戦闘回ですね。ただ、最初の方でちょっとばかり妙高の協力者が判明します
タウイタウイ島の鎮守府に、朝日が昇る。
まだ5時過ぎではあるが、音無は目を覚まして起き上がっていた。
「……俺、こんなに学習能力なかったっけ?」
音無の隣では、昨夜責め立てられた妙高がスヤスヤと眠っていた。
だが、妙高の下半身は音無と繋がったままで、よく見ればその腹部はポッコリと膨らんでおり、体のあちこちにナメクジがのたくったような跡が多数ある。
文字通り一晩中、妙高の引き締まった肉体を貪り、明け方にぐったりとするまで犯しぬいたのだから当然と言えば当然だろうが。
「大淀の時といい、なんだか真面目なタイプに限って抑えが効かないんだよなぁ……」
それもこれも、大淀や妙高と言った、責任感の強い真面目な女性が一生懸命な姿が眩しく思っていた。
だからこそそんな彼女たちが自分を貶めることや、責任感の強さから自分のことを罰して欲しいと迫ってくると、なんとも言えない気分になってしまうのだ。
仕方ないので、妙高を寝かせたまま音無はバスローブを羽織って外へ出た。
しかし、そんな彼を後ろから見ている影があった。その影は、フラフラと歩く音無の後ろにゆっくりと付いて行くのだった。音無が脱衣所に入ってバスローブを脱ごうとすると、疲労が抜けていないのかふらついてしまう。
すると、優しく抱き留めてくれる柔らかい腕の感触を感じる。
「その様子だと、明日からが楽しみになります」
「……もうどこまで知ってるかも聞けないよ、千歳」
音無の後に付いてきていたのは、やはりと言うべきか千歳だった。しかも起きてそのまま来てくれたのか、妙高と同じ色の浴衣姿だ。妙高以上の圧倒的な大きさの胸部装甲が、浴衣の中でユサッと揺れる。
「妙高さんが昨夜こそこそ入っていったのは部屋の窓から見ていたので、このパターンだと今朝もこの時間かと思って」
「読まれてるとなおのこと学習能力ねぇって感じるわぁ……」
千歳に先読みされたのがショックだったのか、頑張って体を支えようとした下半身からも力が抜けてしまう。
「うふふっ、いいんですよ。男が女を求めるのは、本能なんですから。抑えなくていい時はぶちまけていいんですよ」
「お淑やかな口調でぶちまけるとか言わないで」
やつれながらもツッコミを入れる音無を支えて、千歳がゆっくりと座らせた。
「妙高さんは後で私が洗っておきますけど、このままにもできませんものね」
千歳は浴衣の帯を解いて乳房をボロンと露出させると、きれいなピンク色の乳首を音無の口に含ませた。柔らかい感触を口内に感じると、音無は強く吸い付いて母乳を吸い出す。
母乳をたっぷり吸って10回ほど嚥下すると、先ほどまでの疲労感が嘘のように抜けたのを感じる。
「あぁ……ホント、これには癒されるよ」
「そう言われると、とても嬉しいです」
結局、またもや両方の乳房からたっぷりと補給を受け、ようやく回復した音無だった。
千歳と共に食堂へ向かうと、昨日着任したHoodが料理をしているではないか。
音無は以前本で『世界一飯がマズイ国』としてイギリスが掲載されていたことを思い出し、ギョッとしてしまう。
「(おい、大丈夫なのか!?)」
だが、よく見れば同じイギリス出身の金剛や間宮がちゃんと見てくれているらしい。それどころか、ゆりも見ているようだった。
「あぁ~……これなら大丈夫かな」
ぼそりと呟いた音無に千歳は『え?』と首を傾げるのだった。
その結果作られたのは、ミートパイとコーンスープ、さらにレタスとキュウリに魚とエビを中心としたカルパッチョだった。
それでも主菜は白米だったが。
「なぜにカルパッチョ……元はイタリア料理だろ?」
「細かいことは気にしない。美味けりゃいいんじゃね?」
日向(ひなた)が軽く言うと同時に、豆知識の多い高松が補足する。
