※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

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今回はこの作品を書く上で出したかったとある作品のクロスオーバーキャラが大暴れです。

これを受け入れられるかどうかはあなた次第……


警戒せよ‼ボルネオ島三羽提督‼

 沖ノ島海域を解放したことで、音無は南西諸島海域の攻略に成功した。

 だが、頭を悩ませていることがあった。それは、間もなく開かれるというボルネオ島の提督との合同演習であった。

 本人は『まぁ、ゆりたちに比べればちょっとやそっとは』と思っていたのだが、前の鎮守府のことを知っている千歳、千代田、大淀、加賀、翔鶴そしてSaratogaは、完全にイヤそうな顔をしていたのだ。

「……大淀や千代田はともかく、千歳やサラにまでイヤそうな顔をさせる提督……どんだけヤバいんだ?」

 提督としての能力は高いが、やたら艦娘をこき使うのか、それとも無理矢理手籠めにするのか、はたまたその逆で無関心なのか。

 色々考えたが、『なんとも言えない』なのだ。

「合同演習は明日……聞けば、ボルネオ島には3人の提督がいて、その3人が俺のことを聞いて今回の演習を持ち掛けてきたらしいけど……新人いびりとかじゃねぇよなぁ……」

 すると、隣で立っていた今日の秘書艦、川内が声を張り上げる。

「だーいじょーぶだよー!どんなことがあろうとも、夜戦があれば全て解決!そういうもんだって!」

「お前は気楽でいいなぁ……そもそもな、夜戦する前に解決するのが一番なんだっつうの」

 そんなことを言うが、川内のテンションの高さに若干だが救われる音無だった。

 

 

 そして翌日、今日の秘書艦として、自分の一番の古参である千歳を立たせていた。

 やはり、最古参を立たせておくのが礼儀だろうと考えたのだ。

「そろそろ時間のはずだけど……未だに気配がないな」

「ない方が嬉しいんですが……」

 千歳の珍しいテンションの低さに驚きつつも、その提督を待つのだった。

 すると、大淀から報告が入る。

「提督、対空・対水上電探室より報告です。接近する船が1隻、艦娘が6人、さらに航空機1機、艦娘6人とのこと」

「また、設置型聴音機にも反応ありです。潜水艦と思しき艦娘6人とのことです」

「1人は潜水艦が中心か……どうなるんだ?」

 それから10分後、1隻のモーターボートが桟橋に停泊した。

「皆、気をつけろ。どんな奴か分からないぞ」

 すると、船の中から『フハハハハハッ!』という高笑いが聞こえてきたと思ったら、船の中から『とうっ‼』と言う声と共になにかが飛び出してきた。

 その人物を見た瞬間、一同は固まった。

 そこに立っていたのは、海パンに靴下と革靴を履いた、異様な風体の、しかし顔立ちは無駄に整ったイケメンだった。

「股間のモッコリ伊達じゃない!深海棲艦現るならば、海パン一つで全て解決!ボルネオ島三羽提督が1人、汚野武!ただいま参上!」

「な、なんちゅー格好してるんだぁっ!?」

 海パン一丁の変態……汚野武は堂々と仁王立ちしているが、見ている音無としては『唖然』という外ない。

「君が音無君か。なるほど、いい面構えをしているじゃないか」

「ど、どうも、ありがとうございます……」

 褒められているのは嬉しいのだが、海パン一丁の変態に誉められるというのも妙な感覚であった。

 だが、驚愕はさらに続く。海中から、一筋の潜望鏡が覗く。

「あっ、潜望鏡」

「艦娘か?」

 浮上した潜水艦は……人が乗るものだったが想像よりかなり小さかった。

 高松が『少人数乗りの小型艦のようですね』と呟く。

「イヤな予感が……」

 潜水艦のハッチが開いた瞬間、眩い光と共に『なにか』が現れた。

 それは……

「ラーリラーリラー!海を愛し正義を守る‼誰が呼んだかポセイドン!タンスに入れるはタンスにゴン!私はボルネオ島三羽提督の1人、海野土座エ門!お茶目なヤシの木カットがトレードマークの……ドルフィン提督だっ‼」

