※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

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というわけで今週はいわゆる1-4です。
そして……私オリジナルの艦娘にして大和型を除けば推しといえる船が登場します‼


南西諸島防衛線

 遂に鎮守府周辺海域では最大の難所とも言われる南西諸島防衛線への出撃である。

 朝早くから起きていた蒼龍と瑞鶴は艦載機による攻撃の訓練を行っており、標的をいかに正確に早く沈めるかという点で競い合うようになっていた。

 艦爆と艦攻のそれぞれで戦果を競い合っている。

 音無はそんな光景を見て思わず呟く。

「やっぱり飛行機で先制攻撃ができるって言うのは、大きなアドバンテージなんだな……今までは千歳と千代田の瑞雲がメインだったけど、正規空母になって規模が大きくなるとここまで変わるんだな」

「まぁな。こんなことを言うと無粋って思われるかもしれないが、結局『数は力』、『戦いは数』なんだよな。現実ってのは非情だぜ」

 チャーの言うとおりだが、実際には『近い文明水準で』という捕捉が付く。

 仮に大砲が出現して間もない(年代的には1300年代前後)の文明水準の敵が1000を超える木造帆船で攻めてきたとしても、駆逐艦が15隻から20隻もいれば、アウトレンジ攻撃でほぼ確実に撃滅できてしまうからだ。

 航空戦力に関しても『持っている』だけで十分脅威ではあるが、仮に太平洋戦争開戦時の日本軍と戦おうと思った場合、一次大戦水準の航空機では零戦の格闘能力の高さの前にバッタバッタと叩き落されてしまうのがオチだろう。

 実際に欧州戦線ではそれなりの活躍を見せた空飛ぶ英国面・『フェアリー ソードフィッシュ』も、太平洋戦線では低速・低高度での小回りが尋常ではないほどに効く零戦の前に虫けらのごとく叩き落されてしまったという。

「もうすぐ練度が8まで上がるか……10まで上がったら実戦に出すか」

「そうだな。装備はこれでいいだろう」

 

 

○ 蒼龍 紫電改二×12・彗星一二型甲×27・紫電改二×18・二式艦上偵察機×7

○ 瑞鶴 流星×21・彗星一二型甲×21・流星×21・彩雲×12

○ 大井(以前と同じ装備)

○ 鈴谷(以前と同じ装備)

○ 摩耶(以前と同じ装備)

○ 榛名(以前と同じ装備)

 

 

 主力艦隊は演習も怠らないために練度も高く、空母の2隻以外は既に練度20を超えているという状態である。

 これも音無の『油断しない』という考え方から、ある程度練度を上げてから海域に挑ませるようにしているためである。

 そしてなにより、練度の向上を忘れさせないことで艦娘たちの慢心も防ぎたいという考えが根底にあった。

「皆、今回の海域には航空母艦が出現するという話だ。敵が先に皆を見つけた場合、アウトレンジ攻撃に晒されることになる。上空に敵艦載機を発見していて、こちらが発見していない場合は全速力で敵索敵機の索敵範囲から逃れるんだ。そうしないと圧倒的な攻撃を受けることになる。逆にこちらが先に敵空母を発見した場合、速攻で相手に航空攻撃を叩きこんでやれ。相手の対応が遅れれば航空戦闘を有利に運ぶこともできるはずだ」

 今までの海域とは大きく異なるからか、音無の訓示もつい長くなってしまう。

「掃討艦隊も含めて、新しい海域に出る場合は十分に注意してほしい。もし未知の敵、或いは強力な敵が出現した場合は無理に倒そうとする必要はない。攻撃をかわしつつ、撤退することを優先するんだ」

 鎮守府海域の完全開放間近になり、音無はなにか不慮の事態が起きた時のことをより強く意識するようになっていた。

「くれぐれも油断、慢心はしないように。かつての苦杯をなめたくなければな」

 その一言が旧海軍の出身である艦娘たちには突き刺さったらしく、彼女たちの顔が一瞬で引き締まった。

「今回の掃討艦隊には北上を旗艦とし、天龍、龍田、長良、古鷹、千歳、千代田に頼みたい」

 掃討艦隊もいつになく重厚な布陣である。

 今回は製油所地帯沿岸に向かわせるつもりである。あのポイントは近海で数少なく燃料を補給することができる場所である。

 敵もそれを承知しているので、取り戻しに来るのではないかと音無は踏んでいた。

 とにかく嫌な予感がするのだ。

 ここで油断して甚大な被害を受けるか、悪くすれば撃沈を出してしまうことを考えれば、たまに布陣を重厚にするくらいは許される程度に資源も余裕がある。

「全員、無事で帰ってこい。敵主力艦隊に向かう前に大破が出たら即撤退だ。無理はするな。帰ってもいい。帰れば、また行くことができるんだからな」

 その音無の台詞を聞いた艦娘たちは、なにか思うところがあるのかさらに顔を引き締めた。

「……よし。艦隊出撃!」

『了解‼』

 

