大騒動が起こりつつも攻略及び遠征をしているSSS鎮守府だったが、ここに来て新たな遠征活動を始めることになった。
その報告を大淀が音無に行う。
「ほー。じゃあガダルカナル島で敵が上陸作戦を決行しようとしているのか。それってかなりマズくないか?」
「はい。そのため、我が鎮守府にそれを妨害するための通商破壊部隊を送ってほしいとのことです」
「なるほどな……それは防衛の上でとても重要だな」
ガダルカナル島は国際連合軍の駐留部隊が日本から派遣された艦娘と共に防衛に当たっているのだが、圧倒的な敵の物量の前に若干押され気味らしい。
そのため、増援を送りたいとのことらしいがそれまで敵の陸上戦力の揚陸を邪魔して欲しいということであった。
「分かった。そういうことなら部隊を送ろう。艦種の指定とかあるのか?」
「はい。相手は輸送ワ級とそれを防衛する部隊なので、駆逐艦と巡洋艦級、それに軽空母級が中心となります。ただ、輸送艦隊を守りつつガダルカナル島を攻略するための部隊ということもあってか、護衛の深海棲艦もFlagShip級が多いなどかなり強力だそうです」
「だとすれば……こちらも相応の戦力を揃えないとな。戦艦も1隻くらい編成するか」
「あと、今回の派遣には敵戦力の数が多いことも鑑みて連合艦隊を編成して遠征させてほしいとのことです」
「連合艦隊……6人を一つの艦隊として、2個艦隊を派遣するってことか」
「はい。いずれ大本営が発令するであろう大掛かりな作戦の時にも必要になると思われますので、それを艦娘たちに予行演習させるという意味では丁度いい話だと思います」
前任提督の時にも連合艦隊を編成して遠方へ部隊を送ったことがあったが、大淀や千歳は経験がなかったためにある意味初めてと言える。
「よし。派遣部隊については……ドイッチュラント級を加えるとして……」
考えた編成は以下となる。
第一艦隊
○ Graf Zeppelin Zwei
○ Aquila改
○ 最上改二
○ Die Admiral Graf Spee Zwei
○ Texas Mk.2
○ Pennsylvania改
第二艦隊
○ 初月改二
○ 由良改二
○ Bereaves改
○ 速吸改
○ Toor Zwei
○ Kormoran Zwei
特設巡洋艦が2隻含まれているのは、補給艦を兼ねてのことである。
速吸は航空燃料を、ToorとKormoranには艦娘本人向けの物資を搭載してもらった上で、行動してもらう。
Toorたち特設巡洋艦は大改装を経て主砲が高角砲に換装されており、5スロットによる機銃搭載力もあって対空能力が大幅に向上しているのも特徴だ。
また、Texasも大改装を経たことで速力が22ノットから25ノットまで向上している……低速であることには変わらないのだが、燃費が金剛型初期並みという点はありがたい。
ドイッチュラント級、それにTexasとPennsylvaniaは基本的に弾薬の補充だけでもある程度事足りるだろうが、他の艦はそうもいかない。
そのために貨物船改装の彼女たちに物資を満載してもらうのだ。
事実、貨物船・貨客船の一部は潜水艦向けの補給物資を搭載した特設潜水母艦となっていることもあって、この規模の艦隊であればある程度の期間限定ではあるが補給は可能となる。
音無としてはできる限り長期間張り付いてもらうことで、可能な限り敵の陸上戦力を漸減してもらうつもりであった。
1隻でも多く沈めることで、その分味方の補給を支援する。それが音無の考えであった。
しかし、問題は指揮官であった。
一応指示を飛ばさなくても旗艦の判断である程度の行動は可能だが、司令官が指示を飛ばすのとそうでないのとでは全く話が違う。
すると、話を聞いていたゆりが『にやり』と笑った。
「それなんだけど……岩沢さんとひさ子さんが共同でやらせてくれないかって言ってきてるの」
