その夜は珍しく、誰とも肌を重ねずに翌朝を迎えた音無だった。なんと、最愛の千歳の姿すらないのだ。
「……なんか、すごく久しぶりの1人きりの朝だな」
ここ数か月はとっかえひっかえ艦娘を抱きまくっていたが、たまにはこういうのもありなのかもしれない。
しかし、タウイタウイ島という南国での環境ゆえか、多少体は火照っているようであり、汗で肌は若干べたついている。
「……流石にシャワーくらいは浴びるか」
ベッドから出た音無はのそのそと部屋を出て風呂場へ向かう。
「今日も朝帰りの子と会うかな?」
よくあることなのでそんなことを考えていたが、案の定想像は的中した。
夜間哨戒から戻って来たらしい3人の姿が見えた。誰かと思えば、矢矧、霞、そして龍鳳であった。
ちなみに龍鳳は既に改二戊に改装されているため、夜間作戦でもどんとこいである。
「おはよう。3人とも、夜間哨戒お疲れ様」
「いえ。提督の苦労を思えばこのくらい、どうということはありません」
「ま、まぁ、提督も頑張ってるのは分かってるわ。だから私たちだって頑張ってあげているのよっ」
「霞さん、あんまりツンツンしていると提督さんが困ってしまいますよ」
「うっ、わ、分かってるわよ……」
曙並み……いや、曙よりは若干マシとはいえ、霞もどちらかと言えばツンツン系の艦娘だ。しかし、音無の勤勉さと艦娘に対する愛情の強さは認めている。
確かに30人近い艦娘たちとセックスしまくりで一見やりたい放題しているように見えるが、実際には音無の方が艦娘たちに気を遣っている。
それを理解しているからか、曙や霞もそれほど音無への当たりは強くない。
「大丈夫だよ。ゆりとか岩沢みたいな美人でも変わり種ばっかり見てきたから、対して驚きはしないって」
「それはそれでどうかと思いますが……まぁ、言わんとするところは分かります。ところで提督、朝風呂ですか?」
「あぁ。久しぶりに1人で寝たんだけど、結構寝汗酷くってな。風呂に入ってサッパリしようと思ったんだ」
すると、龍鳳が『ポン』と手を合わせた。
「じゃあ、私たちも一緒に入って提督のお背中をお流ししましょう♪ついでに、私たちも提督に『食べて』いただければ♡」
「え、えぇ!?」
霞は驚いているが、矢矧は『あぁ。一理あるかも』と呟く。
「ちょ、ちょっと矢矧さん‼いいのそれ!?」
「いいも悪いも、提督と肉体関係を持つのは艦娘それぞれの自由でしょ。龍鳳がそうしたいというのなら止めることはないわ。それに私も……提督とならば関係を持つのはやぶさかではないって思うし」
流石はかつて神通、能代の跡を継いで二水戦の旗艦を勤めた矢矧だけあって、その辺りの考え方はかなり堂々としている。
霞の方が顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせていたが、そんな霞を見た音無の方が気を遣っていた。
「えぇと、霞は嫌なら無理しなくていいんだぞ?」
すると霞がムッとした顔で音無の方を睨んだ。
「バカにしないでよねっ‼べ、別に提督のことがキライなわけじゃないんだからっ‼え、エッチなことするのがちょっと怖いだけなんだからねっ‼」
ある意味素直な、ある意味へそ曲がりな霞らしい回答である。
「そうなのかー……じゃあ、どうする?一緒に来るか?」
霞は若干恥ずかしそうにしながらも『う、うん……』と頷いた。
「じゃあ、背中を流してもらおうかな」
こうして、またも音無と関係を持つ艦娘が増えるのだった。
もはや増え過ぎと言えばそこまでだが、音無も既に『もういいや』という感じで受け入れるようになっていた。
ちなみに、霞が破瓜の際に『提督の太いっ‼長いっ‼痛い、痛いってばぁ~!』とメチャクチャ痛がって結構泣かせてしまったので、後で龍鳳や矢矧と共に慰めつつ宥めてあげたのは別の話。
結局、大量の精液でボテ腹になった腹を抱えた霞にガミガミ文句を言われつつ、最後に『こ、今度はちゃんと気持ちよくしてよねっ』とさりげなく『次』を頼まれてしまうのだった。
