※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

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今回は特別海域再開です。
またもハーレム要員の追加、かも……


特別海域、再開

 千歳と鈴谷の朝からの挟撃で多少疲れた音無だが、千歳の補給もあって持ち直して食事を済ませた。音無が執務室で庶務をしていると、扉をノックする音が聞こえる。

「どうぞ」

『失礼します』

 音無が入室を許可すると、この日の秘書艦の大井を先頭に特別任務へ出撃する6人が入室してきた。

 

 

○ 大淀(15.5cm三連装砲改・10cm連装高角砲(砲架)・紫雲×6・15.5cm三連装砲改)

○ 由良(改)(15.2cm連装砲・15.2cm連装砲・15.2cm単装砲)

○ 熊野(改)(15.5cm三連装砲改・15.5cm三連装砲改・12.7cm連装高角砲・瑞雲12型(六三四空・熟練))

○ Indianapolis(前回同様)

○ Scharnhorst (前回同様)

○ 千代田(改)(零式艦戦62型(爆戦)×24・彗星一二型甲×16・彗星一二型甲×8・15.5cm三連装砲(副砲))

 

 

 今回は前回の戦訓を踏まえて、砲撃力とその精度を高める装備編成になっている。この中で大淀の装備している『紫雲』は、つい先日チャーが作り出した試作品だったが、元々大淀に装備されるはずだった次世代水上偵察機だった。その話を聞いた音無が、大淀に装備することを決めたのである。

 大淀は、普段冷静な彼女にしては珍しく、かなり喜んでいた。

「まさか紫雲を装備できるなんて!前の鎮守府では手に入らなかったのですごくうれしいですっ‼」

 そんな風にはしゃぐ大淀を見て、音無も思わず笑顔になりながらチャーに『サンキュ』と礼を言うのだった。

「提督、特別任務の出撃準備、整いました」

「よし、今回も鹵獲された艦娘が現れるかもしれない。皆、十分に注意して作戦を遂行して欲しい。なにか質問はあるか?」

 すると、今回主力艦隊初参加となる由良が手を上げた。

「基本的に砲撃で殲滅するとのことですが、やはり鹵獲艦娘がいると想定してかかった方がいいでしょうか?」

「そうだな。『いないだろう』という思い込みで間違いがあってはならない。常に細心の注意を払い、偵察機との連絡を密にして行動して欲しい。これはチャーの受け売りだが、『だろう運転よりかもしれない運転』が、自動車の免許を取る時に気を付けるべきことらしい。免許取ってないのに、なんで分かるんだろうな」

 それを聞いて、艦娘たちも吹き出す。

「だが、それくらいのつもりで頼む」

「分かりました」

 雷撃を行うと、場合によっては多くの目標を巻き込むことになりかねないので、敵に鹵獲艦娘が含まれていなければ使用しても構わないが、いたら間違いなく使用は難しくなる。

 指示を出した後、音無は出撃までのわずかな間に食堂へ向かった。

 今日は高松印の筋肉増量メニューとのことらしく、肉(赤身肉)や大豆(植物性たんぱく質が豊富)、バナナにハチミツ、牛乳にプロテインなどが出されていた……プロテインは食材じゃないというツッコミは無しで。

「どうでもいいけど、朝からちょっと重いな……」

「肉は余計な油を落とすため、上手く焼いたつもりでしたが……やっぱり朝は重いですか?」

 高松の言葉に音無も『少しな』と答えるが、艦娘たちは平然と食べ進めている。やはり、体のつくりが根本から異なるようだ。

「ま、ウマいけど」

 程よく焼かれた牛の赤身肉にフルーツを中心に高松が拵えたソースが絡めてあり、これがかなり食欲をそそる。

 というか、赤城や長門などの大食艦は既にモリモリと食べ進めている。

 赤城など、その細いお腹にそんなに入るのか?と言いたくなるほどに食べまくっており、音無は、『あの胸当ての下のお腹がどうなっているのか、気になる……』と思わずガン見してしまっていた。