「そもそもカルパッチョとは、刺身を食べたイタリア人が真似した逆輸入料理らしいですよ」
「マジ!?」
「マジです」
高松は確かに見た目だけ知的に見えるアホの子にして熱烈なる筋肉バカだが、豆知識は本物である。
「ま、腹さえ壊さなけりゃいいけどな」
多少疑いながらも一口食べてみると、ミートパイは肉の味を出すためなのか、塩と胡椒を中心とした割とシンプルな味付けだった。カルパッチョもレモンの果汁をかけているのでさっぱり系だが、それに反比例するようにコーンスープは濃い目でミルキーになっている。
「うーん。想像していたイギリス飯とはずいぶん違うな。どっちかって言うと体によさそうな感じだ」
実際、イギリスの料理の多くがメシマズとはいえ、全てがそうという訳ではない。
ちゃんと美味しいものは美味しいのだ。しかも、味と香りにうるさい金剛が監修していたおかげで、日本人好みの味になっている。
なので、白いご飯にもよく合うのだ。
「うん。こりゃ美味しい。流石だよ、金剛、Hood」
「Yes!テートクに誉められましター!」
「うふふっ、Thanks」
だが、そこにHoodはイギリスの調味料(劇薬)たる『マーマイト』を、イギリスの流れを汲むオーストラリア艦娘であるSidneyも『ベジマイト』をたっぷりと白米に乗せて美味しそうに食べているのだった。
もっとも、日本人の味覚を持つ金剛や、元同盟国ソビエトの艦娘であるアルハンゲリスクは冷や汗を流しながら『ニエット』と敬遠していたが。
音無も物の試しにと少し口にしてみたが、その直後に校長室の窓の外を飛ぶ光景を幻視し、『あ、死んだ』と思ったのだった。
なお、三途の川を渡りかけた音無を蘇生させたのは、千歳のおっぱいだったのは言うまでもない。
当然ながら、HoodもSidneyも、音無のことを気遣う大淀と、料理にとてもうるさい鳳翔さんに滅茶苦茶怒られたのだった。
なんとか蘇生した音無は、海風に当たりながら工廠に向かった。昨夜から感じている疑問を確かめるためだった。
「よぉ、おはようさん。腰はもう大丈夫そうだな」
「ああ、妙高がしっかり面倒見てくれたからな」
ニヤニヤしながら朝の挨拶をするチャーに、音無は苦笑いしながら返事をする。チャーは座って装備の点検をしていたので、隣に置いてあったパイプ椅子に座る。
「どうした、なにか聞きたいって顔してるぞ?」
音無の意図を読み取ったのか、先手を打って尋ねてきた。チャーは50人以上いるギルドのメンバーをまとめる能力がある。相手の表情を読み取るのは慣れているらしい。敵わないと思った音無は、単刀直入に尋ねた。
「昨夜の妙高のあれはお前が手伝ったのか?」
音無が直球に尋ねると、チャーはニヤリとしながら口を開いた。
「お察しの通り、あれを教えたのは俺だよ。ただし、やったのは俺じゃなくて明石だけどな」
「明石が?」
「明石を責めてやるなよ。お前の面倒を見ている合間も、ずっと妙高に頼まれたんだ。その剣幕に負けちまったのと、自分が同じ失態を犯したら同じことを言ったかもしれないと感情移入しちまった結果だ……で、どうだった?」
「……どうだったって……」
「女の縄化粧を見て、どう感じたかって聞いてんだよ」
チャーは冷静に、音無に感想を聞いてきている。だから、音無も感じたままを述べた。
「キレイだったって言うのと、拘束力がまるでないってことかな」
「その通り。亀甲縛りって言うのは、体に縄を這わせるだけだから、実質飾りみたいなものなんだ。本来、江戸時代辺りまでは米俵を作る縛り方だったのが、いつしか罪人を示す縛り方になり、現代ではSMプレイの代表的な縛り方になった」
「いつも思うが、なんでそう自分の趣味以外のことまで詳しいんだ?」
「俺の周りも、そういう変わり者の巣窟だったってだけのことよ」
チャーが言う『俺の周り』とはチャーが死ぬ前の、奥さんを含めた周囲の友人たちのことだと音無は理解した。
