翌日、新しく入った如月と大井の演習を見ながら音無は思わぬ話を聞いていた。
「え、千歳と千代田ってまた改装するのか?改二ってやつ?」
「それはもう少し後でして、今は水上機母艦の『甲』型になります」
「『甲』?」
「はい。甲標的という超小型潜水艦みたいな装備を搭載できるようになりまして、これで敵艦隊に先制雷撃をすることができるようになります」
「私たち水上機母艦以外では、一部の軽巡洋艦と重雷装巡洋艦が装備できるんですよ」
「へぇ……強いのか?」
「そうですね。雷巡が使用すれば、戦艦クラスも一撃で葬ることが可能になります」
「ただ、命中するかどうかは魚雷次第なので『当たらなければ』難しいですけど」
「なるほど……通常の魚雷と一緒に発射すれば命中率は大幅に上がりそうだな」
実際アーケード版ではそうすることによって、魚雷の複数到達による大ダメージが確認されている。
「よし、じゃあ早速改装を……あ、その前に装備外さなきゃだな」
副砲と偵察機と瑞雲を外すために改修工廠へ行ってみると、チャーがまた妙なものを作り出していた。
「チャー、それって……戦車か?」
「あぁ。陸軍妖精さんに使ってもらう陸戦兵器だ。大発動艇や船舶に搭載できる『迫撃砲』、『八九式中戦車』や、『特二式内火艇』だ。あ、もう少しすれば鎮守府飛行場も完成するぞ?」
「はえーよ……っていうか、この泊地を要塞化するつもりか?」
「そうだな、深海棲艦にも地上型がいるし、そんな奴らが上陸してきた時に対抗手段があるに越したことはない。お前だって艦娘たちに『備えあれば患いなし』っていう感じで言っているじゃねえか」
「まぁ、な。それにしたって手広くやりすぎだろ……」
実際、哨戒機や迎撃機を整えることで泊地の防衛体制を構築することは、敵の襲撃の際に艦娘が出撃するまでの時間を稼ぐことにもつながるため、無駄ではない。
改修工廠へ到着した音無は、早速千歳たちの改装を始めることにした。10分と経たずに、新しい艤装を装着した千歳と千代田が姿を見せた。
「うふふふふっ、また強くなっちゃった」
「これで、勝てるかも……」
上半身は変わらないように見えるが、下半身に新しい艤装が装着されていた。
「これが甲標的か?」
「はい。ここから発進するんです」
これにより、装備は以下となる。
○ 零式水上偵察機×12・甲標的・甲標的
なお、この2・3スロットはそれぞれ6機の搭載が可能になっているため、甲標的を1つ外せばまた瑞雲が装備可能となる。
「序盤の航空攻撃には欠かせないな……」
すると、猫車を押しながら藤巻が姿を見せた。いつものSSSの制服ではなく、作業員らしいツナギ姿である。元々はギルドの作業員としてチャーに引き抜かれたが、前線に出した方がいいというチャーの提案で戦闘班に入り、入った時期が早いという理由で幹部になったというのが、音無が日向から聞かされた藤巻の入隊経緯だ。
「お、音無じゃねーか」
「おぉ藤巻。採掘の具合はどうだ?」
「あぁ、野田がゆりっぺに乗せられて、滅茶苦茶張り切ってるよ。ま、お陰でたっぷり採掘できてるけどな。今ちょうど補給するところだ」
工廠の装置の中に入れると、鋼材とボーキサイトの数値が少しずつ上がっていく。
「結構あるな……また建造やってみるか?」
「おっ、面白そうじゃねえか。俺1回も見てないからぜひ見てみたいぜ」
「よし、じゃあせっかくだし空母レシピ行ってみるか……」
燃料400、弾薬200、鋼材500、ボーキサイト700を投入してみる。
「よし、建造開始」
『イッテミヨー』
炉の中でドンテンカンと工事のような音が鳴り響くと、藤巻が苦笑いした。
「俺がいるせいで俺みたいなヤンキー系が出てきたりしてな」
「まさか……一応秘書艦に影響されるらしいということは聞いているけど……」
しばらく待っていると、チーンと言う音が響く。
『シューリョー』
扉が開いて中から出てきたのは……着物を着た、小柄な女性だった。その手には、小さいながらも弓を携えている。
「航空母艦、鳳翔です。不束者ですが、よろしくお願いいたします」
「まぁっ、鳳翔さん‼」
「やった、鳳翔さんだ‼」
千歳と千代田が喜んでいることから、立派な船なのかと音無も藤巻も思った。
