今回は新しい登場人物ですが……このタイトルを見て分かった人がいたら見てみたいですね
翌朝、敵が再度奇襲してくる可能性を考慮して警戒態勢をいつもの倍に増やしていたのだが、流石に2度の襲撃はなかったようだ。
「ふぅっ……普通に朝を迎えられるって、素晴らしいんだなぁ」
音無の言葉に、隣で起き上がったGrafが頷いていた。
「まさか私たちが動けない間に襲撃を受けるとは思わなかった……Admiral。すまなかった。そんな大事な時に動けなくて……」
だが、音無はGrafを抱き寄せるとおもむろにキスをした。
「気にすることはないさ。お前たちが動けなくなるほどに激しいことをしたのは俺だからな。俺にも責任がある」
「Admiral……Danke」
Grafは音無の胸板に頭を預け、愛おしげに頬ずりするのだった。
ちなみに、鈴谷はと言うと『えへへ~……お腹パンパンだよぉ~』などと奇襲の大騒ぎの間も寝ぼけっぱなしだったという。
流石の音無も彼女の肝の太さには呆れるほかなかった。
着替えて食堂へ向かうと、既に多数の艦娘と戦線メンバーが朝食を摂っていた。
「おはよう、皆」
「あっ、提督。おはよう~」
「おはよう、提督」
真っ先に挨拶してきたのは伊勢と日向の2人。見れば、既にドカ盛りの丼を抱えている。
「今日の朝は卵丼だって」
「昨夜の攻撃で冷蔵庫がやられて、卵と玉ねぎを優先的に消費する必要があったそうだ」
「世知辛い話だな。ギルドの連中に冷蔵庫の修理を頼むよ」
「そういうことなら任せな~」
隅の方からギルドの男たちが声を上げると、音無も手を振ってそれに応えるのだった。
「鳳翔さん、おはよう」
「おはようございます、提督。さぁ、召し上がって下さい」
見れば、味噌汁にも玉ねぎがたっぷりと入っている。
他にも野菜炒めが小鉢に乗っており、中々豪華な朝ご飯だ。
「血液サラサラメニューだな。健康には良さそうだ」
「はい。ですので今日もいっぱい食べて、元気に頑張ってくださいね」
穏やかに微笑まれては、音無も『はい。頑張ります』と返すしかできないのだった。
Grafと共に並んで座ると、その隣に昨夜キスをしてきた大井が座ってきた。
「あっ、大井……おはよう」
「おはようございます。提督」
一見するといつも通りに見えるが、急に『ありがとうございました』と呟いた。
「え?」
「昨夜……守ろうとしてくれて、本当に嬉しかったです」
「いや、なんていうか……体が勝手に動いてたよ」
こちらを見た大井は『もう、そういうところですよっ』と言って笑っていた。
そう言うと自身も食事を始めた。
「……今夜、お部屋にお邪魔しますね」
「ブフッ……ふへっ?」
まるで決定事項であるかのようにスパッと言った大井に、思わず音無は間抜けな返事しかできなかった。
「あら、私ではダメですか?」
「いやっ、ダメってわけじゃないけど……えぇと、北上のことはいいのか?」
「はい?北上さんのことはもちろん好きですよ?」
「えぇと、だから、その……」
すると、大井が『プッ』と噴き出した。
「提督と同じですよ。提督が私たち艦娘の複数を愛して下さっているように、私は北上さんのことが好きですが……それと同じくらいに、提督のことも愛しているのですよ」
「そ、そうか……そういうことか」
「もうっ。提督は今や『鎮守府の種馬』なんですから、もっと堂々としていてください」
「ちょっと待て!なんだその『鎮守府の種馬』ってのは‼」
「え?皆そう呼んでますよ。『提督は鎮守府の種馬だ』って」
どこぞのスイーパーにして『新宿の種馬』のようなあだ名が定着してしまっていた。
「そうか……俺が……種馬……間違っちゃいないな……ハハハハハハ……」
