時間は少し戻る。あまりにも騒がし過ぎる1日が終わろうとした夕暮れ、音無はあることを思い出していた。
「あっ!」
「ど、どうされましたか、提督?」
千歳が慌てて聞くと、音無は顔を真っ青にしながら答えた。
「艦隊が見つけてきたあの艤装、あれって工作艦のものだったんじゃ!?」
それを聞いて反応したのは、ずっとチャーと共に工廠にこもりきりだった工作艦の明石であった。
「えっ!?そんな艤装見つかったんですか!?」
「あ、あぁ。実は昨日……」
「ちょ、ちょっと見せてくださいっ!」
音無たちは工廠までコンテナを持っていき、改めて開封する。
「こ、これ……そうですっ!これは、私の……明石の艤装ですっ‼」
「やっぱりそうだったのか……」
元々日本の正規工作艦は明石しか存在しない(いわゆる貨物船改装及び旧式戦艦『朝日』を改装した特設工作艦なら存在したが)ため、正規の工作艦の艤装だとすれば間違いなく明石のものだった。
「じゃあ、これで明石も前線に出られるってことか?」
「はい。ただ……わたしはあくまで修理を担当する工作艦なので、激戦となる最前線に出ることはできません。それに、修理の度合いも、中破までとなります」
明石の能力を発揮するには、彼女を旗艦に据えたうえで彼女の専用装備と言っていい『艦艇修理設備』が必要となる。
これは装備するごとに、1隻の艦娘を修理することが可能になるという優れものだ。
改装すると4スロットになるため、最大で4隻を修理できることになるのだ。
「だったら天龍たちみたいに、掃討艦隊や遠征艦隊に付いていったらいいんじゃないか?時々皆の様子を見てくれれば、それでいいと思うぞ」
こんな自分にもそこまで気を遣ってくれるのかと、明石は嬉し涙を流しながら音無に抱き着いた。
「はいっ!誠心誠意、働かせていただきます!」
その時、ちょっとした重巡洋艦並みの胸部装甲が音無の胸に当たり、音無に『グニュッ』とその程よい柔らかさを伝えた。もっとも、流石に千歳や鈴谷たちを抱いた今となっては、音無も動揺はしない。
「うぉっ……スタイルいいのは知ってたけど、こうして触れ合うと全然違うな」
「光栄です。こんな私でも女と見ていただけて」
「こんなって、俺はそんな風に思ったことはないぞ。お前が素敵な女性でなければ、こんないい笑顔になれっこねぇよ」
相変わらずの音無の天然口説き文句を聞かされて、笑顔だった明石の顔は真っ赤になり、すっかり呆けてしまった。後ろで見ていた大淀が『だから提督と言う方は……』と言わんばかりの顔で見ているのだった。
「成程、艦娘1人1人のいいところを把握できるのが、音無君が彼女たちに慕われる理由か」
工廠の入り口で見ていたのは、帰投準備を整えていた三提督であった。
「これは……失礼いたしました、汚野提督」
謝罪する音無に、汚野は右手を突き出して『構わんよ』と言う。
「そうやって艦娘と深くわかり合おうとする君の姿勢が、今回の演習の結果へ導いたと今は思う。君に負けず、我々ボルネオ島三大提督も初心に帰って励むとしよう」
「うむ。次は我が潜水艦隊もあっと言わせる攻撃をできるようにならなくてはな」
「次こそは君たちの頭上を取って見せよう」
汚野、海野、聖羅は思い思いの抱負を述べた後、順番に音無と握手を交わしてから鎮守府を後にした。
「すごい人たちだったわね、音無君」
「あぁ。変態だけど、いい人たちだ。俺もあれくらい艦娘に慕われるような立派な提督になりたいもんだ」
「いや、もう十分に慕われてると思うけど……」
だが、音無は執務室に入って椅子に座ると、去り際に汚野がした話が気になっていた。
『そう言えば音無君。君に1つ忠告しておきたい』
『え、なんですか?』
『この近くには他にもいくつか鎮守府があるのだが……その中の1つ、フィリピンを統括する黒野提督と言う人物、あまり評判の良くない男なのだ』
『と、言いますと……?』
『信じられない話なのだが……艦娘をまるで物のようにこき使うのみならず、他の鎮守府から艦娘をあの手この手で引き抜くような真似もしているという話だ。実際、裏から手を回して黒野提督のもとへ強制的に異動させられた艦娘もいるらしい』
そんなことが起こっているとは知らなかった音無は流石にギョッとする。
