※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

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タイトルが意味する言葉はいったい何でしょうか……
それはそうと今回、『彼女』が動き出します。


ワ級再び

 音無がぎっくり腰で倒れてから10日後、やっと思う通りに体が動くようになっていた。氷川丸にはもう2日くらいは様子を見て欲しいと言われたが、海域進出をこれ以上遅らせるわけにはいかないと、音無は指示するだけだからと復帰したのだ。

「ふぅ……やっと執務に戻れるってもんだ。海域の攻略も進めなきゃいけないのに、皆にはずいぶん迷惑をかけたな」

 その傍らでは、千歳が音無にネクタイを結んでいた。その姿は、まるで新婚さんのような光景である。

「大丈夫ですよ、提督。私を含めて皆演習を重ねて練度が向上してますから、無駄ではありません」

「ま、それならいいけどな……どんだけ上がったの?」

「そうですね……3日前までに着任した駆逐艦たちは、もう練度20を超えているので1回目の改装を終えてますよ?」

「早いな……それだけ皆熱心に頑張ってくれているってことか」

 というか、本当に正面海域を突破したばかりの鎮守府とは言えない練度の高さだが、それも全ては、音無の用心深さと言うか、念には念を入れる主義から来ているのだが。

「はい。他の軽巡・重巡の方も随分と頑張っています。古参の鈴谷さんや摩耶さんはもう練度50近いですよ?」

「ま、マジか……妙に練度高くね?」

「ですから、皆それだけ演習に精を出しているのですよ」

 実際、所属している艦娘同士で艦隊を組んで、艦隊演習も行っている。練習巡洋艦の香取が教官役としてあれこれと指導してくれているが、彼女だけでは足りていない。

 そこで、鈴谷や摩耶、神通や大井と言った古参メンバーが、砲雷撃戦に関しての教官役になってくれている。

 戦艦の遠距離砲撃に関しては榛名とScharnhorstが、航空戦に関しては鳳翔と蒼龍が教官状態になっている。

 装備の開発と、その装備の試験は夕張と明石、さらに由良も最近では加わっている。

 特に、偵察機に関しては夕張では搭載できないこともあって由良が主な試験役だ。

 大口径砲に関してはDeytschlandや大型戦艦である長門が試験役になっているのだが、それぞれの装備を試した一同から『普通の装備より性能がいい気がする』と評判がある。

 おそらく、これもチャーの能力なのだろう。

「まぁ、それなら他の皆にも前線にいっぱい出てもらった方がいいよなぁ……演習ばかりじゃ、得られないものもあるだろうしな」

 その日、音無は主力艦隊を招集して『バシー島沖』へ出撃することを宣言した。

「バシー島にはボーキサイトの備蓄があるそうだが、これを敵が狙っているという情報が入った。この海域を解放し、ボーキサイトを輸送する船団の安全を確保する!編成は……」

 編成は以下となる。

 

 

○ 飛鷹(烈風改×12・烈風改×18・彗星一二型甲×18・熟練艦載機整備員)

○ 隼鷹(彗星一二型甲×12・流星×18・流星×18・彩雲)

○ 伊勢(試製35.6cm三連装砲・15.5cm三連装砲(副砲)・瑞雲12型(六三四空)×11・試製晴嵐×11)

○ 日向(試製晴嵐を瑞雲12型(六三四空)に変更した以外は伊勢と同じ)

○ 扶桑(試製35.6cm三連装砲・15.5cm三連装砲(副砲)・瑞雲12型(六三四空)×10・瑞雲12型(六三四空)×10)

○ 山城(扶桑と同じ)

 

 

 蒼龍型並みの搭載力を誇る軽空母2隻と航空戦艦4隻がいるため、攻撃隊に関してはなんと脅威の120機であった。

 ちなみにチャーの誰もが驚く開発により、現在泊地に配備されている『瑞雲』は、全てが強化型になっているため、ただの数字以上の能力を発揮する。

 ハッキリ言おう。『殺す気か』。

 速力こそ遅いが、敵の砲撃を事前に回避することさえできれば十分戦えるだろう。

 艦隊の練度としては、飛鷹と隼鷹が18、伊勢と日向が19、扶桑と山城が25である。

 航空戦艦の軽空母並みの攻撃隊と正規空母に匹敵する攻撃隊が合わさることで、低コストで高性能な戦闘を繰り広げることも十分に可能であった。

 しかも、6隻中4隻は改装で火力が少し落ちているとはいえ金剛型戦艦並みの火力は十分にあるため、長い射程を活かして戦えば、それほど不利にもならないだろうとチャーから言われていた。