「スゲー、ホントに炉の中から人が出てきたぜ……」
「何度見てもすごい光景だな……で、鳳翔さんってのは強いのか?」
すると、鳳翔は照れ臭そうにはにかんだ。
「いいえ、そんな。私は空母としては最古参になりますので……」
「最古参!?」
「鳳翔さんは『世界で初めて、空母として一から設計・建造された軍艦』なんですよ。なので、『空母の母』とも言われているんです」
「へぇ~……実力がどうかっていうより、その艦歴そのものがすごいな」
鳳翔型航空母艦。彼女のすごいところの1つに、太平洋戦争の開始から終わりまでの全てを見届けたという幸運艦でもあることが挙げられる。
彼女は最後、飛行甲板を取り払って復員船となった。最後までお国のために頑張ってくれた船なのだ。
搭載数は初期状態でわずか19機、スロットは2つで初期装備に『九九式艦爆』があるのみとなっている。
と、そこにチャーがやってきた。
「お?鳳翔が来てるじゃねーか。音無が建造したのか?」
「あぁ。この後鎮守府正面の戦いに出そうと思うんだが……なにかいい装備はあるか?」
「だったらコイツをつけてやったらどうだ?」
それを見た艦娘3人がギョッとした表情を見せた。
「ちょ、ちょっとこれ!『零式艦戦62型(爆戦)』じゃないですか‼」
「爆弾と飛行機をいじくってたらいつの間にか3つくらいできたぞ」
「「「えぇ~……」」」
すると、建造されたばかりでチャーのことをよく知らない鳳翔が思わず尋ねる。
「あ、あの……工廠って普通、妖精さんが作業する場所、ですよね?この方が、作っているんですか?」
「ま、工廠長ですし」
「だね」
「鳳翔、『気にしたら負けだ』って言葉、よく覚えとけ」
『ソダネ』
『モウナレタ』
『サギョウニモドロー』
妖精さんたちもひどい言い方であるが、チャーが反則過ぎるのである。
鳳翔は『えぇ~……』と言いながらもなんとなく理解したらしい。『目の前にいる男はどこかオカシイ』と。
「ですが、演習ではなく実戦ですね。致し方ありません」
早速もらった爆戦を装備すると、チャーが『そうだ』と言って千歳と千代田に瑞雲らしきものを差し出した。
「え……これって、瑞雲(六三四空)!?まさか作ったんですか!?」
「あぁ。お前らが持っていた瑞雲を解析していじくりながら作ってみたらできた」
「「「……」」」
本来作れないはずの装備を開発してしまったチャーに、もはや言葉すら出ない3人だった。
音無も『ハハハ』と乾いた笑いを漏らすのみである。
「ま、まぁ、せっかくだから使わせてもらえよ。きっと役に立つって」
「は、はぁ……」
「まぁ……いいけど」
こうして、新たに加わった鳳翔も共に出撃することになった。
編成は以下となる。
○ 神通 15.2cm連装砲・32号対水上電探
○ 大井 15.2cm連装砲・四連装魚雷発射管
○ 如月 12.7cm連装高角砲・三連装(酸素)魚雷発射管
○ 千歳甲 瑞雲(六三四空)×12・瑞雲×6・甲標的
○ 千代田甲 千歳と同じ
○ 鳳翔 九九式艦爆×8・零式艦戦62型(爆戦)×11
今回は改めての正面掃討戦ということもあって重巡を編成せず、軽快な水雷戦隊で挑もうということらしい……その割に足の遅い鳳翔がいるのが、なんともミスマッチではあるが。
「あくまで任務は、付近を遊弋する連中を確実に片付けることだ。もしヤバそうなのが出てきたりしたら撤退も視野に入れること。いいな?」
「了解‼」
この日、執務室には岩沢とひさ子の姿があった。音無の提督としてのやり方を見て、必要ならば補佐するためである。
6人は原速状態で正面海域に到着する。
「大丈夫、私に任せて」
千歳が発艦させた偵察機が、近くにいる敵艦を捜索する。
「やはり、主力艦隊を倒した影響なのか、敵の姿は見えませんね……」
「いないならそれに越したことはありませんが……あっ、偵察機より入電!『敵艦隊発見、駆逐イ級3隻』とのこと!」
「距離は?」
「だいぶ離れてますね……航空攻撃を仕掛けますか?」
『よし。鳳翔の腕試しがてら、航空攻撃を許可する。他に遊弋する敵の姿はないな?』
「はい、電探には反応ありません」
「偵察機からもそれ以外の艦隊の報告はありません」
『分かった。攻撃を許可する』
