※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

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はい、連投です。


初陣

 鎮守府経営2日目の朝、音無はラッパの音で目が覚めた。

 いわゆる、『起床ラッパ』である。

 昨晩食べ過ぎたとはいえ、流石に一晩もすればすっきりしていた。

「……いよいよ、今日から実戦だな」

 音無は洗顔して制服に着替えると、寝室の扉を開けた。

 なお、この寝室は提督専用となっており、4,5人は同時に寝られそうなキングサイズの巨大なベッドが備え付けられている。

 もっとも、この時の音無はどうしてそんなデカいものが備え付けられているのか全く理解していなかったのだが。

 寝室から出ると、千歳が部屋の前に立っていた。

「千歳!いつからそこに?」

「つい先ほどです。少し早く目が覚めましたので、提督に朝のご挨拶をと思いまして。おはようございます」

 上品な仕草でお辞儀をすると、彼女の豊かな胸部装甲が『ぷるん』と揺れるため、思春期男子には目の毒であった。

 だが、目を逸らすのも失礼かと考え、なんとか目線を合わせる。

「み、皆はもう起きたのか?」

「はい。提督の同輩の方々と一緒に、もう食堂で間宮さんのお手伝いを始めています」

「そうか。じゃあさっさと行かないとな」

 寮を出て食堂へ向かっていると、日向とユイが歩いてきた。

「お、おーっす音無」

「おはようございますセンパイ!」

「あぁ、おはよう。今日の朝飯ってなんだか知ってるか?」

「いや。ただ、松下五段が手を出してるらしいぜ」

「うどん決定だな。関西風か、それとも肉うどんか……」

「朝なんでシンプルにかけうどんでもいいのでは?」

「このクソ暑いのに朝っぱらから熱い食い物か?」

「いや、松下五段なら『うまいものに季節は関係ない』とか言いそうだな」

「……だな」

 バカみたいな会話をする3人を、千歳が楽しそうに見ている。

 食堂に到着すると、神通と千代田が厚い鍋に張り付いてかき回していた。やはりと言うべきか、うどんだったようだ。

「お、来たか音無」

「おはよう松下五段。やっぱりうどんか」

「あぁ。暑い時こそ、冷たいモノより熱いモノだ。体を中から冷やしては、健康にもよくないからな」

「確かに。医者志望の人間としては同意だな」

「なので、朝はけんちんうどんだ」

「それにしても朝から凝ってるな!」

「どうせなら丼1つで色々な栄養が取れる方がいいだろう?使えるモノは使って、皆の英気を養わないとな。なにより、けんちん汁は具だくさんで栄養たっぷりだ。もちろん、豚肉も入れてあるから食い応えも抜群だ」