「提督、どうされました?」

 たまたま側を通りかかった妙高にそう問われるまでガン見していたことから、よほど気になったらしい。

 それはさておき。

 朝食を終えた後で執務室へ戻ると、既に主力艦隊と掃討艦隊が出撃準備を進めていた。

 なお、先日主力艦隊に入っていたSidneyは今回掃討艦隊に編入となった。掃討艦隊の空母は龍驤となっている。

「新しい仲間を見つけるため、頑張りますっ」

「ほな、行ってくるわー」

 駆逐艦である如月を先頭に掃討艦隊が、軽巡である大淀を先頭に主力艦隊が出港する。

 

 

――特別海域・深海棲艦輸送航路

 その後、出撃した主力艦隊は2つの艦隊を撃破して進んでいた。

「偵察機の皆さんがしっかり偵察してくれてよかったです。おかげで敵をしっかり判別できます」

「紫雲の力はお見事ですわ」

 零式水上観測機よりも足が速く、敵の制空権下でも強硬偵察が可能なようにと設計されているだけのことはある、と言うべきだろう。

 史実では二重反転プロペラの作動や着脱式フロートがうまく作動しなかったなどの問題点が多かったが、そこは艦これの装備。全く問題なく運用できているようだ。

 だが、その楽観的な空気もそこまでであった。

「偵察機より入電!『敵主力艦隊ト思シキ艦隊ヲ発見。重巡リ級1、雷巡チ級1,駆逐ロ級2、輸送ワ級2』とのこと。なお、後方のワ級は『肌色ノ体ヲ確認ス』とのことです」

 その一言で艦隊に緊張が走る。

「また……出やがったか。鹵獲艦娘が」

 Scharnhorstの苦々しげな言葉に、全員の顔が曇る。だが、暗い雰囲気を払拭するようにIndianapolisが声を張り上げた。

「大丈夫ですっ。前と同じように……でも慢心しないように頑張りましょうっ!」

 その言葉に熊野も由良も頷く。Scharnhorstも『しゃあねぇな』と頭を搔いた。

「んじゃ、一気に行くぜ!」

 まずは千代田が艦載機を発艦させる。

「アタシがやらないと!」

 飛んで行った飛行隊は、敵輸送艦隊の前方から攻撃を開始する。

『ドゥアー!』

『ウリャァ!』

 その結果は……

「攻撃隊から入電。『雷巡チ級、駆逐ロ級1隻撃沈、重巡リ級中破、輸送ワ級1隻中破』とのこと!」

「ま、こんなもんだろ」

 特に足の遅いワ級と旗艦のリ級が中大破したしたのは大きい。

 そのままの勢いで敵艦隊との戦闘に入る。

「砲雷撃戦、始めますっ」

 由良の声と共に艦隊が接触し、大淀から紫雲が、熊野からも瑞雲が飛び立っていく。

 彼らの報告による弾着観測こそ、今回の戦いを大きく左右することになる。

 まずは接近する前にScharnhorstが先頭のリ級に狙いを定める。

「ちっ、遠いな……前回は運よく当たったが……やっぱりもうちょっと待つか……」

 Scharnhorstも慎重策を取り、中距離まで接近した。

「今!副砲斉射!」

 大淀の合図で6隻から副砲が発射されると、残った艦隊に次々と命中する。

「副砲は恐れない!命中しても撃沈はしない!」

 そう言っている間に、観測機がリ級とロ級の正確な位置を報告する。

「観測機から報告!諸元入力!誤差修正、縦2度、横1度……ここですわ!」

 観測機持ちの艦娘が狙いを定め、全艦による砲撃を行った。その結果、全ての砲撃は吸い込まれるように重巡リ級と駆逐ロ級に命中し、2隻を海の底へと引きずり込んで行った。

 すると、前回同様に後方のワ級2隻が停止した。

「やはり、前回と同じようになりましたね……」

 ワ級の停止を確認した大淀は、全員でゆっくりと接近した。

 接近してみると、やはり肌色が見える。

