こちらはpixivで投稿していたネタをハーメルンさんでも投稿してみてもらおうと思った者です。
一応pixivに追いつくまでは週一で投稿しようと思います。
ネタはAngel!Beats!と艦隊これくしょん、さらに多数ネタのごった煮です。
他作品キャラも同じ世界に搭乗しますので、それらを受け入れられる方にお勧めです。
また、予め断っておきますがR-18であるものの本格的な戦闘場面などの描写もあるため、エロがない回もあります。
技術、兵器に関して言及するネタもあります。
それも好きという方は読んでくださると嬉しいです。
注意!
○ この物語はブラウザ版とアーケード版の設定が混同した状態になっています。
○ なお、オリジナル艦娘が多数登場します。
○ 本来出現しない海域に出現する艦娘もいます。
○ この世界独特のやり方・ルールがありますのでご注意。
○ 初期艦が駆逐艦ではありません。
○ 戦闘場面以外では音無が艦娘たちと滅茶苦茶イチャつきます。
音無結弦は、深い深い水の底にいるような感覚を味わっていた。
「ごぼっ……」
彼が見上げた先には、プラチナブロンドと言いたくなるような綺麗な銀髪の少女が見えていた。
「かな……で……」
かなでと呼ばれた少女は音無の方を見ると、寂しそうな笑顔を見せた。
『ごめんなさい結弦。私、行かなくちゃ……』
「待ってくれ……行かないでくれ……行かないで……かなで……」
だが、彼女は背中に真っ白な翼を生やすと、そのまま音無を残して水の外へと飛び出して行ってしまった。
「待って!待ってくれ!」
必死に彼女を追いかけようと水を掻くが、かなでは空へと舞い上がり、もう追いつけない。
「かなでッ‼」
その時、音無は不意に目を覚ました。
先ほどまで鉛のように感じていた手足は普通に動く。
そんな状況が呑み込めないままポカンとしてしまう音無。
「あ、やっと目が覚めたみたいね」
よく言えば元気な、悪く言えば生意気そうな、聞き覚えのある声に顔を動かす。
「……ゆり?」
「そ。死んだ世界戦線のリーダー、仲村ゆり様よ」
悪戯っぽくウインクしながらのたまうその姿は、正しく『死後の世界』で一緒に戦っていた少女、仲村ゆりのものであった。
「え……俺たち、成仏したんじゃ?」
「……それについて詳しく説明するから、まずこれに着替えなさい」
渡されたのは、かつて戦線メンバーとして着ていた制服であった。
成仏する直前まではずっと着ていたはずなのに、なぜか妙に懐かしく感じる。
「さ、ちゃっちゃと着替えなさい」
ゆりは外へ出ると、ゆっくりと扉を閉める。
音無は彼女についていくしかないと思いつつ急いで着替え始めた。
数分後、音無が扉を開けるとゆりが壁にもたれかかりながら立って待っていた。
「終わったわね?じゃ、行くわよ」
2人は連れ立って狭い廊下を歩き始めた。
「なぁ、ここはどこなんだ?」
「そうね……船の中、とだけ言っておくわ。皆にもこれから説明するから」
「皆って……まさか!」
「そう。戦線の皆よ」
どうやら、生きていた時代が違うはずの戦線メンバーも一緒にいるらしいと聞いて、ますます混乱する音無であった。
ゆりが扉を開けると、一気に『潮風』が吹き込んできた。
外へ出ると、真っ青な海が一面に広がっていた。
「……ここが天国なのか?」
「まさか。どっちかと言えば地獄よ」
ずんずん歩いていくゆりに続いて音無も歩き続ける。
やがて2人は大きな扉の前に立つと、ゆりが扉を開けて音無に中へ入るように促す。
音無は緊張しつつ中へ入った。そこには……
「あっ!音無君!」
「やっと目覚ましやがったか」
「ふん。一生目覚めなくともよかったがな」
「いいじゃないですか。彼も大事なメンバーですよ」
「うむ。その通りだな」
「Come On Baby!For‼」
そして、黒い学生服に身を包んだ中性的な男子生徒と、真っ青に染めた髪の男子生徒が前に立った。
「お待ちしてました、音無さん」
「よっ。待ちくたびれたぜ、親友」
それは、音無が騒がしくも楽しい日々を過ごした『死んだ世界戦線』の幹部たちであった。
「大山……藤巻……野田……高松……松下五段……TK……直井……日向」
