今回は新たな仲間を大型艦建造でお迎えします。
こんなことを『やらなければいけない』鎮守府って一体……
朝食を摂りに食堂へ向かうと、真っ先に顔を合わせたGrafに『うわっ』という声を出されてしまった。
「どうした、グラーフ?」
「Admiral……瘦せたを通り越してやつれてないか!?」
「え?」
先程風呂に入る時は全く気になっていなかったのだが、Grafが手鏡を取り出して『ほらっ』と見せてくれる。
そこには、目の下に大きなクマのできた男がいた。
「……夜、激し過ぎるのかなぁ……」
「それだけではないだろう!Admiralは働き過ぎだっ‼本来艦娘に任せていいような仕事まで自分でやろうとするからだろう!」
「うっ……否定できない」
Grafは『全く……』と頭を抱えてしまった。
「……まぁ、そうやって艦娘のことを慮ってくれるのがAdmiralの素晴らしいところでもある。だが、それでAdmiralが倒れては本末転倒だ。これからは十分に気を付けてほしい」
「……善処します」
自分が弱っているという自覚がないどころか調子がいいと思っていただけに、若干ショックであった。
だが言われてふと思い出す。これはいわゆる、ランナーズハイに近い状態だったのではないのかと。
「(気を付けないとな……これからはもっと、仕事面でも皆のことを頼ろう)」
音無は書類仕事の得意そうな艦娘には何気に心当たりがあるので彼女たちに声をかけることを決める。
鳳翔さんと間宮のところへ行けば、相変わらず美味しそうな料理を出してくれている。
「お、今日は豚の生姜焼き?朝から結構ガッツリですね」
「あ、これは提督用です。赤城さんや加賀さんに食べさせようと思ったら2人くらいで豚1頭くらいは食べちゃいますから」
「え?」
鳳翔は笑みを崩さない。
「だって提督さん、お疲れでしょう?少しでもスタミナつけて下さいね」
「……はい」
こんな形で心配されている時点でもはや隠し事もへったくれもなかった。
実際激しい運動をしたこともあってか空腹感はかなり強いのでありがたく、腹一杯いただくことにする。
「(あぁ、ウマい。味噌汁や漬物も含めて身に染みる気がする……)」
疲れているという自覚がないとただ単に『ウマい』と思うだけだったが、空腹感の強い中で疲れていると実感しながら食べていると妙な美味しさがある。
すると、音無の隣に伊勢と日向が座った。
「提督。いよいよカスガダマ沖海戦だね」
「あぁ。ただ、聞いた話だけど装甲空母鬼は8回倒さなきゃいけないって言うからな。1回目は様子見と戦い方を見ることを考えてそれなりの艦隊を出そうと思う。ただ、航空戦艦にはできる限り出撃してもらいたいから、扶桑と山城とお前たちに交代で出撃してもらうつもりだ」
「なるほど。道中潜水艦が出るということか。ならばそこは瑞雲の出番だな!」
日向が目を輝かせながら言うが、音無もそこは慣れたもの。『そうだな』と言って普通にスルーした。
「最初なんでお前たちに、と思ったんだが……多少は扶桑たちにも戦場に出てもらいたいと思ってな」
音無の気配りに伊勢と日向も思わず笑顔になる。
「うん、いいんじゃないかな?」
「まぁ、そうなるな」
2人としても自分で出撃したいのだろうが、扶桑も山城も自分より先に着任しながらほとんど出番のない艦娘である。
今回のように航空戦艦が大きな力を発揮しやすい海域ならば、積極的に動かしてやりたいと思ったのだ。
交代で出撃させれば疲労抜きにも丁度いいだろう。
「他のメンバーはどうするの?」
「あぁ。まずは空母2隻。制空要員と攻撃担当に頼んで、熟練艦載機整備員を搭載する航空巡洋艦を1隻、そして対空カットインを発揮しやすい防空艦を1隻、かな」
先ほども言った通り、道中の潜水艦は艦載機で対処すればほぼ解決するのでそれほど問題ではない。
「なるほどね。相手の航空攻撃を潰しつつできる限り火力を確保した陣営だね」
「なるほど。扶桑たちなら十分できるだろう」