 セーラー服の上の襟部分に褌一丁と言う、ある意味汚野提督以上の変人だった。

 日向(ひなた)やゆりが思わず『100%の変態オヤジ……』、『汚野さんよりお下劣……』と呟くのもむべなるかなである。

「ほほぅ。君が音無君か。うむ。艦娘たちがイキイキとしている。いい生活をさせてあげているようだなぁ」

「は、はぁ……」

 だが、衝撃はそれだけではなかった。

 今度は、空から飛行機が近づいてきた。だが、その機体は音無にもよく見覚えのあるものだった。

「あぁっ!?『夜間戦闘機 月光』!?」

 月光が桟橋近くの滑走路に着陸すると、『ガタリ』と音を立てて風防が開く。

 マンガを読んだことのある音無はつい身構えていた。

「ま、また変なのが来るのかしら……」

「気をつけろ。俺の記憶が正しければ、さっき以上の変態が出てくるぞ!」

 音無の言葉に前任艦娘以外が身構えると、出てきたのは眼鏡にスーツ姿の『普通の』おっさん2人だった。

「へっ?」

「意外に普通ね……」

 野田ですら『ある意味予想外だ……』と言っているレベルであった。

 そう、音無たちは『マンガの方』は知っていたが、『アニメの方』のネタは知らなかったのだ。

 なので、大淀は断言する。

「いいえ。この方たちが一番の変態です」

「へっ?」

 その時、1人が懐から突然、『なにか』を取り出した。

「ムーンライトパワー!」

「な、なにが始まるんだ!?」

 大淀が『見てれば笑えますよ』と死んだ魚のような目で呟く。

 年代物のラジカセを取り出した片割れがボタンを押す。すると、高らかな音楽と共にその男がクルクルと回転を始めた。

 それに合わせるように、どこから取り出したのか垂れ幕のようなもので身を隠す。

「す、砂地だってのに見事なバランスだな……」

「驚くところそこですか?」

 しばらく意味不明な踊りをしていたが、やがて垂れ幕の向こう側で『メイクアップ!』と叫び、素早く服を脱ぎだした。

「え、着替えてる……?」

 だが、その後が問題だった。

「なあぁぁっ!?」

 そこに立っていたのは、ド派手なセーラー服に身を包んだ、ゴツいヒゲ面のおっさん2人だったのだ。

「華麗な変身伊達じゃない!月のエナジー背中に浴びて、正義のスティック闇を裂く!空の戦は任せてもらおう!月よりの使者、月光提督!ただいま参上!」

「同じくアシスタントの美茄子提督もヨロシクぅ!」

「ぎょええええええええええええええっ!?最凶クラスの変質オヤジぃ!?」

 だが、3組4人の男たちを見て、夕張がようやく気付いた。

「あぁっ!?あなたたちはもしかして……」

「夕張、もしかしてこの人たち……」

「警視庁のエリート集団である特殊刑事課三羽烏!海パン刑事、ドルフィン刑事、月光・美茄子刑事だーっ‼」

「元は警官って聞いてたけどやっぱりかあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ここ数か月で一番の雄叫びを上げた音無であった。

 なんというか、以前チャーが特殊刑事課っぽい装備を作り出した時から嫌な予感はしていたのだ。

 どうやら、この世界には特殊刑事課が存在するらしい。

「改めて、私たちがボルネオ島を守る3人の提督だ」

「聞いているぞ?海域の解放は慎重に慎重を重ね、艦娘たちの練度向上に余念がないと」

「我らボルネオ島三羽提督の相手にとって不足なし!」

「ぜひお手合わせ願おう!」

 4人の言葉にげんなりする一同だったが、そう言っている間に3組の提督が率いる艦娘が姿を見せた。

 

