正直、戦闘描写ってあまり自信がない……
激しい夜を過ごした翌朝。音無が目を覚ますと、その傍らには3人の女性がスヤスヤ寝息を立てていた。
その腹はパンパンに膨れて……如月以外はいなかった。
どうやら、加賀と翔鶴は大腸から吸収してしまったらしい。その影響か、肌はツヤツヤ、乳房はパンパンと、女性ホルモンダダ洩れ状態であった。
「あれだけ出してこの状態になってるとか、鹵獲改装、恐るべしだな……満足、してくれたのかな?」
思わず一番近くに寝ていた加賀の頭を撫でると、加賀は『んにゅぅ……』と幸せそうに寝言を呟く。
すると、後ろから『つん』とつつかれた。振り返ると、大きくお腹の膨れた如月がクスクス笑いながらこちらを見ていたのだ。
「あ~……おはよう、如月」
「おはようございます、司令官」
「その……加賀たちのこと、任せてもいいか?」
音無はこれから皆の前に出るため、シャワーを浴びに行こうと思っていたのだ。
出撃のシフトなどはその日に決めるので、加賀たちは今日休ませればいいと思っている。
というか、今日は出撃できない。
今日向かうのは、撤退する陸軍守備隊の退路を確保する『キス島撤退戦』だ。編成制限も相まってこれまでの海域の中でも難易度は最高クラスといってよく、油断はできない。
「はい。でも、行く前にちょっとくらい『補給』していった方がいいですよ?」
今までの経験を考えれば、確かに補給しておかないとフラフラになる可能性が高い。
「……そうだな」
音無は『これは仕方ない』と自分に言い訳しつつ、スヤスヤ寝ている加賀と翔鶴からそれぞれちょっとずつ補給させてもらうのだった。
2人は『んんっ……』と身動ぎしたものの、幸せそうな顔をして眠り続けるのだった。
2人のパンパンの乳房が少しだけ柔らかくなったころ、音無は2人の乳首から口を放し、そそくさと浴場へ向かうのだった。
しかし、世の中そう甘くはない。
浴場へ向かう途中の音無が出くわしたのは、夜間哨戒から戻ったばかりのIndianapolisとSidneyだった。
「あっ、提督」
「おはようございます」
「おぉ。夜間哨戒帰りか。お疲れさん」
「提督はどうされたのですか?」
Sidneyが無邪気に聞いてくるが、Indianapolisが『ちょっと』と慌てて窘めた。
「Sidneyさん、提督はきっと、昨晩も『頑張って』らっしゃったんですよ」
「あっ、すみません」
音無が千歳を始めとする艦娘たちと関係を持ち始めたことは鎮守府の全員が知っていることであり、特に鹵獲改装組は音無が深く面倒を見なければいけない状態だということも知られている。
そのため、皆羨ましがりこそするが妬んだりはしない。鹵獲改装された伊勢たちの精神的な支えとなれるのは、提督である音無くらいであると皆分かっているのだ。
とはいえ、羨ましいのは事実である。
そして、それを理解したSidneyは『チャンス』と言わんばかりの顔を見せた。
「……あの、提督。もしご迷惑でなければなんですが……お風呂、ご一緒させてください」
「ちょ、ちょっとSidneyさん!」
「だって、どうせなら提督に『よく頑張った』って抱いていただきたいです……」
それを言われるとIndianapolisも同じことを考えるようになってしまい、『うぅっ』と言葉に詰まってしまった。
彼女たちもまた、音無に想いを寄せる艦娘の1人である。機会さえあれば、と考えていたのは間違いない。
控えめなIndianapolisですら、そう思っていたのだから。
そして、それが分からない音無ではない。