 

――南西諸島防衛線

 南西諸島には多数の両用砲や高射機関砲が配備されており、深海棲艦の攻撃に備えられている激戦地でもある。

 具体的に言えば、取り返しても再び敵が占領時と同程度の規模で襲撃してくることがあるほど、と言えば規模が窺えるだろう。

 そんな海域を、6人の艦娘が進む。

 蒼龍を旗艦としたSSS鎮守府初の空母機動部隊である。

 雷巡1隻、重巡2隻に戦艦1隻もいるため、火力は十分である。

 問題は、敵空母の能力がどれほどかにもよる。

 音無はずっと不安に思っていたが、チャーに言わせれば『今の時点じゃオーバーキルもいい所だろうな』というところである。

 なぜならば、『鬼』クラス相手にも十分通じる紫電改二に加えて、開発できる艦爆・艦攻では高い能力を誇る彗星一二型甲と流星を積んでいるのだから、当然と言えば当然だが。

 既に偵察機が発艦し、各方面の偵察を行っていた。

「偵察機より入電!『敵艦隊発見。重巡リ級2隻、雷巡チ級1隻、駆逐ロ級2隻』の5隻です!」

『敵の前衛艦隊と見るべきだな。艦載機を発艦させて、敵を攻撃させろ』

「了解‼」

「艦隊見張りを厳として、よろしくね!」

 蒼龍と瑞鶴が紫電改二を発艦させるが、その直後に思わぬ報告が入った。

「……攻撃隊より入電。『駆逐イ級2隻轟沈、雷巡チ級轟沈、重巡リ級1隻大破』……だそうです」

 それを聞いた面々は、今までの瑞雲や軽空母としての千歳と千代田とは明らかに違う次元の攻撃力に戦慄する。

「うわ……すっご……」

「つーか、ほぼ壊滅じゃねえか……」

 鈴谷と摩耶も航空攻撃の恐ろしさは船だった頃に知識としては十分に知っていたが、それを艦娘として感じるのとでは大きな違いである。

 そんな落ち着かない皆を、軍艦としては最古参である榛名が引き締める。

「相手は壊滅状態とは言え、リ級が1隻無傷で残っています。確実に仕留めましょう」

 榛名の言葉に全員が頷くと、敵艦隊と接触した。

 なお、大井の甲標的は命中するかどうかわからなかったので今回は触接させなかった。

「攻撃隊、発艦始め!」

 蒼龍の気合ある掛け声と共に戦闘を開始するが、敵の旗艦である重巡リ級は大破状態となっており、かなり速力が落ちている。

 そこへ、中距離へ接近した艦隊が一気に副砲を撃ちかけると命中弾と至近弾で敵は混乱し、そのまま砲撃をするだけで2隻とも撃沈してしまった。

「……これだけ、ですか?」

 大井の言葉も納得で、これまでであればもう少し倒すのに時間がかかったであろう重巡リ級が、1隻は大破していたとはいえ呆気なく2隻撃沈してしまったのだ。

 艦載機の性能が優れているとはいえ、これほどのものとは思わなかった一同だった。

「損害がなかったことは喜ばしいですが、油断もいけません。気を引き締めていきましょう」

 榛名の言葉に全員が頷くと、索敵を繰り返しながら敵艦隊を探していく……。

 

 