「え、岩沢たちが?」
「そうよ。今まで一応権限こそ持ってたけどなにもしてなかったでしょ?だから……ま、ここから先は本人に話してもらった方がいいわね」
ゆりが『入っていいわよ』と言うと、岩沢とひさ子の2人が執務室に入ってくる。
どうでもいいことだが、2人とも結構日焼けしていた。
恐らく、畑や海での作業も多かったことが原因だろう。
ひさ子などこんがりと焼けており、褐色肌のTexasといい勝負であった。もっとも、そのお陰で彼女の健康的な美が強調されているわけだが。
「話はゆりから聞いたよ。いいのか?手伝ってもらえると助かるけど」
「あぁ、構わないよ。ただ……頼みがあるんだ」
岩沢が真剣な顔で言うので、なにか望みがあるのだろうと考えた音無は身構える。
しかし、岩沢の口から出てきたのはある意味彼女らしい、しかしある意味今に相応しいとは言えない『ライブやりたい』の一言だった。
音無はポカンと口を開けてしまい、側に立っていた大淀と今日の秘書艦を努める那珂がずっこけてしまった。
「ラ、ライブですか!?こんな時に!?」
「いや、ある意味岩沢らしい言葉だとは思ったけど……」
「それにしたってでしょー‼ライブやるなら那珂ちゃんにもやらせてよー‼」
「そっちかよ‼」
忘れてはいけない。川内型軽巡洋艦3番艦那珂は、『自称』艦隊のアイドルなのだ。
この鎮守府に着任してからは他の艦娘たち同様に演習に遠征、海域掃討に励んでいたこともあってアイドル活動と言えるものはできていなかったこともあってか、本人からすれば色々と思うところがあったらしい。
「まぁ、そういうことなら……カスガダマ沖を解放した後、最後に深海棲艦の東洋艦隊の根拠地を支配する港湾棲姫を叩く必要があるから、それが終わったらでいいか?」
「いい。それまで頑張る」
相変わらず口数は少ないが、明らかに目を輝かせていた。どうやら、歌えるというのが相当楽しみらしい。
岩沢は『早速準備しないと』と言って出ていってしまった。岩沢は戦線メンバーでは珍しく(失礼)頭も良いタイプなので問題ないだろうと音無も信頼していた。
そんな岩沢のことをひさ子が補足する。
「わりぃな。ほら、前に黒野提督を嵌めた時に一応それっぽいことはやったけど、あれ偽装だったから全力で歌えなかったみたいでさ……なまじそれっぽいことやったせいでフラストレーションが溜まってたみたいなんだ」
「あぁ……そりゃそうだよな。岩沢にとって音楽は生きがいだろうし、中途半端っていうのはプロからすりゃ当然イヤだよなぁ……」
「まぁ、そういうことだからさ、悪いけどよろしく頼むよ」
ひさ子に手を合わせて頼み込まれてしまうと、音無としても弱い。
「気にすんなって。チャーや竹山に相談して機材を揃えてもらうことになるだろうけど……どっちにしろ少し時間がかかりそうだな」
「あぁ。そういう意味でも、この西方海域を完全に解放したらやろうっていうのはちょうどいいと思うんだ。本当……ありがとな、音無君」
ひさ子が久しぶりに音無を君付けで呼んでニコリと微笑むと、音無もつい微笑んでしまう。その時、ひさ子の目に見えた『喜び』の色はとても眩しく、だからこそ音無は『あの時』を思い出してしまった。
「……今度は、離すなよ」
「え?」
「岩沢の手さ。お前も一緒に行けるまで……離すんじゃないぞ」
ひさ子はかつて死後の世界にいた時、岩沢に先立たれてしまった。
後輩たちの前では気丈に振舞っていたが、長い間共に過ごした『相棒』を失ったショックは重く、音無と2人きりになった時には涙を堪えることができずに泣き出してしまったことがあった。
もちろん音無は気付いていないことだが、それ以来ひさ子は音無に対して強い意識を抱いていた。
転生し、音無はかなでと引き裂かれてしまった。だからこそ今度は自分が支えられるようになれればいいと思っていた。
