1. 恋する乙女と苺パンツ
――私の名前は東城綾。泉坂高校に通う女子高生だ。
そんな私には、今、気になっている男の子がいる。それは、同級生の真中淳平くんだ。
彼は、映画作りが好きな男の子で、ちょっとエッチだけど、優しくて、正義感のあるとても素敵な人だ。そんな彼に、私は、中学の時からずっと想いを寄せている。でも、引っ込み思案な私は、彼の顔を見ると恥ずかしくなって、うまく会話が続けられない。
同じ高校で、同じ塾にも通っているから、話す機会は結構ある。でも、どうしても緊張してしまって、彼との距離を縮められない。
(どうしたら、もっと自然に話せるんだろう……?)
そんな悩みをずっと抱えていた。
そんなある日、塾の教室で講義の予習している、横から軽い声がかかった。
「ねぇ、東城ちゃん。この問題って、どうやって解けばいい?」
声の主は木村翔くん。同じ塾に通う、ちょっとチャラい男の子だ。
初めて会ったときは、ピアスに派手な服装で、正直ちょっと怖い人だと思っていた。でも、ある日、偶然隣の席になったときに、塾の宿題について質問されて、それからなんとなく話すようになった。話してみると意外と親しみやすくて、今では普通に話せる数少ない男の子の一人になっていた。
「ああ、それはね……ここの式を変形すれば解けるよ」
「なるほどねー、さすが東城ちゃん!」
ノートにメモを取りながら、鼻歌交じりの翔くん。
(あーあ、真中君ともこれぐらい普通に話せたらな……)
そう悩んでいると、翔くんは、私の顔をじっと見つめ、少し首を傾げた。
「……東城さん、なんか悩みでもあんの?」
「えっ?」
突然の指摘に、思わず息を呑む。
「そ、そんなことないよ?」
「いや、あるでしょ。東城ちゃん、めっちゃわかりやすいしw」
ま、まさか、私、顔に出てた……!?
「ほら、俺、こう見えて人の観察得意なんだよね。話してみ?」
「え、えっと……」
誤魔化そうとしたけど、翔くんはじっとこちらを見つめてくる。
(どうしよう……誤魔化せる気がしない……。)
結局根負けした私は、彼に悩みを打ち明けた。
「……実は、片思いの男の子がいるんだけど、緊張しちゃってうまく話せなくて……」
「へぇ~、片思い、ねぇ……。」
翔くんがニヤリと笑う。
「それって、真中君のことだよね?」
「な、なんでっ!?」
図星を疲れ、慌てて否定する東城。だが、顔が真っ赤になってしまい、どう見てもバレバレだった。
「だって、東城さん、めっちゃ真中君のこと目で追ってるし。」
「そ、そんなこと……!」
顔が一気に熱くなるのを感じた。頑張って誤魔化そうとするけど、動揺しすぎて全然できてない。
(うう……恥ずかしいよぉ)
顔が真っ赤になる東城。その姿を楽しみながら、翔は、東城にある提案をしてきた。
「だったらさ、俺が練習相手になってやろうか?w」
「え……?」
突然の申し出に驚く東城。
「ほら、俺、変装の達人だからさw 真中君の雰囲気を、バッチリ再現できるぜ?」
「え、えぇ!? でも、そんなの……。」
「まぁまぁ、大丈夫だって。明日、変装してきてやるから、楽しみにしてなw」
そう言って翔くんは、意気揚々と、どこかに行こうという素振りを見せた。
「ちょ、ちょっと待って……!」
彼を止めようと、立ち上がろうとするが――
ガタッ!
焦って椅子に足を引っ掛けてしまった。
「きゃっ……!」
ドンッ!
バサッ……!
スカートがめくれ、パンツが露わになる。
「いやぁ~~~~ん!」
「ひゅ~♪ 可愛い苺パンツじゃんw」
翔くんが口笛を吹く。
「いやー、イイものも見せてもらったよw これは、バッチリ練習相手にならないとな!」
そういって彼は、勢いよく教室を飛び出していった。
(うう……な、なんでこうなっちゃうのぉ!)
2. 変装の達人と苺パンツ
塾に到着すると、入り口の前で誰かが待っていた。
「おーっす、東城ちゃん!」
その声の主の姿を見て、私は目を疑った。
(えっ……真中君!?)
