アケ版はともかく、ブラウザ版は本当に難しい……
千歳たちとシャワーを浴び、朝食を摂りに食堂へ向かった音無。
今日は藤巻が珍しく朝食の支度を手伝っていた。
「へへへっ。アホだってできることの1つや2つはあるもんさ」
そう言って見せたのは、大変に美味しそうな味噌汁だった。
よく見れば、多数の魚の骨や頭が入っている。
「近海でとれた魚のアラを使ったアラ汁だ。たっぷり使ってるから、大人数分を作っても全然薄味じゃねぇぜ」
物の試しにと一口啜ってみる。
「うぉっ……美味いな!」
口の中に魚の香りがふわりと広がり、白味噌とよく合っている。味噌の量も絶妙で、これは恐らく鳳翔が見たのだろうと音無は判断していた。
「へへへっ。ワタ取りと出汁取りは結構好きでな。うまくできると気分が良かったもんさ」
最後に『あおさのり』をお椀に入れ、そこに味噌汁を注ごうものなら、たちまち食堂に魚介とあおさのいい香りが広がっていく。
赤城や加賀などはもうこの香りだけで涎を垂らしているほどであった。
音無は食堂に集まった皆の顔を見渡すと、声を上げた。
「皆の頑張りで、北方海域も開放することに成功した。まだこの後も手強い海域が続くという。だが、今日から3日間に関しては休養日として、遠征と演習のみとする。この間の南西諸島海域の開放では給養させていなかったからな。ゆっくり休んでほしい」
艦娘たちも主力となりうる能力を持つ艦娘を除けば交代で休んでいるためそれほど負担ではないのだが、やはり最低限のことで休養していいと言われると嬉しいらしい。
彼女たちも、心を持つまごうことなき『人』なのだ。
音無が食事を始めると、大淀が『失礼します』と言って隣に座りながら話を始めた。
「提督。提督が北方海域を解放されたことによって、この鎮守府における大型艦建造が解放されました」
「大型艦建造……大量の資源と引き換えに、戦艦や空母などの大型艦を建造しやすくする、だったな?」
「はい。中には大型艦建造でしか建造できない艦娘もいますので、そういった存在を呼び寄せるという意味でも重要です」
「えぇと……ウチの備蓄って今どのくらいだっけ?」
大淀がメモを取り出した。
「えぇと……燃料が7万8320、弾薬が8万470、鋼材が11万3530、ボーキサイトが9万2580ですね」
「……どのくらい建造できる?」
「レシピにもよりますけど、仮に全てを最大値である7000にしたとしても十回は余裕でできますね」
ただし、大幅に消耗した資源を回復させるには相応に時間と労力が必要になるため、考える必要はあるだろう。
「なるほど……じゃあ、試しということで最低値レシピを2回、戦艦レシピを2回、空母レシピを2回回してみるか」
「そもそも初めて大型艦建造をやる鎮守府が何回もできるという時点で結構すごいことなんですけどね……」
大淀は苦笑いしているが、全ては戦線メンバーと艦娘が頑張ってくれているおかげである。
「以前みたいにやけっぱちな建造はしないで下さいよ?」
「わ、分かってるって……あの時は、こう、なんていうか……頭に血が上っちまったんだ」
「本当にそれだけでしょうか?」
大淀に悪戯っぽく言われると、なんとも言えなくなってしまう音無だった。
それはさておき。
1時間近くをかけて食事を終えると、何人かの艦娘を連れて建造工廠へ向かった。
連れているのは千歳、Scharnhorst、Saratoga、Libeccio、Bearnの5人であった。
日本の艦娘のほとんどは来ているため、海外艦が来てくれればいいと思った結果である。
見れば、一際大きな『炉』がいつの間にか出現していた。
「(どうして一夜の間にこんなもんが、って聞くのは野暮なんだろうな。きっと)」
そんなことを考えつつ、数値を弄り始める。
「じゃあまずは千歳で空母レシピを回してみるか。えぇと、4000、2000、5000、7000っと」
ボタンを押すと、初めての大型艦建造だからだろうか、妖精さんたちも張り切って建造を始めた。
1分ほど経過すると、『チーン』という音と共に、通常建造の炉よりも大きな扉が開いた。
その中から現れたのは……小柄ながら、飛行甲板を持った少女だった。
「そう……私が大鳳。出迎え、ありがとうございます」
