※この作品はR-18です。

音無提督の艦娘救済道~ハーレム仕立て   作:笠三和大

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音無と千歳、シャルンホルストの謎

 千歳の入渠が終わったという報せを受けて、音無はゆりとチャーを残して退室した。

 チャーは音無と入れ違いに入ってきたが、どういう状態かは理解しているようだった。

「今、音無が出て行ったよな?千歳のことか?」

「流石に早耳ね。その通りよ」

 すると、チャーはScharnhorstに目を留めた。

「おい、こいつは?」

「彼女はドイツのScharnhorst級戦艦、シャルンホルストだって」

 すると、チャーが眉間に皺を寄せた。

「なに?シャルンホルスト?マジか?」

「え、えぇ」

 ゆりはなにがそんなに変なのかが理解できず、キョトンとする。

「……シャルンホルストっていう艦娘は、俺が生きていた世界では存在していない艦娘だ」

「えっ、そうなの!?」

「あぁ。少なくとも、俺が生きていた頃には、だがな」

 当のScharnhorstは『自分がいなかった』という話が理解できなかったらしく、首を傾げていた。

「ねぇ、なにが起こっているの?」

「なにが、って言うのは?」

「言葉の通りよ。シャルンホルストは存在しない艦娘だって言うし、今の話も気になるし、そもそもこんな近海に戦艦が出てくるって言うのもあなたから聞いた覚えがないわ」

 ゆりの言葉ももっともであり、チャーは考え込む様子を見せた。

 そしてしばらく考え続けてから不意に『これは俺の勝手な推測だが』と前置きした上で話し始めた。

「大淀、確かこの鎮守府、以前は1千人近い艦娘がいたって言っていたよな?」

「はい。海外艦などを含めて大所帯でした」

「だが、ある時深海棲艦の大攻勢を受けて一部を除いてほぼ全てが轟沈した、だったな?」

「はい。戦闘可能だったのは初期状態にまで戻ってしまった千歳さんと千代田さんだけで、私と明石さんは艤装を全て失い、明石さんに至っては大破着底に近い大損傷を受けました」

「だが、その代わり襲撃してきた倍近い数の深海棲艦も全て撃沈した、だったな?」

 大淀が改めて前の提督の時の記録を読む。

「はい。最後は旧式でしたが神風型駆逐艦数隻以上、そして金剛型戦艦姉妹が敵の指揮官……深海棲姫と我々が呼称する深海棲艦の大幹部に突貫し、相討ちで沈めました」

 つまり、最終的には旧式の艦が特攻する形でこの鎮守府を守り抜いた、ということらしい。

「それがどうかしたの、チャー?」

「俺の推測だ、とさっき言ったが……恐らく、この鎮守府近海は一種のパラドックス状態になっているのかもしれないな」

「パラドックス?」

「あぁ。多数の艦娘、深海棲艦が同時に轟沈したことで、パラドックス……相違点って意味の言葉だが、世界の理を引っ掻き回すような現象が発生し、本来現れない種類の艦娘が近海に出現し、おまけに俺たちの認識していない艦娘が出現しているのかもしれない」

「どうして?」

「……大淀、お前は知っているのか?」

「なにを、でしょうか」

「とぼけんな。お前のその面は『知っている』って顔だぜ」

 チャーがなにを言いたいのかが分かったらしく、大淀は『ビクリ』と肩をすくめた。

「ど、どういうことなのよ、チャー?」

 チャーは言い淀んでいる大淀を見ながら頭をポリポリと掻きながら答えた。

「これは公式の物語でも艦娘の口から言われてることだが、深海棲艦って言うのはな、艦娘が轟沈した後にその一部が生まれ変わった姿なんだ」

「え……?」

 ゆりは驚きのあまり口元を手で押さえていた。

 大淀も『はぁ』と息を吐くと、意を決したように強い視線をチャーに向けた。

「仰る通りです。艦娘が轟沈すれば深海棲艦に、深海棲艦が轟沈すれば艦娘へと変貌します。大本を辿れば……艦娘の前世である軍艦が轟沈、解体されたことで深海棲艦が生まれた、とも言えるのですが……」