しかし、その役目はひさ子のものではなかった。
千歳を始めとする艦娘たちが、様々な形で音無のことを支えるようになり、遂には肉体関係を持つようになった。
だから、ひさ子は自分の想いは封印しなければいけないと思っていた。
そんな時、ゆりが音無と寝たという話を聞いて驚いた。
てっきり音無を支えるのは艦娘ばかりかと思いきや、ゆりもその輪の中に加わったのだ。しかし、ゆりは音無を支えるのではなくむしろ支えられている感じだった。
驚きはしたものの、これまで戦線のリーダーとして頑張ってきた彼女を変えた音無だからこそできることなのだと納得もできた。それと同時に、ゆりに言われたのだ。
『昔みたいにうじうじして自分の言いたいこと黙っていたら……また大事なもの、逃がしちゃうわよ?』
その一言を聞いた時、ひさ子の中で『なにか』が変わった。
「(もう迷わない。あたしも……あたしも音無に告白する)」
音無が西方海域を完全に開放し、つかの間の休息を取るようになったら、その時こそ自分も告白する、と決めたのだ。
だからそのために、今できる準備を進めているところだった。
それは、鹵獲改装組から母乳を分けてもらい、よく飲むようになったことだった。
鹵獲改装組の母乳を飲めば、内臓の許容量が増大する。そうすれば、異常な増大を見せている音無の射精を受けても耐えられると聞いたのである。
鹵獲改装組の面々も快く協力してくれており、1日3回、食前に500mlを飲むようにしている。
結構な量だが、それだけに最近食べる量も体全体の脂肪や筋肉も増えつつあった。
当然だが副作用として性欲も強くなっており、毎晩音無のことを想って自分で慰める日々である。
なお、それを秋雲に見られたことでえらい目を見たのが直井だったわけだが。
「よしっ、頑張るかっ」
ひさ子もまた自分の目的のために動き出すのだった。
そして、主力艦隊も出港用意を済ませていた。
「提督、こっちも準備できたよ~」
○ 鈴谷改二
○ 五十鈴改二
○ Saratoga Mk.2 Mod2
○ 加賀改二
○ 伊勢改二
○ 日向改二
相も変らぬ容赦のない編成である。
対空カットイン兼対潜要員としての五十鈴改二に、熟練艦載機整備員と瑞雲改二(熟練)を搭載した鈴谷改二、そして正規空母の搭載機でありながら対潜・対艦両方こなせるSkyRaiderを装備したSaratogaと加賀改二。
やはりこう言うべきだろう。『殺す気か』と。
だが、どれほど備えをしていても気は抜けないのが戦いである。
音無が読んだ本にも『勝敗は兵家の常』と書かれている。どのような状況であろうとも、慢心してはならないのだ。
これまでほとんど損傷を受けることなく戦えていたのは、間違いなく運が良かったからである。
もっとも、艦娘たちからすれば音無の方がかなり気にし過ぎだと思っている。
だが油断・慢心があってはならないのも事実なので、誰もなにも言わないのだ。
「いよいよ最後だ……姫に進化してからもこれまで事前情報通りの戦力だった。この8回目が最後らしいが、なんらかのイレギュラーが起こらないとも限らない。十分注意してほしい」
事実、かつて鹵獲改装組を見つけた時のワ級討伐任務の際にもElite級以上はいないとされていたが、最後の敵根拠地近くではElite級以上の敵が多数存在した。
さらにSaratogaも改装された『輸送棲姫』となっていたことを考えれば、確かにあり得ないことではない。
それを言われると弱い……特に鹵獲改装組の面々は渋い顔をしていた。
「確かに仰る通りです。それで痛い目を見たのが私たちだったのですから」
「そうね。その通りだわ」
一方、伊勢たちはそれでも目をギラギラと輝かせていた。その姿は強烈で、オーラのようなモノが見えるように思える。
状態で言えば宝石のような『キラキラ状態』ではなく、薪をくべ続けて燃え盛る炎のような『ギラギラ状態』と言うところか。
