空母棲姫ⅡがIntrepidに変化した日のこと。
「というわけで、今日からウチに着任することになったアメリカの正規空母、Intrepidだ。皆も仲良くしてやってくれ」
「「「……え!?」」」
「「「あぁ~……」」」
音無がIntrepidのことを皆に紹介した時、艦娘の中でもアメリ艦娘は薄々気付いていたようだったが、それ以外のほとんどの艦娘は唖然としていた。
強いて言えば、戦後復員船を始めとして様々な方面で活躍していた一部の艦娘は『あぁ~』と納得していたのだが。
しかし、皆が驚くのも当然と言えば当然だろう。
戦線メンバーではチャーだけが前世の知識から深海棲艦の正体にも感づいていたようだが、元々『この世界』ではまだ出現したことがなかったため、誰もその正体に気付けなかったのだ。
とにかく仲間が増えたこと……しかも高い能力を持つ航空母艦が来たということ自体は大変喜ばしかった。
強いて言えば大型正規空母(しかも大戦後期に作られた、当時としては超大型の空母)故に資材・資源の消耗量はかなり多いものの、大和型戦艦よりははるかにマシ、ということもあってそれほど気にする者はいなかった。
だが、問題はそこではなかった。
とにかく、着任当初からIntrepidと音無の距離が近いのだ。
まずなんと言っても、彼女は着任してからなにかにつけて音無の側にいるのだ。執務中でも休憩中でも、食事中でも、ほとんどの時間を音無の側で過ごしている。
「ンフフ、Honey♡」
秘書艦は別にちゃんといるにもかかわらず、彼女はニコニコしながら音無の傍らに立っており、時折後ろから爆乳を頭に押し当てるようなこともするのだ。
そのため、この日の秘書艦を務めているBismarckもかなり苦々しげな顔をしている。
元々真面目な性格のもそうだが、あまりに距離感に関して度が過ぎるIntrepidの態度に腹を立てているようだ。
「ねぇ、Admiral。彼女はその……Admiralに対して妙にベタベタし過ぎじゃないの?いくらアメリカ出身と言っても、この距離感は色々とおかしいでしょ」
「えぇと、まぁ、そうかもな」
一方の音無もなぜか、あまり歯切れがよくない対応なのである。
普通ならば艦娘同士の調和も気にする音無にしては、かなり珍しい態度であった。
一方でIntrepidはまだ着任したばかりということで実戦には出ずに演習に加わっているのだが、空母艦娘の多くが演習で使用している零式艦戦シリーズや紫電改二では、熟練度が高まっていないはずのヘルキャットにすら置いて行かれる始末であった。
「Intrepid Squadron,Attack!」
チャーが開発した『Aー1(中期型)』を装備しようものならば、尋常ではない戦闘力を発揮する結果を見せつけた。
Essex級は最初から油圧式カタパルトを装備していたこともあってAvengerやSkyRaiderのような重量級艦載機でも発艦させられるのが特徴だ。
アメリカは護衛空母を含めたほぼ全ての航空母艦に油圧式カタパルトを搭載していたため、Casablanca級のような小型航空母艦でさえ(千歳型以下と言えば分かるだろうか)、そんな重量級艦載機も発艦させられるのだ。
日本は火薬式及び圧縮空気式カタパルトについては十分な技術を持っていたのだが、油圧関連の技術は未発達だったこともあって大鳳や信濃などの航空母艦でも最後まで実用化は叶わなかったのだ。
アメリカが様々な重量級航空機(戦闘機・攻撃機問わず)を洋上で平然と運用できたのは、油圧式カタパルトあってのことと言っても過言ではないのだ。
「う、嘘でしょ……」
「強い……」
