水上バイクに乗って奇声を上げながら迫りくる汚野を見た空母棲鬼は反撃手段がないこともあってか、かなりギョッとしていた。
汚野提督の後ろには、速力に長けた高速駆逐艦、島風改と嚮導駆逐艦タシュケントの姿が見える。
「どちらも40ノット以上を叩き出す高速艦……なるほど、数より速さを追求したのか」
あっという間に空母棲鬼との距離が縮まっていく。
そして射程に入った瞬間、タシュケントが号令を上げる。
「ウラー‼」
2隻が放った主砲弾は空母棲鬼に命中し、体力を大幅に減らして大破させたが、それでもとどめはさせないようだ。
「同志提督、お願いするよっ‼」
「よしっ‼」
汚野が最大船速まで増速し、空母棲鬼に迫っていく。
「え。な、なにをする気だ!?」
その時、汚野が『とうっ‼』と言いながら跳躍した。
そして、何故か海パンを脱ぎ捨てて股間を曝け出しながら空母棲鬼に突っ込んでいく。
「必殺!ゴールデエエエェェェェンクラアアアアアアアッッッッシュ‼」
空母棲鬼は声にならない叫びをあげたと思ったが、避けることも叶わずに『それ』をモロに食らった。
「うええぇっ……」
「なんと、あんな攻撃がっ‼」
音無は心底イヤそうな顔をしているが、高松はなにか思うところがあったらしく、むしろ目を輝かせている。
空母棲鬼はジタバタと藻掻いていたが、2、3秒後に『プウッ……』という不吉な音の後に女性が晒してはいけないだろうというくらいのえげつない顔を見せ、そのまま海の底へと沈んで行ったのだった……。
「意外と呆気なかったな」
「……うわぁ、あれ喰らいたくねぇ……」
音無は思わずそう呟いていた。後で聞いたところ、ほぼ同じ時刻に音無の親友である日向がなにかを感じたらしい。
汚野は海パンを履いて水上バイクに戻ると、音無の方へ近づいてきた。
「いやぁ、間に合ってよかった。無事でなによりだ、音無君」
「えぇと……言いたいことは空薬莢の数ほどありますが……まずは、助けて下さってありがとうございました」
「なんということはない。君のところのScharnhorst君から『反撃準備が間に合わない可能性があるから救援を求む』と言われていてね。嫌な予感がしたのでおっとり刀で駆け付けたんだ」
「それでも大助かりでした。特に、月光提督が真っ先に来て下さらなかったら制空権が取り戻せなかったでしょう」
「ならば、それは後で本人に直接伝えるといい。そうだ、そろそろ君のところも敵が片付いている頃だろう。すまないが少々お邪魔させてもらえるかな?」
汚野はなにか話をしたいらしいと気付いた音無は『はい』と素早く答えていた。
すると、川内が『ん~?』と言いながら水平線の彼方を見ていた。
「どうした、川内?」
「いや、誰か来るんだけど」
「新手か!?」
流石の汚野も身構える。
そこに現れたのは、露出の多い服に身を包んだ、真っ白な髪の女性だった。
「どこかの鎮守府の艦隊かしら?」
「あ、あぁ。君は、艦娘か?」
艦娘は『コクリ』と頷いた。どうやら、あまり口数の多いタイプではないらしい。
「航空母艦、雲龍、推参しました。提督、よろしくお願いしますね」
「雲龍……確か、日本が建造した戦時量産型の航空母艦、だったっけ?」
雲龍はまたも静かに頷いた。
「そう。私は飛龍型を参考に大量建造可能なように設計された量産型航空母艦の1番艦……よろしく、です」
「ほぉ、これはまた面白い子が来たじゃないか。彼女を連れて行くのだろう?」
「はい、もちろんです。雲龍、一緒に来てくれるか?」
「えぇ。ぜひご一緒させてください」
こうして、空母棲鬼を倒し、無事に雲龍を仲間にした音無たちはタウイタウイ島へと帰るのだった。
島へ帰ると、残敵の掃討を終えたらしい面々が誇らしげに立っていた。