「艦娘、ですか?」

 試しに大淀が仮面を叩いてみると、大破したワ級の外装が『ボロリ』と剥がれ落ちた。

 その下から出てきたのは、想像していた人物の1人だった。

「ア、アカ、ギ、サン……」

「っ……加賀さん、ですか?」

 そう。前任提督の下で大淀に『艦娘は深海棲艦の生まれ変わり』、自分もそうだということを教えてくれたベテラン艦娘、『加賀型航空母艦』の加賀だったのだ。

 更に、後方のワ級の仮面も剥がれ落ちる。その人物もまた、音無が想像した人物だった。

「っ……翔鶴、さん……」

 瑞鶴の姉で『翔鶴型航空母艦』の1番艦、翔鶴その人だった。

 両名とも伊勢・日向と同じように腹部と胸部が大きく膨れ上がっており、改造されていることが一目で分かった。

「オオ、ヨド、サン?」

「一緒に那智さんと隼鷹さんに朝まで飲みに付き合わされたの、覚えてますか?」

 大淀がそんな話をすると、翔鶴は涙を流した。大淀の予測通り、伊勢たち同様に自分たちと共に戦った翔鶴と加賀のようだ。艤装の一部が外れたおかげか、2人の顔に生気を感じる。

 すると、加賀が震える手を持ち上げようとする。どうやら、体を隠したいらしい。

「加賀さん?」

「み、見ない、で。こんな姿、赤城さんに、見せられない……」

 加賀は元々『一航戦』として赤城とコンビを組むので、赤城に対する想いがとても強い。今は赤城がいないと分かっているとはいえ、想像しただけで自分に嫌悪感を抱いたようだ。

「お願い、大淀さん。私たちを……」

「皆まで言うんじゃねぇ」

 そこに割って入ったのは、少しムスッとした顔のScharnhorstだった。

「あな、たは?」

「第三帝国のScharnhorstだ。そっから先のセリフは、数日前に聞いたばかりだ。悪いが、あんたたちはこのまま連れて行かせてもらうぜ」

「そん、な。瑞鶴に、こんな姿、見られたく……」

「あんたたちみたいなことを言ってるやつらが、うちの鎮守府で今寝てる。だけどな、うちの提督はこんな理由でお前たちを見捨てない。だから、文句があるなら鎮守府についてから提督に直接言いやがれ」

「なぜ?」

「提督は、俺みたいな半端ものを笑顔で受け入れてくれた。あんたたちと同じ苦しみを持つ連中に、諦めるなと怒鳴りつけて助けて見せた」

「そうです」

 そこに、Indianapolisも加わる。

「私も不運だと自分を貶めていましたが、提督は抱き締めてくれました。苦しいのを一緒に背負うと言ってくれました。だから……」

「お2人とも……」

 大淀が再び口を開く。

「シャルンホルストさんの言う通りです。文句があるのなら、提督に直接伝えてください。でも、加賀さんと翔鶴さんの中で、少しでも生きたいと思う気持ちがあるなら、諦めないでください」

 そう言われて、加賀と翔鶴の中で、大切な人たちと過ごした日々が湧き上がる。すると、2人とも涙が溢れていた。

「いや、赤城さんに、また、会いたい……」

「瑞鶴、お姉ちゃん、会ってもいいの?」

「会っていいんです。お2人はまだ艦娘なんですから」

 大淀が2人の言葉を肯定すると、加賀と翔鶴は震える手を持ち上げ、大淀と千代田がその手をしっかりと握った。

 すると、警戒していた由良が声を上げた。

「艦影確認!」

 一同が加賀と翔鶴を守るように武器を構えると、深海棲艦ではなく艦娘らしい影が見えた。

 だが、妙だった。

「あの子……本当に艦娘?」

 由良の言葉ももっともで、その艦娘は真っ白な艤装を装備していたのだが、まったく武装らしいものが見られなかったのだ。そして、背負っている煙突には緑十字のマークが描かれていた。