『そんなことが、あり得るんですか?』
汚野は元々警視庁のエリート……と言う名の変態集団が集められた『特殊刑事課』の三羽烏と自称する刑事・海パン刑事であった。
もしかしたら、彼がこの付近で最大の島、ボルネオ島の鎮守府を任せられているのは、『潜入捜査官としての役割も持たされているのかもしれない』と音無はこの時感づいたのだった。
もっとも、その割には目立ちすぎな気もするが、まぁ、今更と言えば今更である。
『一応艦娘の異動に関しては大本営の承認があれば、不可能ではないのだ。黒野提督は大本営の幹部に対してもそれなりに顔が利くと噂で、裏ではよくない組織との繋がりも示唆されている……強制異動もそのコネでできるらしい。どうやら君のところに現れたScharnhorst君や、鹵獲改装された伊勢君たちに異様な興味を示しているそうだ。なにもないに越したことはないが……十分に気を付けてくれたまえ』
今日会ったばかりであるが、汚野は音無のことを高く買っているようであった。そんなこともあって、音無に忠告をわざわざくれたのだ。
汚野の言葉を反芻しつつ、音無は椅子にもたれかかる。
「……チャーが言ってたな。ブラック鎮守府って奴か。できれば、ウチはそうならないように、十分気を付けないとな」
すると、明石がひょっこりと顔を出した。
「提督、今回の大演習で、榛名さんや如月さんを含めた一部艦娘が改二になれるようになりました!」
「お、やっとか!」
というか、解放した海域に比べると艦娘の練度が尋常ではなく高いため、『もう!?』という提督も多いだろう。
今回改二になる艦娘は以下である。
○ 鈴谷・榛名・瑞鶴・蒼龍・Scharnhorst・摩耶・如月・睦月・大井、皐月
なんと、今回の大演習に参加しなかった摩耶を含めて10人の艦娘が改二になれるということであった。
「工廠長が改二に必要な資材も全て用意してくれているので、全員を一斉に改装できますが、どうしますか?」
「当然すぐに改装する。あ、装備は事前に取っ払っておいてくれ。廃棄になったらもったいないからな」
「はい。直ちに」
改装対象の艦娘を連れて工廠へ向かうと、チャーが既に改装の準備を整えていた。
「よう、お前ならいっぺんにやるだろうと思ってたから、改装用資材の準備はちゃんとしておいたぜ」
「ありがとよ。よし、皆の新しい姿、しっかりと見せてもらうぜ」
「はいっ!」
音無は大淀が揃えた書類に目を通しながら、10人の改装が終わるのを待つ。
本来なら、改装時間が長い艦娘は20分以上を要するので、10人もいると2時間はかかることになる。
しかし、千歳や千代田が改二改装した時の喜び様を目の当たりにしているので、時間があるなら終わった時にちゃんと側にいてあげたいと思ったのだ。
幸い、合同演習が始まる前に時間のかかる書類仕事は片付けていたので、明日以降に処理しようと思っていたものに目を通す時間に当てたのだ。その間、書類に目を通しながら色々な艦娘たちとゆっくり話す時間も持てたので、待っていても充実した時間となった。
そして、2時間後……工廠の作業終了を告げる鐘がなり、工廠の中から10人の艦娘たちが出てきた。
「提督、お待たせいたしました」
皆それぞれに大きく変化しているのだが、よく見るとScharnhorstは様々な点でかなり雰囲気が変わっていた。
「ん?シャルの主砲、なんか雰囲気が変わったか?」
「あぁ。実は主砲に射撃統制用のレーダーを搭載したことで命中率と火力が大幅に上がったんだ」
ScharnhorstのZweiについては以下となる。
○ 耐久 78
○ 装甲 70
○ 回避 45
○ 搭載 5
○ 速力 高速
○ 射程 超長
○ 火力 66
○ 雷装 20
○ 対空 36
○ 対潜 0
○ 索敵 10
○ 運 20
初期装備は以下となる。
○ 28.3cm三連装砲改二+Fumo25レーダー(火力+18・対空+8・命中+10・索敵+7・射程超長)
○ 15cm連装副砲改(火力+6・対空+2・命中+3・射程中)(×2)
○ 53cm三連装魚雷発射管改(雷装+6・装甲+5・回避+2)
○ 無装備(×3)
これまでの装備が大幅に強化されており、金剛型の改二に匹敵するか、ある意味それ以上の能力と言えるだろう。