「確か……世界でも珍しい装甲を甲板に施した航空母艦、だったっけ?」
「はい、提督。貴方と機動部隊に勝利を‼」
その表情は一見幼さを残しているように見えるが凛々しく、新鋭空母というに相応しい雰囲気だった。
だが、彼女の運用は難しいの一言に尽きる。
いくつかの要因はあるが、まず1つとして装甲甲板を採用したことによる、排水量及び船体の割に艦載機搭載数が少ないことだ。
これは、元々ミッドウェー海戦において飛行甲板に急降下爆撃を喰らったことで大打撃を被った日本海軍がその対抗策として考え出したもので、その防御力は非常に高いものだった。
特に飛行甲板は500kg爆弾の直撃にも耐えうると称されたほどで、急降下爆撃相手であれば十分な耐久力を持つと思われたのだ。
だがその代償として、大鳳の初期搭載数は61機、改装して86機である。
蒼龍・飛龍が64機、翔鶴型が75機、赤城73機、加賀93機(!)という数に比べてしまうと、初期搭載量は中型空母と言われる蒼龍たちより少ないのだ。
ただの数だけで言えば、軽空母のはずである千歳型が近い。
34ノットという速力と高い防御力、そして機動部隊としての運用能力は、確かに折り紙付きであると言えるくらいに高い。
しかし、その装甲防御などの点も踏まえて他の空母より燃費が悪いのも難点だ。
そして、なにより問題なのはその運の低さであった。
大鳳の初期値における『運』は、わずか『2』と陸奥の『3』や扶桑型姉妹の『5』、未成艦のはずであるGraf Zeppelinの『4』よりさらに低い。
これは、初陣となったマリアナ沖海戦において潜水艦の雷撃を受け、その際に燃料タンクから漏れ出たガソリンが気化して密閉状態の格納庫内に充満し、艦載機が着艦した際の火花によって引火、大爆発を起こして轟沈したという経歴によるものである。
このため、攻撃を行ってもクリティカルヒットは出にくく、逆に敵の攻撃がクリティカルになりやすい。当然高速故にある程度の回避力はあるが、運が低いため避けられないこともしばしばなのだ。
基本的に日本とイギリスの航空母艦は荒れる海での運用を想定していることから密閉式格納庫を採用しており、甲板に露天係止もほとんどしない。
艦載機が塩害などで傷つくことを恐れてのことだ。
一方アメリカは『艦載機は消耗品』と考え、それと同時に被弾した際に可燃物である爆弾や魚雷を素早く投棄できるように解放式格納庫を採用していた。
Yorktown級では密閉式だったものの、以後の正規空母たるEssex級などの航空母艦では解放式を採用している。
彼女が一見凛々しく頼もしそうに見えるのも、初陣で沈められるという不運を繰り返したくないという不安を隠してのことなのかもしれない、と音無は考えていた。
だから……
「ありがとう、大鳳。でもさ、肩の力は抜いていいぞ」
「えっ?」
「お前が必要じゃないというつもりはない。でも、家の鎮守府は色んな皆で、交代しながら様々な戦いをこなしているんだ」
「えっ、皆……で?」
「あぁ。皆で助け合って、支え合って、そして共に歩んでいく。それが俺の理想とする鎮守府だ」
「そ、そうなのですか……」
大鳳は音無の考え方に驚いたのか、ポカンとしていた。
「すまない、もう少し待っていてくれないか?他にも何人かの仲間を建造するんだ」
「あ、はい……」
大鳳は艤装を置いて『ちょこん』と可愛らしく座る。
千歳が隣に座り、『いかがですか、私たちの提督は』と話し始めた。
「さて、と……次は空母レシピで回してみるか」
ボタンを押すと『ガタガタゴットンズッタズダン』と大きな音を上げながら炉がガタガタと動き出す。
やがて炉が止まると、中から女性が出てきたのだが……妙な感じであった。
「ん?服がなんだか変だな……海軍の制服じゃない、って……あっ、熊野丸と同じ奴だ」
そこでようやく気が付いた。彼女は陸軍所属の船であると。
「もしかして、あきつ丸か?」
「はっ。自分、あきつ丸であります。艦隊にお世話になります」
あきつ丸。
それは、日本陸軍が建造させた、強襲揚陸艦と言うべき船であった。
「自慢はこの『大発』であります!ネズミやモグラなどとは、訳が違うのであります!」
