今週は……この作品特有のネタ塗れの1つがでることになります。
皆さんどうぞ、大いに笑ってください
榛名の修復が終わったことで、艦隊は再び出撃する用意が整った。
せっかく改装できたので、今度は北上に旗艦を任せることにした。
「オッケー。任せて―」
さらに、千歳と千代田もレベルが15を超えたので、軽空母へ改装することになった。
「ダイエットして空母になった千歳です。足も速くなったの。うふふ、本でも出そうかしら?」
「空母になった千代田です。ぜひ千歳お姉と一緒に、機動部隊を編成してね?」
「おぉ。確かに少しスリムになったような……でもあの足のムチムチ感も健康的でよかった気がするんだが……ま、足が速くなったならそれもいいのかな?」
そんな音無のギリギリな発言を聞きながら、千歳と千代田はひそひそと話をする。
「提督ってば、絶対に医学生候補としての視点で言ってますよね」
「ホント。少しはお姉の女性らしさとか可愛さとか豊満さを見ればいいのに……」
そんな千歳と千代田から外した甲標的を北上に装備してやると、北上は満足そうだった。
「『アレ』はもう嫌だけど、こんな装備なら大歓迎だよ~」
「アレってなんだ?」
「え、提督知らないの~?」
すると、チャーが音無の肩をつついた。
「北上は重雷装巡洋艦から、特攻兵器『回天』搭載母艦に変更させられた経歴があるんだ。『甲標的』を搭載できるのは、その影響だろうって言われている」
「特攻兵器って……じゃあ」
「と言っても、戦況が悪化しすぎて投入すらされず終戦まで生き残ったんだがな」
「でもさ~。一度とはいえそんな命を粗末にするようなモン、積んだのは嫌な思い出だよ」
そればかりは本当に嫌そうに言う北上だった。
だからこそ、音無はそんな北上の頭を撫でてやった。
「そうだな。俺もそんなものをお前に載せたくはない。だから、使わなくて済むように頑張ろうな?」
北上は上目で音無を見ると、ちょっと顔を赤らめながら『うん』と短く言った。
それを見た大井が『提督ったら……北上さんまで口説いて……』と怨嗟の声を吐いている。
空母となった千歳たちの装備を変更してやり、編成は以下となる。
○ 北上 甲標的×2
○ 鈴谷 15.5cm三連装砲・零式水上偵察機・五連装(酸素)魚雷発射管
○ 摩耶 20.3cm連装砲・15.5cm三連装砲(副砲)・零式水上観測機
○ 榛名 試製35.6cm三連装砲・零式水上観測機・15.2cm単装砲
○ 千歳航 彗星×21・天山×9・零式艦戦21型×6
○ 千代田航 千歳航と同じ
「相手に空母がいないから、対空数値が1でもあれば制空権は確保できる。だから零式艦戦21型を一番少ないスロットに据えたんだ。空母が出てくるようならこうはいかないけどな」
「空母か……この追撃戦が終わったら正規空母狙いで建造してみるか」
「あぁ。アリだと思うぜ」
一方、新入りの天龍と龍田もある程度の演習をして練度を8まで上げたところで、駆逐艦4隻と共に出撃してもらうことにした。
編成は天龍、龍田、吹雪、如月、睦月、皐月である。
吹雪は少し前の捜索で見つけた艦娘だが、まだ実戦に出していなかったこともあって今回の捜索艦隊に加わってもらったのだ。
「これまではあまり前線に出ていませんでしたが……頑張りますっ‼」
吹雪もどちらかと言えば真面目なタイプらしく、微笑ましくなった音無は頭を撫でながら『頑張れよ』と声をかけてあげた。
――製油所地帯沿岸・追撃戦
航行する艦隊が随時索敵機を飛ばしていると、間もなく敵艦隊を発見する。
「敵艦隊発見!戦艦ル級1、雷巡チ級2、駆逐イ級2隻の5隻です!」
「事前情報通りだね~。どうする~?」
「突っ込んでぶっつぶしゃ終わりだろ‼」
摩耶が早々に物騒なことを言っているが、千歳がそれを宥める。
「ダメですよ摩耶さん。提督からは絶対に油断しないようにと言われてるじゃないですか」