史実における彼女は、本来38.1cm連装砲に換装するという話もあった(実際そのためにターレットリングが大きく取られている)ようなのだ。
だが時間がなかったこともあって結局そのままだったのだが、艦娘としては既存の武装にレーダーや改修を施しているという改装に至ったのだ。
手数を増やす、砲の精度を大幅に上げることによって、彼女が持つ本来の力を発揮しやすくしたということらしい。
しかも、彼女の装備はドイツ艦娘に装備することで大きなボーナス数値が得られるため、カタログスペック以上の能力を発揮してくれるだろう。
「おぉ、そりゃすごいな。レーダーを装備すれば命中率はもちろんだけど、索敵能力も大きくアップするな」
「あぁ。今度こそ……今度こそレーダーの未使用で負けるようなヘマはさせねぇさ」
Scharnhorstはその最後の出撃の時、イギリスの『King・GeorgeⅤ世』級戦艦、『Duke Of Yoke』との砲撃戦で負けたのだが、ドイツ側はイギリスのレーダー逆探知を恐れて使用しなかったのに対して、イギリス側は恥も外聞もなくレーダーを使用して高い命中率を叩き出して見せたのだ。
その砲撃戦『北岬沖海戦』の結果、Scharnhorstは海の底に沈んで行ったのだ。
「そうだな、俺も、お前を沈ませたくない。一緒に頑張ろう」
嬉しそうな音無の顔を見て、Scharnhorstもはにかんでいた。
一方、開発方面でもまた新たな装備が多数生まれていた。
「チャー、新しい装備ができたって?」
「あぁ。こっちはアルハンゲリスクのお陰で、こっちはHornetのお陰で完成した」
それは、戦車らしい車両と、双発の爆撃機だった。
「これは?」
「これは『Tー34(76mm)』。陸軍大国ソビエト連邦が開発した、第二次世界大戦『最良』のMBTさ」
Tー34
ソ連に侵攻したドイツ軍のⅢ号、Ⅳ号や38(t)戦車を次々と撃破して、ドイツ側に『Tー34ショック』と呼ばれるほどの衝撃を与え、登場当時は間違いなく世界最高クラスの戦車であった。
高威力の76mm砲、避弾経始に優れた局面の車体と砲塔、そして信頼性の高い高出力ディーゼルエンジン。さらにコンパクトにまとめたことによる25t以下と言うⅣ号戦車以下の重量に抑えるという優れものであった。
改良型の86mm砲搭載型は30tを超えているが、『30tちょっとでティーガーⅠ並の攻撃力と防御力を実現した』と言うところが素晴らしいのだ。
「え、最良って……ドイツのティーガー・パンター戦車やアメリカのシャーマンとかじゃないのか?」
「残念だが、ティーガー系列は重過ぎる上に足回り、駆動系等に大きな弱点を抱えていた。おまけに防御方面も直線的で、被弾軽始が足りねぇ。パンターも重過ぎることや足回り、駆動系等は大きな弱点だった。これは後期ドイツ戦車の宿命みたいなもんだったな」
「じゃあ、アメリカのシャーマンは?」
「シャーマンは生産数も多いし総合力・信頼性も悪くはないが、エンジンを雑多に詰め込んだこと、攻防含めて能力的には平凡過ぎてドイツ戦車相手に3倍から4倍近い数で挑まなければ勝てなかったこと、車高が高かったことなどが挙げられる」
「マジ……?」
そもそもシャーマンのあだ名は『偉大なる凡作』なのだ。突出したところがないと言っていい代わりに信頼性と大量生産しやすい状態だったのだ。
日本人からすると異様に恐ろしく感じられるのは、単に日本の戦車が弱すぎただけのことである。
「あと、シャーマンは一部を除いて皆ガソリンエンジンだったため、燃費も悪かった……ガソリンエンジンはドイツの戦車も同様だったな。ったく、煩雑で異様に手間のかかる飛行機のエンジンまでディーゼルエンジンを作れたクセに、なんで戦車用のエンジンなんてもんが作れねぇんだか」
その点、『Tー34』の初期型は当時のドイツ戦車のほとんどを圧倒する76mm砲を装備しながら軽量・低車高・高攻撃力・高防御力と、どれをとってもピカイチだったのだ。
欠点と言えば、当時のソビエトの運用が拙かったことと居住スペースの狭さ、そして通信設備の欠如くらいだったという。
逆に言えば、運用戦術と通信設備を整え、居住スペースの狭ささえ我慢できればこれほど強い戦車は、登場当時ないとさえ言われた。