鳳翔が弓に矢を番えると、一気に表情が変わった。
「いつまでも演習ってわけにはいきませんっ‼」
そして千歳と千代田も瑞雲を発艦させる。
『ズイウンニアワセロ!』
『テキハッケン!』
『ツブセー!』
瑞雲36機に加えて九九式艦爆8機と爆戦11機。
これが一気に編隊で急降下してきたのだから、無印のイ級程度ではどうすることもできなかった。
声を上げる間もなく、彼らは水の底へと引きずり込まれていったのだった。
「そんな、本当ですか?私がお役に立てたなら嬉しいです!」
落ち着いた印象とは裏腹な喜び方に、なんとなく音無もニコリと微笑む。
その後、いくつかの小部隊を潰したが、軽巡クラスの相手はもう出てこなくなっていた。
『どうやら基本的には残党ばかりだったみたいだな……練度はどうだ?』
「はい。鳳翔さんが練度3まで上がりました。ただ、間もなく日が暮れますね」
『じゃあ、今日はこれで終わりにしよう。そのまま帰ってきてくれ』
「了解です」
すると、神通の電探に反応があった。
「これは……艦娘です!」
近づいてみると、単装砲を持った小柄な少女が立っていた。
「睦月ですぅー!どこかの艦隊さんですかぁ?」
「あら、睦月ちゃん!」
「如月ちゃん!?こんなところで会えるなんて~!」
そんな仲睦まじい2人を見ながら、神通が声をかける。
「どうですか?私たちの鎮守府に来ませんか?」
「おぉーっ‼如月ちゃんと同じ鎮守府!行きたいにゃー!」
こうして、睦月を加えた艦隊は鎮守府へ帰投した。
如月は睦月を案内する前に、帰りがてらまとめておいたレポートを音無に見せた。
「損害なし、補給良し。皆ご苦労だったな」
「はい。当該海域には余程のことがなければ敵は現れないと思います。ただ、他に遊弋している艦娘もいるかもしれないので、引き続き哨戒部隊を出すことはするべきかと」
「なるほど……駆逐艦を何隻か建造してそれに充てるか?」
「それでいいと思います」
如月はただのお色気担当ではない。報告や今後のことなど、真面目なことはちゃんとやってくれる才女なのだ。
「あ、それと司令官。新しい子が来ましたよ」
「お、どんな子?」
如月が『睦月ちゃん』と呼ぶと、ニコニコの笑顔で睦月が入ってきた。
「睦月です!張り切っていきましょー‼」
「また元気な子だな……睦月?もしかして、如月の姉妹艦か?」
「はい。私たち『睦月型駆逐艦』のネームシップです」
「おぉ、そうなのか。じゃあ、まだ練度が低い大井や如月と一緒に艦隊を組んで哨戒してもらえば、艦娘探しにはちょうどいいかもな」
「はい。駆逐艦と軽巡を合わせて6隻揃えば遠征にも行けますから、それも含めて色々考えてくださいね、司令官♡」
如月は自分が裏方に回ることにはなんの不満もないらしい。一方の大井も『もしかしたらそこで北上さんに会えるかも!』と意外と乗り気だ。
「じゃあ、正面海域の捜索は如月たちに任せるか。次の海域が……」
「『南西諸島沖』ですね。正面海域より強力な敵も出てくると思いますから、ちゃんと編成を組んだ方がいいと思います」
「じゃあ、正面海域の捜索・掃討に如月、大井、睦月、それと航空戦力で鳳翔を入れよう。鳳翔、やってくれるか?」
鳳翔は弱い分燃費がいいので、掃討艦隊の護衛ということであれば十分だと判断したのだ。
「はい、お任せください」
「で、出撃するのは……もう1隻建造しておいてもいいかもな」
編成としては哨戒部隊4隻の中から大井辺りを割けばいいのだが、哨戒部隊にもそれなりの戦力を持たせようと思った音無なりの配慮であった。
すると、たまたま部屋に来ていた大山が声を上げた。
「あっ、じゃあ音無君、戦艦狙おうよ戦艦‼大きな大砲ってかっこいいし‼」
特徴がないことが特徴と言われる大山だが、一丁前に戦艦への憧れがあったらしい。
「そうだな……じゃ、やってみるか」
大きな船を連れて行けば出てくるかもと思った音無は、鈴谷と摩耶を連れていく。
「戦艦かぁ、金剛さん辺りが来てくれりゃ助かるなぁ」
「足速いしねー」
「金剛型……チャーから聞いたけど、確か、日本唯一の高速戦艦なんだってな」
「太平洋戦争に参加した戦艦としては最も古いけど、その分足の速さを活かして対艦・対地攻撃に従事したんだー」