「で、感じたのはそれだけか?」
「その……俺が縛ってから、妙高の反応が妙に色っぽかったというか、なにか悦びとか安心感を得ているように見えた」
「もしそれが分かるんだとしたら、お前は今後もこういうことになると思うぞ」
「どうして?」
「どういうことか知りたいのなら、恥ずかしいかもしれんが大淀辺りに聞いてみな。艦娘のことは、艦娘に聞くのが一番だ」
チャーはそれ以上教えてくれなかったので、音無は執務室に入ってから大淀を呼び出した。妙高のことを話すと、大淀は『あぁ、やはり』という顔をして、あることを話した。
「恐らく、『繋留』された悦びだと思います」
「繋留?港にいる船が波とかにさらわれて行かないように、岸に繋げておくっていうあれか?」
「はい。船は港に帰港した後、錨を降ろしてロープで岸に繋がれる。そうして、ようやく船として休むことができる。我々艦娘にとっても、繋ぎ留めていただくという行為は、安心感を得られるのです」
「それが、人間でいうところの緊縛だって言うのか?」
「もちろん、全ての艦娘がそうではないと思います。よほど素直な子であれば、提督に手を繋いでいただいただけでも安心感を得ると思います。ですが、我々は人間であり船です。船と同じことをすることに、不思議はございません」
「じゃあ、昨夜の妙高が悦んでいるように見えたのも……」
「提督に繋いでいただいてると心のどこかで感じ、嬉しかったのだと思います。そして、1人でもそうなったという噂が立てば、他にもそう申し出てくる艦娘は必ずいます」
「……前の鎮守府でも、そうだったのか?」
「……はい。先任の場合は艦娘の休養に繋がるならという、どちらかと言えば義務的な感覚だと私は見ていました。こういっては失礼かもしれませんが……音無提督のように、縛った艦娘を抱いたというのは聞いておりませんし」
自分のしたことを他人に説明されるのは、音無の心になにかが刺さった感覚を覚えさせる。
「元々、提督の宿舎にあれだけの部屋が用意されているのは、艦娘との憩いの時間に当てるためだと伺っております。艦娘が出現して間もなく、複数の艦娘と肉体関係を持った提督というのが少なくなかったそうで」
自分だけなのかと思っていただけに、音無は胸の内で驚いていた。
「私がここに着任する以前に、一部の艦娘の『繋留』による精神安定が見られ始めたと報告があったそうです。それ以来、部屋の一部はそのために使われる『繋留室』になっています」
「そんな事情があったのか……」
「ただ、提督がそこまでされるかは不明でしたので、こういった事態になるまではと黙っておりました。申し訳ありません」
「……やらないと、ダメかな?」
「正直に申しまして、これは提督のお考えも反映されます。提督がこれ以上はという場合は、無理にする必要はありません。しかし、もし提督が嫌でなければ……自分から申し出る子は間違いなく悦ぶと思います」
大淀の説明を聞いて、音無は自問していた。今まで自分にそんな趣味はなかった。普通の恋愛を望み、普通に子供を作りたい。どちらかと言えば、一般的と言える恋愛の感覚だったと思っている。だが、音無は妙高を抱いた時のことを思い出す。
スラリと長く美しい肢体が、縄化粧によって引き締められ、その細さを強くアピールしている。どちらかと言えば乱暴に扱っているはずなのに、喘ぎ声をあげて妙高は悦んでいた。そして、その妙高を抱いている自分も昂ぶり、何度も彼女に性欲をぶつけた。
つまり、嫌どころか楽しんでいたのだ。
これで妙高にやっておきながら、他の艦娘に頼まれてもできないと断っては、彼女たちのストレスの原因になりかねない……しかし、それだけではなかった。