 

○ 汚野鎮守府 川内改二・神通改二・綾波改二・夕立改二・朝潮改二・磯風乙改

○ 海野鎮守府 呂500・伊26改・伊401改・伊400改・伊13改・伊14改

○ 聖羅鎮守府 翔鶴改二・瑞鶴改二・赤城改二・加賀改二・蒼龍改二・飛龍改二

 

 

 なんと驚くべくことに、全員が改・改二状態なのだ。元々改二が海外艦しかいない潜水艦はさておき、汚野・聖羅鎮守府の艦娘は磯風を除いて皆改二状態と、かなり手強そうだ。

 流石のSSS鎮守府の艦娘たちも緊張した顔を見せている。

 なにせ、この鎮守府で今改二なのは千歳と千代田だけであった。

 近いという意味では最古参の摩耶、鈴谷、神通、如月、大井、北上などで、戦艦では榛名とScharnhorstがようやく55、62と、改二状態の相手には及ばない状態であった。

 だが、4人とも全く油断していない。

 すると、汚野が口を開いた。

「彼女がScharnhorstか。確かに、これまでに確認されたことのない艦娘だな。祥鳳君の報告通りだ」

 そう、汚野も自身の艦隊を、敵輸送艦隊を殲滅する特別海域に参加させていたのだが、その時出くわしたのがSSS鎮守府の艦隊だったのだ。

「あの時はまだ練度が上がっていない子たちのためにと特別海域を引き受けていたが……おかげで面白い話を聞けた。そしてそうなると、当然そんな艦娘を従えている君の顔を見たくなったのだよ」

「それで今回の演習ですか……?」

「いかにも。さぁ音無君。君も演習に出す艦娘を選びたまえ!」

 汚野の言葉を受け、戦線メンバーが集まり作戦会議を始める。

「で、どうすんだ音無さんよ。なにで行く?」

「相手と同じ水雷戦隊で挑むのか?」

「いえ。ここは敢えて空母機動部隊で叩くという手もありますよ」

 あぁでもないこうでもないと話していると、音無はなにかを決めたように立ち上がった。

「汚野提督。こちらのメンバーが決まりました」

「ほほぅ」

 音無が編成したのは、以下のメンバーだった。

 

 

○ 鈴谷改・Scharnhorst改・榛名改・金剛改・比叡改・霧島改

 

 

「へっ?どういう編成!?」

 ゆりが素っ頓狂な声を上げるが、チャーは『なるほどな』と言いながらニヤリと笑った。

 意味が分からない一同を代表して、松下五段が問いかける。

「どういうことだ、チャー?」

「簡単さ。相手に肉薄されるとヤバいなら、『肉薄されないようにすればいい』ってこった」

「へ?」

 皆が首を傾げると、直井だけは『そうか』と理解した。

「敵に空母がいないのならば、鈴谷に搭載した瑞雲で制空権を取ることができる。その後、射程を伸ばす熟練艦載機整備員を利用して長射程からの砲撃を行い、近づかれたら副砲の嵐で敵の足並みを乱している間に遠ざかり、また敵のアウトレンジから攻撃する、ということじゃないのか?」

「でもよぉ、だったら空母の方が一撃の火力は高くねぇか?」

「いや。空母は戦艦以上に攻撃までに時間がかかる。いくら熟練艦載機整備員がいると言っても、それを過信するのは危険だ」

 しかも、今回は接敵した状態から始まるため、本来の空母の役目であるアウトレンジ戦法があまり活きないのだ。

 『でも』とひさ子がさらに口を挟む。

「じゃあなんで、伊勢と日向みたいな航空戦艦じゃないんだ?あいつらなら、戦艦の射程と軽空母並みの攻撃隊があるぞ?」

「恐らく『足の遅さ』だろう。音無さんは敵に少しでも追いつかれにくくするために『速さと火力』を両立した艦隊を編成したんだ。それでも命中率を高めるために制空権を確保することを考えて、最古参の航巡である鈴谷を入れた、と言うところだろう。全く、工廠長以外そんなことに気付かんとは。これだから愚民どもは」