「つっても旧式艦だったから、ちょっとした攻撃でボロボロになったらしいが……それでも他の戦艦たちみたいに『出番がほとんどなかった』っていうのとは違うからな。メッチャ頑張ったと思うぜ」
「なるほどな。じゃ、金剛型が来るように祈るとするか」
チャーがいくつか教えてくれたレシピがあったが、その中の1つ、『札幌レシピ』を試してみることにした。
「燃料600、弾薬100、鋼材600、ボーキサイト200、と」
「えっ、札幌戦艦レシピって……なんで札幌?」
「いや、俺北国の出身だからさ。なんとなくゲン担ぎに、っと」
鈴谷も摩耶も『なるほど』と納得した。
直後、炉が動き出して建造が開始される。そして、2分ほどで『チーン』という音がした。
『デキアガリ』
開いた扉の先にいたのは……巫女服を思わせる服に身を包んだ、黒い長髪と笑顔が美しい美女だ。
「高速戦艦、榛名。着任いたしました」
「おぉ、高速戦艦ってことは金剛型か?」
「うんうん!金剛型の3番艦だよ‼」
鈴谷が興奮した様子を見せる。やはり重巡としてそれなりの火力を持つ彼女たちも、戦艦に憧れるところがあるらしい。
「あなたが提督なのね?よろしくお願いいたします」
「あぁ、よろしく。提督の音無だ。榛名、だったな?榛名山から付けられたのか?」
「はい。私たちは元々巡洋戦艦という艦種になる予定だったことから、重巡と同じ山の名前が付けられました」
「なるほど、そういうことか。早速で悪いが、一通り演習したら艦隊に加わってほしい」
「はいっ。榛名、全力で頑張ります!」
音無は榛名を演習場へ連れて行った。
そこでは入ったばかりの睦月と大井が砲撃演習を行っていた。
「おりょ、司令官、と……榛名さん!?」
「こんにちは、睦月さん。私も今建造されたのよ」
「うにゃ~、そうだったんですかぁ‼また仲間が増えて……睦月、感激~!」
睦月の嬉しそうな顔を、如月が微笑ましそうに見ている姿を見て、音無は思わず『どっちがお姉ちゃんだか分かったもんじゃないな……』と考えていた。
その後、睦月と一緒に榛名が演習を始めたのだが……
「榛名、全力で参りますっ‼」
直後、重巡のそれとは比較にならないほどの水柱が上がった。
「うぉっ、スゲェ……」
「うわ~!やっぱり戦艦ってすごいなぁ‼」
音無は唖然とし、大山は興奮しっぱなしである。
「(榛名……金剛型って、太平洋戦争に参加した戦艦じゃ最古参なんだろう?それでこの威力って……これより強い長門型や大和型になったら、どれだけ強いんだ……)」
逆に言えば、そんな戦力を有していながら戦艦を有効活用できなかったという日本海軍とはどんな組織だったのだろうかとも思ってしまう。
そして、30分もしないうちに榛名が演習を終えると、練度は11まで上がっていた。
「よし、これなら次の海域に言っても大丈夫だろうな」
「はい。提督に勝利を捧げるため、榛名、頑張ります‼」
「(なんていうか……すごく一途な感じの子だな)」
こうして、先ほどの5隻に加えて榛名を編成したのだが、榛名にも装備を渡してある。
○ 榛名 35.6cm連装砲・15.2cm単装砲・零式水上偵察機×3
少なくとも、制空権を取れればの話ではあるが、弾着観測射撃が可能なのは大きい。
重巡でさえ強力だったのだから、戦艦の弾着観測射撃ともなれば、どれほどの威力なのかと思ってしまう。
「よし、神通を旗艦に据えて、鈴谷、摩耶、榛名、千歳、千代田で行く。皆、頼むぞ‼」
「「「「「「了解‼」」」」」」
――南西諸島沖
途中で高速修復材を拾った艦隊は、ゆっくりと進んでいた。
「それでは、偵察機をお願いします」
「アタシがやらないと……」
千代田の言葉を合図に、千歳や榛名、摩耶たちも偵察機を飛ばす。
そして、それが敵艦隊を発見する。
「偵察機より入電!『敵艦隊発見。軽巡ホ級1隻、駆逐イ級3隻』!」
『いきなり前回の敵主力艦隊と同じ数か。瑞雲はいけるか?』
「準備万端です」
『よし、航空攻撃で制空権を確保しろ‼』
「大丈夫、私に任せて」
千歳と千代田から36機の瑞雲が発艦し、攻撃を開始する。
『コウカカイシ!』
『ブットバセ‼』
次々と急降下した瑞雲は、あっという間に爆弾を投下する。
――ギャアアアアッ……‼
――ギャアアアアッ……‼
――ガフアッ!?