止まっていればティーガーⅠやティーガーⅡは76mm砲も88mm砲にもある程度耐えることができたが、機動戦闘となるとロシア戦車の方がはるかに優れていたのだ。
「さらに言えば、重量がそれほど重くなかったうえに履帯の設置圧が低かったこともあってぬかるんだ悪路だろうと平然と走破した能力も欠かせないな。ドイツ戦車はぬかるみなどの足場の悪いところでは呆気なく埋もれて動けなくなっちまった。それでも活躍できたのは、独ソ戦の後半が機動戦闘ではなく防御戦闘になりつつあったから、だったんだがな」
そんな『Tー34』は、現代に至ってもなお、某北の国などわずかに稼働可能な車両が存在すると言われている。
「でも、戦車作っても今の揚陸装備で使えるのか?」
「安心しろ。現在特大発動艇のさらなる改良型を製造中だ。既存の駆逐艦には搭載できないが、揚陸艦が来てくれれば十分に使えるぞ」
「揚陸艦か……陸軍の船であきつ丸、だっけ?」
「あぁ。艦これではあきつ丸と神州丸の2隻が有名だが、もしかしたら……この世界じゃ他にも現れるかもな。そうしたら一杯使ってやるといいさ」
「そうだな。そっちの飛行機は?」
「こっちは『Bー25』ミッチェル。アメリカ陸軍の機体でありながらHornetに無理矢理搭載され、太平洋戦争開戦から半年後、Hornetの甲板から発艦して日本各地を爆撃し、日本に激震を起こした爆撃機さ」
『Bー25』ミッチェル
太平洋戦争勃発から約半年後に『Hornet』の飛行甲板から『無理矢理』発艦して日本各地に爆撃を敢行し、迎撃もさせずに悠々と立ち去った存在である。
能力的には平均的な双発爆撃機と言ってもいいが、この奇跡とも言える爆撃『ドーリットル空襲』を敢行したことによって一躍有名になった航空機だった。
余談だが、当時の報道でこの爆撃を新聞記者に問われた時に、ジョークも交えて発艦した空母の名前を『シャングリラ』と答えたという話がある。
シャングリラとは『理想郷』という意味で、チベットの方にあるという伝説の秘境のことであった。
このことがシャングリラ伝説と呼ばれるHornetの大きな業績であった。
『Tー34』は揚陸艦に装備しても数値アップはない。
一方の『Bー25』は基地航空隊扱いだが、日本の爆撃機より能力が高いため、爆装値は20となる。
装備の訓練を行い、改二となった面々も装備の完熟に勤しむのだった。
だがそんな音無を、恨めしそうに見る三日月のアクセサリーを付けた少女がいたことに、音無は今の時点では気付いていなかった。
この日は演習以外では海域掃討と遠征に艦隊を送り込んだのだが、10人の艦娘に出会うことができた。
天龍たちが邂逅した艦娘を連れてくる。
「10人か……一気に会える艦娘も随分増えたよな」
「仲間が増えるのはとても嬉しいことですよ」
千歳たちもニコニコと笑っている。
「白露型駆逐艦九番艦、改白露型の江風だよ。よろしくな!あ、読み方、間違えンなよ?」
「おはようございます~。朝潮型駆逐艦六番艦、山雲です~。よろしくお願い致します~」
「や!陽炎型駆逐艦、十六番艦、嵐だ‼司令、よろしくな!会えて嬉しいぜ!」
「秋月型防空駆逐艦、二番艦の照月よ。秋月姉さん同様、どうぞよろしくお願いします」
「ブォンジョールノ!マエストラーレ級駆逐艦、Libeccioです。リベでいいよ。提督さん、よろしくね!」
「提督さん、お疲れ様です。練習巡洋艦、鹿島、着任です。うふふ」
「駆逐艦島風です。スピードならだれにも負けません。速きこと、島風の如し、です!」
「Hoi!貴方が噂のこの艦隊の提督ね!私はオランダ軽巡、De Ruyter(デ・ロイテル)!分かる?わかるわかる?そ、結構、いいから、私!任せて!」
「さあ、いってみよう!綾波型駆逐艦、天霧だ。よろしくな、提督!」
またも個性的と言える面々が着任していた。
どの艦娘もキャラが濃いが、特に陽炎型の嵐、綾波型の天霧、そして艦これの顔の1人と言える島風などは特別濃いように感じられる。
横で楽しそうに踊っている連装砲ちゃんもそれに拍車をかけている。
しかも、今回は海外艦娘が3人もいた。そして、最後の1人もそうだった。姿を見ると、トリコロールの国旗が特徴の白人系艦娘だった。
