貞操逆転世界でAV男優始めました〜100年に1人の逸材 現役男子大学生Debut〜 作:たんばりん
### **第6話:面接官・雑賀エリカ**
タクミは、目の前の女性をじっと見つめていた。
目が合うたび、吸い込まれそうな感覚になる。
美しい——。
黒髪のストレートが肩のあたりで揺れ、整った顔立ちはまるで映画のワンシーンに出てくるかのようだった。
前世の感覚でいえば、トップ女優と比べても遜色ない美貌。
しかも、それがたまたま目の前に座っているだけではなく、自分に興味を持ち、向き合ってくれているという状況が妙に非現実的だった。
「驚いた?」
柔らかく笑みを浮かべながら、目の前の女性——雑賀エリカはタクミの表情を覗き込む。
彼女は高級感のある黒のスーツを身にまとい、仕立ての良いジャケットの内側から覗くブラウスのボタンは、ほんのわずかに緩んでいる。
「いえ……ただ、思っていたよりもすぐに連絡が来たので」
タクミはコーヒーカップを持ち上げながら答える。
——事実、エリカからの連絡は異常なほど早かった。
**応募フォームを送信して、わずか10秒後にスマホが鳴った。**
「はじめまして。AV男優の募集について応募いただいたタクミさんで間違いないですか?」
「え、あ……はい」
「よかった。実はあなたの応募、とても興味深かったので。すぐにお会いしたくて連絡しました」
その言葉に、一瞬「何かの詐欺か?」という疑念がよぎったが、電話越しのエリカの声は落ち着いていて洗練されており、少なくとも怪しげなものではないと直感した。
「もし今日の夕方、お時間があればお会いしたいのですが」
そんな流れで、大学近くの喫茶店での面接が決まったのだった。
「正直、ここまでスピーディーだとは思っていませんでした」
タクミがそう言うと、エリカは上品に微笑んだ。
「うちはスピード感が大事なの。それに——優秀な人材は早い者勝ちだから」
エリカの言葉には、タクミを試すような響きがあった。
「優秀……ですか?」
「ええ。あなたの応募、じっくり拝見させてもらったわ」
彼女はカップに口をつけながら、涼やかな瞳でタクミを見つめる。
「じゃあ、まずはリラックスして。面接というより、楽しくお話ししましょう?」
そう言って、エリカは妖艶な笑みを浮かべた。
タクミは、彼女の視線を受け止めながら、ゆっくりと深呼吸をした。
これは、ただのアルバイト面接ではない——。
そう確信するには十分な雰囲気だった。
### **第6話(続き):面接官・雑賀エリカ**
タクミは、コーヒーをひと口飲んでから、ゆっくりとカップをソーサーに戻した。
「それじゃあ、少し踏み込んだことを聞くわね」
エリカは優雅に足を組み直し、彼を真っ直ぐに見つめる。
「タクミくんは、どうしてAV男優に応募したの?」
その質問は、当然すぎるものだった。しかし、普通のアルバイトでは絶対に問われることのない類のものでもあった。
タクミは、ちらりと喫茶店の窓の外に視線を向ける。通りを行き交う人々の姿が目に入ったが、彼の中で考えが揺らぐことはなかった。
「……単純に、お金が必要だからです」
エリカは静かに頷いた。
「そうよね。求人を見た時点で、それは察してたわ。でも、どうしてそんなに?」
タクミは答える前に、一瞬迷った。
自分が施設育ちで、学費を奨学金とアルバイトでまかなっていること。前世ではそれで首が回らなくなり、消費者金融にまで手を出したこと。
そんな過去をすべて正直に話すべきなのか。
……いや、そんなことを言っても仕方がない。
「僕は、施設育ちです。親はいませんし、頼れる親族もいません。奨学金も借りていますが、返済を考えると、普通のバイトでは到底追いつきません」
そこまで言ったところで、タクミは口を閉じた。
エリカは彼の言葉を遮ることなく、じっと聞いていた。そして、ゆっくりと頷く。
「なるほどね……でも、AV男優って、普通のバイトとはまったく違う世界よ? たとえば……親族がいたら、反対されると思う?」
「いません」
タクミは即答した。
「だから、反対されることはありません」
エリカは、その答えに一瞬だけ目を細めた。
「……そう」
彼女の声色には、どこか柔らかさがあった。タクミの事情に対して、突っ込んだ質問はしない。ただ、理解を示すように頷くだけだった。
「じゃあ、もう一つ。AVは見たことある?」
この質問には、一瞬、言葉を詰まらせた。
**今世ではまだ見ていない。**
しかし、前世でなら——。
タクミは小さく息を吐いて、端的に答えた。
「……見たことはあります」
エリカは、ふっと微笑む。
「そう。それなら、少しはイメージがついているのね」
その後も、いくつかの質問が続いた。
通常の面接では決して聞かれないようなものばかりだったが、エリカの落ち着いた態度に助けられ、タクミも少しずつ肩の力を抜いていった。
彼女は、時には真剣に頷き、時には緊張をほぐすように微笑みながら、タクミの言葉を受け止めていく。
そして——。
「ねえ、タクミくん」
エリカは、コーヒーカップをテーブルに置いて、少し前のめりになった。
「合否には関係ないんだけど……一度、現場を見学してみる?」
彼女の唇から発せられた言葉に、タクミの脳内に一瞬、空白が生まれる。
「現場……ですか?」
「ええ。いきなり演技しろって言われても、難しいでしょ? だったら、一度実際の撮影現場を見て、雰囲気を掴んでみるのも悪くないと思うの」
エリカの言葉には、迷いがなかった。
「どうかしら?」
タクミは、彼女の瞳を見つめながら、静かに考える。
これは、単なるバイトではない。
しかし——。
**彼の直感は、「行け」と告げていた。**