こちらも資源や修復材の心配をしつつ頑張っております。
今回は邂逅回ですね。またも個性的な子が入ってきます。
開発を終えた音無は皆の演習を見に行ったが、皆鬼気迫る表情でそれぞれにできる演習をこなしているようだ。
砲撃・雷撃・合同の全てで艦娘たちが所狭しと動き回り、練度を上げようと必死に頑張っている。
駆逐艦の子たちはともかく、軽巡以上の艦娘にはフィット砲かフィット副砲のどちらかを装備してやる必要があるため、装備する物に関してはかなり迷う。
だが、一部の軽巡は改二まで改装すると射程距離が中射程から短射程になってしまうため、副砲などで補ってやる必要もある。
幸いチャーが様々な砲を開発してくれることもあって、現在のところ主砲と副砲を合わせればフィット砲には困っていない。
魚雷発射管についても艦娘が持参した装備である程度数を揃えられているため、チャーが開発してくれた酸素魚雷発射管もあれば当面は問題なさそうであった。
そこで、音無はそんな彼らに心の中でエールを送りつつ、掃海艦隊の帰還を待った。
一応ということで警戒のための艦隊だけは出撃させたのである。
見れば、龍田を旗艦とした艦隊が既に帰投していた。
「提督~、お疲れ様です~」
「おぉ、お帰り龍田。どうだった?」
「やっぱり1つの海域を完全に開放したのは大きいですね~。強くても軽巡ホ級しかいませんでした~」
「そうか……ならよかった。お前で最後か?」
「はい~。今日も何人かと出会えましたよ~」
見れば、駆逐艦が多数と、茶髪の元気のなさそうな大柄の女性……見た感じでは欧米人と言える雰囲気の女性が立っていた。
「あの大きい人は?」
「分からないんです~。米国の重巡らしいんですけど、『Indianapolis』っていう艦娘らしいですよ~」
「インディアナポリス……アメリカの艦娘ってことはシャルと同じで『特異点』的に現れた艦娘か?」
そう言いつつ、音無は艦艇図鑑を開いて急いで調べてみた。
「あった。Portland級重巡洋艦の2番艦で……日本に深い関わりのある船?」
すると、チャーとゆりがヒョイと顔を出した。
「お、新しい奴か?」
「あらぁ、またムッチリボインな子が来たじゃないのぉ。夜戦が大変よぉ?」
からかうゆりに対して、チャーは音無が呼んだ『インディアナポリス』に反応した。
「チャー、ここには出ていないんだが、このインディアナポリスってどういう船なんだ?」
すると、チャーがこれまでになく険しい表情を見せた。
「……Indianapolisは、日本に残された傷跡に大きく関わっている。広島に落ちてきた『小さな少年』を運んできた船だ」
「小さな少年……?」
チャーはため息をつきつつさらに続けた。
「別名『LittleBoy』。広島に投下された、原子爆弾の通称さ」
「!」
広島に投下された原爆・『リトルボーイ』。その部品を輸送していた船こそが、『Indianapolis』だったのだ。
そして、Indianapolisにはその帰路にさらなる悲劇が待っていた。
「Indianapolisは帰国の途中、日本の潜水艦『伊58』の雷撃を受けて撃沈されたんだ。それだけなら平時の米軍はすぐに潜水艦や哨戒機を使って発見ができるシステムを構築していたんだが……」
チャーは一口水を飲むと、苦々し気に呟いた。
「Indianapolisはその輸送していた物資の都合上、存在を秘匿されていた。そのため、助かったはずの乗員の多くが浮かび続けることに疲れた者、サメに喰われた者など、様々な形で海に沈んでいってしまったんだ」
「そんな……ことが……」
Indianapolisはその時のことを思い出しているのか、今にも泣きそうだった。
改めてステータスを確認すると、耐久値や火力などは平均的な重巡並みだが、対空と運の数値は日本の重巡に比べると低く、さらに魚雷を搭載していないこともあって雷装値の初期値もゼロという状態であった。
一応数値としては以下となる。