音無が乾いた笑いを浮かべたのを見て、食堂の隅っこから『やっぱマズかったかなぁ……』と呟く秋雲の姿が妙高の目に入る。
どうやら、マンガや同人誌などが好きな彼女の発案だったようだ。
それを聞いた妙高が『あなたのせいですかー‼』と叫ぶや否や、どこから取り出したのか『100t』と書かれたハンマーを振り上げて追いかけ始めるのだった。
今日も鎮守府は平和である。
「ぎえ~!見てないで助けてよ皆~‼」
「天誅~‼」
「そこまでやるとはー‼」
……秋雲を除いて。
食事を終えると、講堂で今日の予定を話すことにした。
「今日は海域への出撃はしない。遠征と演習のみの出撃とし、それ以外の艦娘は鎮守府及び周辺の修繕を手伝うこととする」
すると、熊野丸が手を挙げた。
「では、我々特務艦は如何しましょうか?」
「そうだな……入れ替わり立ち代わりになるが、あきつ丸たちにも遠征してもらう。護衛戦艦や護衛向けの空母も交代で出撃だ」
「はっ。心得ました!」
「場合によっては潜水艦も出没するかもしれない。皆、十分に注意してくれ」
音無艦隊の場合、他の鎮守府にはないThorやKormoranなどの特設巡洋艦、しまね丸などの特設油槽船などを利用することで資源の輸送量が増えるのも特徴である。
音無はこういった特務艦娘たちが、いずれ来るであろう輸送任務などで役に立つだろうと考えていた。
音無が執務室へ戻ると、秘書艦の愛宕が『ぱんぱかぱーん』と言って入ってきた。
「どうした、愛宕?」
「はい~。先程ボルネオ島から連絡が来ました~。明後日に~、ニュージーランドとトラック諸島から提督3名が来られるそうです~」
のんびりと間延びしたぽわぽわ系の口調だが、これで意外としっかり仕事をしてくれるのである。
書類仕事もできるし、なにか電話があった時(ほぼボルネオ島からだが)もちゃんと対応してくれているのだ。
だが、今や肉欲に満ち溢れた男としてはどうしても『胸がぱんぱかぱーん』と言われるほどの巨乳に目が行ってしまう。
すると、書類仕事を手伝っていた大淀と、たまたま空母の演習スケジュールを提出しに来ていた龍驤がジト目でこちらを睨んできた。
「提督。程々になさってください」
「あんたなぁ、いっつもいっつも乳ばかり……これだからおっぱい星人は」
「ぐぅ……今となってはあまり言い返せないな……」
如月のようなちっぱいもいるにはいるが、鹵獲改装組を含めて巨乳・爆乳率がかなり高いのだから、仕方ないと言えば仕方ない。
その夜……
「はぁ、んふぅ、提督、大井は、気持ちいいですか?」
ベッドで仰向けになっている音無の腰の上に、生まれたままの姿になっている大井が跨り、音無の腰の主砲を自分の膣に挿入して腰を振っていた。
「ああ、軽巡洋艦クラスはやっぱり締まりがいいな。空母や重巡の包む感触もいいけど、俺のモノにマッサージしてもらってるみたいで気持ちいい」
音無は大井と自分の指を絡めて恋人繋ぎにして姿勢を安定させ、自分で腰を突き上げる。
「あっ、あん♡んひぃっ♡いいですっ!提督の魚雷が、大井の奥まで突入してきますぅっ♡」
「空母や重巡だと主砲で、お前は魚雷か。まあ、例えも千差万別でいいか」
音無が『ドン、ドン』と突き上げると、球磨型軽巡洋艦の中では2番目に大きい胸部装甲がプルプルと弾む。すると、大井の後ろから伸びた手が胸を鷲掴みにしてきた。
「ひゃんっ!ちょ、大淀さん!?」
大井の胸を掴んできたのは、一緒に寝室へ来ていた大淀だった。
「全く、元は同じ軽巡なのに……なんで天龍さんと言いあなたと言い、こう膨らんでいてハリもあって……ああもう憎らしいはずなのに触り心地いいですねぇっ」
大淀が指を広げて揉んだり、乳首を摘まんで引っ張ったりすると、その度に『あぁ、あん♡』と大井が喘ぎ声を挙げ、膣をキュッと締める。