「野郎だけじゃねえぞ」
凛々しくも荒々しい女性の声に首を向けると、真っ白なセーラー服に身を包んだ女子生徒たちが座っている。
「岩沢、ひさ子、入江、関根、遊佐、椎名……」
「そんなに呆けてもしかたないだろ?」
「浅はかなり」
「っていうか、あたしを無視すんなゴラァ!」
女子生徒の中で特に目立っていながら、音無に名前を呼ばれなかった少女・ユイが奇声を上げた。
「いや、悪い悪い。ちゃんと動ける体みたいだから、ちょっと試したくなって」
そんな、当たり前になっていた彼らの声が再び聴けたことに、思わず涙を流してしまった。
だが、同時に気づく。
「あれ……?かなでは?」
ゆりが音無の前に立つと、音無の両肩に手を当てた。
「心して聞きなさい。私たちはね、転生したの」
「……転生?」
妹の初音に買っていったことのある漫画雑誌にもそういったネタが出ていたため、知らないわけではない。だが、まさか自分たちがそんなことになるとは思っていなかった。
「私たちは『神』によって、かなでちゃんを除く全員が転生させられたの。この世界を救うためにね」
「待ってくれ、かなで以外ってどういうことだ?」
「……かなでちゃんはね、あの世界で皆のために働いていたという功績から、今度は本当に神の使者として、別の世界を救わなければいけなくなったの」
驚愕の事実。
ゆりたちに理解されずに、それでも不器用ながら頑張っていたことで、かなでは本当に『天使』に昇格したということらしい。
「でもね。だからこそ私たちと一緒に来ることはできなかった。神の手を加える必要がある世界へ行くために……」
「そんな……」
ゆりは音無の肩から手を放さずに続ける。
「でもね。私たちにもチャンスが与えられたわ。それが、この世界を救うこと」
「この世界を救う……そうすれば、かなでのところに行けるのか?」
「別れる直前に『神』から聞いた話が正しければ、だけどね」
ゆり曰く、『神』とはいわゆる高次元生命体というべき存在らしく、普通の人間では認識のできない世界の住人なのだという。
場合によっては世界に介入し、世界の平和や均衡を保つのだという。
時には、神の名前と存在をかけて国ごと世界を移動させることもあるとか。
「でね。かなでちゃんは神にこそなれないけど、神の眷属としてその世界を救うために遣わされることになったの。私たちは……残念だけど、その域には至っていないみたい」
ゆりの言い方から、ゆりもかなでもかなり苦しい思いをしたのだということは分かった。
だが、音無としてはそれで全て納得できたわけではない。
「そんな……そんなことって……」
「それにね。もう1つ理由があるの」
「え……?」
「あなたよ」
意味が分からず、思わず音無は首を傾げてしまう。
「かなでちゃんから聞いたわ。彼女の心臓、あなたから移植されたんですってね」
「あ、あぁ」
「つまり、『本来の心臓の持ち主』と『移植された人物』を生かして存在させるということは高次元生命体の摂理法則から行くと難しい話らしい、ということだそうよ」
「たとえ天使になっても、か?」
「らしいわ」
苦々しげなゆりの言葉に、今度はなぜか納得してしまう音無であった。
自分の心臓は間違いなく脈打っている。かなでが人でなくなっていたとしても、同じ心臓をこの世に2つ存在させるわけにはいかないということなのだろう。
心臓には『魂』が宿っているとも言われており、音無自身死後の世界に落とされた際には記憶を失っていたが、かなでの心臓の音……すなわち元を辿れば自分の心臓の音を聞いたことで記憶を取り戻したということがあった。
つまり、それだけ密接にかかわっているものを介した人間を同次元に存在させられない、神にしか分からない理由があるということなのだろう。
ならば、音無にとってやることは1つだった。
「この世界を救うと言ったが、俺たちはなにをすればいい?」
ゆりは『待ってました』と言わんばかりに表情を緩めた。
「この世界はね、神が介入するほどじゃないけど危機的状況にあるの。『深海棲艦』の跋扈によってね」
「深海棲艦?」
「それについては俺が説明しよう」
