こういう時の反応はちょっとわからないんですよねー
それはさておき、今回はいよいよラスボス登場です
酔い潰れてしまった翌朝、音無は柔らかい感触を感じ、思わず手で揉んでいた。
「(んんっ……柔らかい……おっぱい……)」
もうこんな思考になってしまうあたり、すっかり色ボケしたとも言える。
――むにゅん……――
「あんっ」
聞こえる声と揉んだ感触がいつもの千歳と違うと気づいた瞬間、音無の思考は一気に覚醒していた。顔を上げようとしたが、細い腕に抱きこまれて目の前の柔らかい膨らみに顔を押し付けられた。
「むぐっ(陸奥っ)!?」
「もう、提督ったらぁ……シてほしいならいつでもお相手しますのにっ♡」
そこで気づいた。自分が揉んでいたのは、千歳の柔らかいシルクのような胸部装甲(燃料タンク)ではなく、陸奥の柔軟性とハリを併せ持つ、ゴムボールのような装甲板(おっぱい)だったということに。
「て・い・と・く。いかがですか?陸奥の装甲板(おっぱい)は♡」
そして音無もまた、そんな陸奥に対してそれ以上動じることはなかった。顔を上げると、しっかりと陸奥の目を見ながら言った。
「あぁ。ハリがあって、でもちゃんと柔らかくて……いいおっぱいだと思うぞ」
まさか正面から返されるとは思わなかった陸奥は、逆に顔を真っ赤にしてしまった。
「あぅ……まさか切り返されちゃうなんて……」
「悪いな。既に3人の女を抱いたのは伊達でじゃないつもりだ」
しかも、千歳に大淀、鈴谷と文字通り様々な女であり、お色気ムンムンの陸奥を前にしても動じることのない精神力を手に入れていた……という割にはしっかり陸奥のおっぱいに反応して揉んでいるあたり、むしろ色ボケていると言うべきなのかもしれないが。
「陸奥。俺もお前のキレイな体を抱きたいのは山々だ。だがな、俺も朝っぱらからあんまり盛るわけにもいかないんだ。悪いが、このまま起きさせてもらうよ」
そう言うと、音無は邪念を払うように起き上がり、そのまま朝のシャワーを浴びに行ったのだった。
一方、置いて行かれた陸奥は一泊置いてから顔を赤くしたまま頬に手を当てるのだった。
「あうぅ……もう。お姉さん、こんなキャラじゃないんだけどなぁ……」
だが、扉の向こうでこの反応を聞いていた音無には、そんな風に顔を真っ赤にしながら恥じらう陸奥もまた可愛らしく、同時にとても美しいと思うのだった。
もっとも、ああは言った音無だったが、流石にそのままではムラムラが収まらなかったこともあってこっそり朝風呂でヌいておいたのは別の話。
朝風呂を終えた音無は朝食を摂りに食堂へ向かう。
そこには、連合・枢軸を問わずに様々な艦娘たちが食事をしていた。
「(いつの間にか大所帯になったよなぁ……)」
だが、艦娘はまだ何十人、いや百人単位で存在するという。だとすれば、もっと大人数がこの場所に集うことになるのだろう。
見れば、この食堂も元々は100人以上が一気に入れるようになっているので、今の時点では死んだ世界戦線のメンバーもある程度入って食事できるほどの広さがある。
すると、料理の手伝いをしていた岩沢が音無に気付いた。
「お、音無じゃないか」
「おはよう、岩沢……お前、料理できたのか?」
「ははっ。あたしってそんなに音楽にしか興味ないように見える?」
正直に言って、音楽に携わっている姿しか見ていなかったこともあって『まぁ』とバツの悪そうに頬を掻いた。
「いや、実際あたしは音楽にメチャクチャ惹かれている変なヤツさ。でも、音楽やるためにはある程度のお金も必要だったから、アルバイトであれこれやってたんだ。その時に料理もある程度覚えたんだ」
「そうだったのか」
