※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

69 / 96
さーてサブタイ出ましたよー……母って誰のことなんでしょうね~(すっとぼけ)

そして今回、物語の大きなファクターとなるオリジナル艦娘が登場します。
彼女の存在を聞いた人は、『おや?』と思うでしょう。
また後程に……


『母』を救え!

 音無と龍田が道具を使って少女の拘束を解いている間、ゆりたちは散らかった部屋の中を調べていた。

「なにか……彼女の身元が分かるようなものないかしらね……あーそっちはどう?」

「えっと……あ、ゆりっぺ、こいつはなんか役に立つか?」

 藤巻が取り出したのは、艦娘の名鑑だった。かなり埃を被っているようだが、それほど傷んでいないようだ。

 海外艦なども出ているようで、かなり分厚い百科事典のようだ。

「おっ、ナイス!えーと、パツキンでパイオツカイデーの女の子、っと……やっぱり愛宕以外なら『ほぼ』海外艦ねぇ」

「……ゆりっぺ、たまにオバサンって言われ……」

 直後、ゆりの強烈なハイキックが藤巻の顔を襲った。藤巻の顔面には、マンガのギャグ描写の如くゆりの靴底の痕がくっきりと残っていた。

「じゃかぁしぃ、誰がオバサンじゃぁ‼」

「久々の蹴りだったぜぇ……でも、実際そうだろうなぁ。あ。灯り、少しそっち向けるか?」

「いいわ。音無君と龍田の作業がやり辛いでしょ」

「悪いな、助かるよ」

 チラリと音無の方を窺うと、真剣な顔でナイフを使い龍田と共に少女の拘束を解こうとしていた。

 もっとも、当の龍田は『うふふ~、提督と初めての共同作業~♪』とかなり嬉しそうな顔をしていた。

 この鎮守府の龍田は、『音無にイジメられる天龍を見てハァハァする』という、かなり歪んだ愛情の持ち主であった。

 なので、天龍をエッチにイジメることでやらしい顔を見させてくれる音無に対してもかなりデレている。

 それはそれでどうなのかとは思うが。

 流石のゆりも『余裕じゃねぇか』とツッコミを入れたかったが、そこはグッとこらえてデータを探す。

「Nowzanpton……違うわね。Houston……これも違うわ……うーん、こんな立派なオッパイなら最低でも大型軽巡、或いは重巡くらいだと思ったんだけどねー……素っ裸だと判別し辛いわ」