野太い声と共に、戦線メンバーから出てきたのは、ツナギに髭面のいかつい男だった。
「チャー!お前も来てたのか!」
「まぁな。ま、どうやら俺たちギルドの力も必要らしい」
彼こそ、死んだ世界戦線の武器一切の開発を任されていた青年、チャーである。よく見ると、後ろには白いシャツに麦わら帽子を被った青年、釣り名人として紹介された斎藤の姿もある。その後ろにも、音無が一度だけ経験した地下降下作戦の時に顔を合わせた武器開発班『ギルド』のメンバーが揃っている。
「ま、それはともかくだ。深海棲艦ってのはな、本来ならゲームの敵キャラなんだ」
「ゲーム?」
「やっぱり知らないみたいだな。俺が生きていた時代には『艦隊これくしょん』ってゲームが存在していてな。かつて存在していた軍艦の魂を持った女性たち『艦娘』と共に、『深海棲艦』と呼ばれる怪物と戦って人類の生存圏を奪い返すゲームだ」
「それが実際に存在する世界、ってことか……」
「ま、そう思ってくれて構わねえよ。『提督』となったプレイヤーが艦娘を従えて指揮を執り、深海棲艦と戦うんだ」
「ちょっと待ってくれ。じゃあ俺たちはその『提督』になって戦艦を指揮して戦うのか?」
「戦艦だけじゃない。巡洋艦、駆逐艦、航空母艦、潜水艦、その他の特務艦艇。それらの全てを用いて、だ」
音無は正直言って軍艦は戦艦くらいしか知らないため、チャーの説明をしっかり聞く必要がありそうだと直感していた。
「音無はもちろんだが、ほとんどの連中は軍艦の種別について知らねえだろう。一応ここでレクチャーを……」
その時、『ドドン!』という音と共に船が大きく揺れた。
「なんだ?なにかぶつかったのか?」
すると、船員らしい男性が音無たちのいる大ホールに飛び込んできた。
「大変です!深海棲艦の襲撃です!哨戒中の駆逐艦2隻に見つかった模様‼」
「なんですって!?」
ゆりと音無、そしてチャーと日向が外へ出ると、目の前の海に黒い『なにか』がいた。
「あれが……深海棲艦か!」
「形状から察するに『駆逐イ級』だな。それも初期型の……哨戒中だってのは間違いないらしい」
「いや冷静に解説してる場合じゃねーだろー‼」
日向のツッコミに珍しく直井が頷いていた。
「貴様に同意するのも癪だが、敵がいくら小さいと言っても攻撃を受け続ければマズいぞ?」
実際、既に船の一部に穴が開いている。
「どうする?反撃するのか?」
「残念だけどこの船はただの輸送船だから、装備なんてロクにありゃしないわよ」
「じゃどーすんだよ!?」
そう言っている間にも駆逐イ級が次の一撃を放とうとした……その時だった。
――ドガァンッ!
炸裂音と共に駆逐イ級が1隻、大きく態勢を崩した。
「なんだ?」
全員で周囲を見渡すと、ゆりが『あそこ!』と言って指さした。
そちらには太陽が見える。
そして、その太陽を背にしながら、2人の女性が水の上を『滑って』いた。
「チャー、もしかしてあれが……」
「あぁ。艦娘だ」
2人の艦娘は水面を滑走しながら砲撃を行い、大破して動きが鈍くなったイ級1隻はあっという間に沈んだのだが、もう1隻がちょこまかと動き回って中々砲撃が当たらない。
「あいつ……結構早いな」
「駆逐艦だからな。速度がウリなのは事実だが……それにしても当たらねえな。練度低いのか?」
「練度?」
「いわゆるレベルだな。それが上がることで艦娘そのものの能力が徐々に向上するんだが……あの水上機母艦」
「水上機母艦?」
ゆりの疑問にチャーが頷く。
「あいつらは……水上偵察機を搭載可能で、駆逐艦並みの火力を持ち合わせている艦だが……まだ初期型だな」
すると、船員が小銃を持ち出してきた。
「あんなのあるのか!?」
「九九式小銃。旧日本軍が使用していた主力銃の一角だな。変なところを太平洋戦争に合わせてきたな……」
次々銃弾を発射しているが、まるで当たる気配がない。
「ったく、素人丸出しじゃねえか」
すると、それを見ていた音無がいきなり船員から小銃を奪い取った。
「音無君!?」
すると、音無はなにかに吸い寄せられるようにイ級を狙い、引き金を引いた。
――ガァン!――
――ギャァッ!?