「うん。戦艦と雷巡は面倒だしね」
千代田も賛同し、摩耶は『ぐっ』と詰まった。
実際に音無から口を酸っぱく言われていることなので、流石に言い返せなかったらしい。
そこで、千歳と千代田が艦載機を発艦させる。
これまでの瑞雲(六三四空)とは異なり、本格的な爆撃機であるため、攻撃力はけた違いだ。
2人の発艦させた攻撃隊が敵艦隊に接触する。
『ウェーイ!』
『サヨコー!』
急降下爆撃が命中した敵艦隊の中で、猛烈な爆炎が上がる。
「攻撃隊より報告‼駆逐イ級2隻轟沈、雷巡チ級1隻中破、1隻小破‼」
「おっ、大打撃じゃーん」
「戦艦が無傷なのが気になりますが……これで、雷撃についてはほぼ心配なくなりますね」
すると、『まーよろしくー』と言いながら、北上が甲標的を発進させた。
まもなく敵艦隊への接触である。
「敵艦発見!砲雷撃戦、よ~い!」
そして接触直後、甲標的が魚雷を発射した。
「艦隊、最大船速~。榛名は射程に入り次第侠叉させてー。混乱してる隙に突っ込んで魚雷撃って~、副砲ぶっぱなしながら榛名が装填終わり次第一斉射で~」
なんだかんだで、北上もちゃんと旗艦の任を果たそうとしているらしく、これまでの戦いから有効的な戦略をちゃんと学んでいる。
幸いと言うべきか、まだ敵戦艦の練度も高くないようで、遠距離の砲撃であれば侠叉にもならない遠弾が多く、避けようと思えば避けられる場面もある。
そして、射程に入った榛名が主砲を発射した。
狙い通り侠叉弾となり、敵艦隊が動揺する。
ただでさえ先制攻撃を喰らって数が減っているところに、侠叉の揺さぶりをかけられたこともあってか、敵艦隊は哀れに見えるほどの狼狽えようであった。
そして副砲の射程に入ったことで、鈴谷たち3隻が副砲を発射する。
千歳と千代田が軽空母に改装され、北上が雷巡として甲標的を装備していることもあってか、副砲は圧倒的に少なくなっている。
それでも多少の命中弾を出し、戦艦ル級に至近弾を出したことで再び動揺させられた。
「ホント、この戦法便利ですよね」
「お姉、改装したらあたしたちも副砲装備しなおす?」
「それは提督にお任せしましょう」
そんな会話をしている間にも、榛名のリロードが完了する。
「主砲、攻撃開始!」
4隻の一斉砲撃により、雷巡チ級2隻は轟沈し、戦艦ル級も小破した。
だが、やはり砲撃力が減っている影響は大きいのか思ったほどのダメージが出ない。
だが、そこで千歳と千代田が艦載機の準備を終えた。
「さあ、艦爆隊、艦攻隊、出番よ‼」
飛行していった艦攻隊が大量の魚雷を投下すると、それまで小破状態だったル級が魚雷の多数命中で大破にまで追い込まれた。
速力は落ち、黒煙もあがっていて非常に目立つ的となっている。
そこに先ほど発射した甲標的の魚雷がようやく命中したことで、ダメ押しの一撃を受けたル級は断末魔の叫びをあげながら海の底へと沈んでいった。
「これで勝てる!」
嬉しそうな千代田の言葉に、千歳も思わず笑顔を見せる。
「うん。敵主力艦隊撃破に成功したから、これで終わりだね~」
「あっ、あれ……」
鈴谷が指差した先には、艦娘らしい影が見えた。
「おっ。艦娘?駆逐艦じゃなきゃいいけどなー」
近づいてみると、体操服のようなものに身を包んだ少女が立っていた。
「どこかの鎮守府の艦隊ですか?」
「そーだよー。あなたは?」
少女は体育会系らしく、ピシッと敬礼して見せた。
「軽巡、長良です。よろしくお願いします!」
ハキハキとした喋り方から、かなり元気なタイプであると予測できる。
「もし行く当てなかったらさ~、ウチの鎮守府来ない?」
「あっ、ありがとうございます‼ぜひご一緒させてください‼」
一同は長良を連れて鎮守府へ帰投する。
「提督~。ただいまー」
「お、帰ってきたか。この子は?」
「長良型の1番艦だって~」
