果たして彼女は活躍できるのか……
キス島の追撃戦を、こちらもベテラン軽巡である長良に任せ(大井、北上は雷巡なので参加できず、天龍と龍田はそもそもの能力的に参加するのが難しい)、同じ駆逐艦たちで出撃させた結果、またも如月が中破に追い込まれたものの敵を撃破することに成功した。
もっとも、被害ばかり受けた本人は誰もいなくなった後で『もう、髪が痛んじゃうからヤダぁ~』と言いながら音無に抱き着いて甘えてきたのだが。
音無としても、今後はあまり最前線で睦月型に無理をさせる訳にはいかないと改めて実感していた。
幸い、古参の一部である暁や響、朝潮や潮もそろそろ改二になるため、キス等周辺の掃討作戦は彼女たちに頼もうと考えている。
如月たちは駆逐艦としては珍しく(最近ではそうでもないかもしれないが……)大発動艇を搭載できるため、いずれは輸送任務でも活躍してもらうことになるだろうと音無は考えていた。
そしてキス等周辺を解放した翌日、北方海域の厳しい海域の1つ、アルフォンシーノ方面への進出が決定した。
「皆も知っている通り、この海域には敵の強力な機動部隊が遊弋している。こちらもそれに対応するために、空母2隻以上を編成して挑む必要がある。よって、今回は空母3隻に航巡1隻、航空戦艦2隻を編成した機動部隊で挑もうと思う」
本当であれば雷巡を編成するか空母6隻で挑むというのもありと言えばありなのだが、それでは攻撃方法に色々問題が増えてしまう。
今回の作戦では敵機動部隊を圧倒的な戦力で打倒するべく、こちらも全力の、と言えるほどの編成であった。
「よって、今回の編成は以下となる」
○ 蒼龍改二(震電改×18・彗星(江草隊)×35・震電改×20・二式艦上偵察機×8)
○ 瑞鶴改二(Aー1(初期型)×28・Aー1(初期型)×26・Aー1(初期型)×26・Aー1(初期型)×13)
○ Saratoga改(Aー1(初期型)×36・Aー1(初期型)×18・Aー1(初期型)×18・Aー1(初期型)×18)
○ 鈴谷改二(15.5cm三連装砲改・10cm連装高角砲(砲架)・熟練艦載機整備員・Late 298B×11)
○ 伊勢改(試製35.6cm三連装砲・試製35.6cm三連装砲・瑞雲12型(六三四空)熟練×11・瑞雲12型(六三四空)熟練×11)
○ 日向改(伊勢改と同じ)
鈴谷以外は副砲を装備していないが、これは基本的に火力を大幅に上昇させて速攻で相手を片付けようという音無の心情であった。
できる限り長距離からの砲撃に徹し、戦艦や空母以外の射程に入らないようにするという考えである。
万が一接近された際には副砲を撃ちかけて混乱させ、さらに魚雷を発射して敵を混乱させることができるようになっている編成である。
編成制限があるとはいえ、空母機動部隊を編成することが基本スタイルの音無からすれば、この制限はそれほど苦ではない。
強いて言えば、伊勢たちの速力が低速であることがネックと言えるが、そこは瑞雲の火力でカバーするつもりだ。
そして、今回はもう1つ重要なことがあった。
それは、Saratogaの初陣だった。
「提督。これまでは演習ばかりでしたが……Sara、ようやく実戦で力をお見せできます」
彼女は鹵獲改装の具合が他の艦娘4人よりも深かったため、経過観察も兼ねて演習をずっとさせていたのだ。
その結果、掃討作戦や護衛作戦を含めて実戦を一度も経験しないままに改装されてしまったのだ。
「あぁ。これからはお前にも前線に出てもらう。色々厳しいところもあるかもしれないが……頼んだぞ」
音無は慎重な男ではあるが、決して過保護ではない。彼女が『やる』と決めた以上、その意思は尊重するつもりであった。
「ただ、無理だけはするなよ。不都合があれば旗艦の蒼龍と相談して、撤退も視野に入れること。無理をして轟沈でもしたら……俺はきっと後悔するから」
