とある艦娘が1人、思わぬことを味わうことに……
伊勢と日向を抱きまくった音無は、その朝に天龍と龍田にも1発ずつ砲撃したにもかかわらず、妙にスッキリしていた。
「ふぅ……なんだか、どんどん人間離れしてる気がするけど……まぁ、艦娘を相手にしようと思ったら並の人間では足りないんだろうな」
軽い足取りで食堂に行くと、空母のお艦である鳳翔と健康第一萩風さんが台所に立っていた。
「鳳翔さん、萩風、おはよう」
「「おはようございます、提督」」
今朝の朝食は、焼き魚定食であった。味噌汁も大本営から届く野菜がたっぷり入っている栄養満点なメニューだ。
「これは、朝から元気になれそうなメニューだな」
「はい。南西諸島海域の解放も近いということで、提督にはしっかりと栄養を摂っていただきませんと」
「萩風も、精一杯やらせていただきました」
「ああ、ありがとう。今朝は時間もあるから、じっくり食べさせてもらうよ。いただきます」
「「召し上がれ」」
食べ始めに味噌汁を一口啜ると、しっかり取ってくれたらしい出汁の香りと味噌の塩気が口の中に広がる。『ハァ……』と大きく息を吐いて、胃の中に広がる暖かさにホッとする。
それから程よく塩が振られた青魚をおかずに白米を食べ進めていくと、膳を持った大淀が音無の前に来る。
「提督、おはようございます。こちら、よろしいでしょうか」
「おはよう、大淀。もちろんオーケーだぞ」
音無が快諾すると、嬉しそうな顔で『失礼します』と言って大淀は座った。それから食事をしつつ、近い出撃に向けて軽い装備などのおさらいをしていくと、大淀が思い出したように言った。
「そうだ、提督。昨日、就業時間の終わり間際に電信室に大本営より通信がありました」
「あれ、そうだったのか。今朝になって伝えたってことは、そんな急な案件じゃないのか」
音無は日中の業務時間を超過させて艦娘たちの疲労を溜めないようにと、執務時間を一般企業の日勤程度の時間で決めている。
少し早い八時半に開始して、少し遅い18時半に終了するようにしている。最初のうちは、艤装もなかった大淀が秘書艦を務めてくれていたので、大淀に負担をかけ過ぎないようにとの配慮だった。
そのルールは今も適用されていて、執務の時間は区切られている。
「はい。沖ノ島海域を解放した後の話にはなるのですが、近隣の鎮守府を守る提督の方々が率いる艦隊と『合同演習』を行うようにとお達しがありました」
「合同演習……聞いた通り、他の提督の艦隊と連携して、標的軍や敵艦隊を想定した艦娘の艦隊と戦闘を行うより実戦的な演習、だったな」
「はい。単独の砲撃・雷撃演習と違い、一度に複数の艦娘の練度を向上させることができる演習です。なお、今回に関しては模擬艦隊との戦闘だけでなく、ご協力いただく他の提督の艦隊との戦闘も計画されているとのことです」
「なるほど、前線にいる方々の胸を借りるってことか……」
すると、音無のそんな言葉に反応した大淀が、急に目を逸らして冷や汗を垂らす。
「ん、どうした、大淀?」
「いえ、その……胸は借りたくないなぁと思いまして……」
「えっ、来てくれる提督のことを知ってるのか?」
「ええ、先任の時も2、3度演習に来てくださいましたが……できれば、もう見たくないと思ってました」
あの大淀がここまで人の対する不平を吐露するというのは、川内など一部の面倒な艦娘のことを除くと珍しい。
「そんなに問題の多い提督なのか?」
「いや、能力はとても高いんです。元々は本土の警察官、検挙率9割越えのエリートだったそうで、その能力を見込まれて特例的に提督に抜擢されたのですが……能力の高さが人間性を表すとは思えませんでした……」