小発動艇、大発動艇を多数搭載し、兵員や車両を一気に揚陸することができる船である。
改装すれば『三式式連絡機』、『カ号観測機』という対潜哨戒機を持参することで、護衛空母のような存在となる。
もっとも、陸軍は最初からそんなことを想定していたわけではなかったものの、空母に近い船体が役に立ったのは間違いない。
「そりゃすごいな。その積載量、ぜひ活用して欲しい」
「心得ました!あきつ丸、ただいまを以て着任させていただきます‼」
ただし、史実におけるあきつ丸はそれほど対潜哨戒に役に立ったこともなく、普通の輸送船として活動している間に撃沈されてしまったのだが。
だが、これで熊野丸と合わせてこの島にいる陸軍妖精さんの訓練がはかどるというものだろう。チャーが装備も見繕ってくれているので、史実の大日本帝国陸軍よりかなり潤沢な装備になっているのだ。
「じゃあ、千歳の側で待っていてくれ。あと4回やるんだ」
「えっ……この鎮守府はずいぶん資源豊かでありますな」
「皆が頑張ってくれているおかげさ」
音無が微笑むと、今着任した大鳳とあきつ丸以外の5人が嬉しそうに笑っていた。
その笑顔を見たあきつ丸は『あぁ、ここはいい場所なんだな』と直感した。
音無が改めて最低値でボタンを押すと、露が再び動き出し、また1分ほどで停止する。
出てきたのは……珍妙と言っていい、四連装の砲塔を備えた艦娘だった。
見れば、金髪にトリコロールの国旗が翻っていることから、Bearnと同じフランスの船と予測できた。
「ボンジュール。私は自由と平和を愛するDankerk級戦艦の1番艦、Dankerkよ」
「ダンケルク級戦艦……ワシントン条約の制限下で建造されたフランスの超弩級戦艦だったな」
「えぇ。対空レーダーと機関のシフト配置で生存性を向上させつつ、31ノットの最大速力も確保した、当時としてはかなりの高速戦艦だったの」
Dankerk級戦艦
音無が述べたように、フランスで建造された超弩級戦艦であり、その最大の特徴は他国ではあまり見られなかった33cm四連装主砲と同じく13cm四連装副砲だろう。
さらに搭載機を格納庫に収める、主砲及び副砲を四連装にして浮いた分を防御に回すなど、独特の技術が盛り込まれた能力の高い戦艦であった。
また、主砲の最大射程距離は41700mと言われており、大和型戦艦やScharnhorst級戦艦の主砲に匹敵する超長射程となっている。
地中海でのライバルはドイツのScharnhorst級戦艦だったが、これらによる対決はついぞ起こることなく、第二次世界大戦でフランスが降伏する事態となった。
結局Dankerkは他の様々な軍艦と共に1942年11月2日に自沈している。
要目は以下となる。
○ 耐久 75
○ 装甲 70
○ 回避 34
○ 搭載 3
○ 速力 高速
○ 射程 超長
○ 火力 72
○ 雷装 0
○ 対空 41
○ 対潜 0
○ 索敵 14
○ 運 8
初期装備は以下となる。
○ 33cm四連装砲(火力+19・対空+2・命中+1・射程超長)×1
○ 13cm四連装副砲+対空レーダー(火力+7・対空+7・命中+6・射程中)×1
○ 37mm連装機関砲(火力+1・対空+6・命中+1・装甲+1)×1
○ 無装備
運が低いことを覗けば、比較的高水準な戦艦だと言えよう。
特に高火力で超長射程を叩き出しつつ、命中精度も高く航続距離も長いとなればかなり強力である。
また、レーダーを使用した対空能力を保有していたことから、装備も含めて対空の数値が高めの水準となっている。
彼女の副砲とレーダーのセットは、機関砲と合わせることで彼女特有の対空カットインを発動させるトリガーとなる。
日本の三式弾を用いた対空戦闘より高めの能力だと言えるだろう。
「足が速くて超長射程で高火力且つ命中も高いか……じゃあ、演習と掃討艦隊で訓練してもらったら、実戦にも出てもらおうかな」
「お任せ下さいな、Amiral」
ふわり、とお辞儀する姿は一見すると優雅で美しいが、かつてフランスという国の事情に翻弄されたことを考えると、相応に苦労してきたのだろうと思わされる。
だからこそ、この鎮守府ではぜひ頑張ってもらいたいと思う音無であった。
彼女の声帯の妖精さんは、白露型初期4人と同じ声である。