「ああっ!大井、もう……射精(で)るっ!」
「あぁあぁあああぁぁんっ♡」
――ぐちゅっ!どびゅるるるるるるっ!――
音無の全身が震えた直後、大井の膣内に明らかに収まりきらない量の精液が子宮に向けて吐き出された。『ボコッ、ボコッ』と膨れ上がる大井の腹を音無の横で見ていた伊勢が音無の主砲を抜き、大井の膣口に唇を這わせた。
『ジュルジュル』と音を立てて精液を吸い上げていくと、一瞬ではち切れそうなほど膨らんだ腹があっという間に元に戻っていった。結局、いきなり大井に負担をかけたお仕置きに、今度は大淀が大量射精をされるのだった。
抱き合った後にタオルケットを羽織りながら、音無は大井をそっと抱いていた。
「いきなりあんなにキツイ思いさせて、悪かったな」
「いいんです。提督を一杯感じられたので、むしろ嬉しかったです。ただ出されるだけより、体にはっきり感じるくらい一杯出してもらえる方が燃えます。私も40門の酸素魚雷一斉射は燃えますし」
「そっか、魚雷の全射線発射はテンション上がるって駆逐艦や軽巡の皆は言ってたっけ」
「実際、抱くだけ抱いておいて射精がショボいと女性の心が萎えるなんて一部の戦線の女性の方々もおっしゃってましたね」
「聞いたことはないけど、もしかして前世の彼氏でそういう経験したやつもいたのかな……」
大淀たちとの会話に相槌を打ちながらも、音無は考え事をしていた。
「汚野提督が話していた、3人の提督の話?」
脇で横になっている伊勢が尋ねると、音無は頷いた。
「あの人たちが敵わないと思うってなったら、相当の実力者だと思う。俺の態度や対応1つで、その人たちとの今後に関わるってことだ。気を引き締めないと」
すると、伊勢が音無の体を抱え、自分を押し倒す格好にさせた。
「変に構えなくていいと思いますよ。提督はいつも通りの自分でいたから、汚野提督たちにも受け入れてもらえたと思います。その方たちにも、いつもの提督でいればいいんです」
「伊勢……」
「だからっ♡」
伊勢は体をぐるりと半周させてうつ伏せになると、たっぷりと肉の付いた尻を突き出した。
「いつも通り、いっぱい出して欲しいな」
「……ったく、調子のいいやつだぜ」
「あんっ♡」
音無はそう言いながらも、伊勢の膣と尻をたっぷりと犯すのだった。
翌日もまた、演習と遠征で英気を養い、その夜には日向とScharnhorst、そして瑞鶴の3人を抱き、訪問の日を迎えた。
「いよいよニュージーランドとトラック諸島の提督3人が来るか……そろそろだったな、摩耶」
今日の秘書艦は摩耶だった。スケジュール管理も今日は彼女の仕事である。ゆりを含めた戦線メンバーで迎えられる者も待機している。
「あぁ。時間的にはそろそろのはずだけど……ん、電探室より報告。電探に反応だ」
水上電探によると、船2隻がこちらへ向かっているとのことだった。
まず到着したのは、真っ白なモーターボートだった。
タラップが下りてきたが、音無やゆりたちは身構える。
なにせ、あの三大提督が『敵わない』と言わしめるほどの人物。どれほど『ヤバい』のか……そう思うと、自然と体が強張ってしまうのだ。
タラップから降りてきたのは、黒いスーツに身を包みサングラスをかけた2人の男だった。あの汚野たちが自分たちでも敵わないと言うほどだったので、てっきり服装も奇抜な人物だと思っていた。
だが、服装は一般的でもその纏っているオーラからしてただ者ではなかった。
歴戦の死んだ世界戦線のメンバーをして息を呑むほどに、強者のオーラが出ていたのだ。
2人の後ろには、玉座のような艤装に座った艦娘と、音無のところにもいる天龍……ただし上着を脱ぎさらにたわわになった胸が強調された姿の天龍が付き従っていた。