「長良型……川の名前ってことは軽巡か?」
音無の推測通り、長良型は旧帝国海軍が保有していた『5500t級軽巡』の1隻である。
球磨型に続くタイプで、魚雷を53cm連装魚雷発射管から61cm魚雷に変更された船でもある。
長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈の6隻で、長良はそのネームシップだ。
当の長良には改二が存在しない(2025年時点)が、そのスペックの伸び代は改二に匹敵すると専らの評判である。
「軽巡なので耐久性には問題がありますが……速度と魚雷の火力は自慢です!」
「そっか。じゃあそれをぜひこの鎮守府で活かしてほしい」
「はいっ!頑張りますっ‼」
なんというか、体育会系の超・元気っ子らしい。
一応扱いとしては軽巡寮に属する雷巡である北上が長良を軽巡寮へ案内すると、入れ替わるように天龍と龍田が顔を出した。
「おぉ、掃討お疲れさん。どうだった?」
「どーもこーもねーよ……」
「ど、どうした?」
天龍が『げんなり』と言わんばかりの表情で顔を見せたのだ。
龍田はと言えば、いつも通りのポーカーフェイスと言っていいほどのニコニコ顔だったが。
「それがね~、今日は敵と遭遇しなかったの~」
「え!?敵がいなかったのか!?イ級も!?」
「あぁ、はぐれイ級1匹出なかったんだ」
天龍としては雑魚だろうと戦いをしたかったらしく、それが不満らしい。
だが、音無はそれが逆に恐ろしかった。
「(なにか、なにか大きな事件の前触れか……警戒するに越したことはないな)」
「提督?」
「ん、あぁ悪い。出会えた奴はいたか?」
天龍と龍田の後ろから、4人の艦娘が姿を見せた。
「おぉ、4人も!」
「うふふ~。大変だったのよ~」
それぞれ姿勢を正し、音無に敬礼する。
「初雪、です。よろしく……」
「深雪だよっ、よろしくなっ!」
「古鷹です。重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらえると嬉しいです」
「長月だ。駆逐艦だからと侮るなよ。役に立つはずだ」
駆逐艦3隻、そして重巡洋艦1隻であった。
「古鷹……確か、古鷹型重巡洋艦、だったな?」
「はい。元々は20cm単装砲を搭載した大型巡洋艦として設計されたんですけど、その後の改造で20.3cm連装砲に改造されています。一応ですけど、重巡洋艦という存在としては私が世界で初めての船になります」
鈴谷が音無の肩をつつきながら囁いた。
「重巡たちのお姉さん、なんて呼ばれることもあるんだよ」
「強いのか?」
「強さは……軽巡よりは強いですけど、最上型や妙高型、高雄型に比べると性能は控えめです。その代わり、それらの重巡より燃費はいいですよ」
「なら、お前にも掃討艦隊に加わってもらいたい。海域の掃討をして艦娘の捜索や敵の襲撃に備えてもらうための部隊だが……加わってくれるか?」
古鷹はニッコリと微笑んだ。
「もちろんです。どんな作戦であろうとも、絶対にやり遂げて見せます」
穏やかながら芯の強そうな笑顔を見て、音無も思わず『よし』と頷いていた。
新たなメンバーに鎮守府を案内しようと執務室を出た時、チャーがふらりと姿を見せた。
「お、音無か」
「チャー。そっちはどうだ?」
「あぁ。こっちは鳳翔さんが手伝ってくれているから、艦載機やそれにまつわるネタもいくつかできたぜ」
早速工廠へ行ってみると、鳳翔がいつの間にかお茶を淹れて待っていた。
「皆さん、お疲れ様です」
「鳳翔さんこそお疲れ様。で、なにが完成したんだ?」
「これだな」
チャーが見せてくれたのはいくつかの航空機と妖精さんだった。
○ 彗星一二型甲×2
○ 流星×3
○ 流星改×1
○ 二式艦上偵察機×3
○ 彩雲×2
○ 14号対空電探
○ 13号対空電探改×2
○ 熟練見張り員
○ 熟練艦載機整備員×2