彼女もBearnの隣に座らせると、今度は戦艦レシピを回してみる。既に4回目の建造だが、炉は悲鳴を上げることもなく順調に動いていた。
少ししてまた止まると、今度は小柄な……しかし胸元は大変にけしからん豊満さを持つ少女が出てきた。
だが、その艤装が驚きであった。少女の小柄な体躯には合わないほどに巨大だったのだ。
「Buon giorno!Mi chimao Conte di Cavour」
「コンテ・ディ・カブール……イタリアが建造した弩級戦艦か?」
「そうよ。あんたが提督?ふーん。ジャ、よろしく頼むわ!」
小柄だが負けん気の強そうなタイプである。
それもそのはず。
Conte di Cavourは、第一次世界大戦直前の国際情勢の中でイタリアの戦艦不足を補うために建造されたのだ。
大戦後に元々の艦体が40%しか残らないほどの大改装を受けて第二次世界大戦も参加、その際に大規模改装を受ける予定だったが母国が降伏したためにそれも適わなかったという一面を持つ。
主砲は最初こそマラートに近い30.5cm三連装砲だが、改装して『nuovo(改二)』にまで育て上げれば、高速の雷撃可能な超弩級戦艦となるため、艦これ世界では大きく活躍できるだろう。
余談だが、可愛い見た目に合わず1915年竣工と金剛やガングート級に近い年代の戦艦であるからか、『ワシ』という若干ババ臭……いや年長者のような一人称をすることもある。
「金剛たちに匹敵するベテランか……色々助けてもらうことになるだろうから、年長者の知恵を貸してくれると助かるよ」
「えぇ。ワシに任せなさい!」
CavourをLibeccioの隣に座らせると、今度は最低値でボタンを押す。
炉が動いているのを見たCavourが横の千歳を突いた。
「なによ、この鎮守府の提督はずいぶん剛毅ね」
「幸い資源には余裕がありますから」
千歳の言葉に『そんなものなの』と納得するCavourだった。
炉が止まると、出てきたのは今までより若干スレンダーな、しかし背の高いモデル体型の大淀に近い雰囲気の艦娘だった。ただ、トリコロールの国旗からまたもやフランス艦娘だと判明した。
BearnやDankerkの金髪碧眼というテンプレのような姿とは異なり、茶髪でどちらかというと荒々しそうな雰囲気を放つ顔であった。
「Bonjour。私は自由の国の巡洋艦、Emeel Bertanよ」
「エミール・ベルタン……ん?なんかどっかで聞いたことあるな」
「あぁ、それは我が国の造船技師の名前ね。ニホンで防護巡洋艦の建造に携わったと聞いているわ」
「えっ、そうなのか!?」
造船技師、エミール・ベルタン。
日本海軍黎明期において、清国との対立の際に『定遠級装甲艦』との戦いに備えて建造された、『松島型防護巡洋艦』の設計に携わった人物である。
定遠級の分厚い装甲を抜くことを想定して、松島型防護巡洋艦には単装ではあるが、32cmという当時としてはかなりの大口径砲を搭載していた。
もっとも、清国海軍との一大艦隊決戦であった黄海海戦においてこの巨砲はほとんど当たらなかったうえに故障もあって全く役に立たず、清国海軍そのものは多数存在した副砲・速射砲でタコ殴りにして戦闘不能にしたと言うのが実情であった。
その事実を資料で見た音無は冷や汗を流す。
「……やべーな」
「むっ」
一部からは『イギリスのハッシュ・ハッシュ・クルーザーをより極端に、より変な方向にやらかした日本面』と言われることもある、珍兵器に等しい船だ。
もっとも、当のフランスでは立派な船も多数設計しているため、間違いなく凄腕・辣腕の人物ではあった。
方向性が変な向きへ行ってしまっただけである。
それはさておき。
Emeel Bertanはフランス海軍が建造した軽巡洋艦と言うべき能力の存在だが、ドイツを除く他国の海軍にはあまり見られない特徴がある。
それは、この艦が軽巡洋艦であると同時に『機雷敷設巡洋艦』という特殊な艦種であることだ。
元々フランスは機雷敷設用に巡洋艦を配備していたのだが、その後継として建造されたのが本級である。
航洋性・攻撃力を強化することによって軽巡洋艦としての能力を強化された設計となっている。
