※この作品はR-18です。

棘(とげ)   作:霜月朔日

4 / 4
内田 千草(24歳)

1

 千草が、ふと気を確かにしたとき、さほど多くのことは覚えていなかった。

何が起こり、自分がどうなっているのか。まわりに誰がいて、これからなにが起こるのか。なにもわからなかった。わかるのは、伝わってくるそれが確信に満ちた悪意であるということだけ。

目をひらくことができなかった。声をだすことも。近いところで、かすかな汗のにおいがする。複数の人間の気配がすぐ近くにあるのに、誰も声をたてていない。じっとこっちの方を見ている。

静けさの中、何かが音をしのばせて移動してくる。その気配がある。かすかな空気の流れや、音になる前の音でそれがわかる。それらから伝わってくるのは善良なそれではなく、確信に満ちた悪意だ。耳から聞こえてくる小さな物音と皮膚で感じる周囲の気配だけが、知るための唯一の手がかりだった。顎と肘と膝に痛みがある。強く打ちつけた後の熱を持っている。

 体の上にはずっしりとした重みがのしかかっている。腹のあたりにひとつ。脚のあたりにもうひとつ。人間の重さだ。人間の感触がある。ふたりの人間に同時に上にのられた経験はない。けれどそれが二人の人間の重さであることはわかる。二人は体の上に体重をかけて座りじっとしている。いやもう一人いる。肩だ。両肩は大きな力強い掌でおさえつけられ、体をよじろうにも身動きができない。

 体の後ろにまわった手首が、きしむような重さでつぶされそうだ。痛い。でも、腕を動かすことはできない。背後にまわった腕は、両の手首をたばねて拘束されている。動かせるのは指だけだ。腕に力を込めても少しも離れない。動かない。ねじるように引き離そうとすると、両の手を拘束したものが手首ににぶくくい込んでくる。

 まわりに誰がいて、これからなにが起こるのか。なにもわからない。わかるのは、伝わってくるそれが確信に満ちた悪意であるということだけ。

 

2

 千草が公立高校に教師として赴任してから二年目を終えようとしていた。地方の町で生まれ育ち、地元の女子大学で資格を得て教師になった。憧れの職だった。最初は比較的都市部の学校で講師として勤務した。翌年、採用試験に合格したものの、生まれ育った町よりももっと地方の高校に赴任することになったのには少なからず不満を感じざるを得なかった。千草が赴任したのは、現在は総合高校になっているとはいえ、もともとは地域の普通科の高校だ。地元外から電車やバスで通学してくる生徒が多く、さまざまな地域から寄り集まってくる生徒で学校は構成されていた。生徒の気質も教師の言動も粗野で、どちらかといえば繊細なところの多い千草の気質に染まないところが多かった。生徒たちは千草をいつもニックネームで呼んだ。他の教師たちの前でもニックネームで呼ぶことが多く、正しく苗字で呼ぶように何度注意を与えても無駄だった。

 

3

 校舎の前にはきれいに区画整理された水田が続いている。ところどころには個人栽培のこじんまりとした畑がある。トマトや胡瓜といった日用的な野菜を黒いビニールシートおおい、ちょっとした露地栽培をしている風だ。家族で供するか、ご近所に分けるか、といったところだろう。

 空地に積み上げられた土砂の山はこの辺り一帯が整備地であることを示している。一帯の整備はまだ中途で、これからまだまだ新興住宅が建て増されてきそうだ。まばらに建つ住宅の同じ色をした屋根の向こうには、開店したばかりのショッピングセンターの大きな看板が威容をはなっている。

 学校の敷地は周囲からは、金網と流れのよどんだ1メートル程の幅の小川で仕切られている。あたかもそれが社会のルールと学校のルールとの境界線でもあるかのようだ。実際のところ、千草の勤める学校と、社会で許されることとの間には確かな隔たりがあった。いや、他の学校との間に隔たりがあったというべきなのかも知れない。進学校で中学、高校を過ごしてきた千草にはこの高校のルールは、とてもルーズなものに映っていた。暴力事件や恐喝などいった事件が起きるわけではない。無免許運転や喫煙がそれほど頻繁に起こるわけでもない。しかし、生徒たちの無気力さと重く沈んだ校内の雰囲気は、進学校で自発的に学習や活動に取り組んだ千草の高校時代と比較して、あまりにも無為に日々を過ごしているように見えていた。

 

3

 その日、時計台の大時計は午後二時をさしていた。春の初めのおだやかな風が吹いていた。連休中ということもあって、今日は、四階建ての校舎の窓はすべて閉めきられ、どこにも人影が見えない。ほとんどの部活動は県外や他地区へ春休みを利用した遠征に出てしまっている。石でつくられた校舎前庭の記念碑の近く。だだっ広い駐車場には、千草が通勤に使っている赤い小型の車だけがぽつねんと停まっている。バイパスを走る車の騒音もここまでは聞こえてこない。

 千草が男子のバスケットボール部の顧問をつとめるようになって三ヶ月ほどになる。顧問の若い男の先生が突然、休職扱いになり、誰も担当する者がいなくなった。噂ではうつ病になったということだった。急遽、顧問として赴任二年目の千草に白羽の矢がたった。中学生の頃に半年ほどバスケットボール部に在籍したことがあるだけだったが、もともと部員数の少ない弱小というのもおこがましいほどの部活動だ。まともな練習をしようともせず、予算の少ない学校にとってお荷物でしかない部活動だ。誰でもよかったのだろう。千草が断る隙もなく、休職した先生が戻ってくるまでの少しのあいだだけ、という条件で顧問を引き受けさせられた。

 放課後の練習に顔を出してみても、体育館で練習している部員は十人足らずしかいない。運動着に着替えることもなく、制服の上着を脱いだだけでボールと遊んでいる。休みの日ともなると、暇を持て余した数名の部員が、どこかへ遊びに繰り出すまでの小一時間ほどボールを使っている。しばらくすると部員はそれぞれ姿を消し、使いっぱなしのボールはいつも体育館の床に転がされたままだった。状況はひどくなる一方で、変わる気配もなかった。