Indianapolis
○ 耐久・41
○ 装甲・32(47)
○ 回避・31(55)
○ 搭載・4
○ 速力・高速
○ 射程・中
○ 火力・40(51)
○ 雷装・0(30)
○ 対空・16(60)
○ 対潜・0
○ 索敵・11(46)
○ 運・5
そして装備は以下となる。
○ 8インチ三連装砲Mk.9(火力+11・対空+1・回避-1)
○ 5インチ単装高角砲(火力+1・対空+4・回避+4)
○ SOC Seagull(爆装+1・対潜+1・命中+2・索敵+4・回避+1)
重巡洋艦としては驚くべきことに、妙高たちと比較してももちろんだが、青葉型や古鷹型に匹敵する弱さである。
「それもこれも、Portland級重巡洋艦が条約型重巡で、復元性などに問題が多かったという点、日本の同時期の重巡と比較すると攻撃力が低かったことなどが由来なんだけどな。姉のPortlandは、色々な戦いに参加しながら戦後まで生き延びていることを考えると、とんでもない差があるというべきだ」
姉のPortlandは激戦の中を終戦まで生き延びたにもかかわらず、自身は地味な活動だった上に終戦間際の、本当に最後の最後に近い時間で、敵の攻撃によって沈んでいるせいか、運の数値も低い。
そして当然ながら、夜間とはいえ潜水艦を見つけられずに雷撃を受けて撃沈させられてしまったことから、索敵値も低めであった。
強いて言えば、主砲の8インチ三連装砲と副砲の5インチ単装高角砲のフィット補正が入るお陰で、多少パラメータの向上は見込めるが、それでもようやく素の妙高型に近い能力という低さである。
その代わり、燃費は古鷹型並みの良さという一面がある。
一見すれば『妙高型並みの火力を低燃費で叩き出すことが可能』という一面があるのだが、見方を変えると雷装の初期値が0なので、夜戦にも向かないという難点がある。
自分のデータ数値が低いことがよほどトラウマなのか、それとも過去そのものがトラウマなのか、Indianapolisはもう泣き出してしまっていた。
これには側にいた邂逅したばかりの駆逐艦……卯月、望月、雷、電らがオロオロしてしまい、彼女を泣き止ませようと必死になっていた。
すると、音無がそんなIndianapolisに近づく。
「だっ、ダメ、ですっ……私、弱くて、不幸で、ドジだから……提督さんにも……不幸が……うつっちゃう……」
だが、音無は気にせずIndianapolisを抱きしめた。
「辛かったよな。怖かったよな。乗っていた人たちを抱いたまま沈んで、苦しかったよな。助けられなくて、泣いたんだよな。それのなにがいけないんだ」
Indianapolisは『ハッ』と顔を上げた。
「確かに、船としてのお前は色々なことがあったかもしれない。お姉ちゃんに比べて、活躍もできなかったかもしれない。でも、今のお前は『軍艦』じゃない。『艦娘』だ」
音無はそう言うと、さらに強くIndianapolisを抱きしめた。豊満なバストが音無の胸板に圧迫されて歪むが、音無は気にする様子もなく彼女を抱きしめている。
「過去は変えられないから、受け入れるしかない。だが、不幸は絶対じゃない。お前の存在が俺を不幸にするっていうなら、俺たちがお前の望む幸せを一緒に探してやる」
「私の、望む……」
抱擁を解いた音無が、Indianapolisの目をジッと見る。
「『幸せにしてやる』なんて無責任なことは俺には言えない。なにが幸福かなんて人それぞれだからな。だから、ここにいる俺たち全員で、お前が心の底から笑えることを一緒に考える。不幸が寄ってくるものなら、俺たちと一緒に望む幸せをもぎ取るつもりで一緒に生きよう」
自分の存在が、多くの人の命を奪った。彼らを乗せた船としてそれを見届け、艦娘として生を受けたことでそれが罪悪感として彼女の胸に刻まれた。
そんな自分を、受け入れてくれる人などいないだろうと思っていた。しかし、音無は自分を受け入れると言ってくれる。周りを見渡しても、艦娘たちは温かい目で見守ってくれる。Indianapolisは思ってしまった。