「そりゃ楽しみだ」

 松下五段は死後の世界で高松と一緒に伊勢うどんを再現した経験を持っており、うどんには一方ならぬこだわりがある。

 間宮も松下五段の味付けに思うところがあるのか、とても楽しそうだ。

 そういっている間に、摩耶、鈴谷と残りの戦線メンバーが入ってきた。

 見れば、ギルドメンバーなどはかなり眠そうだ。

「もしかして……夜遅くまで作業してたのか?」

 その疑問にギルドメンバーの男子生徒が答える。

「できる限り早く修繕して、艦娘たちに快適に過ごしてもらいたいからな」

 疲れてはいるが、皆ニヤリと笑って見せた。これならば、作業は大きく進むだろう。

「適度に休憩も取りつつ頑張ってくれ。チャーに頼めば、機材とかも作ってくれるだろうし」

「そうだな、チャーさんならやってくれそうだ」

 皆その言葉に『ハッハッハ!』と笑って見せた。

 男子のみならず女子も笑っているあたり、チャーはやはり有名である。

 そして、うどんはできた順に音無、艦娘たち、戦線メンバーと配られていく。

「今日は麺類だから、各自それぞれに食べるように。いただきます!」

「いただきます!」

 食べてみると、ニンジンやゴボウ、更に大根も入っているのか、本当に味わい深い。

 確かに熱いが、艦娘たちはこの後さらに熱く、それでいて冷たい戦場へと出なければならないのだ。

 それを思えば、自分たちがちょっと汗をかくくらいはどうということはないように思えてくるから不思議だ。

「食事が終わったら工廠へ行って、千歳と千代田の改装だ。えぇっと、瑞雲だっけ?あれを載せるってチャーが言ってたぞ」

「主砲とか装備1回外さないとね」

「うんうん。改装したら廃棄になっちゃうし」

「なるほど。外した装備はまた別の艦娘に装備できるから無駄にならないということか」

「はい。私たちの偵察機や副砲も十分使えますから」

 そんな会話と食事を終えた音無は、千歳と千代田を連れて工廠へ向かった。

 工廠では既にチャーがあれこれと作業を進めていた。

「ん?それってなんだ?」

 チャーの目の前には、ミニカーのようなものが多数並べられていた。

 よく見ると、ブルドーザーやショベルカー、他にも地ならし用のローラー車などであった。

「あぁ、これは工兵担当の妖精さんに使ってもらう作業機械さ。やっぱ、旧軍と違って機械化を進めておいた方が後々楽になると思ってな」

「なにか妖精さんが使うものを建設するのか?」

「今考えているのは飛行場だな。敵機迎撃用の局地戦闘機『紫電改』や『雷電』、重爆撃機迎撃用の『夜間戦闘機 月光』や『震電』とかな」

「そんなものまで配備するのか?」

「基地の防衛は重要だ。恐らくそれがなかったから、前任提督のいたこの基地は大きな被害を被ったんだ。それを防ぐには、優秀な対空電探と通信体制、そしてそれらを活かした緊急発進(スクランブル)が必要だ。そのためにはまず飛行場とレーダーサイトを整備しなくちゃいけない。そのための機材さ」

「もはやお前がT○KI○に見えてきた……」

「はっはっは。そりゃ誉め言葉だぜ。あぁ、炉は開いているから好きに使ってくれ。千歳と千代田を改装するんだろう?」

「あ、あぁ。やらせてもらうよ」

 唖然としている2人を連れて、音無はさらに奥へ進む。

『コンニチワ』

 妖精さんの挨拶に音無も『おはよう』と返し、改装用の工廠へ到着した。

まずは千歳である。

「それでは提督、失礼いたします」

「あぁ」

 中へ入ると、工事のような音が鳴り響く。

 だが、建造に比べるとわずかな時間で終了し、あっという間に扉が開いた。

 そこには、肩にランチャーのような艤装を増やした千歳の姿があった。

「うふふふふっ、強くなっちゃった」

 悪戯っぽく笑う千歳に、なぜか胸がドキリと高鳴る音無だった。

 続いて千代田が入り、改装を開始する。

 わずか1分後、千歳と同じ艤装をまとった千代田が出てきた。

「うん……これで勝てる、千歳お姉に勝てるかも!」

「えぇ~、簡単には追い抜かせないわよ~」

 そんな2人のやり取りを見ながら、音無は自分の胸が高鳴るのを強く感じていた。

「(なんでだ……なんでこんなにドキドキするんだ……これじゃまるで……俺が千歳たちのことを……)」

「提督」

 千歳の声に思わず我に返る音無。

「見てください、ちゃんと瑞雲が乗りましたよ」

 千歳改及び千代田改の装備は、零式水上偵察機×12機・瑞雲×6・12.7cm連装高角砲の3スロットとなっている。

 なお、瑞雲と零偵のスロットを入れ替えることによって、1隻につき瑞雲12機を投入することが可能になるため、火力を上げたければこちらがおススメ。

「これで先制航空攻撃が可能になりました。あっ、艦載機の性能ってご存じ……じゃないですよね」

「そういやチャーに聞くって言ってそのままだったな……」

 すると千歳がコホンと咳払いした。

「ではせっかくなので、出撃前に簡易的ではありますがレクチャーしたいと思います」

「あぁ、それはできれば頼むよ。さっきチャーが言っていた基地配備の戦闘機のこともなにがなにやらチンプンカンプンだったからさ」

「では、航空攻撃に使える航空機の性能について書きますね」

 