『コンニチワ』
『オイッスー』
熟練艦載機整備員と熟練見張り員を担当する妖精さんが挨拶をしてくる。その手には、双眼鏡や整備道具が握られている。
なるほど、確かに普通の妖精さんとは雰囲気が違うようだ。
人間が妖精さんに必要なものを作り出したということに長良や古鷹、そして駆逐艦たちも唖然としている。
「え、この人、人間、ですよね?」
「あぁ。俺はれっきとした人間だが?」
「「「「「……」」」」」
艦娘たちが呆れるのも構わず、チャーは他にも色々と並べていく。
「ん?これって……プロペラ2つ?」
音無が目にとめたのは、2つのプロペラがついている大型航空機だった。
「あぁ、こいつは『一式陸上攻撃機』って言ってな、簡単に言えば、大型の攻撃機だ。双発機のクセに四発機並みの航続距離を誇るってのが特徴の1つだ。最大1.2tの爆弾か800kg魚雷を搭載することが可能になっている」
「じゃあ、制空権を確保できて、航続距離が足りればこいつが援軍に来てくれるってことか?」
「あぁ。場合によっては基地の防衛にも使えるぞ?そのために基地周辺の制空権を確保するための基地防空の戦闘機を作ったんだ」
「あぁ……空港作るとか言ってたっけ……え、もうできたのか!?」
「まぁな。なんとかだが……『局地戦闘機 雷電』が40機、『一式陸上攻撃機』が50機だ。ちょっとした空母並みの戦力を確保したぜ」
「へぇ~……」
「それと、表へ出てみな」
「うぇ?」
音無たちが工廠の外へ出ると、外はもう真っ暗になっていた。
空を見上げると、満月がとても美しい。
すると、なにか黒い点のようなものが見えてきた。
「な、なんだ!?」
それは、一式陸攻よりははるかに小さいが、2つのプロペラが装備された双発機だった。
よく見ると、斜め向きの機銃が2つと、機首にアンテナのようなものが取り付けられているのが特徴のようである。
その機体の風防が開くと、派手なセーラー服に身を包んだ妖精さんが顔を出した。
『カレイナヘンシンダテジャナイ!』
『ツキノチカラヲセナカニウケテ!』
『セイギノシャジュウヤミヲサク!』
音無と艦娘たちは妖精さんの高らかな叫びを聞き、唖然としながら空を見ていた。
『ソラノイクサハマカセテモラオウ!ツキヨリノシシャ、ゲッコウヨウセイ‼只今参上!』
『オナジクアシスタントノビーナスヨウセイモヨロシク‼』
「亀有の派出所かっ‼変態と書いて特殊と読む刑事課かっ‼」
昔妹に買ったことのある漫画雑誌に登場した、変態刑事のことを思い出した音無だった。
まさしくそのネタそのものである。
「はっはっは。いや、これが結構重要でな」
「なにがだよ」
音無はもちろん、艦娘たちも呆れ顔である。だが、チャーは真面目な顔になって続けた。
「これは『夜間戦闘機 月光(超・熟練)』って言ってな、夜でもある程度戦闘可能な航空機だ」
「……別に飛行機は夜だって飛べるだろう?」
音無はそう思っていたが、チャーは『残念ながら』と返した。
「確かに飛べることは飛べる。だが、どうやって敵を見つける?」
「どうやってって……目視じゃないのか?」
離着陸は飛行場の明かりでどうにかなるだろうが、空の上ではそうもいかない。
「月明かりが出るかどうかも分からないのに、どうやって探すんだよ」
「じゃあ……探照灯?」
「確かに地上基地の探照灯も使うが、これは全く別な方法だ。現代では『当たり前』になっているけどな」
「え?」
チャーは機首のアンテナを指さした。
「『月光』は対空捜索用のレーダーアンテナを装備することによって、『Bー29』超重爆撃機の迎撃に一役買った戦闘機なんだ」
太平洋戦争時は日本におけるレーダーこと、電探の黎明期でもある。
高性能マグネトロンの開発に成功したアメリカやイギリスは、プラスチック製のレドームにレーダー機器を収めていたのに対して、日本とドイツは巨大なアンテナの『かんざしレーダー』とも言われたこの体系から脱却することができなかった。