銃弾が命中したイ級は先ほど轟沈したイ級同様に態勢を崩した。
そこに、先ほどの水上機母艦の放った砲弾が命中した。
――ギャアアアアアアアアァァァァッ……
駆逐イ級2隻は轟沈すると、2人の艦娘は音無の方を見た。
2人は音無に敬礼すると、再び太陽の方へと向かって走り去っていった。
「あれが……艦娘」
「それにしても音無君、よく半分水没しているような深海棲艦に当てたわね……」
「いや、無我夢中で……でも、そんなに驚くことか?」
音無は思わず頬を掻くが、ゆりは実際に驚いていた。
「そりゃ驚くわよ。あんな動きをする相手に小銃弾を当てるとか、人間業じゃないわよ……」
「いや、今まで人間離れした能力のかなでとやり合い続けていたんだぞ。人間業じゃないって今更な気がするんだが……」
即答した音無の返事に、ゆりは続けて発言することもできず船の中へ戻った。戦闘が終了すると、船はゆっくり進む。目的地へと向かって……。
再び船内に戻ると、チャーが改めて解説を始めてくれた。
「んじゃ、色々説明するが……まずは戦艦だな。どんなイメージ持ってる?」
音無が手を上げる。
「大和とか長門とか、でっかい大砲を搭載していて装甲が分厚い船、ってイメージだな」
「ま、それで大体合ってる。そもそも戦艦ってのは『大口径砲を搭載し、自分の主砲と同じ口径の大砲の砲撃に耐えられる』想定の装甲を張り巡らせてある船のことだ」
「じゃ、やっぱり強いのか?」
「まぁ強いが……第二次世界大戦開戦時はともかく、日本とアメリカの戦いになった太平洋戦争の時には航空機が主力になっちまったから、一部を除いてほとんど活躍の場はなかったんだけどな」
「そうなのか?」
「あぁ。日本が真珠湾攻撃で航空母艦と航空攻撃を有効活用したことがきっかけで、世界は一気に航空主兵主義に傾いた。もっとも、日本は『空母機動部隊に随伴できる速力』がある高速戦艦以外は傷つくのを恐れるあまり、戦況が悪くなるまでほとんど実戦に出なかったって言う話があってな……」
「傷つくことが前提なのに?」
「まあ、ただでさえ連合軍……特にアメリカと数の差は著しかったからな。少しでも戦力を温存しておきたかったのかもしれない。それはともかく、艦これにおける戦艦は『大火力』、『重装甲』、『長射程』が主な特徴の船だ。一部を除いて大半は速力が遅いのも特徴だな」
「なるほどな。大体分かった。高速戦艦ってのが足の速い戦艦か?」
「そうだな。その代わり装甲は他の戦艦に比べると薄めだが、攻撃をかわしやすくなる」
「他には?」
「次は重巡洋艦だな。こいつは元々日本が様々な軍縮条約を逃れるために世界で初めて生み出した艦種で、かつては装甲巡洋艦と言われた存在の発展型でもあった」
「ふむふむ」
「重巡は軽巡洋艦に比べると速力と回避力が低い代わりに軽巡に砲力と雷撃力、そして射程で優っている船だ。まぁ艦これでは基本的に射程が『短』、『中』、『長』、『超長』の四種類に分かれるが……巡洋艦は皆同じ射程のくくりと考えていい」
「そっか。そんな風に思えばいいのか」
「戦艦に比べると足が早いからな……夜戦の際とか、雷撃力が乗る一部では戦艦を超える火力を出すことも可能だ」
これが艦これの特徴の1つ、『夜戦数値』である。
「同じく軽巡洋艦や駆逐艦にもこれは適用される。続けてそのまま軽巡の説明に入るが……こいつは防護巡洋艦から進化した艦種なんだが……ま、要するに『駆逐艦より硬くて砲撃力に優れる』代わりに、『駆逐艦より遅く重巡より攻撃力が低め』な船だな」
「なるほど……編成をする際はちゃんと考える必要がありそうだな」
理解の早い音無にチャーもニヤリと笑う。