ゆりがアホと言ってきた死んだ世界戦線の変人集団の中にいた音無なので、多少のことは大丈夫だろうと思っていたが、大淀の顔がそれで済まないかもしれないと思わせたのだった。
朝食を済ませた音無は、そのまま執務室へと向かった。執務室に入ると、ティーポットにお湯を注いでいる巫女服のような制服を着た艦娘がいた。
「Good Morning、テイトクゥ♡」
「おはよう、朝から絶好調だな、金剛」
本日の秘書艦、金剛型戦艦の一番艦・金剛。
イギリスの造船所で建造されたという経緯から、日本艦娘の中では英語が堪能(その割に話し方はパチモンくさいが)で、出撃以外でも3時のティータイムは欠かさない帰国子女。
提督が好きで好きでたまらないのだが、この鎮守府では4人いる姉妹の中で最後に着任してしまったため、遅い着任を埋めるように音無にモーションをかけてきている。
ついでに言うと、最初に着任した三番艦の榛名が音無に想いを抱いていることも分かっているので、妹の幸せも願っている優しいお姉さまだ。
「Breakfastを食べ終わってすぐみたいだから、紅茶で一息つくといいデス」
「ああ、せっかく淹れてくれたんだ。いただくよ」
今朝は和食だったため、音無はコーヒーを飲んでいなかった。食後の飲み物をどうするか考えていたので、たまには紅茶もいいかと思った。音無が快諾すると、金剛は嬉しそうな顔でティーカップに紅茶を注ぐ。椅子に座った音無の前に置かれた紅茶は、ティーカップを載せる皿の上にレモンも乗っている。
「この前大本営から届いた備蓄の中にレモンがありましたから、レモンティーにしたんデス。種は取っておきましたから、ゆりたちが育ててくれま~す」
「そうか。揚げ物をする時に持たれる心配が少なくなりそうだな」
音無は笑顔で返事をすると、さっそく紅茶を一口啜る。香ばしい茶葉の香りが口いっぱいに広がり、リラックスさせてくれる。皿の上のレモンを取って絞り汁を紅茶に垂らしてもう一口飲むと、より口の中がさっぱりする。
「ふう、コーヒーは頭をスッキリさせてくれるけど、紅茶を飲むとホッとするな」
「気に入ってもらえれば感激デース。今日の演習のスケジュールデス」
そこは秘書艦らしく、ちゃんと朝の資料のまとめをしておいてくれた。お気楽に見られることも多いが、困っている他の艦娘にそっと寄り添ってくれたりしてくれる、面倒見のいい部分も持ち合わせているのだ。
「よし、演習については香取と鹿島に任せよう。それから、大淀とゆりを呼んでくれ」
「なにをお考えデスか~?」
「次の目標、沖ノ島海域へ出撃させる艦隊の編成だ」
出撃と聞いた瞬間、それまで明るい雰囲気だった金剛の顔が引き締まった。やはり彼女も艦娘と言う訳である。
「Yes My Load.すぐに呼んできます」
金剛がすぐに行こうとすると、『待て』と音無が呼び止めた。金剛が「What?」と首を傾げると、音無がティーカップを持ち上げながら言った。
「ティータイムが終わってからでも、遅くはないと思うぞ。一緒にどうだ?」
まさかお誘いを受けるとは思っていなかったらしく、金剛は満面の笑みで『イエース!』と返事をして紅茶を共に飲むのだった。
その後、金剛とお茶しようと思って比叡が顔を出した時に音無と2人で仲良くお茶しているのを見て『ひえ~!』と悲鳴を上げたという。
その後、音無は執務室で編成を決めていた。
「やっぱり……航空戦艦を中心とした航空打撃群がいいかな?」
「制限がないのであれば十分かと思います」
実際、航空戦力を増強しつつ戦艦の火力を持っている航空戦艦は、使い方次第ではあるが大きな能力を発揮するのだ。
だが、扶桑と山城は首を横に振った。
「今回の敵には強力な空母や戦艦がいると聞いています。私たちは……確かに航空戦艦にはなっていますが、足の遅さが引っかかるはずです」