 

○ 九六式艦戦(対空+2)

○ 零式艦戦21型(対空+5)

○ 零式艦戦52型(対空+6)

○ 烈風(対空+10)

○ 烈風改(対空+12)

○ 紫電改二(対空+9・回避+3)

 

 

「これが、烈風改以外は開発で手に入る戦闘機……敵の艦載機を撃墜して制空権を取るための機体です。他にも高い戦果を挙げた提督に送られる強力な機体もありますが……それは作れないのでここでは挙げません。続いて爆撃機です」

 

 

○ 九九式艦爆(爆装+5・対潜+3)

○ 彗星(爆装+8・対潜+3)

○ 彗星一二型甲(爆装+10・対潜+3・索敵+1)

○ 零式艦戦62型(爆戦)(爆装+4・対空+4・対潜+3)

 

 

「爆撃機は急降下して敵に爆弾を叩きつけ、砲や機銃を破壊することが目的です。駆逐艦や軽巡程度であれば爆撃だけで撃沈することも可能ですが、流石に重巡や戦艦クラスにもなると余程の火力を発揮できなければ中破以上は難しい部分もあります。続けて攻撃機……魚雷で攻撃する機体です」

 

 

○ 九七式艦攻(雷装+5・対潜+4・索敵+1)

○ 天山(雷装+7・対潜+3・索敵+1)

○ 流星(雷装+10・対潜+4・索敵+1)

○ 流星改(雷装+13・対潜+3・索敵+2)

 

 

「雷撃機は水面スレスレを飛行して敵艦に肉薄し、抱えている航空魚雷を落として相手に命中させます。この攻撃は非常に威力が高く、場合によっては戦艦や空母も一撃で大破撃沈することもあります。ただ、艦爆が敵の装甲などに阻まれることなくダメージを与えることができるのに対して、艦攻はうまくいけば大ダメージ、そうでなければ微ダメージとギャンブル的な要素もあります。それだけにうまく決まるととても気持ちいいんですが……」

「そうなのか……で、瑞雲は?」

「瑞雲は以下の要目となります」

 

 

○ 瑞雲(爆装+4・対空+2・対潜+4・索敵+6・命中+1)

○ 瑞雲(六三四空)(爆装+6・対空+2・対潜+5・索敵+6・命中+1)

○ 瑞雲12型(爆装+7・対空+3・対潜+6・索敵+6・命中+1)

○ 瑞雲12型(六三四空)(爆装+9・対空+3・対潜+6・索敵+7・命中+1)

 

 

「これが瑞雲系列です。ただ、基本的に開発するだけでは通常型の瑞雲しか出てきません。特定の艦娘の改二……強化形態が持ってくる初期装備を『第三開発』という形でコピー開発する必要があります」

「だが、さすがに本職に劣るとは言っても制空値があるっていうことは、この瑞雲がいれば空母のいない艦隊に制空権を取ってしかも航空攻撃もできるってことだろう?使い方次第ではかなり強力な装備になりそうだな……」