おまけに、当時の日本の技術が未熟だったこともあり、その信頼性がかなり低く役に立たなかったことも多かったという。
だが、夜に敵の航空戦力が仕掛けてきた場合に備えられるというのは大きい。
ちなみに数値は以下となる。
○ 夜間戦闘機 月光(超・熟練) 対空+10・爆装+12・捜索+8・対潜+5
「まぁ、そういうことなら任せるけど……艦娘の皆がもう茫然自失状態だぞ」
「気にすんな。そんなの考えていて負けちまったら元も子もねえ」
それはその通りなのだが、それにしたってもう少し考えてもらいたかった音無であった。
「あ、あんな妖精さん見たことないです……」
「っていうか、妖精さんをあんな風にしてしまうなんて……」
「マジか……」
古鷹、長良、深雪はかろうじて声を出していたが、他はもう茫然としている。
「ま、まぁ、戦力が増えたって言うならそれに越したことはないかな……色々頼むよ」
「おぅ、任せておけ」
5人+鳳翔を連れて、今度は建造工廠へ向かう。
「次の海域には空母がいるらしいから、できれば正規空母が欲しいって思ったんだが……果たして来てくれるかな?」
すると、鳳翔がその小さな手で音無の手をキュッと握りしめた。
「大丈夫ですよ提督。提督が望めば、きっといい仲間が来てくれます」
鳳翔の目は穏やかだが力強く、音無に自信を抱かせてくれた。
「分かったよ、じゃ、やってみるか」
音無が空母レシピで資材を投入すると、工廠がガタガタと動き始める。ボーキサイトに余裕があるので、今日は3回ほど建造をやってみるつもりであった。
『レッツゴー』
チーンという音と共に扉が開くと、茶髪の女の子が姿を見せた。
どことなくだが、鈴谷に似ている気がする。
「ごきげんよう、私が重巡、熊野ですわ!」
執務室に置いてあった艦娘カタログを見ると、確かに名前があった。
「熊野……あぁ、鈴谷の妹か‼最上型の4番艦!」
「えぇ。神戸生まれのお洒落な重巡と言えば、この私のことですわ」
熊野は最上型重巡洋艦の4番艦として建造された船で、本人の言う通り神戸で建造された軍艦でもあった。
それ故なのか、熊野はやたらとオシャレやお嬢様気質を強調したがる癖がある。
「そうか。ウチの鎮守府はまだ稼働したばかりでとにかく人手が足りてないからな、頼りになる奴は大歓迎だ。あ、お前の姉の鈴谷も着任してるぞ?」
「まぁ、鈴谷がいますのね!ぜひ会いたいですわ‼」
「あとで顔を合わせてやるといい。悪いけど、このまま建造をするんで、ちょっと待っていてくれるか?」
「はい。お待ちしてますわ、提督」
熊野が横にちょこんと座りこむと、音無は再びボタンを押す。
工廠が再び資源を消費し、新たな艦娘の建造を始めた。
『オワリ』
再び開いた扉の中には、短めのポニーテールに、緑色の和服を着た女の子が経っていた。
なんといっても特徴は、『デカい』。なにがとは言わないが、デカい。
「航空母艦、蒼龍です。空母機動部隊を編成するなら、ぜひ私も入れてね!」
蒼龍。日本が建造した中型航空母艦の傑作とも言われている存在である。
軽空母とは搭載数はもちろんだが、耐久値と装甲値が大きく異なっており、一発の攻撃で中破や大破になりにくい(昨今の火力インフレ状態ではそうでもないが)という特徴がある。
そしてなんといっても、その搭載数が魅力だ。
「初期搭載数64機……おぉ、こういっちゃあれだが軽空母とは全然違うな‼」
「はい。それでも私は正規空母としては少なめな方ですよ?」
「そうなのか……あ、ホントだ」
同じ正規空母である赤城はこれよりさらに多く、加賀及び翔鶴型は改装を進めれば100機近くを搭載できるようになっている。
確かにこれらと比べてしまえば少なく見えてしまうだろうが、今の時点では十分すぎる戦力である。