 生来、真面目で物事をほどほどにしておくことのできない性格の千草は毎日、練習を見に顔を出した。部員のいなくなった体育館の片づけをし、照明を消し、時には大音量で流行の音楽を鳴らしっ放しのCDプレイヤーの電源を切り、床に落ちているお菓子の包装紙や隅に置きっぱなしのペットボトルを拾い集めるのが、いつしか日課になっていた。

 体育館の下窓には頑丈な格子が取りつけられている。ボールが当たって窓ガラスが破損するのを防ぐためのものであるが、すべての窓に取りつけられているそれは、みる角度によっては檻の鉄格子のようにも見えた。

 

4 

休日出勤した千草は午前中に実習準備室で課題の採点をした。学年末に提出させた生徒の課題だ。練習を終えたバスケットボール部の後片付けの様子を確認しなければならないことをふと思い出して体育館に向かうことにした。午前の練習を見にいった時、身につけていた白い半袖のスポーツシャツに濃紺のハーフパンツを身につけたままだった。アンクル丈のソックスも、卸したばかりのバスケットシューズも、まだ午前のままだった。準備室の時計に目をやると、午後二時を少し回ったところだった。昼食はまだとっていない。時間をみると、急に空腹感を覚えた。

 体育館への渡り廊下に続くアルミのドアノブに手をかける。

 軽くきしんだ音を立てて扉を開くと、春先の心地よい風が千草の髪を軽くなびかせた。肩の少し先のあたりで切りそろえた髪が軽く風に動く。切りそろえたばかりの髪は、どちらかというと奥手の千草を活動的に見せた。千草の黒い髪は、持ち前の白い肌によく映えた。

 千草はそれほど人目をひくような容貌ではない。どちらかといえば地味な顔立ちをしている。けれど見る人によっては、千草に好感を感じる人もいるようだ。どちらかという化粧品の匂いが好きではなく、いつも素顔に近い程度の化粧しかしない。もともと肌が強くなく、自分に合うものがなかなか見つけられなかったせいもある。自分を飾り立てることにあまり興味を感じることがないのが、普段のスタイルだった。

 千草は日曜日と月曜とが連休となっていることをふと思い出した。妻帯者や家庭持ちが多いこの学校の職員はきっと連休を利用して家族サービスにいそしんでいるのだろう。千草の友人も皆、彼氏持ちだった。忙しい仕事の合間にいつ見つけてくるのだろう、と不思議に思うほどだった。午前中には部活動や千草と同じように課題の添削のために姿を見せていた年配の同僚たちの姿も校内に見えなくなっていた。

 千草はもう二十代半ばを迎えていた。これまでに異性と交際した経験がないわけではない。学生の頃、親しくなった男友達と映画を見に行ったこともあったし、仕事に就いてから男性と食事に出かけたこともあった。けれど、親しくなるにつれてあけすけになってくる男たちの態度がわずらわしかった。好意を抱くこともあったが、それ以上の関係になるにはもっと長い時間が必要だった。千草が誘いを断るようになると、何度もメールを送りつけ、電話をかけてくる男もいた。そのときの後味の悪さが今でも抜けず、自然と異性に対して身構えるようになっていた。

 空を見上げると、春らしい少し霞みがかがかった青空が広がっている。月。そう青い空には確かに白い月が見えている。光りを放つこともなく、傍目には燃え尽きて白く灰になったかのような半月が空にある。それは夜の美しい月とは違って、無骨な表面の凹凸をあらわにしたまま空にある。

何か悪いものでも見たかのように千草はふいに踵を返し、日曜の午後の廊下を小走りで体育館に向かった。

 

5

 千草が体育館に行くと、予想通り誰もいなかった。部員たちはみんな早々に帰ったらしい。登校坂の下のコンビニエンスストアでたむろしているか、町で唯一のショッピングセンターにでも繰り出しているのだろう。天井の照明は点けっ放しで誰もいない体育館の床をこうこうと照らしている。いつものように練習で使ったボールも床に転がったままだった。更衣室の方からはつけっぱなしのCDプレイヤーの音楽が鳴っているのもいつもと同じだった。

 千草は深いため息をつくと、放置されていたバスケットボールを拾い上げた。ゴールに向けてシュートした。ボールは放物線を描き、スパッという音を立ててリングにおさまった。気持ちの良い音だった。学生の頃は勉強とバスケットボールにうち込んでいた。決して強くはないチームの中で、身長が比較的高かったこと、体つきのバランスがとれていたこと。負けず嫌いだったこと。そんなことが評価されてずっとポイントガードのポジションを任されてきた。バスケットボールは決してうまくはなかったが、好きだった。部員たちの行動のすべてが千草には理解できなかった。

 体育館の壁際の配電盤のところに行き照明を落とした。照明のブレーカーを落とすとカチッと音が体育館に響いた。それから、ほうりだされたままのバスケットボールをボールかごの中に入れ、用具庫に片付けた。

 千草は更衣室の前に立った。男子用の更衣室の中からCDプレイヤーの音楽が聞こえる。部員たちはいつものように電源を切ることもなく音楽を流したまま帰って行ったのだ。みんな帰った後とはいえ、さすがにいきなり男子の更衣室に入るのはためらわれた。今は誰もいないとはいえ、男子部員が更衣している場所だ。簡単に足を踏み入れるわけにはいかない。

 誰か残ってるの、千草はためらいを覚えながら更衣室の中に向かって声をかけた。中には人の気配はなかった。千草の声は更衣室の中から聞こえてくる音楽にかき消されていく。部員たちは、いつものように後片付けもせず、音楽もかけっぱなしで帰ったに違いなかった。

 誰か残っていますか、しばらく時間を置いてもう一度、声をかけた。やはり人の気配はない。音楽プレイヤーから流れるJPOPが響いている。千草はため息をつき、一度周囲を見回すと、更衣室の中に足を踏み入れた。

 

6

更衣室には長い間にしみついた一種独特の臭気がただよっている。つんとした汗の匂いが鼻につく。薄暗い更衣室のロッカーの下には何足かの体育館シューズが、丸められたスポーツウェアやタオルと一緒に押し込まれている。棚の中に投げ込んだ体操服も目に入った。更衣室の床には、着替えに使うためのスペースがあった。放置された衣類やタオルを壁際に押しつけるかのようにして、更衣室の中央にはスペースが空いていた。やはり更衣室には誰もいないかった。ただ、CDプレイヤーだけが動いていた。

