貞操逆転世界でAV男優始めました〜100年に1人の逸材 現役男子大学生Debut〜 作:たんばりん
「こっちこっち!」
さやかに手を引かれ、タクミは学内の公園の一角へと誘導された。
入学式が終わったばかりのこの時間、キャンパスのあちこちでサークルの新歓が行われ、賑やかな声が響いている。音楽を流して踊っているグループもあれば、バーベキューをしている連中もいる。そんな喧騒を抜けた先——
「……ん?」
タクミは思わず足を止めた。
そこだけ、異様なほど静かだった。
ブルーシートが広げられ、食べ物や飲み物が並んでいるものの、そこにいるのは女性ばかり。そして人数も……妙に少ない。周囲の活気と比べると、まるで閑古鳥が鳴いているような雰囲気だった。
「みんなー!男子新入生を連れてきたよー!」
さやかが元気よく声を上げる。
その瞬間——
「えっ!?」
「マジで!?」
「……男子……?」
沈んでいた場が一気に沸いた。
全員の視線がタクミに集中する。ほんの数秒前まで静かだったとは思えない熱気。
「さやか、でかした!!」
「すごいよ!男子を勧誘できるなんて!」
「さすがさやか!やる時はやる女だと思ってた!」
先輩たちは口々にさやかを褒めちぎっている。その異様な盛り上がりに、タクミは戸惑った。
「え、そんな大げさな……?」
「大げさじゃないよ!」
興奮した様子で、一人の先輩が言った。
「だってウチのサークル、男子ゼロだったんだから!」
「……え?」
タクミの思考が一瞬止まった。
——男子ゼロ?
「いやいや、そんなわけ……」
思わず周囲を見渡すが、確かに男性の姿はない。
前世の記憶では、水泳サークルには確かに男性もいた。人数こそ少なかったが、それなりにいたはずだ。それが今、この場には一人もいない。
タクミは改めて目の前の女性たちを見つめた。
*……あれ?*
どこか見覚えのある顔がある。
記憶の中にある「男性の先輩」にそっくりな女性がいた。雰囲気も似ている。だが、どう見ても女性だ。
(まさか……いや、そんなバカな)
タクミはすでに「男女比3:7の世界」だと知っていた。
——知っていた、はずだった。
だが、実際にこうして体験すると、その影響の大きさを改めて思い知らされる。
(ここまで違うのか……?)
前世と同じ大学、同じサークル。だが、その光景はまるで別世界だった。
「……あっ、そういえば」
さやかが突然手を打った。
「私、まだ名前聞いてなかったね!」
「あ、そうですね」
タクミは改めて場を見渡し、全員が期待に満ちた目で自分を見つめていることに気づく。妙な緊張感が走った。
「えーっと、山田タクミです。一人暮らししてます。水泳は……少しだけやったことあります」
それだけ言うと、一斉に歓声が上がった。
「やったー!入部確定だね!」
「タクミくん、ようこそ水泳サークルへ!」
「一人暮らし……ふふ、いいねぇ~」
最後の一言に妙な含みがあるのは気のせいだろうか。
「せっかくだし、座って座って!今日は新歓だから、飲んで食べて、いっぱい話そう!」
さやかが満面の笑みで誘ってくる。
タクミは困惑しつつも、彼女たちの勢いに押され、ブルーシートの上へと座らされた。
こうして、タクミの水泳サークル(?)での新歓が始まった——。
――――
「ほら、タクミくん、これ食べて?」
「こっちも美味しいよ、はい、あーん♪」
「え、いや、自分で食べますって……」
「遠慮しなくていいの! ほら、はい、あーん♪」
タクミは困惑しながらも、目の前に差し出された串焼きを口にした。
——焼き鳥の味がした。
「どう? 美味しい?」
「あ、はい。普通に美味しいです」
「ふふっ、良かった♪」