「ここに、いたいです」
「当たり前だ。ここに来たんだ。ここにいていいんだよ」
音無がそっと頭を撫でてくれた時、Indianapolisは目から溢れるものを留められず、音無に抱き着いて泣き喚いていた。音無がいると聞いて港に来た千歳や榛名など、艦娘たちは新しい仲間にただ泣きたいように泣かせた。交代で、自分に身を預けさせながら。
Indianapolisが泣き止んだのは、それから10分ほどした頃で、立ち上がりながら涙を拭い引き締まった表情を見せた。
「見苦しい所をお見せしました。重巡洋艦Indianapolis、これより着任します‼」
「よし、その意気だ。そんな君……あ~、インディアナポリスって長いから、インディって呼んでいいか?」
「はい、ぜひインディと呼んでください!」
「よし。じゃあインディ。今日はこの後建造をする予定なんだが、良ければ一緒に来ないか?新しい仲間が増えるところをぜひ見てほしい」
「ありがとうございます‼」
そこで音無は新しく入ってきたIndianapolis、ドイツ艦のScharnhorst、そろそろ瑞鶴をお姉ちゃんに会わせてあげたいとも思ったために瑞鶴、練度を上げている妙高、そして千歳を連れて建造工廠へ向かった。
建造工廠では、特徴がないことが特徴の大山と、噛ませ犬ポジションの藤巻が鋼材とボーキサイトを収納しているところだった。
「おっ、音無じゃねぇか」
「音無君、お疲れ様」
「お疲れ様。どうだ、採掘の状況は?」
「掘れば掘るほどじゃんじゃん出てくるぜ。流石にこう毎日だとくたびれるって感じだけどなぁ……」
音無も肉体労働ばかりさせて悪いとは思っているのだが、如何せんできることが少ないのでそうするしかない一面もある。
「悪いな、他のもっとできることがあればよかったんだが……」
「気にすんなって。ゆりっぺの無茶振りに比べれば……(ガタガタ)」
「だねぇ……」
改めて、戦線時代のゆりがどれだけ無茶をやっていたのだろうかと心配になる音無だったが、とりあえず建造して見ることにした。
幸い、使用量の多い鋼材とボーキサイトは腐るほど蓄えられているので、今日は10回以上建造するつもりだった。
「やっぱり瑞鶴のお姉ちゃん……翔鶴が来てくれれば一番だからな。空母レシピで建造、っと……」
工廠が『ガタガタッゴットンズッダズダン』と動き出すと、派手に動く割にはものの1分ほどで建造が終了する。
『オワリ』
中から出てきたのは、弓を携えた、長身の女性だった。弓を持ちとてもメリハリのある体をしていたので、音無は正規空母かと思っていたが……
「軽空母、祥鳳です」
「軽空母か。祥鳳型……確か、元潜水母艦を改装した空母、だっけ?」
「はい、ちょっと小柄ですけど、ぜひ提督の機動部隊に加えてくださいね」
祥鳳型航空母艦。元々は潜水母艦『剣﨑(つるぎざき・けんざきにあらず)』を改装した航空母艦(ある意味帝国海軍のお家芸である)で、珊瑚海海戦において『初めて』沈んだ日本空母でもある。
だが、本人はそんなことを微塵も感じさせない凛とした佇まいであり、軽空母とは思えないほど(言葉遣い、体格含め)頼もしく見える。
「よし、後で艦載機は搭載するから、そうしたら演習だ。頼んだぞ」
「はいっ、お任せください」
続いてもう一度ボタンを押すと、再び工廠が『ガタガタッゴットンズッダズダン』と大きな音を立てて動き始める。
『レッツゴー』
工廠がストップして扉が開くと今度は小柄な、しかしやはり弓を携えた女の子が出てきた。
「瑞鳳です。軽空母ですが、練度が上がれば正規空母並みの活躍をお見せできます!」
「おぉ、また元気な子だな……ん?『瑞鳳』?祥鳳の妹か?」
祥鳳の方を見ると、明らかに嬉しそうな『キラキラ』と言わんばかりの顔をしていた。
「はいっ。私の妹の瑞鳳です!」
「あっ、おねぇちゃーん♪」