目の前に立っているのは、真中君そのもののようだった。でも、声のトーンや話し方にわずかな違和感があった。
(えっ……もしかして……)
「翔くん……?」
「あたり! どう? 俺の変装テク!」
自信満々の笑顔を浮かべてくる翔くん。
髪型、服装、仕草……どれを取っても真中君そっくり。顔はメイクで細かく調整されており、声もまるで本人のよう。遠目から見れば、完全に真中君そのものだった。
「う、うん、すごいね……その変装。」
「だろ? 俺、こういうの得意なんだよね!」
翔くんは得意げにウインクすると、「じゃ、行くか」と軽く肩をすくめ、そのまま塾の教室へと向かった。
私は少し戸惑いながらも後に続き、翔くん(真中君?)の隣に座る。
(変装してるのは翔くんだってわかってるのに……なんだか妙に緊張する……。)
授業が始まっても、隣にいる彼の仕草や話し方が本当に真中君そっくりで、心のざわめきが止まらなかった。
そして、講義が終わった後――
「よし、じゃあ、練習するか!」
「えっ、ここで?」
「いやいや、さすがにここじゃ落ち着かないでしょw 空いてる個室にいこうぜ」
突然の誘いに驚いたものの、ここまで頑張ってくれた翔くんの努力を無駄にはできず、私は小さく頷いた。
塾の個室に入ると、翔くんは真中君の口調を完璧に再現しながら話し始めた。
「東城って、映画とか好き?」
「えっ!? う、うん……」
「俺、映画作るの好きなんだよね! こう、カメラを構えてさ……。」
(うわ……本当に真中君みたい……!)
翔くんが映画について語る姿は、まるで真中君そのものだった。夢中になって話す表情や熱のこもった口調が、彼を思い出させる。
「映画作りって、そんなに楽しいんだね。」
気づけば、私も自然と会話ができるようになっていた。
「うんうん、いい感じで話せてるじゃんw」
「……う、うん」
急に、素の翔くんが出てきたため、少し驚く。
「じゃ、最後にもうちょっと感情込めてみようぜ!」
「……う、うん……。」
そして、私は深呼吸をして、会話を始める。
「ねぇ真中君、ちょっと相談したいがあるんだけど?」
「どうしたんだ、東城?」
再び真中君になりきる翔くん。私は彼の演技に引き込まれながら、少しずつ会話のテンポを掴んでいった。
「うん……なんだか、前より自然に話せてる気がする……。」
「だろ? さすが東城ちゃん、やればできるじゃん!」
翔くんが満足そうに笑う。
「じゃ、今日はこのへんで終わりにしとくか!」
「えっ、うん、そうだね……」
少し物足りなさを感じつつも、私は立ち上がろうとする。
しかし、その瞬間――
「きゃっ……!」
また、椅子に足を引っ掛けてしまい、バランスを崩す。
「おっと!」
翔くんが慌てて手を伸ばし、支えてくれる。
だが、その拍子に、スカートの裾がふわっと舞い上がり、パンツが露わになる。
「いやぁん……!」
私は顔を真っ赤にしながら、急いでスカートを抑える。
「ハハハッ、また苺パンツだなw まっ、こんなハプニングもいいスパイスってことで! 」
翔くんはケラケラと笑っていた。
(……もう、なんでこんな、ドジしちゃうのよぉ……///)
3. 作戦会議とイチゴパンツ
塾の個室で、私は翔くんと二度目の会話練習をしていた。
「へぇ、それで?」
「うん、それでね……」
前回よりもずっとスムーズに話せているのが自分でも分かる。翔くんが真中君の口調や仕草を再現してくれるおかげで、私も自然と会話を続けられるようになっていた。
「うんうん、いい感じ!」
翔くんも褒めてくれた。
「……でも、本物の真中君とは、まだうまく話せないんだよね。」
「おっと、相談タイムか?」
翔くんが机に肘をつきながら、興味深そうにこちらを見てくる。
「……うん。真中君の周りって、いつも別の女の子たちがいるから、私、中々話しかけられなくて……。」
「ふむふむ。つまり、その女の子たちが邪魔ってことだな?」
「ち、違うよ! そういう意味じゃなくて……!」
慌てる私を見て、翔くんはくくっと笑った。
「ならさ、手っ取り早く、その子たちを遠ざけるってのがいいんじゃね? 俺も手伝うしw」
「えっ?」
「簡単な話だよ。俺が真中君に変装して、東城ちゃんとイチャイチャしてるとこを女の子たちに見せるんだ。そしたら、彼女たちもすぐに諦めると思うぜ!」
「ええっ!?」
思わず声を上げる。
「だ、だってそれって、嘘をつくみたいで……なんだか悪い気がする……。」
「東城ちゃん、恋は戦争だぜ?」
翔くんが軽く肩をすくめる。
「遠慮してたら、すぐに他の子に取られちまう。 それでもいいのかい?」
「……」
私は迷う。そんなことまでして、本当にいいのだろうか。
すると翔くんがふっと笑って、さらりと言った。
「そういや、前に東城ちゃんがオススメしてくれた本、覚えてる? 俺、ちゃんと読んだんだぜ。」
「えっ、本当に?」
「マジマジ。でさ、それに出てくる登場人物が言ってただろ? 『迷ってるだけじゃ、何も変わらないって』」
「……!」
翔くんは私の目をまっすぐ見つめてくる。
「だからさ、東城ちゃんも後悔しないように動くべきなんじゃね?」
「……」
「それにさ、もし失敗しても、今とそんなに変わらないだろ? だからさ、一歩踏み出してみないか?」
彼の言葉が、私の心に突き刺さった。
(……後悔しないための一歩……)
そして、私は、数秒思い悩んだ後、ゆっくりと彼の方を向いた。
「……うん……やってみようかな。」
「さすが東城ちゃん! 話がわかるぜ!」
翔くんが満足そうに笑い、立ち上がった。
「じゃあ、早速イチャイチャの練習でも……」
「ええっ……!?」
彼の発言に、慌てて後ずさる私。しかし、その拍子に足がもつれてしまい――
「きゃっ!」
「あっぶな!?」
バランスを崩して倒れ込みそうになる私。そして、それを支えようと、翔くんが手を伸ばしてくれたが、結局うまくいかず、彼を巻き込みながら、床に転がる。
ドンッ!