「確かにな……まさか駆逐艦ってこたぁねぇだろうしなぁ……ったく、チャーがいりゃすぐに分かるんだがな~」

「ないものねだりしても仕方ない。私たちにできることをするだけよ」

 そんなことを考えつつ、ゆりは『まさか、ね……』と言いながら駆逐艦のページをめくっていた。

 考えてみれば、日本の駆逐艦にも巨乳な子は多数いる。

 潮、白露型、夕雲型、乳風組などがいい例だろう。

 ならば、日本より恵まれていたであろうアメリカの駆逐艦は豊満な子が多くてもおかしくはないだろう。

 その時、本の山が少しだけ動いた気がした。

「……天龍、そこの本の山、ちょっと調べてくれる?」

「ん?あぁ、いいぜ」

 天龍が『よっ』と本の山をかき分けた瞬間、中から小さな『なにか』が『みぎゃぁっ!』と飛び出してきた。

 天龍が『わっ!?』と反応する間もなくしがみつかれる。しがみついてきた『それ』は、天龍の乳房に『ガブリ』と噛みついてきた。

「いってーっ‼んだよ、このおっ‼」

 天龍が『それ』を床に叩きつけると、『それ』の姿が露わになった。

「げっ、PT小鬼!?」

 なんと、本の山はもちろんだが、各所からわらわらと小鬼が湧き出してきたではないか。

「うえぇっ、地虫みてぇにうじゃうじゃと……」

「ボヤくな!排除しろ排除‼」

 各員が発砲を開始し、椎名も苦無と短刀で次々と仕留めていく。

 一方音無は少女の拘束をほぼ解き終えたところだったが、その直後にまた彼女の股間から『ブリュッ』という粘っこい音と共に小鬼が生れ落ちる。

「はぁっ‼」

 龍田が産まれ落ちた奴をすぐに始末してくれたが、音無は思わず舌打ちする。

「ここにいる奴ら、皆彼女が産み落としたんだろ‼それでまだこの膨れた腹って……どんだけ仕込まれてたんだっ‼」

 ようやく拘束を解き終えた音無は少女を抱きかかえ、部屋の出口へと歩き始める。ゆりも名鑑を抱えて音無に続く。

 皆が戦っている中、ゆりが腰のバッグからなにかを取り出した。なにかと思えば、Mk.2破片手榴弾だった。

「皆、早く出なさいっ‼」

 ゆりは手榴弾のピンを引き抜くと、部屋の中に放り込んだ。

 一同は『わーっ‼』と慌てて部屋から飛び出した。野田と松下が素早く周辺のモノを入り口付近に押し固める。

 直後、猛烈な爆発音が響き渡った。

 日向とHornetが『そろり』と覗き込むと、中にいた小鬼が全滅している姿が見えた。小鬼たちは黒い霧になって消えていく。

「よし、急いで撤収するわよ‼またわらわら出て来られたらたまったもんじゃないわ‼」

「急げ急げーっ‼」

 皆が全集警戒をしつつ、上陸地点へ急いで走り出す。

 じわじわ進んだことで20分以上かかっていたはずの道は、走った結果わずか5分ほどで走り終えてしまった。

 浜までそれほど距離がなかったことが幸いしたと言える。

 上陸地点では天霧たちが待っていた。

「提督、待ってたぜ‼」

「待たせたな!朝潮、悪いがお前たちは残ってここの警戒を頼む!」

「はい!」

「日向、野田、大山、松下五段、悪いが残って皆の支援を頼む!」

「任せろ‼」

「ふん、いいだろう」

 音無はボートから持ってきておいた『洋上補給』を取り出した。さらに日持ちする戦闘糧食も多数置いていく。

「これを置いていく。艦娘たちの補給をこれで持たせてくれ。3日後……いや、2日後には航空機での補給を寄越す。それまでなんとか持たせてくれ」

「おぅ、引き受けたぜ」

「高松、帰りの運転も任せる」

「そのための筋肉ですからぁっ‼」

 相変わらず暑苦しい上にアホな雰囲気だが、それでもゆりにこき使われたことで精神的にも肉体的にも鍛えられて来た歴戦の猛者、と言った雰囲気を出しているあたりは流石である。

 もっとも、豆知識ばかりのアホであることには変わらないが。

「じゃあ、頼んだ‼」

 音無たちは千歳を先頭にリランカ島から離岸した。

 徐々に島が小さくなっていく姿に、船に乗っていた伊勢はなんとも言えない不安を覚えていた。

 だが、音無は伊勢の頭を『ポン』と撫でる。

「心配するな。アイツらは確かに、まごうことなきアホだ。でもな、体感的な時間だけなら数十年以上に渡って普通の人間とは違う存在と戦い続けてきた戦闘のプロでもある。だから、あいつらを信じるんだ」

 音無の眼には一切の動揺がなかった。そんな雄々しい姿を見た伊勢は、『うわぁ』とさらに胸を高鳴らせるのだった。

「(ヤバいなぁ……アタシってばただでさえ提督にベタ惚れなのに……もっと好きになっちゃうよぉ……西方解放したらって約束したのにぃ、我慢したいのにできなくなっちゃうよぉ……♡)」