「音無くーん、お疲れさまー‼」
ゆりや戦線メンバーも元気そうに手を振っている。どうやら、戦死者は出なかったらしい。
海の上でも妙高と鳥海、吹雪に北上、摩耶や天龍たちの姿がある。
天龍と龍田に至っては、手持ちの刀と薙刀(のような艤装)で駆逐艦を真っ二つにしたらしく、足元に転がっていた。
「大丈夫か?」
「えぇ。古鷹と木曾が中破させられたけど、それ以外の皆はピンピンしてるわ」
見れば、伊勢と日向も戦っていたらしく、2人で背を預けながら座り込んでいた。
「あら、その子は?」
「雲龍だってさ。新しい仲間だよ」
「へぇ~。こっちも新しい子が何人か来たのよっ。紹介するわね」
現れた艦娘たちが順番に並ぶ。
まずは、褐色肌で露出の多い元気そうな女性だった。
当然、胸元も豊満である。まるで、サンバカーニバルの踊り子のようだ。
「Harrow!私はMinas Zyerais級戦艦の1番艦、Minas Zyeraisよっ。よろしくねっ!」
「えぇと……ブラジルがイギリスに注文した弩級戦艦だったな」
「そうよっ。ドレッドノート級に近い雰囲気だけど、主砲を背負い式に配置しているから、アメリカ風の一面もあるのよっ」
「流石は陽気なサンバの国の船……本当に元気だな」
ブラジルが保有したこの戦艦は、イギリス、アメリカに次ぐ弩級戦艦の保有国となった大きな転換点だった。
もっとも、その後の同国海軍は反乱のこともあって鳴かず飛ばずに近かったが。
「えぇと……おぉ、ガングート級に近いくらいの能力なんだな」
○ 耐久 59
○ 装甲 56
○ 回避 23
○ 搭載 0
○ 速力 低速
○ 射程 長
○ 火力 52
○ 雷装 0
○ 対空 19
○ 対潜 0
○ 索敵 7
○ 運 25
装備は以下となる。
○ 毘式12Inch連装砲
○ 12cm単装砲
○ 無装備
ほぼガングート級に近い能力を持つ戦艦ということと、戦後まで生き延びたこともあってか、それを上回る運の数値を持つ。
「艦隊決戦には使い辛いですけどぉ~、対地攻撃とかならできることはあると思いますぅ~」
どこかギャルっぽい喋り方なのも、ブラジルの陽気さを表しているのかもしれない。
実際、Minas Zyeraisは妹のSun Pauroと共に陸軍の反乱を鎮圧するために出動したことがある……が、この時Minas Zyeraisは砲撃をしなかったという。
ただ、それでも後に反乱されたSun Pauroに砲撃されても生き延びていたこともあり、耐久力も弩級戦艦としては相応にある。
「よし。じゃあ頼むぞ。できることは色々あると思うからな」
対地攻撃ばかりでなくとも、船団護衛のための護衛戦艦という役割もあるはずだ。
ちなみにイラストレーターは長門や陸奥と同じ人で、声帯の妖精さんも長門や陸奥と同じで。
続いて出てきたのは、これまた戦艦のような少女だった。
「グーテンターク。私はDeytschland級装甲艦の3番艦、Admiral・Sheeaと言いますの」
「アドミラル・シェーア……おぉ、ポケット戦艦の3人目か‼」
ドイツ海軍が建造した、通商破壊のための装甲艦。
その末っ子がようやく着任したのだ。
「お姉ちゃん2人も来てるから、後で挨拶するといい」
「まぁ、Danke、Admiral♪」
どちらかと言うと妹のシュペーに近い感じらしく、割と礼儀正しいようだ。
続いても、海外艦の女性だった。
「貴殿がAdmiralか。私はLoyalNavy所属の重巡洋艦、Exceterだ!」
「うぉっ、元気そうなタイプだな……イギリス海軍か」
「あぁ。開戦直後にドイツのPocketBattleShipを追い詰めた巡洋艦とは、なにを隠そう私のことだ‼」