「よし。次の海域じゃお前たち正規空母の力が大きく作用するからな。色々頼むぞ」
「はい、お任せください」
続いてもう一度ボタンを押して、建造を進める。
『オマタセ』
中から出てきたのは、鳳翔や蒼龍同様に弓を携えた、和装の少女だった、
「翔鶴型航空母艦2番艦、妹の瑞鶴です」
「瑞鶴!エンガノ岬沖海戦までほぼ無傷だったっていう幸運の空母か‼」
ファイルを見ていた音無は思わず叫んでいた。
なにを隠そう、瑞鶴はこれまで着任した艦娘の中でもトップレベルの運の高さを持つのだ。
「幸運の空母ですって?そうじゃないの、一生懸命やってるだけ、よ」
「そう、なのか?」
「えぇ。だから艦載機がある限り、負けないわ!」
力強く言い放つその姿は凛々しく、流石というべき存在感であった。
「ところで……翔鶴姉はいるのかしら?」
「え、お姉さん?いや……まだ来てなくてさ。っていうか、正規空母は今日初めて君と蒼龍が着任したところだ」
音無の言葉を聞いた瑞鶴は目に見えて落ち込んでいた。どうやら、かなりのお姉ちゃんっ子らしい。
かつてはお兄ちゃんとして妹を持つ身だった音無としては、なんとか早くお姉さんに会わせてあげたいと思いつつ頭を撫でてあげることしかできなかった。
今日は『3回まで建造する』と決めていたことから、これ以上はダメだと思っていたからである。
取り敢えず彼女たちを開発工廠へ連れて行き、今開発できている最高装備を搭載してあげることにした。
だが、工廠のイカレっぷりを見た瑞鶴が思わず声を上げる。
「ちょ、ちょっとこれ!紫電改二じゃない!立ち上がったばかりの鎮守府になんでこんなレア装備があるのよ‼」
「なんでって……開発したからだけどな」
「はぁ!?いくら空母系艦娘がいたからって……っていうか烈風!?流星に流星改まであるじゃないの!どーなってんのよぉ‼」
蒼龍は嬉しそうに見ているが、瑞鶴は完全に混乱していた。
ここに某瑞雲教の教祖様にして師匠がいらっしゃれば『まぁ、そうなるな』の一言で片づけてくれるのでしょうが……。
そんな風にギャーギャー言っている瑞鶴の声が聞こえたのか、奥からチャーと妖精さんがひょっこり顔を出した。
「なんだなんだ、なんの騒ぎ……おぉ、蒼龍に瑞鶴じゃねえか‼音無、引き当てたのか!?」
「あ、あぁ。やっぱり強いんだな」
「そりゃあな。正規空母は艦隊決戦においては、軽空母とは比較にならない能力を発揮するからな……潜水艦が相手の時は軽空母の方がいいんだが」
「そうなのか?」
問われた鳳翔が頷きながら返す。
「はい。軽空母には対潜攻撃に対するシナジーとでも言うのでしょうか、特効効果がありまして、同じ搭載数の機体でも、軽空母の方がより攻撃力が高くなるんですよ」
「へぇ……じゃあ、千歳と千代田は対潜攻撃に向いているってことか?」
「もちろんそれもありますが、敵の空母戦力がいないところで低コストに制空権を確保するのにも使えますね」
「要は使い分けか」
「そうですね。まぁ、私などは空母としてはもちろんですが、戦闘可能な艦としてはかなり足が遅い部類に入りますので、あまり機動戦闘には向きませんが」
千歳と千代田は改二まで改装すれば蒼龍型並みの搭載量にまで進化するため、それらを駆使すれば高い対潜攻撃能力を発揮するだろう。
「それでもできることはあるさ。だから、なにかあったらぜひ頑張ってほしい」
音無がそう言いながら鳳翔の小さな頭を撫でると、鳳翔はほんのりと頬を赤らめて微笑むのだった。
「うふふ。提督に撫でられてしまいました♪」
「ほ、鳳翔さんにあんな顔させるなんて……あの提督、何者?」
「ま、ただもんじゃねえのは確かだな」
それを聞いた妖精さんたちが『オマエガイウナ』と言わんばかりの視線で見ていたが、華麗にスルーするチャーだった。
「よし、早速この紫電改二と彗星一二型甲、それに流星を装備して演習に臨んでくれ。それで練度を上げて、次の海域へ挑むから」