大きな衝撃が走る。
「……いたたた……。」
ぼんやりした頭を振りながら、私はゆっくりと身体を起こす。
ぱにゅん!
(えっ……? なんか柔らかい感触が……?)
「あぼぼぼぼっ! あぼぼぼぼっ!」
翔くんの困惑した声が聞こえ、私はハッとする。
どうやら、私は、翔くんの顔の上にのってしまっているようだった。
「い、いやぁん!!」
私は慌てて飛びのき、スカートを押さえながら真っ赤になる。
「ご、ごめん翔くん! 大丈夫だった!?」
翔くんはゆっくりと起き上がり、ニヤついた表情で頷いた。
「いやぁ……いいもの見れましたわw」
「も、も~う……///」
恥ずかしくなって、私はその場から、逃げ出してしまった。
(……翔くんに任せて、本当に大丈夫なの……?)
4. 剥き出しの苺パンツ
あの場から逃げ出した後、冷静になった私は、また個室に戻ってきた。
そんな私に対して、翔くんは、何事もなかったようにいつもの調子で私を受け入れてくれた。そして、先程の話の続きに戻る。
「それで、真中君の周りには、どんな子がいるんだっけ?」
翔くんが軽い調子で尋ねてきた。
「えっと……西野つかささん、北大路さつきさん、あと向井こずえさん……かな。」
「ふ~ん。じゃあ、まずは小手調べってことで、向井ちゃんから行ってみようかw」
「えっ?」
「ほら、同じ塾だし、やりやすいだろ?」
私は戸惑いつつも、小さく頷いた。
「OK、作戦はこうだ。こずえちゃんが帰る途中で、俺たちがイチャイチャしてるところを見せる。そして諦めてもらう、以上w」
「えっと……たったそれだけ?」
あまりにもあっさりした作戦に、私は拍子抜けしてしまった。
「シンプル・イズ・ベストだよ、東城ちゃん! まぁ、最低限抱き合ったりする必要はあると思うけどw」
「えっ……そんなことしないといけないの!?」
彼の言葉に私は驚く。
「当たり前じゃんか! これぐらいやらないと効果ないって!」
「ええ……でも……」
「大丈夫だって、俺がリードするからさ!」
翔くんの言葉に、私は顔を伏せたまま考え込む。
(なんだか、向井さんに悪い気がする……それに演技とはいえ、男の人と抱き合うなんて……。)
そんな私を見て、翔くんはふっと視線を横に向けた。
「ほら、あっち見てみてよ」
彼の目線の先に、楽しそうに話している真中君と向井さんの姿があった。
「君は、あんなふうに彼と話せるかい?」
私は、ぎゅっと手を握りしめた。
「ここで諦めたら意味ないだろ? 前に話した本の登場人物みたいに、勇気を出さなきゃ。」
翔くんの言葉が、胸に深く刺さる。
(あの登場人物たちも、迷いながら、それでも自分の気持ちに正直に行動してた……。私も、今逃げたら、きっと後悔する気がする……。)
私は唇をかみしめ、ゆっくりと翔くんの顔を見上げた。
「……うん、私、やってみる。」
「よし、その意気だ!」
不安と緊張はまだ残っている。でも、それ以上に、心の奥で小さく灯る決意が、私を前へ進ませようとしていた。
――そして、作戦当日。
塾が終わり、私と翔くんは、向井さんが乗るバスの停留所で待ち構えていた。
「そろそろ来るかな……」
緊張で心臓がドキドキしていた。
「……さ、来たぞ。行くぞ東城ちゃん。」
「……えっ、あ、はい!」
翔くんの合図で、私はぎこちなく彼に抱きついた。
「……っ。」
男の人の大きな胸板が顔に当たる。鼓動が早くなる。
「(ほら、もうちょっとリラックスして……)」
囁く翔くんの声に、私はなんとか力を抜く。
(演技……これは演技だから……。)
自分に言い聞かせる心のなかで念じる東城。
そして、チラッと視線を横に向けると、向井さんがこちらに気づくのが見えた。
(あっ……気づいてる……)
そう東城が思った瞬間――
サワッ!
「きゃっ……!」
翔くんの手が、私のお尻に触れた。
「(静かに。演技を続けないとバレるぞ。)」
「(な、なんでこんなことを……!)」
「(いいから。今は俺に合わせて。)」
私は顔を真っ赤にしながらも、彼の言葉に従って、じっと耐えた。
そして、そっと向井さんの方を見てみた。すると――
(……な、泣いてる……!?)