「確かにな。そうでなければいきなり深海棲艦が現れる理由にはならねぇ」

「そういうもの?」

「これも俺の勝手な話だが、艦娘が出現するのは、彼女たちに個性を与える艦名が存在するからだ。しかし、日本では一部の海防艦を除くが、海外ではネームシップの同型艦として建造され、番号だけが振られた船も存在する。もしも、最初に現れた深海棲艦がそういう名も無い船の人型を得た姿で、そいつらが艦娘を倒したことで仲間に引き入れた、とも考えられるだろう?」

大淀もチャーの言葉に頷きながら続けた。

「それと、ついでに白状しますと……私には深海棲艦だった時の記憶がありました」

「はぁっ!?記憶って……転生しているようなものなのに受け継げるの!?」

「ごく稀に、ですが……深海棲艦だった記憶を持った艦娘も存在します。実際、この鎮守府にかつていた航空母艦『加賀』さんがそうでした」

「加賀。一航戦の片翼を担った大型正規空母だな」

「はい。加賀さんも、かつては深海棲艦だった記憶を持っていました。私が深海棲艦だった時に……艦娘を……仲間を攻撃していたという記憶に苛まれていた時に、加賀さんが『また艦娘に生まれ変わったのだから、今度は沈まないように、仲間も沈めないようにすればいい』と諭してくれたんです」

 大淀は今でもそのことを覚えているらしく、胸に手を当てながら穏やかな顔をしていた。

「じゃあ、艦娘と深海棲艦の戦いっていうのは……大本を辿れば同じ存在が争い合っているようなものなの?」

「おかしなことじゃねぇさ。人間同士だって主義主張の違い、信仰の違い、肌の色、色々な理由で争いが絶えねぇ。深海棲艦っていうのは……これも勝手な私見だが、この世に存在できなくなったことを呪う思いから生まれたのかもしれないな」

「じゃあ、もし千歳が轟沈していたら……」

「また、深海棲艦になる可能性があります」

「……えっ?」

 大淀の最後の一言を、ゆりは聞き逃さなかった。

 

 

 音無が病室に入ると、千歳が眠るベッドに間宮が付き添っていた。

「入渠で傷は塞がりましたが、急激な回復による高い疲労が残っています。もうしばらくは寝かせておいてあげてください」

「分かった、ありがとう。ところで質問なんだが、なんで間宮が診ているんだ?」

 すると、間宮は穏やかな笑みを見せながら返答した。

「私は給糧艦ですが、同時に泊地に入港した際の病院船も務めていたんですよ。兵士たちの健康管理は重要でしたから」

 間宮はその整った設備を活かして病院船に近いこともやっていたため、食料品だけでなく医薬品も充実していたという。

「なるほどな。それで医務官も兼ねているわけか」

「はい。先程も言いましたが、もうしばらくは寝かせてあげてくださいね?」

「あぁ、分かった」

 間宮が一礼して出ていくと、音無は自然とベッドの端に手を置いていた。

「千歳……」

 思えば、この鎮守府で初めて出会ったのが千歳と千代田だったが、妹のために奮闘する姉という立場の千歳と、同じように妹のために生きていた音無は共感できるものが多く、当初から接触が多かったように思っていた。

 千代田だけでなく、自分のことも気にしてくれる優しい気遣いと、朗らかな笑顔。音無も彼女の気配りにありがたみを感じていたし、戦線で出会ったゆりや岩沢たちとは違うタイプの女性という、考え始めればキリがないほど色々なことが音無に千歳への興味を与えていた。

 千歳が眠っているベッドの傍らに座ると、銀色に光る彼女の髪をそっと撫でる。

「お前が沈んだら、俺はどうなっちまうんだろうな」

 自分は、かなでのことが好きだったはずなのに、千歳の身になにかあったら、自分が正気を保っていられるか。そこまで考えるようになるほど、千歳のことが気になっているのだ。