 更衣室の奥の床の上に置かれたCDプレイヤーは誰もいない部屋にJPOPの軽いリズムを流している。千草は更衣室の奥に足を進めた。スイッチを切るためにかがみ込んで手を伸ばした。

 その時、急になにかが動く気配を背後に感じた。

 急いで振り返ろうとした時、千草は背後から強い衝撃を受けて前のめりに床の上に倒れ込んだ。何かが後ろから千草の体とともに床に倒れ込んだ。背後から上に乗りかかる重みを感じた。

 誰かが、複数の誰かが誰もいない更衣室に入ってくる来る気配があった。

 

8

 杉木信太郎は高校2年生だった。バスケットボール部でありながら、体は細く、身長も低いことがコンプレックスだった。決して熱心でも、強くもないそのチームの中で、信太郎は主力でさえなかった。信太郎自身、それほどうまくなりたいという気持ちもなければ、熱心にバスケットボールに取り組んでいるわけでもなかった。放課後や休日に友達とわいわい騒いでいられさえすればよかった。顧問の男の先生が休職になってからは、千草が臨時の顧問になった。練習への意欲は一層に失せた。みんなが千草を「ちぐりん」というニックネームで呼び、練習も遊び程度になっていった。若手の女の顧問ということで、部員の何人かは千草に性的な興味を持ち卑猥な想像の対象としていた。千草の肌や体つきをじろじろと眺め、自慰の想像の対象としている者もいた。その話を聞いてから一度、信太郎も一度、自慰の時に千草を思い浮かべてみたことがある。信太郎にとっては大人の部類に入る千草よりも、同級生の方が良かった。

 その日も休日の午前練習を勝手に途中で切り上げ、帰り支度をしていた時、川島がやってきた。川島は1年のときに学校を退学した男だ。家庭の事情、というのが表向きの理由だったが本当のことはわかったものではない。退学した後も、仕事に就くこともなく、どこかへ行くこともなく、時折ふらりと学校に顔を出しては旧知の友人と言葉を交わすのを楽しみにしているようだった。川島にはどこか狡猾なところがあり、信太郎はあまり好いてはいない。川島は在学していた当時から、性的な興味が強く、女子生徒や女の先生からの評判があまり芳しくなかった。

 川島は、面白いものを見せてやるから残れと先輩たちが言っていると伝えてきた。さっきまで体育館で練習をしていた時、外から中の様子をうかがっていた男たちがいたのを思い出した。風体の悪い、いかにも性質のわるそうな服装をしていた。たまたま練習の様子を見に来た顧問の千草の後ろ姿を見て、にやにやしながら何かを話していた。どうやらそれが川島の言う先輩たちであるようだった。すぐに始まるからと川島が言うので従うことにした。千草のことが関係しているのではと直感したからだった。

 体育館のステージ脇のたまりに身を隠しているように言われた。川島に誘われたのは、信太郎とあと二人の部員だった。川島が高校に通っていたころ、よくつるんで悪さをしていた連中だ。

 しばらくすると千草が体育館に姿をあらわした。午前の練習に姿を見せたときと、同じいでたちだった。部活動の跡片付けを確認に来たようだった。千草は入り口の側にある配電盤の蓋をあけ、天井の照明を落とした。次に落ちていたボールを拾い上げると、リングに向かってシュートを打った。ボールはリングに吸い込まれるようにして収まり、バスッと音を立てて床に落ちた。誰もいない体育館にボールのバウンドする重い音が響いた。

 

9

 更衣室の中から響く大音量の音楽は、伸太郎たちが身を潜めているステージ脇にまで聞こえてくる。千草は更衣室の入り口のところまで行くと、中に向けてなにか声をかけためらうような素振りを見せた。もう一度、中に声をかけると一度、天井を見上げ、かぶりをふってから更衣室に姿を消した。それを待っていたかのように、三人の男が姿を見せた。三人の男は千草の後を追って更衣室に駆け込んでいった。すべるような獣のような速さだった。男たちは千草の後を追って、更衣室の中に姿を消した。信太郎もまた川島にうながされて、その後を追った。

 

10

 更衣室の中をのぞくと予想以上の、思いがけないことが起ころうとしていた。信じられない思いで頭が真っ白になった。更衣室の床にはうつぶせにされた千草の姿と、その上に乗って押さえつける男たちの姿があった。

 信太郎は他の三人と並んで更衣室入口の壁ぞいに立ち、食い入るようにことのいきさつを見ている。止めに入ろうと考えるものは誰もいなかった。ただ、これから起ころうとしているなにかに対する予感で信太郎はいっぱいになっていた。これから起ころうとしている何かにたいして。まだおきてはいないことに対して強い興奮を感じていた。胸の高鳴りを抑え切れなくなった。自然と息が荒くなり、鼻で呼吸し切れなくなった。口を空けて呼吸しようとした。荒くなった自分の呼吸音を信太郎はおさえきれなかった。

 千草が男に床に押さえつけられながら、脚をばたつかせて抵抗しようとしていた。千草はガムテープでふさがれた口から言葉にならない悲鳴をあげていた。二人の男に組み敷かれた千草は、体をよじらせ、脚をばたつかせて男たちから逃れようとする。うつぶせにされた千草の体の上には二人の男が馬乗りにのしかかり、千草を逃さないようにしていた。千草の目にはガムテープがはられ、視界を奪っている。信太郎は内心、ほっとする。見ているだけなら、と思う。このまま息を殺して見ているだけなら、千草に自分の姿を見られることはない。それにただ見ているだけだ。それならば、これから何が起きたとしても自分がとがめだてされることはない。

 信太郎は胸の鼓動がいっそう増してくるのを感じた。

 二人の男は千草の片方の腕を後ろにねじりあげると、ガムテープを巻きつけ始めた。あらかじめ準備をしてきたらしい、男たちの手際はよかった。千草が手を引っ込めようとするが、男たちは力づくでそうはさせない。もう片方の手も腰の後ろに回され、男たちは千草の両手首を後ろ手にたばねあげるとガムテープをぐるぐると巻きつけていく。そんな千草の抵抗の様子を小型のビデオカメラを構えた三人目の男が無言のままで追いかけていた。