相方のひさ子も、かつて生きていた時に面倒を見ていた人間のためにあれこれとしていた経験からある程度料理はできるらしいが、岩沢もそれに劣らぬくらいの能力はあるらしい。
「今日の朝飯は?」
「艦娘の皆が底引き網で捕ってくれた魚たちの塩焼きと味噌汁、それに野菜炒めさ」
「お、美味そうだな。この間の高松の筋肉増量メニューはちょっと朝には重くてな……」
すると、その話を傍らで聞いていた日向が『まぁ、そうなるな』と呟いた。
魚も色々な種類が雑多に捕れたようで、アジらしい魚もあれば、イワシらしい魚もある。
そんな料理を作りながら、ひさ子も話に乗ってきた。
「斎藤のヤツさ、対潜装備だけじゃなくて島に放置されてた漁船の整備も始めたんだ。漁船でカツオとかマグロを捕って、皆でワイワイ食べたいんだってさ」
「……マグロ、何尾必要になるかな」
音無としては、艦娘たち全員が満足できるほど食べさせようと思うと、2m越えの巨大本マグロが捕れたとしても、1尾や2尾では厳しいのではないかと考えていた。
だが、その点はギルドのメンバーも含めてなんとかしようと考えているらしく、寮の修繕の大部分を終わらせていることもあり、漁船や畑の手入れに精を出す者も多くなっていた。
女子陣は洗濯や掃除などを主にやるようになり、しっかり分担されるようになっている。
なお、洗濯機や乾燥機に関しては既にチャーが大型のモノを妖精さんと一緒に何台か作り出しているため、昭和の中頃のような手洗いという状態はほぼ脱している。
経験した女子曰く、『昔の人って本当に偉いわ』と言うほどには辛かったようだ。
「ま、それはともかく、底引き網ができるなら当面はそれで多めの食材確保ができそうだ。ただ、一応大本営からもある程度の物資は届いているから、それとのバランスは調整してくれよな?」
「分かってるよ」
岩沢は音楽キチと言われがちだが、生前は大学の推薦を受けるくらいに成績優秀で、事務仕事も高い能力を有している。
そのため、資材の在庫・備蓄の管理に関してもかなりしっかりしており、今のところ管理に関しての漏れはない、と言えば優秀さが伺える。
音無も食事を受け取ると、席に座ってお茶をコップに注ぎ始める。と、その両隣には伊勢と日向が座り込んだ。
「へぇ、提督って意外と小食なんですか?」
「まぁ、正直言ってあんまり動くこともないからな。程々に食えば十分だよ」
「確かに、備蓄のことなども考えると、程々で済まそうという考えは十分正しいと思う。恐らくだが、提督は艦娘に腹いっぱい食べて欲しいから、自分たちは程々で済まそうと思っているのだろう?」
「まぁ、俺だけでも、って感じだけど」
実際には鉱山で採掘作業をしているメンバーは、多めに食事を摂ってもらっている。だが、艦娘が最前線で戦う重要性を理解している一部の者たちは、程々で食事を済ませている。
だが、伊勢と日向は心配のようだ。
「私としては……提督にこそちゃんと食べて欲しいけどな」
「あぁ。副提督はいても、主力艦隊を指揮できるのは提督だけなんだ。提督になにかあったらと思うと、な……」
日向は少し誤魔化して言っているが、心の中では音無のことを純粋に心配していることが伺える。少なくとも、2人の声音から音無はそう感じていた。
「そうか……そうかもな」
音無たちが着任したタウイタウイ島の近くにはボルネオ島があり、そこにも泊地がある。タウイタウイ島泊地は戦闘中心の作戦が多いが、ボルネオ島泊地は各方面への補給路の防衛を果たしてくれているので、食料などを含めて補給は滞りない。
だが、なにかトラブルが発生した場合……具体的には自分たちがやったように、深海棲艦による通商破壊が起きた場合には補給が滞ることもある。