 すると、スウスウと寝息を立てて眠っていた千歳がもぞもぞと動いている。

「よかった。思ったより体は……」

 しかし、音無はすぐ異変に気付いた。動いている千歳の寝顔が、徐々に険しくなってきたのだ。仰向けだった体が横向きになり、顔の前で苦しそうにギュッと拳を握っている。その顔を、音無はもう見ていられなくなった。

「千歳っ!おい、起きろ!」

 悪いという気もしたが、音無は千歳の肩を揺すり、声を大きくして起こそうとする。音無の声を聴いて大きく目を開いた千歳は、ハアハアと肩で息をしながら目を覚ました。

「て、提督?」

「大丈夫か?大分うなされていたみたいだったけど、嫌な夢でも見たのか?」

 音無に声をかけてもらうと、千歳はゆっくりと体を起こす。余程怖い夢を見ていたらしく、顔は冷や汗をかき、顔も青ざめているように見える。改めて音無の顔を見た瞬間、千歳は身を乗り出して音無に抱き着いてきた。

「へっ?」

 一瞬の出来事に、音無は固まってしまった。普段は制服の中に格納されている千歳の大きな胸部装甲は病衣1枚という大変薄いモノに包まれており、音無に抱き着いた途端、腹部に当たってグニュっと変形した。

 柔らかくもハリのある感触が、音無の思考回路を混乱させる。しかし、音無が混乱したのはほんのひと時だった。抱き着くというより、しがみついている千歳の体は震えて、目尻に涙が溜まっている。なにかを恐れている、音無にはそう思えた。

「……どうした?そんなに怖い夢だったのか?」

 千歳は震え続け、涙で音無の服を濡らす。

「……絶対、もうこうなりたくない夢……」

「なりたくない、夢……?」

 顔を上げた千歳の目は涙で溢れ、その頬を濡らし続けていた。

「深海棲艦になって、皆を傷付けた夢……」

「!?」

 音無はもちろんだが深海棲艦=艦娘の轟沈した姿ということを知らない。

 千歳はそんな音無の信条を知ってか知らずか、そのまま再び抱き着きながら、まるで懺悔するかのように話を続けた。艦娘と深海棲艦の関係性。稀に深海棲艦だった記憶を持つ艦娘が現れること。ゆりがチャーから聞いている話を、音無はこの時に艦娘から教えてもらう形になった。

「夢の光景と後で教えてもらった情報を照合して、私は『水母棲姫』と呼ばれる存在だったと判明しました。水母棲姫になって多数の艦載機を操り、艦娘の水上機母艦ではありえない砲塔を撃っていた私は、ある時に多数の連合艦隊の攻撃を受け、轟沈しました。気付いたら艦娘・『千歳』として海の上に立っていて、間もなく艦娘の艦隊と出会いました……この鎮守府に所属していた、加賀さん率いる艦隊でした」

 音無は千歳を抱きしめたまま黙っている。

「私はそのまま彼女たちについていき、この鎮守府に着任しました……配属されてから、今のような夢を見るようになりました。最初は相手の姿も曖昧で、実戦に対する不安から見ていたのかと思っていました。それが……」

「時が経つにつれて相手の姿が鮮明になり、仲間のはずの艦娘たちと戦っていることが明瞭になったってことか?」

 千歳は黙ってコクリと頷く。

「夢で見たものがハッキリし出して、私は提督に尋ねました。私はどういう存在なのかと。答えてくれたのは、提督ではなく加賀さんでした。加賀さんも、深海棲艦だった頃の記憶を持っているからと、私の話を聞いてくれて」

「記憶を持った艦娘は、そんなに頻繁に現れるものなのか?」

「いいえ、加賀さんの話ではそんなに多くはないそうです。実際、先の提督の元に集まった艦娘たちの中で、深海棲艦の記憶を持っていた娘は私と加賀さんを含めて5人にも満たない数でしたから」