ユイナ先輩が満足そうに微笑む。
**橘(たちばな)ユイナ**。この水泳サークルの会長で四年生。
すらりとした高身長に、艶のある黒髪。きりっとした目元には涼やかな色気が漂う。品のある立ち居振る舞いが、まるでどこかの令嬢のような印象を与えていた。
そんな彼女が今——
「タクミくん、もっとこっち寄って? ほら、狭いんだから」
すぐ隣に座り、肩が触れ合う距離で微笑んでいる。
タクミが少し身じろぎすると、反対側のさやか先輩がぐいっと腕を絡めてきた。
「なーに、ユイナだけずるい。タクミくん、こっちもちゃんと見てよー?」
「いや、別にそっちを見ないとか、そういうんじゃ……」
タクミの言葉を遮るように、さやかがさらに密着してくる。
彼女は明るい茶髪のウェーブがかったボブヘア。
少しルーズに羽織ったカーディガンの下はタンクトップ一枚で、谷間がちらつくどころか、意図的に見せつけているような状態だった。
「このサークル、男子いないんですか?」
タクミは視線を逸らしながら、思っていたことを口にした。
「そうなの! だからタクミくんは超貴重な存在ってわけ♪」
「ええ、だからこそ、ちゃんとおもてなししないとね?」
ユイナ先輩がタクミの隣にさらに寄る。膝が触れ合い、彼女の長い髪がふわりと肩にかかった。
「お、おもてなしって……?」
「こうして話を聞いて、飲み物を注いで、楽しい雰囲気を作ることよ」
ユイナ先輩がすっと手を伸ばし、タクミのコップにジュースを注ぐ。
「ほら、乾杯しましょう?」
「あ、ありがとうございます……」
タクミは戸惑いつつも、二人の先輩とコップを合わせた。
(……これ、完全に接待じゃね?)
前世の水泳サークルの新歓は、先輩たちが主役の飲み会だった。
ビール瓶が次々と回され、大声で一気飲みを強要され、泥酔する人間が続出。新入生はほぼ観客で、先輩たちの宴会芸を眺めるだけの地獄絵図だった。
だが、今のこの場はどうだ?
(……全然違う)
「もう飲んじゃったの? じゃあ、はい、これ」
「えっ?」
ユイナ先輩が、今度はタクミのコップに直接ストローを差し込み、差し出してきた。
「え、いや、これを俺が……?」
「気にしないで、ほら」
「……いやいやいや」
タクミが戸惑っていると、今度はさやかが腕を絡めてくる。
「タクミくん、女の子に飲ませてもらうのって、嫌い?」
「い、いや……そういうわけじゃ」
「じゃあ、いいじゃん♪」
タクミの腕にむにっと柔らかい感触が押し付けられる。
(……どうしてこうなった?)
前世の新歓とは何もかもが違う。
水泳サークルの新歓は、タクミにとってまさに"接待"の場になっていた——。
だが、その違いは"接待"だけではなかった。
「ぷはぁ~、酒うめぇ!!」
「もうちょっとペース落としなって……ほら、まだあるよ」
「大丈夫大丈夫~、ユイナだって結構飲んでるでしょ?」
「私? まあ……そうね。でもタクミくんには飲ませないわよ?」
「うんうん、だって貴重な男の子だからね~♪ 酔わせて潰しちゃったら大変!」
さやかは上機嫌でタクミの肩に寄りかかりながら、ガンガン酒をあおっていた。
ユイナも、それなりのペースで飲んでいる。
タクミが見る限り、すでに二人とも顔がほんのり赤い。
(……え、俺のこと酔わせたくないとか言いながら、自分たちはガバガバ飲むんだ?)
タクミには酒を勧めないが、自分たちは遠慮なく飲む。
しかも、ただ飲むだけでなく、タクミの両側に密着し、時折無駄にボディタッチを増やしてくる。
(……この世界、男女比の影響がこんなところにまで出るのか?)
タクミは目の前の光景を見て、ようやく"男女比3:7の世界"を本当の意味で実感し始めていた——。