訓練相手になっていた蒼龍や飛龍が放った『零式艦戦52型(熟練)』や『紫電改二(熟練)』などが、その高速力と7.7mm機銃を受け付けない頑丈さ、そしてブローニングM2の弾丸の前に呆気なく撃墜判定を出させられてしまう程だった。
赤城や加賀の放つ『烈風改二(熟練)』であれば運動性能でなんとか拮抗し、『震電改』であればようやく追い抜けるという能力差なのである。
これまでもSaratogaがチャーの開発したヘルキャットを使用していたが、Intrepidのそれはロケット弾を積んで戦闘攻撃機と化していたSaratogaのそれと比べるとさらに能力が高いように感じられるほどである。
なお、陸上機まで含めれば単発機ではアメリカ陸軍の『Pー51』ムスタングこそヘルキャットよりも能力が高いのだが、あくまで『艦上機としては』このヘルキャットこそ(実現している航空機としては、の話だが)最強クラスである。
え、ベアキャット?あれは採用されたのが一応戦後なので……。
それを空母艦娘たちはまじまじと見せつけられたような形になったのだ。
「ま、まさかこれほど強いなんて……ちょっと驚きです」
「うぅ~……飛行甲板に被弾しなかっただけいいけどぉ~……」
結局機体の性能差を覆してまで互角に戦えたものと言えば、鳳翔の『九六式艦戦改二(超・熟練)』だけだったのだ。
赤城や加賀などの一航戦の精鋭たちでさえ、先ほど言ったように拮抗するのがやっとだったのだ。
「よりにもよって鳳翔さんの九六式艦戦だけが互角だなんて……栄えある一航戦としては正直ショックです」
演習とは言え自身の零式艦戦52型(熟練)が敗れたことで珍しく落ち込む加賀に、こちらも珍しく鳳翔が慰めの声をかけたのだった。
「まぁ、うまく低空へ誘い込めたからですよ。まだあの人が戦い慣れていないからできた芸当ですね。もっと練度を上げていたら、そして実戦慣れしていたらあぁはいきませんでしたから」
本来九六式艦戦の7.7mm機銃では『グラマン鉄工所』の異名を持つ頑丈なヘルキャットに撃墜判定を出すなどというのはとてもではないが難行のはずである。
だが鳳翔の九六式艦戦部隊は驚くべきことにひらひらふわふわと蝶のように宙を舞いながらエンジンカウリングや翼のパーツの接合部など、普通の人間ならば当てられそうにない箇所に命中させてみせるのだ。
そもそも低空に誘い込んで機銃を当てるだけでも大変なはずなのだが、それをやってのける辺りが鳳翔の九六式艦戦部隊と言ったところか。
彼らからすれば、『烈風だろうとグラマンだろうと、1対1ならば絶対に叩き落として見せる』とのことらしい。
これは慢心でも奢りでもなく、純粋な『自信』と『経験』から来るのだろう。
ちなみに太平洋戦争中、本来であれば高速力と高高度性能によって一撃離脱に強いはずのPー38『ライトニング』が低空の零式艦戦に誘い込まれて格闘戦に持ち込まれた挙句に呆気なく撃墜されたことから、『ペロッと舐めるように墜とせる』ことから『ペロ八』などと言われたこともあるように、パイロットの能力・精神性次第では優位なはずの能力差も消えてしまうことがあるのだ。
逆に言えば、そんな圧倒的なはずの性能差を覆して互角に戦って見せる鳳翔隊の能力の高さが窺えるという訳である。
それだけに、ほとんどのメンツはあっという間にIntrepidに文句を言えないようになっていた。
そして数少なく文句が言えるはずの千歳や鳳翔も、特にIntrepidに文句を言うようなことがないので余計に言い辛いらしい。
そのため、ある夜に摩耶、鈴谷、神通など古参のメンツが音無の本妻と言うべき立場の千歳と話をしていた。
「なぁ千歳。あの新入りに好き勝手させていいのかよ?いや、昔迅鯨にボロクソやられたアタシが言うのもなんだけどさ……」
「ちょっち鈴谷もイントレピッドさんのあれは、ねぇ~……」