北方海域はモーレイ海哨戒を除けば、どれも手強い海域ばかりである。
わずかな油断が、蟻の穴ほどの慢心が大きな悲劇に繋がりかねないということも、音無は十分に承知していた。
むしろ、用心し過ぎといっていいくらいである。
Saratogaもまた、そんな音無の心配をしっかりと理解している。
「はい。できる範囲で頑張って、提督に勝利を捧げられればと思います」
Saratogaがお辞儀すると、豊満を通り越して爆裂と言っていいほどの爆乳が『タプン』と……いや、『プルゥン』と揺れた。
「(いろいろな女性を見てきたつもりだけど……トップクラスにデカいな……)」
流石の音無も目の前で揺れる山脈(おっぱい)に『ゴクリ』と唾を呑むのだった。
「加賀さん、あれは……」
「あれは反則ですね。あの巨大すぎるタンクの中にどれほどの栄養が蓄えられているのやら……じゅるり」
「お前は飲ませる側だろうがっ‼」
音無が思わず加賀と翔鶴にツッコミを入れるが、加賀は『ぴゅぴゅぴゅ~』とわざとらしい口笛を吹いて誤魔化すのだった。
というか、音無が以前チャーから聞いていた加賀のキャラクター像とはだいぶ違う気がする。
「(まぁ、とっつきにくいよりはいい気もするけど……)」
この鎮守府の加賀は鹵獲改装と音無にほれ込んだ影響からか、中々に面白い方向性にぶっ飛んでいるようである。
「それじゃあ皆、よろしく頼む!」
「了解ですっ‼」
旗艦を命じられた蒼龍が元気よく答えて、艦隊は一路アルフォンシーノ方面へと向かって行った。
――アルフォンシーノ方面
到着してから何度も各方面に偵察機を飛ばしたことで、敵の様子は大体判明していた。
敵艦隊は以下となる。
○ 『軽母ヌ級Elite×2・軽巡ト級Elite×2・駆逐ニ級Elite×2』
○ 『戦艦ル級Elite×2・軽母ヌ級Elite・軽巡ト級Elite・駆逐ニ級Elite×2』
○ 『空母ヲ級Elite・軽母ヌ級Elite×2・軽巡ト級Elite×2・駆逐ニ級Elite』
○ 『空母ヲ級FlagShip・Elite・軽母ヌ級Elite・戦艦ル級Elite・軽巡ト級Elite・駆逐ニ級Elite』
○ 『空母ヲ級FlagShip・Elite・戦艦ル級FlagShip・軽巡ト級Elite×2・駆逐ニ級Elite』
どの艦隊にも空母が付いてきている。最も弱そうな軽母ヌ級Elite1隻だけの艦隊でも、戦艦ル級Eliteが2隻いるという手強そうな艦隊だ。
幸い音無艦隊には『震電改』を合計38機装備した蒼龍がいるため、FlagShipが相手であろうとも十分に制空権は確保できるだろう。
だが、確保した後での火力が足りるかどうかが厳しい所である。
本来であればSaratogaを出すことに関して、音無は最初躊躇っていた。
だが、Saratoga本人が『ぜひ行かせて欲しい』と懇願してきたこともあり、その意思を尊重することにしたのだ。
空母としての戦闘力は上がっているものの、改装前と比べて夜間砲撃ができなくなったという点が厳しい。
それでも、音無はSaratogaの思いを受け止めたのだ。何故彼Saratogaを手術したのか、それはもう一度彼女が海に出られるようにするためだ。
それなのに鎮守府に閉じ込めておくのは、自分のしたことを否定することになる。それは音無も彼女もお互いを許せなくなるだろう。
だからこそ、彼女が戦いに挑むために今用意できる最高の装備を整えたのだ。
『Aー1(初期型)』は、アメリカ艦娘に装備することで爆装・雷装値が+4されるという特徴がある。
Saratogaの運の高さもあれば、かなりの打撃を与えることが期待できるという合理的な判断もあった(運に頼るの合理的ではないとか言ってはいけません。艦これにおいては運も重要な要素です)。
瑞鶴が航行しながら蒼龍に問いかけた。