「(いいや、これは建前だ。千歳を初めて抱いて、大淀や鈴谷を受け入れて、その子たちにも色んなヤリ方の好みがあった。なにより、俺自身が楽しんでいた。毎回そうすることはないだろうが、たまにヤリ方を変えてなにが悪い。それで俺も皆も楽しめて、気兼ねなく演習をこなして出撃できるのならいいじゃないか)」
目を閉じながら頭の中でずっと考えて、音無は深呼吸を繰り返した。目を開くと、座っている自分を立って見下ろす大淀の顔を見た。
「分かった、前向きに考えるよ。なにより、妙高と一晩中しまくっておいて、楽しくなかったなんて言い逃れはできねぇしな。それで皆のやる気に繋がるなら、それもありなんだろう」
「夜のヤル気、の方ですか?」
「任務の方だ!」
そこは本気でそう思っていたので、音無は久しぶりに大きい声でツッコミを入れた。そんな音無の顔を見て、大淀は一瞬呆けたが、次の瞬間には2人揃って笑っていた。
すると、大淀が顔を赤くしながら口を開いた。
「でしたら、提督……」
「なんだ?」
「私で、練習をしてみませんか?」
「へっ?練習って、縛り方のか?」
「はい。その、縛り方は体格や好みで変えなければいけないでしょうし、変則的なパターンを求められる場合もあるでしょうから、経験しておくに越したことはないかと」
「そ、それはそうかもしれないが……」
「なにより、私のような貧相な体で見慣れておけば、千歳さんたちみたいに豊満な方たちを見た時はより楽しいでしょうから」
その一言を聞いた途端、音無は突然立ち上がった。あまりの勢いに、椅子が壁にぶつかり大きく音を立てた。音無はそのまま困惑している大淀に詰め寄る。
『えっ』と驚く大淀の顔の横を音無の右腕が通り抜け、壁をドンと鳴らした。いわゆる『壁ドン』である。
「あ、あの……」
「前に俺のところに来てくれた時も言ったよな、そういうことは言うんじゃないと」
そのことを、大淀は忘れていた。音無が初めて見た大淀の裸体は、確かに千歳や千代田に比べると細身で、どちらかと言えば健康的という雰囲気だった。それでも細身で長く、白い肌はお世辞抜きに美しいと音無は感じた。
だから、抱いた後で大淀に言ったのだ。
『肉付きの良さだけが体の魅力じゃない。お前の体は間違いなく魅力的なんだから、自分をあまり貶めるなよ?お前を抱いた俺が言うんだから、信じてくれ』
音無が自分に魅力を感じてくれていたから、その時は素直に嬉しかった。しかし、新しい挑戦といえる今回のことばかりが頭に浮かんでしまい、ついその時のことを失念していたのだ。
「自己分析ができること自体はいいことだ。だが、人が自信を持って伝えたお前自身の魅力を損ねるのは、相手に対する冒涜だ」
「も、申し訳ありません。ただ、体格の差でやり方も変わるだろうと思っての発言でして」
頭を下げて弁明してきた大淀の顎を持ち上げた左手に載せ、グイと上げさせる。壁ドンと並んで異性がときめくシチュエーション『顎クイ』である。自然とやってしまうのだから、音無という男は恐ろしい。
「いきなりこんな話を振った俺の問題もある……が」
その瞬間、音無は左手で大淀の後頭部を押さえ、そのまま唇を重ねた。突然のことに大淀も困惑しているが、音無は右手で彼女の鼻を摘まんだ。呼吸ができなくなった大淀は音無を振り払おうとも考えたが、自分が慕っている相手を艦娘の馬力で突き飛ばせばどんなことになるか、そう考えるだけで大淀は動けなかった。
5秒ほどして音無が唇を放すと、大淀は吸えなかった分の空気を何度も吸った。
「すうぅ、はあぁ、すうぅ、はあぁ……て、提督……」
「今回はここまでにしておく。だが次に俺の前で自虐したら、いくら俺でも痛い目を見せるからな」
その鋭い眼差しを少し怖く感じながらも、大淀は胸がなぜか高鳴っていることに気付いていた。
「(あぁ……提督ったら、そこまで私のことを考えてくださるなんて……き、緊縛はいずれまたとして、今は、提督がそのように私を想ってくれていることをよしとして、執務に集中しましょう)」