 すぐに千草の拘束は終わった。千草は更衣室の板張りの床に拘束された姿で仰向けにされている。その腹の上に一人、膝のあたりにもう一人、男が跨がって座っている。千草は身をよじり、声をあげなから、男たちの下から逃れようとしている。けれど、男たちは大柄で千草がどれほど暴れたとしても、少しも動きそうになかった。

 薄暗い更衣室の中で、千草の肌の色は白かった。衣服を身に着けたままであったので、よけいにそう感じたのかも知れない。半袖のスポーツシャツに濃紺のハーフパンツ、アングル丈の白いソックスとバスケットシューズ。後方にねじりあげられた千草の腕の内側と、少しまくれ上がった膝丈のハーフパンツから露出した千草の肌はなまめかしい白さを目立たせていた。

 

11

 千草には自分に何がおこったのか、正確に把握することができなかった。

 CDプレイヤーの電源を切ろうと手を伸ばした。後ろに動くものの気配を感じて顔を上げようとしたとき背中に強い衝撃を受けた。誰かが後ろから千草におおいかぶさってきたのを覚えている。全身に強い痛みを感じ、更衣室の床が視界に入った。確かめようと顔を上げようとしたとき、後ろから顎のあたりを手でつかまれ、首をねじられた。誰かの手が千草の目をおおいかくすように押しつけられ、次に口元にも押しつけられた。

 恐怖感を感じ、助けを呼ぼうと思った。日曜日の午後とはいえ、誰かがまだ残っているかも知れない。けれど自分の視野がなくなり、言葉を発することができないことに気がついた。自分の目と口に太いテープが張られているのがわかった。テープをはがそうと手を伸ばすと、うつぶせの姿勢から手を後ろにねじり上げられた。悲鳴をあげようとしても唇がガムテープにはりつき、うまく口を開くことができなかった。千草のからだの上には何かが乗っていて、体を起すことはできなかった。もう一方の手もねじりあげられ、両手が腰の後ろに束ねられた。強い力で両肩をつかまれると、千草の体は仰向きにされ、腹の辺りと脚の上にだれかが体重をかけてきているのがわかった。

 千草は最初、何かの悪ふざけだと思った。誰かが下らない冗談を考えついて、千草に悪ふざけをしているのかも知れない。悪ふざけはすぐに終わりかも知れない。千草はそう考えようとした。

千草の上にのしかかってきているのは男だ。しかもかなり大柄の男が二人だ。千草は状況を把握しようとする。男たちは無言だった。それ以上のことを何もしようとしてこなかった。ただ、千草の体に馬乗りになり、体を強く床に押しつけているだけだ。

 腹部に乗った男が、一瞬腰を浮かした。その次の瞬間、突然にそれまで以上の重さが千草の腹部に加えられた。重い衝撃だった。

――うっ。ガムテープでふさがれた千草の口からに、無意識のうめき声が漏れた。

 千草の腹にまたがった男は、二度三度と、腰を浮かしたり落としたりした。そのたびに千草の口からは、にぶいうめき声がもれた。息が詰まった。口がふさがれているため、千草は鼻から息を吸い込むしかなかったが、その呼吸もままならなかった。いためつける、という言葉がふと脳裏に浮かんだ。だれかが自分を痛めつけようとしているのかも知れない。千草はそう思った。

 

12

 ふいに男の手が下の方にのばされ、千草のスポーツシャツの裾をつかんだ。男は荒々しく、一息に、千草のシャツをまくりあげた。布がさけるような音がした。シャツは千草の胸の上まで、勢いよくたくしあげられた。男の思いがけない行動に千草は悲鳴を上げる。けれど声はガムテープで被われた口のなかでくぐもった響きをあげるだけだった。白いプラクティスシャツの下には、丈の短い白いキャミソールと薄い灰色のブラジャーをつけているだけだ。灰色のブラジャーに被われた胸のふくらみと、その下には抜けるように白い千草の肌が男たちの目にはいっているはずだ。千草は身をよじってあらがおうとする。男はまた数回、千草の腹の上に浮かした腰を落としてきた。

 男の手が千草の肌を撫で始める。千草の脇腹からあばら骨の上までのあたりを男は何度も手を上下させて、千草の肌の感触を楽しんでいる。千草が身をよじって、少ない自由のなかで男の手から逃れようとしても、男の手の動きに抵抗することはできなかった。男の指がブラジャーの下から潜り込まされた。最初は数本の指が探るようにおずおずと入り込み、指が千草の乳首を探り当てると、指の動きは大胆になった。すぐに手のひらが入ってきて、ブラジャーは持ち上げられ、ふくらみの上まで押し上げられた。千草が両の乳房と乳首があらわにされる。千草の乳房は白く、やわらかい肌に被われている。必ずしも大きくはないが、しっとりとした重みがある。形は整っていて崩れがない。黒みがなく、まだ赤みを帯びているさくら色の乳首は上を向き、肌の白さとコントラストをなしている。今その乳房と乳首があらわにされたのだった。突然の拘束と混乱とで冷たい汗をかいた千草の肌は、さっきからの抵抗でうっすらと湿り気を帯びている。微量の汗がにじみ出す千草の肌は、男の手を楽しませている。

 

13

 信太郎の股間ははちきれそうなふくらみを見せていた。周りの仲間もおなじようだった。

 大人の女の肌を実際に見るのは初めてだった。それも見知っている女の肌だ。まして先生の、生の乳房を見て息が荒くなるのを押さえることができなかった。実際、信太郎は千草に対して性的な好奇心を抱かなかったわけではない。自慰の対象にしたこともあった。仲間の何人かは千草を、常習的に自慰の対象としていた。想像の中で友子を陵辱することを楽しんでいる話をしている者もいた。集団で襲い掛かって輪姦したり、膝まづかせた友子を脅して強制的にフェラチオをさせたりする話で盛り上がっていたこともあった。

 今、信太郎の目の前には、その千草が男たちの手によって残酷な姿をさらしている。目の前にさらけだされた千草の乳房と桜色の乳首とが信太郎の目を強くひきつけてはなさない。千草の乳房は服を身につけているときとは違って豊かだった。男の手が撫で回すと、千草の乳房はやわらかくたわみ、そのたびごとにトレーニングウェアの下で勃起した信太郎のペニスは硬さを増した。