「……まぁ、皆さんもそう思いますよねぇ」
テーブルに座る神通も如月も、榛名やScharnhorstもあまり浮かない顔、そして迅鯨はハイライトの消えた、死んだ魚のような目つきだ。
確かに普段でも秘書艦や側にいる艦娘がベタベタすることはあるのだが、Intrepidのそれはやはり度が過ぎているのだ。
鈴谷も『あててんのよ』をやったことはあるが、それは休憩中の『夜のお誘い』のタイミングだからだ。
瑞鶴も執務中に少しイチャイチャして乳を揉まれたことがあるが、それだって出撃前のカンフル剤のようなものだった。
だが、Intrepidはとにかくなにかにつけてベタベタするのだ。
それもあって皆、今のIntrepidの態度をあまり快く思っていないのだ……深海棲艦に体を弄繰り回された経緯を持つ鹵獲改装組(繰り返すが、迅鯨を除く)を除いて、だが。
「そうね。皆さんの言うことももっともだと思います。でも……これには彼女なりの思いがあるんですよ、きっと」
千歳のどこか嚙み砕いて言い含めるような言い方に、珍しくムッとした様子で神通が言い返した。
「思い、ですか。私たちも提督を思う気持ちでは負けていないつもりです。こんなことを言うと怒られるかもしれませんが……千歳さんにも負けないつもりです」
それに続くように如月たちも言葉を発する。
「そうよぉ~。如月、司令官のためなら例え地獄に落ちてもなんでもするもの~……例え深海棲艦になっても、いずれ司令官の元に帰ってきてみせるわぁ」
「あぁ。俺も同意見だ。ご主人様のためならこの魂の一滴だって全て捧げられるぜ。命を寄越せって言うなら全部差し出してやらぁ」
「そうねぇ~。私も天龍ちゃんと同意見だわ~。提督はそれだけの魅力を持つお方ですからね~」
「あの女狐殺すコロス殺すコロス殺すコロス殺すコロス……」
最後の物騒な呟きは迅鯨のそれである。漆黒の闇のような死んだ魚のような目で先程からずっと呟いているのだ。
これには流石の神通たちもすっかりドン引きだ。
こうなると龍田以上のヤンデレなのだろう……と言いたいところだが行動に移していないだけ『まだマシ』なのだ。
しかし、だからこそ千歳がきちんと言って聞かせなければいけないのだった。
「確かに、Intrepidさんのあの距離感は……私たちを基準にすればですが、少々気安すぎると言ってもいいでしょうね」
「だったらよぉ‼」
「ですが」
その後に続けた千歳の言葉に全員が固まった。
「Intrepidさんは、ようやく自分を取り戻したんです。どこかで……どこでかは分かりませんが深海棲艦に堕ちて、戦いの果てに仲間も、記憶まで失って……そんな彼女の失意や絶望は、察するに余りあります」
「私たち鹵獲改装組は記憶や記録こそ失っていませんでしたが、身体の自由を奪われていたという意味では深海棲艦に堕ちたも同然でした。それを思えば、今の彼女の感覚も分からないではないです」
加賀の言葉に摩耶たちは首を傾げるが、そこに翔鶴が続けた。
「それにIntrepidさんは、確かに私たちのように前任提督の時から着任していた艦娘ではありません……恐らくですけど。そしてさらに言うなら……深海棲艦の状態とは言え提督の温もりを知り、それを愛おしく思うようになったみたいです」
「それが、どういうこと?」
鈴谷の疑問にさらに翔鶴が続けた。
「彼女にとって、ある意味かつての記憶を持つ私たち以上に提督は唯一頼れる存在、なのかもしれません。だから提督ともっと距離を縮めたい、もっとくっついていたい……そんなことを思っているのかもしれません。合っているでしょうか、千歳さん?」