座っている艦娘を見たチャーが、ボソリと音無に耳打ちした。
「あの艦娘はWarspite。イギリスが第一次世界大戦の最中に建造したQueen Elizabeth級戦艦の2番艦だ」
Warspite
第一次・第二次両大戦に参加し、重大な損傷を負いながらも生き延びた幸運艦である。
機関が老朽化しながらも立派に航行したことから、『オールド・レディもスカートを上げれば走れる』と賛辞を受けており、以後は親しみを込めて『オールド・レディ』と呼ばれるようになった。
第一次世界大戦のユトランド沖海戦に参加したのが初陣だが、第二次世界大戦時にはドイツの誘導爆弾『フリッツX』を喰らって大破したが、それでも生き延びている幸運の持ち主であった。
「へぇ……すごい船なんだな」
「ま、ウチにいるTexasも同じ両大戦を生き延びたという点では同じだし、それどころか記念艦として保存されていることを考えると、そっちの方が大概すごいかもな。しかも、あの方々の後ろに控えている天龍、あれはif改装を実現した天龍の改二だ」
「ウチの天龍も、もう改二だったよな?」
「ああ、それまでの14cm単装砲を撤廃し、高角砲を大量に配備した艦に改装されるようになっただろう?」
男たちは音無の前に立つ。
「初めまして。私はこの鎮守府を預かる音無と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
「気にするな。これは俺たちにとっても大事なことだからな」
「そういうこと。俺たちだって、まだまだ提督としちゃぁ」
「「見習いレベルかなぁ」」
途中から合わせたはずなのに、まるで打ち合わせたかのようにセリフがあっていた。茫然としている音無を見て、彼らはニヒルに笑っている。見たところは50代前半くらいに見えるが、汚野の事前情報によれば、年齢は既に70後半に差し掛かるという。
海野提督ですら60になるかどうかということらしいので、それよりも年上なのだ。若々しい上に元気すぎる。
「自己紹介が遅れたな。俺はニュージーランド南部を守る提督、鷹山敏樹だ」
「俺は大下勇次。ニュージーランドの北部を預かってるぜ」
「鷹山さんと大下さん、ですね。よろしくお願いします」
すると、鷹山がまた笑った。
「そんな硬くならなくていいって。気軽にぃ」
「ダンディー鷹山!」
大下を名乗る提督が急に大きな身振りをすると、鷹山が大仰なポーズをとる。
「エーンドゥ、セクシー……大下、って呼んでくれ」
クルリと回ってキメポーズを取った大下を見て、また音無たちは茫然とした。
「は、はぁ?」
「あ、嫌ならタカさん大下さんでいいから」
「「最初に言って下さぁいっ!」」
今度は本気でツッコミを入れた音無と、久しぶりにセリフを言う日向(ひなた)であった。2人の息の合いようを見て、大下たちはにやにやと笑った。
「いやいや、悪いな。今どきの若いヤツをあまり知らなくて、ちょっと反応を見たくなった」
「女の行先の次に気になるの」
「世界より女っ!?」
「目の前の女も助けられない奴が、世界を救うなんて大袈裟なこと言えるか?」
鷹山のいうことも一理あったので、音無は『おっしゃる通りです』と頭を下げた。
「改めて、鷹山と大下だ。2人とも、神奈川県警横浜港署の刑事だった。ハマの凶悪犯にはそれなりに恐れられたもんさ」
横浜港署。かつてこの2人が所属し、当時日本で猛威を振るっていた暴力団『銀星会』との死闘を繰り広げた警察署であった。
もっとも、そんな呼び方に馴染みのない音無は『ハマ?』と聞き返していた。
「あれ?あまり馴染みないか?」
「俺、生まれも育ちも北の方で……東北より下もほとんど縁がなくて。土地の名前を略す習慣とかもあまり……」