なお、霞が音無に文句を言った件については後に姉の朝潮が『妹が失礼なことを言って』と謝罪してきたが、音無は自分が痛い思いをさせたのだからと笑って許すのだった。
風呂場で『ひと汗』流した音無は食堂へ向かう。
食堂では新たな艦娘たちを含めて大勢が食事をしていたが、今日の食事は随分とアメリカンな雰囲気だった。
「ポテトにハンバーグ……それにスクランブルエッグに大量の果物とスープ……それと玄米ご飯か。肉以外はすごいボリュームだな」
いくらオーストラリアとパプアニューギニアの方から安定した供給が為されているとはいえ、本来肉類はかなり貴重だ。提督である音無を始めとする一部の人にだけ多くが出される、と言えば供給状況が窺える。
もっとも、骨や食べづらい部位などは大量にあるので、それを料理担当がうまく調理するのがこの鎮守府の肝なのだが。
そんな今日の厨房に立っていたのは、新入りのPennsylvaniaであった。
「あら、Admiral。Good Morning」
「Pennsylvaniaが朝食を作ってくれたのか?」
「えぇ。ホウショウからダシの取り方を教わって、Cow・Boneのスープを作ったのよ。結構イケるでしょ?」
試しに一口啜ってみると、『ふわっ』と口の中に牛の味が広がる。それに少し黒胡椒を加えているのか、少しスパイシーな香りがする。
ちょっと入っているのは、恐らくテールの部分だろう。いわゆる牛テールのスープという奴だ。
「骨はいっぱいあるからね。ちゃんと利用しないと、『モッタイナイ』でしょ?」
どうやら着任して間もないが、かなり鎮守府に馴染んできたらしい。茶髪に艶のある肌をしているため、彼女がニッコリ笑うととても眩しい。
さらに胸を張れば、その大きな胸部装甲が『ぷるん』と元気良く弾む。
「よく知ってるな……アメリカ系だから大量生産・大量廃棄が当たり前なのかと思っていたんだけど」
「鎮守府の状況を知れば、そんなことを言えないのはすぐわかるわ。ステイツだって日本やドイツと戦った時には民間で多少の節制をしたものよ」
戦略物資の多くが自国及び近隣や友好国で手に入ったアメリカは日本やイギリス、ドイツなどに比べるとかなり余裕があった。
それでも人的・物的資源の多くはある程度統制せざるを得ないこともあっただろう。
「それに、ステイツは生産をなるべく一本化することで物資を節約できていた部分もあるわ。その点、この鎮守府は艦娘の兵器はともかく、陸戦兵器の多くがそうできているのはすごいと思うわ」
チャーが生産させた銃器類はなるべく口径を統一することで補給を効率化し、さらに高射機関砲の弾丸も調整を施して陸・海双方で使えるようにしてくれている。
旧日本軍の20mm高射機関砲が陸軍と海軍で同口径にもかかわらず弾丸の構造が違ったことで共用できなかったのは有名な話だ。
そのために航空機もかなり弄繰り回してあり、本来烈風などの戦闘機が主武装として20mm機関砲を積んでいるが、チャーの魔改造でブローニングM2を搭載することで安定した火力と命中精度を得ることに成功している。
また、ブローニングの傑作銃たるM2は構造が単純なので、大量生産しやすく整備性も高いことは稼働率を大幅に引き上げる要因となっていた。
大戦当時の日本が保有していた技術では難しかった大馬力液冷エンジンの整備についても、Unicornの協力で高い稼働率を維持できるようになった。
このため、彗星やSkyRaiderも高い性能を発揮できるようになっている。
他にも戦車は主力としてのTー34系列以外は、歩兵支援を中心としたチハを含めた一部だけに絞るなど、補給と整備性を効率化している。
チハなど、エンジンをロジーナと同じものに換装することで速度と燃費が大幅に向上したほどであった。
その代わり、エンジン部分が大きくなったので少し被弾しやすくなってしまったが、歩兵支援に投入する分にはそれほど問題はない。
国際協調の結果が、様々な形でこの鎮守府を強化しているのだ。
「さぁ、Admiralはいーっぱい食べて、今日もお仕事、頑張ってね♡」