扶桑たちの装備は以下となる。
○ 41cm三連装改二・12.7cm連装高角砲・瑞雲改二(×9)・瑞雲改二(×23)+新型高温高圧缶(補強増設)
本来補強増設に新型高温高圧缶は搭載できないのだが、チャーのお陰で(以下略)。
「これに攻撃隊のSkyRaiderが加われば十分潰せるだろう。本当はもう少し対潜能力を高められればいいんだが……」
「そこは、もうどうにかする、でどうにかするしかないんじゃないかな?」
「そんな根性論で……まぁ、どうにかするか」
本当は伊勢型改二2名に瑞雲系列をガン積みすればかなり強力な対潜護衛艦と化すのだが、様子見も兼ねてという音無にしては珍しい偵察プレイである。
「仮にもし扶桑たちでそれなりに戦えるようなら最初の想定通りに交代で出撃してもらうけど、あまりに苦戦するようなら伊勢たちを中心に出撃させることになるだろうな」
「じゃあ、最初の空母ってどうするの?」
「対潜も確保したいから……制空担当は蒼龍や翔鶴に、対潜及び攻撃担当として隼鷹や瑞鶴を連れて行くことにしたい。航巡は利根や鈴谷に、防空艦として摩耶や五十鈴を行かせる」
「なるほど。軽空母としては搭載量の多い隼鷹なら攻撃担当としては順当だな」
「航空攻撃だけで片付くのならそれが一番だけど、もし接敵するようなことになったら……なんとか見つけて叩いてもらうしかないな」
不安要素があるとすれば、扶桑姉妹の運の低さだが、それを装備の充実ぶりで補うつもりである。
「そういえば提督。工廠長からなんだけど……」
「え、チャーから?」
伊勢が『これ』とメモを差し出してきた。
「……あ」
「どうした?」
「いや、備蓄している資材のうち、燃料と弾薬の中に使用期限があるモノが含まれてるから、そろそろある程度使ってくれってさ。大型艦建造にでも使うかな」
「っていうか、先に使わなければいけない資源を消費するために大型艦建造をする鎮守府って恐ろしいね……」
食事を終えた音無は千歳とScharnhorstとGraf Zeppelin、金剛とHornetを連れて行くことにした。
ついでに今日の秘書艦を務めている磯風が付いてきていた。
「Admiral。なにか目的の艦娘でもいるのか?」
「あぁ。できればドイツ、イギリス、アメリカの子でも来てくれればな、と思ってな」
「それでワタクシでしたカー!テートクに呼んでもらえるならどんなご用事でも嬉しいデース!」
「あなたはそれでいいの……?」
Hornetは呆れ顔だが、彼女も音無に呼んでもらえていること自体は嬉しいらしく微笑んでいる。
工廠へ入ると、相も変わらずチャーが色々と訳の分からないものを作り出しているようだ。
「お、来たな。悪いが頼むぜ。2万ちょいも使えばしばらくはまた備蓄できるから」
「あぁ、分かった」
「資材管理のためわざわざ大型艦建造をするとは……それくらいの資源があの頃にあれば……」
落ち込む磯風の肩を、工廠で開発の手伝いをしていた同僚の浜風が『ポン』と叩いて慰めてくれていた。
「えっとじゃあまずは……戦艦レシピ行ってみるか」
音無が資材を投入すると、炉が『ガタガタゴットンズッタズダン!』と動き始める。
「なんだか久しぶりだな、この感じ」
「そういえばそうかもしれないな……ふふふ。またAdmiralに惚れる女が出るかな?」
「か、勘弁してくれシャル……もういっぱいいっぱいだっつーの」
「どうかな?そういいつつ見捨てないのがAdmiralだろう?」
すると、『チーン』という音と共に炉の扉が開く。そこに立っていたのは……
「グーテンターク!私はBismark級戦艦の1番艦Bismark!よーく覚えておくのね!」
「おぉ、ビスマルクか‼」
音無も勉強する中で知った、『欧州における艦隊同士の戦いで最大級の殊勲を上げた戦艦』。それがBismarckであった。
音無艦隊にもいる『Hood』と『Prince Of Wales』が、『Bismark』と『Prinz Eugen』と戦った際、38cm砲の一撃を受けて砲弾が弾薬庫で爆発したことで真っ二つになったのだ。