「蒼龍さん、どうするの?」
「そうだね~……手近なところから叩きたいけど、軽母ヌ級Elite2隻の艦隊は離れていくから、ル級Eliteの艦隊を叩こうかな~」
どこか呑気そうに聞こえる蒼龍の声だが、頭の中では素早く戦略を練っているのだ。
「分かったわ。アウトレンジで……決めたいわねっ‼」
蒼龍の震電改部隊に続いて瑞鶴が矢を放ち、敵艦隊へ向かう。
軽母ヌ級Eliteは艦載機を飛ばして迎撃しようとするが、速すぎる震電改の猛攻によってなすすべなく艦載機は全滅し、攻撃隊が一気に大量の爆弾と魚雷を投下していく。
両方からの攻撃により、艦隊は旗艦の戦艦ル級Eliteを残して全滅、ル級Eliteも大破となった。
「やったぁ!」
「じゃ、一気に片付けちゃいますか」
瑞鶴の言葉を受け、敵艦隊との距離を一気に詰めていく。ル級Eliteは砲撃してくるが、大破状態で狙いが定まらない。
その隙をつき、砲撃可能な3隻の一斉砲撃が炸裂した。
ル級Eliteはなにもできないまま、海の底へと沈んで行った。
「……え、なんか呆気ない」
「まぁ、そうなるな」
伊勢と日向の言葉はもちろんだが、当のSaratogaが一番驚いていた。
「まぁ、ここまでとは……流石はステイツの作り出した傑作機・SkyRaiderですね」
「へ?スカイレイダー?」
「『Aー1』の通称ですよ」
「な、なんか横文字ってカッコいいわね……」
「日本のMeteor……リュウセイもカッコいいと思うわよ」
レシプロ攻撃機としては最高峰の性能を持っているスカイレイダーは、流星が800kg魚雷1本を搭載可能なのに対して、3t近い兵装を装備可能という特徴がある。
この搭載力を活かしてベトナム戦争では近接攻撃支援に駆り出されたこともある、と言えばその汎用性が伺える。
逆に言えば、当時の米軍が有力な近接支援に使える航空機を持っていなかったという証拠でもあるのだが。
敵艦隊と出会う前に位置の判明している主力艦隊に打撃を与えるべく、準備の整った攻撃隊を再び出撃させる。
「Saraの子たち、お願いしますっ‼」
飛行した攻撃隊は、はるか彼方の敵主力艦隊に向かっていく。
敵主力艦隊が気付いた時には既に遅く、大挙して押し寄せたスカイレイダーの部隊によってボコボコにされてしまった。
「攻撃隊より報告!空母ヲ級Elite、軽巡ト級Elite2隻、駆逐ニ級轟沈!空母ヲ級FlagShip小破!」
「あら、戦艦ル級が無傷ですね」
「しかもFlagShip……ヤバくない?」
瑞鶴の言葉が重くのしかかったが、Saratogaが顔を上げた。
「だからこそ戦い、勝利する意義があります。今こそ……」
「敵艦隊接近!」
Saratogaの言葉の途中で、蒼龍の偵察機からの報告が入る。
主力艦隊の攻撃に気を取られている隙に、『空母ヲ級FlagShip・Elite・軽母ヌ級Elite・戦艦ル級Elite・軽巡ト級Elite・駆逐ニ級Elite』の艦隊が接近してきたのだ。
幸い敵艦載機は発艦してきていないが、このままではいつ攻撃を受けるか分からない。
「攻撃隊、出せる!?」
鈴谷の言葉に、全員が首を横に振った。
直掩機は出せそうだが、攻撃隊は間に合わない。
「せめて、直掩機でカバーしましょう!」
直掩機がどれほど撃墜してくれるかは分からないが、敵機との性能差は高いため、相当数を撃墜してくれることを祈る。
「艦隊見張りも厳として、よろしくねっ」
蒼龍から飛び立った『震電改』は、その速度を活かして敵機に素早く接近する。
「どう、かな……?」
蒼龍たちが息を呑みながら見守っていると、敵機が一部急降下してきた。流石に数はかなり少なくなっているようで、制空権は確保されたと見るべきだ。
「敵機接近!対空戦闘!」
それぞれに対空戦闘を行うが、やはり専用の兵装を積んでいないこともあって迎撃が上手くいかない。