「あぁ、いただくとするよ……お、この肉って普通とは少し違うな?」
「そうなのよ。Admiralの分は牛と豚の合いびき肉を多めにしているけど……少しだけソイミートを加えたのよ」
伊勢と日向を始めとする鹵獲改装組は食事の量がかなり増えているので、どうしても多少肉の量は制限しなければならないが、これに関してもチャーがある程度の解決策を出してくれた。
「大豆を使った大豆ミートでよけりゃある程度用意できるぜ」
鎮守府の畑では野菜を育てた後で大豆を育てることによって、畑の能力を回復させることをやっていた。
大豆はそれなりに備蓄があり、醬油や味噌を大量に作ってもなおある程度数があるほどである。
本来面積の小さなタウイタウイ島だが、チャーが使えるスペースを上手く活用したことがここで活きていた。
そして作付け量を増やすことで大豆肉に転用できる部分を増やしたのだ。
大豆は『畑の肉』と呼ばれるほど植物性たんぱく質が豊富なため、動物性が足りない際のタンパク質摂取にはありがたいのだ。
なお、現在はつい先日生まれた『例の妖精さん』たちが他の妖精さんたちにも農作業を教えており、戦線メンバーが『D○SH村だ……』と呟いていたという。
「なるほどな……使えるモノはなんでも使わないと」
「えぇ、その通りね。さ、食べて食べて♪」
Pennsylvaniaのボリューム満点な朝食に舌鼓を打つ音無であった。
朝食を終えた音無は今日出撃してもらうメンバーを集めた。
○ 最上改二(装備は昨日の鈴谷と同様)
○ Hornet Mk.Ⅱ(F6Fー5N×36・SkyRaider(中期型)×22・SkyRaider×22・Bー25(艦載型)×16)
○ Saratoga Mk.Ⅱ Mod.2(F6Fー5N×37残りスロットはSkyRaider+新型高温高圧缶)
○ 由良改二(15.2cm連装砲改・Hedgehog(初期型)・21号対空電探改二+Bofors 40mm機関砲 集中配備)
○ 伊勢改二(41cm三連装砲改二・15.5cm三連装砲(副砲)・残りスロット彗星二二型(六三四空)(熟練)+新型高温高圧缶)
○ 日向改二(四一cm三連装砲改二・15.5cm三連装砲(副砲)・残りスロット瑞雲改二(熟練)+新型高温高圧缶)
この中でHornetがMk.Ⅱになっているが、これはチャーが知る限りの『艦これ』では存在しない形態であった。
「どうかしら?甲板上だけだけどMicheleを搭載できるようになったのよ‼これで私は……私は、本当のシャングリラになれるわっ!」
そう。Hornetの4スロット目はBー25を搭載することに特化しており、他の艦載機を装備することができないというピーキーなスロットになっている代わりに、そこから投下される爆弾の量は急降下爆撃機とは比べ物にならないほどの破壊力を有する。
しかも、このBー25は地上型深海棲艦を攻撃する際にも大きな攻撃力を生み出すことができる。
それはBー25が急降下爆撃機ではなく大型の陸上爆撃機だからである。搭載量も単発機とは比べ物にならない多さ(SkyRaiderのことは言っちゃいけないお約束。そもそも年代が全然違う)である。
その他の数値も軒並み上昇しており、翔鶴型改二とほぼ同等、様々な意味で絶頂期の日本に空襲を成功させたということからか運も高めになっており40を超える。
「見てて、提督。私ももっと……もっと頑張ってみせるわ」
真面目なHornetだが、SSS鎮守府の空母勢ではかなりの古参に当たる。もっとも、実戦経験としては掃討以外であまり出撃したことがないことを本人にはそれなりに気にしているのだ。
なので、今回装甲空母鬼と戦えることを嬉しく思っているらしい。
「うふふふふ……シャングリラの力、見せてやるんだから」
翔鶴たちと激しい戦いを繰り広げたということもあってか、Hornetは結構好戦的な一面も持ち合わせているのだ。
それをまた、Hornetの心の内ではあることを決めていた。
だが、それを口には出さない。なぜなら、秋雲に言われたのだ。