向井さんの目からは、大粒の涙が流れていた。そして、彼女はそのまま、どこかへ駆け出していった。
向井さんが去ってから数十秒後――
「ふぅ……うまくいったみたいだね。」
そういって、翔くんは私の身体を解放した。
「いやー、ドキドキしたね~w」
翔くんは満足げに笑っていた。そんな姿をみて、私は彼に言葉を投げかけた。
「……どうして、さっきお尻を触ったの?」
だが、彼は特に驚くわけでもなく、言葉を返してきた。
「ん? だって、その方が効果的だろ? 結果オーライだったんだからいいじゃんw」
「えっ、それだけ……!?」
軽く答える翔くんに、少し怒りが沸いてきた。
だが、それもすぐに掻き消え、今度はため息が出る。
「……向井さん、泣いてた……。私、ちょっと悪いことしちゃったかもしれない……。」
彼女への罪悪感が私の中で芽生え始めていた。
そんな私を見て、翔くんは言葉をかけてきた。
「気持ちは分かる。でもさ、じゃあ、あの子に真中君を取られてもいいの? それに、彼は映画作りの夢に向かって頑張ってるんだろ? あんな子が近くにいたら、勉強にだって集中できないんじゃないかな?」
「……!」
私はハッとさせられた。
(そうだ……真中君は、夢を叶えるために頑張ってるんだった……!)
「だからさ、君が彼のために行動するのは間違ってないんだよ。」
(そうだ……私が真中君を守らないと……!)
「……そうね。確かに、そのとおりだわ。
私の言葉を聞いて、翔くんは満足そうな笑みを浮かべていた。
そして、歩き出す私の姿を見送りながら、彼は一人静かにニヤついていた。
私の苺パンツが丸見えになっていたからだ。
さっき抱き合った時に、スカートをめくり上げていたらしい。
そんなこととは、つゆ知らず、私は真中君への決意を固めていた。
(待ってて真中君……あなたは、私が絶対守るから……!)
5. 覗かれた苺パンツ
次の日、塾で向井さんを見かけた。
普段明るい彼女が、今日はどこか元気がない。授業の合間も、ぼんやりと窓の外を見つめていて、いつものように真中君に話しかけることもなかった。
(やっぱり、昨日のこと……。)
私は胸が少し痛んだ。でも、これは真中君を守るため。仕方のないことだと、自分に言い聞かせる。
次の日も、またその次の日も、向井さんは真中君に近づくことはなかった。
――そして、数日後の帰り際。
「東城さん……」
背後から、小さな声が聞こえた。
振り向くと、そこには向井さんが立っていた。彼女はうつむきがちで、何かを言いたそうに口を開いたり閉じたりしている。
「……なにか、用?」
私が尋ねると、向井さんは少しだけ顔を上げて、ためらいがちに言った。
「その……東城さんって、その……真中さんと……。」
私は一瞬、息を飲んだ。
(どうしよう……正直に言うべき? でも、ここで迷ったら……。)
「えっ、あ、うん、そうなの。」
そう口にした瞬間、胸が締め付けられるような感覚がした。
でも、これも真中君を守るため。私は心を鬼にした。
向井さんは私の顔をじっと見つめた後、かすかに頷き、小さく「そうですか……」と呟いた。
それから、彼女は静かに塾を後にした。
(……ごめんね、向井さん。でも、これで……。)
「うまくいったみたいだね。」
不意に、後ろから翔くんの声がした。
「……えっと、その……そうだね。」
私は小さく返事をする。
「じゃあ、次のターゲットは誰にしようか?」
「え……?」
「ほら、西野つかさちゃんか、北大路さつきちゃんのどっちにするかって話w」
翔くんは軽い調子で聞いてきた。
私は少し迷った。
(でも、これは、真中君を守るためだもの)
そう自分に言い聞かせて、私は、彼に返答した。
「次は……北大路さん……で」
「OK、じゃあ個室で作戦会議しようぜ!」
翔くんが嬉しそうに言う。
私は頷き、2階にある塾の個室へと向かった。
階段を上がる途中、後ろを歩いていた翔くんの足音が止まったように思えた。
「……翔くん?」
振り向く私に、笑顔で手を降ってくる翔くん。
(なんだ、気のせいか……)
そう思って、そのまま、私は階段を上がっていった。
――翔くんに、下からスカートの中を覗かれているとも知らずに――
彼女の可愛いお尻がフリフリと動く度に、苺パンツが露わになるところを、彼はニヤニヤとしながら眺めていた。
(……真中君。あなたのことは、きっと私が守ってみせるから!)