 川島とその仲間たちは、男たちに蹂躙される千草の姿を見ながら、こらえきれない様子で下腹に手を伸ばしている。ズボンの上から手をゆっくりとこすりつけている者もいる。千草の肌を見ながら息を荒くしている。それを見た信太郎も自分の股間に手を伸ばしたくなった。

 

14

 膝の上にまたがる男は千草のハーフパンツに手をかけた。指を一旦、ハーブパンツのウエストに押し込むと、ウエストに結んだ紐をほどき出す。千草は再び声にならない悲鳴をあげ、男の手から逃れようと激しく体をよじらせる。何度か体をねじらせた時、千草の腰に馬乗りになっている方の男が、今度はいきなり、千草の両の乳房を強く握りしめた。あまりの痛みに千草の動きが止まる。その隙にハーブパンツのウエストの紐はほどかれ、浮き上がった腰を持ち上げるようにして、千草の下半身があらわにされた。紺色のハーブパンツは、薄い灰色の下着と一緒に腿の中間あたりまで引き下げられ、裏がえった下着の内布が見えている。ぴったりと閉じた両脚の付け根に薄い陰毛が見えている。たよりない細い陰毛は恥丘に黒く生え、左右に向かってなびいている。白い肌と陰毛とのコントラスト。少しでも脚をひらけば千草の体の中心も男たちの目にはいるはずだ。男は手のひらで千草の腰を撫で始める。千草の腰から尻にかけては、女性らしいやわらかさを持っている。陰毛や腿、腰から尻を撫で回す男の手は少しずつ熱を帯びてきている。

 男たちの手によって中途半端に露出された千草の肌は、薄暗い更衣室の中でその白さを際立たせていた。

―ぜんぶ脱がせろ。全裸にしろ。

 千草は男の声を聞いた。低く抑えた声に緊張が含まれていた。千草は恐怖に近い感覚を覚えた。これまでに聞いたことのない声だった。そんなはずはないと思いながらも、これははたちの悪いわるふざけなのかも知れない、と思っていた。いや、そう思おうとしていた。

 千草は今、拘束するガムテープによって視界を奪われ、声を出せなくされ、両手の自由を奪われている。床に転がされて、腹の上と膝元の上に二人の体の大きな男が馬乗りにまたがっている。シャツを胸の上までまくりあげられ、下着を持ち上げられて両方の乳房が男たちの目に露出されている。スポーツ用のハーフパンツと下着は一緒に腿の中間部まで引き下ろされ、ぴったりと閉じた両足の付け根に薄い陰毛が見えているはずだ。複数の手が友子の肌や陰毛を撫で回し、その感触を確かめまわっている。それでも、まだこれは何か悪い冗談に過ぎないのかもしれないと千草は受け止めていた。けれど、男の声はそうではないことを明確に示していた。男たちは千草を蹂躙しているのだ。暴力と恐怖によって。複数の男たちが、千草の体を拘束し、陵辱しようとしているのだということを悟らねばならなかった。

 

15

 腹の上に跨っている男が動いた。胸の上までまくりあげたスポーツシャツを乱暴に持ち上げると、千草の首を持ち上げ、頭を通させ首を抜いた。千草の上半身はすべてあらわにされた。肩や腕の付け根の白い肌が男たちの目に留まっている。こんもりともりあがった乳房は赤みを帯びた乳首とともにさらけだされ、胸のふくらみから腕の付け根にかけての女性らしいやわらかな曲線がすれた衣服のために赤みを帯びていた。

 足元の男は千草のバスケットシューズの紐をほどきシューズを脱がせた。次に両方の足からアンクル丈のソックスを抜き取ると、近くに放り投げた。

 千草の膝の真上に座りなおすと、千草の両足を拘束していたガムテープをはがしはじめた。ガムテープは二重に巻かれ、千草の両足を拘束していた。拘束が解かれたからといって、千草の両足が解放されたわけではなかった。男の座っている位置は、千草が足を動かそうとしてもそれができないようにさせる位置だった。男は千草の足首のガムテープをはがし終え、悠々と千草の膝の上にまたがったままでいた。

 千草の上半身に馬乗りになっている男は、千草の乳房を強くもみしだいてくる。両方の手でそれぞれの乳房を円を描くようにもみしだいてくる。千草は不快さしか感じない。シャツはそのまま背中の方に引き下ろされ、ガムテープで拘束された千草の腕のところでたまっている。

 時折、男の手のひらが乳首をかすめるように動く時だけ、一瞬の電流が走る。千草のからだはピクリと反応する。男は乳首の付け根をひねるようにして、千草の乳房を刺激してくる。やわらかかった千草の桜色の乳首はいやおうなく男の刺激を受けて硬度を増してくる。硬くなった乳首は男の指で転がすようにもてあそばれる。体中に電撃が走るかのように背中がのけぞるように動いてしまう。

 男の口が千草の乳房をとらえる。千草の桜色の乳首は屹立し、男の生あたたかい唾液に濡らされる。尖らせた舌先で乳首を転がされると、思わずため息のようなうめき声が出た。

 

16

 口元を被っていたガムテープがいきなりはがされた。

 皮膚に鋭い痛みを感じた。千草は口から息を吸い込む。口の周りの皮膚にひりひりとした痛みを感じる。テープはよほど頑丈に、何重にも貼られていたらしい。空気が口から流れこんできた。

千草の口元の自由は解かれた。けれど事態は千草の思惑とは違っていた。千草が息を吸い込むと同時に、上半身に馬乗りになっていた方の男が体の上で素早く位置を変え、千草の唇をふさいできた。生あたたかい、男の口の感触は不快だった。男の舌の動きを拒絶するように固く閉じた千草の唇を、男の舌がなめまわしてくる。不快さを逃れようと唇を動かすと、わずかに出来た隙間から男の舌が唇を強引に押し分けて入りこんでくる。千草の固く閉じた歯の表面や歯茎のあたりを男の舌がなめまわしてくる。味わったことのない他人の唾液の味と匂いが口のなかにじわじわと浸透してくる。唾液は次第に糸を引き、口の周囲が不快に濡れる。唇を奪うためにガムテープをはがしたとは思わなかった。男の思いがけない行動に、千草は首をふって逃れようとするのがやっとだった。