「む、それはそうだが……」
扶桑たちは頭を下げた。
「もし艦隊の能力を上げようと思うのであれば、今回は鈴谷さんを加えるべきだと思います。さらに、防空担当として摩耶さんも」
摩耶も鈴谷も古参の重巡(と航巡)で、日々の演習もあって練度は既に60近い。もう少し頑張れば改二に改装できるということも考えると、確かに連れていくなら有力だろう。
また、鈴谷には『熟練艦載機整備員』を装備することで火力を増大させると同時に、射程を『長』に伸ばすことができるのみならず、航空機の発艦準備を早めるという利点もある。
「……分かった。お前たちの意見を入れよう。だが、お前たちの出番がなくなる訳じゃない。今日は掃討艦隊に加わって警備に当たって欲しい」
「提督……ありがとうございます!」
「私は姉さまさえいればどこへでも!」
山城は少し黙った方がいい。
一方、いつもの通り遠征艦隊を出そうと思っていた矢先、急に岩沢が駆け込んできた。
「ど、どうしたんだよ。岩沢」
「音無。今日の遠征艦隊は重厚な布陣で行った方がいい。なんか……そんな気がする」
「……」
岩沢は元々音楽家として直感的に動いているところがあるが、こんなことを言うのは初めてであった。
だが、その真剣な姿に音無も感じるものがあった。
「分かった。本日の遠征艦隊からは駆逐艦を抜いて重巡以上の艦娘を中心とする」
幸い、重巡の古鷹型やDeytschlandなどは燃費がいいタイプなので、こういう点では向いている。
編成は以下となる。
・主力艦隊
○ 翔鶴・瑞鶴・鈴谷・摩耶・伊勢・日向
・掃討艦隊
○ 足柄・鳥海・千歳・千代田・扶桑・山城
・遠征艦隊
○ Graf Zeppelin・古鷹・加古・Deytschland・アルハンゲリスク・しまね丸
各艦隊に戦艦が2隻は含まれている(Deytschland級は一応ドイツの種別では重巡だが、砲撃力が高くポケット戦艦と呼ばれているためそれに近い存在として扱う)という重厚な布陣だが、これだけの艦隊をいっぺんに出しても、輸送艦としての能力を持つしまね丸のお陰で大量の燃料と弾薬を確保できるのだ。
また、遠征艦隊にGraf Zeppelinを同行させているのは、彼女は夜間砲撃が可能という一面があるからだ。
航空機は艦攻を中心にしているため、万が一夜戦ともなればその砲撃力で大きく活躍してくれるだろう。
そして一番の特徴は、翔鶴の艦載機が『試製烈風 後期型』から新たに『震電改』になったことだ。
本来ならば通常開発できない代物らしいのだが、チャーが以前作っていたことを思い出し、『FlagShipが相手ならば』と音無が装備させたのだ。
そこ、『やりすぎ』とか言っちゃいけません。
「皆、今日は南西諸島海域最後のポイントだが、掃討艦隊も遠征艦隊も、くれぐれも油断しないで欲しい。戦場とは、常になにが起きるか分からない場所だ。初陣のつもりでいること。頼んだぞ!」
艦娘たちは『了解‼』と言うや否や、それぞれに艤装を装備して出撃していったのだった。
――沖ノ島海域
まず結果を言えば、道中5艦隊の内、3艦隊は問題なく撃破できた。
『重巡リ級Elite×2、無印リ級×2、駆逐ニ級×2』と、『戦艦ル級×2、重巡リ級×2、駆逐ニ級×2』は航空攻撃で壊滅したところに突っ込み、砲雷撃戦であっという間に片づけてしまった。
『空母ヲ級FlagShip1、Elite1、戦艦ル級1,軽巡ト級1Elite、駆逐ニ級Elite×2』の艦隊も、最初の航空攻撃で空母2隻を中破以上に追い込んだことが幸いした。無印ル級を3隻の砲撃で片づけた後、中距離まで接近してから4隻での砲撃と魚雷でこちらも瞬く間に海の底へ沈んで行ったのだ。
だが……次が厄介だった。