 すると、千歳が『そうなんです!』と言いながら迫ってきた。

「確かに対空も爆撃も本職には劣りますが、制空・空爆・対潜とマルチロール性を活かした戦い方もできるんです!瑞雲はすごいんです!」

 目を輝かせながら力説している千歳に圧倒されて、音無は壁まで寄っていた。

「そ、そうか。そんなにすごいのか。それは戦果も期待できそうだ。よろしく頼むよ」

「はいっ!」

 満面の笑みで返事をする千歳の顔を見て、音無は苦笑するしかなかった。

 執務室に戻ると、既に神通、鈴谷、摩耶が待っていた。

「よし。じゃあ最終確認だ」

「オーバーだなぁ提督は。鎮守府正面の哨戒なんだから、ここまでくる敵で手強いのなんてほとんどいないって」

「なに言ってんだ摩耶。その慢心が大きなケガに繋がるんだ。チャーから聞いた。旧日本軍の海戦もそれで敗北した戦いが多いって」

 それを言われると言い返せないのか、『あ~』と言いながら頬をポリポリと掻く。

「んじゃ改めて……旗艦は千歳にしようか」

「ちょ、ちょっと待ってください提督」

 音無が千歳の方を見ると、先ほどまでの勢いのある雰囲気とは違い『おずおず』と言わんばかりに委縮していた。

「旗艦にしていただけるのはとても光栄ですし嬉しいです。ただ……」

「ただ、なんだ?」

「私たち水上機母艦の速度は30ノットに足りません。旗艦として先頭に立つと、皆さんの足を引っ張りかねません。もしも提督が『皆が少しでも傷つく可能性を下げたい』と仰るのであれば、別の編成にするよう具申します」

 千歳の目は真剣であった。音無の想いを理解した上で、『できる限りの手助けをする』ことが大事だと彼女は考えたのだ。

「……そうか。分かったよ。じゃあどうすればいい?」

「私見ですが、軽巡洋艦の神通を旗艦として、そのあとに鈴谷、摩耶、そして私と千代田でいいと思います」

 速力から言えば、これが妥当な順番なのだ。

「よし。千歳の意見を受け入れる。編成は以上だ」

 編成としては以下となる。

 

 

○ 神通 15.2cm連装砲・32号対水上電探

○ 鈴谷 20.3cm連装砲・零式水上偵察機・61cm四連装(酸素)魚雷

○ 摩耶 20.3cm連装砲・零式水上観測機・10cm連装高角砲

○ 千歳 瑞雲×12・瑞雲×6・15.5cm三連装砲(副砲)

○ 千代田 千歳と同じ

 

 

 なんというか、摩耶の言うことを肯定することになってしまうが正面海域への哨戒出動と言うだけならばオーバーキルにもほどがある編成であった。

「これ、戦艦が相手でも十分戦えるっしょ」

「確かにな。空母さえいなけりゃ千歳と千代田で制空権取って先制喰らわして、接近しつつ弾着観測射撃を喰らわせながら副砲で滅多撃ちにして混乱させて、最後に魚雷ぶっぱなしゃ戦艦だって昼のうちに海の藻屑だぜ」

「その慢心がダメだって言ってるんだっ‼」

 音無のそれまでにない強い言葉に、艦娘たちが音無を強く見つめる。

「例えどれほど準備に準備を重ねたとしても、ちょっとしたことが原因で全てが崩れることがある。俺は……かつてそれが原因で死んだ」

 音無は医学生になるべく医大の受験に向かう途中、電車のトンネル崩落事故に巻き込まれた。その際の負傷が原因で彼は一度死んだのだ。

 そんな音無だからこそ、準備をいくらしても『なにかできることはないのか』と考えてしまうのだ。

 だが、そんな音無の肩を日向が『ポン』と叩いた。

「音無、あんまり気ィ張りすぎてもダメだって自分で言ってたじゃねーか。今度は、お前が皆を信じて送り出してやる番じゃねえのか?」

 音無はハッとする。

 彼女たちが命を懸け戦いに赴くということは、音無自身の想像以上に彼の心身に負担をかけていたようだ。

「……悪い、日向。助かった」

「いいってことよ」

 改めて音無は5人の目を見る。

「とにかく、今できる全力を尽くしてほしい。皆、頼んだぞ」

 その言葉に、5人は力強く『了解‼』と返事したのだった。

 こうして、5人の艦娘が出撃した。

 

 