「いいよ。でも、朝の風呂場なんてムードもへったくれもないと思うけど、いいのか?」
2人は『構いません』と即答した。
それを聞いた音無は『よし』と小さく答えた。
「じゃ、流れるようで悪いけど……2人の初めて、もらうぞ」
「「はいっ!」」
「ただ、この後のこともあるからあまり長くはできない。それぞれ、1発が限度だ。そこは勘弁してくれよな?」
「「ありがとうございますっ‼」」
普段はどちらかというとネガティブな所の多い2人だが、この時ばかりは満面の笑みを見せるのだった。
こうして、また新たな艦娘が音無と結ばれるのだった。
なお、なんとか宣言通り1発で済ませて2人を満足させた時には、結局疲弊していた音無だった。
7時半になり、音無は食堂に姿を見せていた。
すると、赤城と瑞鶴が『おはようございます』と声をかけてきた。
「おはよう、2人とも。あ、その~……昨夜、だな……」
すると、赤城が音無の唇に指を当てて、『うふふ』と意味ありげに笑った。
「全部知っていますよ」
「翔鶴姉の面倒見てくれて、ありがとうございます」
思うところは同じだったらしく、2人そろって礼を言ってくれたのだった。
2人の大事な人の初めてをもらうことになって、なにか恨み言の一つでも……特に瑞鶴には言われるのではないかと思っていたのだが、そんなことはなかったようだ。
むしろ、瑞鶴ですら『提督さんになら抱かれてもいい』と思っているくらいである。
そんな心持ちのお陰で、なんとか穏やかな朝食にありつくことができた音無だった……食堂の片隅でニマニマしていた龍田の視線を除いては。
「あらあら~……もっと頑張って天龍ちゃんをいじめないといけないわね~」
「なんで俺をイジメる話になるんだよぉっ!?」
天龍はそういう運命なのである。もっとも、本人が『龍田が満足しているならそれでいい』と考えている節があるのでそれ以上は言わないのだが。
食後、音無は今日主力として出撃させるメンバーを集めて会議を始めた。その主力艦隊は、昨日新たに改装したメンバーを含めて以下となる。
○ 神通改二(15.2cm単装砲・探照灯・試製六連装(酸素)魚雷発射管)
○ 吹雪改二(10cm高角砲+高射装置・五連装(酸素)魚雷発射管・13号対空電探改)
○ 睦月改二(12.7cm連装高角砲(後期型)・三連装(酸素)魚雷発射管・22号対水上電探改四)
○ 如月改二(睦月と同じ装備)
○ 皐月改二(睦月と同じ装備)
○ 綾波改二(基礎装備)
この通り、全員が改二という状態であった。神通と吹雪と綾波は先日規定練度に達成したため、改二に改装したのである。
特に神通改二と綾波改二は夜戦ともなれば探照灯も相まってすさまじい火力を発揮するようになるため、様々な戦いで役に立つだろう。
しかも、チャーが開発した特殊装備に身を包んでいるため、改二であるということ以上の能力を発揮してくれるだろう。
今回は敢えて主砲を装備せずに副砲を装備することで戦術の幅を広げている。主砲で上がる分の火力は、ボーナス数値のある探照灯でカバーするつもりであった。
だが、問題なのは駆逐艦たちであった。
吹雪と綾波以外の3人は睦月型なので、改二になってもその戦闘能力は限られる。だが、現状では下手な改装駆逐艦よりは強力なのも事実だ。
なので、今回の編成に組み込んだのだ。
ちなみに、どうでもいいことだが皐月は今回が初めての主力艦隊である。何気に古参の駆逐艦の中では真っ先に改二になれたという点から採用されたのだ。
チャー曰く、『本当は阿武隈でもいりゃよかったんだが』と言っていた。
史実の『キスカ島撤退』の際に旗艦を務めたのが、長良型軽巡洋艦の阿武隈だからだろう。