「だからって、負けるわけにはいかないよね」
「まぁ、そうなるな」
この2人は西方海域を解放……具体的にはカスガダマ沖海戦が終わったらそれぞれ音無と一晩を過ごすという約束をして、ずっと我慢していたのだ。
吹雪、睦月、夕立もその強烈な覇気に圧倒されている。
「……す、すごい威圧感……」
「でも、あれじゃ我慢が過ぎて精神の方が大破しちゃいそうな気がするにゃぁ……」
「言えてるっぽい……不安が結構募るっぽい?」
他の艦娘たちも同じ思いらしく、皆冷や汗を流していた。代表するかのように妙高が心配そうに『大丈夫ですか?』と音無に耳打ちしてきた。
音無はもう遠い目である。
「大丈夫。俺がちょっとだけ頑張ればいいだけさ」
「そういう問題ではないと思いますが!?」
そのやり取りを見たPennsylvaniaとBismarckもとんでもない光景に唖然としていた。
「この鎮守府っていつもこうなの!?」
「Admiralが爛れているのかと思っていたけど……むしろAdmiralは苦労している側なのね……」
「そうだぜ、Bis。Admiralの苦労は並大抵じゃねぇ……海軍大臣どころか、総統閣下以上の苦労をしょい込んでいる男なのさ」
「総統閣下よりもはるかに我々のことを気遣っているように思うわよ……倒れないかとても心配だわ……」
鈴谷や摩耶、天龍たちも『うんうん』と頷く。音無と肉体関係を持っている艦娘たちは、音無に甘える立場でもある。だが同時に彼のことを気遣うことも分かっていた。
今の音無の顔に、若干だが死相すら漂っていることに気付きながらも、彼が頑張れるようにサポートしようと思うくらいには。
「皆、頼むぞ‼」
「了解‼」
――カスガダマ沖
まず1つ。道中の艦隊は呆気なく蹴散らされていた。
というのも、Saratogaたちの艦載機はもちろんだが、伊勢の彗星二二型(六三四空)熟練と日向の瑞雲改二(六三四空)熟練の攻撃力がいつもよりかなり高い状態になっており、潜水艦も水上艦もあっという間に沈めてしまったのだった。
「……ねぇ、鈴谷。あの2人っていつもああだったかしら?」
「いや~……あんなんじゃないはずだよ。たぶん。一応」
鈴谷も自信なさげな言い回しになっているが、事実その通りである。
2人のやる気に当てられているのか、艦載機隊の力も通常状態よりはるかに高いのだ。2人の艦載機が潜水艦をほとんど蹴散らしたと言っても過言ではない。
「フフフ……あぁ、今夜が楽しみねぇ。ねぇ、日向?」
「まぁ、そうなるな」
それでいて艦載機隊への指示は一切の淀みがなく、全く油断も隙もない。
正直、対潜・対空カットイン要員でメンバーに入れてもらっていた五十鈴はほぼ手持ち無沙汰になってしまっていた。
「ぶぅ~……どうせ編成に入れてもらったんだからちゃんと仕事したいわぁ~」
「でも五十鈴のレーダーのお陰で相手の接近が分かるのはほんとにありがたいよ、ねっ」
そんな五十鈴のフォローをする鈴谷も大変である。一見軽く見える鈴谷だが、その実仲間想いなのだ。
すると、突然鈴谷の顔が引き締まる。
「偵察機より入電!敵主力艦隊発見!……え?」
「どうしましたか?」
鈴谷の顔が青ざめていく。
「装甲空母姫と浮遊要塞3基は変わらないんだけど……ず、随伴に戦艦タ級FlagShipじゃなくて戦艦棲鬼、重巡リ級FlagShipの代わりに戦艦ル級FlagShipがいるって‼」
「「「「「‼」」」」」
全員の顔に緊張が走った。やはり、イレギュラーが発生した。音無の危惧は正しかったのだと改めて思い知ったからである。
「と言っても、やることは変わりませんね」
「そうね。少しでも接敵前に弱らせましょう」
加賀とSaratogaの言葉に伊勢たちも頷く。
「ようし、伊勢航空隊、発艦始め‼」