――鎮守府正面海域

 鎮守府から内湾を出てそう遠くない海域に神通たちはいた。

「こちら旗艦神通より鎮守府。現在敵勢力圏内に突入しました。これより偵察機を発艦させ、偵察を行います」

『了解。十分注意してくれ』

「はっ。各艦、偵察機を発艦させてください」

「大丈夫、私に任せて」

 直後、零式水上偵察機と零式水上観測機が空へと飛び立った。

 それからしばらくして、千歳に偵察機の妖精さんから連絡が入った。

「偵察機より入電!『ワレ、敵ヲ発見ス。敵ハ駆逐イ級1隻』とのことです!」

「イ級1隻ですか。本隊から先行してきたのでしょうね」

「どうする?千歳たちの爆撃で沈めちまうか?」

「いえ、たった1隻が相手では燃料と弾薬がもったいないです。普通に接敵して中距離から仕留めましょう」

 幸い、元々は短射程の千歳と千代田も15.5cm三連装砲(副砲)を装備しているおかげで、中射程に延長されている。

 これによって、わざわざ駆逐艦の砲撃範囲内に入らずともアウトレンジから一方的に砲弾を叩きつけることが可能なのだ。

 そして……ついに接敵する。

「当たってください‼」

 神通の祈るような声と共に、戦闘が開始された。

『艦隊は最大船速を維持、単縦陣で突っ込め!射程に入り次第砲撃を開始せよ‼』

「了解‼」

 最大船速で航行すれば、すぐに射程に入る。5人とも射程に入ったことで、一斉に砲撃を開始する。

「うわっ!キモッ‼」

 放たれた砲弾のうち、鈴谷の20.3cm砲弾と神通の15.2cm砲弾がそれぞれ命中し、大爆発と共にイ級はあっという間に沈んでいった。

 一番の打撃を与えたということから、鈴谷に多くの経験値が入る。

「ま、当然の結果じゃん?鈴谷誉められて伸びるタイプなんですー。うーんと褒めてね!」

 その誇らしげな姿は、燦然たる陽光に輝いてとても眩しい。

『自信を持つのはいいけど、声送るタイミングに困るから程々にな』

「んもう、提督ってばせっかちだなぁ」

 その後もイ級1、2隻ほどの部隊を3回潰した後、索敵に出た偵察機から報告が入った。

「偵察機より入電!『敵主力艦隊ト思シキ艦隊ヲ発見。数ハ軽巡ホ級1隻、駆逐イ級3隻』とのことです!」

「千歳、千代田、頼めるか?」

「大丈夫、私に任せて」

 摩耶に尋ねられた千歳がそう言うと、肩のカタパルトから『瑞雲』を発進させた。

 瑞雲は偵察機からの情報を基に敵艦隊へと向かうが、敵に空母がいないことは分かりきっているので、労せずに制空権の確保に成功した。

『ヘンタイ、キュウコウカ!』

『ウラアアァァァァッ‼』

『オチロオォォォォッ‼』

 妖精さんたちの叫びと共に、瑞雲が時速400km以上の速度で急降下し、敵艦隊に次々と爆弾を投下する。

 

 

――ガアアアアアァァァッ……‼

――ガアアアアアァァァッ……‼

 

 

「攻撃隊より報告、『駆逐イ級2隻撃沈、軽巡ホ級小破』とのこと!」

「おっ、やーるねー」

 鈴谷が軽い口調ながらも手放しで褒める。

 敵艦隊との距離が詰まっていく。

『よし、陣形は単縦陣そのままで、射程に入り次第副砲を一斉射し、敵の陣形を混乱させろ。そして観測機からの報告をもとに、敵を撃滅せよ‼』

「鈴谷にお任せっ‼」

 接敵した時、摩耶から零式水上観測機が飛び立った。

「怖いなら、アタシの後ろに隠れてな‼」

 飛び立った観測機は敵艦隊上空で旋回を始める。

 中射程に入るや否や、軽巡ホ級がすぐに砲撃準備に入った。

「副砲一斉射!」

 副砲を装備していない神通以外の4人から、まるで機関銃の弾丸のごとく副砲弾が叩きつけられる。

 このとき1発の至近弾が出たことで、敵艦隊は目に見えて狼狽え始めた。

 すると、上空から観測機が報告を開始する。

「観測機から諸元入電!照準合わせて……摩耶様の攻撃、喰らえーッ‼」

 またも5人が一斉射を行った結果、副砲で小破状態だった残った駆逐イ級があっという間に轟沈し、軽巡ホ級には弾着観測射撃が命中した。

 