「えぇ。私も翔鶴さんの仮説で正しいと思います。きっと……彼女は1人でずっと行動していました。提督から聞きましたが、銭形提督が彼女と交戦したのは彼女がこのタウイタウイ島に流れ着く1か月近く前だったそうです」
その『時間』の長さに一同は目を丸くした。
「は、1か月近く!?そ、そんなに長い間漂流してやがったのかよ‼」
「そんな長期間を、たった1人ぼっちで……?」
神通が口に手を当てて自分の感じた恐ろしさを表現しているが、他のメンツも大なり小なり同じ感覚のようだった。
あの迅鯨でさえ、明らかに顔色を変えていた。
「そう。だからこそ、Intrepidさんにとって自分に向き合ってくれた提督の存在はなによりも重要なんです。でも、提督の周りには既に私たちがいます。少なくとも……彼女だけを見ていられないくらいの数の女が」
「そ、それは……確かにそうかもしれねぇな」
その女たちだって一癖も二癖もある者たちばかりなのだ。
鹵獲改装組を筆頭に隷属願望を持つ(持つというよりは持ってしまったと言うべきか)天龍やドSでシスコンでヤンデレの三拍子揃った龍田、緊縛趣味の妙高に所有物願望の大淀、ロリ系ながらエロ担当の如月やギャル系鈴谷、ヤンキー系摩耶などそれだけ見てもかなり個性が強い。
他の艦娘まで見れば、正に綺羅星のごとくなのだ。
「たぶんですけど、Intrepidさん自身がまだ提督に対する自分の『立ち位置』を見いだせていないんだと思うんです。それを求めているからこそ、今は提督に過剰なまでにベタベタしているのではないかと思いますよ」
「立ち位置、ですか……確かに、分からないではないですね」
神通もかつて音無と初めての夜を過ごした時に自分から積極的に攻める姿勢を見せたことがあったが、それだって一種の『立ち位置の模索』であった。
「ですから、恐らくですけど彼女なりの『立ち位置』を見つけられた時には少しは落ち着くと思いますよ……多分ですけど」
「たぶんじゃーん……」
若干千歳も自信なさげなのはご愛嬌と言うところか。
「だが、Admiralはきっとそれにも気付いているんだろうな。だからこそ、あの女に好き勝手させているということだ。違うか、チトセ?」
Scharnhorstの言葉に千歳も『恐らく』と肯定する。
「提督はきっと、Intrepidさんが『自分の立ち位置』を見つけるのを待っているんだと思います。まぁ、その間は皆から睨まれることになるのを覚悟してのことでしょうけど……」
「ま、そういうところかAdmiralらしいな……そんなAdmiralに俺は惚れたんだから、今更あぁだこうだと言えた口じゃねぇかもしれねぇがな」
「確かに、シャルさんの言う通りかもしれませんね……本当に『今更』ということなのでしょうね」
「じゃあ、ちょーっとモヤモヤするけど様子見ってことでおけ?」
「はい。皆さんもどうか、周りの方々に周知をお願いします。特に迅鯨さん、くれぐれも暴挙に出ないでくださいね?」
「やっぱり殺すコロス殺すコロス殺すコロス……」
「じ・ん・げ・い・さん?」
直後、千歳のバックに千手観音が見えた……と傍らにいた摩耶が後に語ったという。
「うっ……わかりました」
結局、迅鯨も不承不承ながら了承したのだった。
その夜、音無は汚野提督に連絡を取っていた。
『なんと。では音無君と一夜を過ごした結果、航空母艦のIntrepidに変貌したというのか』
「はい。あれには私も驚いたのですが……これまでにも前例はあったのでしょうか?」
『あればこんなに驚きはしないさ。まぁ……君のところであればもはやなにが起こっても不思議でないと思うがね』
「ははは……そう言われるとなんだか複雑な気分ですね……今後も同じような例がないとも限らないので、もし深海棲艦が大破状態で漂流、擱座したら確保してみるというのも一つではないかと思います」