「えっ、確か開戦直後に沈んだポケット戦艦は……シュペーか‼」
そう。Exceterは第二次世界大戦開戦直後の『ラプラタ沖海戦』においてイギリス側の軽巡2隻と共にAdmiral Graf Speeと交戦した。
3対1という数の差がありながらも、Speeはイギリス側に相応の打撃を与えることに成功していた。
しかし、本国へ帰還するのが難しいと判断したSpeeは、ウルグアイにおいて自沈することになってしまう。
つまり、Exceterを始めとした3隻の巡洋艦がポケット戦艦を倒したとも、ポケット戦艦1隻を倒すには巡洋艦級3隻が必要というコストを見出させたのか……難しいところである。
だがその殊勲艦も、1942年のスラバヤ沖海戦において没している。
要目は以下となる。
○ 耐久 40
○ 装甲 39
○ 回避 30
○ 搭載 3
○ 速力 高速
○ 射程 中
○ 火力 35
○ 雷装 15
○ 対空 17
○ 対潜 0
○ 索敵 14
○ 運 18
装備は以下となる。
○ 8Inch連装砲(火力+8・命中+3・対空+2)(×1)
○ 無装備(×1)
○ 無装備(×1)
3対1とは言え、格上の存在であるポケット戦艦相手に激闘を繰り広げて生き延びたことから、多少運が高めとなっている。
だが、それ以外の数値は同じ条約型重巡洋艦のNorthampton級に近いか、それより少し低い数値と言える。
もっとも、普通に運用する上ではそれほど問題にならないだろう。
「そうだったのか……じゃあ、後でシュペーとも挨拶してほしい。昔は敵対していただろうが……これからは共に戦う仲間になるんだからな」
「うむ、そうだな。同じ海に生きる者同士、これからは共に肩を並べて戦っていきたいものだ‼」
堂々としたタイプらしく、一々物言いが仰々しい。
なお、イラストレーターはWarspiteやArk Loyalなどと同じ人、声帯の妖精さんは玉座から大剣を引き抜く精霊の少女や、金髪ツンデレの水使い女性の声で一つ。
音無は新たに出会った艦娘たちを寮へ案内させると、汚野、海野、月光両名の4人を応接間に案内した。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません。新着の艦娘との顔合わせをしていまして」
「気にすることはない。艦娘とのコミュニケーションを怠るようでは、慕われる提督になるなど夢物語だからね」
「その通りだ。艦娘はただの兵器ではない、心を持っているのだからね」
「提督が信頼しているかどうかで、彼女たちのモチベーションも変わる」
こういうところで真顔に、しかも普通に励ましてくれると、『つくづく格好で損してるよなぁ』と心底思う音無であった。音無も座ると、傍らに立っていた金剛が5人分の紅茶を淹れた。それぞれが一口紅茶を啜ると、ティーカップを置いた汚野が口を開いた。
「さて、今日こうして時間を作ってもらったのは、ある人物に関する話をするためだ」
「もしかして……」
「うむ、君と初めて会った時に話した人物、黒野満雄提督についてだ」
この3組の提督と初めて合同演習を行った後、汚野が個人的に話してきた人物、自分の元にいる艦娘をこき使ったり、他の鎮守府から艦娘を強制的に自分の元へ移動させたりするという危険な思考の人物。
「あの時も大まかなお話はお伺いしましたが……」
「元々警察官である私たちが特例で提督に抜擢されたのは、表向きは日本の警察ベスト3と言われた能力を活かして欲しいというものであったが、黒野提督のような危険な人物を調べ検挙することも仕事の1つなのだよ」
いわゆる『MP』、昔の言葉で言えば『憲兵』という奴だ。