 伊勢は『イヤンイヤン』と言わんばかりに頬を押さえて悶えていた。

 日向はそんな姉を呆れたようなジト目で見ていたのだった。

 もっとも、そんなことを伊勢が考えているとは露知らず、音無は前方を睨みつけていたのだった。

 すると、型録を見ていたゆりが『あっ‼』と声を上げた。

「ねぇ音無君!この子じゃない!?」

 ゆりが見せてくれたページには、『Fletcher』という名前が記載されていた。

「Fletcher級駆逐艦の1番艦……総数175隻の姉妹艦のネームシップ!?なんつー数だよ‼」

 それを聞いたHornetが『思い出した!』と声を上げた。

「ボロボロで全然わからなかったけど、Mother Fletcherだったのね!」

「マザー・フレッチャー?」

 Hornetが『Yes』と頷いた。

「型録の通り、175隻もの姉妹艦のネームシップということから、『Mother』の通り名が付いたの」

「もっとも、当の本人も会ったことのない姉妹の方が多かったらしいけど……」

「そりゃそんなに同じドックで建造できないもんな」

 Fletcher級駆逐艦。

 戦後には海上自衛隊にも『ありあけ型護衛艦』として供与された実績がある船でもある。

 アメリカの工業力を示すかのようなその生産数は、あくまでFletcher級駆逐艦だけのものであり、これ以外にも多数の護衛空母、護衛駆逐艦(John・C・Butler級など)、さらにEssex級航空母艦やIowa級戦艦を始めとする多数の戦闘艦など、様々な船を建造している。

 これぞ当時のアメリカの国力・工業力である。

 これを成したのがいわゆるブロック工法・電気溶接であり、それに加えて効率化された生産体制もあって、多数の兵器を製造することができたのである。

 陸海軍が争う余力で他国と戦い、兵器・弾丸の規格まで統一できなかった大日本帝国とは大違いである。

 豊かな国が規格を統一し、貧しい国が雑多な兵器を作る、或いは配備する。あまりに悲しい話である。

 それはさておき、流石の音無も呆れ顔だった。

「なんてこった……日本はこんな国と戦争してたのかよ……比較するのも馬鹿らしくなるな」

「まぁ、否定はできねーな」

 天龍のやたらに重みのある言葉も尤もである。特に日本の艦艇の多くは大正時代に建造された旧式と言ってもよい艦が多かった。

 航空母艦はともかく、戦闘可能な船の多くは大正時代の一次大戦水準の設計と言っていいものであった。

 しかも、そんな戦中の生産数は枢軸側の生産数を全て合わせてもアメリカの半分にも満たないと言えばその恐ろしさが知れる。

 天龍など、建造された当初は間違いなく優秀な船だったが太平洋戦争時にはかなりの旧式艦となっていた存在である……の割には三川艦隊に混じって戦果を挙げる辺り、神風ではないが『艦の能力はスペックじゃない』というところか。