『うむ。大本営にはそのように伝えておこう。しかし……君と艦娘が深い関係を持つと、どのようになるのか……色々と興味深いよ』
「自分ではただ一生懸命なつもりなんですけどね。それで少しでも艦娘が救われれば、と思っているんですが……いつの間にか肉体関係を持つようになっていまして……」
『はっはっは。ま、それも君の持ち味なのだろうな。君の艦娘への向き合い方は、きっとそれでいいのだろう』
「そういうもんですかね。ただのスケベ魂がそうさせているんじゃないかなって最近は思いますよ」
自分に呆れている音無だが、そんな彼を見ている汚野はずっと笑っている。
『まぁまぁ。言っただろう?君なりのやり方でいいんだろう。ところで、Intrepidとはこの後どう向き合う気だい?』
一転して真剣な表情の汚野に音無もまた、真剣な表情を見せる。
「あいつは今、自分の在り方というものを模索している最中です。そのせいで俺にベタベタしているせいで、多くの艦娘から睨まれているみたいですけど……」
『ほぉ、ハーレムに寛容な君のところの艦娘たちですら嫉妬するほどか。それは相当にベタベタしているのだなぁ』
「はい。まぁ……ただ、Intrepidに『なって』から既に数日が経過していますが、今の時点で俺に夜這いをかけることもしなければ、俺に夜の相手を申し込んでくることはありません。もしかしたら、俺が声をかけるのを待っているのかもしれないですね」
事実、音無のこれまでの行動を考えれば彼女はむしろ音無から声をかけられるのを待っているのかもしれない。
音無のスタンスが『来るもの拒まず』ということもあって、あまり自分から声をかけることはしない。
それを思えば、確かにIntrepidが音無の方から声をかけるのを待っているという仮説は十分成り立つのである。
「なので、明日はこちらから声をかけてみようと思います。今後のことを考えると、彼女だけという訳にも行きませんから、なんとか他の子とも釣り合いを取れるようにしないといけないとは思います。その辺りも含めてどうしようか、なんですよね……」
『贅沢な悩みだな、はっはっは……あとは君次第だろう。頑張りたまえ、若人よ』
そう言うと汚野は通信を切った。暗転した画面を見ながら、音無もまた汚野の言葉を反芻していた。
「俺次第、か。そうだよな」
通信室を出て談話室へ入ると、噂をしていたIntrepidと千歳が話をしていた。
「あれ、千歳?Intrepidと話をしていたのか?」
「はい。まぁ……色々と思うところもありましたので」
やはり、余裕があるように振る舞っていても千歳もIntrepidに対して嫉妬していたのだろう。
千歳に気を遣わせてしまったことで、音無は強い罪悪感を覚えていた。
「すまない、千歳。俺がもたついていたばっかりにお前にイヤな役を……」
「……あの、なにか勘違いしてませんか?」
「え?」
てっきり千歳がIntrepidに色々問い質していたのではないかと思ったのだが、どうやら違ったようだ。
「Intrepidさんに聞いていたのは、今後提督にどのようなご奉仕をしたいか、ということを中心にいつの間にか提督の魅力を語り合うようになってしまって……」
「話し合うってそっちかよ‼てっきりギスギスしたなにかかと思ったぞ‼」
いかにも音無らしい心配に千歳もおかしくなったのかクスクスと笑う。
「もうっ。私が『この泥棒猫‼』とか『彼に近付かないで!』とか言うとでも思ったんですか?」
「あ、いや、その……さすがにそこまでドラマチックじゃないとは思ってたけど……ま、まぁ、多少は、な」