驚くべきことに、弱装甲が多い軽巡洋艦としてもかなりの装甲のなさで、司令塔・弾薬庫以外の防御装甲は一切持たないという珍奇な存在であった。
機雷を投下するための軌条は敷設の際に組み立てる方式となっており、必要時に後部甲板に設置される仕組みとなっている。
これだけだとなんだか微妙な能力しか持ち合わせていないように見えるが、この船の恐ろしいところはその出力であった。
公表されている出力は10万2千馬力で34ノットと軽巡洋艦としては分からないでもない数値だが、公試では13万7908馬力、速力39.66ノットという爆速を記録しているのだ。
これは当時の欧州における敷設艦が高速で敵制海権下で強硬敷設するため(日本やアメリカではあまり考えられなかったが)に高速を求められたという事情がある。
そのため、武装自体はそれほど重武装とは言い難い。
要目は以下となる。
○ 耐久 30
○ 装甲 8
○ 回避 40
○ 搭載 2
○ 速力 高速
○ 射程 中
○ 火力 38
○ 雷装 20
○ 対空 18
○ 対潜 25
○ 索敵 8
○ 運 35
装甲は天龍型並みとかなり薄いが、速力による回避力は高く、また火力も最上型の初期に匹敵する高さとなっている。
これで雷装値も備えているのだから、夜戦ともなればかなり活躍するだろう。
しかも、戦後まで活躍していたことから運の数値がかなり高い。
装備は以下となる。
○ 15.2cm三連装砲(火力+6・命中+3・対空+1)
○ 55cm三連装魚雷発射管(雷装+5・命中+1)
○ 無装備(×2)
そしてこの艦最大の特徴として、レベル30で改装することにより『敷設巡洋艦』という艦種に変更され、『甲標的』や『大発動艇』系列の運用が可能という点がある。
機雷のだが、投下用の軌条があることでこういった特徴的な装備が運用可能となっているのだ。
輸送作戦はもちろん、実戦においても夜戦から開始するような海域であれば高い能力を発揮するだろう。
甲標的を運用可能と言うのは、それだけの可能性を秘めているのだ。
さらに、『Wufgerat42』などの対地装備も運用可能なため、陸上型深海棲艦が相手になっても高い能力を発揮してくれるだろう。
そんな彼女は、先ほどから音無のことをかなり挑戦的な目で見ている。
どうやら、提督としての価値を値踏みしているらしい。
イタリアと『速さ』を競い合った船を建造していたフランスの船と言うだけあって、見た目は穏やかそうに見えても意外と負けん気は強いのかもしれない。
だから、音無は穏やかにほほ笑んだ。
「えぇと、エミールって呼んでいいのか?」
「そうね。好きに呼んでちょうだい。でも、私を使うならそれ相応の指揮ができるところを見せて欲しいわね」
音無も彼女から目を逸らさない。
「分かった。お前みたいな素敵なレディに失望されないように、俺も頑張るよ」
声帯の妖精さんは大淀や磯風と同じである。
最後まで目を逸らさなかったことは彼女の眼鏡に適ったらしく、ようやく『フッ』と力を抜いてくれた。
Emeelを同じフランス艦であるBearnとDankerkの間に座らせると、最後の戦艦レシピを回した。
ゴウンゴウンと炉が動いているのを見て、Emeelが先輩であるBearnを突いた。
「先輩、正直に言ってあの提督はすごいの?」
Bearnは難しい顔を見せた。
「そうね……優秀だし、いつも艦娘のことを気にかけてくれる方よ」
「なにか含みがあるように見えるけど……」
言おうかどうか悩んだようだが、Bearnは正直に言うことにした。
「落ち着いて聞いてね。ここにいる千歳さんやScharnhorstさんを始めとして、何人もの艦娘と肉体関係を持っているのよ」
「……」
一瞬Emeelは顔を顰めたが、Bearnはそのことを予測していたからか、『誤解しないで』と釘を刺した。
「どの方も提督のことを強く想っている人たちばかりなの。それにね、ちょっと特殊な事情の人もいるから……」
Bearnは鹵獲改装組のことを説明する。Emeelは最初信じられなかったようだが、話を聞くにつれてわなわなと肩を震わせていた。
「なんて非道なことしやがるのっ!……あっ、すみません」
「いいのよ。私も初めて聞いた時、腸が煮えくり返るかと思ったわ」