正しく『憲兵さんこっちです』案件ということだ。もっとも、本人たちの方が『こいつらお巡りさんです』なのだが。
「つまり、軍の中でも警察活動をしていると?」
「その通りだ」
美茄子が頷くと、月光が繋げる。
「これまでにも、私たちが調べた資料で、大本営の一部も含めた違反者の逮捕に繋がった。しかし、一筋縄ではいかない者もいる。黒野提督もその1人だ」
「以前のお話では、大本営の幹部に取り入って自分の元にいない艦娘……それも希少な能力を持つ、或いはなかなか出現しない艦娘を他の鎮守府から引き抜いていると」
「そうだ。そして、それに反発した数人の提督は黒野提督の裏工作によって指揮権限を剥奪されている」
あまりの身勝手さに、思わず音無は顔を歪めていた。
「なんてワガママなヤツなんだ」
「実際、黒野提督の動き方は『おもちゃを手に入れられなくて苛立っている子供』のようだと私たちも思う。そして、君と出会った後も調査を続けた結果、新しい噂も浮上した。それは、心を与えられた艦娘の人権に関わる問題でもある」
「艦娘の人権?」
「……艦娘の、違法改装だ」
音無は初めて聞かされる単語なので、どういうことだという疑問が顔に出たらしい。海野がゴホンと咳払いをすると、俯きながら説明する。
「本来改装とは、艦娘の能力や装備を向上させて戦いに備えるための作業の1つだ。しかし、提督の一部には艦娘に本来の装備とは関係のない、肉体を己好みに変えるようなことをする輩がいる。その改装を総じて違法改装と呼んでいるのだよ」
「つまり……例えばですけど、つるペタの龍驤や瑞鳳を巨乳にするとか、スレンダー系艦娘のバルジをマシマシにして異様なまでにムチムチに改造する、とかですか?」
金剛はそれを聞いていて『あの2人に聞かれたら攻撃隊でオシオキされそうデース……』と呟いていたが、音無は無視する。
というか、空母娘の攻撃隊でのお仕置きと言えば、瑞鶴が有名なはずなのだが、この鎮守府では瑞鶴が初っ端から音無にデレていることもあって、未だに武装おしおきの憂き目にあったことはない。
一方で音無の推測を聞いた汚野が『その通り』と頷いた。
「実際のところ、黒野提督がどのような部分を改装させているのかは知らん。しかし、君のところの艦娘に施された深海棲艦の鹵獲改装という技術がある以上、それが人間にできないということもないと思っている」
音無は顎に指を当てて『確かに』と小さく呟いた。
「ちなみに、その違法改装を行ったという証拠は?」
「今のところはまだ物証がない。だが、黒野提督の鎮守府にはこの鎮守府にも劣らぬ規模の工廠がある。そして、他の鎮守府から強制異動させられた艦娘の数人は、異動後から表舞台にほとんど姿を見せていない。これは勝手な推測だが……黒野提督の私的なコレクションにされているとすれば、説明がつく」
「そこでだ、音無君。これまで存在が確認されていなかった未知の艦娘を幾人も従えている君の能力を見込んで、我々に協力してもらいたいのだよ」
「なんでしょうか?」
代表して、ということだろう。汚野が口を開いた。
「もうしばらくしたら、でいい。黒野提督を君の鎮守府に招待できないだろうか?」
「それは……理由はいくらでも付けることができますね。先輩である黒野提督に教えを請いたいみたいな話で……」
「うむ。黒野は基本的に鎮守府を離れることがほとんどない。だが、鹵獲改装組を含めて珍しい艦娘が多数着任している君のところから招待されればどうだろうか?」
つまり、黒野提督を珍しい艦娘というエサで鎮守府からおびき出せ、ということであった。
「言い方は悪いが、君のところの艦娘の存在を『囮』に使わせてもらいたいのだ」
「かつてイギリス軍がロンメルを騙すために偽の都市を作ったとか、ハリボテ戦車をたくさん並べてそれに無意味な爆撃を強いたように、ですか?」
