「おはようございます、玉田先輩」
サークルに入って晴樹は慧斗に挨拶した。
「おはよう、黒川君。淑乃さんもこの世界には慣れたかな?」
慧斗が淑乃にこの世界に慣れたかを聞いた。
「ええ、大分慣れて来たわ」
「それは良かったよ」
「俺もまだ慣れてないか心配したよ」
慧斗の隣で赤い毛色の無数の尻尾を生やしたデジモンが安堵したように言った。
「貴方もデジモンを連れているの?」
「ああ、紹介してなかったね。この子はエレキモン、俺のパートナーなんだ」
「俺、慧斗のパートナーだ。慧斗と一緒にスパイラルと戦ったんだぜ」
「そうなの。それは凄いわね」
無邪気に振る舞うエレキモンに淑乃は微笑んだ。
「淑乃さんが慣れているみたいで安心したよ。異世界から来て不安になっているのかと思っていたけど、その心配はしなくて良さそうだね」
「ええ、くよくよしていても仕方ないもの、どの世界にいてもめげずに生きていくわ」
「へえ、随分と肝が据わってるんだな」
淑乃の前向きな姿勢にエレキモンは感心していた。
「玉田先輩、今日は何か事件はありますか?」
晴樹が慧斗に何か事件が起きていないかを聞いた。
「そうだね、今の所、ホットラインの電話は鳴ってないし、これと言った知らせもないから大丈夫だね」
「何だ慧斗、事件が無いと俺、暇だぜ」
事件が無い事にエレキモンは不満そうにしていた。
「エレキモン、事件が無いのはいい事だよ。何事も無く平和でいるのが・・・」
「玉田先輩!」
慧斗が安心していると、後輩の子が入って来た。
「どうしたんだい?」
「大学にデジモンがやってきました!玉田先輩に会わせろと息巻いています!」
「え、俺に?」
「はい、出てこないと大学を破壊すると言っています!」
「大学を壊す?」
「はあ、面倒な奴みたいね・・・」
事件が起きそうな気配に晴樹と淑乃は身構えた。
「よし、そのデジモンに会ってみよう。黒川君、淑乃さん、来てくれるかな?」
「分かりました、先輩」
「ええ、行くわ」
慧斗と一緒にそのデジモンのいる場所へと向かっていった。
「スパイラルを倒した英雄はどこだ、出てこい!」
大学の門の前で黒い恐竜のようなデジモンが地響きを立てて待っていた。
「あのデジモンだね」
「おう、お前だな、スパイラルを倒した英雄の一人は!」
慧斗の存在に気付くとそのデジモンは地面を響かせて近付いた。
「君かい、騒ぎを起こしているデジモンは?」
「騒ぎなど起こしていない、俺は英雄と戦いに来たんだ」
「英雄?」
慧斗が首をかしげるとそのデジモンは名を名乗った。
「俺はブラックグラウモン、強者を求めて旅するさすらいのデジモンだ。お前、スパイラルを倒した英雄だろ?」
「え、まあ、スパイラルと戦ったけど、それがどうしたのかな?」
「へ、とぼけたふりをしても俺には分かるぞ。お前はかなりやれるだろう」
「そうだぜ、慧斗は頭が良くてりーだーしっぷがあるんだ。そして俺も強いんだ!」
エレキモンが胸を張って言った。
「ちょっとエレキモン、そんな大仰な・・・」
「へ、やっぱりな。スパイラルを倒した英雄、俺と勝負しろ!スパイラルを倒したその強さが本物か、俺様が確かめてやる!」
ブラックグラウモンは笑みを浮かべて勝負をしろと言った。
「ええ、別にいいけど、君、成熟期のデジモンだよね。俺に相手が務まるのかな?」
「止めた方がいいぜ。今のお前じゃ俺と慧斗には勝てないぜ」
慧斗は謙遜に振る舞ってエレキモンが指を振って挑発した。
「何だ、俺と戦わないのか。スパイラルを倒した英雄は腰抜けか!俺と戦うのが怖い弱虫か!」
ブラックグラウモンは鼻息荒く叫んだ。
「慧斗は弱虫じゃないぞ!」
「エレキモン、落ち着いて。取り合えず君も落ち着いた方が・・・」
「お前が戦う意志を見せなければ、俺はこの大学とやらを破壊するぞ!」
ブラックグラウモンは咆哮を上げて大学を壊すと言った。
「わわ、それはちょっと・・・!」
「玉田先輩、俺に任せて下さい」
晴樹が前に出てブラックグラウモンに言った。
「君の相手は俺と淑乃が相手になる。それで俺達が負けたら先輩と戦う、でいいかな?」
「私も戦うの?」
「何だ貴様等は?俺は英雄と戦いに来たんだ。怪我したくなかったら引っ込んでな!」
「甘く見られちゃ困るぜ!」
晴樹と淑乃のスマホからユキアグモンとピコデビモンが出てきた。
「俺達だって戦えるんだ!」
「貴方がこの人と戦えるかどうか、私達が見定めましょう」
ユキアグモンとピコデビモンが戦闘の体勢に入った。
「大学を壊すなんて普通に迷惑なんですけど、すぐに出ていってもらうわよ」
「君の相手は俺達が相手になる!」
「へ、いいだろう。俺様に挑むその無謀さは褒めてやる。英雄を倒す前の肩慣らしには丁度いいぜ。二匹纏めてかかって来な!」
ブラックグラウモンが咆哮を上げて前進して来た。
「晴樹、私達で追い払いましょう」
「ああ、行くぞ!」
二人の指示を受けてユキアグモンとピコデビモンが向かっていった。