「あれって……病院船?」

 近づいてきたのは、重巡と同じくらいと言うべき長身の女性だった。

「どちらかの艦隊ですか?」

「えぇ。これから彼女たちを曳航して帰投するところなの。あなたも来る?」

「はい。ぜひご一緒させてください」

 彼らが出会った艦娘は、いったい何者なのか……

 

 

 艦隊帰投の報告を受けた音無は、あらかじめ艦娘たちを港に待機させていた。戦艦や空母といった馬力の強いメンバーだけでなく、対潜・対空警戒のために駆逐艦や軽巡も何人か出ている。

 当然、その中には赤城と瑞鶴の姿もあった。当然、音無も波打ち際まで迎えに行く。

「皆、お疲れ様」

「はい。提督、間違いなく前鎮守府にいた『加賀』さんと『翔鶴』さんです」

 彼らを確認したうえで音無は奥の白い艦娘を見た。

「悪い。こいつらの処置を済ませてから君のことを聞かせてくれるかな?」

「はい。というか、お手伝いさせていただけませんか?」

「えっ?どういうことだ?」

 その艦娘は敬礼せず、お辞儀だけして挨拶した。

「申し遅れました。私は病院船、氷川丸と申します」

 氷川丸。日本が整備した病院船であり、元々は貨客船・『氷川丸』だった船である。

 かつて貨客船だった時には、喜劇王『チャールズ・チャップリン』が『毎日揚げたての海老天を食べさせるので是非氷川丸に』と言われて、その特別室に乗船したことでも知られており、終戦後には復員船として、それが終わった後もしばらくはシアトル航路に就役していた戦前型の貨客船だった。

 しかも、太平洋戦争に参加した船の中で数少なく船としての存在が今も残っているという意味でも希少価値が高い。

 そんな氷川丸が改装された病院船という存在は、立場上戦闘行為及び戦闘に加担するような……つまり物資の輸送などに参加することは禁じられていたため、氷川丸には武装が搭載されていない。

 だが、それだけに音無と共に医療行為を行うことができる人員として手伝いたい、ということのようだ。

 

 

 そんな氷川丸の初期装備は以下となる。

○ 艦隊修理設備

○ 艦本式ディーゼル機関(回避+10&速力+2ノット)

○ 喜劇王の加護(回避+20)

 

 

「そうか。正直猫の手も借りたいところだから手伝ってくれると助かる。じゃあ皆、加賀と翔鶴を……」

「ちょ、ちょっと待ってください、提督」

 翔鶴の言葉に、音無は彼女の方を見る。

「どうした、翔鶴?」

「あの……本当に、私たちを助けてくださるのですか……?」

「あぁ。そうでなきゃ連れ帰るわけねぇだろ」

 音無は即答した。

「俺はつい先だっても、伊勢と日向の2人を処置した。同じ要領でいいかは分からないが、お前たちも処置するつもりだ。まだ2人は目を覚ましていないから、なにか言いたいことがあるなら、今のうちに言っとけ」