「恐らくだけど、『Mother』と呼ばれていたという『名前』が重視されたんじゃないかしら?ほら、『名は体を表す』って言うじゃない」

「どうでもいいけどよくそんな言葉知ってんな。それから『名』じゃなくて『字』な」

「……漢字難しいよ~」

「なんかネタっぽいなおい!?」

 Hornetも何気にこの鎮守府では古参に属する艦娘というだけあって、日本の諺や格言にもある程度詳しくなってきたらしい。

 或いは、後から入ってきたオータムクラウド先生の影響だろうか。

「だからってこんな女の子を……酷すぎるわっ‼」

 ゆりは憤慨するが、意外にも音無が冷静だった。

「イギリス人に言わせれば、『戦争と恋愛に手段は選ばない』らしいからな。奴らもなりふり構わないってことだろう」

 音無も鎮守府で提督を続ける中で歴史を学び、日本人と比べて欧米人、とくにイギリス人が戦争という事象に対しては手段も形振りも構わずに向かっていく姿勢を学んだのだ。

「だから、俺たちは捕まった艦娘を助け出す。そして、深海棲艦の思惑を真正面からぶち破る。それが……俺たちがアイツらに対抗している大きな意義とも言える」

 一見すると淡々と喋っているように見える。

 しかし、一番近くにいたSaratogaは音無の眼の中に、強い怒りの炎が宿っていたことに気付いていた。

 補給を経て3日後にタウイタウイへ戻った音無たちは、シンガポール軍から『守備隊を送り込んだ』という報告を受けた。

 シンガポール軍が日向たちを送ってくれたことで、音無は改めてFletcherの診察を始めた。

 2日間も経過観察をしていたが、その間彼女からはずっと小鬼が産み落とされており、膨れ上がっていた腹も全く元に戻っていなかった。

 なお、小鬼の始末は艦娘たちが交代でやってくれていた。

 音無は氷川丸とOp Ten Noortの診断を聞いて推測を立てていた。

「……もしかして、子宮の内部、或いは卵巣などの器官になにか細工が施されているのかもしれないな」

「では、やはり……」

「あぁ。手術してみないと分からない」

 その一言を皮切りに、2人の病院船と大淀を助手に手術を始めることにした。手術着に着替えた音無は『お願いします』と言ってFletcherの隣に立つ。

「それではこれから手術を開始する。1時間で終わらせるぞ‼」

「いっ、1時間!?」

 Op Ten Noortは驚くが、大淀と氷川丸は『もう慣れた』と言わんばかりの涼しい顔をしていた。

「大淀、メス」

「はい」

 素早くFletcherの腹を裂くと、音無の予想通り腹の中で多数のPT小鬼が蠢いていた。

「うぅっ……」

 Op Ten Noortが呻き声を上げるが、音無は構わずに小鬼を摘出し始めた。摘出した小鬼は大淀が素早く『処理』していく。

 だが、やはり少しずつだが小鬼が生成されていく。

 そして音無は見た。卵管の方から豆粒のような小鬼が送り込まれてくるのを。

「やっぱり大本は卵巣か。よし、卵巣を見るぞ」

 すぐに卵巣に切り込みを入れて開いてみると、案の定と言うべきか、小さな機械のようなものが埋め込まれていた。

「これが……小鬼を生み出していた大元か」

「これ……切除できるのですか?」

「やって見なくちゃ分からない」

 音無は手際よく状態を探り、すぐに把握した。

「これを、こうして……ここを切り離せば……」

 初めて見たOp Ten Noortは音無の手際に驚いていた。

「これが……提督さんの力、なのですか……?」

「そうですよ。提督は今の時点で艦娘限定ですが、世界最高の名医になれるのです」

 音無が装置を引き剥がすと、装置から小さな触手のようなものがウネウネと蠢き始める。なんとも言えない気持ち悪い光景だ。

「……大淀、これを」

 大淀は無言で頷いてそれを受け取った。大淀も慣れた手つきで『それ』をトレイに置く。

「よし。次に修復材を塗布する」

 修復材を塗布し、卵巣の傷を塞いだ。

「もう片方の卵巣も確認する。飛ばすぞー……付いて来い‼」

 それからの音無は意識を集中し、あっという間にもう片方の装置も処理してしまった。

「……何分経った?」

「ご、52分です……」

 音無は『ほうっ』と息を吐いた。

「完璧、の母だな」

 Fletcherをベッドに移動させた音無は着替えて執務室へ戻った。傍らには大淀と千歳が立っている。

「提督、どうでしょうか?」

「少なくとも、伊勢たちの時よりもより精密な改装をされていたように思う」

「やっぱりそうですか……」

 だが、音無が見つけたことこそが最大の幸運だったと言えるだろう。

 音無は椅子に座り込みながら独り言を呟いていた。

「……俺は、なんのためにこんな力を持って、こんな世界に転生したんだろうか……かなで、教えてくれないのか……」

「提督……」

 これは音無が転生してからよく考えていることだった。肉欲に塗れてはいるものの、そう言った思考回路は鈍っていない。むしろ冴えわたっているとさえ言える。