「皆、頼んだぞ!」

 全員で敬礼すると、艤装を装備するべく走り出す。

 中でも、伊勢と日向は初めての主力艦隊であった。

「やっと実戦だねぇ……日向、遅れないでよ、いい?」

「伊勢、はしゃぎ過ぎだ」

 たしなめるように日向は言っているが、やっと主力艦隊として出られるということもあってか、彼女もまた頬に朱が差している。それだけ興奮しているのだ。

 航空戦艦に改装されたとはいえ、やはり砲撃戦は戦艦として思うところがあるのだろう。

 

 

――バシー島沖

 艦隊は敵の影を求めて出撃する。いつもより速力が遅いが、元々低速艦ばかり(一番早いのが伊勢と日向の26ノット)なので仕方がないと言えば仕方がない。

 航行を始めて間もなく、艦隊からは多数の偵察機が飛び立っていく。

元々瑞雲は『九九式艦上爆撃機並みの爆弾(250kg爆弾)を抱えて急降下爆撃可能な水上偵察機』というコンセプトで作られているため、航空攻撃のみならず偵察も行えるのだ。

 かつての帝国海軍は水上機部隊として編成しようとしていたのだが、残念なことに時代は既に水上機がついていけるものではなくなっていた上に部隊の編成も追いつかなかったこともあり、ほとんど活躍することはできなかった。