「了解です」
「りょ、了解です……」
蒼龍はあっさりと状況を受け入れていたが、一方の瑞鶴は未だにこの状況を飲み込め切れていないようだった。
まぁそれも無理のないことなのだが。
その夜、音無が書類仕事をしていると、扉をノックする音が響く。
「開いてるぞ」
扉を開けて入ってきたのは、千歳だった。
「千歳、どうかしたのか?今日の海域捜索は終わっただろ?」
「はい。あの……提督のお仕事の具合はいかがですか?」
「え?これで終わりにするところだけど……それがどうかしたか?」
すると、千歳はなにかを取り出した。よく見ると、高級な純米大吟醸日本酒の一升瓶とお猪口だった。
「もしよろしければ、明日への景気づけに一献、とも思ったのですが……ダメでしたか?」
艦娘の中には酒を好むタイプの子もいると聞いてはいたが、千歳がそうだとは思わなかった音無だった。
しかし、それと同時に千歳がわざわざ誘ってくれているのだから付き合ってやるべきだという気持ちが膨らんできた。
まだ成人しているわけではないが、どうせこの世界は元の日本とは違う価値観・決まりであるようだ。
提督となった以上、艦娘と酒を酌み交わすことも十分にあり得る話だった。
「じゃあ、もらおうかな」
「はいっ」
千歳はなんとも言えぬ嬉しそうな顔を見せる。
音無は千歳に連れられて浜辺へ出ると、やはり月がとても美しかった……妙な音楽を流しながら空を飛ぶ夜間戦闘機・月光さえなければ。
「……夜間哨戒は結構なんだが、あの妙な妖精さん、どうにかならねえのかな?」
「ま、まぁ、妖精さんは様々な特徴がありますから……」
既に数日以上チャーのあり得なさを見てきた千歳でも流石に苦笑いだ。
そうは言いつつ、音無のお猪口に千歳がゆっくりと酒を注ぐ。
ほんの一口を含むだけで、ふわっと米の香りが口の中に広がる。
「んん~……酒は初めてだけど、ビールは慣れないと苦いって聞いてたから、ほんのり米の香りがするこの感じはいいなぁ……」
なんとなくだがビールは飲み慣れるまで時間がかかるという印象がある音無は、ほのかに香る米の香りとこの静かな空気が結構気に入っていた。
千歳も自分のお猪口に酒を注ぐと『クイッ』と飲み干した。
「はぁ~……あぁ、美味しい」
あっという間にアルコールが回ったからなのか、千歳の顔がほんのり赤らみ、血色がよくなったことで唇も艶っぽくなる。
音無はそんな千歳を見て思わずドキリとしていた。
酔いの回った姿が、なぜかとても神秘的で美しく見えたからである。
「私も……提督とこうしてお酒が飲める日が来るなんて思いませんでした」
前の提督とは、こういったプライベートなやり取りをしていなかったが故の発言である。
音無は確かにかなでのことが好きだ。今でも思い出すくらいには。
だからと言って、千歳や他の艦娘たちが向けてくれる好意を無下にできるような薄情な男ではなかった。
すると、千歳が音無の方を見ながら呟く。
「こうやって……提督とずっと……ずっと平和に過ごせればいいのに……」
そんな物憂げな千歳を見た音無は、思わず彼女を抱きしめていた。
「て、提督……?」
音無は力強く千歳を抱きしめながら、言葉を続けた。
「取り戻そう。平和な海を……穏やかに酒を飲めるような世界を取り戻そう。そのためにも……明日、色々な皆に頑張ってもらわなければいけない。千歳も、しばらくは主戦力から離れることになるけど、頼むぞ」
千歳は瞳を潤ませると、音無を抱きしめ返した。
「はい……千歳は、提督についていきます……」
……やりましたよ。やらかしましたよ。
笑いたきゃ笑いなさいアッハッハッハ( ´艸`)
ですが、最後の部分で音無なりに艦娘と向き合い始めたのを見てもらえればうれしいと思います。
もうちょっと……もうちょっとでエロシーンも……今後もよろしくお願いします。