 下半身の男が千草の下着に手をかけてきた。

 千草の下着はハーフパンツと一緒に膝のあたりまで引きおろされている。男は両方の手を下着にかけると、難なく千草の足首のあたりまで引きおろした。千草は足首を交差して、すべてをはぎとられまいとする。こうしていれば、体の中心を男たちにさらさずにすむ。直感的にそんなふうに思った。そんな千草に男はまったくかまわなかった。一旦、腰を浮かし、千草の合わせた両膝の間に、自分の膝を上から強く押し当ててきた。あまりの痛みに脚に入れていた力が抜けてしまう。男は難なく千草の脚の間に入り込み、さらにもう一方の膝も千草の脚の間に押し込んできた。

 男が上から硬い膝を押しあてて乗りかかると、固く閉じた千草の脚が次第に開かされた。

 男はすかさず友子の脚の間に入りこむ。千草の口から長い悲鳴が漏れた。

 男の動きで、それまでぴたりと閉じ合わせた千草の両膝は離れ、千草の中心をとらえようと男の手が入り込んできた。男の手は千草の内腿を撫で回し、なかなか中心には近づいてこない。最初、千草の内腿をすべるように撫で回していた男の手が次第に湿り気を帯びてきたのを千草は感じた。男の手が次第に千草の中心に近づいてくる。陰毛をかすめるようになで、内腿を這うように動く男の指が、とうとう千草の陰部に触れた。千草は体をのけぞらせ、悲鳴をあげる。これ以上広げられまいとする両足にこめられた力はいっそう強くなる。

 

17

 気持ちよくさせてやろうか、千草の両膝を割っていた男が始めて声を発した。体を押し上げ耳元でかすれた声でささやいてきた。静かだが狂暴な声だった。

ーーいい声を出させてやろうか。

 陰部に到達した男の指は執拗に愛撫を加えた。千草は男の指の淫靡な動きに耐えながら、自分の陰部が幾分潤いを持ってきているのを感じている。男は指で千草の花弁をなでてくる。かすかに振動しながら、男の指は友子の花弁に沿って何度も上下する。これまで、男たちの陵辱を受け続けたせいで、千草の花弁は潤ってきているに違いなかった。潤沢とまではいかないが、千草の陰部は男の指を喜ばすには十分な潤いを持っていた。

 男は指で巧みに友子の陰唇を押し開く。男の指が千草の蜜壷に押し当てられた。指の腹で圧力を加えられると、蜜壷は内側から潤いをあふれ出させる。男の指が友子のクリトリスを探し当てる。男は、まだやわらかい千草のクリトリスに刺激を与えながら、それを包み隠す包皮を押し下げてきた。千草のもっとも敏感な部分がむき出しにされる。男の指はクリトリスを中心に円を描くように動き、千草は自由を奪われたままでかぶりをふった。

 男の愛撫は容赦なかった。包皮を押し下げられ、むき出しにされたクリトリスが男の指で好き勝手に撫で回される。円を描くように愛撫されたかと思うと、強く押しつぶされ、解放されたかと思うと、リズミカルに恥骨に叩かれる。指の動きのたびごとに千草は声を上げそうになる。男の指がクリトリスに触れるたびに背がのけぞりそうになる。男の指の愛撫を受けたクリトリスクが、充血していくのを感じる。体中の血液が下半身に集まり、千草のクリトリスが次第に固くなっていく。後ろ手に拘束された手に力を込め、手のひらに爪を立てて、動けない体に与えられ続ける刺激からなんとか逃れようとする。

 脚を開かせられ、節くれだった手で乳房をもみしだかれるのは辛かった。愛撫などとはほど遠い男たちの手の動きは、千草の白い肌を赤くさせた。男たちの手の動きにあわせて、千草の乳房はさまざまに歪み形を変えた。大きく開いた脚の間には、別の男が舌をはわせている。男の軟らかい舌は千草の陰部をかきわけ、包皮から顔をのぞかせたクリトリスをなめつづけている。体の中心からこみあげてくる感覚に腰が浮きそうになる。腰を反らせて、千草は上半身とは裏腹の下半身の感覚に絶えている。声をだすまい、と思った。声を上げることは男たちの狼藉に屈することだ。背中にじっとりと浮かんでくる脂汗を感じながら、千草は男たちの動きが少しでもはやく止むことを願った。

 

18

 男の愛撫はしだいに正確に友子をとらえ始めた。千草の脚は少しずつ大きく広げられていき、花弁は指で左右に押し開かれている。包皮を押し下げられ智子のクリトリスは 見知らない男の指先が与える微かな振動に、ピクリと反応するようになった。

――あっ。

とめきれない声が漏れた。一度、声を漏らしてしまうと、いろいろなものが崩れそうになった。

 息が荒くなってくる。千草は自分の呼吸さえも抑え切れない。男の愛撫は絶え間なく、休みなく続いている。千草は自分の深いところで熱さが増してくるのを感じていた。もとより千草の反応は花弁を攻める男の指先には伝わっている。男の指がクリトリスに与える刺激は絶え間なく続き、容赦ない。体に力を込めて拒絶しようとしても、両脚を突っ張り意識を別のところに向けようとしても、男の指は確実に千草を追いこんでいく。熱い液体が陰部から流れ出しそうになるのを千草は必死で止めようとする。千草は次第に逃げ場のない感覚に追い込まれていく。

ーーうっ…

 ガムテープで塞がれた千草の口から詰まったような声が漏れた。瞬間、千草は全身を硬直させ、脚をピンと伸ばす。硬直はしばらく続き、呼吸をしばらく止めた後、千草は長い息をはいた。

ーー先生、どうやら気をやったようだな。

男はからかうように言う。体の深いところから恥辱がわきあがってきた。

 