「ボンジュール。私はBearn級航空母艦、Bearnよ」
「ボンジュール……フランスの艦娘か?」
「えぇ。偉大なる自由の国が世界大戦までに建造した、唯一の航空母艦なのよ!」
Bearn
それは、第一次世界大戦後に軍縮条約が締結される中で航空母艦の建造権利を得たフランスが実験的に建造した航空母艦であった。
建造当初は『母体となった戦艦の上に、艦首から艦尾まで通じる完全な全通飛行甲板を有している』、『艦橋と煙突を一体化したアイランドを構築し、飛行機の離発着の障害とならないように、飛行甲板の右減端から舷外にはみ出した配置になっている』、『煙突に排煙冷却装置を設け、排煙が着艦する飛行機の視界を妨げることがないような工夫』をされるなど、合理的な能力を有しており、高い水準にある航空母艦だった。
だが、その後の日進月歩と言える進化を遂げる航空機についていけず、第二次世界大戦が開戦した当時には既に空母としては旧式化していた存在であった。
「搭載機は……え、水上機?」
実は、建造された当初のBearnには水上機を回収するためのクレーンが搭載されており、空母でありながら水上機も搭載可能という特殊な空母であった。
搭載機の『Late 298B』多用途水上機の最大の特徴は、水上機でありながら700kgの魚雷を搭載することが可能だったという点であった。
このため、この機体には水上機でありながら雷装値4が加わっているという特殊性がある(もっとも陸上型深海棲艦に効力があるわけでも、雷撃をする訳でもないのだが)。
これを航空巡洋艦などに装備してやれば、火力に加えて雷装値も上がるため、能力向上に大きなものとなるだろう。
なお、この水上機は水上機母艦『Commandant Teste』の初期装備でもあるため、彼女と合わせれば面白い能力を発揮する……かもしれない。
ちなみに、搭載機数は45(史実では40機)機と非常に少ないものの、歴とした正規空母である。
また、15.5cm単装砲と艦首に55cm魚雷発射管を有しているため、なんと空母でありながら砲撃はもちろんだが、雷撃戦が可能となっている。
しかも、Graf ZeppelinやSaratogaと異なるのは、昼間から砲雷撃戦に参加できる、と言う点であった。
数値は以下となる。
○ 耐久 40
○ 装甲 24
○ 回避 25
○ 搭載 45
○ 速力 低速(23ノット)
○ 射程 中
○ 火力 17
○ 雷装 20
○ 対空 20
○ 対潜 0
○ 索敵 28
○ 運 40
装備は以下となる
○ Late 298B(×20)
○ 試製LN42(対空+1・爆装+5・対潜+3・回避+1)(×20)
○ 15.5cm単装砲(×5)
この初期装備の『試製LN42』は、フランスが作り出した艦上攻撃機『LN401』を強化した試作機が『配備されたら』、と言うIF機体である。
元の『LN401』が速度以外は九九式艦上爆撃機並みの能力を有しており、それを強化した機体ということで対空値が1だけだがついている。
ただ、フランスが実用的な艦上戦闘機を作り出せなかったという点も含めて、ほぼ攻撃隊のみの空母となっているのだが、これは仕方がないことである。
同じようにドイツのGraf Zeppelinも結局艦上戦闘機に関しては試験機以外作り出せなかったが、『Juー87』シュトゥーカを改造した艦上攻撃機は制作にまで至っているという点では似通っているといえるだろう。
それとは別の特徴として、運がかなり高めに設定されている。大戦を生き延びたうえに、その後の紛争にも航空機輸送で活躍したということから運の数値が高くなっているらしい。
「艦隊同士の戦いでは補助することが中心になるとは思いますが、どのような形であろうとも使っていただければ幸いでございます」
元々自分の能力が軍艦としてはあまり高くないことを十分に理解しているらしく、控えめな物言いである。
だが、音無はニコリと微笑む。
「確かに、普通の戦いでの活躍は難しいかもしれない。でも、遠征や掃討艦隊で空母のいない相手から制空権を取ることはできるさ。それなら本領を発揮できると思うぞ」