『知ってる?〈帰ってきたら何々するんだ〉って言うと、それを言った人は死ぬ可能性が高くなるんだって~。創作モノじゃ〈死亡フラグ〉って言うんだよ~』
日本人がジンクスを気にして、縁起を担ぐのはよくあることだったが、SSS鎮守府の中でも古参で日本文化にもある程度馴染んできたHornetとしてはそれを守りたかったのだ。
「(だから、ちゃんと帰って来てから提督に伝えなきゃ。私のことも、ショウカクやズイカクみたいに抱いて欲しい、Sexしてほしいって……)」
その決意を秘めつつ、艦隊は出撃する。
――カスガダマ沖海域
最上と日向のカタパルトから瑞雲が飛び立ち、次々と敵艦隊を発見する。潜水艦隊は優先して潰していったため、由良は若干残念そうだった。
「私は対潜もこなすつもりだったんだけど……ほぼ瑞雲が片付けちゃってるからなぁ~……ま、それで済むに越したことはないのかなぁ~……ねっ」
それにはSaratogaやHornetも苦笑する。かつて日本の真珠湾攻撃で多数の艦船を沈められたアメリカ軍の一員としては、やはり思うところがあったようだ。
Hornetも航空母艦として翔鶴たち五航戦と戦って沈められたからか、航空戦についてはやはり強く意識しているのだ。
「敵主力艦隊はもう捉えているから、後はアウトレンジから攻撃するといいねっ。瑞鶴ならそう言いそうだよっ」
「ふふっ。ズイカクは本当にアウトレンジ戦法が好きよねぇ」
マリアナ沖海戦では完璧なアウトレンジ戦法を実施することができたのだが、米軍の高性能対空レーダー、そしてそれによって備えていた航空隊と近接信管搭載型の両用砲、大口径機関砲の防空網に潰されてしまった。
恐らく、太平洋戦争開始時であれば十分に通じた戦法だっただろう。時期が遅すぎたのだ。
「じゃあ私たちも……Saraの子たち、よろしくねっ」
飛び立ったヘルキャットは装甲空母鬼の方へと飛んでいく。
攻撃隊に気付いた装甲空母鬼からも直掩機が飛んでいくが、震電改ほどではないと言っても、震電改が『こんな機体があったならば』というIf装備なのに対して、この『F6F』ことヘルキャットは実在した、太平洋戦争時の最強艦載機である(陸上機ならば『Pー51』ムスタングがある)。
その制空戦闘力は圧倒的で、烈風くらいの艦載機でも十分に制空権確保ができる装甲空母鬼の艦載機程度では全く相手にならず、あっという間に防空網を突破してしまった。
しかも、敵機を駆逐したヘルキャットはそのまま装甲空母鬼に突っ込んでいき、翼下に搭載したロケット弾と機銃を一気に発射し、敵の対空戦闘力を削いでいく。
装甲空母鬼はまさか戦闘機からこのような攻撃を喰らうとは想定していなかったようで、明らかに狼狽していた。
ロケット弾と機銃弾が多数命中すると、装甲空母鬼の対空火器が次々と沈黙する。そこに今度はほぼ直角の角度でSkyRaiderが、60度近い角度で瑞雲改二が突入してきた。
瑞雲が手始めと言わんばかりに翼下のロケット弾を発射し、多数を命中させると共にSkyRaiderとタイミングを合わせて爆弾を投下した。
瑞雲の爆弾は強化しているとはいえなんとか500kg爆弾に近い威力という程度だが、SkyRaiderは800kg爆弾に加えて翼下にも多数の小型爆弾を搭載しているため、これが装甲空母鬼と浮遊要塞に多数命中する。
――ギャアアァァァアァァァァッ!?――
たった一度の航空攻撃だが、装甲空母鬼の浮遊要塞は全滅してしまった。また、装甲空母鬼も既に中破状態となっている。
「……これ、前回もそうだったらしいけどもう1回やったら全滅しそうだね」
「まぁ、そうなるな」
旗艦を任された最上は考える。まだ今後があるから無理して敵艦隊と接触せずに航空攻撃だけで全滅させてしまうか、それとも接敵して敵艦隊全てを倒すのか。
そして決めた。
「よし。ゆっくり接近しよう。接敵したら日向さんたちの攻撃で装甲空母鬼を沈めて、敵の射程外へ出て艦載機の準備をして、射程に入ってきたら一度くらい砲撃をして敵を削っておくのもいいかもしれないね。で、艦載機の準備ができたら航空攻撃でさらに相手を削って、そして倒せなかったら接近して砲撃戦で倒そうよ」
