貞操逆転世界でAV男優始めました〜100年に1人の逸材 現役男子大学生Debut〜 作:たんばりん
# **第7話 — エリカの衝撃 —**
私は目の前の光景に言葉を失っていた。
いや、私だけじゃない。この場にいる誰もが、息を呑んで彼を見つめていた。
監督も、カメラマンも、照明スタッフも、メイクも、ADも——この場にいる全員が、タクミという存在に釘付けになっていた。
「……すごい……」
誰かがそう呟いた。それが私自身の声だったのか、それとも誰かの言葉が耳に入ったのかは、もうわからない。
私たちが今、目撃しているのは、これまでの常識を覆す瞬間なのかもしれなかった。
**「AV男優に演技は求めてならない」——その常識が崩れる瞬間**
AVの世界では、基本的に“男性”が主役である。
当然だ。ユーザーの98%が女性であり、彼女達は皆、男性の痴態を見たいのだ。
大根役者と揶揄されるであろう男優でも、“AVに出てくれる男優なだけで貴重“なのだ。
そこに演技力など求めてはいけない。
業界の不律問である。
カメラに映るのは男性、フォーカスされるのも男性。
故に男優とは、ただ自らの肉体を曝け出し、時々でも良いので射精するシーンを見せてくれるだけでよかった。
むしろ、視聴者にとって“それが当たり前であり演技力は二の次”とさえ言われてきた。
だから、男優に求められるのは、顔の良さや、肉体の美しさ、そして性器の大きさ。
即ち直感的なエロさである。
適度な演技、適度なセリフ回し、適度なタイミング。
演技力など二の次にしてセリフなどは後回しである。
そうやって業界の「普通」が作られてきた。
だが——
タクミは、その“普通”を根底から覆していた。
彼の存在は、決して普通にならなかった。
むしろ、その場のすべてを支配していた。
それは単なる“ルックス”の話ではない。
もちろん、彼の顔立ちは悪くない。いや、むしろ整っている方だろう。
しかし、この業界にはもっと端正な顔立ちの男優はいる。
だが、タクミの場合は違った。
顔がどうこうではない。
彼の“圧”が、主体的に取り組む体勢が、場を完全に支配していたのだ。
言葉は少ない。
いや、ほとんど喋っていないと言っていい。
本人いわく、「どうせ棒読みになるなら、喋らないほうがマシ」とのことだった。
その言葉通り、彼から発せられるのは荒々しい息遣いだけ。
だが、それが逆に「リアルさ」を生み出していた。
男優が口にする、決まりきった台詞の数々——
「気持ちいい?」
「ほら、イケよ」
「お前、エロいな」
そういう、テンプレートのようなセリフを彼は一切言わない。
それなのに、彼の動きひとつひとつが、場の空気を作り出していた。
荒々しく、獣のように——
先ほどより女優を四つん這いにさせて、バックより激しく腰を自ら打ちつける彼に私は目を離せない。
まるで女性の本能を刺激するかのように、圧倒的な存在感を放っていた。
### **業界の“常識”をぶち壊す男**
私はこの業界に関わって10年以上になる。
小さなプロダクションで雑務をこなしていた頃から、今やこの大手プロダクションの中心人物のひとりになった。
数えきれないほどの現場を見てきたし、“すごい”と言われる男優も何人も見てきた。
技術がある男優は確かにいる。
演技が上手い男優もいる。
ルックスが良い男優もいる。
けれど、タクミはそのどれとも違った。
彼は、まるで“本能で動いている”ようだった。
人間の三大欲求は、男性にも関わらずあるのだと。
決められた演技ではなく、決められたセリフではなく、ただ“そこに、女体を貪るように荒々しいプレイをする”だけで、彼の世界が出来上がってしまう。
女優の反応も明らかに違った。
いや——これは、演技なのか?
女優の表情、女優の息遣い、女優の指先の震え——
私は今まで何百、何千というシーンを見てきた。
だからこそ、わかる。
これは——演技じゃない。
彼女は、彼の前で「女」にされている。
まるでAVという枠を超えた“現実”を見ているような錯覚さえ覚えた。
タクミの動きに合わせ、女優は本能のままに声を上げ、身体を震わせている。
それは台本に書かれた動きでも、演出された表情でもなかった。
「……こんなの……見たことない……」
気づけば、私はそう呟いていた。
隣にいた監督も、口を開いたまま何も言えなくなっていた。
カメラマンも、まるで映像の神が降臨したかのように、その手を止められないでいた。
「……変わる……」
私は、確信した。
業界が——変わる。
世界が——変わる。
タクミという男の存在によって。
これまでの常識が、彼によって塗り替えられる。
たまたま昨日、求人応募で見つけた男——
「大学生でお金が必要だから」という単純な理由で応募してきた男——
その男が、業界の歴史を変えるかもしれない。
私は、ゾクッとした。
こんな男を、逃がすわけにはいかない。
私は彼を——この業界に引き込む。
どんな手を使ってでも。