五十鈴以外から艦載機が飛び立っていき、装甲空母姫の艦載機隊と交戦した。幸い、装甲空母姫の戦闘能力自体はそれまでと変わっていなかったこともあって装甲空母姫は一撃で大破まで追い込めた。
だが、戦艦棲鬼率いる随伴艦隊には事前の攻撃ができないため、弱らせることができない。
「やろうと思えば装甲空母姫は事前攻撃で撃沈できるけど……その場合ってどうなるかな?」
伊勢の言葉に加賀が渋い顔をする。
「もし提督の抱いている危惧が当たるとすれば……カスガダマに戦艦棲鬼が居座ってしまう可能性もありますね」
Saratogaも鈴谷も同じことを考えていたらしく、渋い顔だ。しかし、それでも強い意志を宿らせた瞳を見せる。
「傷を負うことを恐れては、真の平和を取り戻すことはできない……そう、思います」
「サラトガさん……」
「もしも……もしもそれで、私たちみたいになる艦娘が現れることになってはいけない……私はそう思います」
すると、通信を聞いていた音無が答えた。
『そうだな。本当なら傷を負って欲しくはない。でも、それで長蛇を逸することになってもよくない。皆、頑張ってくれるか?』
それを言われては、気後れなどしていられない。
「わかりました。提督にそのように期待されては……流石に気分が高揚します」
「そうね。Saraも頑張ります」
一同は航空隊の準備が整ったのを見計らい、装甲空母姫に接敵した。
「五十鈴には丸見えよ‼」
まずは随伴艦隊の方へ意識を向ける。幸い、装甲空母姫は既に大破状態なので砲撃もまるで当たる気配がない。
一応加賀がチラリと後方を警戒してくれているが、本当に砲弾が明後日の方向にばかり飛んでいく。
「……自分でやっておいてなんですが、えげつないですね。でも……鎧袖一触よ、心配いらないわ」
発艦した艦載機隊は戦艦棲鬼を旗艦とする随伴艦隊に向かっていく。敵は対空砲火を撃ち上げて来るが、まさかいきなりこちらに来るとは思っていなかったらしく、その砲火はまばらである。
「どう!?」
五十鈴は索敵機を搭載できないのでレーダーで状態を確認することしかできない。
すると、レーダーに映っていた輝点が3つ減っていた。
「あっ、戦艦棲鬼だけ残ってる‼」
見れば、中破状態だが戦艦棲鬼が残っていた。
「敵艦発砲‼」
戦艦棲鬼の放った砲弾は伊勢に向かって飛んでいく。
「伊勢!」
加賀が叫ぶが、伊勢は拳を突き出すとそのまま横に勢い良く振り払った。砲弾は『バキッ』という音を立てると、そのまま明後日の方向へ飛んでいく。
一方、弾いた側の伊勢には全くダメージが入っていないようだ。
「う、噓でしょ……?」
鈴谷が唖然としていると、後ろの方から爆発音が聞こえてきた。
「え、なに?」
振り返ると、なんと装甲空母姫が波間に消えていくではないか。
「え!?もしかして今の弾いた弾が当たったの!?」
「マンガじゃないんだけど!?」
鈴谷も五十鈴も驚くが、伊勢は視線を戦艦棲鬼から放さない。
「どうしたの、その程度かしら?」
戦艦棲鬼は伊勢たちの放つオーラに圧倒されたようで、明らかに怯んでいた。そこで伊勢たち3人が砲撃を見舞った。
「お返しだ、ゆくぞ‼」
日向の体が光り出すと、強烈な砲撃が戦艦棲鬼に向かって飛んでいく。
戦艦棲鬼は避けようとしたが、その間もなく砲弾が命中し、大破に追い込まれる。そこにダメ押しの連撃が加わり、戦艦棲鬼が瞬く間にズタボロになっていく。
そして最後の一撃が入った直後、戦艦棲鬼はそのまま海の底へと沈んで行ったのだった。あまりにも呆気ない、あまりにも早すぎる勝利であった。
「……うそぉ」
「こんなことあり……?」
「まぁ、悪くない」
日向のドヤ顔もいつも以上に誇らしげであった。
その様子に呆れていたが、考えている間に五十鈴の電探に反応があった。
「あっ、艦娘みたい」
近づいてきたのは、白を基調とした服を着た、戦艦らしい艦娘だった。