「偵察機より入電!『空母ヲ級FlagShip1、Elite2、戦艦ル級1、駆逐ニ級Elite×2』の艦隊を発見したとのことです!」
「空母3隻か……翔鶴、行けるか?」
日向の質問に、翔鶴は胸を張って答えた。
「提督と工廠長が見繕ってくださったこの『震電改』があれば、きっと‼」
なにせ、翔鶴の装備4つのスロットのうち、2つに『震電改』を装備しているのだ。これで勝てない存在が居るとすれば、特別海域のラスボスの、『甲』難易度くらいだろう。
「では、翔鶴を……いや、提督たちを信じよう」
皆が頷くと、翔鶴は艦載機を発艦させる。
「第一次攻撃隊、発艦始め!」
飛んで行った『震電改』が、敵の艦載機隊と激しい空戦を繰り広げる……かと思いきや、なんとビックリ、『震電改』は圧倒的な上昇力で敵艦載機隊を引き離すと、敵が追いつくのを諦めて反転したところを狙い、一気に攻撃を開始した。
一撃離脱を何回か繰り返しただけで、3隻分の敵航空隊は……全滅した。
「せ、制空権確保!すごい!損害もありません!」
「まさかこれほどとはな……」
「なら、今度は私たちの番だねっ」
伊勢の言葉に応じるように、伊勢・日向・鈴谷の瑞雲隊と、瑞鶴の攻撃隊が猛攻を加える。
『イケイケイケ!』
『オスナオスナオスナ!』
なにか違うような気がするが、まあいいだろう。その結果……
「攻撃隊より戦果報告!『ヲ級FlagShip、Elite大破!ヲ級Elite小破!戦艦ル級、駆逐ニ級Elite2隻撃沈』とのことです!」
「ヲ級Elite以外戦闘可能な艦が残ってないな……流石と言うべきか」
「やーるじゃーん!」
だが、それでもヲ級Eliteが小破状態で残っている。間違いなく航空攻撃を仕掛けてくるだろう。
「ま、そうなったら摩耶様が全部叩き落してやるさっ‼」
摩耶の強気な声に、他の面々も強く頷く。
「では、参りましょう!」
翔鶴を先頭に突撃すると、素早く艦載機が発艦し触接を開始する。
「全航空隊、発艦始めっ‼」
戦艦の射程に入ろうと進んでいた時、ヲ級Eliteが発艦する様子を見せた。
「敵機、来ます!最大船速‼」
しかし、26ノットの伊勢と日向を含んでいるために速力が上がらず、やはり敵機に捉えられてしまった。
だが、それを見て摩耶の体が光りだす。
「摩耶様の攻撃、食らえ~っ‼」
摩耶から機銃・高角砲による光の噴水とでも言うべき勢いで対空砲火が放たれると、瞬く間に敵機を撃墜していく。
そして、艦隊に迫った最後の一機が摩耶に突っ込もうとした時、直前で爆散した。
「やったなぁ‼」
ヲ級Eliteは明らかに驚愕の表情を見せていた。まさか艦載機隊の攻撃を凌がれるとは思っていなかったらしい。
そして中距離にまで近づいたところで、一斉に砲撃を開始する。
「面倒だな。ここで殲滅させてもらう」
日向の声と共に放たれた4隻の砲撃は、吸い込まれるようにヲ級Eliteを直撃し、彼女を海の底へと引きずり込んで行った。
「まぁ、そうなるな」
摩耶の対空砲火もあり、またも傷を負うことなく戦いを終えることができた。
「ここで小休止、と言いたいところですけど……偵察機から報告が入っています。『戦艦ル級FlagShip1、Elite×2、無印1、軽巡ト級Elite、駆逐ニElite1』の艦隊を発見したとのことです」
この海域の主力艦隊である。空母がいないため、制空権は容易く確保できるだろう。
だが、敵には戦艦ル級FlagShipに加えてEliteが2隻、無印も1隻いるという重厚すぎる布陣だ。
対してこちらは空母2隻に重巡1隻、航巡1隻、航空戦艦2隻の艦隊だ。ただの打撃力という点で言えば、こちらが圧倒的に不利である。
しかし、先手で航空攻撃を行えば、相手の戦力の大半を削ることも夢ではない。
「直掩隊も、攻撃隊の援護に回って!」