その後音無は、執務室で次の海域『東部オリョール海』についての資料を見ていた。
長距離をそれなりの高速で航行できる『夜間戦闘機 月光(超・熟練)』に偵察させた結果、この海域には『空母と戦艦が同時に出現する』という特徴があった。
今までは空母と戦艦は別々で出現していたのだが、同時に出現するとなると、かなり厄介だと音無は考えていた。
音無が考えているレベルの『厄介』の目安は、南西諸島海域の次である北方海域どころか、その次である西方海域より先の話なのだが、それはさておき。
「航空攻撃と大火力か……油断すると絶対に大打撃を受けるな。やっぱり、空母2隻と航空戦艦4隻で行くべきか……」
実際、この鎮守府はボーキサイトに関しては自前で調達できるため、空母2隻と航空戦艦4隻と言う航空火力マシマシ艦隊で出撃しても全く問題がない。
装備に関しても、主砲の強化装備である『試製35.6cm三連装砲』を装備しているため、火力に加えて命中精度もかなり高いという特徴を持つ。
さらに、搭載機も『瑞雲12型(六三四空)熟練』や『試製晴嵐』と言った強力な艦載機が多数搭載されているため、出撃における制限さえなければかなり強力な艦隊である。
この尋常ではない装備に音無本人の用心深さもあって、練度の数字以上の高い戦闘能力を発揮する艦隊となっていた。
「水雷戦隊の場合は北方海域にあるっていう『キス島』の戦いで必要になるって言うし……今は敢えて戦艦を中心とする打撃群に頑張ってもらうか」
という訳で、今回は空母の編成を弄ってみる。
編成は以下となる。
○ 翔鶴 烈風改×21・彗星一二型甲×21・流星改×21・熟練艦載機整備員
○ Hornet F4Fー3×36・SBD×18・SBD×18・TBD×15
○ 伊勢・日向・扶桑・山城 前回と同じ
芸がないと言えば芸がないが、それだけ強力な艦隊なのだ。
音無が編成を確認していると、ドアをノックする音が響く。
「どうぞ?」
扉が開くと、そこには伊勢と日向が立っていた。
「提督。今、いいかな?」
「あぁ。大丈夫だぞ」
2人は入ってくるが、なぜかやたらとモジモジしていた。
「ん、どうした?」
すると、伊勢が意を決した表情で音無に『ズイ』と迫ってきた。『ズイ・ウン』ではない。
「あの、提督っ。お願いがあるんだけど……」
「お、おぉ……言ってみろ」
「あの、ね……この東部オリョール海を攻略できたら、私と日向のこと、抱いて欲しいな、って思って……」
「……」
音無としては『ついに来たか』と考えていた。
「やっぱり、駆逐艦の子たちに補給するだけじゃダメか」
「……うん。そうなの」
「体の疼きが……治まらない」
2人はどことなく悔しそうな顔をしていた。軍艦の化身として、ましてや軍艦の花形とも言える戦艦なのだから『我慢』や『忍耐』というのは大事なことだと分かっている。
にもかかわらず、対処療法は十分ではなかった。
「そうか。なら、俺が頑張らないとな」
「っ……ホントに、いいの?」
「あぁ。俺はもう肚を決めている。お前たちがそれで少しでも楽になるのならいいと思うし、俺自身、お前たちのようないい女を抱かせてもらえるなんていうことに文句をつけようもんなら、天照大御神様に武御雷を落とされるってもんだ」
伊勢が伊勢神宮のある三重県に、日向が神聖な地の多い宮崎県(日向国)の名前をもらっていることからそのように2人に例えたのだ。
「ありがとう、提督」
「私たちのことも、どうかよろしく頼む」
2人は深々と頭を下げる。
「それにしても、なんでオリョール海なんだ?南西諸島海域の最後は『沖ノ島沖海域』だったよな?なにか理由があるのか?」
すると、2人は顔を見合わせて口を開いた。
「実は、ね。私たちが前の提督の時に初陣を果たしたのが『東部オリョール海』だったんだ……」