 つまり、大淀はその僅かな1人ということだ。

「そっか……」

 音無がそれだけ呟くと、抱き着く千歳の力が強くなる。

「私、怖いんです。沈むだけならいいんです。でも、また深海棲艦になって、もし提督や皆に牙を向くことになったらって……私、そうなったらって想像するだけで怖いんです」

 千歳は不安が募っているのか、また目尻に涙を溜めている。すると、音無は言った。

「俺と似たようなものだな」

 音無の意外な発言に、千歳は「えっ」と呆けてしまう。

「俺はゆりたちと出会った時、記憶を失っていたんだ。自分が何者かも分からない。なんのためにここにいるのか。自分のことなのに分からないことだらけで、どうしたもんか考える毎日だったよ。記憶を取り戻して、不安なこともあった。でも、俺は自分が何者か分かっただけで、これから頑張ろうって思えるようになったんだ」

「これから、頑張る?」

「そうだ。確かに、お前は深海棲艦だったかもしれない。でも、今のお前は、笑顔がキレイで、千代田のやつが好きで好きでしょうがない自慢のお姉ちゃん、千歳型一番艦の千歳だ。不安はあるかもしれないけど、なによりもお前がお前のままでいたいって思ってくれることが、まずは大事だと思うぞ」

「私が、私のままで?」

「ああ、深海棲艦になりたくないって思うなら、沈まないように頑張って、1人で無理な時は恥ずかしがらずに皆を頼っていいんだ。これは、お前だけの問題じゃない。この鎮守府にいる艦娘全員に関わる問題だ。お前は沈むだけならいいと言ったが、少なくとも俺はお前にも、ここにいるも皆に沈んで欲しくない。だから、皆を沈めないためにも、お前がお前自身を大事にしてくれ」

 そんな音無の言葉を受けた千歳は、思わず胸を高鳴らせていた。

「(あぁ……そうか。この方はそんな思いを抱いていたから、艦娘の練度向上や装備開発に余念がなくて、慎重に慎重を期す人だったんだ……)」

 ストン、となにか腑に落ちたような感覚を覚えた千歳であった。

 だから、というわけではないのだが、音無に抱き上げられていたあの高鳴りを、再び胸に感じていた。

「提督……ありがとうございます。私、もっと頑張ります」

「あぁ、皆で平和な世界を取り戻そう」

 音無が千歳の手を握ったそのまま、夜は更けていった。

 

 

 翌朝、登った太陽の光で音無は目を覚ました。

「ん……そっか。あのまま寝ちまったのか」

 千歳から『寝るまで一緒にいてほしい』と甘えられてしまい、断れなかった。音無はそれを受け入れ、千歳の手を握り続けていた。

 だが、千歳が寝た後も彼女の手を放す気にはなれずに握り続け、そのまま眠ってしまっていたらしい……と、ここまではよかった。

 

 

――ムニュ……――

 

 

「ムニュ?」

「んんっ……」

 なにやら右手に柔らかい感触がある。

 音無が恐る恐る顔を上げてゆっくり顔を上げると……寝ている間に、いつの間にか掴んでしまっていたらしい千歳の豊かな胸部装甲が、指が沈み込んで歪んでいた。

 音無はことの重大性に気付いて『ぶわっ』と冷や汗を流した。

 幸い千歳はまだ寝ているようなので、このまま手を離せば問題はなかった……はずだった。

 

 

――ムニュ、ムニュ……――

 

 

 離さなければならないと頭ではわかっているはずなのに、寝起きで本能が働き始めたからか、手は千歳の胸を掴んだままであった。

「イカン……イカンですよ……」

 分かっている。頭では分かっていても、体は正直である。

 その極上と言っても差し支えない柔肉の心地よさに、思わず呆然としてしまっていた。

 そして、神様は常にイタズラを欠かさない。

 『ガラッ』という音と共に扉が開いた。

「お姉、傷の具合はどう?……って……」

 千代田は死んだような目で、姉の豊満な胸部装甲(おっぱい)を鷲掴みにしている音無を見た。

「……や、あの、千代田、これは、だな……」

 音無も全く頭が回らず、ただしどろもどろの言葉を発することしかできない。

 そして、千代田の中でなにかが『プチン』と弾けた。

 