 それを言われた翔鶴と加賀は一瞬躊躇ったが、互いの大事な人……赤城と瑞鶴の方を見た。

「赤城さん、こんなにバルジ(お腹のお肉)を増設されたみっともない姿を、あなたにだけは見せたくなかったわ……」

「加賀さん、大丈夫ですよ。提督なら……この方なら、きっと加賀さんを元に戻してくれますから」

「完全に戻せる保証はないけどな。伊勢と日向も母乳の分泌と内臓容量の大型化、それに乳房の肥大化は治せなかったからな」

 さらに翔鶴も瑞鶴に話しかける。

「瑞鶴。お姉ちゃん、こんなやらしい姿になっちゃったの……でも、本当に治るの?」

「うん。この提督さん、ホントのホントにすごいから!きっと翔鶴姉も治して艦娘に戻してくれるよ!」

 瑞鶴も涙目だが、音無のことを心から信頼している彼女は、自信満々に言い切った。

「本当に……」

「治りますか……?」

「あぁ、俺にできる限りのことはする。ただ……どうしようもないと思った時、お前たちを解体する。だからって、勝手に諦めんじゃねぇぞ」

 こう言ってはいるが、音無は『きっとできる』と感じていた。

 そして、音無のそんな覚悟を感じたのか、加賀も翔鶴も顔色が変わった。

「分かりました」

「私たちの体……提督にお預けします」

 2人の覚悟を受け取った音無はニヤリと笑うと、艦娘たちに指示を飛ばす。

「皆、2人を医務室へ‼」

 艦娘たちは『了解‼』と大声を上げ、加賀たちを抱え上げて運び出した。

 

 

 その結果は、見事なまでの成功だった。幸いと言うべきか、加賀も翔鶴も伊勢たちと同じような構造で改装されていたため、全く同じ要領で処置できたのだ。

 また、音無から要領を指示された氷川丸も処置を行い、2人同時に治療することに成功した。結果、時間はたったの1時間ちょっとで終わってしまったのだ。

「ふぅ……今回も上手くいってよかった」

「提督、お疲れさまでした」

 大淀が差し出したお茶をグイッと飲み干すと、改めて大きく息を吐く。

「他に鹵獲された艦娘がいないかどうか、記録って残ってないのか?」

「それなんですが……先の大戦における空襲で記録も全て破壊されてしまっていて……」

「ま、分かっていたら伊勢たちが沈んでいないことくらい知ってるよな」

 改めて敵のやり口に怒りを覚えるが、まずは彼女に礼を言うことにした。

「氷川丸、お前がいてくれたおかげで迅速に処置することができた。感謝するよ」

「いいえ。それが私の仕事ですので。あと、元貨客船ですので料理も得意ですから、今後は料理などの家事炊事も手伝わせてください」

 ちなみに、彼女の得意料理は海老天である。理由は先述の通り。

 また、声帯の妖精さんは陸軍揚陸船と陸軍潜水艦と同じ方ということで一つ。

「そりゃ助かる。それで……」

 すると、隣の部屋から間宮が顔を見せた。

「提督!伊勢さんたちが目を覚ましました!」

「本当か!」

 音無は間宮に案内され、隣の病室に入った。そこには、弱弱しげではあったものの、ちゃんと起き上がっている伊勢と日向の姿があった。

「どうだ、具合は。体はちゃんと動くか?」

「えぇ。すごくスッキリしたよ」

「あぁ、かつてよりも体のキレがいいかもしれない」

「ベッドに座ってるクセになに言ってんだ」

 音無は苦笑するが、顔色も良さそうなのでひとまず安心する。

 すると、2人が改めて正座で座り直すと、音無に深々と頭を下げた。

「音無提督、この度のご厚意、心より御礼申し上げます」

「再び艦娘として海に出られるなど、夢にも思っていなかった。この恩は、出られる限り海に出て……」

「あのさ、別に恩に着せようとか思ってないから。そこは勘違いしないでくれよ」

「えっ?」

「じゃあ……」

「お前たちを見て、どうしても助けたかった。それだけだ。お前たちが無事でいてくれればいいんだ。それに、お前たちが海に出るのは、俺に恩を返すためじゃないだろう?お前たちには、それ以前の目標があるはずだ」

 音無にそこまで言われて、伊勢と日向はハッとする。

「そう、でした」

「深海棲艦を倒し、この海でまた人々の繋がる日々を取り戻す」

「そうだ。だから、俺のため……とかは気にしないで、お前たちのするべきことをしてくれ。そのために俺ができることは、俺も全力でサポートする。俺は、お前たちの提督だからな」