最上も伊達に古参のメンバーではなく、危険を隣り合わせにしつつもなるべく損害を負わないように、それでいて最大の戦果を挙げようと考えたようだ。
「えぇ。モガミさんの戦法でいいと思います」
「OK。モガミの言葉に従うわ」
第四船速で接近すると、装甲空母鬼もこちらに気付いたようで接近し始めた。
「減速。少しでも疲労を抜こうか」
最上の言葉を受けて艦隊が速度を落とし、敵との接触を待つ。接敵する直前に、艦載機の準備も完了した。
「さぁ行きましょうか。伊勢航空隊、発艦始めっ‼」
戦いが始まると同時にSkyRaiderが触接するが、その直後に航空攻撃を開始すると同時に空母2隻、航空戦艦2隻から航空隊が飛び立っていく。
「さぁ、行っちゃいますかっ‼」
多数の艦載機隊、そして伊勢から放たれた41cm砲弾が多数、装甲空母鬼に命中した。
扶桑たちの時とは比べ物にならない爆炎があがっていく。その炎と煙が消えた時、装甲空母鬼はもう海の底へと沈んでいた。
「どうよ?」
伊勢が誇らしげにその胸を張ると、服に包まれているはずの乳房が『ぽよん』と揺れるのだった。
戦艦タ級FlagShipを旗艦とした随伴艦隊が接近しようとするが、その間に伊勢が砲弾を装填し終わったため、丁字有利状態で待ち構えつつ、射程に入った瞬間に最上を含めた3隻で砲撃した。
「五月雨を、集めて早しって、芭蕉だっけ?」
放たれた41cm砲弾と20.3cm砲弾は戦艦タ級を中破させ、駆逐艦2隻をなにもさせずに撃沈させた。
「これでどうさ!」
しかし、タ級も負けじと主砲を発射してくる。砲弾は艦隊中央にいたSaratogaに命中する。
「やだ、もう……飛行甲板とお尻が……」
なんとか小破で済んだようだが、もうあまり余裕がない。
接近してきたところで中距離に入り、副砲の射程内に入った。重巡リ級Eliteが発射する前に多数の副砲弾による至近弾で混乱させることに成功した。
そこでようやく伊勢たちの主砲が装填完了する。
「面倒だな。ここで殲滅させてもらう」
日向の言葉と共に放たれた多数の砲弾が、残った2隻をあっという間に海の藻屑へと変えたのだった。
「まぁ悪くない」
今回のMVPは、最大の航空ダメージを与えたHornetだった。Bー25の投下した大量の爆弾が装甲空母鬼に多数命中して一気にダメージを与えたのだ。
「この戦い、Hornetの戦火が大きいっていうの?……まぁ、そうなるか。ごめんね皆、せっかくだからもらっておくけど、もちろん、これは皆の戦果よ」
真面目なHornetらしい言葉に皆も微笑む。
すると、由良が『あっ』と声を上げた。
「ねぇ、艦娘じゃない?ねっ」
近づいてきたのは、玉座のような巨大艤装を持った艦娘だった。その姿は美しく、まるでどこかの王族かと思わされるような威厳を備えている。
大きな連装砲は、戦艦のそれに見えるほど巨大であった。
「どこかの鎮守府の艦娘かしら?」
「うん、そうだよ。一緒に来る?」
「……Of Course」
こうして、2度目の戦いを終えて艦隊が帰投する。
こうして、今日邂逅した艦娘の挨拶が始まった。
「我が名はQueen Elizabeth class BattleShip Warspite!Admiral……よろしく、頼むわね」
「……どうでもいいけど、なんで晴れ着?」
すると、チャーが音無の袖を引っ張った。
「艦隊これくしょんの派生ゲーム、艦これアーケードではカスガダマ沖で晴れ着を着たWarspiteが出てくることがあるんだ」
「へ~……でも暑くないか?」
だが、Warspiteはニッコリと笑った。
「No Problem。すぐに着替えますね」
「え!?」
ここで脱ぎだすのかと思ったら、足元に月光妖精が立った。
『ムーンライトパワー!』
直後、美茄子妖精と他の妖精さんたちが垂れ幕を広げてWarspiteを囲む。するとWarspiteはテキパキと晴れ着を脱いで衣装を着替えたのだった。