だが、居ない者を言っても仕方がない。
余談だが、昨夜激しく絡み合ったはずの如月も加わっている。いつの間にか身支度を整えていたのだ。
「(いつの間に……手際よすぎだろ)」
しれっと加わっていたため、流石の音無も呆れていた。膨れ上がっていたはずのお腹もすっかり引っ込んで、元のスレンダー体形に変化している。
いったいどんな手品を……と思ったが、よく見ると加賀が朝食もまだなのにお腹を擦りながら『げふっ』と大きなゲップをしていることから、起きた加賀が吸い出したのではないかと推測していた。
「なにやらせてんだアイツ……」
「はい?」
横に立っていた今日の秘書艦、Queen Merryが首を傾げていたが、音無は『なんでもないよ』と誤魔化した。
改めて、今日出撃するメンバーの顔を見る。
「皆、遂に、陸軍の撤退作戦が開始される日が近い。そのためにも、俺たちはキス等周辺の敵戦力を漸減させ、退路を確保する必要がある。知っての通り、敵の目を誤魔化すこと、そして撤退作戦を迅速に行うため、駆逐艦6隻か軽巡1隻を旗艦、随伴に駆逐艦5隻とした高速水雷戦隊で挑むことが本作戦の肝となる」
キス島周辺は霧が発生しやすい天候が多く、高速水雷戦隊であればその霧に紛れて撤退作戦が行える、という寸法であった。
「今回は危険と言われる北方海域でも特に厄介な作戦だ。くれぐれも無理はせず、敵主力に到達する前に大破が1隻でも出た場合は即時撤退すること」
そして、音無はここで重要な一言を述べた。
「撤退したって恥じゃない。なぜなら、帰れば、また来られるから」
その一言を聞いた艦娘たちは、途端にざわつき始めた。
「……え?俺、なにか変なこと言ったか?」
すると、チャーが『クックック』と笑い出した。
「あぁ、悪い。今の言葉はな、キスカ島撤退の指揮を執った人物、木村少将が発した言葉なんだ。キスカ島から部隊を撤退させるのに、霧の発生こそ重要な条件だったが、最初に実行しようとした際に霧が発生しなかった。一部は強行突入を意見したが、その人物はこう言った。『帰ろう。帰ればまた来れるから』ってな」
それは正に、今音無が言った言葉と同じだった。
「ピッタリだと思うぜ。お前、やっぱり艦娘の司令官に向いてるよ」
音無としては心のままに、艦娘を思うが故に発した言葉だったのだが、それが正鵠を得た言葉だったというのは完全に想定外だった。
だが、それがすんなりと出てくるあたり、チャーの言う通りかもしれないが、音無にはやはり指揮官の適性があるのだろう。
チャーはもちろんだが、ゆりも『やっぱりね』と微笑んでいる。
それならば、と音無も改めて皆の方を見る。
「キス島撤退戦はもちろんだけど、掃討艦隊や遠征艦隊にもこれまで通り、油断しないように気を付けて欲しい」
遠征艦隊は天龍を旗艦としてThor、Kormoran、Deytschland、しまね丸、鳳翔とし、掃討艦隊は龍田を旗艦に古鷹、加古、マラート、Hood、飛龍とした。
遠征に必要なのは、ある程度の火力と強大な輸送力である。特設巡洋艦のThorとKormoran、特設油槽船のしまね丸がいればその輸送量が大幅に増える。
護衛としてDeytschlandと鳳翔、指揮官としてベテラン軽巡の天龍というわけだ。
ちなみに、一応主砲と副砲を搭載していれば特設巡洋艦も弾着観測射撃が可能となる。
掃討艦隊は低燃費重巡の古鷹型2隻と低速ながら低燃費で多数の主砲と弾着観測を可能とするマラート、燃費は少々悪いが高速で雷装値もあるHood、そして運の高い正規空母として飛龍を当てている。