潜水母艦から改装された祥鳳と違い、最初から空母として竣工した瑞鳳の方が進水は早かった。そのため、一部からは『瑞鳳型』と言われることもあるが、艦これでは基本的に祥鳳を『姉』としている。
ちなみに瑞鳳の胸部装甲が祥鳳や千歳、千代田らに比べて薄いのは、他の3人が給油可能な能力を持つ艦から改装されたという経緯を持つのに対して瑞鳳が『最初から』空母として建造されたことが影響しているとかしないとか……あまりこの辺りをツッコむとお姉ちゃんから爆撃されるかもしれないので、発言には注意しましょう。
「そうか。早速姉妹が出会うことができたんだな。よし、姉妹揃って艦載機を積んで頑張ってもらうから、前線から後方支援まで色々頼むことになるぞ」
「はいっ、お任せくださいっ」
瑞鳳は『にぱっ』と、効果音が出そうな弾ける笑顔で音無に答えた。だが、一方の瑞鶴は不機嫌度が増している。
「なんで翔鶴姉が来ないのよぉ……」
「ま、まぁまぁ。まだ始めたばかりだし……も、もう一回空母で行ってみるか」
『ドウゾ』
再び工廠が動き出し、一気に建造を進める。
『オッケー』
中から出てきたのは、蒼龍に少し似た雰囲気の女性だった。
「航空母艦、飛龍です!空母戦ならお任せっ‼どんな苦境でも戦えます‼」
「飛龍……蒼龍の準姉妹艦、か?」
「はい。もしかして、蒼龍来てます?」
「あぁ。ここにいる瑞鶴と並んで、家で初めてきた正規空母だ。今、艦載機の整備と開発をやっているから、後で会いに行くといい」
「やったぁ!蒼龍に会えるぅ‼」
と、まぁ喜んでくれる姿は嬉しいのだが、瑞鶴の不機嫌オーラはさらに高まっていた。
「お、落ち着け!まだこれから、これからだ!」
音無はもちろんだが、Scharnhorstや千歳たちですら冷や汗を流している。
その後も空母レシピを回し続けたが、『赤城』、『龍驤』、『飛鷹』、『隼鷹』と、翔鶴とは違う子ばかりが着任してきた。
その結果、怒りを通り越して悲しくなってしまったらしく、ポロポロと涙をこぼし始めるまでになってしまった。
「お、落ち着け瑞鶴!そうだ、ここはあえて気分を変えて少しボーキと燃料少な目で……」
慌てて数値を操作する音無だが、千歳たちも『大丈夫かなぁ』、『嫌な予感がするなぁ』と言わんばかりの視線であった。
そして……
「グーテンモルゲン!私が航空母艦、Graf Zeppelinだ」
「ほえぇ!?なんでドイツ艦!?」
「もしかして、シャルンホルストさんがいるから、とか……?」
Graf Zeppelin
ドイツが建造しようとして、九割方完成までこぎつけたところで中止となった挙句、最後はソ連の標的艦になった(とも言われている)、艦これ初の『未成艦』であった。
その特徴として、レーダーを用いた高い航空管制能力と、軽巡洋艦並みの砲戦能力というものがある。
これは、当時のドイツが通商破壊作戦を重視していたことで、Graf Zeppelinもそれに倣って航空機のみならず砲戦力も使えるマルチロールな船として考えられていたから、という話もあるのだ。
しかも、実装当時は空母のクセに夜戦砲撃が可能という面白い仕様で(現在ではSaratoga、Arc Loyalなど、同じことができるタイプも増えたが)、艦攻を積めばその雷装値がちゃんと砲撃値に加算されるという仕組みである。
だが、普通は大型艦建造でなければ出てこないはずのGraf Zeppelinまでもが出てきたことに、千歳も驚きを隠せないらしい。
大型艦建造は、北方海域をクリアした後の話だからだ。
「本来出てこないはずの艦娘が出てくる……やっぱり、チャーの言っていた『パラドックス』とか、『特異点』とか言うのが原因なのか……?」
ブツブツと呟く音無を『キョトン』と言わんばかりの表情で見ていた彼女だが、意を決したように音無に話しかけてきた。
「貴方がこの艦隊を預かる提督なのだな」
「あ、あぁ。提督の音無だ。よろしく頼むよ」
「そうか……了解だ。ところで……あの艦娘はなにを泣いているのだ?」