「えっ……」
「その時はまだ航空戦艦に改装もされてなくてな。装備だって、工廠長が作ってくれるような恵まれたものもなかった……」
「どう、だったんだ?」
2人は『ふっ』と苦笑した。
「惨敗だった。空母は一応正規空母の赤城がいて、その他の重巡や軽巡もいたが……制空権はギリギリで拮抗して、結局なんとか敵艦隊を追い払うことに成功はしたが、我々もズタボロにされた」
「私たちが鈍足艦で足を引っ張っちゃったからねぇ……」
「そうだったのか……」
「だから、ね。この海域を完全に開放できたら、って思ったんだ」
「ダメ、だろうか?」
だが、2人にとって因縁の場所だと聞いた音無は首を横に振った。
「ダメだな」
「えっ」
「ここにきてそれは……」
伊勢と日向がしゅんとする顔を見ながら、音無はニヤリと笑って見せた。
「抱きまくってやる」
「「……えっ?」」
「お前たちが眠れなくて困るくらいヤリまくってやる。約束以上のことしてやるから、覚悟しておけよ」
そんな猛烈な夜を想像しただけで、2人の顔は真っ赤になった。
「提督……ありがとうっ」
「感謝する」
そんな2人の思いを胸に、主力艦隊は出撃する。
――東部オリョール海
この付近は島も多く、そこを守る守備隊も多数存在する。だが、深海棲艦はここに攻勢を仕掛け、一部を占領することで自分たちの拠点としているのだ。
かつて1度は解放した海域だったが、前任提督が死亡した際に防衛線が崩壊、深海棲艦によって再侵攻、攻略されてしまった。
当然、遊弋する艦隊を撃破すれば、この海域を取り戻せる。
その思いを胸に、艦隊からは次々と偵察機が発艦し、各方面を偵察する。
すると、扶桑の偵察機から報告が入る。
「偵察機より入電。『重巡リ級Elite2隻、無印リ級1隻、駆逐ハ級3隻』の艦隊を発見とのことです」
その報告を受けた翔鶴が頷く。
「では、艦載機隊を発艦させます。行くわよ!全機、突撃‼」
翔鶴の合図と共に、各艦から攻撃隊と瑞雲が発艦する。敵に空母はいないため、そのまま制空権の確保となる。
『ヒィヤァー!』
『デリャァッ!』
結果は……
「重巡リ級Elite2隻を除き、4隻撃沈。なお、残存リ級Eliteはそれぞれ小破と中破とのこと!」
「OK。十分すぎる戦果だわ」
やはり空母の攻撃隊に加えて改良型の瑞雲がいるのが大きいようだ。敵艦隊に事前に大きなダメージを与えられるようになっている。
そのため、砲戦開始してすぐに射程に入った航空戦艦4隻の砲撃を受けたリ級Elite2隻は、呆気なく魚のエサとなったのだった。
「うわぁ……あの頃じゃ考えられないくらい……」
「あっさり片付いたな」
これが伊勢と日向だけであれば、ここまではいかないかもしれない。しかし、扶桑と山城も瑞雲12型(六三四空・熟練)を装備して加わっているために航空火力がマシマシなのだ。
余程手強い相手でなければ、そう苦戦するほどもないくらいの能力なのである。
その後も『重巡リ級Elite2隻、無印リ級2隻、駆逐ハ級2隻』の艦隊や『戦艦ル級1隻、軽母ヌ級2隻、重巡リ級、輸送ワ級2隻』、『空母ヲ級1隻、戦艦ル級1隻、軽母ヌ級2隻、輸送ワ級2隻』と立て続けに戦闘したが、空母ヲ級も烈風改の前では呆気なく制空権を取れるレベルの雑魚になってしまっているため、問題なく突破してしまった。
「昔来た時、主力艦隊の前のヲ級艦隊にすごい苦戦したのが嘘みたい……」
「練度上げを重視してくれた提督と、装備開発に尽力してくれた工廠長には感謝しかないな」
伊勢たちが笑顔でほほ笑むと、扶桑と山城もつられて笑っていた。というか、いくら扶桑がいると言っても山城が他人の前で笑顔を見せるのは珍しい。
それだけ、SSS鎮守府が、彼女にとっても居心地がいいのだろう。
だが、そんな空気は日向の偵察機から入った報告によって一瞬にして塗り替えられる。
