その花は、誰が為に咲く 作:寝取られでしかシコれない男ッ!!
寝取らせって自業自得感が強くてあまり好きではないけど、JBのやつ見たらもうこれしかないじゃない!
「……ただいま」
「……ッ!」
「もう、ちょっと痛いよ」
「……すまない」
玄関先で、俺はアネモネを思わず強く抱きしめてしまった。
その髪からふわりと立ち上る香りは、この家のものではないシャンプーの匂い。
胸が苦しくなり、掻き毟りたいほどの後悔が押し寄せる。
俺は――取り返しのつかない提案をしてしまった。
寝取らせなどという、最低な欲望を。
「……それで……」
「うん。言われた通り、してきたよ」
言いかけた言葉を遮り、彼女は静かに告げる。
たった一言が、心臓を掴んで揺さぶってくる。
普段の生活からは想像もできない、淫靡な雰囲気が彼女から漂っていた。
いつもよりほんの少し乱れた髪。まるで匂いを消すかのように振りかけられたキツイ香水の匂い。そして、日頃の穏やかで優しいアネモネとはまるで違う気配。
それは、かつて俺だけが知っていた――いや、今はもう「俺だけ」ではなくなった一面。
アネモネは他の男に抱かれ、そのまま帰ってきたのだ。
――数日前。
きっかけは陳腐なものだった。
アネモネと結婚して五年ほど経った頃だろうか。アネモネとの生活は幸せで満ち溢れているものだった。だがしかし、夜の生活がマンネリ気味だと俺は感じていた。そして、ある時読んでいた本で寝取らせというものを知った。
最初はそう、自分の妻を他の男に抱かせるなどという性癖に嫌悪感すら抱いていたはずが、日に日に寝取らせというものに心を強く動かされていた。
長年連れ添うことでできた熟年夫婦のような絶対的な安心感からかいつしかそういう事を考えるようになってしまったのかもしれない。
しかし、それを実行に移すなどできるはずもない。そう、確かにそう思っていた。
しかし、俺はアネモネに一度頼んでしまったのだ。『誘拐犯に犯される花嫁という設定でセックスがしたい*1』と。土下座までして彼女が断れないようにした上で、わざわざ台本まで用意して。
冷たい視線をこちらに向けながらも、演技をしてくれた彼女。最初はそのことを思い返すだけで満足だった。
だがしかし、次第にそれだけでは満足できなくなってしまったのだ。
そう、アネモネが本当に別の男とセックスをしたらどのような顔を見せるんだろうという好奇心が興奮と背徳感を伴って湧いてきてしまったのだ。
最低なことだ。分かっている。だがそれでも欲望はどんどん膨れ上がっていった。
だから、そう、油断していたのだろう。
ある日、彼女は静かに口を開いた。
『私を……他の男に寝取らせたいって、本気なの?』
あまりに突然で、頭が真っ白になった。
「どうして……」そんな言葉しか返せなかった。
『この前、一緒にお酒飲んだとき、ちょっと……そういうこと、口にしてたから』
そう、あの夜。任務の失敗を悔いて、珍しく酔った俺が、口を滑らせてしまったのだ。
翌朝のアネモネが、何かを考え込んでいたあの表情。
まさかあれが、この地獄の始まりだったとは、思いもしなかった。
『……いいよ。貴方がそうしたいなら、やってあげる』
『……え?』
『ただし、これ一回だけ。キスと挿入はなし。……それでいいなら』
その時点で俺は慌てて叫んだ。『待ってくれ!』と。
だがアネモネは、静かに俺を見つめながら続けた。
『ねえ、気づいてた? 貴方、最近ずっと上の空だったよ。……それに、部屋を掃除してたときに見つけたの。寝取らせの本とこの名刺』
全部、知られていた。
俺の欲望も、迷いも、すべて――アネモネは見抜いていた。
それでも彼女は、俺を拒まなかった。
いや、俺の望みに応えようとしてしまったのだ。
「……じゃあ、行ってくるね。ご飯は冷凍の魔法がかかってるから、自然解凍されるまで待ってて」
「……あ、ああ……」
玄関へ向かうその背中。
ほんの一瞬、アネモネはこちらを振り返った。
その瞳に宿るものは――『止めてくれないんだ』という、深い失意と悲しみであった。
俺はその視線に気づき、慌てて口を開いた。
だが、言葉は届かない。アネモネはもう、扉の向こうに消えていた。