光学照準における砲撃の精度に関しては、ドイツに勝るものが無いとすら言わしめる戦果であった。
「あら。Scharnhorstじゃない。あなた、艦娘になっていたの?」
「まぁな。今はこのAdmiralの下で働いている。Bis、Admiralのことは敬えよ?なにせAdmiralはなぁ……」
Bismarckが『ゴクリ』と唾を呑む。一体どのような業績が飛び出してくるのやらと身構えているようだが、音無は『嫌な予感がする……』と別の意味で身構えた。
「30人近い艦娘をその股間の魚雷で虜にしている好色王なのだぞ」
「もうちょっとマシな紹介ないのかよぉっ!?」
Bismarckは『えぇ……』と若干引いていた。どちらかと言えば真面目なタチらしく『それでいいのか?』という眼つきをしている。
「おぉっと、そんな汚いモノを見るような目で見るなよ?俺を含めて皆Admiralのことを相応に想って関係を持っているってことさ」
「そ……そうなの?」
Scharnhorstは自信ありげに頷いた。
「あぁ。俺たちはAdmiralの在り方、やり方を見て『こいつはいい男だ』と思ったんだ。お前も……きっと分かる」
Scharnhorstが最後に見せた真剣な顔に、Bismarckもようやく納得したようだった。
「そう。Scharnhorstがそこまで言うのならばそうなのでしょうね。改めてよろしく頼むわね、Admiral」
「あぁ、よろしくな」
Bismarckは置かれていた椅子に座るとScharnhorstに質問する。
「あら、まだ大型艦建造をするの?ずいぶん余裕があるのね?」
「あぁ。劣化しちまう弾薬と燃料を優先的に使わないといけない状態になっちまったんだ」
「確かに……新鮮な弾薬と燃料を維持するのは重要なことね」
鋼材は錆びるがそれを落とせばいい。ボーキサイトもまた然り。しかし、弾薬の内部にある炸薬は湿気を帯びれば質が悪化し、燃料も放置しておけば劣化する。
なので、ある程度は使用する方がいいのだ。当然、あちこちへの出撃や掃討でも使用するが、それより持ち帰る量の方が多いのだ。
「じゃあ次は金剛に側に立ってもらって、と……よし」
ボタンを押し、再び炉が動き出す。
「そういえばテートクぅ。テートクはいつになったらワタシとBedInしてくれるんデスかー?」
「ぶふぅぅっ‼や、まぁ、その、いずれ、な……」
「いずれいずれってそんなに先延ばしにされたらワタシおばあちゃんになっちゃうデース!」
「いや、金剛は生まれ的にも既におばあちゃ……」
直後、磯風の横の壁に投げつけられたと思しきレンチが突き刺さった。
「なにを言ってるデスかー?私は永遠の美少女デース」
「……ハイ」
さっきと言っていることが違う気もしたが、磯風も黙らざるを得なかった。いくら後期型駆逐艦と言えども、力業での殴り合いでは戦艦には到底敵わないのだ。
それはさておき、おバカな話をしている間に建造が完了したようだった。
露の扉が開くと、中から出てきたのはこれまた戦艦のようだった。大口径と思しき砲塔が特徴的である。
「お初にお目にかかる。私はRenown級戦艦の2番艦、Repulseと言う」
「Renown級の2番艦……あぁっ、思い出した!マレー沖海戦で日本の陸上攻撃機隊と戦った巡洋戦艦かっ‼」
「そうだ。一次大戦の時から戦い抜いたのが私たちだ」
Repulse
イギリスが建造した『高速力と大口径砲の攻撃力を併せ持つ巡洋戦艦』の1隻である。
そもそも巡洋戦艦とは、『速力を高めて回避力を上げれば分厚い装甲はいらない』という判断の元で第一次世界大戦頃に多く建造された船である。
主砲として32000tの排水量の船体に38.1cm連装砲3基を搭載しながら31.5ノットという高速力を発揮することが可能だった。