 だが、それからの敵は全く歯ごたえがなかった。

 支援艦隊の戦艦ル級を旗艦とした艦隊にも出くわしたが、事前の航空攻撃と甲標的、そして大井たちが発射した魚雷が命中しただけで全て片付いてしまった。

 思わぬ楽な状態に、流石に気が緩んでくる艦娘たち。

「まっさか正規空母入るだけでこんなに変わるなんてねー」

「確かにな。改めて帝国海軍の先見の明を思い知るってもんだ」

 イギリスのタラント港空襲の際に航空機が戦艦を撃沈した戦果から、日本は『空母を組織的に運用することで艦隊決戦を有利に運べるのでは』と考えた。

 その結果が真珠湾攻撃であり、その後のミッドウェー海戦までの機動部隊の快進撃であったと言えるだろう。

 だが、そんな彼らの顔が一瞬にして引き締まる報告が入った。

「偵察機より入電!『敵主力艦隊ト思シキ艦隊発見。空母ヲ級1隻、軽母ヌ級1隻、重巡リ級2隻、軽巡ヘ級1隻、駆逐ニ級1隻』の6隻!」

 どうやら発見したのは摩耶の偵察機だったらしく、報告を受けた面々の顔が引き締まる。

「遂に、正規空母が相手ですね」

「軽母ヌ級もさっき相手したけど……あれとは比較にならないんでしょうね」

 それを聞いていた音無もここでようやく指示を出す。これまではある程度艦娘たちに任せていたが、そうもいかないだろうと判断したためだ。

『ついに敵主力艦隊だ。確実に倒すためには先制攻撃が重要だ。蒼龍と瑞鶴の攻撃隊は発艦できるか?』

「はい。問題ありません」

『なら急げ。敵に反撃のヒマを与えるな』

 実際、それでミッドウェーの際には装備転換の遅れで敵機襲来に間に合わなかったという話もある。

「了解……アウトレンジで、決めたいわねっ‼」

 2人から飛び立っていった攻撃隊は隊列を組んで敵主力艦隊へと向かっていく。

 かなり接近したところで敵艦隊も気づいたのか、迎撃機を上げてきた。

 だが、強化されていないヌ級とヲ級の艦載機では紫電改二の前には手も足も出ず、あっという間に制空権を確保されてしまった。

 そこに流星が一気に魚雷を投下する。

 その結果、あっという間に敵艦隊から爆炎が上がった。

「攻撃隊より入電。『空母ヲ級中破、軽母ヌ級中破、軽巡ヘ級撃沈、駆逐ニ級1隻撃沈』とのことです!」

「空母を完全に無力化できたのは大きいわ!流石は流星ね!」

 基本的に航空母艦は中破以上になると艦載機による攻撃が不可能になる(鬼・姫級の一部は除く)ため、そこまで追い詰めれば動くだけの的と化す。

 艦娘も同様だが、艦娘の場合は中破していても艦載機が残っていれば移動中であれば航空攻撃が可能となっている。

「さぁ、いっくわよー!」

 大井が甲標的を発進させる。まだ重巡リ級と駆逐ニ級が無傷で残っているため、甲標的も使用して攻撃を仕掛けることにしたのだ。

「榛名、全力で参りますっ‼」

 会敵したところで、機関の空母ヲ級と軽母ヌ級からは既に煙が上がっており、完全な的状態であった。

 さらに甲標的が魚雷を発射すると、水面にわずかな航跡が見えるようになる。

「最大船速!中射程に入り次第魚雷を発射、さらに副砲を斉射して魚雷の弾着を確認してから主砲斉射‼」

 そのまま進んでいくと、中距離に入ったところで重巡リ級が発砲してくるが、若干遠い。

 そして艦隊は魚雷を発射する位置に到達した。

「ぶっ殺されてぇか‼」

 さらに副砲を斉射すると残った敵に次々と命中し、さらに至近弾が出る。

「魚雷、到達‼」

 うまく敵艦隊を誘導できたようで、魚雷が甲標的のものを合わせて大量に到達した。

 その結果、駆逐ニ級と重巡リ級が轟沈した。

 だが、何気なく中破以上とはいえ空母2隻が残っている。

「うりゃぁ!」

 そこに4隻の砲撃が炸裂し、空母2隻も呆気なく撃沈した。

 ちなみに、音無の想定している危険度はもっと先の海域に行った時に起こりうるくらいの難易度である。

 現在の直接砲撃を行う戦闘艦に関しては練度20以上に達しているため、制空権を確保した上でこちら側に戦艦がいれば北方海域辺りまでは余裕で突破できるだけの戦力なのだ。

 なので、よほど油断しなければ、戦艦多数が現れても問題ない。

「どうやら片付いたみたいね」

「よかったぁー、提督が危惧していたような面倒も起きなかったねー」

 ここまで順調なので、皆ホッとしている。

「あら、あれは……?」

 大井の視線の先に、艦娘らしい影が見えた。

 現れたのは、吹雪に少し似た雰囲気の駆逐艦だった。

「どこかの鎮守府の艦隊ですか?」

「そうよ。あなたも来る?」

「はい。ぜひご一緒させて下さい」

 彼女を連れて艦隊は帰投する。

 

 