そんな温かい言葉を受けたBearnは意外そうな表情を見せたものの、すぐに花が咲いたような明るい表情を見せた。
「提督、感謝します。航空母艦Bearn、ただいまより当鎮守府の自由と平和を守るため、戦います!」
なお、声帯の妖精さんは雷魔法使いのツンツンメガネ魔法少女の声で1つ。
「あぁ、色々頼むことになると思うが……よろしく頼むよ」
こうして、またも新たな艦娘が音無の元に加わることになったのだ。
しかも、さりげなく海外艦娘が3人も加わっている。今回はとてつもない存在が加わったのであった。
すると、明石がバタバタと駆け込んできた。
「た、大変です!」
「なんだ!また深海棲艦の襲撃か!」
だが、直後に明石はピタッと止まると、冷や汗をダラダラと流し始めた。
「いえ、その……ある意味それ以上の危険物と言いますか……」
「へ?」
明石に連れられて工廠へ行ってみると、チャーの足元で戦車と歩兵らしい妖精さんが立っていた。戦車はどうやら日本軍の戦車らしく、アンテナらしい輪っかのようなものと短めの砲身が特徴であった。
また、戦車の上に立つ隊長らしい妖精は鉢巻を巻いていた。
ただし、海パン一丁であった。
「ま、まさか……」
その妖精は戦車の上に立つと大音声で叫び始めた。
『タナビク鉢巻伊達ジャナイ!陸ノ戦イ起コルナラ、戦車砲ニテ全テ解決!特殊妖精!戦車11連隊&陸戦隊!只今参上!』
「またも変態か!なんで戦車乗りの随伴歩兵が海パン一丁なんだよぉ‼占守島の英霊たちに謝れぇ‼」
「はっはっは(白目)」
チャーですら真っ白な顔をしている。本人もこんなものを作り出したことに、若干の後悔があるらしい。
音無の占守島の英霊に謝れという言葉も間違いではないだろう。
「で、でも、当然優秀、なんだよな?」
「あぁ。元々歩兵支援が仕事の車両だから流石に『Tー34』には劣るが、それでも練度だけならば劣るものじゃねぇ。歩兵支援と言う点、陸上型深海棲艦相手なら十分な能力を発揮してくれるさ……多分な」
そう、チャーが作り出してしまったのは『特大発動艇+戦車11連隊(超・熟練)』である。
艦娘の能力値アップには全く寄与しないが、北方棲姫や港湾棲姫などの地上型深海棲艦に対しては高い攻撃力を発揮してくれる。
「ま、まぁ、そういうことなら……」
音無も『まぁ、チャーが作ったものなら大丈夫か……』と思うことにするのだった。
その後、書類をまとめつつ追撃戦の艦隊が戻ってくるのを待っていた。
思えば、南西諸島海域に入ってから追撃戦もかなり楽になっていた……と言うのも、音無が練度の向上と装備の開発に余念がないことで、練度の数字以上の能力を艦娘が発揮していることから、あっという間に片づけてしまうのだ。
当然のことながらこの日も、まだ改状態の翔鶴と熊野を先頭に、金剛、加賀、扶桑、山城の6人に追撃を頼んでいた。
加賀は速力が30ノットに届かないため、速力に合わせた編成となるとこの位置になってしまうのだ。
だが、そんな空母から発艦した震電改はあっという間に制空権を取り、新開発した『Aー1(初期型)』が大型爆弾と魚雷の同時攻撃であっという間に追い詰めていった。
その後、『熟練艦載機整備員』の効果で射程が長射程になっていた熊野も加えての一斉砲撃で、あっという間に敵艦隊を沈めてしまったのだ。
「南西諸島の制海権は取り戻せた……今度は、北方海域か」
チャーから聞いた話だが、かなり強力な艦隊が多数存在しているため、いずれにしても油断はできないと音無は考えていた。
特に、今防衛隊が展開している『キス島』は深海棲艦の構成の激しさ故に撤退することが決定しているらしく、付近の『モーレイ海』を哨戒戦闘した後に撤退戦の支援をすることになると考えられていた。
「それぞれ練度の高い艦娘を付けないとな……絶対に轟沈させることは、あってはならないからな」
そう言いつつ、音無は風呂場へ向かう準備を始めた。
この後、思わぬものが待っているとも知らずに……。
正直に言います。この海パン妖精を考えていた頃はももちのことを知らなかったことと、陸軍歩兵部隊が実装されていませんでした。
なので、戦車11連隊の随伴陸戦隊の隊長という形で考えました。
……本当に皆様、申し訳ないです。別に馬鹿にしているつもりはなかったんです……