19

 男の手がふいに顎をとらえた。強い力だった。上半身にまたがり、唇を自由にしていた男ではない。別の男の手だった。千草の頭の方から顎を強くつかみ、床に抑えつけてくる。男は顎に回した指先に握力を込めて、両頬をつかんだ。奥歯と口の粘膜が当り、強い痛みを感じる。あまりの痛みに千草は涙を感じる。ガムテープで被われた目元に浮かんだ涙はどこにも流れ出なかった。  

 千草の口は、男の力によって、強制的に半分、開かされた。突然、千草の唇に、大きく硬く熱いものが押し付けられてきた。千草は首をふって逃れようとする。激しく全身で逃れようとする。けれど後ろ手に拘束され、仰向けの体の上に大柄の男たちに馬乗りにされている状態ではどうしようもない。両目はガムテープで被われているがそれが何であるのかは千草にもはっきりとわかった。

 フェラチオという愛技があることは知っていた。

 男のペニスは狂暴な熱を持っていた。上半身にまたがり、両方の乳房をつかむようにして乱暴に愛撫し、唇を自由にしようとしていた男のペニスだ。三人目の男が強く固定して開かせた千草の口の中に、男のペニスがゆっくりとさしこまれてきた。他の男たちはその光景を見つめているらしい。男のペニスは千草の唇を通過すると、千草の舌にふれてきた。苦味のある、青い草のような味がした。男は千草の口の中でゆっくりとした律動を始める。口の中の感触を確かめるかのように、舌に触れ、頬の内側の粘膜に触れる。動きは少しずつ速くなり、ペニスの進入は少しずつ深くなる。硬く、怒張したペニスが喉の奥まで押し込まれた時には、強いえづきを避けるために、千草は全身の力を抜かなければならなかった。全身の力を抜くと男たちの愛撫をまともに受容しなくてはならなくなる。強制的にペニスを口の中に押し込み、腰を動かしている男が直接、自分で千草の顎をつかんだ。顎を掴まれていては口を閉じることができない。痛みに顔を動かすこともできない。されるがままに、男の動きを受け入れるしかない。ペニスは友子の喉の奥まで押し込まれ、前後運動が次第に強くなっていく。

 

20

 下半身に対する男の愛撫は続いている。下半身の男は千草の両脚の間に入り込み、膝で両脚を押し広げている。千草が閉じようとする両脚の間には、強引に強く押し込まれた膝のために少しずつ広い空間ができはじめる。脚の内側に触れる感触から、男の足が筋肉質であることがわかる。腿の付け根まで下ろされていた下着は 、両足首を通して抜き下ろされ、千草の陰部を被い隠しているものはもう何もない。陰毛はおろか、陰部も男たちの視線にとらえられていることを覚り、千草はこみあげてくる嗚咽のようなものを感じる。千草は自分の体に辱しめを加えようとしているのが誰だかわからない。誰がどんな理由で自分の衣服をはぎとり、日曜日の午後、体育館の更衣室の床に全裸のままで押し付け、拘束しているのか、わからないままだった。

 

21

 男は千草の上半身に体重をかけて床に押さえつけながら、両膝を使って左右に開かせた脚の間に器用にすべり込んできた。必死に閉じようとした両脚の自由は利かず、千草はそのまま動けなかった。男は体を千草に密着させてくる。体の下で拘束された腕に、男と千草自身の体重がかかって強い痛みを感じる。あまりの痛みにふさがれた口から、うめき声がもれた。

 男の硬く熱いペニスが千草の内腿に当たっている。千草は腰を動かしてなんとかそれを避けようとするが、どうにも体が動かない。男の体重は千草の上半身と腰の辺りとにうまく分散してかけらている。どうやら男の体の下からは逃れられそうになかった。男は千草の体の上で少しずつ移動した。そのたびごとに男のペニスが友子の体の中心に近づいた。

 男は息を軽く荒くしている。男の息が友子の耳元に熱く感じられる。頭を動かして男の息を耳元から遠ざけようとするが、別の男に両肩を抑え込まれていて逃げることもできない。ガムテープでふさがれた口からうめくような悲鳴を上げること以外にできることは何もない。

ーーちゃんと撮っておけよ、ヤラれる瞬間のこの顔を。

 ふいに男の声が耳に届く。撮っておく、その言葉で初めて千草は一部始終が撮影されていることに気がついた。

 

22

 男のペニスが千草の陰部に触れた。体を激しくよじり避けようとするが、腰を少し動かしたくらいでは男のペニスを離すことができない。男は器用に体の間に潜りこませた手を、ペニスにそわせてねらいを定めているらしい。屈辱から、千草は眉間に深いしわを寄せる。

 少しずつ位置を変えた男のペニスの先端が、とうとう千草の花弁の中心をとらえた。ペニスの先はゆっくりと円を描くように動かされ、花弁を押し広げてくる。花弁を押し広げ、蜜のたまった壷のようになっている千草の中心をとらえた男のペニスにゆっくりと力が加わり、千草の中に男のペニスが侵入してくる。別の男の指で執拗に愛撫され、一旦、気をやるところまで追い込まれた千草の蜜壺がそれを押し留めるにはあまりに潤い過ぎていた。

 男のペニスは入口の方からゆっくりと挿入され、圧力をかけるようにして千草の蜜壷を押し広げ、蜜壷の中程にまで入りこんだ。千草自身の潤いが男の侵入を助けていることはいうまでもない。千草はガムテープで被われた眉間にシワを寄せて体に力を入れ、受け入れまいとする。男は千草の反応を楽しみながら、わざとゆっくりと進入してくる。

 千草の蜜壺の中程で男は数回、小さく腰を動かし、蜜壺の感触を確かめる。千草の全身に脂汗のような汗がうかんでくる。それ以上の進入を許すまいと、千草は下腹部に力をこめた。

 次の瞬間、ぬるっという感触が千草の体の中心にあった。千草の体が大きくのけぞり、全身に力が入った。千草の口からは声にならない声が鋭くもれた。千草の体の奥から出てきた潤いのすべりを利用して、男はそこから一息に千草の体を貫いた。千草は自分の体の中心の一番奥まで、男に貫かれたのを感じた。熱く硬く凶暴なペニスが千草の体を最後まで貫いたのだった。