 それが、この『艦これ』の世界では大きな力を振るうのだ。

 ある意味、大きなロマンであろう。

「偵察機より入電!敵水雷戦隊発見!『重巡リ級1、雷巡チ級2、駆逐イ級3』とのこと!」

 報告を受けた飛鷹が、艦載機を発艦させる。

「多少防御力が、弱くってったぇ‼」

 艦隊から発艦した航空隊は、敵に空母がいないこともあってあっさりと制空権確保に成功する。

 そして、彗星一二型甲、流星、瑞雲12型(六三四空)の混成編隊が、それぞれに攻撃を開始した。

 その結果は……

「攻撃隊より報告!敵艦隊……全滅!」

「やったねぇ!ヒャッハー!」

 隼鷹が嬉しそうに言うと、伊勢たちも嬉しそうだった。

「すごいね!晴嵐や瑞雲の強化型、Elite級もいない艦隊だとこんなにあっさり全滅させられちゃうんだぁ‼」

「ふふふ。時代はやはり航空戦艦だな」

「戦果を挙げられたこと、感激です」

「姉さまと一緒ならなんでもいいわ~」

 お前(山城)は少し黙った方がいい。

 敵艦隊を殲滅したため、艦隊は減速し、艦載機の整備を急がせる。どれほど強力な機動部隊でも、艦載機が発艦できなければただの的だ。

 そのために熟練艦載機整備員がいるので、その整備時間はかなり短縮される。

 すると、再び偵察機から入電が入る。

「偵察機より入電!『戦艦ル級1隻、駆逐イ級Elite1隻、駆逐イ級1隻、輸送ワ級3隻』を発見したって!」

「っ……ワ級か」

 伊勢と日向の表情が曇るが、当然だろう。

 かつて彼女たちは深海棲艦の手に落ちて鹵獲改装され、ワ級の胴体を接続されたうえで深海棲艦の補給に強制的に従事させられていたのだから。

 今でも少し思い出せば、体に震えが来てしまう。

「伊勢さん、一応聞くけど……鹵獲改装艦じゃない、よね?」

 飛鷹の質問に伊勢は『えぇ』と短く答えた。

「ワ級は全て青白い肌らしいわ。だから……問題ないはず」

 伊勢の言葉に日向も頷く。

「なら、容赦はいらないな」

 全員が頷くと、一斉に艦載機を発艦させる。

「さぁ、ミッドウェーの仇をとるわよぉ!」

 攻撃隊は一気に敵艦隊に迫っていく。

『ウリャリャリャーッ!』

『エリャリャリャーッ!』

 急降下爆撃機と雷撃隊の攻撃が炸裂し、猛烈な爆炎が巻き上がる。

「攻撃隊より入電!戦艦ル級及び駆逐イ級Eliteを除き、敵艦隊撃沈とのこと!なお、ル級とイ級Eliteは大破状態!」

「これなら、射程に入り次第攻撃すれば沈むかな?」

「ワ級は直接砲撃してやりたかったがな」

 物騒なことを言う日向に扶桑と山城も若干冷や汗である。

 だが、彼女たちの心中を思えば致し方ないところである。

「左舷、砲戦開始!」

 砲撃戦を開始すると、敵2隻はヨロヨロと航行しており、黒い煙を吐き出しているため、いい目標である。

「面倒だな。ここで殲滅させてもらう」

 4隻が主砲を発射すると、ル級とイ級Eliteは砲撃をする間もなく、海の底へと沈んで行った。

「まぁ、悪くない」

 またも呆気なく艦隊を倒すと、奥へ進んでいく。

 すると、日向の偵察機から報告が入る。

「偵察機より入電。『敵主力艦隊ト思シキ艦隊ヲ発見。空母ヲ級Elite2隻、重巡リ級FlagShip1隻、雷巡チ級1隻、駆逐イ級2隻』だそうだ」

 すると、音無から通信が入った。

『ちょっと待った。今FlagShipって言ったか?』

「はい。通常海域で確認できるタイプとしては最上位の存在と言ってもいいでしょう」

 艦種にもよるが、重巡リ級クラスのFlagShipともなれば、戦艦であろうとも練度の低さ次第では一撃で中破に追い込むことがある、と言えばその火力がうかがえる。

『対処方法は変わらないと言っていいのか?』

「はい。ただ、命中精度も高いので、接近する際は注意が必要ですね」

『くれぐれも傷を負わないように気を付けてな』

「了解です。じゃあ飛鷹さん、お願いね」

「了解‼さぁ、ミッドウェーの仇をとるわよぉ!」

 烈風隊が飛行していくと、ヲ級Eliteからも艦載機が発艦する。

 艦載機同士の激しい空中戦が展開される。その結果は……

「戦闘機隊から報告!『制空権確保』とのこと!これより攻撃隊が攻撃に入ります!」

 直後、水平線付近で爆炎が上がり、遅れて爆発音も聞こえてきた。

「攻撃隊より入電!『空母ヲ級1隻中破、1隻小破。駆逐イ級、雷巡チ級は撃沈!重巡リ級FlagShip小破!』とのこと!」

「流石にFlagShipともなると結構頑丈ね。砲撃戦で片づけましょう」

 開戦すると、山城が気合を入れるように声を上げる。

「敵艦隊発見!砲戦、用意して!」

 幸いFlagShipと言っても重巡なので射程は『中』のままである。

 つまり、今回砲撃可能な艦娘である戦艦の射程である『長』には、どう足掻いても及ばないのだ。

「西村艦隊の本当の力……見せてあげる!」

 幸いにもヲ級Eliteが攻撃を開始する前に射程に入れたこともあり、4隻が一斉に砲撃を開始する。

 砲弾は放物線を描いて飛翔し、着弾と同時に大きな水柱を上げた。

 その結果、旗艦のヲ級Eliteを残して撃沈した。しかも、ヲ級は中破状態だ。

 最後を決めたのは、隼鷹の攻撃隊だった。

「ふふん。ここで、全力で叩くのさぁ。いっけぇー!」

 発艦した攻撃隊は、もう攻撃ができないヲ級Eliteを海の藻屑にしてやったのだった。

「やりましたね」

 初めての主力艦隊となった艦娘ばかりであったが、低速かつ不幸艦の扶桑と山城がいたにもかかわらず、なんと無傷で勝利をもぎ取ることができたのだった。

 すると、水平線の彼方から影が迫る。

「艦娘かしら?」

「姉さまさえいればいいんだけど……」

 山城、お前は少し黙(以下略)。

「鎮守府に所属する艦隊ですか?」

「そうよ。一緒に来る?」