「そっか、だったら、女に喜ばれる呼び方考えとけ。あだ名は恋の入り口」
「キスは甘口」
「破局は辛口」
「そ、そんなあぶない駆け引きでいいんですか?」
「だって」
「俺たち」
「「『あぶない刑事(デカ)』だし」」
つくづく息ピッタリだった。
そんな2人を見て、Warspiteも天龍も笑いをこらえるのに必死らしい。
だが、それは戦線メンバー以上に修羅場をくぐってきた男たちだからこそ醸し出せるものだったのかもしれない、と音無は考えていた。
そして、音無もそこまで聞いてようやく彼らが何者であるかを理解した。
彼らは1980年代に放送されていたトレンディドラマ『あぶない刑事』の主人公2人、『タカとユージ』だったのだ。
そんな男たちに驚かされていると、もう1隻モーターボートが停泊した。
中から出てきたのは、カーキ色のトレンチコートを身に着けた男性だった。
「おぉ、ここが今のタウイタウイか。ずいぶんと賑やかになったもんだなぁ」
「提督、まず挨拶しろって」
「おぉ、すまんな木曾」
どうやら、この提督の秘書艦は木曾らしい。まるで娘でも相手にしているかのような雰囲気に、先ほどの鷹山たちとは全く違うものを感じる音無だった。
「遅れてすまんな。ワシはトラック諸島を預かる銭形幸一という。よろしくな」
鷹山たちと比べれば腰も低く、穏やかな物言いである。
だがそれだけに、音無は底知れないものを感じていた。
「音無です。本日は色々とご教授いただければと思います」
「アッハッハ。そう硬くならんでいいよ。ワシだって適正あるからってことで急に呼ばれちまったんだから」
「そ、そうだったんですか?」
「あぁ。それさえなけりゃ、今でもルパンの奴を追いかけていたんだが……」
ルパン、という名前を聞き、音無は思わず背筋に寒気が走った。
ルパンという男を追う銭形という男。
彼こそ世紀の大泥棒、『ルパン三世』を追う国際警察・ICPOの銭形警部だったのだ。
それは、音無も幼い頃に妹と共に見たアニメのキャラクターそのものだったのだ。
「(なんで汚野提督たちといい、この世界は俺たちがアニメやドラマのキャラと認識している人たちが実在しているんだろうか……)」
「これも、チャーの言うパラドックスの影響かもね」
ゆりが音無の耳元で呟くと、『頭ん中で渦巻いてるわぁ』と頭を抱える音無だった。
ひとまず3人を応接室まで案内する。
3人が椅子に座ると、控えていた千歳がコーヒーを淹れてくれた。
「どうぞ、コーヒー入りました」
本当であれば金剛に紅茶を淹れてもらうのがいいのかもしれないのだが、音無のこだわりで最も関係の深い千歳に飲み物を淹れてもらったのだ。
「ありがとう」
「サンキュー、ベイビー」
「や、どうもどうも」
三者三様、それぞれの反応でコーヒーを受け取ると、美味しそうに飲み始めた。
「本日来てもらったのは他でもありません。私は北方海域を攻略し、新たな海域に乗り出そうと考えています。しかし、その中で艦娘との関係性がこれまでのままでいいのかなどを考えておりました」
これは音無の本心だ。すっかり体を交えて若い欲望をぶつけ合うことが当たり前になっているが、果たしてそれが正しいのかどうか、自分や戦線メンバーの意見だけでなく、別の人……それも長年生きているベテランたちの意見を聞きたくなったのだ。
すると、真っ先に口を開いたのは、意外にも銭形だった。
彼は帽子を脱ぐと、頭をボリボリと掻きながら苦笑いしていた。
「正直言ってワシには細かいところまではよく分からん。しかしだな、艦娘の皆との接し方などは人それぞれではないかと思っているからな。別に複数の子と肉体関係があってもいいのではないかな?」