「で、この子が今回見つけた艦娘か。えぇと、名前は?」

「ごきげんよう。特型駆逐艦、綾波と申します」

 綾波。史実では第三次ソロモン沖海戦の際に『鬼神』と言われるほどの大活躍をした駆逐艦である。

 彼女の発射した砲弾がアメリカの最新鋭戦艦『サウスダコタ』の艦橋に飛び込み、電気系統や副砲の管制システムを含めて破壊したという話がある。

 そのことから、改二まで改装すれば高い能力を発揮する……というか、駆逐艦の中でも最上位に食い込むほどの実力を有する存在になるのだ。

 可愛い見た目に合わぬ武闘派なのである。

「へぇ……じゃあ榛名の妹はその後のサウスダコタと戦ってフルボッコにしたのか」

「そうですね。綾波さんの攻撃がなければ霧島はもっと苦戦していたどころか、サウスダコタに撃沈されていた可能性が高いと思います」

 つまり、本来建造された年代が20年以上違うはずの霧島とサウスダコタを互角の戦いに引きずり込むことに成功した立役者と言っても過言ではないのだ(あくまで一説だが)。

「そういうことなら演習を重ねて、それから現場に出てもらうことになるな」

「え、いきなり実戦じゃないんですか?」

「それは色々どうかと思う。やっぱりある程度とはいえ訓練を積んで、能力を上げてからの方がいいだろう。少しでも傷つくリスクは減らした方がいいからな」

 綾波は驚いた。確かに演習で練度を上げる提督も多いが、どちらかと言えばある程度実戦を経験してから、『なにか足りないものを補うため』に演習を行う場合も多いからである。

 だが音無は艦娘が将来的に受けるであろう被害を少しでも少なくするには、練度を上げて能力の向上に努めるべきだと考えていた。

 実戦に出すのはそれからでも遅くないということである。

「分かりました。頑張りますっ」

「頼んだぞ。如月、悪いが駆逐艦寮へ案内してやってくれ」

「はい、了解です」

 如月に連れていかれた綾波が出て言った直後、大淀が慌てて飛び込んできた。

「た、大変です提督!」

「ど、どうした!?」

「それが……北上さんたち掃討艦隊がほぼ全員中破以上で帰ってきました‼」

「なんだって!?」

 音無は大淀に連れられて帰投した港湾部へ向かった。

 そこには、先頭の北上を除いてあられもない姿になった艦娘たちが立っていた。

「皆!無事か‼」

「あ、提督~。私は平気なんだけど~……」

 実際、他の面々は酷い状態だった。中でも、千歳は特にボロボロであった。側にいた古鷹と千代田曰く、『轟沈寸前』だったそうである。

「千歳‼だ、大丈夫か!?なにがあったんだ……」

 それには中破して胸元が際どいことになっている天龍が答えた。

「それがよぉ、製油所地帯の制海権を取り戻そうとしやがったのか、戦艦ル級2隻、重巡リ級2隻、軽巡ヘ級2隻の艦隊が出てきてさ……」

「なんだってぇ!?」

 そんな重厚な艦隊、今までには出くわしたことのないタイプであった。

 さらに龍田と古鷹も続ける。

「恐らくですけど~、製油所地帯の警戒が薄いとみて一気に占領するための艦隊だったんじゃないかと思います~。占領してから他の艦を呼び寄せるつもりだったんじゃないかと~」