6. 禁断のアプローチ
「それで、次のターゲットの北大路さつきちゃんは、どんな子なの?」
翔くんが私を見ながら聞いていた。
「活発的で、積極的な性格の女の子だよ……あと、胸が大きい。」
「おお、それはなかなかの強敵だなw」
翔くんが軽く笑う。
「そうだね。それに、北大路さんは、真中君に会う度に抱きついていたりしたから、単純にハグするだけじゃ効果はないかもしれない……。」
「なるほどねぇ。」
翔くんは腕を組んで考え込む。
「じゃあさ、もっと濃い目のスキンシップを試してみるとか、どう?」
「えっ……濃い目のスキンシップ!?」
私は反射的に声を上げる。
「まあまあ、ちょっと聞いてくれよw」
翔くんは落ち着いた口調で説明を始める。
「東城ちゃんの話しぶりをみるに、確かに、北大路ちゃんって積極的にアプローチしてるみたいだね。でも、結局まだ真中君と付き合えてはいない。ということは、真中君は、まだ彼女のアプローチを受け入れてはいないんじゃないかな?」
「……た、確かに……そうかもしれない」
翔くんの言葉に、私は思わず納得してしまう。
「なら、逆に真中側から積極的にアプローチしてたらどう思う?」
「え?」
「北大路ちゃんは、真中君にアタックしてるけど、彼からは何も反応がない。じゃあ、もし、そんな彼が積極的にアプローチする女の子が現れたら? その現場を北大路ちゃんが見たらどう思うかな?」
「……っ!」
私は言葉を失う。
「つまりさ、真中君に扮した俺が、東城ちゃんに濃い目のスキンシップをすればいいと思うんだよね? どうかな?」
翔くんの言葉に、私は考え込んでしまった。通常であれば、こんな提案受け入れるわけがない。ただ、彼の巧みな話術にハマってしまっていた私は、彼の言葉に小さく頷いてしまった。
――そして、作戦決行の日。
学校帰りの北大路さんが通る道に、私たちは先回りして待ち構えていた。
「そろそろ来るかな。」
翔くんが呟く。
私は息を整え、鼓動を抑えるように深呼吸する。
やがて、北大路さんの姿が遠くに見えた。
「(じゃあ、やるぞ!)」
翔くんの言葉を聞き、決心を固めた私は、彼に抱きついていった。
「……っ。」
強く抱きしめられると、胸の奥がざわつく。
(こ、これは……演技だから……真中君を守るためだから)
そう思いながら、横目で北大路さんの方を見ると、彼女がこちらに気づいたのがわかった。
そして、彼女は私達のほうへ向かってきた。しかも、その表情は……怒ってる?
「(……これじゃ、足りなそうだな。)」
北大路さんの動きを見て、翔くんが小さく私に囁いてきた。
「(東城ちゃん、その、濃いめのスキンシップやってもいい?)」
彼の言葉に、ゴクリと唾を飲む。
(でも……ここまできたらやるしかない!)
そう思った私は、彼の目を見ながら、うんと頷いた。
それを見た翔くんは、ニヤリと満面の笑みを浮かべ、徐ろに、私の胸に手を伸ばしてきた。
「……っ!」
胸から伝わる感触に、私は、一瞬身をすくませてしまった。だが――
(これは……真中君を守るため……!)
と自分に言い聞かせ、そこから、なんとか耐えてみせた。
すると、その光景を見た北大路さんの脚が止まる。
「……。」
そして、追い打ちをかけるように、翔くんは、もう片方の手でも私の胸を触り出す。
もみもみもみ♪
顔が熱くなるのを感じながらも、私は必死に耐えた。
そして、ふと北大路さんの方を伺うと、彼女の表情が変わっていた。さっきまでの勢いは消え、目に悲しげな色が浮かんでいる。
そのまま、彼女は小さく肩を震わせると、踵を返し、足早に立ち去っていった。
彼女の姿が見えなくなった後、私は、翔くんに声をかけた。
「……あの、もういいんじゃないかな……?」
「ああ、ごめんごめん、つい夢中で触っちゃってたw」
彼の軽い言葉に、私は小さくため息をつく。
「……まぁ、これでまた一人、真中に近づく子はいなくなったね。」
「……うん、そうだね……。」
胸の奥に、チクッとした感覚があった。でも、それはしょうがいないものだと、自分に言い聞かせていた。
そんな私をじっと見つめながら、急に翔くんが耳元まで顔を近づけてきて、そっと囁いた。
「ところで、東城ちゃんって……おっぱい、感じやすいんだね? さっきから乳首勃ってるよw」
「……っ!!」
顔と耳が真っ赤に染まっていくのを感じた。
「……へ、変なこと言わないで!!」
そう言い残して、私は、その場から逃げ出した。
何も気にせず走っていたため、スカートがバサバサと舞い上がっていた。
「ひゅー、今日も可愛い苺パンツだねw」
後ろの方で、翔くんがそう呟いたが、私には届かなかった。
(も、もう……翔くん、変なこと言わないで……///)
7. 苺パンツは雨模様
下着姿でベッドに横になりながら、私は天井を見つめていた。
(向井さん、北大路さん……着実に、真中君の周りから邪魔な存在は消えていってる。)
そう思うと、少しだけ胸が高鳴る。
(これで、私と真中君の距離は近づいているはず……なのに。)
頭に浮かぶのは、翔くんのこと。
『東城ちゃんって……おっぱい、感じやすいんだね?』
あの言葉が、心の奥で何度も反響する。
「……っ、なんなのよ、もう。」
顔が熱くなる。怒りが込み上げてくる。でも、それだけじゃない。
(この気持ちは、いったい何……?)