だが、実際第一次世界大戦、ユトランド沖海戦の際に、イギリスの巡洋戦艦は砲塔天蓋を叩き割られて大破轟沈するものが多かった。結果として、巡洋戦艦のコンセプトは間違いであることが証明されてしまった。
結果として残ったRenown級及びHoodは後に改装が施され、装甲の積み増しやバルジの増設などを行っている。
だがそれでも防御能力の向上は不十分と言わざるを得なかったのは、Hoodを見ればわかるだろう。
そしてそれは、Renown級も同様だった。
マレー沖海戦において、RepulseはPrince Of Wales及び駆逐艦四隻と共に九六式陸上攻撃機、一式陸上攻撃機を中心とした2波に渡る陸上攻撃機隊と交戦した。
マレー沖海戦は広い大海原の上で艦隊と航空隊が真正面からぶつかり合う初めての戦いと言っても良かったが、護衛の戦闘機もない状態では、いかに広い海の上を高速航行できる艦隊と言えども、成す術はなかった。
第一波の攻撃でRepulseは爆弾1発の命中で済んだが、第2波の時に両舷に4本の魚雷を受ける。さらに後部にも被弾し、浸水の後沈んでしまったのだ。
「……私やWalesを喪失したことは、Hoodを喪失したことに比べればどうだったのかは分からない。だが、戦場の力関係は常に変化するもの。強きモノが現れれればそれまでの主力にとって代わる……それが世の常。こうして新たな生を受けたからには、その人生を全うしたいと思う」
自分が受けた攻撃、共に沈んだ船のことを思い出しているのか、Repulseの表情は少し曇っているように音無は感じた。その顔を見て、音無は口を開いた。
「お前の言う通り、新しい技術が生まれれば、廃れていく技術もある。それは、ここで多くの装備が開発されるのを見てきて理解してるつもりだ」
「そうでしょうね」
「だからって、俺はお前がダメだったなんて思わない」
「えっ?」
「船だろうと、人間だろうと、完全になれる奴なんていない。たくさんできることがあっても、なにか1つはできないことがある。10個やるべきことがあって1つしかできないなら、俺はその1つを思う存分やってほしい」
「Admiral……」
「艦種の数だけやれることはある。主力だけがいればいいなんて俺は思わない。お前たちが後ろで頑張ってくれるから、最前線は気兼ねなく戦える。艦娘に言うのもおかしいが、お前たちは主力艦隊を支える縁の下の力持ちなんだから」
その言葉を聞いたRepulseは嬉しそうな顔を見せた。
「……なるほど。ここにいる者たちが強い信頼を寄せるのも頷ける。改めてRepulse、当鎮守府に着任する」
そんなRepulseの要目は以下となる。
○ 耐久 60
○ 装甲 66
○ 回避 38
○ 搭載 16
○ 速力 高速(31ノット)
○ 射程 長
○ 火力 60
○ 雷装 20
○ 対空 36
○ 対潜 0
○ 索敵 14
○ 運 12
Warspiteと同じ主砲を使用してはいるが、Queen Elizabeth級戦艦よりも1基2門主砲が少ないということと巡洋戦艦ということもあって、火力と装甲は戦艦としては控えめと言っていい。
速力が高速であること、そしてマレー沖海戦で陸攻部隊の猛攻を1度は凌いだことから、それなりに回避の数値が高い。
装備は以下となる。
○ 38.1cmMk.Ⅰ連装砲(×4)
○ Swordfish(水上機型)(×4)
○ 10.2cm三連装砲(火力+3・命中+2・対空+3・回避+1)(×4)
○ 無装備(×4)
戦艦としては雷装値があることにより夜戦も得意だが、そこにSwordfishの水上機型を装備することでさらに雷装値が上昇するため、夜戦においてさらに有利となる。
また、改装すると装甲値と対空値が上昇し、『増設バルジ(大型艦)』と『QF 2ポンド8連装ポンポン砲』を持参する。
ちなみにイラストレーターは当然英国艦担当の方で、声帯の妖精さんは妙高や祥鳳と同じ声の方で1つ。
こうして2隻目としてRepulseがBismarckの隣に座り込んだ。