「どちらかの鎮守府の艦隊ですか?」
「そーだよー」
「付いて行ってもよろしいでしょうか?」
「いいよ~。じゃ、一緒にいこー」
鈴谷の案内を受け、その艦娘を連れて鎮守府へ帰投する。
「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦2番艦、リットリオです。火力と速度には自信があるの。よろしくお願いしますね」
「雲龍型航空母艦、天城と申します。提督、どうぞよろしくお願い致します。天城、精進いたします‼」
「提督、ごきげんよう。潜特型二番艦伊401です。しおいって呼んでね!」
「提督、ごきげんよう。潜特型の長女、一番艦、伊400です。ん……し…お……ん?そう…しおん…とお呼びください」
「Hi!あたしがフレッチャー級、USSジョンストンよ!Im going to be a fighting ship!文字通り弾が尽きるまで守ってみせる!今度もね!」
「ふああ、Buongiorno~?あたし、マエストラーレ級駆逐艦そう、末っ子です。名前はシロッコ。よろしくチャオ~」
そして、最後2人はまた見たことのない顔の、しかし見たことのあるようなタイプの艤装を持つ艦娘だった。
「初めまして。ここが、鎮守府?私はKing George ⅤClassBattleShip。その2番艦、Prince Of Walesです」
「プリンス・オブ・ウェールズ……レパルスと一緒に沈んだ東洋艦隊の戦艦か‼」
「そうよ。本当は……日本の戦艦と激しく撃ち合いたかったわ」
Prince Of Wales
King George Ⅴ世級戦艦の2番艦であり、その悲劇的な最期が世界的に見てもあまりに有名な戦艦である。
東洋艦隊の一翼を担う戦艦として重要な存在だったが、太平洋戦争開戦後に日本の九六式陸上攻撃機・一式陸攻の部隊の攻撃を受けて撃沈された戦艦である。
その時の戦闘により、『戦闘航行中の戦艦が、直掩機の援護なしで航空機の攻撃を受けた』ことで撃沈されたということで、世界にこれからの海戦は航空機、そして航空機を洋上で運用できる航空母艦が重要であると位置づけた戦いでもあった。
その数値は運と回避以外の全てがDuke Of Yokeと同じとなっている。
回避の数値は4高めだが、これはレパルス同様1度目の陸攻部隊の攻撃を凌いだことからそうなっている。
彼女が先程のような言葉を発したのも、太平洋戦争時の日本海軍と艦隊決戦することを望んでいたからである。
「西方海域が近いから来たのかな?ウチは色々な艦娘がいるけど、それぞれ色々な仕事があるから頑張ってくれよな」
「はい。今度こそ……今度こそ戦って戦って、絶対に勝ちに行きます」
ほぼ一方的と言っていい負け方をしたからか、戦いに勝ちたいという思いに飢えているようだ。戦艦と重巡という違いはあるが、案外足柄あたりと気が合いそうである。
イラストレーターは英国艦娘の方で、声帯の妖精さんはチャーチル戦車の車長の声の人で1つ。
そして最後は、見覚えのある白を基調とした色の制服だった。
「あれ、その制服って……長良型?」
「はいっ!私は長良型軽巡洋艦7番艦の吉野でーすっ!」
見た目は長良型姉妹の前半3人(長良・五十鈴・名取)に酷似しており、特に顔立ちは長女の長良そっくりの輪郭だった。
「げ、元気な奴だな……長良型の7番艦は聞いたことがない。ってことは、紀伊や生駒たちと同じか」
「あっ、紀伊さんたちがいらっしゃるんですねっ……あの、事情については……」
紀伊たちのこともあるので、音無は『大丈夫、時が来たら話してくれ』とあらかじめ言ってあげた。
吉野が『ほっ』と息を吐くと、音無が微笑みながらその頭を撫でる。
「事情があるっていうのは聞いてるから、その時まで待つさ」
「司令官……ありがとうございますっ」