思い返すと、彼に抱きしめられたときの感触が鮮明に蘇る。
翔くんの腕の強さや、背中に回された手の温もり、それに男の人の匂い……。
「……。」
私はそっと、自分の胸に手を添えた。
(……やだ、なに考えてるのよ、私。)
指先が触れた瞬間、びくっと身体が震える。
「っ……。」
慌てて手を引っ込める。でも、一度意識してしまうと、もう止められなかった。
そういえば、昔読んだ小説の中に、翔くんみたいなキャラがいたことを思い出した。
確か、主人公に想いを寄せるヒロインに、よくちょっかいをかけてくる男の子。
最初は嫌がっていたはずのヒロインも、次第に彼とのやり取りが楽しくなってきて、気づけば彼に身も心を奪われてしまう……。
(……ヒロインが少しずつ変わっていく様子に、ちょっとドキドキしたんだっけ……。)
でも、私は違う。
「……私は、ちゃんと真中君が好きなんだから。」
そう言い聞かせる。でも、翔くんのことを考えるたび、胸が妙にざわつく。
(彼の胸板、すごく厚かったな……。がっしりとした手も、とても大きくて……。)
まるで、さっきまでの自分とは違う誰かが、私の中で囁いているみたいだった。
(これが……あの小説のヒロインの気持ち、なの……?)
「……違う、私はそんなふうにはならない……。」
自分に言い聞かせるように呟く。
それでも、考えれば考えるほど、心が熱くなってしまう。次第に、苺パンツまで湿ってきてしまった。
(もう、どうしてこんなことばっかり考えちゃうの……///)
私はそっと枕を抱きしめ、夜更けまでエッチな妄想にふけるのだった。
(私が好きなのは、真中君なのに。でも……なぜか翔くんのことも考えちゃう……)
8. 交錯する気持ち
次の日、学校で北大路さんの姿を見つけた。
いつも明るく、周りを引っ張るような彼女が、今日はどこか元気がない。
(やっぱり、あの時のこと……。)
気になって何度か目をやるが、彼女は誰とも話すことなく、一人で静かに過ごしていた。
そして、数日後。
「東城さん。」
放課後、私は北大路さんに呼び止められた。
彼女の表情は硬く、何かを決意したような目をしていた。
「……真中のことなんだけど。」
「えっ?」
「東城って、真中と付き合ってるの?」
私は息をのんだ。胸が痛む。でも、ここで迷うわけにはいかない。
「……うん、そうなの。」
そういった瞬間、北大路さんの瞳が揺れた。
「……そうなんだ。」
彼女は小さく微笑もうとしたが、すぐに顔を伏せ、くるりと背を向けた。
「……そっか。……なら、仕方ないね。」
それだけ言うと、北大路さんは静かに去っていった。
それ以来、北大路さんが真中君に近づくことはなくなった。
――それから数日後。
塾で、翔くんから声をかけられた。
あの日以来、私は翔くんと距離を取っていた。
あの夜、自室で考えすぎてしまって、どう接したらいいのかわからなくなってしまったからだ。
翔くんも何かを察したのか、以前のように話しかけてくることはなかった。
でも今日、彼は私の前に立ち、真剣な表情をしていた。
そして、開口一番頭を下げてきた。
「ごめん! この前のこと、謝らさせてくれ!」
「えっ?」
虚を突かれた思いだった。
「東城ちゃんと仲良くなれたと思って、つい調子に乗っちゃってたんだ。本当にごめん。」
翔くんは申し訳なさそうに視線を落とした。
(……まさか謝られるなんて思わなかった。)
意外だった。でも、それ以上に、彼の誠実さが胸に響いた。
「……ううん。私こそ、ちょっと避けちゃってごめんね。」
翔くんは、少し驚いたように私を見つめ、それから微笑んだ。
「それじゃあ……前みたいに話してもいい?」
「……うん。」
その言葉を聞くと、彼の表情がふっと緩んだ。
「そっか……よかった。」
私も、小さく微笑む。
それからは、何事もなかったかのように、以前のように塾の宿題の話をするようになった。
けれど、どこかぎこちない沈黙が時折流れるのを、私は感じていた。
――そして、塾が終わる頃。翔くんが口火を切ってきた。
「……ところでさ、あの作戦なんだけど。これから、どうする?」
「えっ……?」
思わず息をのむ。
「確か、西野さんって人が残ってたよね?」
翔くんは、少し優しい口調で言いながら、私の顔を覗き込む。
「この前のお詫びもあるし、最後まで手伝わせてほしいんだ。」
その言葉は穏やかだったけど、どこか含みを持っているように感じた。
私は迷う。
(……もう、これ以上しなくてもいいんじゃない? でも……ここでやめたら、今までやってきたことが無駄になってしまう……)
胸の奥に、罪悪感と共に奇妙な期待感が入り混じる。
心が揺れ動く中、私はふと翔くんが以前言っていた言葉を思い出す。
『君が彼のために行動するのは間違ってないんだよ。』
(……そう、私は真中君を守るためにここまできたんだ。)
迷いを振り払うように、深く息を吸う。そして――
「……そうだね、やろう。」
自分の声がどこか遠くに聞こえた。
そう答えた瞬間、翔くんの口元がわずかに綻んだ。
すると翔くんは、ふっと笑い、そっと私を抱きしめた。
「じゃあ、絶対に最後までやり通そうね。」
「……っ。」
抱きしめられた瞬間、心臓が跳ねる。
彼の腕はしっかりしていて、温かかった。
「うん、そうだね……。」
気づけば、私は彼の胸の中にすっぽりと収まっていた。
(……どうして、こんなに落ち着くの?)