「はい、ご一緒させてください」

 艦隊は鎮守府に帰投する。

 掃討艦隊のメンバーも合わせて音無に顔合わせをする。

「初春型駆逐艦、初霜です。皆さん、よろしくお願いします」

「不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです」

「こんにちは!陽炎型駆逐艦、舞風です!暗い雰囲気は苦手です!」

「夕雲型駆逐艦四番艦、長波サマだよ!さーいくぜ、オーッ!」

 そして、最後はモデル体型とも言うべき、長身でヨーロッパ系に見える女性だった。

「えぇと、君は?」

「初めまして、Loyal Navy所属のBattleShip、Hoodと申します」

「フッド?ロイヤルネイビー……え、イギリス!?」

 そう。彼女こそ大英帝国が誇り、国民にも大人気だった巡洋戦艦、『Hood』であった。

 だが、音無はある一点を集中して見ていた。

「(あれ……?戦艦っていう割には……軽巡並みの装甲(おっぱい)っぽいけど……?)」

 すると、チャーとScharnhorstがヒョイと顔を出した。

「あれ?妙なのがいるな?」

「あん?戦艦かぁ?」

 すると、HoodがScharnhorstを見てガタガタと震え出した。

「びっ……」

「び?」

 音無や周囲が、訳が分からず首を傾げると、『びゃぁぁぁぁっ‼』と泣き出しながら伊勢と日向の後ろに隠れてしまった。

 あまりの高速に、伊勢と日向もなにも反応できなかった。

「ど、どうした!?」

「びびび、ビスマルクぅー!?やだぁ‼来ないでぇっ‼」

「あん?Bisのヤツを知ってんのか?」

 チャーはその一言だけでHoodの正体に感づいたようだった。

「そうか……お前、イギリスのHoodだな?」

「あ、あぁ。そう言ってるんだけど……何者?」

 チャーはバツが悪そうに頭をポリポリと掻いた。

「その、だな……巡洋戦艦Hood。通称、『マイティ(力強い)・フッド』とも言われた戦艦なんだが……1941年のデンマーク海峡海戦の際、戦艦『Prince Of Wales』と共にドイツの戦艦『Bismark』を補足したんだが……Hoodは砲戦開始からわずか10分足らずでBismarkの第5斉射を被弾したんだ。そして、その一発の38cm砲弾が運悪く弾薬庫に飛び込んだんだ」

「えっ、じゃあ……」

「弾薬庫の誘爆で、ほぼ一瞬で轟沈した。1418人の乗員中、生存者は……たった3名だ」

「さ、3人……Sidneyとはまた違うベクトルで悲惨だな。でも、それとシャルがなんの関係あるんだ?その戦いにシャルって参加してたっけ?」

 Scharnhorstは『ふるふる』と首を横に振った。

「えっ……シャルンホルスト……?ビスマルクじゃないの?」

「あぁ。俺はScharnhorstだ。あ、さてはお前、Bisと俺を見間違えたな?」

「ギクッ……」

 実は、そのデンマーク海峡海戦においても、Hoodの乗組員はビスマルクと共に行動していた『Prinz Oygen』をビスマルクと勘違いしていたという。

 だが、それは無理からぬことであった。

 何故ならば、ドイツの『Scharnhorst級戦艦』、『Admiral Hipper級重巡洋艦』、そして『Bismalk級戦艦』の3種類は、遠くから見た時の外観がよく似ているのだ。

 『Scharnhorstは三連装砲だろう?』という声も上がるだろうが、船から船を見るというのは三次元的よりも二次元的、それも横から見るというという点から、見間違いというのは起こりうるのだ。

 そんなHoodの要目と装備は以下となる。

 

 

○ 耐久 63

○ 装甲 24

○ 回避 30

○ 搭載 

○ 速力 高速

○ 搭載 0

○ 射程 長

○ 火力 72

○ 雷装 20

○ 対空 38

○ 対潜 0

○ 索敵 8

○ 運 5

 

 

○ 38.1cm Mk.1連装砲(火力+18・対空+1・命中+1)

○ 10cm単装高角砲(火力+2・命中+2)

○ 無装備

 

 

 音無は驚きを隠せなかった。これまでは金剛や扶桑たちでさえ、水上偵察機を艦載できるようになっていた。しかし、戦艦でありながらカタパルトを搭載していなかったせいで、Hoodは水上偵察機を搭載することができず、弾着観測射撃ができないのだ。

 しかも、砲弾1発で轟沈したことから運も、BismalkとPrinz Oygenを見間違えたことから索敵も、そしてイギリス流の『火力は高く足は早いけど装甲は薄い』というコンセプトの巡洋戦艦だったことから、装甲値は軽巡と重巡の間くらいしかないという低さである。

 その代わりにと言うべきか、第二次世界大戦開戦時には魚雷発射管を装備していたという事実から、改装もしていない高速戦艦でありながら雷装値がある。

 このため、優秀なレーダーを装備してやれば夜戦で大きく活躍するだろう。問題は、その間中敵の攻撃を受けないように立ち回らなければいけないというところだろうか。

「(なるほど……インディといいシドニーといい、なんかウチの鎮守府ってこういう一癖ある艦娘が来るよなぁ……でも)」

 どうやらステータスを見られたことで、Hoodは委縮してしまったらしい。

 こんな貧弱な能力では、鎮守府に置いてもらえないのではないかと不安を抱えているのかもしれない。

 実際、Hoodが建造されたのは1920年と長門やNelsonとそれほど差がない……と言うとそんなに古くないように感じられるが、そもそも海軍軍縮条約の影響で新たに建造される戦艦がしばらく途切れていたことを考える(日本がその後作ったのは最後の大和型で、大和の竣工は1941年と20年以上の月日が流れている)と、金剛や伊勢たちに比べれば若干新しいが、『団栗の背比べ』と言っていいほどの能力しかないのだ。