 涙が出てきた。しゃくりあげるような涙を感じた。声は出せなかった。千草の口は別の男のペニスの律動でふさがれていた。開かれたままの顎が重く感じられた。

 千草の恥骨には男の恥骨が強くおしあてられている。包皮をむかれたクリトリスは男の恥骨でおしつぶされ、挿入している男の動きに合わせて右にも左にもうごかされる。男のペニスは千草の一番深いところまで挿入され、根っこの部分が千草の花弁をこれ以上ないくらい大きく広げていた。

 

23

 伸太郎のいる場所からは、男と女がつながっているところは見えなかった。しかし男の腰の動きや、背中の筋肉の収縮から、男のペニスが千草を貫いていることはわかる。男はゆっくりと腰を動かし、尻の筋肉を規則的に律動させながら、千草の具合を味わっているのが見えた。

 川島とその仲間たちは、千草が犯される様子を見ながらズボンの中に入れた手を動かしている。一度、果てた者もすぐに勢いを取り戻して二度目の自慰を行っている。伸太郎もまた、犯される千草にひどく興奮している。

 日に焼けた男の背中と、不自然に白い友子の脚とのはっきりとした対照が伸太郎の目をとらえる。男の黒い腰の向こうで、大きく広げられた千草の白い脚がなまめかしく動く。脚に力をこめ、腰を浮かす。千草の脚は男の動きを拒絶するように伸ばされたり、曲げられたりする。踵が床を蹴るように動いたり、足の指がそりかえったりする。次第に荒くなってくる千草の息音を耳にしながら、伸太郎は自分のペニスがビクビクと脈動するのをこらえきれなくなるのを感じている。

 

24

 千草は男の動きが激しくなってきたのを感じている。挿入された男のペニスはそれまでにも増して勢いよく、千草の膣に出し入れされてきた。ペニスの先の禍々しいふくらみはそれまでよりも大きく、熱を持ってきているように感じられる。男の息は荒らさを増し、獣のようにうめくような声を喉の奥から絞り出している。射精、という言葉がふいに頭に浮かんだ。とっさに思いついたのは妊娠のことだった。男のペニスは子宮の入口を突くほど深く、出し入れされている。男の怒張がはじける時、男のザーメンが友子の体内深くに飛び散ることになる。千草は自分の中で脈動を増しながら律動する男のペニスを感じている。男の動きがひときわ速くなった。千草の乳房を乱暴につかむ手にも力がこもった。

ーーいやっ…お願い。

 男のペニスが友子の子宮口まで押し込まれ、それまでにも増して熱とふくらみを感じた次の瞬間。千草の中で男のペニスが強く跳ねた。それと同時に勢いよく、熱いものが膣内に放出され、男は千草の体の上で獣じみた声をもらした。男の咆哮はいくどか繰り返され、千草は屈辱の声をもらす。千草の体が見知らぬ男たちに征服された瞬間だった。男の怒張は続けざまに繰り返して跳ねた。その度ごとに男は痙攣し、熱いものが千草の中にはきだされた。

 

25

 伸太郎たちは呆然と見ていた。一人目の男の射精が終わったようだった。しかし、終わりではなかった。力を失ってぐったりとした千草の体に、すぐに二人目の男がのしかかった。二人目の男はさっきまで千草の口に怒張したペニスをくわえさせていた男だ。まだ千草の唾液の残るペニスを千草の膣に挿入しようとしていた。二人目の男は若かった。筋肉質の体つきをしていた。どうやらトレーニングを日常的に行っているらしかった。男は千草の体を軽々とうつぶせにすると、背後からのしかかるようにして後ろから貫いた。千草の白い尻の肉が、男の動きに合わせて揺れた。男は千草の尻を両手でわしづかみにし、左右に押し広げるようにして律動する。膝を立てて、顔を床に押しつけた姿勢で千草は呻くような声を上げながら後ろから貫かれている。両手が背後に拘束されているため、体の下では白い乳房が動きに合わせて揺れている。

 それまでカメラを構えていた三人目の男が前方にまわり、ペニスをしゃぶらせる準備をする。カメラは棚に置き、そのまま撮影できるように角度を調整したようだった。男たちは、二人で同時に千草の肉体を愉しもうとしているようだった。男が怒張したペニスに手を添えて千草の口にくわえさせる。背後から貫かれながら、千草は口を開いて男のペニスを受け入れる。それをそばで眺めていた一人目の男の射精したばかりのペニスは、すでに力を取り戻していた。終わりのない輪姦だった。慎太郎たちは、千草を凌辱する男たちの終わりのない欲望を見続けていた。

 

26

 車が走り去る音が聞こえ、少し前までの喧騒は嘘のように静まりかえっていた。遠くでかすかな雨の音が聞こえる。男たちのいきなりの凌辱が終わったことを知った。体がしだいに肌寒さを感じ始めた。千草は一時間あまりの間に、何度も犯された。複数の男が何度も挿入し、射精を繰り返した。途中から友子の気は遠くなり、抵抗も反応もできなくなった。口と陰部、そしてアナルにも射精を受けた。用具庫の埃っぽい床の上に、全裸のまま転がされた千草は放心状態のままだった。

 体の中を駆けまわった、荒々しい波のような感覚はまだその重い余韻を残している。行為の鈍い痛みを体中に感じる。特に、何度も挿入された膣の入り口にはひりひりとした痛みを感じた。体が濡れた綿のように重く、身を起こす気にもなれなかった。男たちに何度も無理な姿勢を強いられた。体のあちこちの関節や筋肉に疲れ切った重さと痛みがあった。

 ゆっくりと体を起こし、周囲を見回すと薄暗い空間が見えた。周囲にはすでに人の気配がなかった。何も考えられなかった。自身に起こったことを受け止めきれなかった。心の奥底から怖ろしさがこみあげきた。解放された安堵はなかった。千草は自分の中のなにもかもが終わったことを知った。この場を立ち去りたい、という思いが込み上げてきた。このことを誰にも知られてはならないという気持ちがわいた。

 あたりを見回し衣服を探した。千草の身につけていたものは用具庫のあちらこちらに乱暴に散乱していた。どれもただのボロのように見えた。拾い集めた中に下着は見つからなかった。シャツの襟口が伸びて、肩の縫い目がほつれていた。ソックスを拾い、シューズをはいた。

 これからどこへ行けばいいのか、千草にはわからなった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。