何も言わず、二人はそのまま数分間抱き合っていた。
その間、私の心臓はずっと早鐘を打っていた。
そして、ふと彼が微かに動いた気がした。
けれど、私はそれを深く考えることなく、ただ温かい腕の中に身を委ねていた。
翔くんが、スカートを巻き上げ、私の苺パンツを眺めていたとも知らずに。
(……大好きな真中君は、私が守る。でも、この胸の高鳴りはなんだろう……?)
9. 最後の戦い
塾の個室で、私は翔くんと隣り合って座っていた。
「ついに最後の相手、西野つかさちゃんだね。」
「うん……。」
私は小さく頷いた。
「西野さんは、真中君の元彼女なの。以前に別れたって聞いたけど、最近また真中君と寄りを戻そうとしてるみたい……。」
翔くんが軽く笑う。
「なるほど強敵だね。まさにラスボスだ!」
私は唇を噛んだ。
「今までのようなやり方じゃ……きっとうまくいかない。」
「そうだね、元カノだしね。となると、必要なのは……もっと濃厚なスキンシップ、ってやつかな。」
ドキン!
翔くんの言葉に、思わず胸が跳ねる。
「濃厚な……スキンシップ……?」
「うん。」
翔くんはニヤリと笑う。
「どんなことをすればいいの……?」
私は勇気を出して尋ねる。
「それは当日のお楽しみw 相手を騙すには、まずは味方からっていうだろう?」
「え~~!?」
私は不満げに翔くんを見た。でも、彼は余裕の笑みを浮かべたまま。
「そんなに気になる? じゃあ、当日を楽しみにしててよ。」
その言葉に、私は思わずムッとする。でも、どうしてだろう。
(悔しいはずなのに、ちょっと期待しちゃってる自分がいるのは……なぜ?)
――そして、作戦当日。
公園のベンチで、私と翔くんは並んで座っていた。
「もうすぐ来るはず。」
翔くんがそう呟く。
すると、遠くから、西野さんの姿が見えた。
私は緊張しながらも、作戦通りに翔くんの胸に飛び込む。
横目で西野さんをうかがう。
(……うん、気づいた。)
でも、彼女の表情はほとんど変わらない。
(やっぱり、この程度じゃダメなんだ……!)
私は、そう思い、そっと翔くんに囁いた。
「(……ア、アレを、お願いします。)」
それを聞いて、翔くんはニヤリと微笑んだ。
そして、「了解」と小さく呟くと、私の顎を持ち上げて、そのまま唇を重ねてきた。
ちゅっ♡
翔くんの唇がふれる。
(……やっぱり、こうなるんだ。)
驚きはなかった。どこかで予感していたし、もしかすると、それを待っていたのかもしれない。
普通なら、真中君のことを思えば、拒絶しなければいけないはず。でも、胸の奥から湧き上がるのはそんな気持ちじゃなかった。
(むしろ……この瞬間を、心のどこかで望んでいたのかも……?)
私はゆっくりと目を開き、西野さんを見た。
彼女の瞳には涙が滲んでいた。
何か言いたげに口を開きかけたが、言葉を飲み込み、そのまま背を向けて走り去っていく。
(……これで、真中君を……守れたのかな……?)
そして、私たちはゆっくりとお互いの顔を離した。二人の間には薄く唾液の糸が繋がっていた。
(翔くんってこんなキレイな目をしてたんだ……!)
彼の目をじっと見つめる東城。そんな彼女を見ながら、彼はニコッと微笑みかけた。
「これで、作戦は成功かな?」
「……ふぇ?」
思わず間抜けな声が出た。
翔くんがクスクス笑う。
「ほら、西野さんを遠ざける作戦だよw」
「……あ、ああ、そうね……///」
やっと頭が回ってきたのか、顔を真っ赤にする東城。そんな最中――
ビュウッ!