「よし、次は空母レシピを回して、っと……」
音無が炉を操作する姿を見たRepulseは隣に座るBismarckに質問する。
「なんだ、この鎮守府はそんなに資源があるのか?」
「色々あるようだ。少なくともこの鎮守府は資源が豊富らしい。羨ましい限りだ」
かつては敵対していた国の船同士だが、事ここに至っては争うような気持ちも起きないらしい。
Bismarckと本格的に因縁が深いのはどちらかと言えばArc LoyalやRodney、Hoodである。
そう言っている間に、炉の回転が終わったようだ。扉の中から出てきたのは、ワインレッドの服を着た女性だった。
「Buon Giorno!地中海生まれの航空母艦Aquilaです。活躍する……はずですー。楽しみにしてて!」
その名前を聞いたチャーが『はぁ?』と声を上げた。
「ど、どうした、チャー?」
「驚いたなぁ。こんなところでこいつが来るとは」
「ど、どういうことだ?」
チャーは持っていた工具を置くと説明を始めた。
「挨拶で察することができたかもしれないが、こいつはイタリアで建造が計画されていた航空母艦だ。本来はイタリア艦娘を秘書艦にしなければ建造できない(2024年頃、現在は可能)はずなんだが……Grafに引き寄せられたのかもしれないな」
「え?」
Aquila
チャーの説明した通り、イタリアで客船だったローマが改装されて完成する予定だった航空母艦である。
未完成のまま沈められたことから運の数値はもちろんだが、搭載数を含めた能力もそれほど高いとは言い難い。
「それと特徴なんだが、実はAquilaは建造途中だったGrafの2番艦、ペーター・シュトラーザーのパーツを流用したという経緯がある。恐らくだが、それが理由だろうな」
「そんな経緯があったのか……っていうか、こうして見ると枢軸側で空母をしっかり完成させて運用方法まで確立させることができたのって日本だけなんだな……」
事実、日本の空母保有数は世界第3位だった。あくまで艦隊決戦時の戦力として使おうとしたことで多くに失敗したと言っていい。
大鷹型なども結果として護衛空母となったが、本来は艦隊決戦向けに改装された存在である。
「ウチはとにかく来てくれる奴には色々な仕事がある。言っておくが、結構ハードだぞ?」
「はい。このAquila、正式配備されたらこうなっていただろうという活躍をしてみせますっ!」
見た目通りのラテン系、元気な感じの艦娘のようだ。同じ未成艦だったGrafとはかなり態度が違う。
そしてなんと言っても、Grafに負けず劣らずの豊満なバストについつい目が行ってしまう音無だった。
「じゃあ、よろしく頼むぞ」
音無はAquilaを座らせると、再びレシピを回した。
「今度は最低値で回してみるけど、どんな奴が来るかな?」
「巡洋艦か、旧式戦艦が来るかもしれないわね」
Hornetの言葉と共に建造が終わり、炉がオープンする。
そこには、扶桑型のような巨大艤装を装備した長身の女性が立っていた……ただし、扶桑型のようなアンバランスさはあまりない。
「Harrow!あなたがAdmiralなのねっ‼私はPennsylvania級戦艦の1番艦、Pennsylvaniaよ!よろしくお願いするわっ!」
「Pennsylvania……ネヴァダ級を拡大した35.6cm三連装砲を装備した戦艦か。すごい艤装だな……」
Pennsylvania
Nevada級戦艦の全長と排水量を1割増しにしたような戦艦である。主砲の門数は三連装4基12門と、火力というだけならば初期の扶桑型、伊勢型と同レベルである。
しかも、扶桑型や伊勢型のような連装砲6基というバランスの悪い配置ではなく、三連装4基という集中防御に適した形状となっているのが特徴だ。
速力こそ21ノットと遅いが、バランスという意味ではかなり整っている戦艦と言っても過言ではないだろう。