そう考えて音無は備蓄をしっかりしておかなければならないと思っていたのだが、確かに指揮を執る自分になにかあっては元も子もない。
まして最近は千歳や大淀、鈴谷と体を重ねるようになり、体を動かさないわけではない。
そう思えば、むしろ食事はしっかり摂るべきだろう。
「んじゃ、しっかり食わないとな」
「そうそう。その意気だよっ」
「あぁ。伊勢の言う通りだ」
いずれは伊勢や日向とも関係を持つことになるだろうと考えられているため、確かに体力はあるに越したことはない。
伊勢と日向にその意図はなかっただろうが、自然と音無にそう思わせていた。
元々食欲がないわけではない音無としては、やはり食べられるならそれに越したことはないと思っている。
ただ、生来の心配性もあって、ついつい用心深くなってしまっていたのだ。
しっかりと食事を摂った音無は、改めて執務室へと向かった。
今日は恐らく、今回の特別任務では最後の出撃になる。
既に敵輸送戦力の9割を倒したと大本営からは言われており、ワ級をあと数体も倒せば、今回の輸送網を潰せるとの話であった。
「皆、残りの敵輸送戦力は弱体だ。だが、ボルネオ島鎮守府艦隊の話によると、輸送ワ級の異種とも言うべき存在が居るらしいから、最後まで絶対に油断はしないでくれ。頼んだぞ」
今回は最後ということもあって、重厚な布陣で挑むつもりである。
編成は以下となる。
○ 大淀(前回と同じ)
○ 鈴谷(15.5cm三連装砲改・10cm連装高角砲(砲架)・瑞雲12型×11・熟練艦載機整備員)
○ 摩耶(20.3cm連装砲(3号)・10cm連装高角砲(砲架)・25mm三連装機銃(集中配備)・Fumo25レーダー)
○ Scharnhorst(前回と同じ)
○ 榛名(試製35.6cm三連装砲・10cm連装高角砲(砲架)・三式弾改・Fumo25レーダー)
○ 千歳(烈風×24・彗星一二型甲×16・彗星一二型甲×8・15.5cm三連装砲(副砲))
前回までは軽巡・重巡を中心とした艦隊だったが、なぜか音無は、『対空兵装を充実させた方がいい』という気がしていた。
そのため、高速戦艦が1隻だけだったのが2隻に増え、軽巡を排した代わりに航巡である鈴谷と、最古参の重巡である摩耶が選ばれた。
また、千歳に関しても第一スロットに烈風を装備している。
「なぜかは分からない。だけど、無性に嫌な予感がするんだ。皆、よろしく頼む」
音無の予感に皆思うところがあるのか、皆も引き締まった表情だ。
そんな彼らを代表して、千歳が前へ出た。
「大丈夫です、提督。きっと……きっとなんとかなります」
正直に言って精神論も甚だしいが、なぜか音無もそんな気がしていた。
「……あぁ。そうだな。皆、油断せず、でもしっかり頼むぞ」
艦隊一同は並んで『了解!』と声を上げ、艤装を纏って出撃していった。
「……頼む」
音無はそう呟くと、執務室の机で彼女たちの動きを確認するのだった。
――特別海域 深海棲艦輸送隊泊地付近
その付近は異様な雲に包まれている。夜というほど暗くはないので航空機の発艦に支障はないが、それでも普段の明るい空と比べてしまうと不気味である。
「なんといいますか……不気味ですね」
榛名の言葉に大淀も千歳も頷いた。
「前任提督の時にも特別海域に出撃したことがありましたが……確かに、敵の大物が控えている付近にはこういった空模様になっていました。これは……まさか、本当に鬼や姫級がこの海域に……?」
大淀の心配に皆思うところがあるのか、緊張した面持ちで頷いた。
すると、大淀に通信が入る。