「そうだな。銭形さんの言う通りだと思うぜ。俺なんかはオールド・レディ一筋だが、ユージは天龍と龍田の姉妹2人と関係持ってるからな」
「まぁねっ」
タカとユージの言葉に『うふふっ』、『へへっ』と笑うWarspiteと天龍。
『70代後半になっても女性を抱けるとかすごい生命力だなぁ』と音無は思うが、一晩で何人もの艦娘を抱き続けられる音無も人のことは言えないだろう。
その笑みはとても眩しく見える。千歳が音無に『私たちと同じ眼をしてますよ』と耳打ちしてくれた。
「ワシからすれば艦娘は娘っ子みたいなもんだし、鷹山君や大下君は普通に女性として扱っとる。だから、固い考えに囚われんでもいいのではないか?」
「銭形さん……」
銭形は隣に立つ木曾の頭を撫でながら続ける。木曾も全くイヤそうではなく、むしろ『えへら~』と言わんばかりのゆるい表情であった。
「ワシが以前ルパンを追っていた時には、あいつと対峙するために柔軟に物事を考え時間が必要になることが多かった。ルパンの専任捜査官になれたのも、あいつに対する情熱が世間に認められたからだと思っとる」
本人は謙遜しているが、銭形はルパンのことを誰よりも理解していると言える。これまで、銭形は何度もルパンを語る犯罪に携わったことがある。しかし、ルパンを何度も追いかけてきたからこそ、それが偽装であると確信し、逮捕してこられたのだ。
本人も言っていることだが、ある意味彼もまた『ルパンを愛している』のである。
ちなみに、後輩で同じようにルパンを追っていたICPOの八咫烏も、今は日本に留まり銭形から上がってくる報告をまとめて上層部に報告する役目を担っている。
「俺だってそうさ。デカを辞める直前に出会った女と深い仲になったが……その女も、最後の事件に関わって死んだ」
「えっ……」
鷹山はかつて、浜辺夏海という女を心から愛した。しかし、ブラジル系マフィアの大幹部、キョウイチ・ガルシアと関わって、鷹山の目の前で死んだのだ。
「だからこそ……だからこそ、かな。もう一度心から惚れた女は、俺が死ぬまで大事にしてやりたいって思ってるのさ」
「まぁ、Admiral……嬉しいです」
横に座っていたWarspiteが、微笑みながら鷹山の手を握る。鷹山も彼女のことを優しい目で見ており、深く愛しているのが窺えた。
一方の大下はもっと情熱的で、天龍の腰を抱き寄せている。
「俺はさ、タカと一緒にニュージーランドで提督始めたんだけど……実はな、初めての建造で出会ったのがこいつなんだ」
「あっ、そうだったんですか」
音無のところで言う神通と同じ立場である。
まだ音無は神通と肉体関係を持ってはいないが、もし彼女が望む時が来るのであれば、その時はたっぷり愛してあげるつもりだった。
「その直後に初めての出撃で龍田に出会ったんだ。いや~、もうさ。運命ってやつ感じちゃったんだよね~。もうビビビビビビビビビビビビビビッ、と」
そう言いながらさりげなく天龍の乳首部分を『ポチッとな』する大下に天龍は『おいコラっ』と言いつつも笑顔で返し、鷹山は『長いよ』と言ってツッコんだ。
「(衆人環視の中で平然とセクハラ……でも、それだけ深い仲、ってことか)」
上品そうに見える鷹山と、どちらかと言えばサバサバした大下。確かに真逆と言えば真逆だが、それだけに互いにない所を認め合い、惹かれ合っているのかもしれない。
「(なるほどな。『真の相棒』っていうのはこの2人の関係のようなことを言うのかもしれないな……)」
すると、部屋をノックする音が聞こえる。
音無が『どうぞ』と言うと、Hornetがなにかを持ってきたようだ。
「失礼するわね。アップルパイを焼いたのだけど、いかがかしら?」
「おぉ、そりゃいい。皆さんもいかがです?」
焼きたてのアップルパイを見て、3提督と秘書艦たちの顔も解れた。