追いかけようと足を踏み出した瞬間、寝不足の体がもつれ、床に崩れ落ちた。
今から追いかけたところで、もう遅い。
気づけば俺は、床に倒れたまま、立ち上がることもできずにいた。
*
「それで……何をされたか、何をしてきたか。……聞きたい?」
その一言に、喉がカラカラになる。声が出ない。
しかし逃げるわけにはいかない。俺が望んだことだ。
だから、かろうじて声を絞り出す。
「……ッ……ああ」
「……たくさんキスされちゃった」
「え?」
「ああ、もちろん唇じゃないよ。……でも唇以外は、もう何度も、何度も……ね」
アネモネは、自分の指先で鎖骨をなぞる。
その仕草が妙に艶かしくて、俺の喉が鳴る。
そして彼女は、まるでショーでも始めるかのように、ゆっくりと服のボタンを外していく。
――まるで俺に、見せつけるように。
「ごめんね……」
「……え?」
「貴方だけのおっぱいじゃ……なくなっちゃった」
その瞬間、下着の隙間から見えたのは――
赤く滲む、いくつものキスマーク。
小さく、でも深く色づいた痕。それは数が多すぎて、まるで彼女の胸が「誰かに所有された領土」であるかのようだった。
俺は息を呑んだ。
ベッドへと腰を下ろす。
その動きすら、どこか淫靡で……けれど、どこか寂しげだった。
「……でも安心して。約束は、守ったよ。……キスと、挿入は、しなかったから」
そう言う彼女の声に、ほんの僅かに震えが混じっていた。
そして、ぽつりと呟く。
「ねえ……順を追って、話すね」
「……っ」
「貴方にちゃんと、全部知ってほしいから」
言葉の温度が、恐ろしいほど冷たく感じた。
優しいのに、痛い。心臓を直に握りしめられたような苦しさを覚える。
だけど俺はそんなアネモネから逃げることができない。
手が震えそうだ。息が苦しい。喉が渇く。
でも、その震えが恐怖からなのか、それとも……興奮からなのか、自分でも分からなかった。
そんな俺に向け、アネモネは真っ直ぐ視線を向けてきた。
それから小さく深呼吸をし、ゆっくりと語り始める。
彼女が何を語るのか、知るのが怖くて、でも目を逸らすこともできなかった。
「まず、ホテルに入る前……あの人に、手を繋がれたの」
俺の心臓がドクンと跳ねる。
始まった。アネモネが、俺の知らない世界を語り始めた。
本当は耳を塞いでしまいたい。でも、それを聞くことが俺の罪滅ぼしなのだ。
そう自分に言い聞かせ、俺はアネモネの話に耳を傾けた。
「最初は、ちゃんと拒んだよ。……やっぱり、嫌だったから。
でもね……『これが、貴方の望んだことなんだ』って思ったら、なんだか……力が抜けちゃって」
「……」
「……手も、貴方より大きかったよ。ゴツゴツしてて指も太くて」
アネモネの声は淡々としている。
しかし、その裏にある熱と毒は、俺の心を確実に蝕んでいく。
アネモネは続ける。それはまるで、俺への恨み言のように聞こえた。いや、事実そうなのだろう。俺はただ黙って、彼女の言葉に耳を傾けるしかない。
「それで、部屋に入った途端、いきなりキスしようとしてきて……」
「なっ……!?」
そう言って、アネモネは自らの唇に触れる。その仕草が妙に艶めかしくて、俺の喉がひくつく。
しかし、すぐにまた彼女は話を始めた。それはまるで懺悔のような独白だった。
「もちろん、どうにか防いだよ。……でも、あと数秒遅れてたら、されてたと思う」
「……」
「その時、抗議したの。『キスと挿入はダメって言ったでしょ!?』って。……そしたらね、なんて返されたと思う?」
一瞬、息が止まりそうになる。
「『ああ、ごめんごめん、そうだったね。つい、ね』――だって。笑っちゃうよね」
あまりにも軽い口調に、胸が締め付けられる。その言葉の裏に隠された意味を察せられないわけがない。
彼は――俺が件の寝取らせの本を購入した時に話しかけてきた、馴れ馴れしい軟派な男。
「そういう嗜好を持つ人間が集まるグループがあってね」とか言いながら、勝手に名刺を押しつけてきたのだ。
『貴方の奥さんを寝取らせたいと思った時はここに連絡を』
そう笑っていた男。
……ふと、不安になる。
先ほどアネモネは、「キスと挿入はなし。それだけは守った」と、そう言った。
だがしかし、本当にそうなのか?