突然、強い風が吹き抜けた。
「きゃっ!」
スカートの裾がふわりと持ち上がる。
「フフフ……今日も可愛い苺パンツだね♪」
翔くんがニヤリとしながら、小さく囁く。
「もーう……!」
私はぷくっと頬を膨らませる。でも、怒る気にはなれなかった。むしろ、彼とのやり取りがどこか楽しく感じてしまう。
そして、翔くんが軽く伸びをしながら言う。
「そろそろ帰ろっか。」
「……うん。」
そうして、二人はそれぞれの帰路についた。
帰り道、私はそっと自分の唇に触れてみた。
(まだ、熱い……。)
ふわりと残る感触に、胸の奥がじんわりと熱くなった。
(……真中君。これで、あなたの隣にいるのは、私だけのはず。だけど……)
10. 終わりと始まり
それから二週間が経った。
学校の帰り道、私は真中君がひとり俯いているのを見つけた。
「真中君……?」
彼はゆっくりと顔を上げたが、どこか遠くを見つめるような目をしていた。
「……ああ、東城か。ごめん、俺もうダメだ。西野に振られて、もう完全に終わったみたいだ。」
その声は静かで、どこか力が抜けているようだった。
「……そう、なんだ……。」
胸の奥がズキリと痛む。西野さんの決断、そしてそれを受け入れた真中君の姿が、なんだか切なく思えた。
(真中君辛かったよね。でも、もうこれ以上傷つく必要はないからね……!)
そういって私は、真中君を励ました後、その足で塾に向かった。
そして、事の顛末を翔くんに報告した。
「そっか……。じゃあ、今しかないね。」
「え?」
「告白しろよ、東城ちゃん。これは、絶好のタイミングだぜ?」
「っ……!」
私は迷った。でも、ずっと心に決めていたことだった。
(真中君がフリーになった今……確かに、もう、迷う理由なんてない。)
「……うん、私告白する!」
私の言葉を聞いた翔くんは、ニヤッと微笑んでいた。
――そして、翌日。
私は放課後の屋上に真中君を呼び出した。
彼は少し驚いたように私を見つめてくる。
「どうしたんだ、東城……?」
私は、深く息を吸い、彼の目を真っ直ぐに見つめた。そして――
「……好きです、真中君。ずっと、ずっと好きでした!」
言い終えた瞬間、心臓の鼓動が耳まで響くように感じた。
真中君は、少し戸惑ったように目を瞬かせたあと、ゆっくりと口を開いた。
「……ありがとう。実は俺も……東城のこと、好きだったんだ。」
「えっ……?」
思わず息をのむ。
「西野とは、きっとうまくいかないって、どこかで分かってたんだ。でも、それ以上に……俺、東城のことを考えてる時間が長かったんだよ。」
「……真中君……。」
気づけば、頬に温かい涙が伝っていた。
「その、これからよろしくな、東城!」
「……うん!」
こうして、私たちは恋人になった。
――それから数日後。
私は真中君の家に泊まりに行くことになった。
「……本当にいいのか?」
「うん……真中君と、一緒にいたいから……。」
彼は少し照れたように笑いながら、そっと私を抱き寄せる。
そして、私たちはそっと唇を重ねた。
柔らかくて、優しいキス。
(……あぁ、これが、真中君とのキス……。)
何度も触れ合ううちに、唇が深く絡まり、彼の手が私の背中を引き寄せる。
「……東城、大好きだよ。」
「私も……大好き……。」
私たちは、ゆっくりとお互いの服を脱がしていく。
最後に残った苺パンツ――真中君の手がそっと触れ、ゆっくりと滑り落ちていく。胸が高鳴るのを感じる。
「……東城……。」
彼が優しく私の名前を呼ぶ。
「……うん……。」
私は小さく頷き、そして、彼に身を委ねた。
私達は、互いの体温を確かめるように触れ合い、何度も唇を重ねた。
そして、その夜――私たちは、初めて一つになった。
(ああ……これで真中君の隣には……私だけ……。)
――そう、東城は思っていた。
* * * *
ブーン、ブーン、ブーン、ピッ♪
「ああ、■■か?」
男の低く落ち着いた声が、静かな部屋に響く。
「今夜、俺のアパートに来いよ。」
「……■■、■■■■■■■?」
電話の向こうで、期待に満ちた声が微かに震えている。
「いいから、苺パンツ、履いてこいよw」
一瞬の沈黙。
「……■■■■、■■■■■■■■■■■■♡」
甘い笑い声が受話器越しに響く。
「今夜は、苺パーティーだ。」
「……■■、■■■■■■■♡」
ピッ♪
通話が切れる。
カーテンの隙間から夜の街を見下ろしながら、男はゆっくりと口元をゆるめた。
――苺たちの物語は、まだ終わらない。
To Be Continued?
ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました!
今回のSS、楽しんでいただけましたでしょうか?
さて、この物語を振り返ると、実は、一連の黒幕は 東城綾 だったようです……。
表向きは純粋で恥ずかしがり屋な彼女が、チャラ男を巻き込みながら、次々とライバルたちを排除し、最終的には真中の隣を勝ち取っていくというものだったようです……。
この物語は一旦ここで一区切りとなりますが、もしかしたら、もう少しだけ続くかもしれません。
もし続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひ、投票・コメント頂けると幸いです。
ではでは~。