攻撃隊が飛行し、敵に向かって攻撃を開始する。
『ウオラァァァァッ‼』
『ヒャッハー!』
「攻撃隊から戦果報告!『駆逐ニ級Elite、軽巡ト級Elite、無印ル級、ル級Elite1隻轟沈!Elite1隻小破』とのことです!」
「ちっ、FlagShipが無傷か……」
「どうする?もう少し待って航空攻撃をもう一回するか?」
日向の言葉に翔鶴が悩むが、鈴谷が口を挟む。
「でも、もうあんまり時間がないよ?ギリギリかも」
弾薬も残り少ないため、今追いつかなければ逃してしまうだろう。
「……行きましょう。ここで逃せば、禍根を残します」
皆も頷いた。ならば、行くしかない。
「では、参りましょう」
一気に追いつくと、敵艦隊と接敵する。
「航空戦艦の真の力、思い知れ!」
長射程に入ると同時にル級FlagShipとEliteも砲撃を放ってきた。
「避けられるか!?」
だが、砲弾は吸い込まれるように先頭の翔鶴に直撃した。
「も、もう!なんで私ばっかり!」
一撃で翔鶴が大破してしまった。流石にFlagShipの砲撃は伊達ではない。
だが、翔鶴に被害が集中したことによって他の面々はそのまま進むことができた。
中距離に入ったところで、4隻の砲撃をお見舞いする。
「ぶっ殺されてぇかぁ!?」
砲撃はEliteに直撃し、そのまま海の中へ消えていった。
だが、ル級FlagShipはまだ立っている。流石に堅固な装甲を持っているらしく、小破状態のようだ。
さらに砲撃の準備をするが、先に敵の準備が完了する。
「敵艦発砲‼」
避けようと動くが、今度は摩耶に直撃してしまった。
「げっ!」
摩耶もあっという間に大破に追い込まれてしまった。
「な、なんて威力……」
「狼狽えるな。敵も追い詰められている」
日向の言葉に全員が頷く。
そして、全員の再装填が終わった。
砲撃を見舞おうとした時、伊勢の体が光り出した。
「主砲、4基8門、一斉射‼」
一撃で中破状態にまで追い込むが、攻撃は終わらない。全員でガンガンと砲撃を見舞うと、ル級FlagShipに次々と砲弾が命中していく。
砲撃が終わった直後、ル級FlagShipはそのまま海へと沈んでいった。
「やったぁ!」
皆が喜ぶが、大破状態の翔鶴と摩耶は力なくへたり込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……疲れました……」
「ケツの毛まで抜かれて鼻血も出ねぇ……」
だが、伊勢と日向は警戒を続けていた。主力艦隊を倒したので、艦娘がいるのではないかと周囲を見回していた。
「あっ、日向あそこ!」
見れば、艦娘が近づいてくる。ピンク色の髪を持った、駆逐艦らしい艦娘だ。
「どこかの鎮守府の艦隊ですか?」
「えぇ、そうよ。あなたも来る?」
「はい。ぜひご一緒させてください」
艦隊は鎮守府に帰投する。
艦隊が鎮守府に帰島し、掃討艦隊の艦娘と合わせて音無に会わせることにした。
「白露型駆逐艦五番艦の春雨です、はい。輸送作戦はお任せください……です」
「阿賀野型軽巡二番艦、能代。着任しました。よろしくどうぞ!」
「グーテンターク……あ、違った、ごめんなさいね……『はち』と呼んでくださいね」
「満潮よ。私、なんでこんな部隊に配属されたのかしら」
「五月雨って言います!よろしくお願い。護衛任務はお任せください!」
「よぉ!あたしが初春型の有明だ。よろしくな!有明型っていう奴もいるけど、どっちだっていいよ。あたしはあたし、それが全てさ。行くぜ!」
「おはよう!朝風よ。神風型駆逐艦二番艦、朝風。司令官?早く覚えなさい!いい?」
そして、対潜哨戒に出ていた由良が大きなコンテナを引っ提げていた。
「由良、そのコンテナは?」