 その優しく、しかし強い意思を見せる笑顔を見て、伊勢と日向の胸がドクンと大きく脈打った。

「それと、お前たちに伝えておかなきゃいけない。お前たちの体は、残念だが完治してない」

「……そう、ですか」

「どこか、そんな感覚はある」

 伊勢と日向はそう呟きながら、自分の体に手を触れる。2人がかつて艦娘だった頃、戦艦としては平均的と言えた体躯が、鹵獲改装されてからかなり肥大化した。特に膨らんでいた胸部や腹部、臀部は手術のお陰で少し減った気はするが、それでも以前の自分たちより肉が付いた感覚は残っている。

「肉が規定値より体に付いたままっていうのと、お前たちの乳房は、補給艦として鹵獲改装された影響か母乳を分泌するようになっている。多分、定期的に搾乳しないと苦しくなると思う。それは覚えておいてくれ」

 『それと』と音無は続けた。

「夕張と明石があの深海艤装を調べたら、快楽神経とかも刺激する機能が付いていた。母乳が蓄積されると性的衝動を起こしてお前たちを襲う可能性もある。取り敢えず、搾乳すればある程度だが凌げる」

「じゃあ、加賀さんと翔鶴は当分大丈夫だね」

「ああ、加賀には大喰らいの相方が、翔鶴には尽くしてくれる自慢の妹がいるからな。2人についてはしばらく大丈夫だろう。だが、お前たちはお互いがこの状態だから、吸い合ってもイタチごっこになるだけだ。もし……」

 音無は一瞬口を噤んだが、口を開く。

「もしも……性的衝動に抗えなくなったら、その時は艦娘を統べる『提督』である俺にしか解消できないだろう」

 2人はハッとしながら音無を見た。

「もしも2人が嫌だというのなら、他になにか方法がないかどうかを調べる。それを……」

 すると、伊勢が身を乗り出した。

「いいえ!もしも……もしもあなたに……音無提督に抱いていただけるのであれば、それはこの上ない喜びです!」

 それに日向も続く。

「私たちを救ってくれたのみならず、その事後まで面倒を見てくれようというのに、それを拒否するなど……だが、本当にいいのか?私たちは……その……」

「多分、ただじゃすまないだろうな。きっと……性行為をし始めた時点で、その情動がより大きくなる」

「では……やはり難しいのでは?」

「だけどな、それはお前たちを見捨てる理由にはならない。さっきと被るけど……俺は、俺にできる限りのことをお前たちにしてやりたいんだ」

 その言葉を聞いた伊勢と日向は、顔を真っ赤にしていた。

「それに、俺はもう千歳と床を共にしている。彼女は抱いてから母乳が出るようになっているんだが、俺はそれを飲ませてもらうようになってから精力が増している。回数が増えても、どうにかなると思うぞ」