「くっ、やるじゃない!」
結局伊勢が攻撃を多少喰らってしまったが、幸いにカスダメですんだ。
「どうします?攻撃隊は間に合いませんが……」
すると、鈴谷の整備員妖精が鈴谷に耳打ちする。
「敵艦隊と接触した直後くらいに艦載機の準備ができるって!」
「なら、それでまず出鼻をくじくしかないですね」
Saratogaの言葉を受け、全員が頷く。
陣形は単縦陣のまま、敵艦隊と接触した。
「エンジン、あったまって参りましたぁ!」
接敵して偵察機が発艦した直後、全員の艦載機を発進させた。
「うわっ、キモッ!」
水上機を含めた航空部隊が攻撃を開始し、敵部隊に急降下していった。
「攻撃隊より報告!『空母ヲ級FlagShip中破、Elite小破、軽巡ト級Elite、駆逐ニ級Elite轟沈』とのことです!」
「げっ、ル級Eliteが無傷じゃーん……」
「それでもやるしかありません」
長距離に入ったところで鈴谷たち3人が砲撃するが、空母ヲ級2隻に命中してしまった。もっとも、それによってヲ級FlagShipは轟沈し、Eliteは大破したので全く意味がなかったとは言い難いのだが。
しかし、その間に無傷のル級Eliteが発砲してきた。その攻撃は、一番練度の低いSaratogaへ向かう。
しかし、それを察した鈴谷が飛び出してSaratogaを庇った。
「す、鈴谷さん!」
「痛いしぃ~!」
強烈な攻撃を受けた鈴谷は、中破に追い込まれてしまう。
そこへ攻撃準備の整った伊勢と日向を含めた3隻で再度攻撃した。
「航空戦艦の真の力……思い知れっ‼」
日向の弾着観測射撃により、強烈な連撃がル級Eliteを襲う。
クリティカルヒットが出た結果、ル級Eliteはカスダメの状態から一気に轟沈にまで持っていかれたのだった。
「うおぉっ、日向やるじゃーん!」
「ふっ。やはり時代は航空戦艦だな。早く改二に改装したいものだ」
伊勢と日向は改二にまで改装することによって、『海空立体攻撃』と『瑞雲立体攻撃』と呼ばれる特殊攻撃を繰り出すことが可能になる。
この攻撃の威力はすさまじく、鬼、姫クラスの強敵と言えども大打撃を、練度次第では一撃で大破や轟沈も狙うことができるほどの破壊力を叩き出すことができるのだ。
「鈴谷さんは大丈夫ですか?」
『鈴谷、無理だけはするなよ』
Saratogaと音無が中破した鈴谷を気遣うが、鈴谷は『ヘーキヘーキ』と強がってみせる。
もっとも、誰の目から見ても強がりでしかないのは分かっていたが、中破したとはいえまだまだ戦うことは十分に可能であった。
音無としても『ボス戦までに大破が出たら即撤退』というのは決めているが、逆にそれまでは旗艦との相談に任せている。
なので、鈴谷が大丈夫というからにはそれを信じるしかないのだ。
幸い、接近しつつある敵主力艦隊も半壊しているとはいえ、ヲ級FlagShipとル級FlagShipが残っているため、その戦闘能力はバカにできない。
「なんとか……なんとか傷を負わないように立ち回りつつ攻撃するしかありませんね」
「そうだね……日向はどう思う?」
「サラトガの言う通りだ。恐れていても仕方がない。だが、傷を負えば戦闘力も低下する。敵の出方次第だが……上手く立ち回るほかないだろう」
無謀で傷を負う必要はないが、覚悟なくして勝利が得られないのも事実である。
全員で頷き、近づいてくる敵主力艦隊から少し距離を取ろうとしていたが、交戦中に敵主力の方が近付いていたようだ。
「艦載機の準備……ダメです。減速しても間に合わないかと」
「反転したら……時間ないよねぇ」
伊勢の言葉に旗艦として時間を管理している蒼龍が首を横に振った。
「なら、行くしかないよ」
「あぁ、瑞雲の力、とくと見せてやろう」
そうとなれば、接触するしかない。
「全航空隊、発艦始め‼」
敵に突貫しようとした直後、敵艦載機が突如襲来してきた。