 直井に言い返したい一同だったが、チャーの方を見ると『多分そうだろうな』とあっさり言われてしまったため、珍しくなにも言えないのだった。

「……ま、銃も握ってねぇひさ子たちに、考えろというの自体がお門違い。それでふんぞり返ってると、音無に白い目で見られるぞ」

 チャーの指摘で直井がビクンと背筋を伸ばすが、時すでに遅し、と言う状態だった。

 一方、汚野提督もまた『ほぅ』と言って面白そうに見ていた。

「これはこれは……なるほど。改装が足りない分は戦艦のアウトレンジで補う、か。果たして、それでどこまでいけるかな?私の水雷戦隊は、速いぞ?」

「それを覆して見せます。そのためにここにいるつもりです」

 音無の視線は不敵ともとれるように見えたが、汚野は嬉しそうに笑った。

「うむ。そう来なくてはな。では……演習開始といこうか!」

 こうして、最初の演習がスタートする。

 接敵したところで鈴谷が飛ばした瑞雲により、あっという間に制空権は確保できた。

 その時、汚野は『む?』となにかに気付いたようだった。

「あの瑞雲……一二型かつ六三四空の熟練だと!?バカな!なぜあんなものを持っている!?」

 そう言っている間に艦隊に急降下すると、先頭の川内改二に爆弾が多数命中する。

「あぁっ!?」

 なんと、真っ先に中破にまで追い込まれてしまった。いくら装甲が薄いと言っても、まさか改二の艦娘を一撃で中破にまで追い込むとは、完全に予想外であった。

「ま、まさか、こんなことが!?」

 歴戦のはずの汚野もあっさりと動揺させられていた。

 そして射程に入ったところで、音無艦隊が一斉攻撃を行った。

「その荷は置いてけぇ!」

 Scharnhorstを筆頭に、皆の砲撃が汚野艦隊の艦娘たちを直撃した。この攻撃で、夕立改二が中破、綾波改二も小破してしまった。

「め、命中率が異様に高い!」

 それもそのはず。音無艦隊は主砲・主砲・副砲・観測機(鈴谷のみ主砲・副砲・瑞雲・熟練艦載機整備員)という組み合わせなのだが、主砲は全てフィット砲。しかも、金剛型4隻は全て『試製35.6cm三連装砲』を装備しているため、その命中率と威力は通常の『35.6cm連装砲』とは桁違いであった。

 しかも、30ノット近くを出せる高速戦艦を中心に艦隊を組んだことで、34ノット近い平均速力を誇る水雷戦隊も中々追いつけない。

 ようやく中射程に入って魚雷の発射態勢に入ろうとした時、今度は弾雨とも言うべき副砲の嵐が殺到し、観測機とフィット補正による高い命中率で次々と命中弾を出し、汚野艦隊の足並みを乱す。

「きゃあぁっ!?」

「これヤバいっぽい~!」

 そこで速力を落として回避している間に、またも音無艦隊は長距離まで遠ざかった。

 そして、そこに観測機からの報告が届いた。

「榛名、全力で参ります!」

 炸裂した弾着観測射撃により、神通改二が一撃で大破に追い込まれ、夕立改二も大破した。

「な、なんということだ……」

「よし、イケてるっ‼」

 もしこれが『改装状態』の素の装備だったならば、命中率も攻撃力も遥かに低かったはずだった。だが、チャーが作り出した強力な装備の数々が、格上のはずの改二水雷戦隊を追い込んでいた。