「……分かっているんだ。こんなことを考えても仕方がないってことは……でも、つい考えちまうんだ」

 こんなことを言えるのは、最愛の千歳と秘書同然の大淀くらいである。

「それでも、俺は戦い続けなければならない。少なくとも……深海棲艦を全て倒すまでは、な」

 こんな弱音を吐いても艦娘の皆は特になにも言わないだろう。だが、それと吐けるかどうかはまた別物だ。

「取り敢えず集中したから腹減ったよ。あ、でもその前にリランカ島の攻略と遠征、掃討で出会った子たちに会わないとな。ずっと待たせちまった」

「そうですね。ではお呼びしましょう」

 そう言うと、何人もの艦娘が入ってきた。

「特Ⅰ型駆逐艦、吹雪型の末娘、浦波です。司令官、どうぞよろしくお願いします」

「提督、あの、私……綾波型駆逐艦……狭霧と言います。お手伝いできるよう、頑張ります」

「お姉ちゃん、司令、お疲れ様ぁ!夕雲型十二番艦、早波、参りました‼」

「Buongiorno!あたしがマエストラーレ級駆逐艦、次女のグレカーレ!テートク、あたしも可愛がってよね?あ、かーわいっ♪」

「ねえねえねえ!貴方が提督なんだ‼あたし、伊26潜水艦!ニムでいいよ!よろしくね!」

「Aloha、提督‼あたしがニューヨーク生まれ、ハワイ育ちのHonoluluだ!あ~っ、ノーザも居ンだ!そっか、いいね!あたしのこともよろしく頼むよっ‼」

 ここにはまだNorthamptonは着任していないのだが、着任していない艦娘の名前を呼ぶことのある艦娘は本来珍しいことではない。

 音無の鎮守府が色々揃い過ぎているだけなのだ。

 そして、最後に立っていたのは戦艦らしい女性だった。見れば、どこか加賀と長門と足して二で割ったような雰囲気を感じる。

 顔立ちは加賀に近く、それでいて服装は長門型に近い雰囲気だ。

「あなたが提督殿、ですね。私は紀伊型戦艦1番艦の紀伊と申します」

「紀伊?聞いたことがないけど……ちょっと待っててくれ」

 音無はすぐにチャーを呼び寄せた。

「どうした、音無……お?なんだそいつは?」

「あぁ。紀伊って言うらしいんだけど……既成艦の中にそんな名前の船はないんだ」

 その時、チャーはタダでさえ強面の顔をさらに引き締めていた。

「おい、今ここにいる連中全員外へ出せ」

「え?」

 チャーがいつになく恐ろしい顔で睨んでいた。

「いいから!この紀伊と千歳、大淀以外の全員を外へ出せっ‼」

「あ、あぁ!」

 音無は艦娘たちを外へ出した。

「……悪いな、怒鳴ったりして」

「いや、それは構わないんだが……何者なんだ?」

 チャーは腰に下げていた水筒の水を少し飲んで唇を湿らせると、壁にもたれかかりながら話し始めた。

「紀伊型戦艦。それは、大日本帝国が『八八艦隊計画』と呼ばれる大艦隊整備計画の中に組み込まれていた、長門型の次、加賀型戦艦のさらに次と考えられていた戦艦だった」

「長門型の次……加賀型?」

「あぁ。加賀は元々戦艦になる予定だったのが、途中で空母に改装された。ところが、紀伊型戦艦は海軍軍縮条約の影響で建造自体がストップした戦艦なんだ」

「え!?グラーフみたいに『途中まで作られた』とかじゃなくて!?」

「あぁ。そもそも計画倒れしたはずの船なんだが……おい、お前。どういうことか、説明してくれるんだろうな?」

 紀伊はなにも言わず、整った顔立ちのまま瞑目して黙っていた。

 なので、音無が問いかける。

「紀伊。俺はお前の上司、提督だ。このようなことをいうのはあまり望まない所だが……訳を話せ。これは命令だ」

 すると、紀伊がようやく口を開いた。

「はい。提督のご命令とあればお話しいたしましょう」

 どうやら加賀以上に頑固な堅物らしい。チャーも流石に肩を竦めていた。

「私は、とある世界から提督の下に遣わされた船です。簡単に申し上げれば……『この世界』の軍艦ではありません」

「え?別の世界の船ってことなのか?」

 紀伊は『はい』と頷いた。

「私は別の世界でとある目的のために建造され、姉妹艦の尾張を始めとする様々な船と艦隊を組んで、陸軍と共にある場所へ派遣されました」

「ある、場所?」

 すると、紀伊が頭を下げた。

「申し訳ありません。今私が話すことを許されているのはここまでなのです」

 その言い方に音無は強い違和感を覚えた。

「待て。『許されている』というのは、お前をこの世界に送り込んだ存在に、ってことか?」

「……はい」

 その時、紀伊の返事で音無はそれがなんなのか想像がついた。

「そうか。お前を送り込んだのは『神』か」

 この時、紀伊が初めて表情を変えた。まさかそこまで一瞬で辿り着くとは思っていなかったらしい。

「やっぱりそうか。お前を送り込んだのは俺たちをこの世界に転生させた『神』なんだろうな。そしてその言い回し……お前が派遣されていたのは、俺たちみたいに常識の通じない異世界、だったのかな?」