「あ、はい。鎮守府近海の対潜哨戒をしていて、敵主力艦隊を倒した時に見つけたんです。もしかしたらなにかに使えるかなーって思いまして」
「ん……?開けられるか?」
「はい。よっと」
コンテナを開くと、入っていたのは艤装のようだった。
「大淀の時と似てるな……だけど、武装は少なめでクレーンとかがいっぱい付いている……」
音無が答えに辿り着こうとした時、当の大淀が執務室に大慌てで飛び込んできた。
「てっ、提督っ‼」
「どうした!?」
「そ、それが、遠征艦隊が大打撃を受けて戻ってきました‼」
「なにっ!?」
音無が波止場まで向かうと、しまね丸とGraf Zeppelin以外の全員がボロボロの姿であった。
「なにがあった!?」
答えたのは、旗艦であり無傷のGraf Zeppelinだった。
「Admiral……すまない。艦隊をこんなに……」
「謝るのは後でいい。なにがあったんだ?」
「それが……戦艦タ級Eliteを有する艦隊が現れたんだ」
「戦艦タ級……データによると、ル級より速力に勝る代わりに、若干装甲が薄いっていう、あれか?」
「あぁ。戦艦タ級Elite、戦艦ル級2隻、重巡リ級Elite2隻、軽巡ト級Eliteの艦隊だった」
それは、今回の主力艦隊にも匹敵する強さを持つと言ってもいい存在であった。
「偵察機が敵艦隊を発見したので2度の先制攻撃を加え、戦艦以外の3隻は撃沈した。だが、残った戦艦に苦戦した。3隻の一斉砲撃で、古鷹とDeytschlandが中破した。こちらはアルハンゲリスクが弾着観測射撃を決めてくれたおかげでル級1隻を沈めることに成功したが、加古とアルハンゲリスクが魚雷を発射した後の敵の攻撃で加古が大破、アルハンゲリスクも中破した」
たった2回の攻撃でで、甚大な被害を受けたらしい。
「その魚雷は命中し、タ級Eliteを小破に追い込んだが、その程度では足りなかった。私としまね丸の艦載機で再度攻撃を仕掛けた結果、残ったル級を撃沈し、タ級Eliteを中破に追い込んだ……だが、それでもタ級Eliteはしぶとかった。さらに砲撃を放ってきて、アルハンゲリスクを大破に追い込んだ。そこで夜戦に突入し、私と古鷹、Deytschlandの砲撃の際に私がカットインを発動することができて、なんとかタ級Eliteを倒せた」
そう言うと、Graf Zeppelinは座り込んでしまった。
「本当の艦隊戦があれほど恐ろしいとは想像もしていなかった……今回仲間たちが沈まなかったのは、運が良かったとしか言いようがない……提督が、岩沢殿の忠言を聞いて陣容を厚くしてくれていなかったらと思うと……」
相当な恐怖を味わったようで、Graf Zeppelinは自分の肩を抱いて『カタカタ』と震えていた。
だからこそ、音無も彼女を抱きしめてやった。
「よくやった。よく皆を連れて戻ってきた。手強い艦隊相手に誰も沈めることなく、燃料と弾薬の輸送もやってきた。お前は十分に頑張った。他の提督なら怒るのかもしれないが、俺は褒めてやる。よくやった、グラーフ」
すると、Graf Zeppelinは感極まったのか、それとも抱えていた『色々な』ものが限界だったのか、普段の凛々しさが嘘のように泣き出してしまった。
ワンワンと大声を上げて泣くGraf Zeppelinを、音無は泣き止むまで抱き締めてやったのだった。
結局、彼女は5分以上泣き続けた。
「……Admiral、すまない。貴殿の胸をすっかり汚してしまった」
「気にするな。服一つでお前の胸のつかえがとれたんだ。安いモンだ」
立ち直ったGraf Zeppelinは、改めて報告を続けた。
「それと、新しい艦娘に出会ったんだ。ぜひ会って欲しい」
「お、そりゃ楽しみだ」
執務室の扉が開き、その艦娘が入ってきたのだが……音無は驚いた。