「くっ、こちらの射程に全く入れないうえに、あっという間に綾波、朝潮、磯風以外が中大破だと!?」

 しかも、また中距離に近付いたところでなんとか魚雷を発射したのだが、距離があったためにその軌跡を見逃すことはなく、音無艦隊はあっさりとかわしてしまった。

 しかも、それだけでは済まなかった。

「もってけ一閃!」

 Scharnhorstと鈴谷が魚雷を発射したのだ。

 航空巡洋艦の鈴谷はもちろんだが、戦艦であるとはいえ、Scharnhorstも魚雷を装備している。そのため、威力自体はさほどでもなかったが、またもや汚野艦隊は回避行動を強いられた。

 命中こそしなかったが、大きく蛇行している間にまた音無艦隊は距離を取る。

「くうっ……まさか、ここまでとは……」

 海野(ドルフィン刑事)も聖羅(月光刑事)も、明らかに驚きの表情を見せていた。

「まさか、海パン刑事があそこまで追いつめられるとは……」

「ただ者ではないと思っていたが、想像以上にできるぞっ」

 だが、流石にそう何度も逃げ切れはしなかった。

「綾波が、守りますっ!」

 綾波、朝潮、磯風の3隻が再び魚雷を発射したのだ。なんとか逃れようとしたが、やはりそううまくはいかなかった。

「ひぇ~!許さないっ‼」

 比叡に続き、霧島も被雷して中破に追い込まれる。

 流石に改二(磯風も改二に匹敵する改装)だけあって、3隻でも雷撃は強烈であった。

 だが、反撃と言えばここまでであった。その後はアウトレンジからの攻撃に徹した音無艦隊の弾着観測射撃が3回も炸裂し、夜戦突入時には小破状態の綾波だけが残っていた。

 しかも、やはり距離を詰められないままに中距離からScharnhorstのカットインが発動し、綾波も大破、夜戦続行不可能となってしまった。

「そ、そんな……バカな……私の……南方棲戦姫すら打倒して見せた艦隊が……」

 南方棲戦姫。それは、ゲームの通常海域においては提督たちに立ちはだかる最大級の難関とも言われる『第一次サーモン沖海戦』のボスであり、練度60~80前後まで艦娘の練度を上げなければ相手するのは厳しいと言われるほどの存在である。

 そんな存在を打倒するほどの艦隊を、音無艦隊は中破2名のみで攻略してしまったのだ。

 驚くなと言う方に無理があるだろう。

 勝った音無艦隊の艦娘たちは、明らかに練度が大幅に向上している。

 恐らくだが、もう間もなく改二にできるだろうと言うほどだ。

 喜ぶ音無艦隊の面々とは裏腹に、汚野艦隊はしょんぼりしながら戻ってきた。

「提督……ごめんなさい。負けちゃった……」

「夜戦になれば勝てると思ったのに……真っ先にやられちゃったんじゃねぇ……」

 ほとんどがしょんぼりしている中で、川内の後ろに立っていた神通は気付いていた。

「提督。彼らは日頃からかなりの鍛錬を積んでいるうえ、優れた装備を改の時点で装備し、改二以上の力を発揮して見せています。これは……海野提督も聖羅提督も苦戦するはず……いえ、勝てるかどうかわかりません」

「仕方あるまい。彼の念を置く性分が、私たちの実戦経験に追いつくほどだった。加えて、今回は理に適った戦法で挑まれた。それだけのことだ」

 だが、海野も聖羅もニヤリと笑う。

「見事だ。だが、そうでなければ面白くない。我が潜水艦隊の力、とくと味あわせてやろう!」

「その通り!我らが機動部隊も未だ健在だっ‼」

 だが、分析力にも優れる神通は既に、他の2名も敗北する未来が見えてしまっていた。

 

 