「ほぅ。君も色々勉強したんだな」
音無は苦笑いしながら頬を掻いた。
「艦娘と関わる以上、軍事知識がないよりはあるに越したことはありません。それは海戦のことだけでなく、空戦・陸戦も含めてです」
海野が思わず『偉い』と口に出している。
基本的に提督たちの知識は艦娘及びそれにかかわる海戦・空戦のことばかりが基本だが、音無はそこに陸戦の知識、さらに奇策なども色々と考えているようだ。
元々ボルネオ島三大提督はそれぞれ得意分野が特化していたこともあって分担して戦っているが、音無はチャーと合わせてできる限り自分が頑張ろうと思っているのだ。
「(なるほど。こういった努力を怠らない姿勢が、艦娘たちからも称賛される理由ということか……)」
仕事(という名の趣味)の関係上、様々なキャラクターを研究している聖羅たちからすれば、音無の勤勉で貪欲な研究姿勢は素晴らしいとすら思える……彼らの方向性が正しいかどうかはさておき。
「まぁ、そういうことだ。君に負担も強いるうえ、艦娘たちを危険にさらすことにもなる。だが、それでも君ならば、と思わされるのだよ」
「えっ?俺が、ですか?」
「あぁ。私たちはかつて本土にいた頃、とある男とよく行動を共にすることがあった。そいつは……常に破天荒で意地汚く、金儲けばかりをすぐに考えるどうしようもないおバカな奴だった」
「それって……」
海野は音無の顔を見ながら、急に優しい顔になった。
「君は慎重で人想い、そして常に誰かのためにと行動しているが……何故だろうな。なにかがアイツを思わせる雰囲気を放っているんだ」
「確かに。我々の月光もあいつには何度となく酷使され、関わって墜とされたが……なぜか憎めない奴だった」
「君はどこか、その男に似ているのだよ。性質も性格も、見た目も全く似ていないのになぁ……」
そんな彼らの言葉を受け、音無も改めて4人の顔を見直した。
「分かりました。俺でよければ、色々と手伝わせてください」
4人は『おぉ』と声を上げる。音無が引き受けてくれたことがとても嬉しかったようだ。
「幸い、ウチには忍びのような技を持つ奴がいます。それに、ウチは『理不尽』ってやつを放っておけない、アホ揃いですので」
音無のニヤッとした顔に、思わず『プッ』と吹き出してしまう汚野たちだった。
「ハッハッハッハッハ……いやぁ、これだから若者は面白い」
「あぁ。これは楽しみになってきたぞ」
「我々も全面的にバックアップするつもりだ」
「存分に頼ってくれたまえ」
頼もしい(見た目はさておき)男たちの言葉に、音無も『ありがとうございます』と素直に返すことができた。
「そこでなんですが……俺たちは北方海域を攻略して、西方海域へ乗り出します。そこで、ここから続けて何名かの先輩提督と顔を合わせて、彼らの話を聞きたいと思います」
「なるほど。黒野提督はその一環として会う、ということか」
「できますか?」
汚野は『うむ』と頷いて提督リストらしいメモ帳を見た。
「ならば、私の知り合いで優秀な提督がいるのだが、この3人と会ってみるといい。この方ならば、君の見識をさらに広げてくれるだろう。連絡は私の方からしておく。ぜひ会ってみたまえ」
「ありがとうございます。ちなみに……どのような方かは聞いてもいいですか?」
4人は顔を見合わせたが、すぐに向き直った。
「3人とも元警察官だ。3人のうち2人は定年退職した後、ニュージーランドへ移住した。一時日本へ強制送還されたが、深海棲艦との戦闘が始まり、ニュージーランドを警護する提督として抜擢された。片やじっくりじわじわした攻め方が得意で、片や一気呵成な水雷戦法を得意とする男たちだ」