「偵察機より入電!敵泊地防衛艦隊発見とのこと!内訳は『重巡リ級Elite2、軽巡ホ級Elite2隻、軽巡へ級Elite2隻』とのこと!」
「完全な戦闘艦隊ですね……泊地周辺を警備するためのものでしょう」
報告を受けた艦隊は制空権を確保することを決定する。
「大丈夫、私に任せて」
飛び立っていった艦載機隊は敵に空母がいないこともあって容易に制空権を取れる。
『ウオォォォッ!』
『ヤッタレェ!』
その結果は……
「攻撃隊より入電!『軽巡へ級Elite1隻、軽巡ホ級Elite1隻轟沈』とのこと!」
「なんとか撃沈を2隻出せましたね……」
「なぁに。怖けりゃ、摩耶様の後ろに隠れてな!」
摩耶の頼もしそうなセリフに、思わず皆も苦笑する。
「それでは、参りましょう!」
接敵すると、Scharnhorstから観測機が飛び立っていく。
「砲戦用意‼戦いの始まりだァ‼」
接近しつつ、敵の砲撃を警戒していると、中距離に入ったところで敵の発砲を確認した。
だが、Eliteの砲撃でありながらその精度に欠けており、少し遠いところに落ちそうであった。
「副砲斉射‼」
6人から副砲の弾が次々と敵艦隊に襲い掛かる。
敵艦隊は完全に浮足立っており、先ほどまでの統制は見られない。
「一斉射‼」
全員で主砲を斉射すると、それだけで残りの軽巡と重巡リ級Elite1隻が轟沈した。だが、まだリ級Eliteが1隻残っていた。
「うわっ、キモッ!」
魚雷が発射されると、リ級Eliteは回避行動をとろうとする。しかし、そうはさせぬとばかりに再び副砲の嵐に襲われた。
至近弾で足並みを崩したところに魚雷が命中し、あっという間にリ級Eliteも海の底へと引きずり込まれていった。
幸いにも今回は無傷で済んだが、もっと手強い艦……戦艦ル級などがEliteになっていた場合、苦戦することは間違いないだろう。
「とにかく、慢心しないよう注意しましょう。大淀さん、索敵はあなたと鈴谷さんにかかっています。頼みましたよ」
千歳の言葉に大淀も『はい。そうですね』と気を引き締める。
そう。大淀以外のメンバーは、練度50に近い。千歳に至ってはこの出撃から帰ればもう練度50に達し、改二になれると言われている。
実際は、鎮守府正面海域を突破したばかりの提督が保有する艦隊とは思えないほどの練度なのだが。
「そのためにも……負けられません」
さらに進むと、もう1つ艦隊を発見した。
「敵艦隊発見!『重巡リ級Elite1隻、軽巡へ級Elite2隻、駆逐ハ級Elite3隻』とのことです!」
「先ほどより速力に優れた艦隊ですね……ただ、その分火力は劣るようです」
「大丈夫、か?」
摩耶の言葉に鈴谷も頷く。
「そーだねー。Elite級ばかりだけど、中破までさせれば十分っしょ」
大淀も千歳もさすがに油断云々以前に弱体の艦隊を前に分析は十分すぎた。
「では千歳さん。お願いします」
「大丈夫、私に任せて」
飛び立っていった艦載機隊も呆気なく敵艦隊に大打撃を与えたようだ。
「報告によると、『軽巡へ級Elite2隻、駆逐ハ級1隻轟沈』とのことです!」
「十分すぎる戦果ですね。このまま会敵しましょう」
会敵し、射程に入ったところで副砲を撃ちかけて混乱させ、一斉射で片づける。今までと同じで拍子抜けしてしまうほどだった。
「敵艦隊そのものは強化されているはずなのですが……呆気ないですね」
だが、千歳はなにかを感じていた。
「なんでしょう……嫌な空気です」
進んでいくと、禍々しい空気がさらに強くなる。
すると、Scharnhorstの観測機から報告が入る。