「ん。敵主力艦隊と思しき艦隊を発見。『空母ヲ級Elite1隻、、空母ヲ級1隻、戦艦ル級1隻、重巡リ級、駆逐ハ級2隻』だそうだ」
「……昔、ボコボコにされたけど、今回は負けないんだから!」
「あぁ。私たち自身もあの時よりは強いつもりだし……」
日向がチラリと前後を見る。
「頼りになりすぎるくらい頼もしい仲間もいる」
その言葉に翔鶴もHornetも、扶桑と山城も強く頷いた。
そして、翔鶴が艦載機を発艦させる。
「直掩隊も、攻撃隊の援護に回って!」
相手は初めて相手する空母ヲ級のEliteである。果たして、制空権はどうなるか……緊迫の時間が過ぎた後、翔鶴に報告が入る。
「制空権……確保です!」
「やったぁ!」
「Great!」
さらに攻撃隊から報告が続く。
「敵の損害報告!『駆逐ハ級、重巡リ級轟沈。空母ヲ級Elite中破、無印ヲ級小破』とのこと!」
「無印とはいえ、戦艦が無傷か……やはりそううまくはいかないか」
「ねぇ、時間もあるから、もう1回航空攻撃してみる?」
だが、そう言っていた矢先に敵の偵察機が飛来してきた。
「やばっ‼」
「艦隊、最大船速‼このまま敵艦隊に突っ込みます!」
航空攻撃を受ける前に砲戦開始に持ち込めば、敵艦載機の攻撃をキャンセルできる。翔鶴はそれを狙ったのだ。
幸い、敵の背後からゆっくりと近付いていたため、最大船速にしても低速の航空戦艦4隻が落伍する前に敵艦隊に接触できた。
「目標発見、左砲戦!」
伊勢の合図とともに、伊勢から瑞雲が1機発艦する。
弾着観測射撃が可能ということだが、果たしてそこまでの余裕があるかどうか……
「艦隊、最大船速‼単縦陣のまま突撃し、まずは最大射程で発砲‼」
だが、そう言っている間に敵のヲ級から艦載機が飛んできた。
「敵機、直上!」
「対空戦闘!」
まばらに機銃や高角砲を発砲したが、やはり専用の装備を持っていない分、対空能力には劣った。
そして、急降下爆撃機が炸裂する。その結果は……
「被弾っ!?弾薬庫に火は回ってない!?」
「も、もう!なんで私ばっかり!」
山城と翔鶴が被弾し、それぞれ中破に陥ってしまった。だが、そこでようやく全員が射程に入れた。
「山城、大丈夫?砲戦よ!」
4隻が一斉に砲撃すると、空母ヲ級Eliteと無印ヲ級が水柱の中に消えていった。
だが、まだ無傷の戦艦ル級が残っている。
ル級の発砲は、Hornetに向かった。
「ホーネット、避けてっ‼」
だが、いかに速力の高い空母でも、高速性を発揮するために直線的なことから運動性には問題が多い。そのため、Hornetは砲撃を避けることができなかった。
「うぁっ!食らった、飛行甲板!?」
残念なことにクリティカルヒットになってしまい、一撃で大破してしまった。
これで空母の航空攻撃は封じられてしまった。だが、航空戦艦4隻のうち3隻はまだ航空攻撃が可能だった。
「艦載機、発艦急げっ‼」
伊勢、日向、扶桑の3人から発艦した強化型の瑞雲隊は、唯一残った戦艦ル級に集中攻撃を喰らわせた。
3人の艦載機はまだ合計して50機以上残っており、戦艦であろうとも大打撃を与えるには十分すぎた。
戦艦ル級はそのまま、断末魔の叫びと共に海の底へと沈んで行ったのだった。
「や、やった……」
「通常海域では初めてと言っていい苦戦だったな……」
なにせ、6人中3人が中大破しているのは初めてのことである。
すると、海の中からボコボコと泡が立ち始めた。
「えっ、潜水艦!?」
「こんなところに!?」
だが、『バシャ』という小さな音と共に浮上してきたのは、どう見ても深海棲艦ではなく艦娘だった。
「どこかの鎮守府の艦隊かしら?」
「え、えぇ。そうよ。あなたも来る?」
その潜水艦娘はコクリと頷いた。
と、いうわけで妙高の協力者はチャーさんでした……まぁ、あの髭なら何でもできるからね