 

「朝から寝てるお姉になにしてんのよおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ‼」

「ちょ、おま、軍艦の馬力で殴られたらシャレにならねブホオオオォォォッ‼……」

 

 

 音無は5万7千馬力を誇る千歳型のパワーでぶん殴られて、宙を舞った。

 この時意識を失う直前の音無は、死後の世界で初めて『校長室』のドアノブを握った瞬間の浮遊感を思い出し、『あ、死んだ』と思った。

 

 

 結局激しい物音に目を覚ました千歳がのびている音無を目にして大慌てし、同じく物音を聞きつけて駆け付けた大淀と一緒になって介抱しながら千代田に滅茶苦茶怒るのだった。

「なにを考えているの千代田!」

「そうですよ!確かに提督にも非はありますが、よりによって殴り飛ばすなんて‼」

 千代田も一瞬で沸騰した心の熱は徐々に冷めてきたらしく、意識を取り戻した音無に何度も頭を下げて謝ったという。

 だが、音無自身も自分に非があったと分かっていたため、笑って許してやるのだった。

 そして……千歳は改めて音無に『お願い』した。

「あ、あの、提督……もしもご迷惑でなければ、ですが……また、一緒にいてくれる時間を作ってもらってもよろしいでしょうか?」

 音無も、『長女だからしっかりしないと』というゆりの姿を見ていたからか、『自分でもし支えになるのならば』と思っていた。

「あぁ、俺でよければ構わないぞ。なんなら、また一緒にお酒でも飲もう」

 千歳は改めてそんな音無を見て微笑むのだった。

 

 

 後に千歳は、『これが提督に惚れた大きな一歩でした』と語る。

 

 

 回復した千歳が『体が鈍っちゃうから』と演習に向かったため、音無はScharnhorstと榛名の2人を連れて建造工廠へ向かった。

「やっぱり、高い火力のメンバーが増えると心強いからな。できれば重巡以上、欲を言えば戦艦が2隻くらい増えてくれると助かる」

「そううまくいくもんかぁ?」

 Scharnhorstは疑り深い目で見ているが、榛名は『提督ならきっと大丈夫ですよ』と笑っていた。

 ほんのわずかな日数だが、昨日着任したScharnhorstよりも榛名の方が音無のことをよく知っている。

 工廠に到着した音無は早速慣れた手つきでパネルを操作する。

 すると、鉄鉱石を運び込んできた上半身裸の高松と、柔道着姿の松下五段に出くわした。2人とも汗だくな上埃だらけだが、『ひと汗かいた』と言わんばかりにいい顔をしていた。