「で、駆逐艦はとにかく速いが装甲は紙だし砲撃力もしょっぱい。だが、その分夜戦の際には雷装値が乗って火力が大幅に上がるし、高い速力を生かして相手の攻撃をかわしまくるという戦法も可能だ」
「他の艦にはあまりできなさそうなこともできる、か」
「場合によっちゃ、駆逐艦をメインにして進まなきゃならない海域もあるはずだから、一見弱そうでもちゃんと育てておくことを勧めるぜ」
「あぁ。その通りだな」
続けてメモをめくる。
「次は航空母艦、一般的には空母と略される艦種だ。まぁ何をする船かくらいは知っていると思うが……」
「えぇっと、飛行機を飛ばして航空戦闘したり、急降下爆撃や雷撃をしたりする……だっけ?」
「あぁ。艦これでは敵の艦載機を撃墜し、航空優勢を取ることによって戦況が変わることが多い。航空優勢以上を取れれば、戦艦や巡洋艦などが偵察機を飛ばして『弾着観測射撃』を行うこともできるし、航空母艦からも艦上攻撃機や艦上偵察機が飛び立って触接することで航空攻撃の威力や命中精度を上げることも可能だ」
「なるほど。空を制する者が戦場を制するってことか」
そういっても過言ではない。現代戦闘における最重要課題でもある。
「あとはちょっと特殊なものが多いが……潜水艦はどうだ?」
「潜水艦って海の中に潜って魚雷を発射するあれか?」
「あぁ。装甲値は低いが水中にいるせいで攻撃はほとんど当たらないという特徴があってな。回避率はとても高い。だが速度は遅めだ。それをカバーしながら戦う必要はあるが、上手く攻撃すれば昼の戦いの時点で夜戦雷撃並みの威力をたたき出すことも可能だ」
「おぉ!」
「だが航空攻撃には弱いから、その点は注意が必要だな」
実際、第二次世界大戦時における潜水艦の最大の敵は航空機であった。低速の練習機でさえ、小型爆雷などを搭載すれば立派な対潜哨戒機に変貌するのだ。
「他にはさっき俺たちを助けてくれた水上機母艦、潜水艦のサポートをする潜水母艦、艦船の修理を専門とする工作艦、食料補給を行う給糧艦。特殊という意味では護衛空母や揚陸艦なんかもあるが……まぁ、ここからはちょっとマニアックな分野だからな。もし出会ったら説明しよう」
その時、船の汽笛が船内に鳴り響く。
『まもなく、本船は南方、タウイタウイ島鎮守府に到着いたします。乗船されている方は下船の準備をお願いいたします』
「ほら、荷物まとめなさい!もう降りるわよ‼」
ゆりの一声を合図に、皆が荷物をまとめだす。
船の外へ出てみると、北国出身の音無からすると異常に感じられる熱気と湿度が『ぶわっ』と押し寄せてきた。
ゆりたちに続いて船を降りると、そこには大きな港があった。
だが、港のあちこちはボロボロで、音無たちが乗っていた中型客船でようやく停泊できるかどうかという雰囲気である。
「こりゃ……ヒデェ」
「廃墟寸前じゃねえか」
藤巻と日向の言葉に同意しながら音無が周囲を見渡していると、セーラー服のような服を着て、眼鏡をかけた女性の姿が目に入った。
「誰だ?」
「あれは……」
チャーと竹山はわかるようだが、他の面々は彼女が何者だか分かっていない。
すると、女性と音無の視線が合い、ゆっくりと近づいてきた。よく見てみれば、あちこちに包帯が巻かれている。皆の前に立ち姿勢を整えると、一礼して顔を上げた。
「死んだ世界戦線の皆様、お待ちしておりました。当鎮守府広報担当の大淀と申します」
「大淀?川みたいな名前だな?」
「実際そうだ。日本では軽巡洋艦には川の名前を付けるのが習慣になっていてな」
「じゃあ、彼女も?」