アネモネの乳房にあれほど大量のキスマークを残すほどの男が、アネモネほどの美女を前にしてセックスをしないという選択肢を取れるのか?
そんな俺の心の動きを読み取ったのか、アネモネが静かに続けた。
「……不安に思ってるみたいだから、先に言っておくね。私がしたのは、手で扱いたのと、あとは……口で少し。それから、おっぱいにこれ、付けられながら、手で出させてあげた。――それだけだよ」
「……っ」
その言葉を聞いて、ほんの少し、安堵する自分がいた。
それと同時に、その安堵に対する強烈な罪悪感が胸を襲ってくる。
最低だ、俺は。
彼女を裏切ったことを反省しなければならないのに――アネモネが他の男とセックスをしていなかったと知って、ほっとしているのだ。
そして、何より醜いのは。
心の中の嫉妬心が強くなっていることだ。これを望んだのは俺なのに。
その感情を必死に抑え込む。彼女を裏切った罰なのだ。それくらい耐えなくてはいけないだろう。
しかし、どうしても考えてしまう。
もし、あの時こんな提案をしなければ。
もし、俺があんな本を手に取らなければ。
もし、さっさとあの名刺を捨てていれば――
きっと今も、彼女は俺だけのアネモネでいてくれた。二人で、変わらぬ日々を過ごしていたはずだった。
でも今は――
アネモネの身体には、他の男の痕跡が残されている。
その事実が、どうしようもなく俺の胸を締めつける。
後悔だけが募っていく。
彼女が、俺の手の届かない場所に行ってしまう気さえする。
どうすればいい?
どうすれば……。
「ねぇ、大丈夫?」
不意にかけられた声に、我に返る。
「ああ……」
「本当に大丈夫? ……辛いなら、無理しなくてもいいよ?」
「いや、大丈夫だ。続けてくれ」
彼女の気遣いに、我を取り戻す。
そうだ。今は、アネモネの話を聞くのが先だ。
……これは、俺が望んだことなのだ。
だからこそ、最後まで受け止めなくてはいけない。
それが、アネモネに対する、俺の責任なのだから。
「そう……じゃあ、続けるね」
アネモネは小さく微笑んでから、また語り始めた。
「まず、最初は……手でお願いされたんだけどね」
「……嫌だったよ。だって、貴方のじゃないモノを触るんだから。――当たり前だけど」
「……すまない」
思わず謝ってしまう。
だが、アネモネは首を横に振った。
「謝らないで。……本当に嫌だったら、最初から待ち合わせ場所になんて行ってないから」
「でも、それは俺が――っ」
「うん、そうだね。……でも、それでも行ったのは私。だからこれは、私たち二人の罪、かな」
「……」
アネモネの言葉に何も返せなくなかった。
俺のせいだ。全て俺が悪い。俺があんな提案をしなければ、こんなことにはならなかった。
それなのに、アネモネは――俺を責めなかった。むしろ慰めようとしてくれている様にも見えた。
その優しさが俺には痛かった。
申し訳なさで胸がいっぱいになる。
俺は、アネモネに何もしてやれていない。
彼女にひどいことをさせておいて、ただ傍にいることだけしかできない。
情けない。
俺は、情けない男だ。
そんな俺に、アネモネは小さく呟いた。
「……ごめんね」
なぜ、彼女が謝るんだ。
その謝罪にどう答えればいいか分からないまま、俺はただ黙って彼女の言葉を待った。
「……手だけじゃ出ないからおっぱい見せてって言われた。……見せたよ。バスローブを脱がせられて直接触られても拒まなかった。だって貴方が喜んでくれるから。……貴方が望むなら私は何でも出来るって思った」
「……」
「……でもね、乳首をいきなり舐められた時は流石に抵抗したよ。いくらなんでもそこまでは無理。……だけど『ここで辞めたら、団長さんは怒るかもしれない』って言われたら……」
「そんなこと……っ!」
「……うん、分かってる。……でも私のことを寝取らせたいと思ったのは貴方でしょう?……それにお願いされた通りにした方が早く終わると思ったし」
「そう、か……」
何も言えなかった。
いや、本当は言うべきだったのかもしれない。
でも、どんな言葉を返せばいいのか分からなかった。
アネモネは、それでも淡々とした口調を崩さずに話を続ける。
「でもやっぱり恥ずかしかったかな。特に乳首をれろれろと舐め回されたり、ちゅーちゅー吸われたりした時は腰を引いちゃった。『敏感ですね』とか言われて……すごく恥ずかしかった……」
その言葉を聞いた瞬間、全身に寒気のような鳥肌が立った。
胸の奥が、痛い。
俺は――いったい何をしているんだろう。
大切な妻を傷つける行為をしておいて何故平然としていられるんだ?