 ズバズバと言い当てられた紀伊は『ぶわっ』と汗が噴き出すのを感じた。

「(驚きました……僅かな情報だけでここまで正確な判断を……なるほど、『あのお方』が見込むだけのことはある、ということですね)」

 ここに来て紀伊は『申し訳ありません』と再び頭を下げた。

「否定も肯定もしません。今は……今はご勘弁ください」

 頑な、というよりは本当に言えないという雰囲気に、流石の音無も折れた。

「分かったよ。じゃあ、言える時になったら言ってくれ。それでいいから」

「本当に、申し訳ありません」

 紀伊の言葉を聞いた音無は、神による制約かなにかがあるのだろうと判断していた。

 なお、彼女の数値は以下となる。

 

 

○ 耐久 85

○ 装甲 80

○ 回避 27

○ 搭載 28

○ 速力 低速(27ノット)

○ 射程 長

○ 火力 88

○ 雷装 0

○ 対空 42

○ 対潜 0

○ 索敵 14

○ 運 30

 

 

 初期装備は以下となる。

○ 試製41cm三連装砲(×7)

○ 14cm単装砲(×7)

○ 12.7cm連装高角砲

○ 零式水上観測機

 

 

 その能力は大和型と長門型のほぼ中間と言うべきところである。火力に関しては大和型には及ばないものの、長門型を上回るものとなっている。

 これは長門型が45口径41cm連装砲四基だったのに対して、紀伊型戦艦が三連装砲三基を搭載しているためである。

 そのため、艤装の雰囲気はむしろ大和型に近い感じを覚える音無だった。

 ちなみに改装すると『25mm三連装機銃 集中配備』を持参する。

 なにより、訳あって異世界へ派遣されて無事に帰還してから解体されたことから、運の初期数値が長門以上に高い。

 速力も大和型並みを出せるため、低速とは言うが『新型高温高圧缶』1つで『高速』に変化させることができるのも大きい。

「(まぁ、その内話してくれるだろう。それこそ……全ての深海棲艦を倒し終えた後でもな)」

 その後、音無は紀伊を戦艦寮へ送った後、音無は鎮守府のカウンターバーで1人ビールを飲んでいた。

「(神の目的は分からない。だが……俺になにかをさせるつもりなんだろう。そのために様々な艦娘を集めている……そして俺の下に集わせている、ということなんだろうな……なんのためかは分からないが……それでも、なにかを成さなければならないんだろうな)」

 だとすれば、音無の心はもう決まっている。深海棲艦を倒して、それからなにか起こるのだろう。

「まぁ、いい。なるようになるさ。まずはこの世界の平和を取り戻す」

 すると、隣に誰かが座った。

 音無がふと横を見ると、座っていたのはScharnhorstだった。

「よぅ、Admiral。隣座るぜ」

「シャル?別にいいぞ」

 見れば、赤ワインのグラスを片手に持っている。ドイツ人はビール好きというイメージがあるが、実際には赤ワインなど他の酒も好む人が多いという。

「くんっ……ん~いい香りだぁ~。ワインって奴は管理する温度もとても重要なんだぜ」

「へぇ。日本酒とかもそうだけど、すごく大変そうだよなぁ」

 この鎮守府では本土及びオーストラリアの方面からの物流が入ってきているが、その中には様々な酒もある。

 鳳翔はもちろんだが、隼鷹や那智など、『飲み』にうるさい連中がしっかり管理してくれているのである。

 時には鳳翔が酒に合うツマミも作ってくれるのだ。

「……なんだか、色々腹くくったって顔だなぁ」

「そう見えるか?」

 『あぁ』と言いながらScharnhorstは体を傾け、音無の腕に自分の胸を押し当てる。

 音無ももう慣れたもので、多少のことでは動じない。

「俺らみたいな妙な奴らを気にもせずに受け止めてくれて、この鎮守府で働かせてくれている……ホントに感謝してるんだぜ?」

 Scharnhorstは天龍や木曾のように口が悪いように見えるが、その中には音無への強い信頼が溢れている。

 もちろん天龍や木曾が音無を信頼していないという話ではないが、Scharnhorstは初めての『パラドックス艦娘』ということもあってか、音無も距離感が少し近いのだ。