やはりと言うべきか、油断しない点は流石と言うべきである。
だが、それもこれも、この世界のタウイタウイ島に鉄鉱石とボーキサイトが産出すること、すぐ近くに燃料と弾薬を産出できるボルネオ島があること、そしてその豊富な資源を活かして大人数の艦娘を初期から抱えることに成功したこの鎮守府の特殊性ならでは、である。
本来駆逐艦が必要な遠征も、それなりに近いボルネオ島まで行くのであれば必要ないと判断されていて、実際今までもそれで成功している。
「皆、頼んだぞ‼」
――キス等周辺
旗艦の神通を戦闘に、艦隊が第三船速で航行している。
今回は大半の艦娘が電探を装備していることもあり、偵察機に比べると範囲は狭まるとはいえそのままよりは探知範囲が広がっている。
早速だが、睦月の電探に反応があった。
「う~ん。北の方に空母ヲ級の艦隊がいるにゃぁ……でも、中央を突破しようとすれば……雷巡チ級の艦隊がいるにゃぁ……」
すると、如月がポン、と睦月の肩を叩いた。
「睦月ちゃん。あまり考えすぎてもダメよ。ここは、状況を旗艦と提督に伝達したうえで、両名の指示を仰ぎましょう?」
だがその時、北方から飛来した敵の偵察機の姿を吹雪の対空電探が捉えた。
「敵空母から艦載機発艦‼こちらへ向かってきます‼」
「吹雪さん、対空戦闘お願いします‼」
神通の言葉を待っていたかのように、吹雪の体から金色の光が立ち上る。
「撃ち方始めーっ‼」
吹雪の構えた『10cm連装高角砲+高射装置』が敵機を正確に狙い、『13号対空電探改』によってより遠距離から敵を補足することが可能になっている。
吹雪が連続して砲弾を発射し、敵機を次々と撃墜していく。
吹雪は古参の駆逐艦の1人であり、改装されてからは空母を護衛する直衛艦として練度を高めてきた。
その成果を、吹雪に装備した装備は如何なく発揮していた。
「敵機、残数僅か‼」
「敵機、間もなく投下ポイント‼」
残りわずか、その敵に吹雪は集中する。
「てぇーっ‼」
最後に放たれた砲弾が敵機に命中すると、敵機は爆散し、全てが墜ちていく。
「敵編隊……全機撃破‼」
ホッとするが、その間に別の敵艦隊が近付いていた。
「敵艦隊接近!『軽巡ホ級FlagShip2隻、雷巡チ級、駆逐ロ級FlagShip、無印ロ級2隻』‼」
「休んでいる暇はありません。戦いは避けられないでしょう。このまま突破します!」
『敵からの攻撃には十分注意しろ。こちらは改二ばかりとはいえ駆逐艦が5隻もいる。強烈なのを喰らったらマズイ』
「了解です」
会敵すると、神通を先頭に最大船速で敵艦隊へ突っ込んでいく。
中距離に入ったところで、旗艦を含めた戦闘3隻が砲撃体制に入った。
「副砲斉射‼」
神通の副砲弾が嵐のごとく敵艦隊に襲い掛かる。だが、ダメージを与えているものの敵艦隊に乱れは見られなかった。
「敵弾、きます‼」
狙いは、中央の如月だった。
「やだ、髪が痛んじゃうっ!」
幸い直前で丁字有利状態に持ち込めていたことから、カスダメで済んでいた。
短距離に入った直後、全艦による一斉砲撃を見舞った。
無印ロ級と無印チ級は撃沈したものの、駆逐ロ級FlagShipは小破、残りは無傷であった。
「くっ……こりゃキツイなぁ!」
皐月がボヤくが、神通は冷静に敵艦隊の動きを見ていた。
「今!左舷25度、一斉雷撃‼」
バシュッ、という音と共に魚雷が発射され、敵艦隊に向かっていく。敵艦隊も魚雷を発射するが、こちらの魚雷発射を見たからか、その雷跡は乱れていた。
こちらに向かう魚雷はなく、逆にこちらが発射した魚雷は敵艦隊に命中した。