数値は基本的に長良型姉妹とほぼ同じだが、対潜値が若干低め、その代わり火力と雷装値が少し高めだ。
そして最大の特徴はなんと言っても運の高さであろう。初期の時点で25というのは高めである。
「(やっぱりなんらかの事情があるってことだもんな……この運の高さ、終戦まで生き延びていたのかな?)」
そうは思いつつも、彼女たちが『時が来たら話す』と言ってくれている以上はそれを待つことにする。
その夜、少し前に着任した伊26ことニムが鳳翔を手伝って料理をしてくれていた……なお、格好はやはりスク水にパーカーという中々扇情的な格好である。
当然、『おっぱいニムニム』と称される豊満な乳房はパーカーのファスナーが閉めきれないこともあってほぼ丸出しである。
「……イクやはちもすごいけど、あの子も大概だよな……どうした、龍驤?」
「デカ乳は滅びればええのに……」
相も変わらず巨乳に対しては怨嗟の声を吐いているらしく、他の艦娘たちも『触らぬ神に祟りなし』と言わんばかりに避けていた。
「あっ、提督っ!今夜はニム特製の馬鈴薯たっぷりカレーだよー‼いっぱい食べてねー‼」
元気に手を振ってくれる姿は、煩悩全開になっている音無でさえ『カワイイなぁ』と微笑ましく思うくらいの愛らしさである。
それでもその豊満な乳房に目が行くことは忘れていないのだが。
直後、龍驤が『ふんっ!』と音無の足を思い切り踏んづけた。
「いったぁっ!な、なにすんだよ龍驤……」
「じゃかぁしぃ!乳揉むのも吸うのも大概にせんかいこの乳魔!」
だが、そんな龍驤の頭を鳳翔が『スパーン!』といい音を立てながら引っ叩いた。
「もう、龍驤さん。大きくて動くものを追うのは動物の本能なんです。それが乳か人そのものかというのはそれぞれでしょうけど、提督の場合は色々『特殊』ということを忘れてはいけませんよ?」
「うっ……せ、せやけどぉ……」
「ダ・メ・で・しょ?」
直後、『鳳翔の背後に不動明王か閻魔大王の幻覚が見えた』とは食事をしていた赤城と加賀の言であった。
こうなっては龍驤と言えどもなにも言えない。
「うぅ……ゴメンな、提督ぅ……ウチ、ついついカーっとなってもぅて……」
「いや、コンプレックスは人それぞれだからな。それに、俺自身自分が色々爛れている自覚はあるから、龍驤の言うことも間違ってないよ」
龍驤の頭を撫でると、龍驤は照れくさそうにしながらも微笑んでいた。
「ありがとう、鳳翔さん。なんだか助けられてばっかりだな」
「いいえ、いいんですよ。提督が頑張ってらっしゃるのは皆が知っていることですから。私もその一翼を担えれば、なんて……」
微笑む鳳翔に、音無もつられて笑顔になるのだった。
食事を終えた音無は、執務室でその日の最後の報告を受けた後、1時間ほど砂浜で月光浴をしていた。
「そういえば伊勢と日向、メシ食い終わったらさっさといなくなっちまったよなぁ……準備、してるのかな?」
ついつい考えているが、そんな音無の緊張を持続させないものがある。夜間哨戒をしてくれている『夜間戦闘機 月光』だ。
最近、月光は大改造を施されていた。機首のレーダーが小型化されてプラスチック製のレドームに収まるようになり、強力な排気タービンとターボ過給機を装備できたことにより、出力と上昇限度、最高速度が劇的に向上していた。
当然、パワーが上昇したことで搭載量も上がっている。
チャー曰く、『夜間戦闘機 月光改二(超・熟練)』とのことだ。
だが、それよりも『ワハハハハハー!』と高笑いしながら空を飛び回る姿を見るのは落ち着かない。
「……ま、いいか。なるようになれだ」
しばらく月明かりと夜風を堪能した音無は、1日の汗を流すべく風呂場へと向かった。
そして……衝撃の光景を目の当たりにする。
「……ナニコレ?」
さて、次回はいよいよ伊勢と日向との3Pです……どうなることやら。
次回は7月26日に投稿しようと思います。