「敵機直上!?」
「かっ、回避っ‼」
蒼龍が慌てて指示を飛ばし、それぞれに回避運動を取った。だが……
「っの……やるじゃない‼」
瑞鶴は小破で済んだものの、伊勢が中破に陥ってしまった。
さらに、それだけでは済まされなかった……
「来るぞっ‼」
敵戦艦の射程に入ったことで、ル級FlagShipが発砲してきた。
これはなんとか回避できたものの、その砲撃はかなりの至近距離まで迫っていた。
「っ、きょ、狭叉されたっ‼」
伊勢の言葉に全員が冷や汗を流す。1発でこの距離感。やはり、これまでとは戦闘の次元が違うようだ。
「だからって……負けないんだからっ‼」
砲撃可能な3隻のうち、未だにカスダメの日向が弾着観測射撃の準備を整えた。
「まぁ、飛行甲板は盾ではないのだが」
強烈な砲撃は空母ヲ級FlagShipに直撃し、これを大破に追い込んだ。これによって敵の航空戦力は無力化できた。
だが、ル級FlagShipには中々有効打を与えることができないままであった。
「このおっ‼アウトレンジで……」
その直後、瑞鶴と蒼龍にル級FlagShipの砲弾が直撃した。
「瑞鶴‼」
伊勢が声を上げると、そこには大破した蒼龍と瑞鶴の姿があった。
「やだやだやだぁ‼」
「や、やるじゃないのっ‼」
その後も3隻でなんとか砲撃を続けるが、ル級FlagShipも負けじと撃ち返してきて、たった1隻相手に砲撃可能な3隻のうち、日向以外の2隻が大破にまで追い込まれてしまった。
もはや無傷なのはSaratogaだけである。
そこへ、Saratogaの艦載機隊が発艦を始める。
「サラの子たち、よろしくね!」
その攻撃隊は勢いよく空母ヲ級FlagShipに集中砲火を浴びせた。その結果、空母ヲ級FlagShipはあっという間に海の底へと沈んで行った。
そうこうしているうちに、あっという間に昼の戦いが終わりそうになる。
「夜戦、だけど……」
『難しそうか?』
みんな悩む。敵は逃げようとしていた。一応このままでも敵が撤退することで海域の開放自体はできる。だが、敵も戦力を残すことになる。
すると、日向が声を上げる。
「提督、私がケリをつける。頼む。行かせてくれ」
音無も、このまま敵を残しておくことは禍根を残すことに繋がると判断した。なので……
『分かった。日向!絶対に仕留めろっ‼』
「あぁ、任せろ‼」
夜戦に突入した時、ル級FlagShipは中破状態だったが、日向が砲撃する前に鈴谷と伊勢が副砲を斉射し、ル級FlagShipの動きを乱した。
そして、日向が照準を定めた。その時、日向の体が金色に光り出す。
「航空戦艦の真の力、思い知れ‼」
発動した砲撃カットインにより、ル級FlagShipは断末魔の声を上げながら海の底へと沈んで行った。
「や、やったぁ……」
「ここまでボロボロにされちゃうなんてぇ……」
伊勢と蒼龍がぼやくが、今回は『改二』が少なかったのが原因かもしれないと音無は考えていた。
「残存する敵艦隊、離脱していきます。撤退する模様」
すると、何者かが近付いてきた。
「どこかの鎮守府の艦隊ですか?」
「そうだよ~」
「一緒に行ってもいいでしょうか?」
「えぇ、ぜひ来てちょうだい」
艦隊はボロボロになりながらも帰投する。
そして、帰った艦隊が連れ帰った艦娘は以下だった。
「秋雲、着任!提督、よろしくねっ!」
「わら我が初春じゃ。よろしく頼みますぞ」
「睦月型駆逐艦、その六番艦、水無月だよ。遅れてごめん。司令官、よろしくね……えへへ」
「特Ⅰ型駆逐艦、七番艦、薄雲です。東京の造船所で生まれ、あの戦いでは北方の海で活動しました。提督、薄雲のこと、覚えていてくださいね」
「お疲れ!夕雲型十一番艦、藤波よ。司令、よろしくね!」
「How are you?私はPerth級軽巡洋艦Perth。HMSPerth!