「そりゃぁな。どんな奴にだって向いていることとそうでないことがある。だったら、できることを頑張ってもらうだけだろう?」

「そうスパッと割り切れるのがAdmiralのすごいところなのさ」

「そーそー」

 ドカッと隣に座りながらステーキと一緒にイタリアンワインを持ってきたのは、今回の作戦で大活躍してくれた天霧だった。

「提督は本当にすごいと思う。それこそ、戦いが終わったら大統領にでもなっちまうんじゃないかってあたしは思うね」

「大統領って……そっか、天霧が戦闘中にひき潰したPTボートに後の大統領が乗ってたんだっけ。えーと、あの暗殺された……あぁ、そうだ。ジョン・F・ケネディ大統領」

「そーそー。あたしは沈んじまったけど、生き延びたあたしの乗員たちが彼の就任の際にお祝いの言葉を送ったんだぜー。やーほんと、縁は異なもの味なものってねぇ~」

 『にひひ』と笑う天霧はどこか悪戯っ子のようにも見えるが、気安いやり取りに音無はなんとなく笑っていた。

 すると、そんな音無の笑顔を見た天霧が急にモジモジしだした。

「どうした?なにか欲しいものあるか?鳳翔さ……」

「あ、いや、そうじゃなくってさ……提督ってさ、あたしみたいなのでも勃つ?」

 あまりにド直球な質問に、思わず口に含んだビールを『ぶふーっ!』と噴き出してしまった。当然ながら結構な勢いで咽てしまう。

 鳳翔も『あらあらぁ』と陸奥みたいなことを言いながら笑っていた。

「だ、大丈夫かAdmiral!?」

 Scharnhorstが背中をさすってくれるが、音無の方は完全に動揺してしまっていた。

「い、いきなりなんつーこと聞くんだお前……は、鼻からビールが……」

「や、だってさ……気になったんだから仕方ないだろー?」

 だからと言っていきなり『勃つ?』はどうかと思うが。

 逆に言えば、そんなド直球なところも天霧らしいのだろう。

 なので、音無もちゃんと答えてやることにした。

「勃つか勃たないかって言ったら間違いなく勃つぞ」

「で、でもあたし……千歳さんたちみたいにおっぱいおっきくないぞ?」

「おっぱいなんて関係あるかよ。俺、如月だって抱いてるんだぜ?」

 如月は『睦月型では一番豊満』とは言うが、それでもBカップくらいである。また、大淀や瑞鶴もどちらかと言えばスレンダー系である。

 鹵獲改装組の相手が多い都合上、どうしても豊満系が多い音無だが、何度も言うように初恋が貧乳どころか幼女体形のかなでであるため、本人に言わせれば『胸の大小は関係ない』のだ。

「そ、そうかな……でも、あたし腹筋も割れてるぞ?あんまり女っぽくないぞ?」

「天霧の場合は胸よりも、足やお尻の方に魅力があるように思うぞ。女としての魅力なんて人それぞれなんだから、気にすることないって」

 音無がいい笑顔で言うものだから、天霧は『ふわぁ……』と顔を真っ赤にしてしまった。

「(やばー……提督が艦娘殺しなの話には聞いてたけど……言われてみるとメッチャ照れるぅー……そんなこと言われたら……よしっ)」

 天霧はそこで心を決めたようだった。

「じゃー提督……抱いて」

「だからなんでそうド直球なんだお前はっ‼いいけどさっ‼」

 思わずツッコミを入れてしまった音無に、鳳翔もScharnhorstも、そして他に飲んでいた那智や隼鷹までもがクスクスと笑っているのだった。

 なお、Polaは意にも介さずにカパカパとボトルを空けていたという。

 アル重恐るべしである。




と、言うわけで登場した艦娘の名前は『紀伊』でした。
異世界と紀伊。これを結び付けるモノに辿り着けたら……ふふふふふ

それはそうと、夜戦は天霧になります。
天霧カワイイよ、天霧
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。