「でなければ、あんな『戦闘だけ』に特化した艦隊を送り込んでこないと思います」

「私は、大丈夫ですから、提督は戻って……」

 千歳が立ち上がろうとすると、音無はそれを聞きながら千歳を抱きかかえた。

「えっ!?て、提督!その……ダイエットしたって言っても重いですから!」

「バカッ‼そんなこと言ってる場合じゃねえだろう‼」

 そう言うと音無はそのまま千歳を抱えて走り出した。

 デスクワークで鈍っているかと思いきや、むしろ軽快に動き回る。

 そんな音無に掃討艦隊は続いていき、浴場(入渠場)へと向かった。

 音無は脱衣所へ到着すると、なんとぐったりしている千歳の服を自ら脱がせていった。

「ふぇ!?て、提督!自分で、自分でできますから‼」

「ケガ人は黙ってろ‼」

 いつになく鬼気迫る表情の音無に、なぜか千歳は胸をときめかせていた。

 それまで穏やかで優しい顔を見せていた音無が、これほど強い意志のある……言い換えれば男らしい顔を見せたことが、千歳をときめかせていた。

「(やだ……こんな状況なのに、男らしい提督が……カッコいい)」

 すると、なにを思ったのか、思わず呟いていた。

「あぁ……提督の優しさで……轟沈したかった……ス・テ・キ……」

 そのまま千歳は意識を失ってしまった。

 音無は迷わず全裸になった千歳を湯船に浸からせる。

「千代田、ここからはお前に任せる。頼んだぞ」

「はっ、はい……」

 あまりの堂々とした雰囲気に、千歳をひん剥かれたことにすら文句を言えなかった千代田であった。

 そのほかの4人も入渠して傷の修復にかかる。

 そして、旗艦であり無傷だった北上から話を聞くことにした。

「えっとねー、偵察機がその侵攻艦隊を見つけたんで、千歳と千代田に先制攻撃頼んだんだー。おかげで制空権は取れたんだけど~、古鷹以外は弾着観測できなくてさー、おまけに副砲も古鷹だけだったからほとんど当たらなくって……」

 つまり、堅い戦艦相手に中々ダメージを与えられなかったということらしい。

「結局中破する前に魚雷も撃ち込んだんだけど中々決定打にならなくてさー……その間に皆ボコボコにされちゃって……千歳はさ~、夜戦になった時に私のことを庇って大破しちゃったんだ。なんとかカットイン発動して勝てたけど……ちょっと危なかった」

 制空権を取ったにもかかわらず、これほど苦戦することがある。

 それは重要な話であった。

 音無としてはこの話は敢えてここまでにして、今後の対策として注意することにした。

「……ご苦労だった。で、誰かと会えたのか?」

「うん。会えたんだけど~……なんか見たことない子でさ~」

「見たことない?」

「うん。黒十字の紋章だからドイツの艦娘だと思うんだけど……なんでこんな鎮守府の近くにって感じでさ~」

 ひとまずその子に会ってみることにした。

「あっ、いたいた。この子だよ~」

 見ると、金髪に引き締まった体形の、グラマラスな女性が執務室で待っていた。

「すまない。艦隊の入渠を先に済ませてきたんで遅くなった」

「いや、修理は大事だ。仲間を大切にして、失わないようにする。甘ちゃんという野郎はいるかもだが、アタシから見て、Admiralの想いは間違っていないぜ」

 どこか荒っぽい口調で、海賊を思わせる雰囲気を漂わせている。

「グーテンモルゲン、Scharnhorst級戦艦1番艦、Scharnhorstだ。気軽にシャルと呼んでくれて構わないぜ」

「シャルンホルスト……?」

 音無は『艦娘一覧』をめくってみるが、そのような名前の艦娘は存在しなかった。

 だが、船としてのデータは掲載されていた。

 Scharnhorst級戦艦。ナチス・ドイツがフランスのダンケルク級戦艦に対抗するために計画した戦艦で、ナチス・ドイツの主力と言える戦艦の1隻であった。

 16万馬力という大和型戦艦を超える主機関によって、37200tの排水量を誇る船体(日本人に分かるように言えば扶桑型・伊勢型より少し軽いくらい)を32ノットという重巡洋艦並みの速度で航行させることが可能な巡洋戦艦であった。

 ただし、イギリスの建造した巡洋戦艦が『弱装甲・大火力』なのに対して、シャルンホルスト級は『強装甲・弱火力』という奇妙な存在であった。

 しかし、控えめな攻撃力とは裏腹に装甲の能力は高く、重要区画はイギリスが第二次世界大戦中に建造した『キング・ジョージ・V世』級戦艦(初期には35.6cm四連装砲装備の超弩級戦艦)に匹敵するモノとなっている。

 ビスマルクを含めたドイツの水上艦艇は、防御力を重視する方向にあるようだ。

 音無が鎮守府に設置されているパソコンの艦娘データ一覧を確認すると、以下のデータとなっていた。

 

 

○ 耐久・70

○ 装甲(初期値)・67(最終値80)

○ 回避(初期値)・34(最終値64)

○ 搭載数・5

○ 速力・高速

○ 射程・超長

○ 火力・55(87)

○ 雷装・24(51)

○ 対空・28(40)

○ 対潜・0

○ 索敵・12(30)

○ 運・12

 

 

 また、初期装備は以下となる。

 

 

○ 28・3cm三連装砲(火力+15・対空+5・命中+1・射程超長)

○ 15cm連装副砲(火力+4・対空+2・命中+2・射程中)

○ (×2)53cm三連装魚雷発射管(雷装+4・装甲+3・回避+1)