「攻撃隊より入電。『駆逐イ級2隻撃沈、軽巡ホ級中破』!」
「前回より慣れたからか、与えるダメージが増えたじゃん!」
鈴谷の嬉しそうないい方に、千歳も思わずはにかむ。そして接敵する。
「隠れても無駄なんだから‼」
今回は偵察機が飛行しなかった。そういうこともあるらしい。だが、今のこの艦隊だけでも戦力的には十分すぎる。
一応遠距離から砲撃ができるにはできるが、音無は一斉攻撃を重視したためにまだ攻撃をさせなかった。
「全ての艦が射程に入りました‼」
『全艦、砲撃せよ‼』
「勝手は、榛名が、許しませんっ‼」
6人による一斉砲撃は、駆逐イ級と軽巡ホ級にはオーバーキルと言ってもよいダメージを与えて轟沈させた。
中破・大破でもだえる暇も与えない速攻であった。
「感激です!」
そのまま進んでいくと、また別の艦隊に出くわした。
「電探に感アリ。敵艦隊です。軽巡ヘ級1隻、駆逐ロ級2隻です」
『ロ級?イ級じゃないのか?』
「はい。イ級の改良型とも言うべき存在ですね。ただ、それでも元が駆逐艦なので限界は低いですが」
『ふむ……航空攻撃はできそうか?』
「残念ですが、接敵するまでに補給が整わないかと」
『じゃあ仕方ない。そのまま単縦陣で突っ込め。巡洋艦の射程に入り次第副砲を斉射して敵を弱らせて、そして一斉砲撃だ』
今のところ主力艦隊には駆逐艦がいないこともあって、全員が中距離以上で砲撃が可能となっている。
「了解しました」
接敵すると、艦隊は最大船速まで引き上げて一気に突っ込んでいく。
そして、射程に入り次第副砲を連射した。当然至近弾で敵の足並みは大きく乱される。
そこを見逃さず、砲撃を開始した。
「うりゃぁ‼」
6人の放った砲撃は威力が高く、先ほどの艦隊同様に有無を言わせず轟沈させてしまった。
「やーるじゃーん」
こうしてもう1つの艦隊を退けた後は駆逐艦を中心とした小部隊を2つ撃破する。
そして、遂に偵察機が敵主力の姿を捉えた。
「偵察機より入電!『敵主力艦隊発見!敵は軽巡ヘ級、雷巡チ級、駆逐ロ級1,駆逐イ級2隻』とのことです!」
『雷巡?重雷装巡洋艦のことか?』
「はい。強力な雷装が特徴です。早めに倒してしまいたい相手ですね」
『わかった。瑞雲を出せ‼』
「大丈夫、私に任せて」
千歳と千代田から発刊した瑞雲は敵艦隊に向けて急降下する。
『イクゾー‼』
『オラオラァ‼』
『ヒーハー‼』
急降下した編隊は、的確に爆弾を投下する。
「攻撃隊より入電、駆逐イ級2隻轟沈、駆逐ロ級中破、雷巡チ級小破です!」
『よし、そのまま単縦陣で突っ込んで思い知らせてやれ‼』
「了解‼当たってください‼」
神通を先頭に突入する。
敵艦隊との距離が詰まった時、中射程に入った瞬間敵の砲撃が開始された。
巡洋艦2隻の砲撃は、動きの鈍い千歳に向かう。
「つっ……!」
「危ない!」
直前に榛名が割って入り、攻撃を食らった。
「やだ‼被弾した!?」
いくら装甲が薄めとはいえ、あくまで『戦艦としては』である。高速戦艦とはいえ軽巡と雷巡の砲火力では小破させることもできないダメージしか与えられなかった。
そして、敵艦隊の攻撃の後にこちらも攻撃を開始する。
「主砲、攻撃開始ーっ‼」