「おや、音無さんじゃないですか」

「おぉ、建造か?せっかく掘り出した資材だ、たっぷり使ってくれよ?」

「あんまり無計画に使うわけにもいかないけどな」

 幸いこの鎮守府のあるタウイタウイ島は、なぜか鉄鉱石とボーキサイトが豊富にとれるため、すぐに枯渇するという心配はほぼない。

 燃料と弾薬は近くにある製油所から調達しているので、製油所周辺海域は死守しなければならない。このため、音無はこの海域は一日に一度は艦隊を派遣するようにしていた。

 そんなことを考えつつ、音無はお馴染みの札幌戦艦レシピで回してみる。

『ゴーアウェイ』

「それは正しいのか?」

 妖精さんにツッコミを入れつつ、建造終了を待つ。

 そして3分ほどで建造が完了すると、扉が開き、巨大な艤装が視界に飛び込んできたが、その中から出てきたのは、巫女のような白装束に巨大な艤装を備えた艦娘であった。

「扶桑型超弩級戦艦。姉の扶桑です。妹の山城共々、よろしくお願いいたします」

「扶桑……金剛型で得た経験を参考に日本が初めて設計した超弩級戦艦、だったな?」

「えぇ。装甲や速力には問題も多いけど、主砲の火力だけは自慢なの」

 扶桑型戦艦。音無が今言ったように、金剛型での経験を参考に建造された戦艦である。

 本人の言う通り、火力に特化しすぎたことで装甲が薄く、改装されても機関の出力不足が欠点と言える。しかし、音無は……

「なら、その自慢の主砲を俺たちのために動かしてくれ」

 自慢と言った火力のことだけを言われて、逆に扶桑がキョトンとしてしまった。

「あの~、聞こえませんでしたでしょうか?私、速力もありませんし、装甲も薄いですよ。この格好も、装甲が薄いことに由来するのですが……それに、こんな無駄に身長が高いのも、艦橋を上へ、上へと改装を続けて、終いに『違法建築物』などと揶揄されたからで、決していい船とは言えません」

 そう言って、扶桑は自分の体を音無に見せる。

「お前たちのことを知っている仲間から、一応のことは聞いている。でも、それは船だった頃の話だろう?人の姿になったら、こんなに足が長くてきれいになったんだ。俺としては、お前の姿に文句を言ったら、どっかから三式弾が飛んでこないかって思っちまうよ」

「私が、きれい?」

「ああ、お前の丁寧で穏やかな物言いも、国の家族を守りたいって思った海軍の人たちの魂が、お前の心を優しいものにしてくれたのかもしれない。だから、俺はお前みたいな優しい艦娘が来てくれてよかったと思ってるよ」