「でも、そうやって気にかけてくださるだけでも嬉しいです。でも……どっちかというと私より他の皆のことを気にかけてあげてくださいね。特に迅鯨さんなんか、いつIntrepidさんを肉塊ステーキにしてしまうかと冷や冷やしましたから」
「それはガチで悪いことしたな」
確かに、ヤンデレ染みた迅鯨ならそれくらいはやりかねないだろう。それを未然に防いでくれていたというだけでも感謝しかない。
一方のIntrepidはまだこの空気に慣れていないのか、音無と千歳のやり取りにポカンとしている。
「ところで提督。今夜のお相手は決まっているんですか?」
「いや、まだ誰も声をかけて来ないんだ。だからどうしようかと思ってな」
「でしたら、久しぶりにお相手して下さいませんか?正直……私もしばらくぶりに提督とイチャイチャしたいですから♡」
「あ、あぁ。それは構わないけど……」
音無がチラリとIntrepidの方を見ると、千歳が彼女の肩を掴んだ。
「いかがでしょう?Intrepidさんも一緒で」
「……いいのか?」
「えぇ。色々お話ししましたし、彼女の艶姿も見てみたいので♪」
すると、入口の方から視線を感じた。
振り返ると、イタリアの弩級戦艦、Cavourが『じーっ』とこちらを見ているではないか。
背が低く童顔だが、こう見えても歴とした弩級戦艦のおば……BB……失礼、ベテランである……駆逐艦のはずであるFletcherとほぼ同じ体格なのは言ってはいけないお約束。
まぁ、その胸部装甲はまごうことなき戦艦のそれと言えるくらいなのだが。
「提督ぅ。お主、弩級のワシをこーんなに長期間放っておくとはいい度胸してるわねぇ~……いいわ。年寄りだって性欲はあるんだから、私も相手しなさい」
ジト目で言われては音無も『あ、はい』という外ない。
すると、その後ろからさらに別の視線を感じた。誰かと思えば、『ほっほーぅ』と言わんばかりにニヤニヤしている長波の姿があった。
どうでもいいことだが、柱に胸を押し付けているせいで『乳波』と称される彼女の巨乳が『ぐにゅう』と変形しており大変けしからん絵面となっている。
けしからん絵面となっている。大切なことなので2回言いました。
「なぁ~提督ぅ。こーんな色っぽい所見せられて、この長波サマが黙っていると思ってるのか~?夜戦するなら混ぜてもらうよぉ~」
「な、長波まで!?」
「あらら、あっという間に4人が決まりましたね。提督に捧げる生贄を悩む手間が省けました♪」
ニコニコと嬉しそうな千歳に対して音無は『えぇ~……』と若干呆れ気味だ。もう自分の相手をする艦娘を『生贄』と称していることにツッコまなくなっているあたり、感覚が麻痺してきているのかもしれない。
その時、もう1つの談話室の入り口からも視線を感じる。
見れば、真っ白な髪の毛に爆乳レベルの巨乳を持つ、どことなく眠たげな視線の女性……航空母艦の雲龍がこちらを見ていた。
「う、雲龍。どうしたんだ?」
「……これから子作り、するんでしょ?」
「あ、あぁ。そうだけど……」
やはり眠そうな眼つきではあるが、『よし』と心なしか嬉しそうに小さく呟いた。
「私もする」
「お前にそういう欲求があるのが意外だよっ‼」
「私だって女。えっちなことにも普通に興味ある」
余談だが、雲龍を始めとする『大戦後期組』と言うべきメンツの多くは食料や資源が不足する中での粗食に慣れているせいか、体格は割といいのにあまり食事を摂れない、或いは豪華な食事を食べると逆にお腹を壊すなどということを起こすことがある。
だが、このタウイタウイ島では農作物や肉類の多くはオーストラリアから、魚介類は周辺で豊富に採取できる。
そんな事情もあってか、彼女たちも着任当初から豊富な食事にも慣れるようになって、掃討戦や遠征にもよく出されることからお腹が空くようになったらしく食欲も明らかに増していた。