 高速戦艦と言っても、速力と防御力はScharnhorst級に、足では勝っているがバランスと言う意味では金剛型やBismalk級に及んでいないという点では、確かに『微妙』の一言に尽きる存在である。

 それに、よりによって因縁の深いドイツ艦が先着しているのも、怯えている原因のようだ。

 だが、こういう申し訳なさそうな顔をしている艦娘を、音無は何人も見てきた。だから、音無は自然と手が動き、Hoodの頭を撫でていた。

「お前のことを考えると、シャルたちがいるのは辛いかもしれない。でもな、不安を抱えて着任したのは、シャルも同じなんだぞ」

 それを聞いて、俯いていたHoodは顔を上げる。

「それに、国が違っても、お前と似たような境遇で沈んだ船はたくさんいる。船だった頃は言葉も交わせなかったし、敵同士だったから伝えることもできなかった。でも、今は艦娘として言葉を交わせる。国とか関係なく、時間をかけてでも分かり合える。だから、怖いかもしれないけど、シャルたちと語り合って欲しい」

「Admiral……」

 すると、距離をとっていたHoodの肩にScharnhorstがポンと手を置いた。

「このAdmiralは、着任するまで軍とか知らなかったから、俺らに対する偏見とか持たずに接してくれるんだ。俺は第三帝国への忠誠を忘れたことはない。でも、こいつなら……Admiralなら俺の全てを好きに使ってくれていいと思っている」

「シャルン、ホルストさん?」

「だからよぉ、俺らのこと怖がってくれてもいいけど、まずはAdmiralを信じてくれ」

「……そこまで、こちらのAdmiralをお慕いして?」

「おう。こんな半端者の俺と、妹のゼナ(Gneisenauのこと)も快く受け入れてもらえた。私たちにとっても、お前にとっても、ここはやり甲斐のある場所になると思うぜ」

 かつてはいがみ合っていた、しかもプライドがとても高い印象のある国であるドイツの艦娘が、日本人の指揮官を慕っている。

 環境が変われば、国は違っても分かり合えるというのは、今のScharnhorstの自信に満ちた表情が語っているのかもしれない。

 そう思うと、Hoodは丸めていた肩を広げて背筋を伸ばした。

「分かりました。巡洋戦艦Hood、Tauitauiisland鎮守府に着任します。こんな私ですが、Admiralのお力になりたいと思います。え~っと……Japanのことわざで、え~っと『粉骨砕身』?」

「努力はいいけど砕けるなよっ!?」

 真面目にツッコミを入れて心配してくれた音無の顔を見て、Hoodはプッと吹き出した。それから声を出して笑うHoodを見て、音無は大丈夫かなと思った。

 なお、声帯の妖精さんは『一度しか砲撃を当てたことのないトリガーハッピーにしてノーコンの生徒会広報』、『第三帝国のナイトウィッチ』の声で一つ。

 

 

 その後、改めて食堂へ行ってみると、SidneyとKormoranが楽しそうに談笑している姿があった。

 彼女たちもまた、かつては互いに撃ち合った経歴を持つ存在だったが、艦娘として人の姿と心を得てからは、意外にも仲良くやっていた。

「ですから、相手が油断するように振舞うのも1つの策なのです」

「ですけど、そこまで騙し討ちにしてはあまりに卑怯ではないでしょうか?」

 だが、Kormoranはニコニコと笑って返す。

「あらあらぁ。国の命運をかけた戦争に卑怯(ヒキョウ)もラッキョウもありませんわ。あなたの宗主国であれば……そう言うのではなくて?」

「えぇ~……」

 騙し討ちに遭ったSidneyは呆れているが、実際その通りだ。

 イギリスは戦争の技術や戦法もそうだが、外交などの裏という面でも手段を択ばず、狡猾な点が多かった。

 もっとも、その割には第一次世界大戦のあとで結局ドイツの発生させる第二次世界大戦を防げなかったのは情けないと言えば情けないが、なんだかんだ人間なのでそこは仕方がないと言えるだろう。