 

――ホガアアアァァァァァァッ……‼

 

 

 ホ級が断末魔と共に水底に沈んでいく。

 その姿を見ながら、摩耶が満足げに呟いた。

「当ったり前だろー?アタシは摩耶様だぜぇ?」

 自信満々なその姿は、彼女の豊満な胸元をより強く強調する。

 こうして、音無艦隊の初陣は誰1人傷を負うことなく勝利することができたのだった。

「さーてと、敵主力は撃破したし、帰ってご飯でも……おや?」

 鈴谷が何かを発見したようだ。よく見ると、こちらに近づいてくる。

「おっ、艦娘かな?」

 近づいてきたのは、髪飾りをした可愛い女の子であった。

「どうも、如月と言います。この近くの鎮守府の艦隊ですか?」

「はい。敵主力艦隊を撃破したので、帰投しようと思っていたのですが……あなたも一緒に来ますか?」

「まぁ嬉しい!行く宛てもなかったから助かるわ~」

 こうして、如月を加えた艦隊はSSS鎮守府に帰投した。

 

 

 帰ってきた艦隊を労うと、神通が如月を紹介した。

「如月と言います、お側においてくださいね、司令官」

「如月……2月を意味するのか?」

 音無に問われたのは、工廠で忙しいチャーに代わって資料を持っている竹山だった。

「如月は『睦月型駆逐艦』の2番艦でして、開戦からわずか3日で、しかも爆撃機や攻撃機ではなく戦闘機の攻撃で撃沈してしまった駆逐艦です」

「はい。ウェーク島攻略の際に、米軍のF4F戦闘機が投下した小型爆弾の直撃を受けて、魚雷か爆雷のどちらかは分からないけど、誘爆して真っ二つになっちゃったの」

「それは……またとんでもない最期だったんだな」

「可愛い顔して、エライ目に合ったんだな」

 如月のあまりの境遇に、思わず日向も同情する。

「ふふふっ、ありがとうございます。でも今はこうして艦娘として第2の人生を歩むことができますから……」

 すると、如月が『ピタッ』と音無にくっついた。

「これからよろしくお願いいたします、司令官♡」

「え、えぇっ!?」

 まさか出会った直後に、こんな積極的な態度で接してくる子がいるとは思っていなかった音無は、目に見えて狼狽える。

 周囲を見るが、ちとちよも神通も鈴谷も摩耶も苦笑いしながら見ているだけだ。

 見兼ねた竹山が咳払いをすると、如月は残念そうに離れた。

「えぇと、音無さん。敵の残存艦隊を掃討する追撃戦がありますが……どうされますか?」

「補給を済ませたら直ちに出撃だ。損傷は?」

「アタシらは傷1つないぜ?」

 実際、砲弾機銃弾の1発も当たっていないのだから当然と言えば当然だ。

「よし、じゃあ頼もうかな。あ、如月はどうする?」

「もしお許しいただけるなら、私も出撃したいです~」

「そうか……じゃ、如月も加えて6隻で行くか」

「おっ、ようやく1艦隊組めるだけの艦娘が揃ったな」

「6隻で1艦隊ですからね」

 こうして素早く補給を済ませた艦娘たちは、神通に続く2番に如月を据えた6人で、再び出撃するのだった。

 敵は南の方へ逃走しているようで、既に神通の電探で感知していた。

「敵艦隊捕捉。軽巡ホ級1隻、駆逐イ級5隻のフル艦隊です。千歳さん、千代田さん、先制攻撃をお願いします」

「アタシがやらないと‼」

 2人が瑞雲を発艦させると、瑞雲は素早く攻撃に移る。

『コウゲキカイシ!』

『ツッコメエエエエッ!』

『ヒャッハー!』

 急降下の際に敵から対空機銃が発射されるが、どれもまばらでまるで命中する気配はない。

 

 

――ガアアアアアァァァッ……!