豊満な体つきと日焼けした肌の雰囲気から一見『元気なアメリカンガール』と言った風情だが、音無はその目の中に潜む『色』を見た。
「安心しろ。お前を実験艦にしたりはしないよ」
「えっ……ご存じなのですか?」
軽微な損傷だった彼女は太平洋戦線で活動した後、1946年に核実験・クロスロード作戦の標的艦となった後に1948年に航空攻撃と艦砲射撃を受けて沈んでいる。
SaratogaやPrinz Eugen、長門などのように核実験の標的になったことは、彼女の心に大きな傷を残しているらしい。
「あぁ。とはいっても、本当に資料を読んで知っているだけだけどな。気休め程度かもしれないけど、体全体を苦しめる痛みなら俺は知っている」
音無はかつて医科大学のセンター試験へ向かう際に、乗った電車がトンネルの崩落事故に巻き込まれた。電車が脱線して大きな衝撃が発生したことで、乗客の一部は車内で体が宙に浮き体を叩き付けられた。
その際、音無も体を打ち付け、よりにもよって内臓に損傷を負ってしまったのだ。音無はその激痛に耐えながら、20人以上いた生存者の多くを助けるために奔走した。結果として、トンネルが開通して助かる直前で体が限界を迎え、音無は息を引き取った。
その話をベッドの上でピロートークとして聞いていたScharnhorstは思わず『あっ……』と声を漏らしていた。
その時に脇腹を押さえながら語る音無の顔が、あまりに辛そうだったことが印象的だったのだ。
「痛みを思い出して、苦しむ時もある。俺だって、俺を殺したあの痛みが、あの時我慢した分、今になって思い出してうなされる。これは、千歳たちに甘えても忘れることはできないし、皆にはすまないが俺しか分からないものだ。分からなくていいけどな」
それについては、千歳ももっともだと思う。自分にできるのは、音無をそっと抱き締めることくらいだと自覚もしている。
「でも、お前は違う。お前と同じ痛みを味わった船が、ここにはいる」
音無がPennsylvaniaの後ろに視線を移すと、彼女も振り向く。視線の先には、Pennsylvaniaを慈しむ眼差しで見つめるSaratogaと、真剣な眼差しで見る長門が立っていた。
「胸騒ぎがして来てみれば、まさかお前が来るとはな」
長門もSaratogaも、Pennsylvaniaと同じクロスロード作戦において核実験の標的にされた船である。そのため、核爆発の苦しみと痛みはよく知っている。
「ここにはその痛みを分かち合える艦娘がいる。だから、苦しい時は苦しいと言っていい。同じ痛みを知っているからこそ、彼女たちならお前を支えられる。俺も、お前を支えたい」
「Admiral……」
音無が微笑むと、Pennsylvaniaの表情も少し解れたように見える。
「ありがとうございます。私も、皆と支え合えればいいと思います。改めまして、Pennsylvania級戦艦、Pennsylvania、決戦から支援までお任せください‼」
ちなみにイラストレーターはSaratogaと同じ人で、声帯の妖精さんは腰に重傷を負った某隊長ウィッチの声で1つ。
何故かと言えば、Pennsylvaniaは終戦間際に日本海軍の『天山』攻撃機の夜間雷撃を受けて艦尾を損傷している、と言うところからである。
そして今度は空母レシピで回してみる。
「え、なにこの鎮守府。相当資源溜まってるじゃない!」
「そうなの。それがここの特徴よ」
「へ~……」
そして、扉が開くと共に出てきたのは、露出の低い服に身を包んだ少女だった。
「陸軍特種船『神州丸』です。統合的な上陸戦力を投射できる本格的な強襲揚陸艦の先駆けとして建造されました。揚陸作戦はお任せください」
「神州丸って……あきつ丸の先輩か!?」
神州丸
本人の言う通り大日本帝国が世界に先駆けて建造した強襲揚陸艦の先駆けとも言うべき存在である。
これまた世界に先駆けて実用化された大発動艇を用いた揚陸能力はとても高く、当時としては素晴らしい存在であった。