榛名を筆頭に6人の砲撃が敵艦隊に直撃した。
戦艦である榛名が加わっているからか、その火力は前日までとは比較にならないほど高い。
被弾した敵艦は断末魔の叫び声をあげながら海の中へと沈んでいった。
「ふぅ。なんとか片付いたみたいですね」
「榛名、オメエ大丈夫か?」
「はい、摩耶さん。このくらいなら心配には及びません」
すると、神通が反応した。
「電探に感アリ。これは……艦娘だわ」
反応のした方へ行ってみると、黒い髪に単装砲を持った女の子が立っていた。
「おー、どっかの艦隊かなー?」
「艦娘ですね。付いてきますか?」
「オッケー。このまま海の上じゃ寒いしー」
帰投すると、音無が榛名の様子を伺いに来た。
「榛名、被弾したらしいが大丈夫か!?」
「はい。榛名は大丈夫です」
「カスダメっぽいから、入渠すればすぐ治るって」
鈴谷がいつもの軽い調子を崩していないところを見ると、本当に軽い損傷で済んだらしいということが分かった。
「そうか。で、この子は?」
黒髪の女の子は音無に挨拶する。
「アタシは軽巡、北上~。ま、よろしく~」
「なんというか……鈴谷とは違ったベクトルって感じのノリの軽さだなぁ……ん、北上?」
「そーだよー」
「……大淀、大井って帰ってきてるか?」
「あ、はい。先程哨戒から帰りまして、駆逐艦2隻を連れ帰りました。今は談話室で一休みしているところですが……」
「すぐ連れてきてくれ」
「わかりました」
大淀に呼ばれた大井は、ぶつくさ言いながら執務室に入ってきた。
「せっかく一休みしてたのに……なんの御用ですか、提督?」
一瞬で表情を変えるあたり、結構猫を被っているのかもしれない。
だが、そんな猫の仮面も一瞬で吹き飛んだ。
「大井、北上ってお前が探してた艦娘だよな?」
「お、大井っちじゃん~。もう着任してたんだ~」
直後、大井は目を潤ませながら北上に抱き着いた。
「北上さ~ん‼会いたかったんですよぉ~‼」
「お~よしよし。大井っちに心配かけちゃったか~。ゴメンね~」
「っていうか、なんで私が探しに行った時に出会えなくて主力艦隊の方で出会うんですかぁ‼世の中って理不尽ですぅ‼」
「いやお前の言ってることの方が理不尽だから……で、大井。新しく連れてきた艦娘って?」
流石の大井もこのままはマズいと思ったらしく、咳払いして残念そうに北上から離れた。
「はい。この子たちですね」
中へ入ってきたのは……黄色い髪の毛を持つ女の子と、白い髪の毛を持つ女の子だった。
「皐月だよっ、よろしくなっ」
「私が菊月だ。共に行こう」
「それぞれ睦月型の5番艦と9番艦ですね」
「司令か~ん!睦月の妹たちを連れて来てくれて嬉しいにゃー‼」
落ち着いて報告する大淀とは裏腹に、妹たちが来た睦月は嬉しくて仕方がないらしい。
先ほどから玩具を前にした猫のようにぴょんぴょん飛び跳ねている。
そんな姉の姿を、妹たちは微笑ましげに見ているのだった。
「(だから本当にどっちがお姉さんだかわからねえっての!)」
そんなこんなで段々と艦娘が増え始めたSSS鎮守府。
その後、追撃戦を経てさらに吹雪が仲間に加わった。
果たしてここからどうなるのか……。
つ・づ・く・よー!