 音無の賛辞を聞いて、扶桑は思わず涙を流していた。

「嬉しい……私の……私のこの姿を『美しい』だなんて……」

 少し涙を流したと思うと、それまでとは打って変わって凛々しい顔を見せた。

「分かりました。扶桑型戦艦扶桑、これより当鎮守府のため、粉骨砕身頑張ります!」

「いや、砕くのは艤装までにしとけって」

 音無が棒読みともとれる声でツッコミを入れると、扶桑と共に噴き出して笑っていた。

 そんな音無を見ていた高松と松下の2人は、思わず唖然としていた。

「音無さんって……あれほど女性を惹きつける方でしたっけ……?」

「いや、わからん。ゆりっぺならなにか分かるかもしれんが……」

 そんな扶桑を傍らに従えながら、音無はもう一度建造ボタンを押す。

『ゴーゴーゴー』

「ノリノリだな」

 またもノリノリな妖精さんにツッコミを入れるが、音無もどことなく楽しそうであった。

 また3分ほどで建造が終了し、扉が開く。

 中から出てきたのは、キレイなショートヘアに引き締まった筋肉質な、しかしそれでいて女性らしい所は柔らかそうな、大人びた色っぽい雰囲気の女性だった。

 彼女もまた、やたらと巨大な扶桑ほどではないが巨大な艤装を背負い、そして立派な胸部装甲を保有している。

「長門型戦艦2番艦の陸奥よ。よろしくね」

「陸奥……日本ではビッグセブンと親しまれた長門の妹、だったっけ?」

「その様子じゃ、私のこともある程度は知っているみたいね。だから言っておくけど、あまり火遊びはしないでね?お願いよ」

 最後の『お願いよ』の部分だけは、どこか意図的に蠱惑的な声を出しているように感じられた音無だった。なので……

「やっぱり、自分の轟沈の原因が気になるのか?」

 あえて、その心の中に踏み込んでみることにした。

「……そうね。気にならないと言ったらウソになるわ。だから、私が着任した提督にはそうお願いしているのよ。で・も……」

 陸奥はその豊満な肢体で音無に抱き着くと、耳元で囁いた。

「私を大事にしてくれるなら、お姉さん、頑張っちゃおうかな~?」

 蠱惑的、煽情的という言葉が正しく似合う仕草で声をかけてくる陸奥は、妹でありながら『お色気系お姉さん』という見た目に全く名前負けしない色っぽさを見せつけてきた。

 誰が呼んだか、『2番艦はスケベボディ』である。

 一方、そんな音無を見ていた高松と松下はと言えば……

「アレは危険ですね」

「あぁ。ある意味ゆりっぺより危険だ」

 陸奥から放たれるお色気ムンムンな姿が、仲村ゆりの側に居続けた彼らに『美人は危ない』という本能を植え付けていた。

 そんな状態なので、音無に対しても嫉妬心を見せるでもなく、『頑張れ』と言わんばかりの温かい目である。

「ま、まぁそう思ってくれるんなら頑張って欲しい……」

 音無も背中に『あててんのよ』されている陸奥の豊満な胸部装甲にドギマギしてしまっている。どうやら、朝の千歳のおっぱいを鷲掴みにした記憶が蘇ってしまったようだ。

 取り敢えず一度離れた音無は、2人に演習をするように伝えた。

「この後南西諸島防衛線の追撃戦を行う。せっかくだから練度を上げた上で2人にも出てもらいたい」

「まぁ、それは嬉しいですね」

「期待されるなら……お姉さん、がんばろっ」

 2人ともやる気はあるようなので、まずは演習で練度を上げてもらうことにする。その間に音無はチャーに装備を見繕ってもらうことにした。

「あの2人はどう足掻いても練度が榛名に比べると低い。装備でなんとかなるか?」

「そうだな。この付近なら装備を整えるだけでも十分立ち回れるだろう。扶桑には低い能力を補うための『試製35.6cm三連装砲』を2つ、そこに弾着観測用の『零式水上観測機』を加えれば十分だな」

「陸奥はどうだ?」

 陸奥は35.6cm砲よりはるかに強力な41cm砲を装備している。砲門数こそ8門だが、『ビッグセブン』とまで呼ばれたその実力は伊達ではない……はずだ。

「陸奥なんだが、これを装備してみたらどうだ?」

 チャーが見せてくれたのは、扶桑や榛名に装備する35.6cm砲よりも、かなり大きな三連装砲だった。

「これは……もしかして41cm砲なのか?」

「あぁ。『試製41cm三連装砲』って言ってな。本当は扶桑型や伊勢型の改二以降の基本装備っていうレア装備なんだが……なぜか作り出せてな」

「……この鎮守府で一番チートなのってやっぱりお前だよ……」

 音無はチャーの尋常じゃない能力に『うわぁ』と思わず呆れるのだった。

 なにせ、以前榛名に装備してやった『試製35.6cm三連装砲』も、この装備も、本来開発不可能な装備なのだ。

「ま、まぁ……こんな装備があれば戦いも少しは楽になる、だろうな?」

 艦載機なども含めてかなり高性能なものを作り出しているので、実際には楽どころか『どう見てもオーバーキル』なレベルなのだが、音無はまだそこまで気付いていない。

 いやはや、用心深い素人とは恐ろしい。

 よって、装備は以下となる。

 

 

○ 蒼龍……紫電改二×12・彗星一二型甲×27・紫電改二×18・二式艦上偵察機×7

○ 瑞鶴……流星改・彗星一二型甲・流星改・艦上偵察機彩雲

○ 熊野……15.5cm三連装砲・15.5cm三連装砲(副砲)・零式水上観測機

○ Scharnhorst……28cm三連装砲・15cm連装副砲・53cm三連装魚雷発射管・零式水上観測機

○ 陸奥……試製41cm三連装砲・試製41cm三連装砲・15.5cm三連装副砲・零式水上観測機

○ 扶桑……試製35.6cm三連装砲・試製35.6cm三連装砲・15.2cm単装砲・零式水上偵察機

 

 

 一言言おう。『殺す気か』。いや、殺す気なのだが。

 割と初期でも手に入りそうな装備で固めている熊野は、圧倒的な装備を持つ仲間たちを唖然としながら見ている。

「これ……どうなりますの……?」

 彼女の心配をよそに、艦隊は出撃する。




と、いうわけで徐々にですがお色気要素も出始めました。
千歳お姉のおっぱい鷲掴みにしてみたいゾイ。

次回もよろしくぅ‼
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