「やぁ、すまんねぇ。昔は甘いもんなんてあんパンくらいしか食っとらんかったが、世界中回るようになって食べるようになってからは色々好きになったよ」
「コーヒーとよく合いそうだ。ありがとう」
「ん~、良い香りぃ♪」
またも三者三様だが、Hornetが切り分けたアップルパイを嬉しそうに食べ始める。
「んっ、美味いなぁ。これ、ハチミツがきいてるねぇ」
「流石銭形さん、舌も肥えてますね」
「インターポールでの世界巡りは伊達じゃない、っと」
Hornetは千歳がコーヒーを淹れたと聞いていたので、敢えてハチミツとバターで甘みとまろやかさを強めにしたアップルパイを出してくれたのだ。
流石、と言うべきである。
一方、食べながら銭形がまた口を開く。
「まぁ、なんだ。色々言わせてもらったが……君が思う通りに、艦娘と接してやればいいと思うよ」
「お前と千歳たちを見れば、艦娘を大事にしているってのはよく分かるからな」
「別に焦る必要はないんじゃない?」
「そう、でしょうか?」
銭形は優しく微笑んでいる。
「君のところにいる鹵獲改装組の話も、汚野君たちから聞いている」
「汚野提督から?」
銭形が『あぁ』と頷いた。
「彼女たちの存在は大本営でも問題になっていてな。こんな現象は、大本営の記録でも今まで発生したことがなかった」
「大本営には特殊性を鑑みて、彼女たちの性格の変化などについては、報告していなかったんですが……」
音無はその点を追及されるのではないかと警戒したが、銭形は慌てて手を振った。
「いや、責任を問おうというんじゃないよ。大本営もむしろ君の判断を支持してくれているんだ」
「大本営じゃ、他にもこんな艦娘が現れるんじゃないかとピリピリしているんだ」
「君のところにはシャルちゃんがいてくれたから先に気付くことができたけど……他の海域で仮にそんな艦娘が出現していて、気付かずに轟沈させられていたらって思うとな……」
「正直言って、苦いモンがこみ上げてきやがる」
鷹山と大下も先程までの飄々とした様子が消え、『ピリッ』という空気を放つ戦士のモノに変わっていた。
「ワシらも基本的に女性は大事にするタイプのつもりだ。だから……こんな悪党染みたマネは許せんのだ」
銭形も明らかに怒りを燃やしており、彼らもまた、形や立場は違えども艦娘を大事にしていることが窺える。
「だから、な。君はそのままでいればいいと思うよ」
「そのままでいいんだよ」
「グ○ーンだよっ」
「なんで炭酸系飲料?」
それでも3人はいい笑顔を見せていた。
そして、最後に顔を股真面目なものに変えた。
「黒野と対峙すると聞いたぞ。ワシらでできることがあれば言ってくれ」
「俺たちにとってもあいつは放っておけないヤロウだ」
「ちょっとでも隙を見せたなら、俺たちが食らいつく、ってね」
これは3人だけではない。汚野提督たちボルネオ島三大提督も同じ気持ちだろう。
南方のこの海域を任されている提督に元警察官が多いのも、大本営の目が届きにくいところをカバーする為でもあるのだろうと音無はアタリを付けていた。
なので、自分やゆりたちだけでは限界があることも、彼らの力を借りればうまくいくことがあるに違いないと改めて理解した。
彼らは今日から数日滞在し、演習を含めて音無のことを視察することになっている。
「はい。どうかよろしくお願いします」
3人はそれぞれ宿舎となる建物に向かっていったが、音無は彼らを見送りながら、千歳と話し始めた。
「千歳。俺は絶対にお前たちを守ってみせる」
「提督……はい。ありがとうございます」
……はい、『あぶない刑事』と『銭形警部』でした。
ちなみに、銭形提督はpixivのとある方のネタを参考にしています。
来週もよろしく!