「うおぉっ!?」
そして、それは他の艦娘も同様だった。なにせ、長身のScharnhorstやHoodよりもさらに背が高い。恐らく、2m近くはあるのではないかと思われるほどだ。
肩にかかったブロンドの髪は美しく、ボン・キュッ・ボンの美女だ。
だが、なんと言っても最大の特徴は、艤装が巨大な扶桑型を上回るのではないかと言うほどの巨大な艤装だった。
だが、音無はその形を見て疑問に感じた。
「なんだか……軍艦っぽくないな?また特設艦船か?」
すると、艦娘は敬礼して挨拶した。
「Nice To Meet You。私はQueen MerryClass(クイーン メリー)輸送船、Queen Merryよ」
「輸送船!?このデカさでか!?」
Queen Merry。
1936年にイギリスのキュナード・ライン社が建造した、総トン数8万1235tという、世界最大の大型客船であった。
その主機関である蒸気タービンエンジンは最大出力20万馬力と、アイオワ級戦艦に匹敵する大馬力を発揮することが可能で、『平均』速力として28ノット近くを出すことが可能というものであった。
この大馬力と高速航行能力により、大西洋を3日と20時間で横断するという、当時としては尋常ではない記録を打ち立てたのだ。
そんな彼女も第二次世界大戦の勃発により軍隊輸送船として改装され、最大で1万6000名の兵士……ほぼ陸軍歩兵師団1個師団に相当する部隊を運ぶことが可能と言う破格の能力を持っていたのだ。
しかも、大西洋を横断する際に平均速力28ノットを維持していたことから、護衛艦艇が一切つかなかったにもかかわらず、潜水艦はもちろんだが戦艦、巡洋艦などの水上艦も補足が困難だったため、その高速性により生き延びることができたのだ。
性能は以下となる。
○ 耐久 67
○ 装甲 34
○ 回避 60
○ 搭載 0
○ 速力 高速
○ 射程 中
○ 火力 15
○ 雷装 0
○ 対空 54
○ 対潜 0
○ 索敵 10
○ 運 55
装備は以下となる。
○ Bofors15cm単装速射砲(火力+3・命中+2、フィットにより火力+2)
○ Bofors40mm連装機関砲(集中配備)(火力+2・命中+5・対空+12、フィットにより火力+1、対空+3)
○ SK+SGレーダー(火力+1・対空+9・索敵+12・命中+4・回避+4)
○ 20連装7Inch UP Locket Launcher(火力+1・対空+10、フィットにより火力+1、回避+2)
なんと言うか、尋常ではない壊れ性能なのだ。
だが、『戦艦大和より排水量がありながら重巡並みの速力を出せて、駆逐艦以上の速度で巡行可能であり、大型の船体を活かして武装も充実した』艦であるということを考えると、こういうものなのかもしれない。
素の火力は軽巡並みではあるが、武装の充実ぶりとフィット補正もあって、ちょっとした重巡並みの能力すら発揮可能と言うチートっぷりだ。
しかも、運と回避、対空の数値が尋常ではない高さのため、基本的に攻撃は『当たらない』ほどの能力なのだ。
また、軍隊輸送船ということもあって『大発動艇』系列も装備可能となっている。
「なんて言うか……色々ぶっ飛んでるな」
「うふふっ。使っていただけるのであれば、よろしくお願いしますね」
ちなみにイメージデザインはコ○シ系で、声帯の妖精さんは大原さ○かで。
Queen Merryと握手するが、手の大きさすら大きく、圧倒されそうであった。
こうして、SSS鎮守府に新たな……それもチートクラスの艦娘が加わったのだった。
と、いうわけで第二次世界大戦中最強クラスの輸送船……という名の特設艦娘が加わりました。
できれば出しておきたかったんですよねー