「へぇ……真逆なんですね」
「だが彼らは不思議とウマが合うらしく、本土で警察官をしていた頃はコンビを組んでいたそうだ」
コンビ、と聞いて自分と日向(ひなた)か、或いは自分と直井のようなものだろうかと勝手に想像してみた。
「もう1人はトラック諸島に着任している人物だが……この方は我々を上回る人物だとすら思っている」
「えっ、そんなにすごいんですか?」
音無からすれば、見た目で損しているとはいえボルネオ島三大提督も十分にすごいと思う。
「そうだな……我々を足して4で割らない男、とでも言うべきか」
そんな表現をされてしまうと、どれだけ危ないタイプなのかと逆に危機感を覚えてしまう。
だが、少なくとも日本において警察官トップ3と言われたこの4人がそこまで言うということは、間違いなく優秀な人物なのだろう。
「なにせその人は階級こそ警部止まりだったが、世界を股にかけて捜査活動を行っていた。各国語を流暢に操り、武芸達者にして上官の不正も許さず、そしてなんと言っても的確な指揮を執る。我々はあの方を見て初めて『負けた』と思わされたほどだ」
この4人にそこまで言わせるとは、いったいどれほどの人物なのか……気になって仕方がない音無だった。
「では改めて、アポは私の方から取っておく。ニュージーランドもトラック諸島も最近は平和だ。話をしたいと言えば喜んできてくれるだろう」
「ありがとうございます」
一通り話を終えると、それを見計らったかのように扉が開き、比叡が顔を出した。
「司令官、ボルネオ島艦娘の皆さんの補給が終わりました~」
「ありがとう、比叡。俺はこれから4人をお送りしてくるから、ここで金剛とお茶飲んでていいぞ」
「えぇ、いいんですか!?やったぁ~‼」
「ただし、飲み過ぎて『夜中にトイレ行きたい』なんてことにはならないようにな」
「ひえ~!」
「(なんておバカでカワイイ奴なんだろうか)」
平常運転な比叡を置いて、音無は4人を見送るために桟橋へ出た。
「本当に、本日はありがとうございました」
「なぁに、気にするな。こちらも君のところから渡される鋼材とボーキサイトには、かなり世話になっているからな」
「お陰で活動がしやすいのは助かる。この近辺で深海棲艦の活動が低調になりつつあるのも、君のお陰かもしれんな」
「君が成人していれば、ぜひ一献やりたいところだ」
「良い酒があるんだよな、これが」
音無もここまで来たら日本の法律は関係ないかとこっそり千歳と一緒に日本酒を飲むようになっていたのだが、それは黙っておくことにした。
まぁ、この4人ならば『平時ならともかく、今は有事だから』と言って不問にしてくれそうな気もするが。
「では、私たちはこれで失礼するよ」
「また会おう!」
「今度来る3人にもよろしく頼む!」
「また是非手合わせをしたいと言っていた、とな」
「自分で言って下さいよ」
そんなことを言いつつ、音無もニコリと微笑んでいた。
4人はそれぞれ自分の乗ってきたもので帰路につくのだった。
「音無君、今回は本当に助かったわね」
「あぁ。前も言ったけど、変態だがいい人たちだ」
横を見ると、彼らを模した妖精さん……『夜間戦闘機 月光(超・熟練)』、『蛟竜(超・熟練)』、『特大発動艇+戦車11連隊(超・熟練)』の妖精さんたちも『サヨナラー』と手を振っていた。
音無は心の中で改めて、艦娘の在り方を踏みにじる黒野提督に挑むことを決意した。
そのためにも、先輩提督たちから色々と話を聞かなければなるまい。
と、言うわけで次回は新しい提督が登場します。
と言ってもオリキャラではなく、ドラマやアニメのキャラを提督化した存在ですが……ま、大規模クロスオーバーなのでこれも1つと思ってください。
また来週!