「じょうがぐねぇがごないよぉ……」
先ほどまでの強気な不機嫌オーラはどこへやら、すっかり泣き虫になってしまった瑞鶴だった。着任したばかりの赤城や飛鷹たちが慰めているが、とても泣き止みそうにない。
「ま、まだだ瑞鶴!ほら、赤城の相棒っていわれている加賀だって着任してないんだ!きっと、まだチャンスはある!」
そう言って再び空母レシピに戻してボタンを押すと、妖精さんも『ツカレタ』と言いつつ稼働させてくれた。
そして……
「USS CV8 Hornet!出撃準備はできているわ」
「Hornet……Yorktown級航空母艦の3番艦、だった、か?」
「Lets get throuth this together.提督、一緒に頑張りましょう」
Hornetはニッコリと手を差し出してきたので音無も握手してあげたのだが、もう瑞鶴の方を見れなかった。
「あぁ~ん……じょうがぐねぇ、いつ来るのよぉ……」
「……いたたまれねぇ……」
なんとなくこれ以上やってもどうしようもない気がした音無は、ScharnhorstやIndianapolis、妙高と共に戦艦や巡洋艦など、別のレシピを回してみた。
「(もしかしたら、これで運よく翔鶴が来てくれる……かもしれない)」
すると、そんな音無の心理を見抜いたかのように龍驤が音無の肩をポン、と叩いた。
「提督さん、あんまり気張っとると、ロクなことにならんでぇ?」
「それでもやるしかないんだよ」
だが、その後も足柄、羽黒、愛宕、鳥海、利根、筑摩、最上、三隈と重巡が多数揃い、数値もいじくったものの多摩、名取、鬼怒、那珂と言った軽巡たちに移ってしまい、どんどん瑞鶴の涙が加速する。
「うええぇぇぇぇぇぇん……」
もはや誰も声をかけることができず、一緒に着任した蒼龍の胸を借りて泣く有様であった。
「何故だ……なぜ空母は翔鶴と加賀だけが来ないんだ……?なにか理由でもあるのか……?こうなったら戦艦だ。戦艦もこの際建造してやる!」
「あ、あの、提督、あまりやけっぱちにならない方が……」
「姉妹が!姉妹が離れ離れになっちゃいけないんだよっ‼」
千歳は、音無が前世で妹と死に別れた話を聞いていたため、音無がなぜ姉妹を揃えることにそれほど執着するのかが分かってしまった。
なので、それ以上は言えなかった。
だが、その後の戦艦も霧島、山城、長門、比叡が着任したが、やはり翔鶴と加賀が出てくる様子はない。
陸奥や山城は姉に会えたことで喜んでいたが、比叡など、自分が着任した時はお通夜のようなどんよりした状態だったためにオロオロしたほどであった。
もっとも、それでも比叡は自分の欲望……もとい愛情には素直であった。
「それで司令官、金剛お姉さまはいらっしゃいますか?」
「え、金剛?そういやいないな……」
「ひえ~!」
そんな一服の清涼剤と言える一幕はあったが。
結局数十回以上の建造を行い、なぜか海外の空母は出てきたにもかかわらず、出てこない艦娘が何人かいた、という結果になってしまった。
チャーに報告した上でまとめてみると、本来建造でドロップしていておかしくないのに、ドロップしていない戦艦・空母は以下である。
○ 加賀型航空母艦『加賀』
○ 翔鶴型航空母艦『翔鶴』
○ 金剛型戦艦『金剛』
○ 伊勢型戦艦『伊勢』・『日向』
「妙だなぁ……こいつらに関しては通常建造で出会えるはずなんだが……」
「なにか理由がある、ってことか?」
「あぁ。そうとしか思えねぇな。今後も十分に注意した上で建造をやっていくべきだろう。で、あと何回建造する予定だ?」
「流石にこれ以上はな……あと2回にしておくよ」
建造ボタンを押すと、妖精さんも疲れ切っているのか無言だった。
建造が終わると、中から特異な艤装を纏った少女が出てきた。彼女は……
「はーい、お待たせ!兵装実験軽巡、夕張、到着致しましたー‼」
「おぉ、夕張か。改二までこぎつければ、強力な軽巡になるぜ」
音無は夕張の姿をまじまじと観察する。