イギリス生まれ、オーストラリア育ちよ」
「ん……?パース……あっ!シドニーのお姉ちゃんか‼」
「えっ、Sidneyがここにいるの?」
「あぁ。ウチに着任して頑張ってくれているよ。会ってあげるといい」
すると、Perthは『パァァ』と言わんばかりに嬉しそうな表情に変化した。やはり、姉として妹に会いたかったらしい。
そして、最後は黒十字の紋章を付けた制服を着こんでいた。
「グーテンターク。私は第三帝国所属軽巡洋艦、Emdenという‼」
「エムデン?えぇと……あぁ、天龍型とほぼ同じくらいに建造された、ドイツの練習向け軽巡洋艦か」
その名を持つ巡洋艦としては3代目である。
天龍型に近いタイプということからか、腰が細い割には豊満な胸元である。
「あぁ。実戦ではほとんど活躍できなかったが……電気溶接技術を先駆けて取り入れたことは高く評価されているんだ」
だが、実際には船体の強度に難があったなど、航行する上での様々な問題もあったが、偵察部隊として機雷原の設置に活躍した。
また、1939年9月4日にヴィルヘルムスハーフェン港を襲った英空軍のプレニム爆撃機5機のうち1機が撃墜された時にEmdenの前方デッキに墜落した結果、11名が戦死、18名負傷という海軍最初の犠牲を払った艦となったのだ。
結局終戦間際まで存在していたものの、1945年4月にキールで爆撃を受け、5月3日にヘイケンドルフ湾に引き出されて自沈した船でもあった。
しかし、逆に言えば終戦間際まで生き延びた艦でもある。
装備は以下となる。
○ 15cm単装砲
○ 50cm連装魚雷発射管(雷装+2)
要目は以下となる。
○ 耐久 21
○ 装甲 7
○ 回避 30
○ 搭載 0
○ 速力 高速
○ 火力 17
○ 雷装 16
○ 対空 8
○ 索敵 7
○ 運 20
爆撃機の墜落によって死者を出したとはいえ、終戦間際まで支援活動に徹していたことにより損傷、被害が少なかったことからか、初期の運は20と長門並みの高さである。
だが、それ以外の能力は天龍型と同等か、それより低い部分すらある。
火力の初期値に関しては天龍どころか夕張並みとかなり高いが、それはエムデンが主砲として15cm砲を8門という多数を搭載していたからである。
これでも本当は『連装にしたかった』などの話があったらしいが、当時の連合軍の管理部が認めなかったという。
その結果、苦肉の策として単装砲を多数搭載したのだ。
もっとも、その結果として安定性や船体の頑丈性に問題が出てしまったわけだが。
「まぁ、こんな半端者だ。それでも使ってくれるというのであれば、Admiralのために尽力しよう」
「そう言ってくれると助かる。ウチはどんな奴が来ても働ける環境を整えているつもりだ。どんな奴だってできることはある。そう考えれば、皆で頑張れるだろう?」
音無の笑顔を見たEmdenは思わず胸をドキリと高鳴らせながら、かつての指導者が水上艦隊に怒り散らしていた姿とつい比較してしまった。
「……なるほど。人が変わればこうも気持ちが変わる、か。改めてよろしく頼む」
「あぁ。あ、お前以外にもシャルンホスルト姉妹やグラーフも着任しているから、挨拶してやってくれ」
「ほぅ。後輩たちがいるのなら面倒を見てやらないと……といっても、着任したのは私の方が遅いのだがな」
「いいじゃないか。間違いなくお前はドイツ海軍を見守ってきた存在だ。なら、そんな思いでまたこの鎮守府を見守ってくれよ」
エムデンは音無に会釈すると、仲間たちに会うべく他の艦娘と共に出て行った。
そんな彼女たちを見送った音無は、すぐに入渠場へ向かった。入り口では、Saratogaが立っていた。
「あっ、提督。お疲れ様です」