「ああ、紛れもない艦娘だ。繰り返しになるが、川の名前を付けるのが軽巡洋艦だ。天龍川、長良川、球磨川、川内川などだな。中には軽巡から重巡に転向した奴もいるから、重巡なのに川の名前を持つ奴もいるけどな」
「へー……」
大淀は改めて自己紹介をする。
「改めまして。私は大淀型軽巡洋艦の大淀と申します。当鎮守府において広報を担当させていただきます」
音無が大淀の仕草を見て思ったのは、色々なことを誠実にこなす真面目な学級委員という印象だった。すると、チャーが横から口をはさんだ。
「それより、この鎮守府は随分とボロボロだが……なにがあったんだ?」
大淀は若干言い辛そうにしながらも口を開く。
「実は……この鎮守府は、少し前まで別の提督がおられました。最盛期には400を超える艦娘を抱える一大泊地とも言われていました。ですが……」
大淀は『グッ』と唇を噛み締める。
「1千を超える深海棲艦の大攻勢を受け、ほとんどの艦娘が轟沈、私を含めて一部は艤装の全てを放棄せざるを得ない状況にまで追い込まれたのです」
その苦しそうな顔を見て、松下五段も会話に加わる。
「では、ここに艦娘は……」
「戦闘可能な艦娘は2人のみです。しかも、戦闘可能艦娘が残っていることから大本営から初期艦の派遣を見送られるという状態です……」
チャーが『そういうことか』と呟いた。チャーの一言に大山が尋ねる。
「どういうこと?」
「さっき俺たちを助けてくれた艦娘。恐らくあれが残存戦闘可能艦娘だ」
「えっ、じゃああの子たちが俺たちの指揮下に入るってことか?」
「はい。仰る通りです。艤装さえあれば私も参加できるのですが……」
お世辞にも大淀の傷の具合から戦場に出られるとは思えない音無だった。すると、音無が大淀の肩を掴んで言った。
「そんな体のやつに無理しろなんて言えるかよ。無理をするなら、『できる状態』にまで回復してもらわないとダメだ」
すると、大淀は軽く目を見開き、一瞬で穏やかな表情を見せた。その緊張が解けた顔は、挨拶をした時より穏やかだった。
「ありがとうございます。そのお言葉、とても嬉しく思います。『提督』」
「あぁ、そりゃ仲間になるんだし心配するのは当然……提督?」
皆の視線が音無に集中した。
「はい。大本営より、新しく提督に着任する人物は『音無結弦』であると伺っております。音無様でお間違いないですよね?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!確かに俺が音無だが……俺が、提督⁉」
「はい。他にも補佐として仲村ゆりさん、日向秀樹さん、直井礼人さん、そして岩沢まさみさんが任命されております」
つまり、本命は音無だが、そのサポートとして日向やゆりがいるということらしい。突然自分が指揮官になるということを聞かされて、音無は動揺を隠せないでいる。しかし、肩にポンと置かれたゆりの手を見て、今自分が大淀に動揺を見せるべきではないと即決した。
「……疑問は色々あるが、決まっているっていうなら仕方ないな。ひとまず、この鎮守府を案内してくれないか?」
「はい、了解いたしました」
メンバーが大淀についていこうとするが、大淀は我慢をしているらしく、少しよろついている。すると、見兼ねたひさ子が前に出て、大淀の左腕を抱えた。
「音無も言っただろ、怪我人が無理をしたら却って困るって。あたしはひさ子、岩沢の相棒だ。よろしくな」
「……恐れ入ります、ひさ子さん」
ひさ子の気遣いに感謝を述べて、大淀はゆっくり歩き出した。最初に音無たちの目に入ったのは、少し海から離れているが港湾を一望できるレンガ造りのボロボロな建物だ。