「そう、だったんですか……」

「ただ……責任逃れと思わないで欲しいんだが、しばらくは他の艦娘に補給して様子を見てくれないか。お前たちに受け入れてもらえるのは俺としても嬉しいが……」

「分かっている。2人がかりで求めては、提督の体がもたないからな。収まるなら、それに越したことはない」

「そんなことより、『受け入れてもらえる』って、そう思ってるのは私たちの方ですよ。そんなこと言われたら、今からでも提督が欲しくなっちゃいます」

「そ、そうか?悪い。どうも話し相手を元気づけようとすると、今みたいなことを口走ってばかりになるみたいでなぁ……」

「だから、かな?」

「まあ、そうなるな……」

 そう言う伊勢と日向は、ポッと顔を赤くしながら音無を見つめる。

 チラリと大淀を窺うと、大淀も『しょうがない』と言わんばかりの顔をしていた。

「でも、嬉しいです」

「あぁ。こんな我々でよかったら、提督に全てを預けたいと思う」

 その後、起き上がった2人は音無と共に工廠へ向かった。

「お、音無か」

 工廠ではチャーと斎藤がまた装備の開発を行っていた。

「よぉ、チャー。伊勢と日向の装備は?」

「あぁ。扶桑と山城の艤装の予備を改良できないか模索していたんだが、2人が艦娘として復帰した、ってことなんだろうな。こうなったよ」

「これか?」

 そこにはいかにも戦艦という風情のゴツイ艤装が置かれていた。

 伊勢と日向は和服のような服に着替えているが、本人たち曰く、所々キツイらしい。

「うぅん……やっぱ胸とかお尻とかのお肉が増えたからかな……」

「まぁ、そうなるな」

 読者諸君には本来の伊勢と日向のイラストを思い浮かべていただき、そこの胸元と尻が少し増量したように考えてもらえばいいかと。

 しかし、そんな2人も艤装を装備すると、一気に雰囲気が変わった。

「これでまた戦える……超弩級戦艦、伊勢型の一番艦、伊勢。参ります!」

「伊勢型戦艦二番艦の日向よ。覚えておいて」

 2人の初期装備は『35.6cm連装砲』と『14cm単装砲』、そして『零式水上偵察機』なのだが……。

「どうせ演習すりゃすぐに練度10を超えて航空戦艦になれるんだ。装備の換装はそれからでいいだろ」

 

 

 とチャーが言うので、2人に演習をしてもらった結果、2人は意気揚々と砲撃を続ける。

「あぁ……この主砲を撃つ感じ、久しぶりっ‼」

「あぁ、心地いいなっ‼」

 2人が艶々した顔で戻ってくると、補給を済ませてから練度を確認する。通常の2回分に相当する砲撃演習を行った結果、練度は11に達したので、装備を外して早速改装を始める。

 そして、最初に主砲を持っていた左腕に、飛行甲板が盾のように装備されていた。

「扶桑と山城も確か航空戦艦になるって言ってたけど……これでどうなるんだ?」

 まず、スロット4つの中に『搭載』が増え、なんと全スロットを合わせれば44機もの水上機を搭載可能になっていた。

 なので、仮に主砲も取り払い『瑞雲』を全てのスロットに装備すれば、ちょっとした改装軽空母並みの搭載量を発揮できるのだ。

 これがあれば航空攻撃の追加だけでなく、空母のいない海域では低コストな制空権の確保もしやすくなる。

「と、言う訳で……せっかくだからこいつを装備してもらうか」

 チャーが取り出したのは、金剛型姉妹でもお馴染みとなった『試製35.6cm三連装砲』と『瑞雲12型(六三四空)熟練』、そして、瑞雲より少し大型の水上機だった。

「チャー、こいつは?」

「あぁ。本来なら伊400型潜水艦という水上機3機を搭載することができる潜水艦の装備でもある水上爆撃機『晴嵐』っていうんだ」

「……これ、作れるヤツ?」

「いや。本来は作れねぇ。ただ、いじくってたらできた」

 チャーの言葉を聞いた伊勢と日向は茫然としている。だが、たまたま居てもう慣れた榛名が2人に笑いかけた。

「これが工廠長です。すごいですよね」

「いや……すごいっていうか、本来装備の開発って妖精さんがやるもので、その開発で本来作れない装備を作り出すって……」

「すごいを通り越して恐ろしいな」

 こうして、航空戦艦となった2人の装備は以下となる。

 

 

○ 試製35.6cm三連装砲

○ 10cm連装高角砲(砲架)

○ 試製晴嵐(×11)

○ 瑞雲12型(六三四空)熟練(×11)

 

 

 いやはや、恐ろしいの一言に尽きる。

 ちなみに、日向はなぜか瑞雲にこだわりたかったため、晴嵐の代わりに瑞雲を装備してやることにした。

 これで、様々な戦いで高い能力を発揮できるようになるだろう。

「それでは提督」

「改めて、よろしく頼む」

 こうして、SSS鎮守府に新たな仲間がまた加わったのだった。




と、いうわけで今回の鹵獲改装組は加賀さんと翔鶴姉でした。
さらに、伊勢と日向も戦列に加わり、益々戦力も充実してきます
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