「報告!敵主力艦隊と思しき艦隊発見!内訳は『輸送ワ級ラシキ船1隻、重巡リ級Elite2隻、軽巡へ級Elite2隻、駆逐ロ級Elite1隻』とのこと!」
「ワ級らしき船、ですか」
「汚野艦隊から聞いた、異形のワ級艦隊ですね……最後尾から旗艦に移っているところが気になります」
どのような敵かは分からない。だが、引き下がるわけにもいかなかった。
「千歳さん、お願いしますっ!」
「艦載機の皆さん、やっちゃってください!」
千歳の合図で艦載機隊と瑞雲が発艦し、敵艦隊上空に到着する。
すると、敵のワ級と思しき旗艦から、数こそかなり少ないが戦闘機が発艦してきた。
数は少ないながらも激しい空戦を繰り広げる戦闘機隊。その結果は……
「空戦は……制空権確保とのこと!攻撃の結果は、『軽巡へ級Elite1隻、駆逐ロ級Elite1隻轟沈。重巡リ級Elite中破』とのことです!」
「制空権を確保できたのは大きいですね。これでかなりの確率で、弾着観測射撃ができます」
無事に制空権を確保できたので、大淀と鈴谷、そしてScharnhorstの3名が弾着観測射撃を可能としている。だが、問題は……
「敵の旗艦……異形のワ級が無傷ですので、また航空攻撃が飛んでくると仮定するべきでしょう。なんとか大破まで追い込んで接近したいのですが……」
すると、摩耶がその豊満な胸を叩いた。
「安心しなって。敵機なら摩耶様が全部叩き落してやるぜ!」
摩耶も既に改になっているため、対空値がかなり高い状態となっている。その上『Fumo 25レーダー』など、高い対空値を誇る装備を持っていることもあって、対空能力はこの艦隊で最も高い。
榛名も改装し、三式弾改を装備しているが、総合的な対空数値はやはり摩耶に軍配が上がるため、彼女の方が頼りになるだろう。
そんな対空番長(摩耶)を頼りにするつもりで、艦隊はゆっくりと進む。この時点で結構疲労がたまっていたため、それを抜くために速力を原速にまで下げたのだ。
「分かりました。では、陣形を対空向けの輪形陣としましょう」
敵の航空攻撃を、来たら受けきるつもりである。
すると、やはり想像通り敵の偵察機が飛来してきた。
艦戦を積んでいれば敵の偵察機を迎撃することもあるのだが、今回は摩耶の進言もあって迎撃機は出さなかった。
というのも、摩耶に全て撃墜してもらえば、敵から航空攻撃を受ける回数を減らすことができる……うまくいけば、敵の全攻撃機を撃墜することで敵の航空機を全滅させ、航空攻撃をゼロにしてしまうことも可能になるのだ。
すると、摩耶の体が金色に光り出す。対空カットイン発動の証だ。
「摩耶様の攻撃!食らえぇーっ‼」
摩耶の各所から、機銃と高角砲が一気に発射される。特に機銃の曳光弾は空を光で染めんばかりの勢いであり、あっという間に敵の編隊が絡めとられる。
その結果、艦隊に接近した航空機はいたものの、全機撃墜することに成功した。
「やったなぁ!」
摩耶はかなり誇らし気だ。この鎮守府が始まってから初めて、彼女は対空戦闘を行ったのだが、やはり艦としての艦歴からか、その方が燃えるようだ。
しばらく航行していると、再び敵の偵察機敵が飛んできた。
「また撃ち落としてやるっ!」
そして、接近してきた航空隊に再び摩耶の体が光り、あっという間に放たれた機銃・高角砲弾が敵編隊を叩き落とした。
さながら、フラフラ飛んでいるハエを叩き落とすかのようである。
すると、千歳の妖精が彼女に耳打ちする。
「艦載機、再度発艦可能です!」
「鈴谷も行けるよ~!」
大淀は頷き、千歳たちは再度艦載機を発艦させる。
もはや敵の迎撃機もほぼないのか、わずかな機体が呆気なく撃ち落とされるのみであった。
