受け止めて歓喜して、愛液と同時に垂れ流す……快感という、残酷なほど正直な生理現象だった。

 

 彼女の意思を全く尊重しないどころか、彼女をろくに人として見てすらいない……搾取するだけの性行為。

 それでも自分の体は喜んでしまっている。男を受け止め、受け入れるように、甘く切ない快感を発し始めている。

 

 そのことにショックを受け、必死に否定するように首を振るライラ。

 しかし、現実は変わらない。下腹部から迸り続ける甘い感触は、消えてくれないし、弱まってもくれない。

 がつんっ、と突き上げられるたびに、びりりっ、と走る快感が、彼女の意思とは関係なく、彼女の体が雌として悦び始めていることを突き付けて来ていた。

 

「うあっ、はぁあ……ぐぅうっ! 奥、届いてっ……こんなっ、壊れ……んぅぅうっ!!」

 

 さらにしばらく――数分? 数十秒? もうそんな時間間隔もわからない――経つ頃に。

 

 体中にしっとりと汗が滲み、小さな体をガクガクと震わせて、自分には不釣り合いなほど大きな男の一物を懸命に受け止める少女。

 その表情は、彼女が本当に『苦痛』を感じているのかと思うほどに蕩け始めていて……ひぃひぃと喘ぎながら必死に呼吸し、酸素を取り込もうとしている。

 

 歯を食いしばって苦痛に耐えているのか、喘ぎ声を必死でこらえてかみ殺しているのかわからない有様だった。

 突かれるたびに口から洩れる声を聴けば、何も知らない他人ですら、彼女の体がセックスの熱に浮かされてしまっていることを理解してしまう。

 

 最早彼女自身、今自分が苦しんでいるのか、悦んでいるのかわからなかった。

 わかったとしても、認めたくはなかっただろうが。

 

 そして、頭と同じでグズグズに蕩けてしまっていたその膣に……仕上げとばかりに、ひときわ強く肉棒が、奥の奥に突き立てられ……その瞬間、

 

 

 ―――どくっ……どぷんっ! どくっ……どびゅるるうぅぅうびゅるびゅくっ!!

 

 

「んあ、ぁぁあああやああはあぁああ~~~っ!!」

 

 吐き出された白濁液が、猛烈な勢いでライラの子宮の中に流れ込んでいく。

 膣の奥の奥にある小部屋はたちまちいっぱいになるが、それでもまだ止まらない射精。注がれる精液。

 すでにいっぱいの子宮の中に強引に注がれていき、水風船のようにぷくっと膨らませる。

 

 あまりの量に、外から見ても、お腹がぽっこりと膨らんでいるのがわかるほどだった。細身の体で下腹部だけが不自然に膨らんでいるその様は、まるで……臨月の、とまでは言わないものの、妊婦の体を思わせた。

 

 それでも受け止めきれなかった精液は、子宮から逆流し、膣内を通って外にまでどばっとあふれ出す。端から端まで精液で満たされた膣内から、その膣圧と水圧その他諸々に押されて、勢いよく噴出し、床に水たまりならぬ精液だまりを作った。

 

「ひゅー……ひゅー……」

 

 ライラはというと、射精の衝撃と疲労感、そして頭で処理しきれないほどの快楽で、目の焦点が合わないほどに意識が虚ろになっていた。

 

 そんなライラの膣内から、最後の一滴まで出し尽くしたところで、男は肉棒を抜きとった。

 巨大な肉棒が抜き取られた後のライラの膣は、ぽっかりと開いたまま、元に戻らない……かと思われたが、十数秒もすると、広がっていた膣穴はゆっくりと閉じ始め、元通りの一本筋に戻った。

 それでもさすがに、大量に注がれた精液は、その入り口からドロドロと漏れ出続けていたが。

 

 床に倒れ込んだまま、ほとんど失神しているライラの股間の下。どんどん大きくなっていく精液だまり。

 明らかに、成人男性の1回の射精とは思えない、いやありえない量の精液。

 

 ライラは知る由もないことだが、これもまた帝国による仕込みの一環。

 彼女を犯したのは、魔女に種付けをするための『種馬』用に調整された兵士であり、一度に大量の精液を、しかも短期間に連続して放つことができるようになっている。『苗床』たる魔女を、効率よく妊娠させ、『魔法兵士』を産ませるために。

 

 そしてその精液は、通常の精子よりも寿命が長く、また膣内の酸性の環境に負けないように改良されており、魔女の膣内で長く生存し続け、通常の精液よりもはるかに妊娠させやすいようになっている。

 

 今も、ライラのお腹の中で、子宮からさらに先……卵管を逆流して、排卵後に漂ってきていた卵子に精子が殺到。

 その中の1つが、無事に……

 

「何、これぇ……お、お腹、熱いよぉ……」

 

 単に精液を注がれただけではない、その、お腹の中に宿り灯った熱。

 その意味を、哀れな『苗床』が知ることになるのは……そう遠くない未来のこと。

 

『苗床』となる魔女は、投薬等により、体を改造・調整され……妊娠した後、通常よりも短期間で子供を成育させ、出産することが可能になる。

 それにより、短いスパンで魔法兵士や軍用魔獣を生み出し、『苗床』としてより多く、帝国に貢献できるようになる。

 

 

 

 ライラが初めての『魔法兵士』を生んで母親となったのは、そのわずか3か月ほど先のことだった。

 

 

 

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