その結果、秋月型は括れた腰に程よいおっぱいとお尻が特徴だったが、その括れが若干なくなり明らかにむっちりした体つきになってきている。
そして雲龍型に関してもやはり食欲が増進しており、着任してから結構な時間が経過した今となってはかなり体形が変化していた。
末娘の葛城は明らかにバストが増量して飛龍並みの大きさになっており、本人もある時測量して『やったっ』ととても喜んでいた。
正直、たらふく食べても全然大きくなる気配のない龍驤や瑞鳳は泣いていい。
「ぶえっくしっ‼」
「へぷちんっ‼」
そして上の姉妹である雲龍と天城はと言えば……ただでさえ『雲乳』、『天城越え』と称されるほどのけしからんおっぱいとお尻がさらに大きくなっており、やはり『むっちむちのバインバイン』という見事な恵体になっていた。
もはや体形のレベルとしては『ぽっちゃり』に近い。
もっとも、ぽっちゃり気味の鹵獲改装組を相手にしていた音無からすればむしろ大好物な方なので問題はないが。
「また人数増えたな……まぁ、今更って気もするけどな」
『ハハハ』と乾いた笑いを浮かべる音無にIntrepidと雲龍は『?』と疑問符を浮かべて、長波やCavourは若干苦笑いしている。
「まぁい~じゃん。提督の状況を見れば、今更5人や10人増えたって大したこっちゃないだろー?」
「まぁ、イイ男というのは女を侍らせるものって相場が決まっているからね。提督ほどの男ともなれば当然でしょ」
元々女好きの国であるイタリア生まれのCavourはハーレムにも寛容らしく、『別にいいだろ』というスタンスのようだ。
「うふふ……これはまた、今夜も忙しくなりそうですね、提督♪」
「……なんだろう。もう逃げられない蜘蛛の巣にでも囚われている気分だよ」
「あら、お嫌でしたか?」
悪戯っぽく聞く千歳だったが、直後腰を掴まれて引き寄せられたかと思うと不意に唇を奪われた。
「!?」
思わぬ不意打ちに硬直していると、音無が舌を割り込ませてくる。千歳も体勢を立て直して舌の『口撃』に反撃する。
「んんっ……んむっ……♡」
Intrepidは唖然として、Cavourは『うおわ‼』と仰天し、長波は『おぅおぅ~』とニヤニヤし、雲龍は『おぉ~』となぜか拍手していた。
1分近くそうしていただろうか。音無が口を離すと、千歳はすっかり顔を真っ赤にして上気させていた。
「もう、提督ぅ……こんなところでおっぱじめる気ですか?」
「ん?お前がいいならそれも悪くないな。ま、今のはさっきの『お嫌ですか』に対するちょっとした返事のつもりだよ」
「返事?」
音無も顔を赤くしながら、そして照れくさそうに頬をかく。
「こんなきれいな蜘蛛たちに捕まって、そんで終いに貪り喰われるなら、それで死んでも本望って思ったってだけのことさ」
「あら、お上手♡」
「提督は本当に女への返しがうまいわねぇ……思わずヘソ下辺りが疼いてしまったわ……この後が楽しみね♡」
「へっへ~。やーっぱウチの提督はこうじゃなくっちゃねぇ~……さっきの不意打ちに対応できる千歳さんも十分スゲェけどなぁ」
「……私も後でいっぱいキス、する」
そしてIntrepidはというと、キラキラと目を輝かせていた。
「Wao、素敵ねぇ‼Honey、ワタシともあとでいっぱい交わりましょぉ~♡」
「やっぱこんなえっちぃ体してるだけあって性欲強いんだねぇ……ま、長波サマも言えた口じゃあねぇかなぁ♡」
そんな姦しい会話を耳に心地よく受け止めながら、音無は風呂場へと向かうのだった。
正直に言って、カブちゃんとか結構話し方という意味でのキャラ掴みづらかった時期がありましたねぇ……可愛くて大好きなのにぃ……
また1週間後!