その結果、駆逐ロ級FlagShipは撃沈し、軽巡ホ級FlagShipも1隻が轟沈、1隻が大破した。
「主砲、次弾装填は?」
「できてます‼」
吹雪の声を聞いた神通が『よし』と頷き、改めて敵艦隊に狙いを定める。
「主砲、一斉射ーっ‼」
放たれた砲弾は旗艦に命中し、軽巡ホ級FlagShipを海の底へと引きずり込んで行った。
「如月さん、傷はどうですか?」
「ちょっとやられちゃったけど……まだ平気よ」
艦隊は先へ進む。その先で『雷巡チ級Elite、無印チ級2隻、駆逐ロ級FlagShip2隻、無印ロ級』の艦隊を見つけたが、幸い敵艦隊はこちらに気付くことがなかったため、こちらはスルーした。
その後、『空母ヲ級2隻、戦艦ル級Elite、軽巡ホ級Elite、駆逐ロ級FlagShip2隻』の艦隊からまた航空攻撃を受けたものの、吹雪の対空カットインによってふたたび事なきを得た。
元々この艦隊とは距離が離れていたこともあって、これ以上のことはなかった。
だが、その艦隊を素通りしたところで電探に反応があった。
「電探に反応あり!『戦艦ル級FlagShip軽巡ホ級Elite2隻、雷巡チ級Elite、輸送ワ級2隻』の艦隊発見!これは……主力艦隊です!これを倒せば、周辺の敵は動揺し、陸軍の撤退がしやすくなります‼」
輸送ワ級2隻というお荷物がいるとはいえ、戦艦ル級FlagShipを中心とした4隻の強力な艦隊である。
この艦隊で勝とうとなると、いくら改二揃いと言えどもかなり厳しいのは間違いない。できる限り夜戦になるまでに随伴を減らし、そのうえできる限り傷を負わないようにするしかない。
だが、なんとしても勝たなければならないという思いが艦隊には溢れていた。
「それでは、行きましょう!」
艦隊が接敵すると、敵艦隊も気付いたのか、こちらへと向かってくる。相対速度もあって、ぐんぐん距離が縮まっていく。
戦艦ル級FlagShipの砲撃は幸いなことに遠距離に着弾したため、中距離に入ったところからの軽巡ホ級Elite2隻と雷巡チ級Eliteが砲撃を開始した。
「副砲斉射‼」
神通が副砲を撃ちかけると、輸送ワ級2隻の近くに砲弾が落ちたことで至近弾となって敵艦隊は動揺する。
さらに短距離に入ったところで、神通が指示を飛ばす。
「魚雷も次発装填済みです。今!」
主砲が一斉に発射される……が、軽巡ホ級Eliteを1隻撃沈したのみで、他の艦は無傷であった。
「敵艦発砲‼」
その砲弾は、またも如月に飛んできた。
だが、睦月が咄嗟に『危ない!』と庇ったことで、なんとか如月は傷を負わずに済んだ。しかし、その代償として睦月は中破に追い込まれてしまった。
「うにゃにゃ~!い、今の睦月なら、このくらいぃ~……」
当然攻撃力は下がるうえ、魚雷ももう撃てない。
それでも、神通は敵の数を減らすために一度目の発射を決めた。
「右舷32度、一斉射‼」
静かに発射された魚雷の後に副砲弾を再び撃ちかけて混乱させると、狙った位置に魚雷が命中する。
猛烈な爆発音と炎の後に残っていたのは、戦艦ル級FlagShipと雷巡チ級Elite、輸送ワ級1隻であった。
なお、チ級Eliteは中破しているため、最大の能力である魚雷を放つことができなくなっている。
だが、そこからは地獄だった。
残りの魚雷と主砲を何発も撃ち込んでようやく残りのワ級とチ級Eliteを沈めることができたものの、その間の攻撃で吹雪と皐月が大破、睦月も中破から大破に、そして綾波も中破になってしまった。
特に戦艦ル級FlagShipの攻撃は猛烈で、吹雪と皐月はこの艦が放った一撃だけで大破してしまったのだ。