それが終わった時、まるで女王様のようないで立ちの美しい女性が立っていた。
「はい。これで大丈夫です」
「垂れ幕が初めて役に立ったな!」
ツッコミを入れるが、そんな彼女はさておき他の艦娘たちの挨拶も聞く。
「秋月型防空駆逐艦『涼月』です。皆さんを、皆さんをいつまでもお守りできるよう……頑張ります。よろしくお願い致しします!」
「待たせたわね!丁型駆逐艦、松型、その一番艦、松よ‼大丈夫、すぐ出れる!護ってみせるわ!任せておいて!」
そして、残りは型録に載っていない艦娘だった。ただし、2隻はよく似た姿をしている。
「Harrow。私はLoyalNavyの駆逐艦、Amazonと申します。対戦護衛から航空標的まで、何なりとお申し付けください」
「どうも。私は駆逐艦、Anbuskeidよ?Amazonと同じ任務に就いた、準同型艦なのよ?よろしくねっ」
彼女たちはイギリスの駆逐艦なのだが、37ノットという高速と重武装が特徴だったにもかかわらず、第二次世界大戦時には主砲及び魚雷発射管を撤去してHedgehogを搭載する対潜護衛艦となっていた。
そのため彼女たちは特型駆逐艦とほぼ同等の能力なのだが、改装することで対潜値が大幅にアップし、先制対潜攻撃が可能になる。
だが、さらにコンバート改装すると航空機標的艦に変化するため、航空機の演習で練度を向上させることが可能になるという特徴もあるため、様々なことができる駆逐艦である。
「じゃあ近海の対潜哨戒にはうってつけだな。直井の指示で動いてもらおうかな?」
「お任せください。東奔西走して見せますわ」
「LoyalNavyの誇りにかけて、この海をお守りします」
2人揃って恭し気に音無にお辞儀をする。
イラストレーターは英国艦娘の方で、声は爆裂魔法をこよなく愛する魔法少女の声で1つ。
そして、最後は日の丸を付けた航空母艦と思しき艦娘だった。だが、明らかに正規空母と思しき雰囲気ながら、型録には載っていない艦娘だったのだ。
その姿を見た音無は、すぐに彼女のことを察した。
「もしかして、この間着任した紀伊と同じ系か?」
「まぁ、紀伊が着任してらっしゃるのですね。申し遅れました、私は赤城型航空母艦、生駒と申します」
「生駒……天城型巡洋戦艦になるはずだった船、だよな」
天城型巡洋戦艦
八八艦隊計画において整備されるはずだった、41cm砲を装備しつつ高速を発揮できる巡洋戦艦……になる予定だった船である。
折からの海軍軍縮条約の影響で廃艦となる予定だったが、天城型2隻、天城と赤城は空母となることで生き延びるはずだった。
しかし、その時に発生した関東大震災によって1番艦の天城は全損してしまい、2番艦の赤城、そして同じく建造中だった加賀が空母に改装されることになったのである。
音無と、今日の秘書艦である妙高が、表示されている数値を確認する。
「能力的には……運以外は赤城の初期と同じだな」
「やはりと言いますか、運が高めですね」
音無は生駒の顔を見た。
「生駒。紀伊から話は聞いている。今は話せない事情があるっていうことも……お前たちがどんな戦いを繰り広げてきたのか……いずれ聞かせてもらえる日が来ると信じている。だから、それまでは普通の艦娘として、頑張ってくれ」
てっきり自分たちの事情について詰問されるのだろうと思っていたらしい生駒は驚いた顔を見せたが、やがて『フッ』と穏やかな笑顔を見せた。
「なるほど……『あの方』が選ぶわけですね……分かりました。改めまして、航空母艦、生駒です。空母機動部隊であれば、私共にお任せくださいませ」
イラストレーターは当然芋なあの方で、声帯の妖精さんは吸血忍者や『けいおん』部で頑張っていた方と同じ声で1つ。
その夜、食堂にやってきた音無はとんでもない惨状を目の当たりにしていた。
「……なにがどうしてこうなった?」
そこには、魚の頭が顔を突き出したパイらしき料理や、臓物たっぷりらしいパイ、さらにウナギらしい魚をゼリーで閉じたような料理など、見た目からして奇妙奇天烈なモノが多数並んでいたのだった。