どうやらEmeelは時折口調が荒くなる時があるらしい。だが、Bearnは『気にしないで』と笑って済ませた。
一方、炉が停止して中からまた艦娘が出てきた。
どこかScharnhorstやGneisenauに似た雰囲気のドイツ艦娘である。
「Gooten Morgen。私はドイツ海軍巡洋戦艦、Gerbennです」
「えっ、巡洋戦艦?」
巡洋戦艦Gerbenn。
彼女はMortoke級巡洋戦艦の2番艦として建造された弩級戦艦であった。
「えぇ。祖国を離れてトルコへ渡ったのよ。第二次世界大戦は中立状態だったから実戦には参加しなかったけど……地中海では数少ない戦艦として存在感を持っていたんですから」
一番艦のMortokeは第一次世界大戦に参加し、ドッガーバンク沖海戦やユトランド沖海戦に参加し、戦果を挙げている。
しかし、Gerbennは大戦後にトルコに売却され、Yauz Sertan Uluzと改名されたうえで同国海軍の旗艦として運用されることになる。
最初は25.5ノットの速度だったが、改装されたことで28ノットを発揮できる高速戦艦になっているのだ。
このため、Gerbennは改装して改名し、さらにZweiにまで改装することができるという特徴を持つ。
巡洋戦艦ということから装甲が薄いのかと思いきや、ドイツ海軍の船ということもあってかなり打たれ強いのが特徴である。
要目は以下となる。
○ 耐久 63
○ 装甲 55
○ 回避 28
○ 搭載 3
○ 速力 低速(改装後高速に変化)
○ 火力 51
○ 雷装 14
○ 対空 20
○ 索敵 8
○ 運 25
ただの数値だけ見ると、『速力の遅い重巡に近い能力』といった雰囲気である。
ちなみに、雷装値はあるが魚雷発射管の装備はできないあたりは、ガングート級と同じと言える。
運の数値は、第二次世界大戦を生き延びて1950年まで現役にあったことが評価されてのことのようだ。
改装すればさらに高くなる。
装備は以下となる。
○ 28cm連装砲(火力+11・命中+5)(×1)
○ 15cm単装砲(火力+2・命中+2)(×1)
○ 無装備(×1)
最初こそ3スロットだが、こちらも改装することで4スロットに増設される。
先程は重巡に近いと言ったが、実際の能力値的にはConte di Cavourに近いとも言えるだろう。
ただ、一次大戦時の弩級戦艦ということもあって搭載数が1機ずつしかないのは厳しいかもしれない。
実戦に参加したことがなかったということもあってか、Gerbennはどこか戦いたくて仕方がないという雰囲気を放っている。
戦うため、敵艦船と殴り合うための船として生まれてきたのだから、当然と言えば当然かもしれないが。
音無のことを見るGerbennの視線は、先程のEmeelに近い挑戦的な色を見せている。
「ゲーベン。お前は戦いたいか?」
「愚問ですね。戦艦とはそもそも戦うための存在です」
周囲の者には、2人の間に火花が散っているように見えた。
「いつでもってわけにはいかないが、ここは最前線以外の戦場だらけだ。練度を向上させて、装備を整えれば十分に戦えるはず。だから……」
音無がGerbennの肩をしっかりと掴む。
「ただ戦いたいと望むんじゃなくて、どう戦えるかを考えてほしい。時間をかけてもいい。頼めるか?」
しばらく音無の目を見続けていたGerbennだったが、やがて息を吐くと、『失礼しました』と頭を下げた。
どうやら、先ほどのEmeelと同じように音無のことを値踏みしていたようだ。
「Admiral。巡洋戦艦Gerbenn。これより当鎮守府に着任する。私の戦い方を共に考えていただけると幸いだ」
またも一癖も二癖もある者たちが集まったが、音無はしっかりと受け止めた。
きっと、彼女のことも使いこなせるに違いない。
Gerbennの声帯の妖精さんは、イタリアの潜水艦ととある神風型駆逐艦の声と同じである。
なお、この後掃討から帰還した艦隊が連れ帰った艦娘は高雄、清霜、沖波、親潮、春風、浦波、Jervisとなる。
遂にこの鎮守府にカブールおばあちゃん着任です。
え、早すぎないかって?まぁ、パラドックス現象なので……