 海野が潜水艦の上に立つと、なぜか音無が引き下がった。

「む?なぜ提督の君が下がる?」

「すみません。実は、現時点で対潜戦闘はこいつに任せているんですよ」

 そう言われて前に出たのは、先ほど失言した直井だった。

「ふっ。我を称えよ」

「ほ、ほぅ……自信があるのはいいことだが……大丈夫か?」

「舐めるなよ、変態デブ。僕は音無さんから、鎮守府近辺の対潜哨戒を任されている。提督権限を持つ者の中では、一番自信があるつもりだ」

 直井が選んだのは、以下の6隻だった。

 

 

○ 阿賀野改・五十鈴改・夕張改・由良改・睦月改・如月改

 

 

「む?睦月型が2隻?」

 確かに対潜値が高いが、睦月型ははっきり言って旧式の駆逐艦であり、他の駆逐艦に比べると対潜値は低いはず。

 音無艦隊では最古参だが、それだけとも思えない。

「ふむ……なにかあるようだな」

 だが、海野とて無策ではない。海野の艦隊は甲標的に加えて、『ロ号艦本式艦』を装備していることにより、回避力は上がっている。

 そう簡単に攻撃が当たるとは思えなかった。

 だが、直井とて伊達に音無に対潜戦闘を任されているわけではなかった。

 

 

 開戦直後、直井は艦娘たちに先制雷撃に注意するよう言い含めておいたが、それが功を奏し、なんとか先制雷撃をかわすことができた。

 そして、そこからが真骨頂だった。

「ば、バカな!あれは……Hedgehog、だとぉ!?」

 Hedgehog。チャーが以前開発した、『前方に大量の爆雷を投射することが可能な兵器』であった。

 爆雷と言うものはそもそも、第二次大戦のある頃までは、投下軌条から爆雷を転がして落とすか、左右に対して爆雷を投射するかの二択しかなかった。

 そのため、護衛艦艇の不足もあってドイツのUボートの跳梁を許してしまった。

 だが、イギリスはSkidという前方投射兵器を、アメリカもHedgehogを開発し、さらに船団の陣形の工夫や護衛空母の充実も含めてUボートに対抗したのだ。

 音無艦隊の艦娘たちは、全員が『Hedgehog』と『三式爆雷投射機』、或いは『三式爆雷投射機 集中配備』を装備しているため、前も後ろも備えがある。

 しかも、装備しているものには『三式水中探信儀』と、『四式水中聴音機』があるため、その探知能力はかなり高い。

 海野艦隊は潜水空母に『試製晴嵐』こそ装備していたが、試製晴嵐は制空値が0なので、阿賀野が搭載していた瑞雲が相手でもなにもできずに落とされてしまった。

 さらに、4スロットを持つ夕張改もまた、零式水中聴音機を含めた多数の対潜装備を持っているため、潜水艦キラーと化していた。

 直井の選んだ艦隊は高速を以て潜水艦隊の雷撃をかわしつつ、あちこちに爆雷を投射していく。

 その投射はピンポイントで、海野艦隊の潜水艦娘は、わずか3回の投射で運の高い伊401以外の全員が大破状態になってしまった。

 海野は改めて戦慄した。

「(分かっていた……分かっていたはずなのに……あっという間にやられていく……私の、空母棲姫すら打倒した艦隊が……)」

 結局、海野艦隊が直井艦隊に与えた損害は如月が大破、夕張が中破したのみだった。

 海野艦隊の潜水艦娘たちもまた、汚野艦隊の水雷戦隊同様にボロボロになって帰ってきた。

「うぅ~……ごめんなさい……」

「やられてしまいました……」

 当の海野も、ここまでの惨敗を喫するとは思っていなかったからか、チャームポイントのヤシの木カットは折れ曲がり、パイプからも力なく『ポ~っポ~……』と蒸気が噴き出すのだった。