その結果、さらに重巡リ級Eliteを撃沈、小破させることに成功した。
「どうしますか、大淀さん。これで接敵しますか?」
「……あと1回、あと1回、摩耶さんで迎撃できますか?」
「アタシは全然平気だぜ!」
「いざとなれば、榛名も補佐します!」
榛名にも『三式弾改』と『Fumo 25レーダー』を搭載しているため、対空戦闘では大きな力を発揮するだろう。
「では、お願いします」
すると、再び敵の偵察機が飛んできた。
だが、遂に機体が底をついたのか、わずかに数機が飛んできただけだった。
すると、最後は榛名の体が光り始めた。
「主砲、攻撃開始ーっ‼」
榛名が狙いを定めて三式弾改を発射すると、モロにその破壊の光に突っ込んだ敵機は全て消滅した。
「感激です!」
「へっ、美味しいところ持ってったじゃねぇか。ま、いいけどよ。で、どうする?」
大淀は決断する。
「敵機襲来の可能性がなくなった以上、一気に突っ込みます!陣形は単縦陣に変更!観測機からの報告を聞き漏らさず、正確な砲撃をお願いします!なお、これまで通り魚雷の使用は無しで行きます!」
「了解っ!」
「任せなっ‼」
「叩き潰す!」
「全力で参ります!」
「やりましょう!」
全員のやる気を受け、艦隊の疲労も最低レベルまで下がる。
「では、参ります!砲雷撃戦、用意‼」
接敵すると観測機が上空を飛び回り、敵の正確な位置を報告する。
そして、ようやく相手を視認した。
「あれは……ワ級の胴体が、2つ繋がっている?」
表現するのが難しいが、本来輸送ワ級は球体の船体を人間の下半身に接続されているのだが、その球体が連装……下品な表現だが、男の『キン○マ』のような感じか、桃に人間の胴体が生えたような感じに見えた。
「接近し次第副砲を撃ちかけて、敵艦隊を混乱させます。その後、主砲を一斉射してまずはリ級Eliteを沈めます。その後、なんとしてでも異形のワ級を大破まで追い込み、鹵獲します!」
まずは確実に1隻ずつ倒すため、長距離に入ったところでScharnhorstと榛名が砲撃を開始する。
「主砲斉射ァ!撃てぇーっ‼」
この砲撃により、小破状態だったリ級Eliteはあっという間に海に引きずり込まれていった。
だが、異形のワ級……大淀は仮称として『輸送姫』と名付けたが、輸送姫は小破もしていなかった。
さすがに頑丈なようである。
すると、輸送姫が主砲を発射してきた。
その主砲は、これまで一度も被弾したことのなかったScharnhorstに命中する。
「んにゃろう!殴り合いでも負けねぇぞ‼」
「シャルンホルストさん!」
幸い小破にもならなかったようだが、小破『寸前』までは一撃で削られていた。
「結構効くなぁ……重巡の主砲くらいの破壊力はありそうだ」
つまり、20.3cm砲並みの破壊力はある、ということのようだ。
「副砲斉射!」
砲弾が次々と命中して爆発するが、輸送姫は構わずに主砲を発射してくる。
だが、近づくにつれてその姿がより鮮明になる。
「あれは……桃色の髪!」
見れば、桃色の髪の女性らしき上半身が見える。伊勢たちのようにその腹部は大きく膨れ上がっており、大淀の見立てだが、伊勢型姉妹や加賀たちよりも膨れているように見える。
「やはり……あの人がSaratogaさんなんですねっ‼」
「大淀さん!」
「方針は変わりません!大破まで追い込んで、なんとか機能を停止させます!」
速度はそれなりに出ているようだが、まだ余力がありそうである。
そこで、大淀は決断した。
「前言を撤回します。魚雷を撃ち込んでください!」
「け、けどよう!」
