※この作品はR-18です。

貞操逆転世界でAV男優始めました〜100年に1人の逸材 現役男子大学生Debut〜   作:たんばりん

4 / 17
第四話

ぼんやりとした意識の中で、タクミは天井を見つめていた。

 

 さっきまでの喧騒が嘘のように、部屋の中は静寂に包まれている。外の街灯がカーテンの隙間から差し込み、薄暗い室内に揺れる影を落としていた。

 

 柔らかい寝息が左右から聞こえる。

 

 視線を横に向けると、ユイナとさやかが彼の両側に身を横たえていた。

 

 ——信じられない。

 

 心の中で、そう呟く。

 

 前世でただ憧れるだけだったさやか先輩が、今こうして自分のすぐ隣にいる。それどころか、水泳サークルの会長であるユイナまで。彼女たちはすっかり出来上がり、タクミの肩を借りるようにして帰宅。そのまま流れでこうなった。

 

 さやかは無防備な寝顔を晒していた。長い睫毛が微かに揺れ、唇はうっすらと開いている。普段は明るく、積極的な彼女も、今は静かに眠っていた。

 

 反対側のユイナは、整った顔立ちをより引き立てるように、穏やかな表情で寝息を立てている。彼女はサークルの会長で、さやかよりもさらに包容力のある雰囲気を持っていた。普段は余裕のある笑みを浮かべ、場をリードする存在。しかし、今はまるで少女のように、無防備な姿を晒している。

 

 タクミはそっと息をついた。

 

 「……俺、本当にやり直してるんだよな」

 

 誰に言うでもなく呟く。しかし、返ってくるのは静かな寝息だけ。

 

 男女比の違う世界。男が少なく、女が多い。男の立場は現実とは大きく異なり、彼はそのルールに翻弄されている。それを理解したつもりでいた。だが、こうして実際に経験してみると、思った以上に衝撃が大きい。

 

 前世では考えられなかった展開。

 

 当時の自分は、さやか先輩に一目惚れし、それがきっかけで水泳サークルに入った。しかし、飲み会の激しさに圧倒され、結局数回顔を出しただけでフェードアウトしてしまった。それでも、彼女のことはずっと覚えていた。憧れの存在として、遠くから見ているだけだった。

 

 しかし今、さやかは隣にいる。ユイナも。

 

 これは……本当に自分が望んでいたものなのか?

 

 今の自分は、前世の自分とは違う世界のルールの中にいる。男としての価値が、前とはまるで違う。そして、それはあまりにも容易く、急激に手に入りすぎている。

 

 こんなにもあっさりと、いいのか?

 

 胸の奥がざわついた。

 

 ふと、さやかが寝返りを打ち、タクミの方へと寄ってくる。腕に感じる柔らかな感触。酔いの残る寝息が、微かに肌をくすぐる。

 

 同時に、反対側ではユイナが小さく寝息を立てながら、無意識に距離を詰めてきていた。

 

 ——挟まれている。

 

 だが、嫌な気分ではなかった。むしろ、心地よささえ感じる。

 

 こんなこと、前世ではあり得なかった。

 

 しかし、そんな状況でも、タクミの心は浮かれることなく、どこか冷静だった。

 

 新しい世界。新しい立場。新しい自分。

 

 その全てを受け入れられるようになるには、まだ時間が必要なのかもしれない。

 

 夜はまだ、長い。

 

 

 

 ――――――――

 

 

 午前中の授業は、タクミにとって退屈なものだった。

 

 単調な教授の声が講堂に響く中、彼はスマホを手に取り、そっと画面を覗く。

 

 ——金を稼がなきゃならない。

 

 この世界に転生してからの生活は、前世と比べて劇的に変わった。しかし、それでも施設育ちという境遇は変わらないし、奨学金返済の現実もある。

 

 遊ぶ金なんて、当然ない。

 

 何かいいバイトはないか——そう思いながら、求人アプリを開いた。

 

 **ホスト:時給10,000円+出来高払い**

 **セクキャバ:時給30,000円+出来高**

 **ソープ:完全出来高制、今なら面接だけで100,000円支給**

 

 タクミの指が一瞬止まる。

 

 ……この世界、どこか狂ってないか?

 

 前世でも夜の仕事は高収入だったが、それでもここまでの金額はあり得なかった。特に「ソープの面接だけで十万」というのは、もはや意味がわからないレベルだ。

 

 ——男が少ないから、ってことか。

 

 この世界に来てからずっと感じていた違和感が、また一つ目の前に突きつけられた。

 

 男というだけで金になる。

 

 それを理屈では理解していたが、こうして求人情報を目の当たりにすると、その異常さを改めて実感する。

 

 指先が無意識に画面をスクロールする。延々と続く高額求人のリスト。

 

 そのとき——

 

 **ピコン!**

 

 突如、画面全体にポップアップが浮かび上がった。

 

 

 **《AV男優 募集!いまなら契約金最低800万円〜》**

 

 タクミの目が、その一文に釘付けになる。

 

 画面の中央には、モデルのように整った顔立ちの男性が写っていた。カジュアルな服装で、まるで芸能人のようにカッコよく決めている。

 

 「……これだ」

 

 胸の奥で何かが閃く。

 

 なぜかはわからない。だが、これが自分の行くべき道のような気がした。

 

 

 

 閃いた瞬間、タクミの行動は早かった。

 

 授業の内容など、もはや頭に入ってこない。指が画面の上を滑り、迷いなくポップアップをタップする。

 

 瞬時に求人ページが開き、エントリーフォームが表示された。

 

 **《AV男優 応募フォーム》**

 

 淡々としたデザインのページに、必要事項が羅列されている。

 

 タクミは迷うことなく入力を始めた。

 

 **・年齢 → 19歳**

 **・職業 → 大学生**

 **・住所 → ○○市△△区□□マンション102号室**

 **・連絡先 → 携帯番号&メールアドレス**

 

 特に変わった項目はない。一般的なアルバイトの応募フォームと大差なかった。

 

 「……簡単だな」

 

 拍子抜けするほどシンプルな内容だった。

 

 しかし——

 

 タクミの指が、ある項目の前で止まった。

 

 **・女性経験の有無。並びにその人数。**

 

 「……」

 

 思わず眉をひそめる。

 

 前世のタクミは、付き合った女性は一人だけだった。プロポーズに失敗し、破局した元彼女。

 

 だからこそ、昨日までは「1」と答えるのが正解だった。

 

 だが——

 

 昨晩のことを思い出す。

 

 **ユイナとさやか。**

 

 酔いに身を任せた二人の先輩たち。

 

 それは間違いなく「経験」に含まれる出来事だった。

 

 ——ってことは、今の俺は……「3」か。

 

 一瞬だけ迷った後、彼は軽く息を吐き、数字を入力する。

 

 **「3名」**

 

 続いて、最終応募確認のボタンへと指を滑らせる。

 

 **——タップ。**

 

 画面が切り替わり、送信完了の文字が表示された。

 

 **《エントリーが完了しました。担当者からのご連絡をお待ちください。》**

 

 タクミはスマホの画面を見つめながら、小さく呟く。

 

 「……よし」

 

 授業はすっかり頭の外だった。

 

 彼の新たな人生が、今まさに動き出そうとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。