「それはそうと、この肉ってオーストラリアから来てるんでしょう?おかげで美味しいご飯が頂けてますわ」

 幸い、オーストラリア周辺は制海権と制空権が確保されているため、そちらから補給ができているのだ。

「はい。我が国では……」

 そんな談笑している2人を見て、Hoodも笑顔を見せた。

「なるほど。Admiralの目指す鎮守府……分かった気がします」

 他にも、翔鶴とHornet、Graf Zeppelinとマラートなど、一癖も二癖も因縁のありそうな艦娘が談笑しているのは、すごいと素直に思えるHoodだった。

 強いて言えばマラートとGraf Zeppelinは直接の関係があるわけではないのだが、Graf Zeppelinに搭載される予定だった爆撃機が『Juー87』シュトゥーカだったため、そういう点での因縁である。

「スツーカ(シュトゥーカの別な呼び方)みたいな旧式の機体に、1tもの爆弾を搭載できるのは大したものだ。同志たちが作り出した機体でも、そのような真似ができる機体はほとんどなかったからなぁ」

「なぁに。これは全て、第三帝国の技術者たちが頑張ってくれたんだ」

 実際、『Juー87』は九九式艦上爆撃機に近いレベルの機体(太平洋戦争中盤にはもう旧式化していた)なのだが、1t爆弾を無理して積むわ、37mm機関砲を両翼にポン付けして『Tー34』を始めとする戦車や装甲車などを血祭りにあげたという経歴を持つ、とんでもない機体である。

 もっとも、37mm機関砲を付けたタイプに関しては、かなり操縦が難しかったとのことで、戦後になってから連合軍が『空の魔王』・ハンス・ウルリッヒ・ルーデルに『どうやってあんな大戦果を挙げたんだ?』と聞いたところ、『シュトゥーカに37mm機関砲をポン付けしてやった』と言って連合軍の一同を唖然とさせたのは有名な話。

 その魔王大佐殿ですら、『あれは扱い辛い』と言ったという。

 

 

 その夜、音無は寝室で1人考えていた。

「チャーに言わせると『本来の艦これに存在しない艦娘たち』か……でも、仲間っていうか家族が増えるのはいいことだよな」

 それと同時に、改めて体を動かしてみる。肩のストレッチをしてからアキレス腱を伸ばし、前後屈をする。しかし、数日前まで襲ってきた腰の痛みはすっかりなくなっていた。

「氷川丸の予想以上に、回復が早かったな。もしかして、千歳の母乳飲ませてもらったのと、なにか関係あるのかな?」

 千歳を抱いて母乳を飲ませてもらうようになってから、音無は体が軽くなっていることを実感している。艦娘の体は入渠することによって、中破以上の大ケガも1日以内に治る。

 その艦娘である千歳の母乳は、もしかしたら音無の体の回復も早くしてくれているのかもしれない。そう考えると、千歳への感謝が胸を満たす。だが、同時に別の想いも湧いてくる。

「……どうしよう、勃ってきちまった」

 妙高に介抱してもらった10日間、音無は誰も抱いていない。1日1回は妙高が奉仕してくれていたが、ここ最近は一晩に5・6回は腰の主砲を発射している状態だ。そんな音無に1日1回と言う回数は、はっきり言って生殺しもいいところなのだ。

「だいぶ遅い時間だけど、千歳に来てもらおうかな。それとも、回数したいと思うと天龍と龍田に一緒に来てもらうか……」

 そんなことを悶々と頭の中で考えていると、扉をノックする音が耳に入り思考を中断した。音無は腰の状態を見られては気まずいと思い、椅子に座って誤魔化そうとする。

「誰だ?」

『提督、妙高です』

「どうぞ」

 音無が入室を許可すると、「失礼します」と礼儀正しい挨拶が聞こえ、扉が開いた。妙高は神妙な顔で扉を開けて、そっと閉めてから改めて体を向ける。しかも、いつもの服ではなく、浴衣に身を包んでいる。長い手足とバランスの取れた肢体が、浴衣姿をより美しくしていると音無は感じた。

「夜分遅くに失礼いたします、提督」

 今まで妙高が自室を訪問する際、制服以外で入室したことはない。そんな妙高が、就寝前の遅い時間に、しかも明らかに寝巻に使っている浴衣で入室してきた。はたして、妙高の想いとは……。




さてさて、妙高姐さんがどうなるか、次回をお楽しみに……
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