――ガアアアアアァァァッ……!

――ゴホアァッ!?

 

 

「編隊より入電。駆逐イ級2隻撃沈、1隻中破とのこと!」

「さすがに数が多いだけあって損害自体は少ないね……観測機は出せる?」

『オマカセ』

 偵察機・観測機の妖精さんたちは既に準備万端だ。

『敵艦隊に対し単縦陣で突っ込み、先ほど同様副砲を一斉射して敵を混乱させながら砲撃しろ‼』

「了解です」

 そして間もなく接敵すると、鈴谷から偵察機が発艦し、上空で旋回を始めた。

「エンジン、あったまってまいりましたぁ‼」

 鈴谷から飛行した偵察機は敵艦隊の移動位置と速度を逐一計算し、艦隊の砲撃を誘導する。

「まもなく敵軽巡の射程に入ります!副砲、一斉射!」

 そして射程に入るや否や、勢いよく副砲を斉射する。

 たちまち敵艦から小さな爆炎が多数上がり、さらに至近弾で相手の隊列を大きく乱すことに成功する。

「!偵察機より入電!……よーく狙って……うりゃぁッ‼」

 5人の放った砲弾は吸い込まれるように敵艦隊に命中した。

 この攻撃でイ級は全滅し、ホ級も中破に追い込まれる。

 だが、ホ級も負けじと砲撃を放ち、一番練度の低い如月に命中させた。

「やだ……髪が傷んじゃう……」

 幸い中破状態で攻撃力が落ちていたこともあってカスダメで済んだが、全力を発揮できる状態だったら危なかったかもしれない。

「大丈夫ですか、如月さん?」

「えぇ。許さないんだからっ」

 さらに接近すると、丁字有利状態に持ち込むことに成功する。

 そこで魚雷戦である。

「魚雷って太いのよねぇ……さぁ、イクわよぉっ!」

 千歳と千代田以外の4隻から放たれた魚雷は吸い込まれるようにホ級に向かっていった。

 そして、大量の魚雷が命中したホ級は爆炎を上げながら沈んでいった。

「あぁ~ん♡如月の戦果が一番なのぉ?まぁ当然と言えば当然ね。いいのいいの、あんまり褒めないで」

『やたら卑猥な言い回しだなっ‼』

「こういう子なんです……」

 神通が申し訳なさそうに謝る。

 すると、神通の電探に再び反応が出現した。

「これは……艦娘でしょうか?」

 近づいていくと、茶髪でロングヘア―の女の子が水の上にいた。

「あら、どちらかの鎮守府から来たのかしら?」

「この近くに新しい鎮守府が設立されまして。一緒に来ますか?」

「そーねー……北上さん、会えるかしら?」

 そう言いながら、その女性を連れて帰ったのだった。

 

 

 帰投した艦隊は、まず音無に報告する。

「被弾は如月が敵砲弾1発を受けたのみ、か。確か、入渠させることで怪我を治療できるんだよな?」

「はい。今回はカスダメということもありますので、基本的に短時間で修復できるでしょう」

 それに頷くと、新しく着た艦娘の方を向いた。

「軽巡洋艦、大井です。よろしくお願いいたしますね」

 ヤンキーじみた摩耶やギャルっぽい鈴谷に比べると落ち着いており、礼儀正しい印象だ。

 しかし、そんな印象は呆気なく裏切られる。

「ところで……北上さんは来てませんか?」

「北上?えぇと、『球磨型軽巡洋艦3番艦』か。いや、まだ来てないぞ」

「……チッ」

「お前今舌打ちしたかっ!?」

「あ、いえ、なんでもないですぅ(ウフフ~)」

 どうやら、彼女も一筋縄でいく存在ではなかったようだ。

 こうして、SSS鎮守府に如月と大井が加わった。

 彼らは今後どのような戦いを繰り広げるのか……それはまだ、神のみぞ知ることである。




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