摩耶が叫ぶが、大淀は1回の雷撃では沈まないと確信していた。なぜならば、戦艦2隻の砲撃を受けても小破にすらならない耐久力であった。
「私の分析を信じてください!」
大淀の強い言葉に、全員が頷いた。幸いなことに、今回の艦隊は魚雷発射管を装備しておらず、大淀も摩耶も鈴谷も、そしてScharnhorstも素で魚雷を装備しているが、その雷装値はそれほど高くない。
大淀はその『低さ』をあえて信じたのだ。
「皆さん、お願いします!これが……大淀型の力ですっ‼」
放たれた魚雷は吸い込まれるように輸送姫に向かっていく。
だが、大淀はその魚雷のほとんどが命中しないことを祈っていた。
「(お願いします!)」
すると、魚雷の命中が確認できた。
「命中、3本!輸送姫、大破!」
だが、それでも余力を残しているらしく、また砲撃をしてきた。今度は先頭の大淀に砲撃が向かう。
「大淀さん!」
だが、大淀は逃げなかった。
そして、運悪くクリティカルヒットになってしまった。その結果、服のあちこちは弾け飛んで大淀は中破する。
「ぐっ、やられました。で、でも、まだ沈みません。大淀沈みは、しません!」
それでもまだ能力は生きている。全員で副砲を撃ちかけると、輸送姫はようやく動かなくなった。
「や、やった……?」
榛名が呟くが、大淀は中破したままでも警戒を解いていない。
「気を付けてください。あの輸送姫は、もしかしたら洗脳されているのかもしれません。私たちが近づいたら、また攻撃してくるかもしれません……だから、十分に注意して近づいてください」
大淀はSaratogaと思しき輸送姫が攻撃してきたことから、そのように考えていた。
ゆっくりと接近すると、艤装の方はこちらを向こうとして、それでも動作不良を起こしたかのように『ギギギ』と動くだけだった。
「……砲撃、してきませんね」
大淀が恐る恐る手を伸ばすと、ワ級の人間部分が反応した。
『ア……アァァ……』
大淀は仮面に手をかける。仮面は……片側半分が呆気ないほどに外れた。
そして、その仮面の下を見た大淀は、分っていたことと言っても息を呑んだ。
「やっぱり、Saratogaさんだったんですね」
その女性……Lexington級航空母艦の2番艦『Saratoga』は、顔を上げた。
「あなた……オオヨド、よね……?」
「えぇ。私は大淀です。覚えていますか?タウイタウイ島の……鳳翔さんのお店で、那智さんや隼鷹さんと、一緒に飲みに行きましたよね?」
「Tauitauiisland……アナタ、あの?」
「はい、絶対……絶対、離しませんからね」
大淀は目尻に涙を溜めながら、Saratogaの手をしっかりと握った。音無の指令を全うできたことが嬉しいということもあるが、苦楽を共にした仲間、無事だったその最後の1人を救うことができたことが、素直に嬉しかったのだ。
「さぁ、皆さん。鎮守府へ帰投しましょう」
「待てよ、大淀。なにかくるぜ?」
一同が警戒していると、波を超えてやってきたのは艦娘だった。見れば、小さいながら飛行甲板を備えていることから空母のようである。
「どこかの鎮守府の艦隊ですか?」
「えぇ。申し訳ないけど、彼女を曳航するので、ついてきてくれますか?」
「良ければお手伝いしましょうか?」
「もしそうしていただければ助かります。ですが、彼女は結構……いえ、かなり重いですよ?」
だが、その艦娘は『フッ』と笑った。
「非力な身ではありますが、お手伝いさせてください」
こうして、その空母らしい艦娘を連れて艦隊は鎮守府へと帰投したのだった。
と、いうわけでラスボスも鹵獲改装された艦娘でした。
色々ご都合的な部分はあると思いますが……まぁ、ご容赦ください