そんな状況で、遂に夜戦に突入する。
「提督、これより夜戦に突入します」
『くれぐれも気を付けろ!』
『私も夜戦したーい!』
『お前は黙ってろ!』
横から変な声が聞こえてきたが、神通は一瞬『姉さん……』と呟くだけだった。
「探照灯、照射初め‼」
神通の探照灯が敵艦を照らす。大破した艦は夜戦に参加できないため、神通と如月と綾波が頼りだ。
その時、如月の体が金色に輝き始めた。
「魚雷って太いのよねぇ~……さぁ、イクわよぉっ‼」
3隻から放たれた砲撃は戦艦ル級FlagShipに命中する。そして中破に追い込んだところで3人が一気に砲撃の雨を見舞い、ル級FlagShipの体力を全て削ることに成功した。
ル級FlagShipは強烈な断末魔と共に海の底へと沈んで行ったのだった。
「な、なんとか勝てましたね……」
「あぁ~ん♡如月の戦果が一番なのぉ?まぁ当然と言えば当然ね。いいのいいの、あんまり褒めないでぇ♡」
『だからぁ、相変わらず言い回しが卑猥だっつうの……』
音無の言葉に、全員が苦笑いするのだった。
「あっ、あれ艦娘じゃないですか?」
近づいてきたのは、カラフルな黄色い髪の毛を持つ少女だった。
「艦娘ですね。一緒に来ますか?」
「あっ、ぜひご一緒させてください~」
こうして艦隊は帰投し、音無に報告を行う。
「てっきり1回くらいは途中で撤退しなけりゃならなくなるかと思ったが……案外どうにかなったな」
「というか、提督の考えてらっしゃる脅威度は遥か後……特別海域の甲難度レベルの話なんですって」
大淀のツッコミに他の面々も『うんうん』と頷いた。
「そうは言われてもなぁ……それで油断して沈んだら元も子もないだろう?」
「まぁ、それはそうですが……」
すると、天龍と龍田が待ちかねると言わんばかりに口を開いた。
「どうでもいいけどよぉ、こっちも何人か出くわしたから、顔合わせ頼むぜ」
「いっぱい来ましたよ~」
今回出会ったのは……
「こ、こんにちは。軽巡、阿武隈です」
「こんにちは!伊58です!ゴーヤって呼んでもいいよ!苦くはないよぉ‼」
「はいはーい!白露型駆逐艦『村雨』だよ!皆、よろしくね!」
「ちわ!涼風だよ!私が艦隊に加われば、百人力さ!」
「やったぁ!でたっぴょん!卯月でっす!うーちゃんって呼ばれてまっす!」
そして、残りの2隻がまた曲者だった。
「お初にお目にかかります。熊野丸と申します。よろしくお願いいたします!」
「グーテンターク……いや、日本語なら、こんにちは、か。私はドイッチュラント級装甲艦、Admiral Graf Speeという」
音無は艦船のリストをめくり、それぞれの情報を確かめた。
「熊野丸……あきつ丸タイプの輸送船の姉妹船だったな?」
「はっ。兵士の輸送であればお任せください‼」
かなり真面目というか、堅物なタイプらしい。それも、精神論的な意味で。
流石は大日本帝国陸軍の船と言ったところであろうか。
「……(妙高や大淀も真面目だけど、タイプがまた違うよなぁ……まぁ、個性的と言えばそこまでか)」
若干生暖かい目になった音無に熊野丸は『?』と疑問符を浮かべていたが、急に音無が頭を撫でるので『ふえっ?』と可愛い声を上げるのだった。
「えぇっと、もう1人が……アドミラル・グラーフ・シュペー……ドイツ海軍立て直しの際のポケット戦艦でドイッチュラントの妹、だったな?」
姉であるDeytschlandが先に着任し、今日も遠征艦隊に同行してくれている働き者である。
なお、シュペーは掃討艦隊が発見した艦娘だったため、姉とはまだ顔を合わせていない。