「揚陸艦か……今後は上陸作戦も増えてくるだろうから、きっと出番があるはずだ。色々頼むことになるが……よろしくな」
大本営からの情報によれば、敵が戦力を増強するべく地上型深海棲艦を多数送り込んでいる地域があるという。
そんな場所に戦力を投入するのであれば、揚陸艦は欠かせないだろう。
「はい。これより海軍麾下で行動することになります。よろしくお願いいたします。提督殿」
あきつ丸同様真面目なタイプらしいが、それだけに『変な方向に真面目じゃなけりゃいいけどな……』と危惧する音無だった。
すると、チャーが『だったら』と声を上げた。
「こいつを使ってやるとなにか役に立つかもな」
「え?」
チャーが取り出したのは、一見普通の特大発動艇だった。
ただし、その上には何人かの妖精さんらしい人物が乗っている。
「えーと……なにか特別な大発なのか?」
音無の声を聞いた妖精さんの1人が顔を上げると、ニコリと笑った。
『テイトクサンデスカ。ドーモドーモ、リーダーデス』
『ボクトウリョウ、ヨロシクネ!』
『オレハナガレイタ!リョウリナラマカセロ!』
『ボクコク○ントイイマス。ヨロシクオネガイシマスネ』
『オレベイベ!ガンバルカラナッ‼』
『ボク、シン○ロートイイマス!』
『オレハ、リチャ妖精ヤァ!』
「どんな妖精さんだ‼村か島の開拓でもさせるのか!海岸の回復させるのか!あれこれ職人技学ぶのか!漂着物でなにか作らせるのかああぁぁぁぁぁぁぁっ‼……はぁ、はぁ、はぁ……疲れた」
なんとビックリ、某日曜夜7時から放送しているバラエティ番組の農家兼職人兼漁師兼アルバイト兼アイドルの新旧メンバーのような名前を持つ妖精さんなのだ。
オマケなのか、やたら筋肉隆々の妖精さんが2人側にいる。
言うなれば『ランボー妖精』と『コマンドー妖精』だろう。
音無の魂のツッコミを見たリーダー妖精が音無の足を『ポン』と叩いた。
『ダイジョウブデスカ?ヨカッタラコレ、ドーゾ』
どこからともなく湯飲みが現れたため、落ち着かせるためにお茶を啜った。だが直後、そのあまりの苦みとえぐみに思わず涙目になりながら咽る音無だった。
「ぶへっ、ぶへっ、ぶへっ……うええぇぇぇぇ苦いいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……」
コーヒーのコクのある苦みとは違う、どこか薬臭いと言っていい苦みだった。よく見れば、キノコやら葉っぱやら色々なものが浮いている……。
「まぁそりゃ驚くよな。俺だって生み出した時は驚いたよ」
「……一応聞くけど、どんな装備よ?」
「こいつは『特大発動艇(T○KI○)』だ。この大発動艇を装備した艦娘を旗艦に据えて開発をすると、熟練などの高度な装備が出やすくなるらしい。それに上陸支援から畑の整備、漁業支援までこなしてくれる妖精さんたちだ。他の妖精さんたちに技術の伝授もしてくれるぞ」
「生活方面の妖精さんかよっ‼」
だが、『アイドルが副業』とまで言われるほどの能力を持つあの男たちの技術を受け継いでいるとなれば、確かに頼りになりそうである。
彼らはファンをして『島が鎮守府になった』だの『彼らなら戦艦すら建造しかねない』などと言われるほどの存在である。
「……まぁ、いいか。確かに生活を疎かにしたらいけないしな。今皆で管理している畑とかも管理してくれる人が増えるに越したことはないしな。よろしく頼むよ」
『ハイ。ボクラモセイイッパイガンバリマスネ』
腰の低いリーダー妖精だが、後に彼らが畑の整備や漁業支援ということで農具の整備や漁の仕掛けを作ってくれるようになったことで生活方面が大きく変化するのだった。
「え……なんなのこの鎮守府……人間が特殊な妖精さんを生み出すの……?」
「はっはっは。慣れろ、Bis」
Scharnhorstも遠い目をするしかなかったのだった。
……はい。またネタ装備に走りました。
しかし後悔はしていない……次回は6月21日に投稿しようと思います。