 それを見た聖羅2名は戦慄していた。

「まさか、海パン刑事に続いてドルフィン刑事までも破れるとは……」

「これはただならぬこと!」

「では仕方ない。美茄子刑事、本腰を入れるぞっ‼」

「はい!」

 月光の指示に返事をして、美茄子はキャスター付きカーテンを押してきた。月光がカーテンの向こうに隠れた時、汚野艦隊の川内、夕立、綾波が無表情で探照灯を向けて照射した。

「「「探照灯照射始め~……」」」

「すっげぇイヤそうな顔で照射しやがったっ!そこまでイヤならやらなきゃいいのに!?」

「まあ、これも付き合いというものだよ、音無君」

 一方照らし出された月光はシルエットを映し出しながらポーズを決める。

「ムーンライトパワーァァァっ!メイクアップ!」

 カーテンの向こうでステッキを掲げた月光は、素早くセーラー服を脱いでいく。一応なんとなくだが流れが想像できてしまう音無は、ボケることもなく言ってしまう。

「それで、どれだけおかしいお着替えをするんです?」

「変身だっ!っというかちょっとくらいボケろ!」

 そう言いつつも素早く着替えていく聖羅月光。その手慣れた具合は流石という外ない。

 そして、着替え終わった時、茶髪のカツラとドイツっぽい軍服を身に着けていた。なお、その手にはなぜか大戦時の機関銃のようなものが握られている。

「説明しよう!月光刑事はミー○・ディートリンデ・○ィルケに変身することで、キレのある指揮能力を手に入れるのだっ‼」

 そう言っている美茄子は2丁の機関銃を持った猟犬お姉ちゃんのコスプレだった。

「なにがキレのある指揮能力だよ……そんなんで身に付けば苦労しねぇって」

 音無の言葉に艦娘たちも戦線メンバーも『うんうん』と頷く。

 だが、そんな音無たちのことは意にも介さず月光は話を進める。

「さぁ皆!本物のネウ○イと思って戦うのよぉん!」

「はっ!」

 そして、これは共通点のようなのだが、『自分の提督』のことは尊敬の眼差しを見せているが、他の2名の提督に対しては白い目を向けているという状態らしく、連れてこられた空母娘たちは士気旺盛であった。

「こちらの編成は既に決まっています」

 音無艦隊は以下となる。

 

 

○ 翔鶴改・瑞鶴改・Hornet改・赤城改・加賀改・蒼龍改

 

 

「やはり一次改装のみか……千歳型2隻は改二のようだが、流石に軽空母では限界がある。やはり正規空母を当ててくるか……ん?君のところの加賀、色々違わないか?」

「彼女は、件の鹵獲改装されていた艦娘の1人です。それに、翔鶴も」

 それを聞いた途端、それまでノリノリでお芝居をしていた聖羅の顔が真剣になった。

「そうだったのか。艦娘として海に出られることを、1人の提督として祝福させてもらおう」

 外見はかなりふざけているが、音無はその言葉に重みを感じた。加賀と翔鶴も頭を下げて、『ありがとうございます』と返答した。

「しかし、それと演習は別問題だ。君たちの音無君に対する想いを、この演習で見れるだけ見させてもらおう」

「さぁ、皆!演習の始まりだっ‼」

 美茄子の声を受けた空母娘たちは意気高く『オーッ!』と声を上げた。

 

 

 だが……その結果は惨憺たるものだった。

「なにいっ!?し、『震電改』だとおっ!?出てきても烈風の後期型くらいかと思っていたというのにっ!?」

 月光たちとて、烈風改(熟練)や彗星一二型甲、流星改などの、『開発できる範囲』と『配布された装備』の範疇で強力なモノを多数整えていた。

 だが、その烈風改は震電改による高空からの一撃離脱戦法に徹されたことで呆気なく落とされていった。

 しかも、音無の空母艦娘から発艦した攻撃隊を見てさらに驚かされた。

「なっ!?あれは……流星ではないぞっ!?」

「あんな機体、見たことがないぞぉっ‼」

 それもそのはず。音無はHornetの協力を得て新たな艦載機を開発していたのだ。

 その名は『Aー1(初期型)』であった。

 『Aー1』スカイレイダー。それは、アメリカが作り出した『急降下爆撃可能な攻撃機』というコンセプトの、日本の『流星』によく似た航空機だった。

 だが、その能力は尋常ではない。

 流星が800kg爆弾や魚雷を1本抱えることが限界なのに対して、スカイレイダーは3t近い兵装を抱えることが可能と言う規格外さを誇る。

 数値は以下となる。

 