最低だ。
本当に、俺は最低の人間だ。
自分でも呆れるほどに。
「その後は、見ての通りおっぱいにキスマーク付けられながら手コキを要求されて……。『早くイかせられなければ、キスマが増え続けるだけですよ』だって」
「アネモネ……」
「一生懸命やったよ。けど……結果はこれ。結局、両方のおっぱいを赤い斑点でいっぱいにして、ようやく射精したんだよ。この時ばかりは自分の技術の無さを呪ったかな……」
「……」
「最後は……お風呂場でシャワー浴びてる時に後ろから抱きしめられた。そして……貴方にしてるようにフェラチオしてくれって言われた」
「……ッ!」
「もちろん嫌だって断ったよ。でも『約束はキスと挿入はだけだったよね?約束は守ったんだから、頼むよ』って……。それで、少しだけ……」
その瞬間、心臓を鷲掴みされたような気分になった。
先ほど「口で少しだけ」と聞いた時、覚悟したつもりだったのに――
実際に言葉として聞くと、頭の中が真っ白になる。
そんな俺を見て、アネモネはふっと柔らかく微笑んだ。
そして――少しだけ、声の調子を変えてこう言った。
「……ねえ、セックスしない?貴方の温もりで……上書きしてほしいな」
「――それに、気になるでしょう?本当にセックスしてないのか」
その瞬間、部屋の空気が一変した。
けれど彼女は、それ以上は何も言わなかった。
俺の顔を一瞬、じっと見つめたあと――
小さく首を振るようにして、話題を閉じた。
まるで、それ以上話せば俺が壊れてしまうと、察したかのように。
「ちゅっ、ちゅぷ、くちゅっ」
「――っ!」
「……どうかした?」
「いや……なんでもないよ」
アネモネは何も言わず、俺の手を引いた。
ゆっくりと、その体が寄り添ってくる。
触れるようなキス――その瞬間、ふっと、いつもと違う香りが鼻をかすめた。
ミントの味。
ほんの少し、スースーするような清涼感が唇に残った。
それだけのこと。
しかし、その理由はすぐに分かった。
……あの男のモノを、口に含んだからだ。
その残り香を、消すため。そのためにアネモネはミントを口にしたのだ。
何も言えなかった。
目を閉じたまま、もう一度キスをする。
しかし――もう分かってしまった以上、その味が舌の上から消えてくれなかった。
俺だけのものだったはずの口内に、確かに別の誰かの名残があった。
それでも俺は、受け入れることしかできない。
この感触ごと、アネモネを抱きしめた。
ミントの味と罪悪感と、何よりも強い――愛しさを抱えて。
彼女の手が俺の胸元をそっとなぞり、そのまま下腹部へと触れてくる。
でも、そこでぴたりと動きが止まった。
「……どうした?」
そう訊くと、アネモネは一瞬だけ目をそらした。
「ん、ううん……ちょっと、ね……」
言葉を濁すように微笑む。
けれど、その表情にはわずかな戸惑いと――迷いがあった。
ゆっくりと俺のモノを握る手が、わずかに震える。
「……ああ、うん。あの人のおちんちんが……えっと、少し、皮を被ってて。これって人によって形変わるんだって思ってただけ」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が冷たく締めつけられた。
――本当にそうなのか?
あの自信満々といった印象の彼のペニスが包茎だったというのか?
それとも……?
アネモネはもう何も言わず、静かに身体を重ねてきた。
その仕草には確かに――罪悪感と、優しさと、そして……愛があった。
俺はもう、何も聞かないことにした。
ただ、彼女の全てを抱きしめようと決めた。
アネモネの身体が、俺の上にそっと重なる。
その体温はいつもと変わらず、あたたかくて柔らかくて――でも、どこか遠い気がした。
「……入れるから」
俺がそう囁くと、彼女は小さくうなずいた。
けれど、その声も表情も、どこかぎこちない。
指で彼女の秘所に触れると、もう十分に濡れていた。
なのに、アネモネは少しだけ身を強ばらせる。
――怖いのか?