すると、金剛がげんなりした顔で近寄ってきた。
「テートクゥ……Im Sorryネ~……」
「な、なにがあったんだ金剛?」
「……今日着任したWarspiteたちがCookすると言ったらしくて……英国の艦娘たちと一緒にいーっぱい造ったのデース……」
そう。つまりは『世界でもトップレベルでマズい』と悪名高い『英国メシ』を大量に拵えたのである。
金剛も英国生まれの艦娘だが、育ちは日本ということになるため、味覚は日本人のそれである。
なので、これには色々思うところがあるらしい。
一方で大英帝国と関係の深かったオーストラリアのPerthやSidneyたちはとても嬉しそうな顔をしていた。
「ま、まぁ、見た目があれでも美味しいかもしれないじゃないか。まずは、ちゃんと食べてみないとな」
音無はそう言って、黒いペースト状のものが塗られたミートパイらしき料理を口に運んだ。その瞬間、かつてベジマイトを食べた時と同じ、死後の世界で校長室の廊下からトラップのハンマーに吹っ飛ばされる光景が頭をよぎったのだった。
『いー○も1人で歩○てた~……振り返○と……』
英国が誇る世界最悪の調味料(褒め言葉)であるマーマイトを食したことで、音無が完全に意識を刈り取られてぶっ倒れたのは言うまでもない。
なお、鳳翔は前回の例があるために黙って見ていただけだったが、意外なことに料理にうるさい艦娘たちは怒るのだった。
2時間後、音無は自分のベッドで目を覚ました。
「……またあの光景を目にすることになるとはな」
ボーっとしながらも起き上がろうとすると、誰かが手を握っているのに気付いた。視線を横にずらすと、ネイビーブルーのジャケットを脱いでノースリーブのシャツだけを着た金髪の美女がスウスウと寝息を立てていた。
「……ホーネット?ずっと一緒にいてくれたのか……」
すると音無の独り言に反応し、Hornetが『ピクリ』と動いた。
「ん……あっ、提督‼」
起き上がったHornetは、余程慌てたのか音無に抱き着いてきた。
「良かったっ……前もそうだったけど、提督ってば意外と弱いところあるからっ……」
「心配、かけちまったな。すまなかった」
音無としても、まさか一口食べただけで意識が飛ぶとは思っていなかった。以前のベジマイトの時もそうだったが、以外と音無は繊細な神経を持っているらしい。
すると、抱き付かれた音無はHornetの弾力豊かな女体に反応してしまう。
「あ、ホーネット。悪いんだけどちょっと離れて……」
だが、Hornetは『イヤっ』と言ってさらに抱き付いてきた。
「ゴメンなさい。ワガママって思われるかもしれないけど、イヤなの。もっと……もっとあなたにくっついていたいの……」
「いや、その気持ちは嬉しいんだけど……」
「……提督のことは分かってるわよ。私のお腹に、固いのが当たってるもの」
「うぅっ……」
やはりお見通しだったようだ。
Hornetは『なにを今更』と言わんばかりの顔だった。
「あのね、提督。私、今夜抱いて欲しいって言うつもりだったのよ。カスガダマ海域の解放に少しでも貢献出来たら言おうって決めてたの。でも、こんなことになっちゃって……本当に言っていいのかどうか迷っちゃって」
「……そうだったのか。気を遣わせちまったな」
音無がHornetの頭を撫でると、Hornetは『もうっ……』と顔を赤らめつつも嬉しそうにしていた。
だから、音無の方から切り出すことにした。
「なぁ、Hornet。お前を抱いてもいいか?」
直球。あまりに直球な言葉だったが、Hornetはそれに濃厚なディープキスで応えた。
唇を放すと、月明かりに彼女の笑顔がキラキラと輝いている姿がよく見える。
「えぇ、もちろんよ。My Admiral……」
と、いうわけでこの夜はホーネットさんがお相手します。
いいですよね、ホーネットさん……アーケードでの美人ぶりから、ブラウザ版を始めた時には早くお迎えしたいと願っていた艦娘の1人でした。
だからこそ、If改装のMk.Ⅱもこの中で出させていただきました