「なんか……他の軽巡たちとは雰囲気が違うな?」
すると、前日着任した由良が説明してくれた。
「夕張は『3000t前後の船体に5500t級軽巡と同じ装備を詰め込む』試験のために建造された軽巡なの。だから本人も言ってるでしょ?『兵装実験軽巡』って」
「あぁ。そういうことか……もしかして、実験とかデータ採取とか、好き?」
夕張は目を輝かせながら『大好きですっ‼』と元気に返事した。
「……前線にも出てもらうだろうけど、チャーと明石を手伝ってもらった方が、都合がよさそうだな」
「なっはっはっ。ま、確かにそうかもな」
夕張は早速チャーの作り出したあれこれを楽しそうに観察し始めた。
「(……なんていうか、マッドサイエンティスト系?にしちゃ親しみやすいけど?)」
まぁ、親しみやすい明るい子なの鎮守府にもすぐ馴染むだろう。
「えぇー!工廠長は通常開発できない装備まで作れちゃうんですかぁ!?私もやってみたいなぁ~‼」
「……類は友を呼ぶか」
最後になんとなくで戦艦レシピを回してみた。そこに立っていたのは……榛名たちによく似た雰囲気の少女だった。
「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」
金剛型戦艦1番艦、金剛。
彼女こそ、日本が『海外から購入した最後の戦艦』である。その後、輸入したパーツを組み立てて『比叡』が、主砲など国内生産されたパーツも使用して建造されたのが『榛名』と『霧島』であった。
「おぉ!榛名たちのお姉ちゃんか。待ってたぞ‼」
すると、そんな音無の横をすり抜けた比叡が、すぐに抱き着いていた。
「お姉さまぁ‼私も本日着任したばかりですけどお会いしたかったですぅ‼」
「Oh、比叡!一緒の日に着任できたのはLuckyデース!」
「うわーん‼お会いできたのは最高ですぅ‼司令、ありがとうございますぅ‼」
ワンワン泣いて喜ぶ比叡を見ると、思わず音無も微笑むのだった。
一方、建造工廠からちょっと離れたところでは、すっかり不貞腐れてしまった瑞鶴がいた。そんな彼女に対して、音無は近づいていった。
「提督さん、なに?爆撃されたいの?」
すると、音無はなにも言わずに瑞鶴を抱きしめた。
「へっ、ちょ、ちょっとなによぉ!提督さん!?提督さんってばぁ‼」
だが、音無は一言『すまない』というだけだった。
これで瑞鶴も気付いた。音無は今日、瑞鶴を姉に会わせてあげることで一番喜ばせてあげたかったのだと。
そして、瑞鶴は自分がただ翔鶴に会いたいばかりで、そんな瑞鶴のためにと頑張ってくれていた音無になにもしていなかったと気づいた。
だから、そんな自分の情けなさと身勝手さに、思わず涙が溢れてきた。
「うっ、うっ、うえっ、うえぇぇぇぇん……」
「ゴメン。本当にゴメン」
違う。そうじゃない。提督さんは悪くないの。そう言いたかったが、言葉がうまく出てこなかった。
口から出てくるのは嗚咽ばかりで、まともに言葉にすらできない。
「(アタシ……最低だ……提督さんはアタシのためにって頑張ってくれたのに……アタシってば泣いて八つ当たりしてばっかりで……)」
それでも、そんな音無の優しさが心に染み渡った瑞鶴であった。
しばらく瑞鶴は泣いていたが、数分ほどで泣き止むと、改めて音無の顔を見た。
「提督さん、アタシ頑張るよ。翔鶴姉が来てくれた時、『頑張ってたんだよ』って胸を張って言えるくらいに、頑張って戦う‼」
「あぁ、その意気だ。頼んだぜ、五航戦」
音無に頭を撫でられた瑞鶴は、改めて心の中で決意するのだった。
「(私、この提督さんのために頑張りたい。世界のためとか、皆のためなんかじゃなくていい。こんなにも私たち艦娘のことを思ってくれる提督さんのためなら、どんな戦いだって乗り越えられる気がするっ)」
最後、ようやく笑顔を見せることができた瑞鶴であった。
はい。今回は瑞鶴にもフラグが立ちました。
瑞鶴可愛いんですよねー。一見素直じゃないけど、実はいい子ですし