いや、違う。
これは……比べているのか。あの男の感触と。
……たとえセックスはしていないとしても、俺以外のペニスに初めて触れたのだ。
比べてしまうのは当たり前だろう。
俺だって気になる。あの男のペニスは俺より大きかったのか、本当に包茎だったのか――。
とはいえ、それは今聞くべきことではない。
俺は深く息を吸ってから、そっと自身のモノを押し当てる。
ゆっくりと、彼女の中へ入っていく。
そのたびに、アネモネの眉がかすかに動く。
「んっ……ふ、ぁ……っ」
彼女の中は、いつも通り俺のペニスの形にピッタリ合っている。
狭くて、あたたかくて、締め付けも気持ちいい。しかし、どこか戸惑っているような、そんな気がしてしまう。
「……痛くない?」
「ううん、大丈夫……。すごく、気持ちいいよ」
ゆっくりと腰を動かす。
アネモネの中がきゅっと締まり、俺のペニスに吸い付く。
俺のペニスは、平均的な長さしかない。奥に届くのは、せいぜい体位や角度が合ったときだけだ。
それでも、俺のすべてで彼女を包み込めていると信じていた。
「……あ……ん……っ、んっ……」
吐息が甘く漏れ、アネモネは俺の背に手を回してきた。
目を閉じ、何かを思い出すように、何かを忘れようとするように。
「もっと……して。貴方の全部で、私を――」
声が震えていた。
まるで自分に言い聞かせるように。
そして俺も、その震えに必死で応えるように、動きを深めた。
「アネモネ……俺は、お前だけだ」
「うん……知ってるよ。……私も、貴方だけ」
その瞬間、抱きしめ合う腕に力がこもる。
交わる愛情に、かすかに涙の味が混じった。
けれど、どちらが泣いているのか分からなかった――。
「ん、んんっ、ああっ……!」
彼女の中は熱く、柔らかく、いつもと変わらない――はずだった。
でも、どこかが違っていた。
わずかに開いた奥、届かないその先に、まだ「誰か」の痕が残っている気がして。
そんなはずはないと思いながらも、胸が締め付けられた。
「あっ、ああっ、んんっ、はっ、気持ちいいよ」
「俺もだ――俺も気持ちいい」
アネモネの身体が震える。
敏感になった乳首が俺の胸に当たるたび、彼女の吐息が荒くなる。
「アネモネ……イきそう、だ」
そう告げると、アネモネは俺の首にしがみついて――ほんの少し、ためらってから、囁いた。
「うん……中で、いいよ。……貴方のが欲しいの」
その言葉に応えるように、俺は腰を打ち付ける。
限界が近い。
この熱を、全部注いで――少しでも、彼女の中に俺を残したくて。
「アネモネ……っ!」
「ふぁっ、ん、んぅぅっ……!」
ビクン、と身体を震わせて、俺は彼女の中で果てた。
熱が流れ込むのを、アネモネは静かに受け入れたまま、目を閉じていた。
その瞼の奥に、何を思っていたのか……俺には、分からない。
しばらくの間、俺たちはそのまま動かなかった。
しゅる、とアネモネの身体から抜ける感触に、冷たい空気が差し込む。
ベッドに並んで寝転び、アネモネは俺の腕にそっと顔を埋めた。
「ありがとう……。あったかくて、気持ちよかった」
「……こっちこそ、すごく気持ちよかった。……ごめんな、もう二度とこんなことしないから」
「――うん、そうだね」
そう、曖昧に笑ったあと、彼女は目を伏せた。
「……ちょっと、シャワーを浴びてくるね」
「ああ……」
俺は、シャワー室へと向かうアネモネの背中を、ただ見送ることしかできなかった。
胸の奥に重たい鉛のような自己嫌悪が沈み込み、動く気力も湧かない。
彼女を待っているつもりだったが、精神的な疲労が限界まで積もっていたのだろう。
いつの間にか、意識は暗闇に沈んでいた。
――どれほど眠ったのか。
目を開けると、隣ではアネモネが静かに寝息を立てていた。
その寝顔に、胸の奥の重さが少しだけ和らいだ気がした。
「……もう二度と、こんなことはしない」
心の中でそう固く誓う。
――その決意が、あっけなく崩れる未来が待っているとも知らずに。
被害妄想強めの団長の表パートでしたがいかがでしたか?
いったいどこまでが本当にあったことなのか、皆も団長と一緒に疑心暗鬼になろう!