 

○ Aー1(初期型) 対空+5・爆装+15・雷装+13・対潜+8・索敵+8

 

 

 太平洋戦争には間に合わなかったものの、その能力の高さから朝鮮戦争やベトナム戦争にも駆り出され、対地攻撃に大活躍した。

 のみならず、レシプロ機でありながら、驚くことにジェット機と戦闘して撃墜したことがあるという驚異の戦果を持っているのだ。

 熟練のパイロットが操れば、この機体はそれだけの能力を発揮するのだ。

 そのため、攻撃機でありながら対空数値として零式艦戦21型と同じ数値を持つという反則ぶりである。

 そんな機体を、Hornetと共に開発し、運用のための経験を積ませていた。

 音無は、今後のことを考えて強力な機体を充足させるために色々と手を尽くしていた。艦娘に運用可能なジェット戦闘機の開発までも、今は進めているのだ。

 そんな音無からすれば、この程度は造作もなかった。

「(あ、甘かった!海パン刑事やドルフィン刑事があれほど苦しめられたというのに……それでも『ここまでは』などと慢心してしまった!)」

 元々『烈風改』ですら開発不可能な装備のはずなのだが、それを早い時期から作り出していたSSS鎮守府の能力を甘く見てしまっていた。

「あぁ……そんな……」

 スカイレイダーから投下された800kg爆弾は空母娘空たちの甲板を次々と破壊して行動不能にしていく。一方の月光攻撃隊は直掩している震電改の前に全く近寄ることができず、結局一番練度の低い翔鶴を大破させたのみであった。

「す、すみません提督……私ばっかり被害が……」

「まぁ仕方ないさ。理想は高くできても、現実はそうはいかないからな」

 一方の月光艦隊もボロボロになりながら帰ってきた。

「うぅ……ボロボロです……」

「慢心はダメだと知っていたはずなのに……」

 翔鶴改二と赤城改二の言葉に、月光も項垂れていた。

「いや、全て彼が初心者提督だと考えていた私の責任だ……もっと……もっと頑張らないとな……」

 美茄子がお茶を皆に差し出すと、皆チビチビと飲むのだった。

 そんな彼らを汚野と海野も『うんうん』と言いながら見ていた。

「我らも通った道だ」

「歴史は繰り返す」

 こうして、当初彼らが想定した状態とは裏腹に、SSS鎮守府の圧勝と言ってもいいほどの結果を叩き出してしまったのだった。

「装備もさることながら、戦法の徹底、艦娘たちの能力を十全に生かした組み合わせなど、見事なものだった」

「むしろ、我々の方が色々と学ばされた気分だ」

「だが、この次はこうはいかないぞっ‼」

「我らも絶対に勝って見せよう!」

「「「「では、さらば!」」」」

 そう言うと、それぞれの乗り物に乗って騒がしく帰っていったのだった。

「なんつーか、インパクト強すぎる人たちだったな……」

「大淀や千歳がげんなりするのも無理ないわね……」

 音無とゆりの言葉に、艦娘たちは『ハハハ……』と苦笑いするのみだった。

 だが、この演習は大きな結果をもたらすことになる。




と、いうわけで最悪クラスの変態共でした。
この話を書く少し前にこち亀のスペシャル再放送見て改めてドはまりしたんですよねー……なお、彼らは今後もたびたび出てきます。
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