「皆の具合はどうだ?」
「瑞鶴さんと蒼龍さんはそうでもないのですが、伊勢さんたちが……」
「やっぱり、鹵獲改装組は修復も遅いのか……」
以前も翔鶴が負傷した際に少し他のメンバーより修復が遅いという問題が発生していたのだが、伊勢や日向たちもそうらしいという話を聞き、音無は考え込む。
「確か、高速修復材はたくさんあったよな?」
「はい。前任者の頃から溜め込んでいましたので」
「じゃあ遠慮するな。どうせ海域に漂っていることもあるっていうし、チャーなら作れるだろう。それをケチって資材の方が先に無くなったら目も当てられないからな」
実際には補給がしっかり整っているためにそんな心配はほぼないのだが、音無は常に『万が一』を考えていた。
Saratogaもそんな音無の心中を察してか、『わかりました』と言って音無と一緒に入渠場へと入る。
「皆、具合はどうだ?」
すると、瑞鶴が『キャッ』と声を上げながら薄めの胸元を手で隠した。
「てっ、提督さん!?なに入ってきてんのよぉっ!?」
「あっ、瑞鶴!その……すまんっ」
うっかりしていたが、瑞鶴と蒼龍はまだ音無と肉体関係にある訳ではない。音無も若干感覚がマヒしていたからか、普通に恥ずかしがるということをすっかり失念していたのだ。
なので、蒼龍も恥ずかしがっていると思った……のだが。
「えへへ~。もうっ、提督ったらぁ~……そんなに私が江草隊の整備をするところを見たかったのぉ~?」
「え、いや、その……」
蒼龍を見れば、正規空母の中でもかなり立派な胸元を『ムニュゥッ』と寄せているが、むしろ視線は誘っているようにしか見えない。
既に関係を持っている鈴谷、伊勢、日向、翔鶴は『アハハ……』と笑うのみだった。
すると、そんな蒼龍の様子に驚きつつ、瑞鶴も付け足すように言った。
「でっ、でも……提督さんに見られるのがイヤって訳じゃないから……その……こんな洗濯板でよかったらいつでも見せてあげるから……キツイこと言って、ゴメンねっ」
「なに言ってんだお前!?」
まさかの宣言にむしろ音無の方が慌てていた。
憎からず想われているとはある程度察していたつもりだったが、シスコンの瑞鶴からすれば音無は大好きなお姉ちゃんを奪った男(と音無自身は認識していた)のはずである。
実際の瑞鶴は音無のことを『とても頼りになる、翔鶴だけでなくて自分自身も預けられる素晴らしい人』と思っていたのだが、そこまでは気付いていなかったのだ。
すると、Saratogaが『あらあらぁ』と口元に手を当てながら爆弾を投下する。
「では、Saraと蒼龍さんと瑞鶴さんで一緒に提督とBed・Inというのはいかがでしょう?」
「ふわっ!?」
音無は驚きながらSaratogaの方を見るが、蒼龍は乗り気で、瑞鶴までもが『アリかも……』と言い出していた。
音無が酸欠の魚のように口をパクパクさせていると、翔鶴が『うふふっ』と笑い出した。
「提督、これでは退路がありませんね」
「いいじゃーん。提督のこと好きだって言うんだから、ガバーッと抱いちゃえばさー」
鈴谷の追い討ちに言葉にならない呻きだけしか出てこなかったが、視線を感じて振り返ると、Saratogaと蒼龍と、瑞鶴の3つの視線が音無に突き刺さっていた。
「うぅっ……そ、その……いい、のか?」
「はい。Saraはいつでも」
「私は提督さんとエッチできるなら、いいなって思ってたっ」
「わ、私だって……本当は提督さんのこと……」
つまり、そういうことである。
「……分かった。今夜は3人とも、寝かさないからな」
音無の強い言葉に、3人は揃って『『『はい』』』と返すのだった。
というわけで、次回はまたも空母娘中心の夜になります。