○ 無装備(×3)

 

ちなみにCVは『某第三帝国エースパイロットをモデルにした最強の猟犬お姉ちゃん』のイメージでどうか1つ。

 

 

 なんと、後に大型艦建造をすれば手に入るであろうビスマルク同様に最初から4スロットもあるため、高い汎用性を誇る。

 また、素で雷装値があるため、夜戦となれば下手な戦艦よりも高い火力を叩き出すことも可能だ。

 しかも、これで燃費は金剛型並みどころか、扶桑型並みに低いというおまけつき。

 これは、史実でドイツがワグナー式重油専燃缶を完成させていたことにちなむ。

 また、主砲の28.3cm三連装砲はシャルンホルスト級以外にも金剛型、扶桑型、伊勢型など、近い排水量の艦娘にフィットするようになっており、特にシャルンホルスト級に装備することで火力+2、装甲+2、命中+2のボーナス補正、さらにリロード時間0.75秒短縮というおまけつきである。

 これがその他のフィット戦艦になるとリロード短縮の補正と超長射程の確保のみとなる。

 だが、アウトレンジから攻撃できるうえに命中率も高いとくれば、かなり強力だ。

 史実と異なり、艦娘としてならばかなり高い能力を発揮してくれそうであった。

「分かった、シャル。ところで、なんで軍服を着ているのに海賊みたいな雰囲気なんだ?」

「ん?Admiralは、俺がどういう運用をされていたのか知らねぇのか?」

「あ、あぁ、悪い。その辺りは不勉強でな……」

「ハハハッ。ま、そりゃあそういう人もいるよなぁ。じゃあ教えてやるよ。俺は第三帝国において、通商破壊に用いられたんだ」

「通商破壊……確か、航行する商船を拿捕して積み荷を没収、その後撃沈するんだったか?」

「あぁ。もっともウチの主役はUボートだったし、戦果だって特設巡洋艦よりも少ないが、それでも第三帝国のため、大英帝国を叩くために奮闘したんだ。まぁ、最後は一度ボコボコにしたことのあるプリンス・オブ・ウェールズの妹であるデューク・オブ・ヨークにボコボコの意趣返しにされちまったけどな」

 これはデューク・オブ・ヨークがレーダーによる管制射撃を行ったのに対して、シャルンホルストは逆探知を恐れてレーダーを始動させていなかったことによって後手を踏んだという話もあり、艦の性能というよりはレーダーの性能によって敗北したと言っても過言ではない戦いだった。

「まぁ、いいレーダーを装備してくれれば俺もそれなりに頑張って見せるさ。だから、俺のこともうまく使ってくれよな?」

「あぁ、よろしく頼むよ。ただ『使う』って表現は好きじゃないな」

「え?」

「『使う』んじゃなくて、『頼む』んだ。そうだろう?」

「……ははっ、面白れぇAdmiralだ。分かった。『頼まれて』やるよ」

 ニカッ、と笑った眩しい笑顔に、思わず音無も笑顔を返した。

 榛名に彼女を戦艦寮へ案内するよう頼むと、音無はゆりと大淀を呼んだ。

「急にどうしたの?」

「……悪いんだけどさ、この後の執務、頼んでもいいかな」

「……ははぁ、千歳の側にいてあげたいんでしょ?」

「我がまま言ってるって自覚はある。でも、入渠が終わったらベッドに移るって聞いてな。目が覚めるまで側にいてやりたいんだ」

 どうやら、音無は千歳に対してどこか強い感情を抱いているらしい。

「分かったわ。今残っているくらいの量なら、私でもどうにかなると思う。気持ちと一緒に手も抜けたら困るからね。ちゃんと見守っててあげなさい」

「……すまない」

 音無は2人を執務室に残すと、部屋を後にした。

 艦娘という存在は、入渠で傷自体は修復されるのだが、それでも戦闘による肉体的な疲労などが抜けるまでは出撃することが難しくなる。

 だからこそ、大破まで追い込まれたような存在には余計に休息が必要なのだ。

 こうして大きな損害を受けながらも、SSS鎮守府は正面海域の解放に成功したのだった。




……はい。というわけでシャルンホルストの登場でした。
個人的に爽快なんですよね。航空機にやられるはずの戦艦が、その母艦である空母を戦艦のみの砲撃で沈めたのって。
ガンビー護衛空母で、しかも相手が栗田艦隊の大部隊だったのでまた意味が違いますし。
そして、大破した千歳を思う音無の心中やいかに……

次回もお楽しみに
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