「おや、姉さんが着任してらっしゃるのですね。ぜひお会いしたいです」
姉とはまた違ったベクトルで礼儀正しい人物らしく、ペコリと小さな体を折ってお辞儀していた。
「それにしても名前長いよなぁ……悪いけど、シュペーって呼んでもいいか?」
「えぇ。Admiralの呼びやすい方でどうぞ」
雰囲気は、『妹』のハルトマンで1つ。
彼女たちの着任を確認した後、大本営から『キス島に展開していた陸軍は無事に撤退した』と報告が入ったため、皆も大喜びするのだった。
その後、夕食を食べながら音無は1人考える。
「北方海域も残すはアルフォンシーノ方面とその深部にある艦隊との決戦……考えるだけでも胃が痛くなるな」
アルフォンシーノ方面は空母2隻以上を編成して挑む必要があるのだが、音無は既に誰に行かせるかを考えていた。
「皆もそれぞれに練度を上げてきているし、頑張ってもらわないとな」
すると、音無の隣に誰かが座った。誰だろうと横を見てみれば、今日一番の殊勲を上げた如月であった。
「如月、今日はお疲れ様」
「えぇ。司令官とのあつぅい夜のお陰で、今日も頑張ることができたわ♡」
「ハハハ……ま、まぁ、やる気になってくれていたんなら良かったよ」
相変わらず底の見えない彼女だが、思わず音無は如月の頭を撫でていた。
「んにゅっ……し、司令官?」
「いや、なんとなくこうしたくなってさ」
すると、如月は嬉しそうに音無の腕に抱き着いてきた。
「もうっ、司令官ったらそんなこと言ってぇ……今夜も如月を寝かさないつもりかしらぁ?」
「それは勘弁」
バッサリと切り捨てられた如月は悪びれる様子もなく『てへっ』と舌を出すのだった。
その夜、千歳と共に風呂に入りながら改めて音無は自分の想いを言葉にする。
「如月はあんな風に余裕ぶっているようなこと言ってるけど、実際はそうじゃない、ってことだよな」
「はい。如月さんは……やはりと言うべきでしょうか、開戦劈頭で沈んだというのがかなり心残りになっているようですからね。それを考えると、ついついあんなことばっかり言ってしまうのかもしれません」
「……本人もそう言っていたから、多分間違いないと思うよ」
音無は自分の中で、彼女たち、ひいては彼女たちと共に戦っていたというかつての先人たちの想いを背負いきれるのか、少し不安になり始めていた。
だが、そんな音無の想いを見抜いたかのように、千歳が音無の頭を自分の胸に抱きしめた。
「大丈夫です。提督なら、きっと皆を守れます」
「なんの根拠もないけどな」
「そんなことはありません。私は、水上機母艦から軽空母に改装されましたけど、結局空母戦には全く寄与せずに沈んでしまいました。けど、今はこうして空母として戦い、女として愛する人の傍にいることができています」
千歳が音無の頭を抱きしめる手に力を込める。
「だから、提督は提督の思うようにすればいいんです。私たちは、そんな提督だからこそ、付いていきたいと思いますから」
千歳の声はどこまでも優しく、深く全てを包み込んでくれる慈母のような雰囲気を放っていた。
音無も思わず『そうかもな』と呟きながら千歳の胸の感触に甘えるのだった。
夜はまた更けていき、新しい明日が始まる。
その先にあるものがなんなのか、今は誰も知らない。
というわけで今回はバトル回でした。
これをpixivで投稿した時はまだ熊野丸が実装されてなかったかされたかどうか位のタイミングでしたねー。
今更ながら懐かしい……あまり細かく描写はしていないので、キャラ的には本家ブラウザ版と同じと思ってもらえればと思います。