「ここが鎮守府の本部になります。提督の執務室や発令所があり、艦娘の指揮を執ります」
「本当に昭和初期の建物って感じだな……」
「いかにも海軍の建物って風情だぜ」
ミリタリーに詳しいチャーからすれば面白くて仕方のないものである。
付近にはほかにも多くの建物が見える。
「一番大きな建物が駆逐艦寮、隣が軽巡洋艦寮、その隣が重巡洋艦寮、さらに戦艦、空母、潜水艦、特務艦の寮となっています」
「おぉ、あちこちボロボロとは言っても、このたくさんの建物は壮観だな」
「さらに、提督及び労働者のための寮もあります。この島では鉄鉱石とボーキサイトが産出するので、それらの採掘のための人々が寝泊まりする設備があります」
「鉄鉱石とボーキサイト……チャー、役に立つのか?」
「あぁ。鉄鉱石は艦娘を建造する『鋼材』に、ボーキサイトは空母を含めた航空関係の開発に大きく関わる素材、アルミニウムの原料だよ」
「あ、そうなんだ」
「それらが産出する島ってだけでも、この島の価値が窺えるな」
「俺たちの世界のタウイタウイ島じゃそんなもの産出しないはずなんだが……『この世界』では出てくるみたいだな」
本来の艦隊これくしょんであればお金で資源として『燃料』、『弾薬』、『鋼材』、『ボーキサイト』を購入するのだが、この島ではその内2つ、しかも艦娘を形作るのに特に重要な2つが産出するというのである。これだけでも艦娘と装備を整えやすいことになる。
さらに真っ白な建物を大淀が指差した。
「あちらが入渠棟となっています。傷ついた艦娘はあちらで回復します」
「今は誰かいるのか?」
「はい。先程までは私がいました。それ以外にも工作艦の明石さんがいます。後は、戦闘不能という意味では間宮さんと伊良湖さんが」
「間宮も伊良子も給糧艦だな。役割としては艦娘たちに飯を作るのが役目だ」
いわゆるおさんどんということだ。
続いて案内されたのは道具が多数おいてある場所であった。よく見れば、小人のような人々が動いている。
「こちらが工廠担当の妖精さんです。艦娘の建造や装備の開発をしてくれます」
『コンニチワ』
妖精さんが挨拶してきたので、音無も『や、やぁ』と返した。
横を見ると、チャーと斎藤が目を輝かせていた。
「音無、俺と斎藤はここの担当に決定だな」
「あ、うん。ソウデスネ」
死後の世界でもギルドを立ち上げてあれこれやっていたチャーである。ミリタリー関連についてはお手の物だろう。
そんなチャーについていた斎藤も、類友という奴だ。
大淀は『え?え?』と疑問符を浮かべているが、戦線メンバーは苦笑いだ。
これらが鎮守府及びその周辺施設ということらしい。最初に案内された鎮守府に移動すると、執務室と書かれた大きな扉の前に立ち、動き辛い大淀に代わって直井が扉を開ける。
そこには、死後の世界でゆりが司令塔として占拠していた校長室並みのスペースの大きな部屋が広がっていた。窓際には大きな机があり、どうやらそこが音無の席らしい。
音無が机の前に立つと、大淀ができる限り姿勢を伸ばして口を開く。
「では最後に、現在戦闘可能な艦娘を紹介いたします。どうぞ」
大淀の言葉に応ずるかのように2人の女性が姿を見せた。
1人は銀髪ボブカット、もう1人は茶髪のロングヘア―だ。
「千歳です。日本では初の水上機母艦なのよ。よろしくね」
「水上機母艦、千代田です。姉の千歳が、いつも迷惑かけてないですか?」
水上機を多数運用できる船だが、給油艦として重油を他の艦に補給もできる存在である。
これが、音無率いる『SSS鎮守府』の始まりであった。
このような形で始動した音無たちのSSS鎮守府。
果たしてどうなるか、お楽しみください。